そんな厄介な人物が弥四郎の母を御伽女役に求めたのは、亀千代が放蕩の最中、鷺浜の城で働く志乃を見かけたことが切っ掛けだったそうな。
志乃は決して裕福ではない岡元の家計を助けるため、鷺浜の城で女中として働いていた。
その姿を目に留めた亀千代が志乃をいたく気に入り、御伽女役の話を持ち出した、ということらしい。
亀千代という人物と、志乃に御伽女役を持ち掛けた経緯を照らし合わせれば、弥四郎ならずとも、その真意に不純なものを感じるのは無理からぬことであろう。
まだ十四の少年に過ぎない弥四郎は、それが忠義を尽くす対象であったとしても、最愛の母が他所の男のお手付きとなることを黙認できるほど大人でも寛容でもなかった。
急いで自らの仕事を片付けると、弥四郎は御役目を受け入れた母を翻意すべく帰路を急いだ。