21.
文恵はキヨ子に向き合う。
キヨ子も真剣な眼差しで文恵の目を真っ直ぐに見つめてくる。

「キヨ子さん、明文をお願いね」
「はい」
「あの子って、ちょっと甘えたとこがあるから、あんまりあんまり甘やかさないでね」
「はい。明文さんの母嫁として、しっかりと支えていきますわ」
「お願いね……」

文恵はキヨ子の手をとり、ぎゅっと握り心残りである息子のことをキヨ子に託す。
とは言え、やはり息子のことは心配になってしまう。
そんな文恵の心の内を見透かすように、キヨ子は自分よりも一回り年下の義母に優しく微笑みかける。
文恵も不安が残るものの、息子をこの熟母に託していくことにした。

「こちらこそ……」

スッとキヨ子は申し訳なさそうに目を伏せる。

「俊ちゃんを……、俊也さんを……、お願いします……」

そうだ、文恵の新しい若い夫はこの息子の母嫁の孫なのだ。
キヨ子は自分が文恵の息子に嫁いできてから疎遠になっていた孫のことを、
新たに孫の母嫁となる文恵にすがるようにお願いする。

「ええ、まかせてね」

文恵は胸を張って応えた。
俊也は文恵の尻に敷かれてしまうかもしれない。
しかし、そうなったとしても文恵は俊也の母嫁として立派に務めを果たしくれるだろう。
キヨ子は文恵の自信に満ちた笑顔で、そう確信するのだった。