>>833
物音を立てぬよう無意識に息を詰め、灯りの元へ歩み寄り近づいていく。
心の臓を少しずつ締め上げられているかような息苦しさを覚えつつ・・・・・・。


「・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・」

距離を詰めるにつれ、か細く微かな女声のぼんやりとしていた輪郭が徐々に定まり、覚えのある形に収斂する。

・・・・・・やはり、これは母上の声に違いない。
起きていらっしゃるということは、やはり亀千代様に御指南を施されている最中なのか。

弥四郎の考えを裏付けるように、密やかだがはっきりとした志乃の言葉が聞こえた。

「あぁ・・・・・・亀千代様。そう・・・・・・。とても上手で・・・・・・」

!・・・・・・。

『御指南』というにはあまりも婀娜めいたその声色に、初心な弥四郎の五体が思わず強張る。
いつも優しくて気丈な母様。あの母様が、男の劣情をそそるような艶めかしい声を・・・・・・。