>>891
熱に浮かされたように頬を紅に染めた志乃は、目前に俯せ、股ぐらに顔を寄せていた男――亀千代を見つめている。

その目は責めに耐え切れず潤んでいるようでもあり、うっとりと甘美な心地に心奪われ蕩けているようでもあり。
いずれにせよ今まで弥四郎が一度たりとも見たことのない、母でもなく親でもなく、ただ女であることを露わにした面貌だった。

・・・・・・あれが・・・・・・母様・・・・・・。

放心の弥四郎をよそに俯せていた亀千代が膝立つと、横柄に腹を突き出すような素振りをする。
御伽女として仕える主の意を酌んだ志乃も上体を起こして向かい合う形になり、亀千代の襦袢の腰紐を丁寧に解いてゆく。

覗き見る襖に亀千代が背を向けた恰好のため子細は分からぬが、志乃は腰紐を解いてはだけた下腹のあたりに手をやり、ゆっくりとそこを撫で擦っているように見える。

「・・・・・・まだお若いのに、こんなに逞しゅうて・・・・・・たいそう立派な男振りでございますね・・・・・・」
とろんと見惚れたような顔でそう称賛した志乃は、寸刻の後に擦る動きを止めると、再び上体を仰向けに横たえ、亀千代に向けて両の脚を開いた。
その横臥した女体の上を、鼻息を荒げた亀千代が這い上がるように圧し掛かかっていく。

母様が・・・・・・母様が・・・・・・。

色事を知らぬ弥四郎ではあったが、今まさに母が侵掠されんとしていることを本能的に理解せずにはいられなかった。