>>217
昨晩凹まされたことを余程腹に据えかねているようだ
が、下らない絡み方をせずに問うなら私見を述べよう

以下自宅での暴露後の唯子の失踪より前、折々で示された全ての兆候を暁年は見逃してしまった

・単身赴任先を訪れた唯子が常より激しく求めていることに気付いたにも関わらず、泊まらずに帰宅する彼女を見送ったこと
・一時帰宅時、ピアスを嫌っている筈の唯子が耳にピアスを開けたことに気を留めなかったこと
・本来体裁を気にする筈の唯子が家の各所に設けた器具に不審を抱かなかったこと
・事前連絡無しでの帰宅を勧める息子に違和感を抱かなかったこと
・珍しく早めに帰宅したタイミングで同じく帰宅した唯子と会った折、彼女の外出先も聞かず上気した表情にも気を留めなかったこと
・ステージを終えて帰宅した唯子が纏う色気に動悸さえ覚えた筈であるのに、彼女が家に連れてきた子を好意的に解釈し異常を悟らなかったこと
・一時帰宅後に出向先に戻る前の晩、唯子が流した涙の意味を取り違えていたこと

温厚かつ誠実な人柄の暁年であればこそ、事態発覚後に妻の篭絡に繋がる兆候を全て見逃していたと気付けばその事実は重く圧し掛かるだろう
加えて興信所の調査や暁人経由で聞く紗夜子の話からは、唯子が情婦に堕ちた一因に卍の篭絡を許すほど寂しがる妻を放置したことにあると知れば暁年も自責の念を負わずにはいられない
なによりあの場面で唯子の制止を聞くことなく見放し彼女が失踪した決定的な罪の重さは、暁年に唯子の罪を咎めるより贖罪の意識さえ植え付けてしまう

自責の念に責め苛まれる暁年に唯子発見の朗報は救いになり、何をおいても彼女を取り戻すことを優先させる
一年間の調教を経て、もはや後戻りなどない卍の情婦となった妻であっても、暁年の彼女に寄せる思慕は変わりなく、やもすると彼の第一声は詫びであったかもしれない
決して容易な決断ではなかったものの、唯子を取り戻した暁年は二度と彼女を放置しないことを誓う
それがたとえステージ上で他の男に愛を誓う姿であってさえも