斉田石也
ロリータ短編の名手だと思う。
隠れファンは多いといいなぁ。
ロリコンメディアの現代史 斉田石也インタビュー
https://merimeri777.com/column/otonakun/loli/01-01 「ねェ、知りたい……、本当のこと……」
ハァハァと息を弾ませてベンチに戻ってきた彼女に、突然そう言われて、思わず、僕は彼女の顔を見詰めてしまった。
「だからァ、なんで、私がいつもあそこのスイミングでウロウロしてるかってこと……」
「ああ……知りたい」
はっきり言って、そんなこと、もう、どうでもよかった。
デイトなんていえないかもしれないけど、こうやって少女と二人だけで過ごす時間が持てるだけで満足だった。
しかし、少女の方はそれじゃ納得しなかった。
秘密、なんて言いながら、どうしても僕に話したいらしい。
「あのね……、フフフ……、私ィ、ヘンタイなんだって……、みんなが言うんだよ……」
「ヘンタイ……」
「ウン。スカートまくられたりィ、パンツ見られたりするの、なんとなく好きって言ったら、それからみんなそう言うの……」
こんなことをケロリとした顔で言われると、僕のほうは、どんなリアクションをしたらいいのか、わからなくなってしまう。
「でも、私、本当はもっとすごいんだよ。どうすごいか、聞きたい……」
この調子では、聞きたくないと言っても少女は話し続けるだろう。
僕は、いかにも興味津々という感じで身を乗りだしながら頷いて見せる。
「私、服、脱ぐのが好きなんだ。家で一人で留守番してる時なんか、鏡の前で素っ裸になったりすると、なんかドキドキして気持ちがいいの……」
そんな話をしている間にも、少女の目元がわずかに赤らんで、瞳が潤んでくるのが分かった。
まるで、僕に『ヘンタイ』自慢をしながら欲情しているようだ。
「パ、パンツも脱いじゃうわけ……」
彼女がヘンタイを自覚しているのなら、こっちだって、もう、本性丸出しにしたってかまわない。
「ウン……、あのねェ、お母さんがぜったいにあと何時間帰ってこないって分かるときには、ぜーんぶ、髪の毛、結んでるゴムまで取っちゃってェ、そのまんま宿題や家の仕事とかしちゃうの……。なんか、頭がボワーンとなって、頬っぺたがカッカしちゃうほどなの」
聞いてるこちらのほうが全身がカッカとしちゃうような話だ。
本人が自覚しているかどうかは別として、この少女は本格的な露出系のM少女に違いない。
そう考えれば、意味もなく全裸になって喜んでいるのも、初対面の僕の前で、その話を得々として聞かせるのも説明がつく。
「すごい子だね……、君……」
「かなァ……」
「でも、それとあのスイミングにいつもいるのと、どんな関係があるの……」
考えてみると、話題が完全に横道に逸れている。
話の内容が刺激的だから、別にそれでもいいのだが、なんか、もっと強烈な話が出てきそうな気になる。
「ヘヘヘ……、あそこだったらァ、着替え室の横の『体操広場』で裸になっても、変じゃないでしょ。本当にあそこで着替えてる子もいるし……」
ギャラリールームのすぐ隣。
ガラス張りの二〇畳ほどの空間。
プールに入る前、着替えを済ませた子はそこに集合して、点呼をしたあと準備体操をする。
確かに、遅れてきた子などは、ロッカールームに入らずここで着替えることがある。
ほとんどの子は水着の上に服を着ているから、始める時は上に着ているものを脱ぐだけでいいが、終った後も、そうした子の大半はこの部屋の隅で着替えている。
確かに僕もそれが狙い目で、いかにも着替えを終わって出てくる子の出迎えという感じで、いつも中を覗き込んでいるスペースだ。
「私、鉄棒とかしてパンツ見られてもドキドキするから、あそこで素っ裸になって、回りに見られるの、好きなんだ……」
そういう意味では、土曜日の午後は彼女にとっては理想的なシチュエイションだろう。
土曜の休みが多くなって、スイミングに付き添ってくる父親も多い。
そんな父親たちの前でストリップをするというのは、現実はどうあれ、男の視線が自分に集まることを意識するだけで、彼女にとっては天にも昇る快感だろう。
「そうか……、君は……、えっと、名前は」
「リナ……、理科の理に奈良県の奈って書くんだ……」
「理奈ちゃん、見られるのが好きな子なんだ」