「陛下」

まだ十代と思しき青年が国王に声をかける。

「おう、お前か」
「陛下、ご機嫌はいかがですかな?」

四十を過ぎた王に青年は恭しく頭を下げた。

「ここには私とお前しかいない。堅苦しいマネはよせ」
「では兄上、お久しぶりです」
「ああ、久しいな」

青年は壮年に差し掛かった王を兄と呼んだ。
親子ほど年が離れた王と青年であったが、確かに二人は同じ母から産まれた兄弟であった。

「して、我らが母君は今はどちらにおいでかな?」
「今は辺境伯殿の元に身を寄せていると聞いております」
「そうか、あれももうそんな年頃か」

王は辺境伯の息子のことを思い出す。
この国では十代の半ばには成人として扱われる。
その辺境伯の息子もそろそろ十代の半ばになる頃だった。

「これは近いうちに我々の弟が増えることになりそうだな」
「ええ、そうですね」

王と青年は二人で笑い合うのであった。