あれだけ体は卍を求めながら、家族への悔恨を断ちきれなかった唯子。なぜ家族の元に帰ったのに、卍が待つ舞台へ自ら進んで向かうのか?
家族に背を向けられ、卍と共に家を出た唯子が、絶望のどん底に落ちたことは想像に難くない。
専業主婦であった唯子にとって、暁年と、暁人と、家族が暮らす家は、文字通り「全て」であった。
しかし自らが犯した不貞によって、家族に背を向けられ、家を失ったということ・・・。
いずれそうなることは、恐らく卍の計画であったろう。そこからが、唯子に対する調教/洗脳の本番であることも。
暁年も、唯子も、まんまと卍の罠に落ちてしまった。
「露呈」までの卍は、暁年の目を盗んで唯子の家に通う間男に過ぎなかった。だが以後の卍は、唯子が頼るべき唯一の主人となった。
朝から晩まで、くる日も来る日も、卍を受け入れる唯子。匂いのこもった部屋での、卍と聖満との爛れた生活。全てを失った唯子に、それ以外の選択肢はもはやない。
自らの犯した罪で、家族を裏切り、家族に捨てられた事実を、卍は傷口に塩を塗り込むように囁き続け、責め続ける。その度に、家族の前で痴態を晒したあの日の出来事を思い出し、さらなる絶頂に身を震わせる唯子。
取り返しのつかない過ちと、家族への悔恨と、凄まじい快楽で次第に考える力が奪われていく。そしてどこかで心が折れる。
自分にはもう卍しかいないのだと・・・。
悔恨に苦しむより、快楽に身を委ねてしまえと卍のソレが囁く。卍は快楽という餌を与えてくれる主人で、自分は卍の雌犬だと。
遂に唯子の心は、快楽の中に堕ちた。そして卍の調教は完成する。
ここまで、失踪後数週間の出来事と思われる。
『・・・唯子は三好さんを受け入れて、もう心底惚れているように見えたがな』和虎の発言より