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叙述トリックとは
「文章の記述上の仕掛けによって、読者をわざと誤認に導くもの(goo辞書)」
とされています。
推理小説等で使われる言葉ですが、物語の体裁上、嘘をつくと思わない登場人物(主人公(ホームズ)とか物語の記述者(ワトソン))
が実は嘘をついていた・・といったトリックを指します。
読者にとっては推理の前提が崩れるので禁じ手と言われる手法です。

で・・・ご質問の件です。
まず、単行本「月下香の檻3」しか読んでいない読者は叙述トリックの意味が分からないと思います。
単行本と連載版を両方見ると初めて分かります。
解説します。
単行本「月下香の檻3」の帰結における冒頭のセリフ
「父に聞かされた話によると 三好はある日 母を置いて フラッと 出て行ったきり だという・・・戻らない三好の帰りを・・・・・・」
の部分は連載版と違っています。
実はこの部分、連載版には
「父に聞かされた話によると」
が在りません。つまり連載版では暁年の嘘が明示されていないのです。
「興信所」の調査結果ともとれるし、近所の人のうわさ話かもしれず・・・
いずれも利害の無い者の証言のように見せているのです。
しかも「唯子は卍とずっと関係を続けていた」というシーンは
連載版では全く描かれていませんでした。

そのため、卍の不在は連載終了後から読者の間で様々な憶測が飛び、色々な解釈が披露されました。
それが
「暁年の嘘」
で済まされてしまったのです。
ちょっと唖然としました。
まさに禁じ手・・・
というのが正直な感想です。