知らない女性の声だった。
自分の息子を「暁人」と呼び捨てにする程に2人とは親しく深い仲であるのが分かった。
「〇〇さん、ありがとう。あのままあの人達を恨んで日々。悔やんで生きてきたと思う。」
「そうだな。〇〇と出会わなければあの狂った日々で藻掻き苦しんでいた。」
「所詮、世間知らずの女が男を作って出ていっただけの話。アタシからしたら、こんな良い男達を棄てて出て行ってくれて有り難い話さ。」
「ところで暁人、母親に対して随分と他人行儀じゃないかい?」
「ハハオヤ?」唯子は女の言っている言葉の意味が一瞬理解出来なかった。「暁人は私の息子で私は暁人の母親」と怒りが込み上げた立ち上がろうとしたその時に今晩の客が来た。
「お袋って呼ばせてもらっても良いですか?」
と心底嬉しそうに親しげな笑顔で女に呼びかけた。
「全く馬鹿な子だね。遠慮しなく好きに呼べは良いのに」
「お・・・・お袋・・・お袋!」
「おう、暁人アタシがアンタのお袋だよ。これからもヨロシクな。」
家族の思い出の店で家族を帰る場所を失った。自分の意思で旦那様を選んだのだから後悔はない筈なのに。
「お袋」と呼ぶ暁人の声が私の中で響いて離れない。