召喚されたのは、勇者ハインリヒじゃなかった。
剣に付着していた、黒のアリスの血液が反応したんだ……
しかも、呼んじゃったのは五百年前の黒のアリスじゃない……
この時代より三十年後の、未来にあたる黒のアリスが召喚されたんだ
黒のアリスの力は、混沌の奔流を巻き起こす。
溢れ出た混沌が時空に穴を空け、そして世界を引き裂いた。
天界もその直撃を受け、イリアスは瀕死のダメージを受ける。
正史イリアスの死は確定してたから、その因果律に引きずられたんだ。
時空は歪み、蝕まれ……そして連鎖的に数々の並行世界が生まれた。
時空間の断裂はタルタロスとなり、世界を繋ぐトンネルとなった……
再創生計画が破綻し、イリアスは勇者ルカに討たれ――
そして、世界から神という絶大な存在が消え去りました。
強大な力の喪失、聖エネルギーの空白化。
それは、元より劣化していた時空連続体を一気に不安定にしました。
その余波は、時を隔てて正史の過去未来を歪ませました。
そして、最悪の事態が起きてしまうのです。
あなた達が、大異変として知っている――
三十年前、時空連続体の破綻を決定づけた大災厄が。」
「ええ……それを皮切りに、無数の平行世界が発生したのです