バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第8部
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※ルート分岐のお知らせ
前スレ>>238「生きてこそ」以降、3ルートに分岐することとなりました。
ルートAは従来通りのリレー形式に、
ルートB、Cは其々の書き手個人による独自ルートになります。
経緯につきましては、新・総合検討会議スレの886以降をご参照ください。
全く残念なことながら。
神代より伝わる超兵器の神秘に触れる資格を、紗霧は有していなかった。
隣に座るユリーシャにしても、同様である。
だが、この居心地の悪い空気は、落胆による物では無い。
羞恥によるものであった。
―――純潔であること。
そうして、生存者を俯瞰してみれば。
仁村知佳とて、思いを寄せる異性と望まぬ契りを交わしているし、
童女しおりに至っては、生存者の誰よりも性経験が豊富であった。
又、主催者サイドに目を移しても。
カモミール芹沢は多情で鳴らした徒女(アダージョ)であるし、
椎名智機もレイプに近い強引な手管で処女を散らされている。
透子は【御陵透子】であった頃の肉体は全き乙女ではあったものの、
仮衣である椎名智機のレプリカは純潔を失った後の智機を基盤に作られている。
誰も彼も揃って非資格者であった。
「どうしたもんですかね……?」
「あの…… 恭也どのなんて、どうじゃろか?」
純潔とは、処女のみとは限らぬ。
童貞もまた一つの純潔であると、野武彦は考えたのである。
残念ながら恭也もまた、知佳を相手に資格を失っているのであるが、
そのことを知る者はここにいなかったし、
彼の言動のそこかしこに見られる初心さやお堅さから、
きっとそうなのであろうと、皆がなんとなく察していたのであった。
とは言え。
「想像させないでください、この倒錯ジジイ!」
「それを提案してしまうあなたの心根を軽蔑します」
言葉に誘発されて想像してしまった絵面の洒落にならなさに対して、
乙女たちは立腹し、野武彦を鋭く責めた。責め抜いた。
そうして数分。
冷や汗で下着が絞れるほどに塗れている野武彦の窮地を救ったのは、
ここのところ気の合うそぶりを見せ始めた、相方であった。
「あったよー!」
煤と灰に塗れた真っ白で真っ黒な顔ににっこりと笑顔を浮かべ、
その手に、サイドラインの入った小さな濃紺のブルマを握って。
もとい。
ビニール袋の中に入れて。
広場まひるの帰還である。
シークレットポイント、03。
東の森の木の一本に、小鳥の巣箱に偽装してあったそこは、
昨晩の火災で、消し炭になってしまっていた。
通常のアイテムであれば、巣箱と同じく燃え尽きていたであろう。
しかし、そこにあったのは神の手になるオーパーツ。
業火を物ともせず、焦げ付き一つつく事は無く。
輝きすら放ち、まひるの到着を待っていたのであった。
「「「居た!!」」」
まひるの華奢な体操着姿と、袋詰めの超兵器を見て、野武彦たちの心が一つになった。
「お? お? 声が揃っちゃうほどあたしの顔が見たかった?」
勘違いしたまひるが、笑顔全開でてとてとと野武彦に駆け寄る。
その脇から、ぬうと黒い影が手を伸ばした。
月夜御名紗霧である。
「とりあえずジジイは外に出てなさい。ここからは乙女会議です」
「うむ、心得た。後は任せたぞい、軍師殿。
というより、まひるちんが帰ってきたのじゃから、
わしは『神語の書』捜索に向かおうと思うのじゃが?」
「了承です。かのアイテムは最重要アイテム。
是非入手して頂きたい…… ところですが。
何分、崩落後の危険地帯です。
貴方の身の危険を押してまでの調査は不要です。
五体無事で帰ってきなさい、魔窟堂野武彦」
その判断は、野武彦を戦術の駒と見ての発言である。
理の天秤の軽重であり、決して優しさのみから出たものでは無い。
それでも。
その何%かの成分は、確かに紗霧なりの同胞意識から成っていた。
「その命、しかと受けたのじゃ!」
野武彦は奮い立つ。
紗霧に対する篠原秋穂殺害の疑いは、未だ頭の片隅にはある。
しかし、今は。
それよりも、圧倒的比重で。
紗霧への軍師としての信頼感と仲間意識が、勝っている。
「じっちゃん、気をつけてね!」
「いってらっしゃいませ」
「合点じゃ!」
野武彦は人差し指と中指を立てた左手を横に寝かせるとこめかみに当て、
ウインクを決めるや、ビッとその手を突き出した。
それは多分なにかのヒーローの決めポーズなのであろうが、
残念なことにまひる達にその意図は伝わらなかった。
「世代の違い、かの……」
寂しそうに背中を丸めて、野武彦が小屋を後にする。
カスタムジンジャーの軽快なモーター音が遠ざかっていった。
その音が完全に聞こえなくなったことを確認し、
隣室で眠る高町恭也の寝息を確認した上で、
紗霧は、猫撫で声で、まひるに話しかけた。
「さて…… 広場まひる」
「はひ?」
「あなたは、自分が女性であると主張していますね」
「残念ながら世間の風当たりは強いですが」
「世界があなたを否定しても、私は貴女を認めますよ。
あなたは女の子。貴方ではなく貴女。まちがいない」
「広場さんは女の子。だれより素敵な可愛い子」
紗霧の優しい囁きを、ユリーシャが補強する。
腹にイチモツ抱える者同士、意外と息の合うところを見せている。
しかし、腹芸に鈍感なまひるは、彼女らの含みに気付くことなく、
素直に嬉しくなって、調子に乗った。
「でへへぇ…… やっぱり? そう思っちゃいます?
やだなーもー、いくらホントのこととは言え、照れちゃうなー」
「で、純潔ですか?」
「ぶうううっ!?」
紗霧の問いは突然跳ねた。
予想もしない方向に、恥ずかしくてならぬ内容に。
まひるは顔を真っ赤にして抗議する。
「不埒、不埒、極めて不埒っ!!
そーゆーデリケートな問題を尋ねるときは、オブラートに包むってゆーか……
てゆーか、そもそも何でそんなこと聞かれなくちゃいけないのさ!」
「理由はあります。ユリーシャさん、適格者の部分を」
「はい」
ユリーシャはモバイルPCの液晶画面をスクロールさせた。
そこには、木星のブルマーの兵器性能と適格者の条件が表示されていた。
―――ブルマー衝撃波
―――ブルマーミラージュ
―――ブルブレイド
―――ブルマーの輝き
「これなんていい意味で酷いですよ、大陸弾道ブルマー。
NK民主主義人民共和国世襲元首がテポドンミサイルを発射する!」
「なにそれ、ふざけてるの!?」
「それは履かなきゃわからない」
その後も、まひる、黙読することしばし。
読み終わると同時に、諦めたような溜息をついた。
「わかりましたか、大事なことなんです。
答えなさい。あなたのエッチ経験を赤裸々に」
「う…… わかるけど、わかるけどさあ!
だったら紗霧さんとユリーシャさんも言ってよ
あたし一人だけ告白なんて、そんなの恥ずかし過ぎ!」
「私が適格者だったら、いちいちあなたに聞きません」
「ランス様に…… 可愛がって頂いております……」
キレ気味に言い捨てる紗霧。
夢見る瞳で語るユリーシャ。
共に即断。
「ま、まあ…… ピュアであることに、誇りと劣等感をもってるけどさ……」
その勢いに、結局は正直に答えてしまうまひるであった。
「なら決定です。履きなさい」
「……そーくるよね、やっぱり」
可愛くぐずりながらも、まひるは装着に同意した。
どの道体操着。
レギンスからブルマーに履き替えること自体に、さほど抵抗感はなかった。
「履き替えたけど?」
「では、ブルーミングしてみましょう」
「ブルーミング?」
ユリーシャは黙って液晶画面の該当項目をスクロールさせる。
―――ブルーミングとは。
―――装着者の性的興奮を基準とする発汗や発熱、愛液によって、
―――ブルマの内部のムレムレ度を高めることである。
「……」
「……」
「……オカズが必要でしたら、パンチラまでなら協力しますよ?」
「やっぱりオトコのコって思ってんじゃん!!!」
↓
(ルートC)
【グループ:紗霧・ランス・まひる・恭也・ユリーシャ・野武彦】
【スタンス:主催者打倒、果し合いに臨む】
【備考:全員、首輪解除済み】
【現在位置:D−6 西の森外れ・小屋3】
【ユリ―シャ(元01)】
【スタンス:ランス次第】
【所持品:スペツナズナイフ、フラッシュ紙コップ】
【月夜御名紗霧(元36) with ナース服】
【スタンス:状況次第でステルスマーダー化も視野に】
【所持品:グロック17(残弾 16)、金属バット、ボウガン、対人レーダー、指輪型爆弾】
【備考:疲労(小)、下腹部に多少の傷、性行為嫌悪】
【広場まひる(元38) with 体操服 & 木星のブルマー】
【所持品:グロック17(残弾 16)、せんべい袋(残 13/45)】
※木星のブルマーは、まひるが適格かもしれません。
※適格ならばレベル1のブルマー技が使用できる筈ですが、
※ムレムレ度を上げることが至難です。
【現在位置:D−6 西の森外れ・小屋3 → C−4 隠し部屋】
【魔窟堂野武彦(元12)】
【所持品:454カスール(残弾 3)、鍵×2、簡易通信機・小、
軍用オイルライター、ヘッドフォンステレオ、まじかるピュアソング
カスタムジンジャー(←共有物)、斧(←共有物)】
【西の小屋内・グループ所持品】
[日用品]
スコップ・小、スコップ・大、工具、竹篭、救急セット、薬品・簡易医療器具
白チョーク1箱、文房具、生活用品、指輪型爆弾
[武器]
小太刀、鋼糸、アイスピック、斧×2、鉈×1、レーザーガン、メス
[機器]
モバイルPC、USBメモリ、プリンタ、分機解放スイッチ、解除装置、
簡易通信機・小、簡易通信機・大、簡易通信機素材(インカム等)一式×5、
カスタムジンジャー×2
[食料]
小麦粉、香辛料、干し肉、保存食
[その他]
手錠×2、メイド服、SPの鍵×4、謎のペン×15
【タイトル:SPI-04:『神語の書』〜あなたの知らない世界〜】
(ルートC:3日目 PM04:00 C−4 山中)
「思ったより大規模に崩れておるの…… くわばらくわばら」
ジンジャーを竜神社に乗り捨てて一時間余り。
魔窟堂野武彦は、敵の本拠地跡を発見した。
座標C−4。
島北西部に位置する山岳地帯。
地下に掘りぬかれていた基地は発破により支柱が破壊された為に崩落し、
山肌を巻き込んでクレーターの如く陥没していた。
底は見えず、砂埃は未だ治まっていない。
「なんとしても手に入れたい紙片なのじゃがなあ……
やはりこの崩落に巻き込まれてしもうたかのぅ」
スペシャルアイテム04『神語の書(一枚)』。
03『木星のブルマー』と同じく、USBメモリから読み取ったその効能とは。
―――世界を書き込んだ内容に改変する
御陵透子の【世界の読み替え】に等しいものであった。
否。記入者の任意に改変できるのであるから、それ以上であると言える。
その凄まじき効力ゆえに、たった一枚しか用意できないのであろう。
さて、そのアイテムの現在位置であるが。
野武彦の悪い予想を裏切らず、地盤崩落で地中深くに没していた。
ケイブリスでもいれば掘り起こしも出来ようが、
今の小屋組の力で、小屋組の装備で、それを入手することは、
残念ながら不可能であった。
「残念じゃが、単独では如何ともしがたいのぅ」
足場は不安定。
下に降りるルートも皆無。
その上、いつ二次崩落が発生してもおかしくないきな臭さを漂わせていた。
故に、野武彦はクレーターを降りることを諦めた。
しかし、神語の書の捜索を諦めたのかというと、そうではない。
日没までには、まだ一時間以上の時間がある。
C−4地区の捜索は始まったばかりである。
野武彦は更に山を歩く。
注意深く周囲の岩や地面に目を凝らして、人工物を探しながら。
ごろごろと礫岩が無造作に転がる斜面を、禿げ山を、登る。
「あれは……」
足早に傾斜を登った野武彦がたどり着いたのは、
岩肌をドーム状に開いた、オープンルームであった。
テラスの中央には、巨大な投擲機が鎮座していた。
主催者基地・カタパルト投擲施設である。
この施設のみが崩落を免れたのは、偶然ではない。
二つの理由によって、守られていた。
カタパルトそのものの重量や投擲にかかる運動エネルギーの負荷を考慮して、
足元に空洞が無く、地盤が強固で、基地から距離をやや隔てた位置に
この施設が配置されていたという、設計事情が理由の一つ。
もう一つの理由は、発破の実行犯・レプリカ智機P−22が、
カタパルト投擲にての脱出を安全に成すために、
この施設に影響を与えないよう計算し、爆弾・爆薬を設置したことである。
「シークレットポイントでは、なさそうじゃが……」
呟きとともに、野武彦は室内を調査する。
中心施設であるカタパルトは、磨耗により破損していた。
コンソールも無通電により電源が入らなかった。
その他機器もコンソールに同様であった。
ただ一台。
バッテリー残量があったことが幸いし、ノートPCのみが起動した。
「ふむ、収穫はこれだけかの」
その端末は、代行N−22が拠点崩落の直前まで使用していた端末であった。
管制室の情報集積サーバのミラーリング機であった。
野武彦に奪わせたUSBメモリのデータは、
この中のデータを厳選し、コピーをとったものであった。
つまりは。
N−22の選別から漏れたデータが、そこには眠っている。
N−22が選択的に除いたデータも、そこには眠っている。
その眠れるマシンを。
野武彦は、起こしてしまったのである。
野武彦の知らぬ智機世界のOSが、二十秒ほどで立ち上がる。
デスクトップには、幾つかのモニタリング情報へのショートカットが
整然と並べられていた。
その中に、一際目を引くフォルダがあった。
【死亡者情報】
ドクン。
その五文字を目にした瞬間、野武彦の心臓が跳ねた。
ドクン。
野武彦の額に、脂汗が流れる。
ドクン。
まるで酸欠の金魚の如く、口をせわしなく開閉している。
ドクン。
ちりり、ちりりと。
野武彦のこめかみが、鳴っている。
(知佳殿やアイン殿は生きているのか?)
それを、知ることができる。
それは、大きな収穫である。
だが、ここで得られる情報は。
得てしまう情報は。
決して、それだけに止まらぬ。
(ボウガンの出所は? 秋穂殿を殺したのは?)
野武彦の胸中の奥底に、ずっと眠らせていた思いが、
棚上げしていた疑念が、鎌首をもたげた。にゅるり。
(ここで、軍師殿が秋穂殿を殺しておらぬことを確認できれば。
わしの憂いは全て無くなる。
心底軍師殿を信じ、迷うことなくその指示に命を賭けられる)
月夜御名紗霧の作戦立案・指揮能力は、
巨凶ケイブリスを相手に完璧に証明された。
故に、小屋組はモチベーションが上がっている。
仲間意識が高まっている。
(……そうでなければ?)
恭也の疲弊。透子の監視。
決して順風満帆とは言えぬ現状ではある。
それでも、希望は胸にある。
団結力を以って難局にあたる覚悟がある。
(軍師殿が秋穂殿を殺したことが確認できてしまったら?
その時、わしはどうなる?
迷い無く軍師殿について行けるのか?)
その中心に、間違いなく紗霧がいる。
大小差異はあれど、誰もが紗霧の才に頼っている。
果たして、彼女に信を置けなくなったとき、
小屋組は連合としての形を保てるのか?
(ならば、知らぬままでよい。ままがよい。
疑念は奥底に沈めたまま、ただ眼前の戦いを戦えばよい。
これまでだってそうしてきたのじゃ。
これからも……)
これからもそうするだけ。
野武彦はそう己に言い聞かせようとした。
(これからも……)
しかし、出来なかった。
既に、禁断の果実に触れてしまった故に。
知ることができることを、知ってしまったが故に。
(……)
野武彦は硬直する人差し指をゆっくりと伸ばし。
タッチパッドで矢印ポインタを動かしてゆく。
己の吐く息で白く曇った瓶底眼鏡。
その奥にある瞳の色は、窺い知れぬ。
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
「おおっ…… おおっ……」
魔窟堂野武彦が、慟哭していた。
あまりにも深い絶望に捕われて。
『若い命を無駄に散らせぬ為に、我ら老骨がこの身を擲とう』
あの夜の森での誓いを、野武彦は思い出す。
その神聖で熱い男の誓いが、汚されたように感じられていた。
【死亡者情報】
【プレイヤー動向】
これら管理資料の最終更新時間は、昨晩20時15分。
管制室の発破に伴うサーバ破壊の少し前の時間であった。
それでも、彼が欲していた情報の凡そは網羅されていた。
朽木双葉とアインが、既に死亡していること。
仁村知佳としおりが、未だ存命であろうこと。
保護対象と思われていたしおりは、ゲームに乗り、
一人と一機を殺害/破壊していたこと。
有用な情報は、それだけであった。
不要な情報は、他の全てであった。
月夜御名紗霧――― やはり、であった。
紗霧は二人殺していた。
しかし、野武彦の疑念とは関係のない殺人であった。
予想の埒外にある、予想をはるかに上回る殺人であった。
野武彦は北条まりなに聞いていたのである。
彼女の最初の同行者・木ノ下泰男が如何にして絶命したのかを。
村落の雑貨屋に仕掛けられた罠は、
明らかに無差別に命を狙った罠であったのだと。
そしてまた、首輪は罠師であった頃の紗霧の呟きを、何度か捉えていた。
その音声情報もまた、野武彦は耳にしたのである。
言葉少なに、しかし楽しげに。
紗霧は罠に掛かった哀れな獲物をこき下ろしていたのである。
ユリーシャ――― まさか、であった。
ユリーシャは仲間を手酷く裏切っていた。
アリスメンディと篠原秋穂を殺していた。
恐らくは嫉妬心と独占欲の為に。
相手の油断を突き、確固たる殺意を持って、手を下していた。
ランスに気取られぬよう、嘘に嘘を重ねて、隠蔽していた。
それをおくびにも出さずに、か弱い風を装って。
清楚な顔をして、優雅な物腰で。
彼女は、今もなお、ランスの脇に侍っている。
その擬態、あるいは本性。
なんと悍ましく、恐ろしいことであろうか!
ランス――― これほど、であった。
血の気が多く、唯我独尊な性格をしていることは分かっていた。
彼と合流したばかりの頃の恭也との遣り取りで、
人のひとりやふたりは殺しているであろうと予想はしていた。
それは事実であった。
ランスは2人のグレンを殺していた。
姓無きグレンは、仕方ない。
知佳を愛娘と勘違いして飼い殺そうとした狂人である。
その一刀両断っぷりはさて置き、応戦するのは理解できる。
だが…… もう一人のグレン。
コリンズ姓を持つ異形。
ゲームに乗るを良しとせず、島からの脱出を図っていた男。
この男を殺した事実を、野武彦は許せなかった。
対立の末、殺したのなら、しかたない。
誤解の末、殺したのなら、諦めもつく。
そうではなかった。
単に邪魔だから殺していた。
紗霧のみならず、ランス、ユリーシャもまた外道。
世界の悪意害意を、野武彦は一身に浴びてしまった。
それはまさに、パンドラの箱。
故に。伝承をなぞるかの如く。
箱の底に残る希望もまた、在った。
「だが、わしには、恭也殿がいる!」
恭也は見事に、男であった。日本男児であった。
ワープ番長との速度勝負に敗れ、一度は情けない姿を晒しもすれど。
彼の戦いは全て、他者を守るための戦いであった。
ただの一度とて、ゲームに乗ったことなどなかった。
野武彦が目を通した全ての管理資料が、それを裏付けていた。
「そう、ああいう益荒男は死んではならぬ!」
再び虚空に力説する。
そこに、広場まひるの名前が、無かった。
じっちゃん、まひるちん。
気安い仇名で呼び合うほどの仲となったにも関わらず。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています