天童城
盤上遊戯において……或る一定の段階にまで技量が到達すると、
指し手の中には、駒にそれぞれの心象を見ることがあるということを。

そして――勝負師特有の陶酔状態へと至り、
喩えようのない万能感を覚えるまでになる……。

それが、将棋と深い関わりを持つ私のような業を抱えた城娘ならば、
尋常ならざる程度で、然様なる感覚を体感することができるのです。

前田金沢城
……うーん。ちょっと天童城ちゃんの言い方は
難解だけど、言いたいことは何となく分かるよ。

要はアレでしょ? 神懸かった状態になる時があるってことだよね?

盤上にあっては時々、全てを支配できているような一局があるからね。
ああいう時は、確かに自分が神様になったような心持ちがするもんさ。

天童城
ええ。だからこそ、私は己が業と能力を
極限状態の中で最大化させることで、

歪になった此世の原因を突き止めようとしたのです……。

山形城
ということは……まさか、ぬしは…………。

神授の一手を放つと称して……あの時、
本当に神との接触を成したとでもいうのか?