「おまえは、ただ命を視ているだけだ。死を理解なんかしていない。
だから俺も殺せず、弱りきった女しか殺せない」

脳髄が、白熱する。

「―――な、に?」
「死が視えているのなら、正気でなんかいられない。おまえに解るのは物を生かしている部分だけなんだよ。
死が視えるのなら―――とても、立ってなんかいられない」
「おまえ―――なにを」
「……物事の『死』が視えるという事は、この世界すべてがあやふやで脆いと言う事実に投げ込まれることだ。
地面なんて無いに等しいし、空なんて今にも落ちてきそう」
「なにを―――何の事を言っているんだ、おまえ」
「……一秒先にも世界すべてが滅んでしまいそうな錯覚を、おまえは知らない。
―――それが、死を視るという事なんだ。
この目はさ、おまえみたいに得意げに語れる力なんかじゃない。
それがおまえの勘違いだ、吸血鬼。
命と死は背中合わせでいるだけで、永遠に、顔を合わせることはないものだろ」
「だから―――その目で私を見るなと言っているだろう……!」
走ってくる足音。 けど、俺のほうが何倍も早い。

「―――教えてやる。
これが、モノを殺すっていうことだ」



読んでるこっちもお前は何を言ってるんだ!?状態だよ