だが厚労省は今年3月、今後の人口減少などを考慮すると、医学部定員が16年度の水準で進んだ場合、
40年度には1万8千人〜4万1千人過剰になるとの需給推計を公表。
有識者会議では「最近は粗製乱造の感がある」との意見も出た。

 医療現場からは「司法制度改革で増えた弁護士の状況と同様に、患者の奪い合いが生じる」(大学病院勤務医)との不安も。
日本医師会(日医)は昨年「情勢の変化を踏まえ、早急に定員削減を行うべきだ」との提言をまとめており、
厚労省には関係者から「有識者会議の中間報告に『削減』の文言を明確に盛り込んでほしい」との声も寄せられたという。

 5月にまとまった中間報告は、19年度までは現在の医学部定員数を維持し、20年度以降は「臨時増員などの効果を検証して結論を出す」との表現に落ち着いたが、
厚労省は「現実的には増員は考えにくい」。ある委員は「当然削減は視野に入っている」と解説する。

ただ医師が増える中でも、地域や診療科の偏在は依然として解消されていない。
14年末の人口10万人に対する医師数は、最多の京都(約307人)と最小の埼玉(約152人)で2倍の格差に。
産科・産婦人科や外科の医師数は、相変わらず訴訟リスクや長時間労働への警戒感から伸びが鈍く、
九州の大学病院で働く医師は「増えた医師が本当に足りない所に流れていかないことが問題だ」と指摘する。

 臨床研修制度で都道府県別の募集定員に上限を設けて適正配置を図ったり、地域定着を促すため都道府県による奨学金制度を導入したりと国も対策を取ってきたが、
問題解決の決定打にはなっていない。医師のあっせんを手掛ける「地域医療支援センター」も十分に機能しない状態という。

 有識者会議は偏在解消策の取りまとめを急ぐ構えで、診療所などの開業条件に
「特定の地域・診療科での一定期間の勤務」を加える案なども検討する。
ある勤務医は「地域や診療科ごとに医師の定員を決めている国もあり、そのくらいの大なたを振るわないと効果はない」と話す。