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まりまり;−;

『なぜ山に登るのか?――そこに山があるからだ』
そんな有名な言葉があるけれど、答えになってねーじょん、と振り子も思っていた。
あのレスを見るまでは。


総合ができてからというもの、毎日毎晩電気を消してからでさえも、スマホを布団に持ち込んではそこを眺めるのが振り子の日課になっていた。
もう、五年以上だ。
小学生が成長し甲子園のマウンドに立つのと同じくらいの時間を、振り子はそこで過ごしていた。
時折荒れることはあっても、暖かい総合は確実に振り子の心を癒していた。そして何より。
「明日はお出かけだお^B^」
ブルーライトの明かりの中に浮かび上がった唇の厚い顔に、思わずほっとする。
あいつがいる、という喜び。けれど、その顔文字の前の文章を読んでから、その喜びは何か言い知れない感情に変わった。
明日あいつはどこに行くんだろう。ぶさ子とは長い付き合いだけど、プライベートのことはほとんど知らない。
(……知る必要もないけど)
ここでは過度なリアル話は禁じられている。だから振り子は聞くことはできないし、聞こうとも思わない。だからいつものように、ぶっせえ^p^と打って送信する。
――いや、本当はリアル話禁が理由ではない。
(わざわざ書き込むということは特別な、例えばデートとかそういう外出なのかな。それともただの何気ない書き込み?それならいいのだけれど)
明日の予定とかそれくらいの話なら、ここで話しても全く問題はないのだ。
もしもデートだなんて返されたら、自分がどんな気持ちになってしまうのか。そう想像するのが怖かった。
(だって、最近ぶさ子を見ない)
現実で誰かと結ばれた人はここに来られなくなる。
振り子は目を擦って、その行為を眠気のせいにすることにした。
さみしいだなんて、絶対言わない。