ナイバッチきつみは 今日も頑張っていこうな
>>189
帰りの電車の中はそこそこ混んではいたが、二人が座れるくらいの空きはあった
散々泳ぎまくったきつみはは俺の肩に頭をつけてくぅくぅと寝ている
車窓から見える景色は山深く緑の多いそれから段々と街の色へと変わっていく
あれから俺ときつみはは急いで帰り支度をし、河原を離れた
吊橋を渡っている途中で、あの若い男が目覚めて起き上がるのを見てほっとしたが
やはり見つかると色々と面倒くさい事になりそうなので急いで駅へと向かった
男が撮っていたきつみはのペンギン画像は何とか消去できた
もしあの画像が・・・きつみはの可愛らしい姿が何かの拍子に世間に出回るようなことになれば
きっと変質者が現れてきつみはを悩ませることになっただろう
そうだ、これでいいんだ・・・
隣で寝ているきつみはが体勢を崩して席から落ちそうになった
「おっと・・・」
急いで席に戻し、また俺の肩を枕にしてやる
荷物の中にはあの川魚が入ったタッパーがある
保冷剤を多めに持っていったからそれで冷やされ、鮮度が落ちることも無い
なんだか不思議で忙しい日だったな
しかし何で川魚があんなところに入っていたのだろう?
確かあれはきゅうりの漬物を入れておいたやつで、そのきゅうりもいつの間にか無くなっていた
きつみはが川の中で見たという早く泳ぐ黒い影というのはいったい・・・
もしや、もい・・・
「うん・・・着いた?」
途中の駅で電車が強めのブレーキをかけて停まり、その弾みできつみはが起きてしまった
「まだだよ、もう少し寝ていてもいいぞ」
「ん・・・でも起きる」
泳ぎ疲れたきつみはは眠くて仕方ないという顔をしていた
「ねえ、あの魚・・・今日の夕飯になる?俺、食べてみたいな」
「ああ、塩焼きにして食わせてやるよ」
車窓の向こうは夕日に照らされた街が見えた
もう少ししたら、俺たちの家のある駅に着くだろう
それまで二人、楽しかった余韻に浸りながら電車に揺られていこう つづく