箱根学園自転車競技部と新開隼人の衝撃 新開さんとの遭遇
初めてのミーティングに行こうと、エレベーターを待っていた。そのとき、エレベーターから何人かの選手が降りてきた。
そのとき、あれっ、誰がいるんだ、という強烈なオーラを発する人がいた。
最速のスプリンター、新開さんだ。
ボーって、頭が真っ白になった。こういうとき、人間の頭って、ポーンとどっかに飛んでいくんだということを知った。ふと我に返って、オイ、僕は何をしなきゃいけないんだと考えた。そうだ、挨拶しないといかん。
「はじめまして、新開さん、新入部員の泉田塔一郎です。よろしくお願いします」
そうしたら新開さん、こう言った。
「あーっ、アブでしょ」
その先のことはもう、何も覚えてない。もっと真っ白になった。
ミーティングでは福富が何かしゃべってたけど、何も聞こえてこなかった。福富には申し訳ないけど、でも、仕方がない。一番前に座っていた新開さんとことが気になって、しょうがなかった。
新開さんからいきなり「アブ」と呼ばれてしまったのだから、天にも昇る気持ちだった。