頑張ったなきつみは!よし、今日はシーフードでお祝いしような、サラダでもピザでも好きなのを食ってくれ!

テレビでは春の嵐と言っていが嵐いうよりも台風のほうが近いのではないかと俺は思った
昨日からの低気圧による強風は俺の周りでも被害をもたらしていた
家にいても家が揺れ、外に出ても体ごと持っていかれそうなくらいな風にあおられて凄く歩きづらい
こんな日は外出も諦めて家に篭ろうかな、と踵を返しかけた時、それは飛んできた
「うわー!!!」
俺の目の前を何かが悲鳴を上げながら飛んできた
学生と思われる服装の薄い茶色の少年は体ごと強風に飛ばされていた
「た、助けて!」
必死に助けを求めるその少年に俺は見覚えがあった
「三橋!三橋じゃないか!」
俺へと差し伸べられた手を掴もうとしたが、風が強すぎて三橋はまたどこかへと飛んでいってしまった
あまりの出来事に呆然としていると、またどこかから「うひゃあ!」と悲鳴に似た声が聞こえてきた
風の中を小さな茶色いものが飛んでいた
子供くらいの大きさで軽いのか、文字通りに風に飛ばされて宙に浮んでいる状態だった
「おい、こっちだ!俺の手を掴め!」
小動物の様な毛皮を纏ったその子供は俺に向かって必死で手を伸ばしたが、またしても風に飛ばされて行ってしまった
何なんだろう・・・この風はあまりにも酷すぎる・・・そして飛ばされてくるものも・・・
その時、俺の目の前を黒い塊が飛んでいった
その直後、背広姿の禿げた中年の男が、その黒いものを追いかけるように飛ばされていった
「ま、まって・・・俺の髪の毛・・・」
どうやら男はとうちゃんで黒いものはヅラの様だ
まったく・・・今日は風だけじゃなくて変なものまで飛んでくる もう家に戻ろうか、と思いかけた時、それは飛んできた
「あ〜れ〜 た、たすけて〜」
今度飛んできたのは着物に白い割烹着姿のかあちゃんだった
着物の裾が乱れるのを手で必死に押さえている
「こっちだ!掴め!」
かあちゃんは俺の助けの手を掴もうとして着物の裾から手を離したとたん、次の強風に飛ばされた
あ〜れ〜、と飛んでいくかあちゃんの着物は裾を乱れに乱れ、中が丸見えになってしまった
今日のかあちゃんの下着の色は白・・・うん、何かいい日になりそうな気がした どっとはらい