ナイバッチきつみは
月曜から中々の出だしだぞ
今週ものんびりゆっくり、焦らずいこうな

青い空、白い雲
その中を泳ぐ様々な色の魚・・・
それを見つめていたきつみはは、堪らないとでも言うよな顔をしている
「鯉のぼり・・・ああ・・・」
前ははしゃいでいたが、今年はそれに羨望のまなざしを向けるようになっていた
黙ってじっと見つめていたかと思うとうっとりとした表情で
「ああ・・・」と少し怪しい声を出す
きつみはにこんな声を出させるなんて、鯉のぼりと稲荷寿司くらいなものだろう
きつみはは鯉のぼりが好きだ
それも異常なまでの執着を持っている
眺めているだけなに普通だが、鯉のぼりの中で眠ったり、鯉のぼりに乗りたい
自分も鯉のぼりになりたい、などと段々と欲求が募ってきている
鯉のぼりの何がきつみはをそうさせるのか、俺には判らないところもあるが
あいつがそれが好きならそれはそれでいいのだと思う
だが、そんなきつみはの鯉のぼり好きを逆手に取ったある事が俺たちを悩ませることになるとは・・・
それは数日前、水谷が俺を訪ねてきたことから始まった
「なんだ、久しぶりだな きつみはなら今は出かけて・・・」
「だから来たんですよ俺さん」
水谷のその言い方に、俺は察するものがあった
「きつみはに関することか?最近は静かになったと思ったんだが」
「ええ・・・また変な奴がきつみはさんの周りを・・・というか
変な姿をした男が町内で目撃されていまして、それがきつみはさん目当てじゃないかと推測されるんです」
ふむ・・・きつみはに直接じゃなくて他で目撃か
それでも目的は明らかにきつみはだとわかる様な・・・どんな奴だ?
「それで、その変な姿をした奴というのは?」
「俺たちも直接は見ていないのですが聞いた話だと・・・成人の男でその様相は・・・魚・・・鯉の様だと
男の姿を見た人たちからは「鯉のぼり男」と呼ばれているようです」つづく