吉田健一×安彦良和 (1)

(中略)
安:実は今日のためにエウレカを見て、「どうしようかな、俺生意気なこと言いそうだな」とも思ったりも
 したんだけど、吉田さんだっていうこと出てきたんですよ。(中略)で、エウレカでは総作監を?
吉:いちおうメインアニメーターという名前で、全カット自分のところを通してもらっています。
安:そうすると全話なんらかの形で手は加えているわけだ。第1話は作監?
吉:第1話は作監です。1話に関してはレイアウトから原画まで、かなりのところまで手を入れてました。
安:第1話は、作画はすばらしかったと思うよ。2話以降の演出はもっぱら「?」なんだけれど。
 作画については第2話以降もね、第1話が非常にいいから多少落ちて見えるけれど、
 じつにナイーブな感じで「よく維持なさっているな」という感じが強いですね。
(中略)
安:あの、最初に演出の話をしたんだけれど、察するに、演出とあなたとの間に軋轢があるんじゃないの?
吉:え!正直、僕自身も安彦さんにそこを突っ込まれるとは思わなかったです。軋轢というか・・・。
 たとえばエウレカなんかも監督と話をして合意してもまたズレてくるんですよね。その辺の齟齬は、
 べつの人間だから当然なんですけれど、なかなかキャラクターをつくることと、自分の妄想を働かせることと、
 ドラマを考えていくこととの間でずいぶん引き裂かれている感じがするんです。
 だから時に「ちょっと違うんじゃない?」という気分に陥るときもあるんですよ。
安:第1話から順番に見ていって、第6話で「うーん、もういいな」って思ったって感じになったのね。
 それは率直にいって演出に対してなんですよ。こういう話をムック本に載せてどうかという気もあるんだけれど、
 どうせだから率直に拾っていただけると、いいなと。いろんな意見が出ているんでしょ?
吉:あると思います。
安:はっきり言ってしまうと、監督さんが何をおやりになりたいかわからないんですよね。
 監督さんは若い方のようだけれど、主体的にものをおつくりになる立場がおありなのだったら、
 監督さんが未熟なんだとしかいいようがない。
吉:・・・はい。