少しずつ上向きになってきているな、きつみは
この調子でゆっくりといこうな

>>577
三橋を守るため
その為に繁盛していたこの店をあっさりと畳む
俺はその時になって初めて、三橋と阿部の関係を考えた
今までは同じ店で働く同僚で、美味い料理を作るシェフで客あしらいも良いほうだ
そして三橋とは仲が良いと思われている
「あ、あの・・・あんたは三橋とはどんな仲なんだ?」
「ん・・・学生時代から付き合いは長いほうだな」
そんなに長く、か
なら店でしか知らない三橋のもっと他の部分も良く知っていても不思議ではない
「あいつは・・・昔からあんな感じだったが努力家でもあってな
色々あって店でもやろうかって時に俺を誘ってくれたんだ」
ん?三橋が阿部を誘った?
「元々この店はあいつの爺さんがオーナーで・・・
あいつは一応店長の肩書きもあるんだがそんな風には見えないだろ?」
またまた初めて聞いたぞ
あんなオドビクした三橋が飲食店の店長なんて無理があると思う
「それでもあいつ、任されたからには頑張るっ!と張り切っていたんだ
で、俺も誘われたというか巻き込まれたというか・・・俺にシェフをやれとか何を考えているんだよと思ったよ」
はあ、そうですか・・・でも料理の腕は確かですね、阿部さん
「こっちもやるからには徹底的に勉強したし、三橋も接客を1から学んだ
この店の料理のほとんどは俺が作っていたんだが、その味を決めていたのは三橋なんだ」
それも初耳だ!
あの美味い料理のほとんどが三橋の指示通りの味付けとは・・・ということは三橋の味ということか!
「あいつは食いしん坊で、美味いものなら高級料理だろうとファストフードだろうと食いまくる
それで舌が肥えていったんだと思う だけどな、料理だけじゃ店は続けていけないんだよ」
阿部は目を閉じると大きくため息をついた
「店が繁盛してくると、こんどは客の中から三橋にちょっかいを出す奴が現れたんだ」 つづく