0603fusianasan
2019/02/20(水) 12:40:14.73>>593
阿部の口からは今までの事が次々と語られる
俺のその内容に驚きつつも、何故に三橋が自分の店を畳まざるを得ないのか知っていった
「ちょっかいを出す?昨日の客みたいにか?」
昨夜、閉店時間にやってきて三橋を見つけて騒ぎ、ひと悶着あった客たちを思い起こす
あいつらの様子では、前にも三橋を知っていて、三橋を探していたと推察できた
もしくは、店で三橋に言い寄り押し倒した奴
あの時は周りの連中で止めたりしたが結局は阿部の一撃で騒ぎを収めることができた
「いや、昨日の奴らは前の店の常連だ
三橋に手を出すほどではないがそれでも騒いだりして迷惑な客だったがまだ可愛い方だったな」
ということはもっと酷い客がいたのか?それは一体どんな・・・
「実はな、店を畳むのは今回が初めてじゃないんだ」
阿部の話は続いた
初めての店は半年で畳んだという
始めは慣れないことばかりで客足も伸びなかったが、それでも徐々に常連も増えていき、軌道に乗っていた
だが客の中に三橋に懸想をする人間が現れ、他の客とトラブルになり三橋が病みそうになって店を畳んだ
二度目は最初の店とはまったく関係の無い、距離も遠い場所でここならと思ったが
やはり三橋がらみでの客とのトラブルで閉店することになってしまった
三橋は自分が原因だから・・・と裏方にまわるようにしても、今度はバイトが三橋に言い寄る始末
何回か場所をかえて開店と閉店を繰り返し、三橋と阿部の二人だけで切り盛りできる規模の店に落ち着いた
「この街なら大丈夫、と思ったんだが・・・うまくいかないものだな
客の質はいいし、三橋も働きやすそうだったし、何より三橋に何かあっても客が庇ってくれていた」
確かに三橋を押し倒した暴漢を店に居た客たちは止めようとしてくれていた
その後も客足は落ちずに常連の顔ぶれも変わらなかった
「この前の店は酷かった・・・徒党を組んだ一部の客たちが三橋を浚うなんで馬鹿な事をしでかした・・・すぐに助け出せたけどな
理由が三橋が好きだから、三橋でチョコファウンティンをする計画だったとか喚いていたが、意味が判んないよな・・・あ、そうだ」
阿部は突然、店の奥へ行くと、すぐに戻ってきた
「もう渡すことも無いだろうからあんたもらってくれ」
可愛い印刷のされた小さな紙袋を受け取り中を見ると、一口大のチョコがいくつか入っていた
「客用に用意したバレンタイン用のチョコだ アレの件でチョコが苦手になったが、この店の客には渡したいと用意していたんだ」 つづく