ああ疲れた。今日は心底参った。ベテランの○○さんがギックリ腰で動けなくなったらしく欠勤、もう一人の先輩は娘が発熱で看病のため欠勤。
俺が代わりに案件を引き受けたものの、取引先からメールでやれここは違うのではないかだの、やれそこは説明がわかりにくいだのと。何度も応酬した。
フン、読解力がない奴とは会話にならんな……と、自分を納得させる。力量不足なんかじゃないぞ断じて。
まあいい。もう俺は家に着いたんだからプライベートの自分に戻ろう。そう思いながらコンビニで買ったビールとつまみの貝柱を開けた、はずが、気付くと空っぽだった。
飲食した実感がないから流し込んだんだろう。相当疲れてるな……
そうだ。左胸ポケットからケータイを取り出す。元気回復の方法があった。毎日ではないがほぼ日課となっている、可愛い三橋君宛のメールを送ること、それ即ち。
「こんばんは! 部活は決まったのかな? 俺は忙しくて疲れちゃったよ、誰かマッサージでもしてくれないかな〜」
送った。野球部に入るかもしれない、というのは少し聞いていた。
マッサージというのは、つまり遠回しに三橋君にけしかけているわけで。無理にとは言わない、会いたい。ただ会いたい。モミモミしてもらおうがもらわなかろうが会えればいい。
女々しくて辛いよ。
そして数分後、返事が来た。
「部活見学しました。オレは野球部に入ります。マッサージしてくれる人、みつかるといいです」
ありがとう。でもな、嬉しいことが今は苦しいよ。
俺のために願ってくれる君の優しさが痛いんだ。

ふと時計を見やる。夜9時台。
俺からの再度の返信をした。
「今電話できるなら、ワン切りしてくれ」