>>923
「なんでこんな事に・・・」
俺は作業の手を緩めることなく、ただ黙々と続けた
「稲荷寿司屋台大作戦」と名づけた先日の件は
一番の目標に対しては失敗ではあったが、別の意味では大成功だった
何故か俺は、あのきつみはの住む町内において
「稲荷寿司屋台の主に兄さん」として認識されてしまった
先日の件以降、きつみは家の前でこっそりと覗き見しようとしたところ
あの時の客のオバちゃんたちに見つかってしまい
「あら?今日は屋台はやっていないの?」
「あの稲荷寿司、美味しかったわよ また屋台で来てくれない?」
などと、高評価をいただいたのだった
そしてきつみは家の主である、あのメタボ男からは
「うちのがすごく美味しいからもっと食べたいとお願いされたよ」と
これまた好印象を持たれたようで、喜んで良いのか困ってしまった
そもそも、あの子の事を「うちのが」とか、どんだけ?
お前、あの子とどんな仲なんだよ?はっきり言って羨ましすぎだろ?
あ、話が脱線してしまった
そして俺は今、今日の屋台の稲荷寿司作りに明け暮れている
屋台はレンタルだけど、長期契約すると割安なんだよな
稲荷寿司も色々と調べて、あの子に美味しく食べてもらおうと研究した自信作なんだ
それに屋台を出すとなると食品衛生がどうの警察の許可がどうので大変だったんだよ
どれもこれも、あのきつみはという可愛い子とのつながりを持ちたいが為
今日は頑張って、種類を増やしてみたよ
なのに、俺が屋台を出しても、本人が買いに来ないのは何故だ?
毎回、あのメタボがやってきて、その場にあるのを全部お買い上げしてくれるんだよ、ありがとうございます
色々と思うところがあるが、いざとなったら俺、稲荷寿司の屋台で食っていける気がしてきた
いやいや、当初の目的は何処に行った?あの子と直接的な関係を持ちたいんだろ?
今のままじゃ駄目だ・・・もっと違う方法を考えなくては・・・
例えば、稲荷寿司、そして油揚げ
これ以上の、あの子の好きなものを、もう見ただけで全力で走りよってきそうな物を探さなくては・・・続く