私は鶴見中尉が大団円から仲間はずれになることはないと思います。
メンコには誰しも2面性があるという暗示が込められているのではないでしょうか。
鯉登少尉は鶴見中尉も自分自身も一人の人間として善悪両面あると考えている。
けれど自分のメンコを作る気の無い月島軍曹は自分のことを裏表のない存在だと驕ってしまっているのではないかと思うのです。
上エ地は牛山にメンコのように扱われていましたが、それは彼もまた二面性を持っているという示唆であり悪辣としか思えない彼のどこに善性があるのかと言えば、彼の言った金塊は誰にも見つけられないという言葉が真実ということなのでは。
啄木はロンドンの地図と札幌の地図の類似を提示してみせました。
これってようは刺青暗号もその例に漏れず広い北海道には刺青人皮と適合する土地などゴロゴロあって、永遠に金塊など見つからないということなのでは。
アイヌやその他の少数民族を滅亡に追いやるのは侵略者である和人やロシア人の彼らに対する無関心そう考えたウイルクは金の力でアイヌを強者にしようとした。金塊が見つからない限り、唯一の暗号の鍵である自分の娘が危害を加えられることはない。
そして彼女の歓心を得るためにアイヌは庇護され続ける。
ウイルクはロシアと戦うことをやめてしまった。
ソフィアを愛するキロランケはそれを許すことが出来なかった。
だがら尾形に根拠のない嘘を吐いてウイルクを撃たせた。
キロランケは金塊が存在しないことを知っていたのだと思います。
ウイルクとあれほど密接に関わっていたキロランケにどんどん莫大になってゆく金塊の存在を隠し通すことなど不可能だと思うので…。
なぜアシㇼパさんが必要だったかと言えばキロランケは変わってしまったウイルクの替わりとしてアシㇼパさんをウイルクと同じものにすることでソフィアにウイルクを返そうとしたのでは。そして尾形も金塊の実在を信じていないのだろうと思います。
けれど金塊は存在しないと暴露してしまえば金塊を得るために全てを投げうってきた人間たちの憎しみがアイヌ全体へと向かってしまう。
刺青人皮を破壊してもアイヌに累が及ぶことに変わりはない。
だから彼はアシㇼパさんが暗号だと思う言葉をもらって金塊の謎と共に一人で消えようとしたのかと。
内心は違えど上エ地と尾形は同じことを行ったのでは。