■ 2. 敵への敬意が転化した「私的な独占欲」

戦場では敵を讃える文化がある。だがこのロシア人にとって、それは単なる敬意を超えていた。
“私の山猫”――この言葉は皮肉でも愛称でもなく、戦士として同格でありながら、自分の射線の中にだけ存在してほしいという歪んだ独占欲の表現。
彼は相手を「獲物」ではなく「自分の世界の一部」として見ている。
敗北した瞬間、世界は二分された。
――自分、そしてあの山猫。
他のすべては背景にすぎない。

おっふ