音さんと基くんは、プラネタリウムのドームの中で並んで座っていた。
周りは真っ暗。頭上に広がる星空がゆっくりと動き始める。

基「音ちゃん、ほら、あれ見て。オリオン座だよ」
音「うわ、きれい……。あの三つ星のベルト、すごくまっすぐだね」
基「うん。昔の人はあれを見て、狩人の腰の帯だって言ってたんだって」
音「ふふ、基くんって狩人みたいだもんね。いつも私のこと、ちゃんと捕まえてくれるし」
基「捕まえてるつもりはないけど……逃げないでくれてるから、楽でいいや」
音「逃げないよ。だって——」

音がちょっとだけ基くんの肩に頭を寄せる。

音「私、基くんの隣が一番落ち着く星の位置なんだもん」
基「それ、俺の心の座標ってこと?」
音「うん。北極星みたいに、どこにいてもそこに戻ってきちゃう」
基「北極星って……俺、そんなに目立たないだろ」
音「目立たなくていいよ。私だけに見えればいい」