フライングいい夫婦保守。






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恭平は、うなじのにおいを嗅ぐのが好きだ。
セックスのあとでうっすらと汗ばんだ首筋を甘く噛むのも好きだ。
お互いの熱を分け合うように混ざり合って、荒く息をつきながらぐったりと沈み込む白い背中に散らばる長い髪を掻き分けると、
ぶるりと震えたスナコが寒いんですがと恨み言を吐いた。
わりぃ、と全く悪びれない軽い調子でうっすら笑って恭平は体を傾ける。
すべらかな膚をまっすぐ伸びる背骨にやわらかく舌を這わせて舐め上げた。
「や…あ、っ」
引ききらない余韻があらたな漣をつれてきて、スナコはか細く喘ぐ。
少しだけ掠れた甘い吐息にぞくぞくしながらゆっくりと脊髄まで確かめ、辿りついたうなじにかぷりと歯を立てる。
ぴくんと跳ねる正直な反応に、恭平は至極満足した。
鼻筋で生え際に潜りこむ。そっと息を吸い込むとシャンプーのにおいに混じってほのかに甘くスナコが馨る。
その慎ましいやわらかさにちょっとうっとりして目を細めた。
女の人工的なにおいを恭平はひどく嫌っていた。
たいていその強いにおいは突き刺すような視線だとか、物欲しげな甘ったるい声色と一緒にやってきて彼を辟易させたからだ。
「あ〜…落ち着くわあ〜…」
すんすんと鼻を鳴らし、首を曲げて流れる髪に顔を埋める。頤をすこし上向かせて形の良い耳を食む。
薄い耳たぶから耳殻をねぶってかたちをなぞり、わざと濡れた音をたてて舌先を捻じ込むと痙攣したように震える。
「やだ、あ、もぅっ」スナコが逃げようと身を捩るので、押しつぶさない程度に体重をかけて圧し掛かる。
「さみーんだろ、ほら、あっためてやっから暴れんなって」
「ちょ、なに、ばっ、…やぁ!」
ちゅぷ、と高く音を出して耳から口元を離し、またうなじへと。
今度は密やかに撫でるようにくちびるで愛撫する。
さらさらと背中からシーツに散らばる黒髪を全て片方に流し、そのまま先程舌で辿った薄い背を、今度は掌でさすりおろして行くとスナコの体がひくひく波打った。
「まっ、 ばかっ、また」するんですかとか細くあがった抗議が嬌声に変わる。
くるりとまろみを帯びた尻に恭平が忍び込んだからだ。
くちゅりと粘ついた水音をたてて、長い指が秘裂をそっと解していく。
「俺もさみーんだよ」
だからあっためろ。とばかりに指先を遊ばせてしまえばスナコはもう断れないと恭平は知っていた。

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中途半端にエロなしぶった切りすいません