探偵神宮寺三郎のエロパロないですか? 2
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0100222009/06/30(火) 22:17:49ID:CJoBuIfW
「先生、あの……」
 どこか気まずそうにその場を後にしようとする彼を、洋子は引き止めた。
「勝手に部屋に入って……すみませんでした」
「いや……」
「でも」
 神宮寺の声を遮り、洋子は微笑む。
「少しは書斎の掃除をした方がよろしいかと」

 しばし神宮寺は不意を突かれた様子で洋子を見つめていた。その唇が、ふと綻ぶ。
「……分かったよ」
 ドアを開けながら応じる彼の苦笑混じりの声から、ぎこちなさは消えていた。
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
 神宮寺をいつもと変わらぬ笑顔で送り出した洋子は、怠い体に力を入れた。

 今日はまだ、仕事を始めてすらいないのだ。今から疲れてなどいられない。

 自身を鼓舞して書斎を後にする彼女の足取りは、心なしか軽かった。
0101222009/06/30(火) 22:19:37ID:CJoBuIfW
終了です。
0103名無しさん@ピンキー2009/07/02(木) 22:12:44ID:UFZcWTPM
いつもながら素晴らしいです。
ゲームの続きなのも盛り上がって良い。
またその内書いてください!
0104名無しさん@ピンキー2009/07/05(日) 00:36:49ID:NsN7gKMe
エロい洋子さんはやっぱいいなぁ
次回作も楽しみにしております
超GJです!!
0106名無しさん@ピンキー2009/07/19(日) 10:41:06ID:cvUWEBwM
亡煙を捜せ!を再プレイしてから>83を読みました。
とてもうまい繋ぎかたですね。神宮寺にはもう少し見てたらとか思いましたがw
デスクに押し付けられてエッチされちゃう洋子さん素晴らしいです。
いつもありがとうございます。

あと、亡煙を捜せ!で、本田哲浩と話がこじれてホテルで食事、一夜を共に
しないと証言しないと言われて仕方なく、みたいのを妄想しました。
どなたかSSにしてほしいです。
0107名無しさん@ピンキー2009/07/22(水) 22:06:55ID:QBH/90Wr
調査中情報を得る為にやむを得ず体を…ってのは、なかなかムッハーなシチュかもな。
0108名無しさん@ピンキー2009/07/30(木) 22:15:57ID:iX8/vyyu
保守
0109名無しさん@ピンキー2009/08/11(火) 20:53:22ID:T7tEsaM2
新作の洋子の立ち絵見たんだが、黒のストッキング履いてた…
なんか、ドキッとした。
0110名無しさん@ピンキー2009/08/13(木) 17:01:43ID:8S2oHRCv
絵がKBに近いのが残念だな。
公式サイトのイラストの洋子なんか最初誰だかわからなかったw
0111名無しさん@ピンキー2009/08/22(土) 22:41:49ID:baaKba98
新作出るわ、アプリ配信のペースは早いわ、サントラ出るわ、最近の勢いはなんなんだろう。
嬉しいけど。
0112名無しさん@ピンキー2009/08/29(土) 19:52:30ID:fk+Ih+Us
Flashゲームのかすみさんにときめいた。でもあれもう神宮寺って感じじゃないよなw
0113名無しさん@ピンキー2009/08/30(日) 23:52:55ID:zScv//Og
アークのノリからしてエロゲ的だったりしたもんなぁ…
オーディションとかもう訳わからん
0114名無しさん@ピンキー2009/09/03(木) 20:04:25ID:hGT/VIcu
いにしえの記憶のスタッフコメントとかすごかったしねw
公式でああいうのやられるととまどう。
0116名無しさん@ピンキー2009/09/10(木) 17:11:54ID:quT9SfUq
新作まであと一週間。
そろそろこちらのSSも恋しくなってきたなぁ…
0117前スレ5972009/09/11(金) 11:30:21ID:lXtGDqFC
規制解除ktkr! 長かった・・・。
とはいえ筆は進んでおりません。
エロ無し系が多くなるかと思いますが、おいおい投下させていただきます。
011922 小ネタ2009/09/15(火) 20:26:58ID:4gTUm9ww
 事務所内に、パソコンのキーを叩く音と淡々とした男の声が響く。
 神宮寺の調査結果を聞きながら、洋子がそれを報告書にまとめあげているところだ。
 ほぼ毎日のパソコン操作に慣れた彼女の指は、滑らかに、そして軽快にキーボードの上で踊る。
 だが、この時ばかりは動きの鈍さを隠せなかった。

「……っ、は……」

 声音混じりの息が、緩んだ唇から漏れた。
 手は止まる事なく文字を入力していくが、その手つきはますますぎこちなくなっている。
 そのさまに気付いてはいるものの、神宮寺の報告の声は途切れない。彼女の脇から伸ばした両手の動きもまた、止まる事はない。
 助手用の椅子に腰掛けて作業する洋子は、神宮寺の手によって後ろから胸を揉みしだかれていた。
 薄手のブラウスのボタンは半端にはずされ、はだけた箇所からは膨らみの形の歪むさまが垣間見える。
 指を食い込ませ、掌を擦りつけるような丹念な愛撫を受けながら、洋子は神宮寺の報告に耳を傾け、パソコンと向き合っているのだ。
「んっ……うぅん……」
 言葉を区切る合間に、神宮寺は洋子のうなじに口付け、甘噛みする。
 吹きかけられる息と刺激に震える女の体を、彼は試すように弄ぶ。
012022 小ネタ2009/09/15(火) 20:28:33ID:4gTUm9ww
 調査内容を細部まで、焦れる程穏やかな口調で語りかける彼は、彼女がこのささやかな快感に耐えかねるのを待っていた。
「ああっ……」
 胸だけでは飽き足らず、神宮寺の片手が下方のスカートをたくし上げた。
 程よく肉付いた腿を男の五指に撫で回され、洋子は思わず声を上げてしまう。
 彼女の細い肩がこわばり、指の動きがぶれる。誤って入力してしまった文字を慌てて削除するが、指の震えは止まらない。
 それに構う事なく、神宮寺は仕事上必要な事だけを洋子の耳元で囁き続けている。両手で施す淫らな行為からは考えられない程に冷静な声で。
 みずみずしい肌の上を滑る指は付け根に行き着き、ついには下着の隙間に潜り込んできた。
 既に蜜を滲ませている秘唇を割り開き、柔らかい粘膜を複数の指で掻き乱す。
 胸を捏ね続ける方の手の優しい動きとくらべると、秘部に宛った指はいくらか乱暴に中をまさぐっている。
 そうしてわざと音を立てて愛撫を重ね、彼女の理性を崩さんとしているのだ。
 耳をくすぐる男の声と、温もりと、快感──その全てに惑わされ、細められた洋子の目がじんわり潤む。
 だが、これでは到底鎮まらない。
012122 小ネタ2009/09/15(火) 20:36:10ID:4gTUm9ww
「あぁ……先生っ……」
 キーを叩く事さえやめて、洋子は背もたれ越しに神宮寺の胸に体を押し付けていた。
 ぎしりと椅子を鳴らして身を委ねてくる彼女の様子を見て、彼は愛撫の手を止める。
「……どうした? 手が止まっているぞ」
「は……ぁ……」
 不意に呼びかけられ、つい先程まで全身に満ちていた甘い浮遊感が遠ざかっていくのが、彼女には感じられた。
 足りない、と体は訴えている。腕に力をこめてみても、集中する事が出来ない。
 感覚の鈍った指をキーボードへ伸ばしてはみたものの、まともに打てるとは思えなかった。
「……すみません」
 消え入りそうな声で詫びながら、洋子はゆるゆると首を振る。
「……無理、です」
「無理……?」
 ひそめた声で問う神宮寺だが、表情は変わらない。想定通りの言葉だったからだ。
「このままじゃ……つらいんです……先生」
 恥ずかしげに目を伏せながらも、半端に疼く箇所を慰めたくて、腿を擦り合わせている。
「お願いです……早く」
 その言葉の通り、乞うような眼差しで洋子は神宮寺を見上げた。「……イかせて、下さい」
 彼女の瞳には、口元に満足そうな笑みを浮かべた男の顔が映っていた。
0122222009/09/15(火) 20:38:48ID:4gTUm9ww
半端に終了。
仕事中のプレイって何気にエロそうですよね。

>>117
おめです。楽しみにしてます。
0126名無しさん@ピンキー2009/09/23(水) 19:41:46ID:CNiYKKcF
>>124
洋子さんの声が妙に高くて微妙にエロいんだが
0128名無しさん@ピンキー2009/09/26(土) 14:45:58ID:op5BwIgO
flashの愛理があからさまにエロかったな。
普段ああいうキャラなんだろうか...
0129名無しさん@ピンキー2009/09/26(土) 22:23:44ID:hyfOkIzr
与那国とデキててもおかしくないよなw


実は姉妹とか実はDBとかありそうだが。
0131名無しさん@ピンキー2009/10/21(水) 18:27:23ID:ehEQWuFq
俊介 早く結婚しようぜ。
0132名無しさん@ピンキー2009/10/21(水) 19:19:10ID:m0AQ0XQE
DB=愛理で妄想したら、与那国×DBが書きたくなった件

DBはもちろん女で
0134名無しさん@ピンキー2009/10/25(日) 12:18:17ID:UVPWhp4z
与那国と親しげな絹江を見て、巧みに未亡人絹江を慰める与那国を想像した

…が、絹江じゃ艶にかけることに気づいたorz
0138名無しさん@ピンキー2009/11/20(金) 23:14:14ID:juMr6W63
洋子君のあのぽってりした唇で濃厚フェラとか、まなみが豊満な胸でパイズリしたりとか、かすみが酔った勢いで襲ってきたりとか、想像するだけでハァハァなんだが俺には書けない…
誰か頼む。
0139名無しさん@ピンキー2009/11/25(水) 18:53:58ID:yDztp2kY
女性キャラ全員攻めなのかw
洋子さんはヤられる側がさまになってると思うが…
0141名無しさん@ピンキー2010/01/16(土) 22:25:36ID:QP5ZnNb7
保守。
大規制のためか書き手さん来ないな…


----------------(以上でよろしくお願いします)
01421412010/01/17(日) 22:31:17ID:P/tw9iAP
最後の行ミスだすまんOTZ
0143名無しさん@ピンキー2010/01/22(金) 20:13:49ID:r64Y7IvJ
そもそもこのスレまだ需要はあるのか
職人が来ないと静かすぎて心配
0146前スレ5972010/01/27(水) 14:56:23ID:3UbskWYq
規制長かったです。
しかし、いつまた巻き込まれるかわかりません・・・。
ところで、22さん、いらっしゃいますか?
ちょっとお願いがあるのですが・・・。
0147222010/01/27(水) 20:17:41ID:QoNaiTeN
もしもし解除記念カキコ。
呼ばれましたかな?
0148前スレ5972010/01/28(木) 12:04:26ID:wiapGqRt
>>147
おお、お呼びだてしてすみません。
ずいぶん前に「今泉の洋子寝取り編」を鋭意製作中と書きましたが、
自分のエロ描写に限界を感じました(マジ才能ない・・・)orz

数日中に洋子を店から連れ帰る今泉の話を投下する予定です。
もしその話が気に入ったらで結構なのですが、22さまにエロ部分を書いていただきたいのです。
22さんの書く今泉のエロ話が読みたいという個人的な願望もあります。

このスレでこういったお願いをするのがOKなのかどうかもわかりませんが、
お気を悪くなさったら、聞き流してください。
0149222010/01/28(木) 20:07:20ID:vFW2ykbt
>>148
ネタ頂けるのはとてもありがたいのでむしろ大歓迎ですw
時間かかるかもですが、キャラとかイメージとか壊さないように頑張ります。
01505972010/01/29(金) 21:27:12ID:TYmUDPa1
>>149
うれしいお言葉ありがとうございます!
早速透過準備・・・と思って文章を読み返しましたら、
かなり前に書いたものなので、けっこう粗が見えてきてしまいました。
大筋は決まってますので、細部の書き直しをしております。
また規制に巻き込まれないうちに投下しようと思いますので、しばしお待ちください。
01515972010/02/04(木) 20:20:27ID:sHUYV03D
パソコン、再び規制くらいましたorz
投下は解除後ということで…すみません。
01525972010/02/10(水) 22:12:25ID:UITGyKtA
今泉×洋子編 投下します。
設定は、22さんが以前お書きになっていた洋子が風俗で働いている話、
それに私が付け加えたプレストーリーの続きです。
風俗で働く洋子を辞めさせることをサブは今泉に任せるが、今泉も洋子を狙っている様子・・・。
今泉が洋子の働く店へと向かうことから始まります。
22さんの良きネタになることを祈ってます。
0153今泉×洋子12010/02/10(水) 22:13:39ID:UITGyKtA
――さて、行くとしますかね

新宿の繁華街、雑居ビルの一角にある一件の風俗店に今泉は足を踏み入れた。
いかつい顔の店長らしき男が近づいてくる。
一般人の客に聞こえないよう配慮し、小さく挨拶をしながら耳元でささやく。
「これは、明治組の・・・。今日はどうなさいました?」
「ここにリョウコという女がいるな」
「ええ、当店のナンバーワンですよ。ご指名ですか? さすがにお目が高い。」
「そいつはアタシの身内だ」
男の顔がさっと青ざめる。
「ま、まさか若頭の・・・・・・」
店長は震えながら小指をおそるおそる立てた。
誤解されたようだが、さっさと用事を済ませたい。今泉は男を促した。
「・・・まあ、そんなところだ。連れて帰らせてもらう。案内しろ」

案内している間、男はすっかり恐縮しきってぺこぺこと頭を下げていた。
「もういい。それよりリョウコの情報は今後一切漏らすな。
・・・いや、最初からいなかったことにしろ。お前の頭の中からもだ。履歴書や写真もすべて破棄させてもらう。
もし守れない場合はどうなるか・・・分かっているだろうな?」
「ひっ! お、お約束します。ですから何卒・・・」
部屋の前に着くと、男が中の女に声をかけた。
「リョウコちゃん、お迎えの方が来たよ」
振り向いた女はまぎれもなく神宮寺三郎の助手――御苑洋子だった。
洋子は何が起こったのか分からず呆然としている。

――すみませんね、御苑さん。詳しい説明は後回しです。

今泉は軽く息を吸い込み、洋子を怒鳴りつけた。
「行くぞ・・・さっさと支度せんかい!」
洋子はびくんと体を震わせ、そそくさと身支度を整え始めた。
その顔は恐怖に青ざめている。

――とにかく、話のできるところに移動しないと

洋子の腕を引っ張り、外へと連れ出し黒塗りの車に乗せる。
「行ってくれ」
運転手にそう命じ、今泉は洋子の方へ視線を移した。
今泉が話しかけようとしたが、洋子は茫然自失している。
洋子の目が宙をさまよう・・・と次の瞬間、洋子の体は力なく今泉の方へ倒れてきた。
「参りましたね・・・」
今泉はため息をつき、洋子が目覚めたときの言い訳を考えていた。
0154今泉×洋子22010/02/10(水) 22:16:05ID:UITGyKtA
車はほどなくして瀟洒なマンションの前に止まった。
「ご苦労だった。今日はもう帰っていいぞ」
車を降りた今泉は洋子を抱きかかえ、建物の一室へと向かった。
ベッドに洋子を横たわらせた後、上着を脱ぎネクタイを緩めソファに身を沈めた。
一日の疲れがどっと出てくる。
意識のない洋子の顔を、今泉はまじまじと見つめた。

――気丈な方かと思いきや・・・まだまだお嬢ちゃんですね、御苑さん。

探偵神宮寺の優秀な片腕。才色兼備の敏腕秘書のイメージが強かった。
しかし眠る洋子の顔は、まだほんの少しあどけなさを残している。
それでも、めったにお目にかかれないいい女だ、と今泉は改めて思う。

――確か、まだ20代半ば・・・。
  そう考えりゃ、モノホンのヤクザに威嚇されて、平気でいる方がおかしいかもしれませんねぇ。
  そんな人にあんな仕事に飛び込もうとまで思いつめさせて・・・神宮寺さんも罪な方だ。

今泉には、なぜ洋子があんな仕事をしていたのか、おおよその見当はついていた。
洋子のことを自分にゆだねたあの神宮寺の態度。
お互いに好意は持っているものの、
まだ神宮寺と洋子の間は、上司と部下という関係以上には進展していないらしい。
それも神宮寺の方が抑制する形で、と今泉は直感していた。

神宮寺の気持ちも分かる。
探偵も所詮は裏稼業だ。神宮寺も明治組だの怪しげな情報屋だの裏社会に生きる人間たちとの付き合いがある。
危険な仕事も秘書なら深入りさせずに済むが、もしそれが愛する女だとしたら?
女を自分のものにしたいという願望と、守るべきもののために身動きが取れなくなるという不安。
その狭間に神宮寺は居続けている。
上司と部下という中途半端な関係のまま女を傍らに置くということで。

しかしそれは洋子にとって生殺しに近い。
表面は取り繕えても、押さえ込まれている「女」の部分はいつか爆発する。
おそらく女として求められたいという欲求を、風俗の仕事でかろうじて発散しているのだろう。
本人が自覚しているのか無意識なのかは別として・・・。
そんな女を今まで何人も今泉は見てきた。
金でも体でも言葉でもいい。女は何かで繋いでおかないと、不安でどこかへ行ってしまう。
少なくとも今泉はそう思っている。

――アタシは生憎と迷う性質(タチ)じゃないんでね。どうなっても悪く思わないでくださいよ、神宮寺さん。
0155今泉×洋子32010/02/10(水) 22:17:40ID:UITGyKtA
御苑洋子は悪夢から目覚めようとしていた。

――怖かった・・・疲れているのかしら。最近書類整理もたまっているし早く起きて事務所に行かなきゃ・・・

しかし、うっすらと開いた目に映ったのは、見覚えのある自分の部屋ではない。
「・・・ここは?」
「気がつかれましたか?」
その声に洋子は思わず洋子は身構えた。
夢ではなかった。
声の聞こえる方に目をやると、長身の男のシルエットが近づいてくる。
「・・・今泉さん」
洋子は恐怖で体が凍りつくような錯覚を覚えた。
しかし、男は洋子の目の前に立つと、いつも通りの慇懃さで頭を深々と下げた。
「御苑さん、先ほどは申し訳ありませんでした。少々芝居が過ぎました」
「芝居?」
「あの店から連れ出すために店長をちょいと脅しましてね。
成り行き上、貴女を丁重に扱えなくなってしまいました。
あんなに驚かせてしまうとは思ってなかったもので・・・お詫びします」
洋子は大きく安堵の息を吐いた。緊張から解かれ、目から涙がこぼれそうになる。
「いつもの今泉さんですね・・・よかった」
「どちらもアタシです。貴女には今まで見せていなかっただけのことでね」
洋子はハッとした。いつも忘れてしまう。この人は明治組の若頭という地位にいるということを。

「これは失礼。お客様に何もお出ししてませんでしたね」
今泉は奥のキッチンへ行き、コーヒーカップを手に戻ってきた。
「こんなものしかありませんが」
そう言いながらサイドテーブルにコーヒーを置いた。
「あ、ありがとうございます」
洋子はベッドに腰掛け、ソファに腰掛けている今泉と向き合った。
この男と二人きりになるのは初めてだ。しかもこんな形で。
知られてはいけないことを知られてしまった。
それがこの男で果たしてよかったのだろうか? もやもやとした不安が湧き上がる。
0156今泉×洋子42010/02/10(水) 22:18:48ID:UITGyKtA
その不安を振り切るようにコーヒーを口にし、洋子は部屋を見回した。
まるでホテルの一室のように生活感のない部屋。
「ここは、今泉さんのご自宅なんですか?」
「別宅、といった方が正しいですね。何かあったときのために押さえてあるだけで、普段は使っていません。
もっとも、こんな使い方をするとは夢にも思いませんでしたが」
コーヒーの苦味で徐々に落ち着きを取り戻しつつあった洋子は、一番の疑問を今泉に投げかけた。
「今泉さん、どうして店にいらしたんですか? 
私があそこで働いているのをなぜご存じだったんですか?」
返ってきたのは当たり前すぎるほどに当たり前の答だった。
「御苑さん、新宿は明治組のシマです。お忘れですか? ヤクザの情報網を舐めてもらっちゃ困ります。
しかもウチの若造たちの間で貴女に入れ込んでるヤツらもいましてね」

洋子は自分の浅はかさを悔いた。
数え切れないほど多くの人が行きかう新宿。
そんな大きな街の片隅なら、源氏名を使えば、誰にも分からないと思っていた自分を。

「御苑さん、貴女はまだこの街の闇の深さを知らなさ過ぎます。
もう、あんな仕事はお辞めになることです。
貴女のようなお嬢さんをあのまま放っておいたら、
どこぞのチンピラかホストの甘い言葉にだまされて金づるにされるのがオチです」
「そ、そんなことはありません・・・私」
「今の貴女は脇が甘すぎますよ。
第一、探偵助手ともあろう人が、明治組の存在を忘れるなんてね」
痛いところを突かれて、洋子は俯くしかなかった。
「それに、アタシの目の届くところで御苑さんに何かあったら、神宮寺さんにも申し訳が立ちませんしね」
「せ、先生は関係ありません! 私が好きでやっていたことなんですから」
0157今泉×洋子52010/02/10(水) 22:20:23ID:UITGyKtA
洋子の見間違いだろうか? 
洋子がそう叫ぶと今泉の目つきがどことなく変わったような気がした。

今泉はゆっくりと脚を組みかえると、フッと笑いながらこう言った。
「ほぉ、何がお好きなんですか?」
「えっ・・・そ、それはその・・・」
予想だにしない問いかけに洋子はしどろもどろになったが、やがて眉をしかめてやっと言葉を返した。
「今日の今泉さんは・・・なんだか意地悪ですね・・・」
今泉はその言葉も軽く受け流した。
「いえ、先ほど貴女が神宮寺さんは関係ないとおっしゃられたのでね。
それならば、今日はただのヤクザの男と風俗の女として
二人で話をしたいと思っただけですよ、リョウコちゃん。
・・・そういえば先ほどの答をまだ聞いていませんね。教えてくれませんか?」

今泉はゆっくりと立ち上がり、洋子に近づいてくる。
「言えなければ私が代わりに答えてあげましょうか?」
0158今泉×洋子62010/02/10(水) 22:21:23ID:UITGyKtA
洋子は逃げられなかった。
いや、正確には逃げようとはしなかった。
今泉の言葉に、心が丸裸にされたような気持ちになっていた。

「リョウコちゃん」と呼ばれた瞬間、
洋子の頭の中にはあの店で接客した男たちの様々な痴態が頭を駆け巡った。
おとなしそうな男、まじめそうな男、若い男から中年まで、
ありとあらゆる男たちが洋子の前で人には見せられないような姿をさらけ出した。
その男たちを観察するのを、洋子はいつの間にか楽しむようになっていた。
時には冷たく、時には面白おかしく。

新宿一帯を束ねる関東明治組の若頭である今泉直久。
それほどの男が自分にどんな姿を見せてくれるのだろうか?!
長い知人でありながら、今までその本性を見せなかった男。
そんな女としての「興味」が今泉に対する「恐怖」を押しのけ始めていた。

――こんなことを考えるなんて、私はどうかしている・・・

今泉の姿は次第に近づいてくる。
体中しびれるような感覚のまま、洋子は立ちすくんでいた。


・・・・・・To be continue
01595972010/02/10(水) 22:26:05ID:UITGyKtA
投下終了いたしました。
0160222010/02/12(金) 18:26:02ID:u2ndVlQ5
>>152
投下超乙です!ここまで考えて頂いてとても嬉しいです。
今書いてる別のものを完成させたら続き書かせて頂きます。
0161222010/02/17(水) 22:35:50ID:TPRNa1LF
神宮寺×洋子で投下します。

・洋子さんが酒に弱い設定
・なんだか襲い受け
0162222010/02/17(水) 22:38:33ID:TPRNa1LF
 ソファーの上には、二つの人影があった。
 細い女の影が、その下の男の体に今にも覆いかぶさりそうな体勢で、彼を見下ろしている。どこか、ぼんやりとした目で。
 対する男も怠そうではあるが、戸惑いを含んだ表情で彼女を見上げている。
 夜半であるが故ブラインドが下ろされ、電気も消してあるので室内は暗い。
 音一つたたない暗闇の中で二人きりというこの状況は、今の彼の冴えない頭では冷静に受け止められそうになかった。
「……先生……」
 溜め息と共に、思いつめたような洋子の声が零れる。
 ソファーの背もたれに置かれていた彼女の手が動き、神宮寺の肩に押し付けられる。
 心地よい温もりではあるが、それに浸る余裕などない。普段と明らかに異なる彼女の雰囲気が、それを許さない。

 ──何故、こんな状況になっているんだ。

 酔って定まらない思考を、神宮寺は懸命に過去へと遡らせた。生温い女の吐息に、昂ぶりそうな自身を抑えながら。

  *  *  *  *  *

 大きな仕事を終え、ささやかな打ち上げと称して近場のバーで彼女と酒を飲み交わしていたのは、つい数時間前の事だ。
 話が弾むにつれて酒も進み、気付けば終電の時間は過ぎていた。
 タクシーを拾って洋子を帰そうにも、彼女も彼もだいぶ酔っている。
 ひとまず酔いが醒めるまで事務所で休ませようかと、神宮寺は彼女を連れて店を出た。
「洋子君……歩けるか?」
「……はい……」
 肩を貸す神宮寺に応える声に、勤務中の張りはない。
 彼の腕に捕まるようにして歩き出すその足どりも、どこか危なっかしい。普段あまり酒を飲まないからなのか、相当酔っているようだ。
 そもそも、洋子と酒を飲みに行く事など滅多にない。今回のような気まぐれがなければ、酔いつぶれた彼女を見るなどという事はなかっただろう。
 絡めた腕、触れる肩から温もりが伝わってくる。酒が入っているので体温は高いが、不思議と熱苦しさは感じない。
 彼が飲みに行く時は大抵一人だ。連れがいたとしても男ばかりで、こんな風に酔った女性を連れ歩く事にはあまり慣れない。ましてや、彼女なら尚更だ。

「……………」

 ふと、神宮寺のしがみつかれている方の腕に不自然な力が入る。彼の肘に、柔らかいものが押し付けられた為だ。
 丸みを帯びた、弾力のある感触。確かめずとも、何であるかは容易に分かる。
 傍らの洋子を見ると、彼の肩に頭をもたれかからせ、うつらうつらしている。力が入らない為、自然と密着してしまうのだろう。
0163222010/02/17(水) 22:41:58ID:TPRNa1LF
(……いかんな)
 涼しい夜風に顔を上げ、一つ深く息を吸う。ゆっくりと吐き出して自身を落ち着かせると、止まりかけていた足を再び前へと歩ませた。

  *  *  *  *  *

 ……そこまでは、鮮明に思い出せた。
 それから事務所まで帰って来たは良いものの、酔いの醒める気配のない洋子をどうして良いか分からず、とりあえず上のフロアのベッドに寝かせる事にしたのだ。
 その際、彼女を運ぶのに手間取ったのを覚えている。
 半分眠っているような状態の彼女は、神宮寺にしがみついて歩いていた。
 支えるにしても不用意に体に触れる訳にもいかず、それでも集中力の欠けた意識下でなんとか無事にベッドに横たえ、自身も下階のソファーに身を沈めたのだ。

 ──が、しかし。
 寝転がってしばらく経って、感じた気配に目を開けてみると、上で寝ている筈の洋子がそこにいた。
 寝ぼけて降りて来てしまったのだろうかとも思ったが、それにしても様子がおかしい。
 神宮寺をじっと見つめて離れないその目は、少し潤んでいる。そして彼の肩に添えられた彼女の掌と指は、時折シャツ越しに感触を確かめるように動く。
 彼女がそれを意識しているかどうかを別にしても、男をその気にさせるには十分な誘惑だった。
「……洋子君」
 それを振り払おうと呼びかける神宮寺の声には、力がこもらない。酔いと眠気のせいだけという訳でもない。
 洋子の体を退かそうと腕を掴んだは良いが、その先へ動かす事が出来ないでいる。
 迷う神宮寺を追い立てるように、彼女はその身をソファーの上に乗せ、彼の脚を跨いで座り込んだ。無造作にめくれたスカートの下の腿が、神宮寺の両足を挟み込んで広がる。
 隙間から見える淡いピンク色の下着から慌てて目を逸らしながら、普段なら絶対にありえないこの状況の原因を神宮寺は察した。
 彼女は、悪酔いしているのだと。

「洋子君、その……降りてくれないか?」
 僅かながら冷静さを取り戻した声で、神宮寺は改めて呼びかける。
 洋子が離れようとする気配はない。これほど近い距離で、聞こえていない筈はないのだが。
 探るように見上げる神宮寺の視線が彼女のそれと交わった。
 ずっと彼の顔を見つめ続けていたのであろうその目は、不満げに細められている。
0164222010/02/17(水) 22:45:00ID:TPRNa1LF
 ──何故だ。気を悪くするような事をしただろうか。
 気まずさに目を逸らす神宮寺。肘かけにもたれた彼の頭のすぐ傍に、洋子は顔を近づけてきた。
「……ひどい」
 耳元でそう囁き、神宮寺の体の上にその身をそっと委ねる。
 柔らかい膨らみが彼の胸板に触れ、その微かな重みに体が強張る。
 落ち着かなければ──そう言い聞かせても、あまりに近すぎる女の感触に酔った彼の身は少しも言う事を聞かない。
「私の気持ち……分かってらっしゃるくせに」
 これまでに聞いた事もない、拗ねたような声で洋子がぽつりと呟いた。
 さらに頬と頬が触れそうな程詰められた距離で、甘ったるい吐息が耳をくすぐる。
 夢かと思う程の、普段と今の彼女のギャップ。
 それがこんなにも欲を煽るものなのかと、神宮寺は内で疼くものに惑っていた。
「……そろそろ、寝よう。明日も仕事が」
「私は」
 神宮寺の言葉を遮って、真正面から顔を見つめる洋子。目が据わっている。
「そういう対象としては、見て頂けないんですか……?」
「そういう訳では……」
「じゃあ……」
 起き上がろうと動かした彼の手に、自身の手を添えて阻む。
「どういう訳なんです?」
 いつになく押しが強い。
 酒で変わる人間はよくいるが、どうやら彼女もその内の一人らしい。
「……………」
 答える言葉が思い浮かばず、動く事さえ出来ずにいる神宮寺に焦れてか、洋子はゆらりと体を起こした。
 しかしながらまだ彼から離れるつもりはないらしく、ブラウスの襟元に指をかけ、ボタンを外しはじめている。
 震える指先のぎこちない動き、そして躊躇うように伏せたその目を見るに、羞恥を感じてはいるようだ。
 恥じらいながらも自身を晒そうとする女を前に、どうして昂ぶるものを抑えきれようか。

 ボタンを全て外し終え、衣服を脱ぎかけた洋子の動きが止まった。
「……先生」
 何かに気付いたような彼女の声に、神宮寺はまずい、と身を捩じらせたが既に遅く。
 座り込んでいる彼女の股下に当たる、硬いもの。
 それの意味するところを察し、洋子は顔を赤らめながらも口元を綻ばせる。
0165222010/02/17(水) 22:47:14ID:TPRNa1LF
「嬉しい……」
 ブラウスの前を掴んで肩まではだけさせると、その細い指で彼のシャツの襟元をつまんだ。
 ひとつひとつ丁寧にボタンを外しながら、洋子は再び身を屈め、神宮寺の肩に顔を乗せる。
 眼前で音を立てて動く喉仏に目を細めると、噛み締めるように呟いた。
「私でも……良いんですね」
「……君こそ」
 ようやく零れ出た神宮寺の声は、普段にもまして低くひそめられていた。やむなくといった響きではあるが、欲を含んでいるのも事実だ。
 ほのかに香る艶やかな黒髪に顔を寄せ、指を絡ませながら続ける。「俺でも、良いのか?」
 洋子が顔を上げると、指の隙間から髪がするりと離れる。
 ほんの一瞬、見つめ合った後の口付け。
 それを答と受け取り、神宮寺は彼女の手に指を添え、唇を啄んだ。
 手の甲を撫でる指先の動きに、ふ、と洋子が息を漏らす。
 僅かに開いた唇を押し開いて舌を入れると、酒の匂いと彼女の温もりを舌先に感じた。内側へ這わせていくと、次第に甘い熱が舌を、意識を包まんとするのが分かる。
 彼女もおそらく同じものを感じているのだろう。重ねた指先は小さく震え、時折開くその眼はうっすらと細められている。
 交わらせた彼女の舌は神宮寺のそれに合わせて動くが、受け止めるのがやっとといった様子だ。
 押しの強さの割に、攻める事には慣れていない。
 それが少しおかしく思えて、揺さぶってやりたくなった。
「んんっ……」
 息を継ごうとする洋子のうなじに手を当てて顔をさらに寄せると、詰まらせた声を喉から零す。
 それだけに留めず、彼女の舌裏を探り緩急をつけてなぞると、重ね合わせた互いの唇の中からねちゃりと音が立つ。
 それに昂ぶりを覚えたのか、洋子は鼻にかかった声音を漏らしながら肩をぴくっと震わせた。
 しばしぬめる口内を味わう内に、彼女の目はすっかり虚ろになっていた。
 自重を支える腕の頼りなげに揺らぐさまを一瞥すると、神宮寺は一旦顔を引いて唇を離した。押さえていた手が離れると力が抜けたのか、彼女の頭は再び彼の肩へと埋まる。
 離した唇から甘い熱を逃がすように、洋子は大きく息を吐いた。
「はあっ……はぁ……」
 温かな重みに心地よさを覚えながら、神宮寺は彼女の顔を覗き込む。
 官能の余韻に浸り潤みを増した洋子の瞳も、次をせがむように彼を見つめ返す。艶に満ちたその眼差しに、神宮寺は思わず嘆息した。
「先生……」
 呼吸を懸命に整えつつ、洋子が呟く。「すごく……上手」
0166222010/02/17(水) 22:49:40ID:TPRNa1LF

 ──これは、褒められていると思って良いのだろうか。

 そんな事を思いつつ、神宮寺は彼女の体に手を伸ばす。
「他の女性とも、こんな風に……?」
 ぽつりと尋ねて、洋子もその手をシャツの隙間から覗く厚い肌の上に滑らせ、呼吸に合わせて動く胸板を指で撫でる。
「……他?」
 ささやかな愛撫にくすぐられながら、神宮寺は彼女の言葉の意味を計りかね、問い返した。
 半端に脱げかけたブラウスの内側に通した両腕が動きを止めたが、一瞬の後にブラジャーのホックを外す。
 するりと落ちたブラジャーをソファーの背もたれにかけ、あらわになった乳房を掌で覆うと、柔肌の吸い付くような手触りを感じた。
 指をそっと押し付けて撫でるように動かすと、白い素肌に徐々に赤みがさし、体の内の高まる熱を感じられるようだ。
「っ……んん……」
 洋子が肩を小さく揺らしながら、濡れ光る唇の隙間から声を漏らす。
 唇を少し震わせて、切なげな目で言葉を発する。
「いるんでしょう……? そういう人」
「……どうして、そう思う?」
 問いかける合間にも、彼の手は止まらない。
 下向きに椀型になった胸をまさぐる手にもはやぎこちなさなどなく、張りのある膨らみに指を食い込ませ、緩やかな動きで揉みほぐしていく。
 硬くなった桃色の突起を親指で何度か転がすと、引き締まった体の上で洋子の指がぴくぴく震えた。
「あぁ……」
 上擦った声と共に、密着した下半身がもどかしげに動き、神宮寺のものをズボン越しに擦る。
 神宮寺は少しばかり息を詰まらせながらも、ソファーに預けていた身を持ち上げ、洋子を足に乗せた状態で向かい合った。
 惚けた表情のままで神宮寺の体にもたれかかってくる彼女。ブラウスの内側に手を伸ばして背や腰を撫で回すとぞくりと身をわななかせ、喉元に甘い息を吐きかけてきた。
「だって……なんだか手慣れてらっしゃるから」
 そう答え、洋子は探るように彼を見つめる。
 期待と不安が半々の視線を、彼は真っ直ぐに受け止めた。
 熱のこもった眼差しと向き合う事、数秒。
 少しの間を置いて、神宮寺は口端をうっすらと緩める。
0167222010/02/17(水) 22:52:41ID:TPRNa1LF
「……想像に任せるよ」
 正直に白状しても良いと思いながらも、神宮寺は敢えてはぐらかしてみせた。
 あまりに真剣な目で見つめてくるから、本気になってしまいそうだったのだ。

 ──何故、よりによって自分なのだろう。
 寄ってくる男はいくらでもいるだろうに。もっとましな付き合いが出来る男も選べるだろうに。
 そんな彼の心中の問いを洋子は知る由もなく。
 しばし神宮寺を見つめた後、彼の首筋に唇を這わせた。
 小さな音を立てて吸い付いた箇所に赤い痕を残し、囁く。
「抱いてください……その人みたいに」
 鬱血した部分をちろりと舐める様子は、素面の彼女からは考えられない程淫らだ。切なそうな表情と相乗して、劣情を掻き立てる。
「……すぐ戻る」
 誤解させたまま否定もせずに、神宮寺はそう告げて立ち上がった。
 応接室を出て行く彼を不安そうに見上げながらも、洋子は黙ってそれを見送る。
 酔いが醒めて冷静になった時、諦めてくれたらいいと神宮寺は考えていた。こうして交わる事を受け入れておいて、今更と思いながらも。
 さほど時を置かずに戻って来た彼は、無言のまま洋子の座り込んでいるソファーに腰を降ろし、彼女の腿を指で撫でた。
 まだ続けてくれるのだと気付いて安堵した彼女は、神宮寺のズボンのベルトをそっと緩める。
 彼の指はやがてスカートの中へと滑り、秘部を覆う下着へと辿り着いた。
 生温かく湿ったそれをずらして、茂みの下の割れ目をなぞる。ぬるりと粘る液が指先を濡らした。
 陰唇を掻き分けて中をまさぐると、ちゅくちゅくとキスのような音を立てて柔肉が指に絡み付く。
「ん、ふっ……あぁ……」
0168222010/02/17(水) 22:55:11ID:TPRNa1LF
 内側を擦る度に足をぴくぴくと震わせ、洋子は掠れた声を漏らす。
 神宮寺のスラックスに伸ばされた彼女の手は、快感に翻弄されてなかなか思うようには動かない。
 それでもなんとかジッパーに指をかけてそこを開き、布越しの神宮寺の昂ぶりに触れた。
「温かい……」
 クスリと微笑む洋子の顔は普段見るそれと変わらないのに、朱に染まった頬と彼女の手の動きが、それをいかがわしさに満ちたものに変える。
 トランクスを両手でそろそろとずらしていくと、半勃ちになった彼の陰茎が洋子の視界に現れた。
 間近で見る事に慣れていないのだろう、頬も耳も真っ赤にして、わななく指先でそれをなぞる。
 洋子の膣を充分に潤いほぐれるまで愛撫した神宮寺は指を引き抜き、男根を前にぎこちなくなっている彼女をどこか楽しそうに眺めると、何事か耳打ちした。
 僅かに身を硬くした洋子だが、こくりと頷いて両手を彼のものに添え、亀頭に口付けた。
 ぷるりと弾力のある唇で触れては離れを繰り返し、神宮寺の様子を確かめながらゆっくりと手をスライドさせる。
「んむ、ふっ……んぅ……」
 こわごわとした手つきと不規則な呼吸は、口淫をし慣れていないのだという事を示している。
 だがそのおぼつかなさや、これで良いのかと時折目で問い掛ける仕草が、男の胸中に疼くものを感じさせた。
 先端から幹へと唇を降ろしていくにつれて、零れる吐息で湿った熱を帯びていく男根。
 開いた唇で側面を咥え控えめに吸い付いていく内に、硬さを増したそれはやがてぴんと反り返った。
 眼前でそそり立ったものに鼓動を高鳴らせて、洋子は上目遣いに彼の顔をうかがう。
 物欲しそうに訴える眼差しを見れば、次に何を求めているのかは明白だ。
 神宮寺は目配せして洋子に顔を上げさせ、ズボンのポケットから何かを取り出した。
 小さな薄い袋を開封した中から出てきた物は、コンドーム。先程、応接室を離れた際に取りに行っていた物だ。
 ごく自然な動作で準備をする彼をなんとなく複雑そうに見つめつつ、洋子もスカートと下着を脱ぎ下半身を露わにする。
0169222010/02/17(水) 22:57:48ID:TPRNa1LF
 乱れたブラウスも脱いでしまおうとしたところで、洋子の背はソファーに深く沈められた。
「……上はそのままで良い」
 そう言ってじっと見下ろす神宮寺。洋子は意味が分からず、ただただ不思議そうに彼を見上げる。

 ──衣服を全て取り払ってしまうより、この方が扇情的だ。

 そんな事はさすがに口にはしない神宮寺だが、瞳に宿った情欲の熱は隠せない。
 その視線を真っ向から受け止めて潤む彼女の目は、色濃い期待に満ちていた。
 それに応えるべく、神宮寺は彼女の足を開かせ、蜜を湛える秘唇に先端を押し当てる。
 ぬちゃ、という水音と共に触れ合った箇所が、相手の熱を求めてじんと疼くのを感じた。
 欲するままに腰を進め、狭く温かい肉の穴を彼自身の形に馴染ませていく。
「ん……あ、うん……はぁっ」
 膣内を深く浅く開く度に耳に入る、上擦った洋子の声。
 圧迫する異物に耐える苦しげな響きは、やがて甘く艶めいたものに転じていた。
 ゴムの中できつく張り詰めた側面で粘膜を擦り、先端で奥をぐりぐりと刺激すれば、感じる悦びに悶えてがくがくと腰を浮かせる。
 その度に彼女の中の襞は肉棒にまとわり付き、離すまいとばかりに強く締め上げるのだ。
「あっ……は、あぅっ……! せん、せっ……せんせぇっ」
 快感に咽びながらの女の呼び声が、彼の内の感情をより激しく高まらせる。
 彼女の気が済むまで、今この時だけ──そんな言い訳めいた理屈を押し退けて、自身の欲の求めるままに彼女と繋がっていたいと。
 諦めて欲しいなどという少し前までの考えは、もはや神宮寺の頭の片隅にすら残っていなかった。
 絶頂が近付くのを感じてか、洋子の腕が首に絡み、ぐっとしがみついてきた。
 同時に秘部の締め付けが増し、摩擦の勢いを一層激しいものにする。
 耳に心地よい女の喜悦の声を堪能しながら、神宮寺も彼女の体を抱いて果てに行き着いたのだった。
0170222010/02/17(水) 23:01:01ID:TPRNa1LF

  *  *  *  *  *

 顔に当たる光の眩しさに、神宮寺は重い瞼を押し上げた。
 ブラインドの隙間から差し込む陽はまだ柔らかいが、寝不足気味の眼にはやけに滲みる。
 ついでに体も怠い。二日酔いだけのせいでは、決してない。
 痛む頭を押さえながら上半身を起こし、自身の状態を確かめる。
 シャツの前は開きっぱなしだが、下着もスラックスも履いている。後始末も済ませて寝たようだ。
 周りを眺めると、すぐに向かいのソファーに横たわる女の姿が視界に入った。
 こちら側を向いて寝息を立てている彼女の肩から腰にかけては、すっかりシワの寄ったブラウスに覆われている。
 しかし前のボタンがはずされたままである為、鎖骨から胸元までよく見える。
 また、下半分も脱いでそのままなので、秘所こそ上からかけておいたスカートで隠れているものの、白く張りある太股は剥きだしなのである。

 ──寝起きには、刺激が強すぎる。

 釘付けになりそうな視線を無理矢理引き剥がしたが、次に目に留まったのは、背もたれに引っ掛けたままのブラジャー。
 再び別の所へ目を向ければ、簡単に折りたたまれた彼女のショーツが。
「……………」

 易々とは崩されぬ理性を持っていると、彼自身疑っていなかった。
 だが、このような光景を目の当たりにして無反応でいられるなら──男ではない。

 立ち上がり、洋子のいるソファーに近付いた。場所をとるテーブルを少しずらし、彼女の前に膝をつく。
 さほど広くないスペースで足を折り曲げて眠る姿は、少々窮屈そうだ。
 乱れた髪を軽く撫でつけながら、穏やかな寝顔を見つめる。
 整った顔立ち。安らかに伏せられた睫。透明感ある頬。
 微かに開かれた唇を指でなぞりながら、数時間前の彼女を思い返す。

 ──この唇が言ったのだ。抱いて、と。

「………ん」
 不意に彼女の眉がしかめられ、唇が声を漏らした。
 うっすらと開いた目。眠たそうに数回瞬きする。
 その様子を、神宮寺は黙って見ている。
「……………」
 見つめ合う事、数秒。

「……っっ……!!」

 みるみるうちに表情が凍りつき、洋子の体はがばりと勢いよく跳ね起きた。
「おはよう」
「せ、せっ、先生っ……! わ、わたし……」
 とりあえず落ち着き払って声をかけてはみたが、神宮寺は心中穏やかではなかった。
 酒癖の悪い人間の中には、酔った時の記憶を失くしてしまう者もいる。
0171222010/02/17(水) 23:04:16ID:TPRNa1LF
 彼女がその手のタイプなら、この状況では彼の方から襲ったと思われかねない。
 しかし、実状は語るにはあまりにも……

「もっ……申し訳ありませんでした」

「…………?」
 洋子の消え入りそうな声が謝罪の言葉を発した事で、神宮寺の思考は一瞬止まった。
 改めて彼女の様子を窺う。
 右手でブラウスの前をぎゅっと握り締め、左手で下を隠すスカートを掴んで俯く姿から、心底から恥じらっているさまが見てとれる。
 が、自分の有様を見て訳が分からず混乱しているといった様子ではない。
 想像していたような、怯えたり詰ったりという態度からは程遠い。
 昨夜の事を覚えていないという訳ではなさそうだ。

 ひとまずの安堵に深く長い溜息をつく神宮寺だが、洋子の方は気が気でない。
 酒の勢いに任せて秘めていた想いを吐露した上、半ば強引に関係を求めてしまったのだ。
 さかんに乱れた髪に指を絡め、彼の様子をうかがったり、慌てて目を逸らしたりしている。
「洋子君」
 静かに呼ばれて、ぎくりと肩を強張らせる彼女。
「一応言っておくが……」
 視線を逸らしたまま、洋子は彼の言葉に耳を傾ける。

 ──なんて事をしてしまったのだろう。どうしよう。何を言われるのだろう。

 きっとそんな声ばかりが脳内に渦巻いているのであろう、彼女の切迫した横顔。
 滅多に見られない光景に口角が緩みそうになるのを抑えながら、焦らすには充分な間を置いて口を開いた。
「誰かと寝たのは、昨夜が久々だ」

「………え」
 おずおずと神宮寺の方に顔を向けた洋子。切れ長の目を見開いて、ぱちぱちと瞬きする。
「……そんなに驚く事かな」
「あ、いえ、そういう訳では……」
 洋子が驚くのは無理もないだろう。彼女が予感していたであろう気まずくなるような反応が、一切なされなかったのだから。
 彼女がされて当然と思っている反応をする気は、神宮寺には毛頭なかった。恥をかかせるだけだからだ。
 そもそも何とも思っていない女性なら、受け入れる事さえしなかっただろう。
「出来れば……」
 まだうろたえている洋子の体を押し倒し、赤く染まった耳に囁く。

 適当な言葉ではぐらかして勘違いさせたにもかかわらず、本当の事を告げたくなった。
 理由は言うまでもない。

「これきりには、したくないんだが」

 この女性を、諦めてしまいたくなくなったからだ。

0172222010/02/17(水) 23:06:29ID:TPRNa1LF
終了です。
そして、二回戦突入な二人…w
01745972010/02/20(土) 00:25:27ID:NxHPCS8N
投下乙です。相変わらずいい仕事っぷり。

>>160
いえ、本当はこの後も全部書くつもりだったんですが…未熟者ですみません。
どうも自分は、段取りはいいセンいくのに、肝心なとこでガッカリさせるタイプのようなので、後を託させていただきました。
wktk状態でお待ちしています。
0175名無しさん@ピンキー2010/02/21(日) 20:56:31ID:jR7oaxAY
久々になんかきてたw
エロくていいなぁ。
0178自己レス2010/03/02(火) 21:12:36ID:nEbI/F8k
>>157 すいません、誤字です。

「言えなければ私が代わりに答えてあげましょうか?」


「言えなければアタシが・・・・・・」

アタシらしくもない・・・
0179名無しさん@ピンキー2010/03/07(日) 20:07:22ID:rLVH/qOg
鬼畜系も読みたいなぁ

何かの事件をきっかけに神宮寺を疎ましく思っているヤクザの襲撃
外出先で神宮寺は不意打ちを受けて昏倒し、連れ去られる

一方、事務所で留守番をしていた洋子も、依頼人を装ってきたヤクザに襲われる
男たちに陵辱される洋子
そこへ神宮寺を襲った男たちが、気を失ったままの神宮寺を連れて戻ってくる
しかし洋子は目隠しをされており神宮寺の存在に気づかない

やがて意識を取り戻した神宮寺が見たものは
複数の男たちに弄ばれている洋子の姿
だが神宮寺も猿轡のうえに手足も拘束されており見守る事しかできない

神宮寺の存在に気づかないまま、快感に耐え切れず嬌声を上げ始める洋子
それを目の当たりにし、意思に反して充血してしまう自らの身体に怒りを覚える神宮寺
それに気づいた男たちは、ニヤつきながら神宮寺の上に洋子を跨らせる

やがて洋子の激しい腰使いに耐え切れず中で果ててしまう神宮寺
直後、目隠しを外された洋子の絶望の悲鳴が響き渡る

職人さんヨロ
0180名無しさん@ピンキー2010/03/08(月) 20:32:09ID:Amnd+OH+
>>179
いいネタだ。ハァハァした。
だがそこまで形になっているなら他書き手の力を借りるまでもなさそうだがw
0182名無しさん@ピンキー2010/03/17(水) 22:48:53ID:0YF0ts1y
職業柄逆恨みされるきっかけには事欠かないからなぁ神宮寺は。
それなりに危ない調査してるのに洋子一人留守番させてる時とか無防備すぎないかと。
>>179的な事にいつなってもおかしくないのかもしれないw
0183名無しさん@ピンキー2010/03/22(月) 00:28:18ID:KR5a+k2E
じゃあ、ここでちょっと箸休め的なおふざけをひとつ。
アプリ風に、沢田研二の曲名も使って。


探偵神宮寺三郎 <コバルトの季節の中で>第4章

「雨、やみませんね」
「ん?ああ」

 俺は振り返り、洋子君の顔を見た。どういうわけだか今日の彼女は艶っぽい。
 いや、俺も疲れているのか、彼女の事をそんなふうな目で見るなんてな。

「・・・先生」
「なんだい?」
「いえ、なんでもありません」

俺はタバコの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・火を消した。

「・・・髪型、変えたんだな」
「えっ?」
「いや、なんでもない」

聞こえていないならそれでいい。
俺は書斎へと続くドアノブに手を掛けた。

「気付いたんだ」
「?」
「この事務所も、そしてこの書斎も、俺一人には広すぎる」
「・・・・・・」

そして、俺と洋子君は狭い部屋で二人きりになった。
俺は洋子君を力任せに・・・いや、やめとこう。
そんなつもりで彼女を部屋に招いた訳ではないからな。

「先生、焦らさないで下さい」

洋子・・・

俺の中で何かが溶け始めた。
それは俺の心を覆う冷たい氷のような・・・

いや・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ふっ・・・
気取るのはもうやめだ。

俺は・・・


俺は洋子にキスをした。


see you in next trouble


おあとがよろしいようで
0184名無しさん@ピンキー2010/03/22(月) 00:30:34ID:KR5a+k2E
ちょっと長過ぎた。二回に分けるべきだった。すいません。
0186名無しさん@ピンキー2010/04/05(月) 19:09:33ID:kgE5NwX/
01875972010/04/13(火) 15:12:36ID:Qxbp4pno
久々に携帯アプリの神宮寺やったら、鬼姫伝の出だしが、自分の書いた洋子風俗編のプレストーリーに似ててびっくりしました。洋子の写真が出てくるとことか。
…盗用はしてません。よくある状況設定とはいえ、こんなこともあるんですねぇ。
0188名無しさん@ピンキー2010/04/13(火) 22:53:35ID:Pfz0tJab
神宮寺があまり動じてなかったのがかえって良かった>鬼姫序盤
二次なら見てて楽しいが、原作がそういう関係を前面に出しすぎると想像の幅が減るのよな…
0189222010/04/20(火) 13:40:41ID:zamGQCu5
前スレ597氏の今泉×洋子の続き投下させて頂きます。
前スレで投下した洋子×神宮寺とは色々差異がありますが、別話として見てもらえたら幸いです。
0190222010/04/20(火) 13:42:52ID:zamGQCu5
 無機質な部屋の中。
 目の前で立ち止まった今泉の顔を、洋子はただじっと見上げていた。
 鷲のような眼。浅黒い肌に刻まれた細く鋭い傷痕。
 口元には僅かに笑みが浮かんでいるのに、その奥の感情を読み取る事の叶わない、彫り深い男の相貌。
 洗練された男らしい面差しは、どこか神宮寺と似たものを感じさせる。
 だが、気配が違う。気性の荒い若衆達を従える極道の若頭に相応しい威圧感を、今この時も完全には打ち消せはしない。
 これまで様々な男の相手をしてきたが、これほど存在感に満ちた男性はいただろうか、と洋子は自問する。
 彼と同業らしき客は何人かいた。しかし、体の内側から滲み出ているようなこの覇気とは、おそらく比べようがない。
 そんな男と今、洋子は二人きりで向き合っている。探偵助手と上司の知人という普段の間柄でなく、一人の男と一人の女として……

 ぞくりと刹那、洋子の身に震えが走った。
 畏怖からくるものだろうか。あるいは本能的な喜びによるものか。

「……今泉さん、は」
 心中の疼くものに気付かれまいとするように、洋子は口を開いた。「どう思われましたか?」
「何をです?」
 低く重い声が、洋子の耳に入る。問いかけの言葉ではあるが、答を分かりきっているかのような穏やかな声音だ。
「あの店での私の事を知って……」
 決まり悪そうに語尾がよどむ。使い分けていた二つの顔を知る男を前にしているのだから、無理もない。
「……夜の仕事をしてる女は、この街には数え切れないほどいます」
 洋子の問いから少し後、今泉は言いながら彼女の隣に腰を預けた。
 風俗嬢とヤクザ。ベッドに並んで座る二人。
 連想される事の中に綺麗なものなど微塵もないが、嫌悪や恐れを感じる事はない。
 そのような清い心身でない事は、自分が一番よく分かっている。
 一体いつから、この感覚に慣れてしまったのだろう。

 自身を省みて苦く微笑む洋子の傍らで、今泉は言葉を続ける。
「抱える事情は様々でしょうが、自分の意思でやってる女が欲しがってるものは、大概決まってます。金か、男か、あるいは……」
 今泉は顔を洋子の方へ向けた。目付きこそ鋭いが、眼光の強さはいくらか薄らいでいる。
「貴女もそいつらと同じ。ただそれだけの事です」
0191222010/04/20(火) 13:44:50ID:zamGQCu5
 同じ──そう言う今泉の声に、侮蔑や同情の響きはない。
 夜の世界や裏社会。真っ当に生きている人間には知り得ない世界の事をこの男は知り尽くし、おそらくそこに生きる者達の考えを尊重している。
 故にそういった場所の住人をむやみに踏みにじったり、哀れんだりはしないのだろう。
「まあしかし」
 洋子の顔にほのかな安堵の色が差したのを見計らったように、今泉は口を開いた。
「いつ、何がどう転がるか分からない世界だ。やはり、貴女のようなお人がいていい所じゃあない。もっと御自分を大事にしてやるべきです」
 真剣な眼差しと言葉に諭され、胸の奥がじわりと熱くなる。

 満たされない想いがあった。
 それを忘れさせて欲しくて、風俗の仕事で自身を満たそうとした。
 金を得る為だけの副業ならば、こんな仕事でなくても良かった。そんな事は最初から分かっていたのだ。
 溜め込み続けてきた気持ちを紛らすには足る仕事だったが、渇きを癒やすには遠いものだった。
 それもその筈。自分を偽って得るものに、心が満たされる訳がないのだから。
 しかし今、洋子は胸中に染み入るような温もりを覚えていた。
 誰かに、自分の事を思ってもらえる喜び──仮染めの娯楽と、どちらが本当に大切にするべきものなのか。答は分かりきっていた。

「……今泉さんのおっしゃる通りです」
 洋子は姿勢を正すと、今泉に深く頭を垂れた。
「よく考えもしないで、ああいう仕事を選んだりして……軽率でした」
 俯く彼女に、少しだけ柔らかめな声が届く。
「余計な世話かとも思いましたが……」
「そんな事はありません」
 遠慮がちな言葉を、洋子は首を振ってさえぎる。
「こうして止めて頂いていなかったら、私……」
 ──今泉が危惧したような状況にまで、いずれは陥っていたかもしれない。
 そればかりか、下手をすれば裏社会にも顔が知れている神宮寺にまで迷惑をかける事にもなりかねない。
 副業自体は、確かに彼には関係のない事だ。
 だが、だからと言ってそれを切り離した見方をしてくれる程、この街は甘くはない。

「店の方にはアタシから話をつけときます。もう顔を出さなくて良いですよ」
「え……でも」
 今泉が既に店主と交渉済みである事を、洋子は知らない。戸惑う彼女に今泉は告げる。
「あの辺りもウチが面倒を見てる店が多いんでね。その方が手っ取り早いでしょう」
 それでも洋子は逡巡している様子で、物言いたげに今泉の顔をじっと見つめる。
 自分で決めて始めた事なのだからこれ以上気を遣わせたくない、という事なのだろう。
 その頑なともとれる態度に、今泉の頬が僅かに動く。
 気分を害した訳ではない。自分に食い下がる堅気の女など滅多にいないものだから、思わず笑ってしまいそうになったのだ。
0192222010/04/20(火) 13:46:42ID:zamGQCu5

 そういえば、と彼女と出会って間もなかった頃の事を思い出す。
 護衛役を頼まれた自分を怪我をしているのだからと怒って帰そうとしたり、あの神宮寺を反論も出来ぬ程の剣幕で叱りつけていたのが、今まさに目の前にいる女だった。
 普段はあんなにもおとなしく、気の強さなどかけらも見当たらないというのに、全く女という生き物は分からない。
 ……ますます興味が湧いてくる。このたおやかな身の内側に、どんな艶姿を秘めているのか。

「……では、条件付きならいかがでしょう?」
 男の内心を知らぬ洋子は、不意の提案に目を瞬かせる。
「条件……?」
 意図が分からず問う洋子の顎を、男の無骨な指先がとらえた。軽く持ち上げ顔を上向かせ、互いの視線を重ねさせる。
「いっ……今泉さん」
 あまりに突然すぎる行動に高い声を上げる洋子。
 構わず顔の距離を縮める今泉の表情は変わらないが、目の輝きが少し強まっている。
「まだアタシの質問に答えてないじゃないですか……リョウコちゃんは、何がお好きなんです?」
「その呼び方、もう……」
「今夜はまだ何も仕事をしてないでしょう。物足りないんじゃあないですか?」
 洋子の肩が強張る。
 確かに今泉が言うように、今日はまだ誰の相手もしていない。
 しかもこれで終わりにしようと決めたばかりだ。全く名残りがないと言えば嘘になる。
「アタシが最後の客じゃあ役者不足ですか?」
「そういう訳では……でも……」
 心底困り果てた様子で眉根を寄せ、彼女は目を逸らした。「今泉さんからお代を頂くなんて……」
「条件付きで、と言ったでしょう」
 言いつつ口端を歪ませ、にやりと笑った。普段彼女に向けていたそれとは異なる笑みだ。
「今夜一晩相手してもらえたら、金を払う代わりに店のモンと話をつけて差し上げる。そういう事です」

 洋子の瞳が再び今泉に向けられ、ぱちぱちと瞬いた。
 しばし固まったままだったその顔が、少しばかり不満げにしかめられる。
「……なんだか、一方的なご提案ですね」
 洋子からしてみれば、そう考えるのも無理はない。
 今泉も、それを承知の上で言っているようだ。変わらず落ち着いたままの態度を見れば分かる。
「でも、貴女は断らないでしょう?」
「どうして、そう思われるんです?」
 顎を掴んでいる男の指が、そろりと肌を撫でた。
「夜の仕事はもう終い……だが、まだ貴女自身、満足出来てないからですよ」

 反論の言葉は、頭の中のどこにもなかった。
 隠し続けてきた自分を知られ、心根に潜む欲を刺激された今、自制など無意味に等しい。
 思い悩んでいた事、今も抱えている気持ち……それら全てが、この男性には見透かされているような気がしていた。
 だから、期待している。求めても満たされなかったものを、この男性なら与えてくれるのではないか、と。
0193222010/04/20(火) 13:48:06ID:zamGQCu5

 洋子の手が上がり、その指が今泉の頬をすうっと撫でた。
 指先は僅かに震えながらも頬骨の辺りを柔らかくなぞり、これより先の行為を厭わぬ事を示している。
「私こそ、今泉さんのお相手には不足かもしれませんけど……」
 ──その手の供給に事欠かない歓楽街の店舗のナンバーワンが、何を謙遜しているのか。
 今泉は内心で笑ったが、洋子は本気でそう思っているらしく、やや緊張した面持ちで顔を彼の首元に寄せつつ、シャツのボタンを外していく。
 厚い肌に唇ではむようなキスを何度か施していくが、赤みすら残らぬささやかなものだ。
 遠慮がちな愛撫が露わになった胸板に行き着いたところで、今泉は苦笑混じりに告げた。
「アタシには特定の女とかはいませんから、そんな加減は無用ですよ」
 返答代わりに薄く笑みを零し、洋子は指で男の硬く締まった胸を優しく撫でながら、乳首に甘く吸い付く。
 唇と舌先を使って適度に刺激を与え、空いている方を愛撫する事も忘れない。大概の男は、これに気を良くしてだらしなく顔を緩めたものだ。
 今前にしている男の反応は殆どないが、僅かに動く胸筋などを見るに、全く感じるものがないという訳ではないらしく、洋子は胸中で安堵の息をついた。
 うなじに這う男の手の動きにこそばゆそうにしながら、洋子は頑強そうな肌に頬と掌で触れる。
 不自然な膨らみや人肌のそれと違う感触の箇所に目を向けると、普通に生きていたなら目にする事すらないような傷痕が、いくつか刻まれていた。
 堅気でない男の体も見てはきたが、取り分け物々しく映る。薄れているものばかりではあるものの、かつて幾度もの修羅場をくぐり抜けてきた事は明白だ。
 初めて出会った日、自分を庇って銃弾を受けたその身で、一人で病院へ行ってしまった事もあった。
 男の懐への愛撫を重ねながら過去の事を思い返し、洋子は改めて気付く。この人はやはり、様々な意味で普通の人間とは異なる人生を送ってきたのだと。
「ん………」
 顔を上げると軽く頭を持ち上げられ、今泉の唇が洋子のそれに触れた。
 応えるように温もりを押し付け、舌で乾いた唇をぬるりと湿らせる。
 隙間に割り込ませて口内までなぞると、舌の表面に苦みを感じた。煙草の名残りだろう。
 煙草混じりのキスの味にはもう慣れたが、それを味わう度に、神宮寺の事を考えている自分がいるのが分かる。
 いつだったか、彼と同じ銘柄の煙草をよく吸うと言っていた客がいた時など、深い口付けを交わしながら想像していた。
 彼の唇もこんな味がするのだろうか、と。
0194222010/04/20(火) 13:50:38ID:zamGQCu5
 意識が過去へ飛んでぼんやりしかけていた事に気付き、ふと今泉の表情をうかがうと、じっと彼女の目を見つめていた。
 唇を一時離し、問い掛けの念をこめて見つめ返すと、響く声音に僅かばかりの愉悦を含ませ、言った。
「……誰の事を考えていたんです?」

 ──見通されている。
「神宮寺は関係ない」などと言っておきながら、今も彼の事を考えている事を。
 しかし、洋子はもう戸惑いを覚えはしなかった。
 先程感じていたように、この男はとうに分かっているのだ。彼女が風俗業などに手を出した理由を。

「……………」
 今泉の肌の上を絶えず滑っていた洋子の手の動きが止み、その顔がゆっくりと俯いた。
 やがて彼の胸に額が擦りつけられ、小さな吐息が漏れる。
「……よく、分からなくなってしまったんです」
 ぽつりと零したその声は力無く、囁きのようであった。
「私が想っているだけで、分かってもらえなくてもかまわないと思っていたんです……なのに」
「踏ん切りがつかなくなった、と」
 頭上から降る声は、思いのほか柔らかかった。洋子はこくりと頷く。
「とても優しいから……時々、勘違いしてしまいそうになって」
 またひとつ、消え入りそうな溜め息が落ちた。

 おそらく──と今泉は考える。
 神宮寺の中で割り切れないでいるところがあるのだろう。
 その為普段接している分にも煮え切らないし、はっきりと距離を置く事も出来ないでいる。
 彼女もそんな半端な形で接されては、諦めきれない。
 勘違いなどと言っているところを見るに、彼の気持ちに気付いてはいないのだろう。
 代わりに伝えてやってもいいかとも思うが、そこまでお人好しではない。
 何よりそれは、自分の役目ではないはずだ。

「違う名前を名乗って、違う自分を装って……忘れられたらいいと思っていたんですけど」
 上手くいかなかった、と曖昧に洋子は笑う。
 穴埋めの娯楽など、所詮は一時のごまかしにすぎない。それでも──
「慰めにはなっていたんでしょう……? だからやめられなかった」
 洋子は俯いたまま答えなかったが、今泉は構わなかった。
 ──最後くらい、せめて気休めよりはマシな思いを。
 そう心で呟くと、今泉は彼女の体を離し、ベッドに横たわらせた。

「あ……え、今泉さん?」
「攻められるばかりってのは性に合わないんでね。こっちも楽しませて下さいよ」
 するすると脱がせたブラウスの内側から現れたのは、仕事用の黒いブラジャーだ。
 反射的に隠そうと洋子は腕を動かしかけたが、動きはびくりと固まる。

 ──何を、今更。

 心中で誰かが、乾いた笑いを零した。
 今まで散々見ず知らずの男達に肌を晒してきたというのに、この期に及んで何を迷っているのか。
 風俗の仕事も、最初こそ気の乗らぬ副業だったが、次第に愉悦さえ覚えていたというのに。

 刹那強張った表情は落ち着きを取り戻し、持ち上がっていた洋子の腕が静かに降ろされる。
 その変化を見ていた今泉が、手を止めて告げた。
「無理強いはしません。嫌ならすぐにでもやめます」
 相変わらずの低い声だが、脅すような響きはない。拒めば彼は本当にやめてくれるだろうし、それを責めもしないだろう。
0195222010/04/20(火) 13:52:13ID:zamGQCu5
 だが、洋子は薄笑みと共に答える。
「大丈夫です。脱がせられるの、慣れていなくて……」
 少し驚いただけ、と言うと今泉に続きを促した。
「リョウコちゃんが? それは意外ですね」
 源氏名で呼んでみせる辺り、彼女の本心は見通しているだろう。下着の黒によく映える白い肌に手を乗せつつも、それ以上はまだ動かさない。
 それも分かった上で、洋子はにこりと微笑む。
「自分で脱いで見せるのも、お仕事でしたから」
 彼女はブラジャーのホックを外し、そっとそれをずらした。その動作に躊躇いは見られない。
 それを確認すると、今泉は徐々にその手の力を強め、女の肌を揉みほぐしていった。
 乳房を掴んで捏ねる手は、強すぎない力で膨らみ全体に感触を刻む。
 硬さを増した突起を弄る指先も、押し潰さぬ程度の細やかな動きでこりこりと擦り、刺激する。
 これまで洋子が受けてきた、求め味わおうとするだけのものとは、明らかに異なる感覚だった。
 優しいと表現するような愛撫とは違うが、欲望のままに押し付けるものからは程遠い。
 五指の丹念な動きで反応が変わる部位を探り当て、感じやすいよう加減して撫で摩ってくる。
 女を慰める事に慣れている男の手だ。
 自分の方がこの人に相手をしてもらっているようだ、と洋子は心地よさに浸りながら思う。

 あるいは、そもそも最初からそうだったのか。
 今夜あの店に彼が訪れたのは、言うまでもなく洋子に風俗業から手を引かせる為だ。
 相手をしてほしいなどというのは彼女の後始末を肩代わりする為の口実に過ぎないし、今泉なら女に不自由してもいないだろう。

 ……かなわない。
 緩やかに身を包む官能に息を震わせながら、洋子はそう思った。

 素肌が火照りによる赤みにいくらか染まると、今泉の手は彼女の胸から離れた。
 そして今度は膝から腿へと掌でなぞり、スカートの内側に潜り込ませてくる。
 内腿の柔らかい肉を指の腹でまさぐられ、時折洋子の体はぴくぴくと震える。
「触られるのも、慣れてないんですか?」
 喉の奥から笑いを漏らしつつ、今泉が問うてきた。
 ぼんやりしてきた頭ではどう答えて良いか分からず、洋子はゆるゆると首を振るだけだ。
 もちろん慣れていない訳ではない。こんなにも心地のよい愛撫を、身に受けるのが久しかったのだ。
 下着の布地までたどり着いた指先が、微かに湿った中心を割れ目に沿って何度か擦ってくる。
「んん……んっ……」
 秘唇に隠されていた小さな突起まで指先で撫でられると、洋子は声を抑えきれなくなり、両足をもどかしそうに動かした。
 指で触れ続けられていた部分の湿りがじわじわと増し、熱をくすぶらせて疼く。
 布越しに指を咥えるように割れ目は動き、抑えきれぬ欲に洋子の顔が恥じらいの朱を浮かべる。
 そのさまを見て今泉は口端を笑みに歪めはしたが、焦らすでもなく下着の中に手を入れた。
 淡い茂みの下の陰唇は生温かい蜜を滲ませており、触れてくる男の指をぬめらせる。
 軽く力をこめただけで、秘唇の中へと招き入れられてしまいそうだ。
「中に挿れても……?」
 許可を求める今泉の問いに洋子は内心戸惑ったが、少しの間の後に頷いた。
0196222010/04/20(火) 13:55:30ID:zamGQCu5
 仕事で触られた事があるのは外側だけで、中まで他人に触れさせた事はない。
 それを厭わず受け入れられるのは、心許せる相手だからか。あるいは疼くその身が求めるからか。
 入り込んできた指は硬く骨張っており、彼女の指よりも一回り太い。
 狭く閉じていた粘膜を拡げ掻きほぐす動きもまた、女をよく知っている男のそれだった。
「く、ふっ……んん……」
 きゅっと口を閉ざして堪える洋子の耳に入るのは、熱に溶けそうな自身の息遣いと、秘部から響く淫らな水音。
 さらに空いている方の手に先程のように胸を弄られ、快感はとどまる事なく彼女の身体を昂ぶらせる。
「んぅっ……は、あぁ……」
 吐息と共に零れる蕩けたような自分の声に、洋子は思わず顔を強張らせた。
 達してしまいそうになった。想い人でもない男の手で。
 秘所はこれまでの心の奥底の飢えを示すように愛液に濡れ光り、男の指に襞をまとわせている。
 自分の意思に関係なしにひくひくと蠢くそこは、指では足りないと訴えているかのようだ。

 後ろめたさを覚えてか唇を噛んで声を殺す洋子に気付き、今泉の愛撫の手が緩む。
「我慢する事はありませんよ。辛くなるだけでしょう」
 見上げる洋子の目には、まだ迷いがうつろっている。それを拭おうと、彼は耳元で囁いた。
「どうせ今日で最後……でしょう?」
「……………」
 洋子はじっと男の眼を見つめ返し、思案した。
 やがて逸らされた目から迷いは失せていたが、彼女の表情はますます恥じらいに染まる。
「あの、じゃあ……私だけじゃなく、今泉さんも……」
 どうやら、自分だけが満たされる事には抵抗があるようだ。
 今泉に断る理由は全くないが、彼女の気持ちを知る分躊躇いはある。本当に良いのかと目で問い掛けると、洋子は小さく笑った。
「今日で最後……ですから」

 ゴムに包まれた、指とは比べものにならない熱の塊を秘唇で受け止めて、洋子は喉を反らしてわなないた。
 久方ぶりに男を受け入れたせいか、悦び震える身を抑えきれない。
 硬くそそり立ったものを飲み込んでは貫かれ、火照った肉壁を擦られ、掻き回される。
 体の内でざわめいていた熱を全て吐き出すように、彼女は唇から喘ぎを漏らしていた。
 何かに縋りたくて両腕を宙に伸ばすと、逞しい腕に抱き返された。ぐっとしがみついて男の肩に顔を埋め、温もりに浸る。
 耳に響く男の呼気はやや荒さを含んでおり、自身の呼吸と重なってますます昂ぶりは増していく。
0197222010/04/20(火) 13:57:12ID:zamGQCu5
 自分が本当に望んでいたのは、こういう事だったのかもしれない──今更のように、洋子は思う。
 自分を理解してくれている誰かと温もりを分け合い、感じ合うような繋がり。
 洋子の脳裏に、再び神宮寺の姿が思い浮かぶ。
 叶う事なら、あの人と求め合いたかった──

 掴みどころのない、想い尽くしても届いているのかさえ分からない、あの男性。
 偽りの名と、作り上げた自分。
 神宮寺にだけは、知られたくないと思っていた筈なのに。
 今ようやく自身の中の気持ちが見えた。本当は彼に、気付いてほしかったのだ。目の前の男性が分かってくれた事を、誰よりも先に。
 探して、見つけて、連れ出してほしかった。抱く感情が軽蔑の類であったとしても。
 こんなにも想い焦がれている自分がいるのだという事を、分かって欲しかったのだ。

 一際激しく膣内を掻き乱されて頂きに押し上げられ、洋子は愛しい男を想いながら、思考を外へと手放していった。


  *  *  *  *  *


 ぱたり、と閉じたドアの音で、洋子の意識は眠りの中から引き上げられた。
 目を開き、ぼやけた視界が鮮明になったところで、横たえていた身をゆっくりと起こす。
 部屋の外へ続くドアの側に佇んでいる今泉は既に衣服に身を包んでおり、手にしていた携帯電話をポケットにしまっている。
 ぼんやりと見つめていると視線に気付き、ああ、と声をかけてきた。
「起こしちまいましたか」
「いえ……お電話ですか?」
「ええ、まあ……」
 少し語尾を濁したが、今泉は落ち着き払ってソファーに腰を沈める。
「店には連絡しておいたんで、その辺は全く問題ありません。いくらか名は知れてますから、しばらくはあの界隈には顔出さない方がいいでしょうがね」
「あ……すみません。本当に何から何まで……」
「ナンバーワンのリョウコちゃん相手に、好き放題やらせてもらいましたからね。これくらいの事は」
 冗談めかした今泉の言葉に、洋子は頬を赤らめる。
 傍らに簡単に畳んで置かれていたブラウスを羽織り、他の衣服を抱えてベッドを降りると、今泉に遠慮がちに尋ねてきた。
「あの……すみません。シャワーをお借りしてもよろしいでしょうか」
「どうぞ。そこのドアの先です」
 礼を言って足早にバスルームへ向かう洋子。初々しささえうかがえるその様に、今泉は微かな笑みを浮かべた。

 一服しながら今泉は再び携帯電話を取り出し、液晶を見つめる。
 開いたのは発信履歴のページ。一番上には神宮寺の名が表示されていた。
 発信時間は七時三十分。つい十分程前のものである。
 日頃の疲れもあった為か、洋子はぐっすりと眠りこんでしまっていた。
 起こすのも忍びないし、神宮寺にも断りは入れてある。
 だが念の為にと連絡を入れてみたところ、起きぬけのような冴えない声で応答が返ってきた。
 一目置いている男の聞いた事のない声音に少々驚きつつも用件を話すと、曖昧な返答だけ聞いて通話を終えた。
 これほどの効果をあげるとは思っていなかった。今泉は苦笑を浮かべる。
 これから先どうしていくかは神宮寺の問題で、今後そこにまで踏み込む事はおそらくないだろう。
 そしてそれは洋子にも言える事だ。風俗嬢を辞めた事で、行き場のない気持ちの矛先は失われた。
 自分をおとしめるような行為にはもう走らないだろうが、想いを満たせた訳ではないだろう。
 だがそれもやはり、彼女自身で向き合うべき問題でしかないのだ。
0198222010/04/20(火) 13:58:39ID:zamGQCu5
 しばらくしてバスルームから出てきた洋子は既に衣服を纏っており、普段と変わらぬ笑みを今泉に向けてきた。
「ありがとうございました……ところで、今何時頃でしょう?」
「ああ……八時を過ぎましたね」
 今泉が腕時計に目を向けて答えると、洋子の笑みが凍りつき、焦りの色を顔に浮かべた。
「大変……早く帰らないと」
「御苑さん?」
 問い掛けると、今日は仕事なのだと言う。
 今から自宅へ戻って事務所に出勤するとなると、遅刻は免れないだろう。
 そう考えたからこそ、今泉は少し前に神宮寺と連絡をとったのだ。彼女は休むかもしれないと。
「今日は休ませてもらったらいかがですか?」
 連絡済みだと言う訳にもいかず提案する今泉だが、そうはいかないと洋子は携帯電話を取り出す。
「書類がかなり溜まっているんです。遅れてでも行かないと……」
 言いながら慌ただしくボタンを押し、電話を耳に当てる。
「あ、先生。おはようございます」
 少し遅れそうだと申し訳なさそうに告げる洋子の表情は、やや気まずげにしかめられている。
 真面目そうな彼女の事だから遅刻をした事などなかっただろうし、昨夜の件がやましいのだろう。
「……え? あの、でも……」
 戸惑いの声を上げる洋子。焦りは失せたが、明らかな困惑の色が見える。
 それから何言か言葉を交わして通話を終わらせた洋子だが、呆気にとられた表情で携帯電話を閉じる。
「何ですって?」
 見当はついているが、あえて尋ねてみる。
「今日も休んでかまわないと……」
 洋子を気遣ってか。あるいはまだ向き合うだけの覚悟が出来ていないのか。
 いずれにせよ、想定通りの答だった。
「なら、ゆっくりしていったら良いでしょう。アタシも今日は大した用事もない」
 ソファーにどかりともたれかかってくつろいで見せる今泉。
 しかし洋子は頷かない。真剣な眼差しで携帯電話を見つめて、しばし佇んでいた。

 ややあって後、洋子はすうっと顔を上げた。その瞳にはもう、惑いはない。
「……やっぱり、行きます」
 そう言って改めて身の周りを整えると、今泉に深く頭を下げた。
「今泉さん。昨夜はお世話になりました……本当に」
「礼を言われる事はしちゃあいませんが……」
 言葉を返しながら、煙草の火を揉み消す。
「大丈夫なんですか? 本当に」
「はい」
 答えて洋子は、すっと背筋を伸ばす。
「先生の助手は、私一人ですから」
 助手──そう言う洋子の声音に少しばかり無理を感じたが、今泉はもはや何も言いはしなかった。
「御苑さん」
 立ち上がりながら、彼は何とは無しに口を開いていた。
「良ければまた、お相手願えますかね?」

 洋子が目を見開いて、今泉を見つめる。
 さほど間を置かずに、その目は細められた。
「もう、充分です。ありがとうございます」
 気を遣って言っているものと思われたらしい。
 その誤解に、今泉は軽く安堵していた。
「では、お邪魔しました」
「ああ、送りましょう」
「助かります」

 部屋を出ていく洋子の顔は、迷いを吹っ切った女のそれとなっていた。
 それを見届けると、今泉は口元に満足そうな笑みを零しつつ、部屋のドアに鍵をかけた。
0199222010/04/20(火) 14:01:02ID:zamGQCu5
終了です。
今泉が人のいいあんちゃんにしか見えない…
02005972010/04/21(水) 09:28:36ID:y37hbopN
>>199
ありがとうございます!念願の今泉エロ、感無量です。
心理描写に気を使われてるな〜と思いましたが、やはり通常では想定できない洋子×今泉ならではのご苦労でしょう。
また機会がありましたらぜひともお願いします!
0201名無しさん@ピンキー2010/04/21(水) 13:21:37ID:V0dk8KYU
店員さんの英会話のWEB版を無償公開してから死んでくれ。
俺はキャッシュで全部ひろったが。
0203名無しさん@ピンキー2010/04/22(木) 20:38:02ID:iNNnRxME
「やれやれ、ジオスの話か?気にするな。誤爆くらい誰にでもあるさ。」

と神宮寺君が言っておったぞ。
ふもっ。
0205名無しさん@ピンキー2010/04/26(月) 21:26:29ID:wjFTqgIr
>>199 乙です。
>今泉が人のいいあんちゃん

鬼畜な今泉と、それに溺れてしまう洋子が見たい気もする。
0206名無しさん@ピンキー2010/05/01(土) 00:43:33ID:9+skJINT
なんでか陵辱がすごく様になりそうな洋子
淫語とかは似合わなさそうなのにな
0209名無しさん@ピンキー2010/06/12(土) 22:04:54ID:zyCfD+sK
ho
0210名無しさん@ピンキー2010/06/14(月) 22:01:12ID:s+/VFsJn
>>199
面白かったよ。今泉好きだから嬉しいというか。
また書いてくれたら嬉しい。
0211名無しさん@ピンキー2010/06/15(火) 23:31:33ID:rbdABXmH
横浜港で考えてみた。

エバが行方不明になってから3日目。
神宮寺を手伝うため洋子(吉瀬美智子)がバラカ共和国領事館を訪ねると…
領事室にはやけに調子のいい男ことロバート・K・バスク(高田純次)が待っていた…。


だめだどう頑張ってもエロにならずセクハラになる。
0212名無しさん@ピンキー2010/06/16(水) 06:00:20ID:yVCRFZZU
純じいって時点でもう…w
追求は適当にかわしまくってそっち方面にばかり話持っていきそうだ。
0213名無しさん@ピンキー2010/06/17(木) 09:39:35ID:WPQBq3gX
横浜港ならむしろ青龍会の方がいけるような気が…
ケイコクが来るまでの話だが。
0214名無しさん@ピンキー2010/06/19(土) 22:54:02ID:jUp2gggT
せっかくだから青狼会とロバートでエバとくんずほぐれつ

…日之出が発狂するなw
0215222010/06/20(日) 19:50:07ID:81Tu8q2J
>>179氏のネタをお借りして投下します。

・洋子凌辱もの
・洋子→神宮寺→洋子の順で視点変えて三回に分けて投下予定
・鬱エンド予定
0216222010/06/20(日) 19:54:45ID:81Tu8q2J
 ──ここは、何処だろう。

 眠っていた意識が少しずつ自身の元に戻ってくるのを、洋子は感じていた。
 靄がかった思考が晴れてきた時、自分が何処にいて、それまで何をしていたのか、うっすらと思い出す。
 事務所で、書類の整理をしていたのだった。
 神宮寺が調査に出て、自分は留守を預かって……いつもと変わらぬ流れの筈だった。
 しかし今、彼女の体は冷たく薄汚れたコンクリートの上に横たえられていた。
 空気と共に体内に入り込んでくるのは、埃っぽく澱んだ臭いだ。明らかに、居慣れた場所の空気ではない。
 どうして自分は、こんな所で眠ってしまっていたのだろうか。

 目を開いてみると、洋子は驚かずにはいられなかった。
 視界に見えるのは目を閉じていた時と変わらない、真っ暗闇。まばたきしてみても、何一つ瞳に映らない。
 目がおかしくなってしまったのか。あるいはまだ夢の中にいるのか。
 困惑しながらも、彼女は別の答を見つけ出す。
 両の眼を覆い隠すように顔に宛われている、厚い生地の感触。おそらく、目隠しだ。
 取り払ってしまおうにも、両手は背に回され、固く縛られてしまっている。
0217222010/06/20(日) 19:56:38ID:81Tu8q2J
 後ろ手ながらも掌で床を探ってみるが、手を汚すばかりで何も得られなかった。

 何故、自分が。どうして、こんな事に。

 洋子が混乱する頭をなんとか働かせようとしている内に、声が聞こえてきた。
 男の声。一つや二つではなく、いくつも。
 その内の一つ──品なく嗤う野太い声は、聞き覚えのあるものだった。
 神宮寺の留守中に訪ねてきた客だ。
 それに気付くと、ぼんやりとしていた記憶が鮮明に浮かび上がり、意識を失う直前の光景が、洋子の脳裏によみがえってきた。

  *  *  *  *  *

 依頼をしたいと言って、その男は事務所に入ってきた。
 シワのよった背広と派手なシャツをだらしなく身につけた姿に、ふてぶてしさを隠しもしない態度。
 見るからに堅気の人間ではないと分かった。
 しかし客を話も聞かずに帰す訳にもいかず、普段の来客時と同様に応接室へ通した。
 男の舐めるような視線に不快感を覚えながらも、洋子は努めて丁寧な対応を試みようとしていた。
 だが、茶を淹れようと男に背を向けた、その時。
 後ろから、男の両腕が伸びてきた。
 大きな図体からは考えられない程の速さで、右手は彼女の体を抱き竦め、左手は布きれをもって口を塞いだ。
0218名無しさん@ピンキー2010/06/20(日) 19:57:53ID:81Tu8q2J
 思わず息を深く吸うと、甘い香りが鼻を通り、頭の中を白く塗り潰していった。
「……っ………、……」
 声をあげる間もなく。
 がくりと両膝が崩れ落ち、彼女の意識は眠りの泥沼の中に沈められていったのだ。

  *  *  *  *  *

 記憶は、そこまでで途切れていた。
 数秒の回想の後、洋子の顔が色を失くし、零れる息が押し殺せぬ恐怖に震える。
 ──何という事だろう。こんなにもた易く、見ず知らずの者達に拉致されてしまうとは。
 自分の無力さを深く嘆きながらも、息を潜めて耳をすまし、周囲の様子をうかがいながら、平静を欠いた頭で思考を巡らせる。

 自分を拉致したあの男に、面識はなかった。
 聞こえてくる他の声も、聞き覚えのないものだ。
 事務所を訪れた事からも、この男達は神宮寺の事を知っていると考えて良いだろう。
 彼には物々しい知り合いも少なからずいるが、単なる知人がこんな真似をする理由など思いつかない。
 となると、ここにいる者達は神宮寺の敵か、味方か。
 ──考えるまでもなく、前者であろう。

「……………」
 ごくり、と息を呑む。
 自分がこんな状態であるという事は、神宮寺にも危害が及んでいるかもしれない。
0219222010/06/20(日) 19:59:21ID:81Tu8q2J
 あるいはこれから、彼女を人質として彼に接触しようとしているのか。
 いずれにせよ、このままこうしている訳にはいかない。何か手だてを──

 考えながら足をそっと動かした、その時だった。
 靴の踵に硬いものが当たる感触と共に、大きな音が響いた。
 金属音だ。空き缶か何かが床に倒れたような、甲高い音。
 男達の声が、止んだ。

 こつ、こつ、と低い靴音がいくつか近付いてくる。ゆっくりと、瞬きさえ出来ない程の恐れを、煽るように。
 逃げるどころか、体は少しも動かぬのに、心臓は早鐘のように激しく音を立てる。
 焦ってはいけない──言い聞かせる言葉も、気休めにすらなりはしない。
 やがてまばらな足音は失せた。
 背中に気配を感じる。無数の視線が、自分に向けられている。
「っ──!」
 いきなり、縮こまっていた肩をぐいっと引かれ、仰向けにされた。
 驚きと怯えに漏れてしまった細い声に、嘲笑の声が応える。

 いけない。このままでは、いけない。
 逃げなければ──

 洋子が何かに弾かれたようにその身を捩じらせたのと同時に、男達の気配が一斉に動き出した。
0220222010/06/20(日) 20:00:33ID:81Tu8q2J
 勢い任せに両足を振るってじたばたと体を転がすが、複数の硬い腕に押さえ込まれ、身を持ち上げる事すら叶わなくなる。
 髪を振り乱さんばかりに首を振って抗ったが、頭を掴まれしたたか床に叩きつけられる。ぐらりと意識が揺らぎ、眩暈を覚えた。
「くっ……うぅ……」
 男の内の一人にのしかかられ、もう身動きがとれない。
 荒く生温い息がうなじにかかり、洋子はぞくりと身震いする。
 スカートの中にいくつかの手が伸びてきて、柔らかな腿を掌で撫で回してきた。
 衣服の上や隙間から胸の膨らみや肌を滑る見えない掌達の感触は、不快を通り越したおぞましさを覚えさせるばかりだ。
 暗闇の中にいる女に男達は囁き、笑いかける。

 ──無駄だ。
 ──逆らうな。
 ──たっぷり鳴いてくれよ。

 身を取り巻く異様さに満ちた熱気と、それをもたらす獣のような荒々しい吐息。
 全身を這いずるいくつもの手、震える喉をべろりと舐める生臭い舌、馬乗りになった男が動くたびにぐりぐりと腹に押し付けられる、硬く滾ったもの。

 ──い、や……いや……いやぁっ……!

 心はそれだけを叫ぶのに、言葉にならない。
0221222010/06/20(日) 20:02:15ID:81Tu8q2J
 がたがたと身をわななかせて怯えるばかりの獲物を見下ろす男達の顔に、僅かな哀れみも存在しない。獣欲にぎらついた眼と、嗜虐を待ち望む下卑た笑みばかりだ。
 彼女の視界にそれは入らないが、気配で分かる。避けられない恐怖が、抗えない暴虐が、闇から迫ってくるのだ。
「ひ……っ……!」
 いきなり胸に押し付けられた手が強く服を引っ張り、がばっと大きく前を開かれた。
 慌ただしい動きで腕は肌着の中を這い回り、薄汚れた掌でべたべたと柔肌を揉む。
 腕の数は徐々に増え、間もなく服は前を全開にされ、スカートも剥ぎ取られてしまった。
 白磁の肌はこもった外気に晒され、臭いさえ嗅ぎ取れそうな程の淫欲に満ちた熱を感じて震えている。
 着衣を乱される最中に腕の拘束は解かれたが、恐慌に判断力を奪われ、逃げようと思う事すら出来なかった。
「ん……っ!!」
 呼吸もまともに落ち着かせられぬ内に、唇を生温かいものに塞がれた。
 表面はがさついているが、肉の弾力がある。べちゃりと濡れた音を立てて口内に入り込もうとするぬめった感触は、まるでナメクジか何かのようだ。
0222222010/06/20(日) 20:03:42ID:81Tu8q2J
 両頬をしっかりと固定され、首を振って拒む事も出来ずに、洋子は顔も分からない男の口吻を受けていた。
 それを彼女が理解した瞬間、頭の芯が、かっと熱くなった。
 唇を奪われた事実がただただ悲しくて、目隠しの下で一筋涙が伝う。
 この先、それ以上の行為が自分を待ち受けているのだと分かっていても、動揺は抑えられはしなかった。
 きゅっと歯を噛み締めた女の唇を、男の汚れた舌がつうっとなぞる。
 おぞましさに全身が鳥肌を立て、今度こそ悲鳴を上げてしまいそうだ。
 彼女を脅かすものは、当然それだけではない。
 残りの男の手や舌が、剥きだしの肌を掴み、捏ね、舐め回している。
 内腿に熱く生臭い息が吐きかけられ、やがてそれが秘所を覆うショーツにたどり着く。
 はぁ、はぁ、とわざと強く息を吹き掛けて布越しにむしゃぶりつかれ、洋子はとうとう声を張り上げた。
「やっ……いやぁっ!! やめてっ……やめ──んっ」
 口付けをしていた男はこれを逃さなかった。
 大きく開いた唇に指を挟み込んで閉ざせなくし、強引に舌を突っ込んで口内を掻き回す。
0223222010/06/20(日) 20:04:43ID:81Tu8q2J
「ふ、んんぅっ……」
 流れ込む他人の唾液に嘔吐き、ついには下着を剥がされて秘部や胸ををいじくり回されながら、洋子は眼からぽろぽろと熱い雫を落とす。

 ──どうして、こんな事をするの──
 ──どうして、こんな事になるの──

 幾度言葉を頭に浮かべても、理不尽な暴力は止まらない。
 茫然自失となった女にかまわず、男達は思うがままにみずみずしい肉体に群がっていった。

「んっ……く、ぅ……あぁ……」
 男らが、愛撫と呼ぶにはあまりに身勝手な行為を重ね続ける内に、彼女の様子に明らかな変化が生じ始めていた。
 荒い呼吸はそのままだが、時折零れる溜め息に気怠さがうかがえる。
 疲労ゆえのものではないと分かるのは、吐息に多少ながら甘い声が混じっているからだ。
 決して嫌悪が薄れた訳ではない。べたついた掌や舌で触れられ続ける間、喉の奥から込み上げてくる吐き気を必死で抑えこんでいるのだから。
 しかし無為に抵抗をしないせいか、極端な痛みを伴うような乱暴をされる事はなく、いくらか緊張はやわらいでいる。
 心でかたくなに拒んでいながらも、彼女の体は徐々に与えられ続ける仕打ちに慣れ始めてきていたのだ。
0224222010/06/20(日) 20:06:43ID:81Tu8q2J
「こいつ、感じてやがる」
「いやらしい女だ……」
 硬く張った乳首や潤い出した陰部を弄っている男らが、品なく笑いながら言う。
「っ……ぅ」
 女体の本能的な反応にすぎなくとも、己の体がひどく淫らなものに思えて、洋子は悲しげに顔を背ける。
 目隠しのおかげで男達の様子は分からないのだが、女の反応を見せるたびに胸を抉るような言葉ばかり投げつけられ、泣き叫んでしまいそうだった。
 言葉と行為で執拗にいたぶられ、彼女自身限界を感じ始めていた頃。

「っ……!?」
 室内に重苦しい音が響いた。数人の男の手が止まる。
 重い金属を引きずったような低い音の後に、洋子を取り巻いている者とはまた別の複数の足音が立つ。
 それから間もなく、同じく大きな金属音と共に、がしゃりと何かが閉じる音がした。
0225222010/06/20(日) 20:07:42ID:81Tu8q2J
 誰かが、この部屋に入ってきたのだろう。少ししてから彼女はそう理解した。
 この状況から抜け出せるのではないか──そんな淡い期待は一瞬で打ち消された。
「上手くいったみたいだな」
「あぁ。運んで来るのは骨が折れたぜ」
 迎え入れる男達に応える男の声が、打ち解けている者同士のそれだと分かったからだ。
 その何者かが歩みを進める都度、ずりずりと何か重たいものを引きずるような音が聞こえる。
 一体、何を運んで来たのだろう。
 どさりと何かを放る音と共に、引きずる音は聞こえなくなった。
 代わりに足音が、彼女の元へと近付いてくる。
「じゃあ、お楽しみといこうかね」
「おお、待ってたぜ……!」
 四方から降ってくる、野卑な笑いと我先にと主張する声。
 再びこの場の男達の視線が自分に向けられた気配を察し、洋子は身を竦ませた。
0226222010/06/20(日) 20:08:39ID:81Tu8q2J
「あ、っ……!」
 両足をぐいっと大きく開かれ、その間に男が一人体を割り込ませてきた。
 開かせられた股間を真正面から見られてしまう体勢に、改めて羞恥心を濃くする洋子。だが、それ以上に恐怖の方が強い。
 これまでは外側を弄り回されるだけだったが、その先まで行為が及ぼうとしている。
 どんなに腕や足に力をこめても、何の助けにもならない。
 何も、出来ない──

「いや………」
 洋子が蚊の鳴くような声で拒絶の言葉を零すと、男が嗤ったような気がした。
 微かに頭に届いたその声が、男の表情を連想させる。一片の慈悲もない、残酷な笑みだった。
 秘唇に欲望の猛りの先端を押し付けられたその瞬間、洋子は無意識に誰かを呼んで助けを乞うていた。
 それが誰だったかも分からぬ内に、彼女は見知らぬ男を受け入れ、何度目かの涙を流した。
0227222010/06/20(日) 20:10:11ID:81Tu8q2J
とりあえず、ここまで。
0228222010/06/20(日) 20:13:15ID:81Tu8q2J
一つ名前入れ忘れたorz
続きは一月後くらいにでも…
0229名無しさん@ピンキー2010/06/21(月) 22:38:01ID:VJD/vqzW
健気な洋子が可愛い&可愛いそう
&ヤクザ者もっとやれ&でも神宮寺先生早く助けてあげて!!

複雑ですw続きが楽しみ。職人様乙
0230名無しさん@ピンキー2010/06/22(火) 20:39:52ID:IW9L1v2r
>226
洋子さんは責められるている姿が美しいです。興奮します。
イッてしまうところが見たいですね。
いつでもいいので続き楽しみにしています。
0231名無しさん@ピンキー2010/06/24(木) 09:14:13ID:zUHwZKGO
>>80
超亀だが次の新作にDSiウェア分再録されるとさ。良かったな。
0232名無しさん@ピンキー2010/06/24(木) 20:02:19ID:0maZBCMZ
>>205
同意。
今泉のヤクザらしいダークサイドも見てみたい。
基本礼儀正しい、抑制された態度だからなー。

>>226
乙。続き待ってます。
0233名無しさん@そうだ選挙に行こう2010/07/11(日) 00:42:55ID:gASQcN7p
>>214
なんとなく日ノ出って下手そうだよね
神宮寺先生もあまり上手そうなイメージがわかないw
0234名無しさん@そうだ選挙に行こう2010/07/11(日) 21:37:29ID:m9dYwGLa
ひのでは早漏っぽい感じがするwいや、なんとなくだけど。
サブは遊び慣れてはいなさそうではあるな。
0236名無しさん@ピンキー2010/07/12(月) 15:27:18ID:jn0bYpvu
>>233
禿同。サブは不器用だけど、勢いでカバーするタイプに思える。
今泉はややS寄りのテクニシャンかなw
0238名無しさん@ピンキー2010/07/12(月) 20:17:31ID:GkwJXuh3
仕事柄自然と上手くなっていった的なイメージがあるな>今泉
飲み込みも早そうだし。

>>235
イったらイったで「モウ、ヒトシッタラ…」とか言って照れてるエバの姿が目に浮かぶ…w
神宮寺って何気にアマンアマンバカップルいるな。正隆祥香とか。
0239222010/07/15(木) 22:19:20ID:U2m2Cls9
>>216-226の続き投下します。
・神宮寺視点で>>225辺りから
・洋子凌辱もの
・ますます鬱
0240222010/07/15(木) 22:20:49ID:U2m2Cls9
「……っ……」

 身を打つ強い痛みに、神宮寺は安らげぬ眠りの中から叩き起こされた。
 思わず呻きを漏らすが、何かで口を塞がれているらしく、まともに声を上げる事も叶わない。
 ずきずきと響く激痛のせいで頭は上手く働かず、瞼をこじ開ける事さえ困難だ。彼は焦りに顔をしかめる。
 それでも状況を把握しようと必死に思考を巡らせる内に、体の感覚が少しずつ戻って来ていた。
 まず感じたのは、錆びた鉄の臭いと埃っぽい空気だった。
 口を塞いでいる物の隙間からカビ臭く澱んだ空気が感じられる事からも、建物の中だという事は分かる。
 そして耳に入ってくるのは、複数の男達の哄笑と荒い息遣い。話し声。
 それと、途切れ途切れに届く蚊の鳴くような微かな声……これは、女のものだろうか。
 神経を研ぎ澄ませて男らの会話の内容を聞き取ろうとするが、焼けつくような後頭部の鈍痛に阻まれ、思うようにいかない。
 両手は後ろで縛られ、体は柱か何かにくくりつけられているらしく、全く身動きがとれなかった。

 ──何が、あった………何をされた……?

 痛む頭を無理矢理働かせ、記憶の欠片を探り当てては繋げていく。
0241222010/07/15(木) 22:22:16ID:U2m2Cls9
 確か、昨日受けた依頼の調査をしていたのだった。
 今回は危険を伴いそうな仕事ではないという事もあり、何事もなく順調に調査を進められていた。
 しかし、三軒目の目的地での聞き込みを終えた頃だったろうか。次の行き先への道を外れ、神宮寺は入り組んだ路地に足を踏み入れた。
 誰かに、後をつけられているような気がしたのだ。
 何度か角を曲がって探りを入れてみると、歩数は二人分、いずれも男のそれであると分かった。
 急を要する案件ではないが、仕事の邪魔をされては困る。
 職業柄、厄介な輩の恨みを買う事は少なくない為、その手の者だろうという予感はあった。
 撒いてしまう事も出来たのだが、あえてそれをしなかった。
 相手の素性を知っておくべきと判断したのもそうだが、自分を付け回す者の顔も見ずに振り切るのは性に合わないというのが本音だった。

 ──懲らしめてやろうなどとは思わない。ただ、話をするだけだ。
 そう心で呟くと、神宮寺は人気の少ない路地裏に向かって行ったのだった。


  *  *  *  *  *
0242222010/07/15(木) 22:24:08ID:U2m2Cls9

「……んの野郎っ……!!」
「……もう一度聞く。何故俺を付け回していた?」

 人の気配が一切ない寂れた路地で、神宮寺は睨みつけてくる男二人と向き合っていた。
 ここに辿り着いてすぐに放った同じ言葉に、男達は力任せの拳で答えた。
 勢い込んだ攻撃を軽くかわし、振り返りざまに腹に拳を叩き込むと、図体だけの男共はた易くその場に膝をついた。
 顔を確認してみると、見覚えのある者だとは分かったが、名前は出てこない。
 少し前、ヤクザの幹部とその取り巻きに今のように調査の妨害をされた事があった。その時の連中だったろうか。
 肩で息をしながらも、殺気立った視線の強さを緩めない男達。
 冷めた目で見下ろしながら、神宮寺は軽く溜息をついた。
「こっちは暇じゃないんだ。用があるなら、さっさと済ませてくれないか」
 数歩前に出て男の顔を覗き込む神宮寺。彼の眉が、微かに動く。
 苦しげに歪んだ男の表情に、何故か笑みが浮かんだように見えたのだ。
「簡単にはいかねぇか……だが、すましてられんのも今の内だぜ?」
 まだ懲りていないようだが、先程の手ごたえからして負け惜しみにしか聞こえない。
0243222010/07/15(木) 22:25:54ID:U2m2Cls9
 もう少しきつめに脅しつけたら良いだろうかと、神宮寺が口を開きかけた時だった。
「美人だよなぁ、てめぇんとこの助手」

 ──何故、彼女の話が出てくる。
 あまりに唐突な言葉に、疑問符を浮かべる。
 訝る神宮寺に向けられる男達の笑いは先程よりはっきりと目に映った。
「アポなしでわりぃが、仲間がてめぇの事務所に邪魔したそうだぜ。少し前によ」

 固めかけていた拳が、ぴくりと震えた。
 眼光を強めて男を見据えると、何が楽しいのか、口端をにぃっと緩める。
 思うより先に、手が動いていた。男のシャツの襟をぐっと掴み、引き寄せる。
「……どういう事だ」
 必要以上に低い声が口から漏れた。
 冷静にならねばと言い聞かせても、抑えがきかない。
「今頃ウチの奴らとよろしくやってるところだろうさ……お、また殴んのか」
 怒気をみなぎらせていたさっきまでとは打って変わって、落ち着いた様子で男は神宮寺を嘲る。
「知らねぇぞ? 下手に手ぇ出したら女がどうなるか……」
 そこまで言った辺りで、男の目線が一瞬神宮寺の顔から逸れた。
 彼の肩越しに何かを見やったようだった。まるで、誰かへの目配せのような──
0244222010/07/15(木) 22:27:26ID:U2m2Cls9
「………───」
 その時、背後に気配を感じて、神宮寺は振り向いた。
 そこにあったのは、棒状の何かを振り上げる別の男の姿──。
 気付くのが遅すぎた。もはや避ける事はかなわない。
「……っ……!」
 かろうじて腕で防ぐと、焼けるような衝撃と痺れが走る。金属が打ち当たる鈍い音。振り下ろされたのは鉄パイプだった。
 焦りは判断を鈍らせる。今は目の前の相手に集中しなければ。
 痛みと動揺を強引に押し止め、再度パイプを振りかぶる男に神宮寺は向き合おうとした。二人の男に背を向ける形で──。

 再びの強い衝撃と共に、視界が揺れた。
 後頭部への打撃──気付いた時には、彼の体は地に伏していた。
 ざまぁみろ。吐き捨てられた言葉と嘲笑。勝ち誇ったように見下ろしてくる複数の視線。
 もう一度脳を揺さぶるような一撃を食らわされ、瞬く間に意識は散っていった。


  *  *  *  *  *


 こき使った頭が、締め付けられているかのようにぎりぎりと痛む。
 怪我だけのせいではない。自身の油断に、憤らずにはいられなかったのだ。
 だが、後悔ばかりに苛まれている場合ではない。あの男が言っていた事が事実なら……

『……仲間が……事務所に……』
0245222010/07/15(木) 22:29:20ID:U2m2Cls9
 ぐ、と拳に力がこもる。
 一刻も早く、無事を確認しなければならない。出来る事なら、彼女に危害が及ぶその前に──

「ああぁぁっ!!」

 不意に響いた鋭い悲鳴に、彼の思考は刹那止まった。
 聞き覚えのある女の声。今まさに案じていた女性のそれだった。
 思わず両目を見開くと頭の痛みは激しさを増し、目の奥がちりちりと瞬く。
 それらを押さえ付けてぼやけていた焦点を合わせると、信じ難い光景が映りこんできた。

 寂れた倉庫のような室内の中央に、十人くらいの男達が固まっていた。
 一様に卑しい笑みを顔に浮かばせ、彼らの輪の中心にいる何者かを見下ろしている。何者か──
 視線を床へ下ろす。
 息を呑んだ。
 下半身を丸出しにして、勢い込んで腰を前後に振る男と、その男に犯されて拒絶の声を上げている女がいた。
 つい先程聞こえた悲鳴と同じ声。毎日のように顔を合わせ、共に仕事をしている助手、その人だった。
 今朝、自分を事務所で送ってくれたその柔らかな声音は影もなく、身を脅かされる恐怖と苦痛に張り詰めている。
「───……!!」
 何故、と考える間もなかった。
 骨を折らんばかりの力をこめて身を捻り捩じらせ、後ろ手で固めた拳で柱を強く叩く。
0246222010/07/15(木) 22:30:39ID:U2m2Cls9
 ぐらぐらと意識を掻き乱さんとする頭痛にも構わず、頭を激しく振り、口を塞ぐ欝陶しい猿轡を外そうと試みる。
 しかしその行為を嘲笑うかのように、彼を縛る荒縄はスーツ越しの身に食い込むばかりで、緩みもずれもしない。
 物音に気付いた男が、暴れる神宮寺の元へ歩み寄ってきた。
 ニタニタと癇にさわる笑みを向けてくる。食いしばった歯に、さらに力が入った。
「ようやくお目覚めか、探偵さんよ」
 射抜かんばかりの強い眼光で睨む彼を、小馬鹿にしたように見下ろして男が口を開いた。
「そちらの別嬪さん、ちょっと味見させてもらってるぜぇ」
 男が指し示す先で、彼女が辱められている。
 ブラウスは開かされて下は全て剥ぎ取られた姿を、何人もの男達の前に晒され、そんな中で犯されて、泣いている。
「俺ら全員の気が済んだら解いてやっから、まぁ、しばらく黙って見とけや」

 ──出来る訳がない。

 男の言葉など聞こえていないかのように、神宮寺は必死に体を揺さぶり続ける。
 縄は硬い上に何周にも渡って巻かれており、引きちぎる事など到底不可能だ。
 彼にもそれは分かっている。無駄だという事くらい、分かっている。
0247222010/07/15(木) 22:32:00ID:U2m2Cls9
 それでも、黙って放っておけるような光景ではない。
 何かせずにはいられない。
 そんな神宮寺を鼻で笑うと、
「くたばらねぇ程度にしといてくれよ。観客が眠りこけちまったらつまらねぇからよ」
 それだけ言って、男は神宮寺に背を向けた。
 男が歩いていく先では、洋子が今も秘所を突かれて苦しげに喘いでいた。
 目隠しで表情は分からないが、時々唇をぎゅっと噛み締め、いやいやと首を振って男を拒んでいる。
「や、あっ、いやっ……! ぬい、て……抜いてっ……!」
 ぱん、ぱんと腰を叩きつけられ男根で膣を抉られるたびに、開ききったすらりとした両足がひくひくと震えている。
 投げつけられる下劣な笑いと言葉の合間に響く悲壮な声が、聞き遂げられる筈のない懇願の言葉を紡いでいる。
 汚い床に腕を押さえ付けられてもがく細い指が、訪れぬ助けを求めて目一杯伸ばされている。
 酷く哀れな有様の彼女が、今目の前にいるというのに。
 成す術もなく、ただ見ている事しか出来ない。
 惨めな自分や彼女を嘲笑う男達に、呪う言葉一つさえ吐けない。
 噛まされた猿轡の隙間に、血の味が滲むのが分かった。
0248222010/07/15(木) 22:33:24ID:U2m2Cls9
 神宮寺が無為に体力を消費し続ける間にも、洋子を犯す男の律動の動きは速まっていく。
 味わう為のものから、達する為のものへと。
 出る──男の声から察した彼女の唇が、より濃い恐れを訴えて引きつる。
「ひっ、ぃっ……! いや、やめて、やめっ」
 願いが届く事もなく。
 ばんっ、と一際強く腰を打ち付けた体勢で、男の動きは止まった。
 彼女の唇が、悲鳴をあげていた形のままで震える。
 情けない呻き声とだらしのない男の顔のおかげで、何が起きているのかよく分かる。
 周りの男達が嗤う声が、いやに遠くから聞こえてくる気がした。

 ふぅー、と心底すっきりした様子で溜息をつき、男は洋子の中から出ていった。
 啜り泣く彼女に休む間も与えず、別の男が股の間に割り込んで一物を突っ込む。
 口元を押さえて鳴咽を漏らすのを愉快そうに笑いながら、取り巻いていた男の一人が彼女の手を掴み、自身のペニスを握らせた。
「っ……うっ、あ、いやっ……」
 感触で察してしまったのだろう、洋子は顔をそれとは逆の方へ背ける。
 それでも構わず男は女の指を絡め、上下にしごかせつつ柔らかそうな頬にぐりぐりと擦りつける。
 くぐもった泣き声が、ますます止まらなくなった。
0249222010/07/15(木) 22:35:02ID:U2m2Cls9
 喉の奥が、焼けるように熱い。
 彼女の掠れた悲鳴も。男らの耳障りな声も。
 眼前で汚されていく女の身体も。肌で感じ取れる程に濃い性の臭いも。
 殺意と違わないくらいの激しい憎悪を、より深く煮立たせ、心中に凝り固めていく。

 ──だが、もしそれだけならば。
 強い激情の中に一つ、異物のような自問が浮かぶ。
 ──何故、目を背けないのか。
 彼女や自分にとってこの上なく残酷なこの光景に、憎しみしか覚えないのなら。
 どうして自分は、直視せずにはいられないのか──

「くっ……あ、うぅ……」
 その答が形になる前に、洋子に覆いかぶさっていた男が半萎えになったものを引き抜いた。
 早過ぎだ、とはやし立てる取り巻きは、まるで遊んででもいるかのように愉しそうにしている。
 彼らが時折投げかけてくる侮蔑の視線と相まって、荒んだ心をさらに逆撫でしてくる。
 忌々しい──胸中で毒づくも、舌打ちさえ出来ないこの身こそ、何より腹立たしかった。
 どれだけ苛立ちをつのらせても、彼女への仕打ちは収まらない。
 次に洋子に近付いた男は、仰向けに横たえられていた彼女の体を俯せにひっくり返した。
0250222010/07/15(木) 22:36:18ID:U2m2Cls9
「っ……! うっ……く……」
 両手を床について上半身を起こす洋子。その体が、少しずつ前へと進もうとする。
 掌や膝を汚しながら、ずりずりと音をたてて必死に逃れようとする彼女を見て、男達はやはり馬鹿みたいに笑っている。
 視界を閉ざされて弄ばれている彼女の姿は、あまりにも哀れで、孤独だ。
 手を伸ばしてやれたなら、声をかけてやれたなら、どんなに良かっただろう──

 そんな風に思いながら、結局逃れられずに腰を掴まれ後ろから挿入される洋子の姿を見ていた。
 彼女はまた苦しそうに眉を寄せ、声をあげる。
「ひぁっ……もう、いやっ……! いやぁっ……!」

 ああ、だが、気のせいだろうか。
 絶えぬ拒絶の言葉の中に、甘い響きが感じられる。
 男が乱暴に腰を叩きつける時に漏れる短い吐息に、熱い何かを感じる。
 考えたくなかった。その正体が、何なのかなど。
 そんな彼女を目にして込み上げつつある熱が、何なのかなど。
 そうして頑なに押さえ込もうとする神宮寺だが、昂ぶるものをとどまらせる事が出来ない。
 それは彼女もまた、同様であるようだった。
「んあぁ……あっ……こ、こんな……」
 戸惑い呟く声に含まれているのは、明らかな艶。
0251222010/07/15(木) 22:37:39ID:U2m2Cls9
 うっすら紅色に染まった頬は悲しみの涙に濡れているのに、その顔は女の表情を浮かべているように見えた。
 抜き差しにつられて前後にふらりと揺れる彼女の腰の動きが、まるで男を煽っているように映る。

 ──自分は、なんという目で彼女を見ているのだろう。

「は……あぁ……んふ……」
 気の抜けた声と共に洋子の腕が曲がり、支えられていた上半身がぐったりと倒れた。
 頬を床につけたまま動こうとしない。抵抗も出来ない程疲れてしまったのか。心も、体も。

 そこから先は、語り尽くせぬ程に生々しい交わりが目の前で行われていった。
 一人ずつ相手をさせるのでは飽き足らなくなったのか、複数の男が同時に洋子の身体をいたぶりはじめた。
 ある男は、叫ぶ事もなくなった彼女の唇に男根を押し込んで。
 別の男は絹糸のような彼女の黒髪を汚い一物に絡ませて。
 あるいは横から手を出して、手触りの良さそうな乳房や素肌を撫で回して……
 生臭い息を吹き掛けながら程よく柔らかい女の体を貪るさまは、餌に群がる獣となんら変わりのないものだった。
 卑しく、見苦しく、そして汚らわしい牡の集団。

 だが、それ以上に許しがたいのは──
0252222010/07/15(木) 22:39:08ID:U2m2Cls9
 群れの中から一息つこうと離れた男が、神宮寺の方へ近付いてきた。
 悔しかろう、とでも言いたげな勝ち誇った目付きに、思いつく限りの罵倒の言葉と憎しみを込めて睨みつける。
 例えようのない怒りに浸り続けていた身はわなわなと震え、茹だっているかのような強い熱を帯びていた。
 そしてそれとは別に、昂ぶっている箇所がもう一つ。
「……………」
 それに気付いた男の笑みが、一層深まった。
 神宮寺は耐えきれず目を逸らす。

 股の中心でズボンを押し上げ、張り出しているもの。
 胡座の体勢で両足首を縛られていたので、隠しようがなかった。
 こんなにも彼女がいたぶられて苦しんでいる状況で、男の反応をする自身こそ、もっとも許しがたいものだった。
「楽にしてやろうか?」
 顔を覗き込んで問い掛けてくる男の声は、意味深に潜められている。
 何かを企んでいるのは見え透いていた。
 分かっていても、逃れられない。それもまた自明だった。
 返事を返せる筈もない神宮寺の元を離れた男は、今だ女を蹂躙し続ける者達に声をかける。
 動きを止め、耳を傾ける男達。
 何を話しているのかまでは、聞き取る事が出来ない。
0253222010/07/15(木) 22:40:25ID:U2m2Cls9
 嫌な予感がする。
 今まで以上の屈辱などというものがあるのかと、考えたくもなかったが。

 やがてこちらを振り返った彼らの顔は、一様に不快感を高まらせる笑みを浮かべていた。
 吐き気がする程の悪意に満ちた、目障りな事この上ない表情だ。
 歩み寄ってくる数人の後ろから、洋子が四つん這いの体勢で連れて来られる。
 疲れきった緩慢な動作で。くしゃりと乱れた髪を引っ張られながら。
 真正面から見た彼女の無残な姿に、思考が止まった。
 直後、脳内を熱が狂ったように駆け巡り、全身をがたがたとわななかせた。

 美しかった黒髪は汗に濡れて顔にはりつき、所々白く濁った液が付着している。
 上気した頬を伝うものは、汗と涙が混じって判別がつかない。
 弱々しくも熱っぽい吐息を零す唇の端にも汚液はこびりつき、顎を伝って垂れかけている。
 かろうじてまとわり付いているブラウスもじっとりと湿っており、はだけて見える胸は熱く火照って先端を硬くしている。
 身を支えるだけの力もほとんど残っていないのであろう震える細腕の間から、彼女の秘所が僅かに見えた。
 何度男を受け入れたのか、溢れる白濁を幾筋も腿に垂らしていた。
0254222010/07/15(木) 22:41:43ID:U2m2Cls9
 何もかもがさらけ出されているその中で、唯一彼女の眼だけが見えない。
 見たくなかった。今だけは。

「ぅ……っ……あぁ……」
 ぐっと前髪を掴まれて神宮寺のすぐ前まで引きずられ、洋子はくたりとその場に座り込む。
 次は何をさせるつもりか──怒りで働かない頭で考えようとする前に、彼の表情は凍りついた。
 複数の男の手。それが伸ばされたのは彼女ではなく、彼の方だったのだ。
 そう、昂ぶっている彼の股間に──
「……っ………っ!?」
 拘束されたままの足を懸命に動かすも、通用しない。
 ベルトを緩められ、ファスナーを開けられ、中から引っ張り出されたものは、熱く硬くそそり立っていた。
 男達の笑いと声なき侮辱が、荒みきった心をさらに揺さぶる。
 これだけでも十分な辱めと思われたが、彼らはそれだけでは終わらせない。
 半ば放心状態の洋子の体を持ち上げ、あろう事か、神宮寺の脚の上へと跨がらせる。
 力無くしなだれかかってくる彼女の体はしっとりと汗ばみ、男を煽る臭いを染み付かせていた。
 ここまできて、何をさせようとしているのか分からぬ筈もない。
 だが、下手に暴れて密着した洋子の体をはねのける事も出来なかった。
0255222010/07/15(木) 22:43:02ID:U2m2Cls9
 不意に身じろいだ彼女の秘部が神宮寺のものに触れた。
 感触で察したらしく、ぶるりと一つ大きく震える彼女の耳元で、男が言った。
 ──自分で挿れて、動けと。
 口端を引きつらせ、小さく首を振る洋子。
 それを見越していたようで、男はもう一言、何かを囁く。声が小さすぎて、聞き取れない。
「……っ………」
 ぴく、と唇を震わせて、洋子は息を止めた。
 やがて吐き出された息は諦めを含んだもののように、儚げだった。

 神宮寺の両腿の上にあった洋子の尻が、ゆっくりと浮いた。
 割れ目が棹を伝って先端に近付くにつれて、ねっとりとした体液がまとわり付いてくる。
 その熱に息を漏らしながら、神宮寺は胸中と視線で強く訴える。
 ──やめろ。
 ──頼むから、やめてくれ、と。
 願いも虚しく、蕩けきった秘唇は屹立したものの先をぬぷりと飲み込み、そして……

「ぁ、っ……!」
 根元まで、その内側に包み込んだ。
 肉杭全体が一気に熱にまとわれ、神宮寺は切れ切れの息を吐く。
 膣内にあった別の男らのザーメンが漏れ出し、彼のものと下着を汚した。
「は……あぁぁ……」
 気怠い声と共に洋子はまたゆっくり腰を上げ、ずるずると秘所から男根を抜いていく。
0256222010/07/15(木) 22:44:34ID:U2m2Cls9
 完全に抜け落ちてしまう前に再度腰を落とし、ぎゅっと中を収縮させる。
 そうして何度も上下に腰を振り、彼を達させようとしている。
 彼女自身すら、望まない形で。

 ──なんと、残酷な光景だろう。
 体は互いに悲しみに震えていた。
 これが夢だったら、どんなにか良かっただろう。
 心は苦しい事この上ない状況でありながら、肉体は確かに快感を覚えている。
 抗いがたい本能に急かされ、達する時を待ち望んでいる。
 彼女も同じだった。
 自分で動き、締め付ける事で自身を刺激して快楽を求めている。
 喘ぐ唇を辛そうに歪ませ、目隠しの下からは涙の筋をいくつも零して。
 彼女は恐らく、自身が今、誰と繋がっているのかすら気付いていないだろう。
 視界がきかない今の彼女にとって、神宮寺は他の男達と同じ存在でしかない。
 それは救いと言えるのかどうか分からない。
 ただ、気付かれないままで済めば良いと思った。
 せめて、この悪夢のような時間が終わる頃までは──
0257222010/07/15(木) 22:46:32ID:U2m2Cls9
 洋子の動きは次第に激しさを増してきていた。
 上下するだけでなく、時に中を掻き回すようにぐるりと腰で輪を描き、襞をペニスの側面に擦りつけてくる。
 早く終わらせてしまいたいが為のものか、女の体がそうさせるのかは分からない。
 いずれにせよ、限界が近付いていた。
 駄目だ、耐えろと何度となく自身を叱咤していた神宮寺だが、散々焦らされてから女を与えられた身は、理性で抑えきれる範疇を越えていた。
 眼前の女の唇からは、甘く間延びした声音。
 頂きを間近にした、悦びの色がうつろう。
 楽になりたい。
 そんな言葉が、頭に浮かんで消えた。
「はぁっ、ん、んっ、あぁぁー……っ!」
「っ……!! ──っ、っ………」
 喉を反らして上擦った嬌声をあげながら、彼女は咥えこんだものをきゅうっと締め上げた。
 精を搾り取らんとするような圧力に促され、声なき呻きと共に欲を放っていく。
 視界は白く焼け、思考は失せ、ただただ痛いくらいの開放感に身を浸らせる。
 その瞬間だけは、煩わしい事柄を全て忘れ去れるような気がした。
0258222010/07/15(木) 22:47:49ID:U2m2Cls9
 絶頂の余韻が失せていくと同時に、体の感覚が戻ってきた。
 全身が痛みと疲労感を訴えてくる。
 そして耳に入ってくるのは、今までずっと自分達を見ていたのであろう何人もの男達の罵声、哄笑。
 最悪だった。

 荒い息をつきながら、神宮寺はうっすらと目を開いた。
 疲れ果てたのだろう、洋子の体はぐったりと神宮寺の肩にもたれかかっている。
 呼吸はだんだん穏やかなものに戻っていき、落ち着いたところで、彼女はゆっくりと顔を上げた。
 洋子の顔が視界に入ったその途端、神宮寺の顔は強張った。

 覚めやらぬ快感の熱に浮かされて、潤んだ瞳。
 つい先程まで隠されていたもの。
 目隠しが、無くなっている。
「……ぁ……」
 虚ろだった眼が焦点を結び、唇が微かな声を漏らした。
 みるみるうちに表情が消え、目が大きく見開かれる。
 まだ繋がっている目の前の男だけに向けられている眼差し。
 そこに宿っているものはもはや、絶望だけだった。

「あ、あ、あぁぁ……」

 小さく、しかし何度も首を振る女の、空虚な声。
 それが嘆きの悲鳴に変わるまで、さほど時間はかからなかった。
0259222010/07/15(木) 22:50:12ID:U2m2Cls9
今日はここまでで。
次でおしまいです。また来月にでも。
0261名無しさん@ピンキー2010/07/21(水) 19:03:11ID:kdF6nrr6
サブの視点だと余計にいたたまれないな…続きが気になる。
0262今日は何の日2010/08/01(日) 14:32:37ID:ZM4aVbHU
「先生。今日は八月一日ですね」
「ん?ああ、そうだな」
「何か思い当たる事とかありません?」
「ベルリンオリンピックの開幕日だったかな、確か」
「……他には、何か?」
「………?(何かあっただろうか……)スイスの建国記念日 とかかな」
「……………」
「阿久悠が亡くなったのもこの日だったか……」
「もう少し身近な事で何かあると思うんですけど」
「(洋子君の顔がどこかひきつっているように見える……) 新五百円玉が発行された……とか……」
「……………」
「……………」
「先生」
「なんだい、洋子君」
「からかってらっしゃるんですか?」
「いや、そんな事はない」
「ちゃんと考えてください……ほら、誰かの誕生日とか……」
「誕生日……」

「………!そうか、そういえば……」
「!(先生……)」
「今日はきんさんぎんさんの誕生日じゃないか」
「わ た し は ば く は つ し た」
0263名無しさん@ピンキー2010/08/07(土) 20:43:22ID:DEA8qoUd
岩本兄の愛人ってようするにセフレのことなんだろうか。
そんなん会ったばかりの他人に言うことじゃないよなw
0265222010/08/31(火) 21:56:58ID:wmyfXMG8
続き置いてきます。

・輪姦で寝取られ(前のもの寝取られて書くの忘れてたサーセン)
・洋子視点
・神宮寺視点>>245辺りから。
0266222010/08/31(火) 21:57:44ID:wmyfXMG8
「ああぁぁっ!!」

 秘所を貫く痛みと熱に、洋子は苦悶の声をあげた。
 中はほぐされ濡れてはいるが、いきなり勢い任せに打ち付けられては苦痛ばかりが先に立つ。
 捕らえられた手足を何度もばたつかせ、首を激しく振って拒絶の意思を示す。
 逃れられないとは分かっている。
 それでも、ただ黙って受け入れる事が出来ない。
 数知れぬ男達の気配。いくつもの腕。荒々しい吐息と、嗤う声。
 次に何をされるか分からない不安と、今自分に向けられている明確な暴力。
 閉ざされた視界の外から襲い来るあらゆるものが、息も整える事の叶わない恐慌ばかりを促すのだ。
「や、あっ、いやっ……! ぬい、て……抜いてっ……!」
 助けを乞うように伸ばされた腕は、手首を掴まれてしまってもう動かせない。
 石の床を引っ掻く指に痛みが走り、僅かな湿りが指先に滲んだ。
 それさえ気にも留めず、ただただ恐れおののく心にまかせて洋子はもがいていた。
 彼女が僅か程も意味を成さない抵抗を続ける内に、凌辱者の腰の動きは激しさを増してきていた。
 肉と肉が擦れ合って生じる熱と、息をつく暇も与えぬ律動が、より強い圧力を秘所に加える。
0267222010/08/31(火) 21:59:33ID:wmyfXMG8
 出る──荒々しい呼吸と獣じみた呻きの合間に聞こえた声が、彼女の脳内にはっきりと響いた。
 考えるより速く、唇が鋭い声を発する。
「ひっ、ぃっ……! いや、やめて、やめっ」

 じわりと、熱が奥で滲んだ。

 口も閉じられないままで、洋子はその感触を膣内に刻み込まれた。
 中で何度か震える肉棒から放たれる、生温い液体。
 奥へゆっくりと流れていく、おぞましい感覚。
 何か取り返しのつかないものを奪われたかのような虚無感が、体の芯からぞわりと込み上げてくる。

 堪えきれぬ悲しみに押されて鳴咽を漏らすばかりの彼女に構う事なく、欲まかせの暴力は続く。
 一番手が抜け出ると間を置かず次の男根が入ってきた。
 またしても力まかせの挿入をされるが、痛みはいくらかやわらいでいる。
 摩擦によるそれも、始めの比ではない。行為に慣れてきているのか。
 それは彼女にとって、救いとは言い難かった。
 体が痛みに順応しても、心がそれに従わなければ苦しい事には変わりない。
 徐々に意思とずれ始める体の感覚に困惑する洋子を揺さぶるように激しい抜き差しは続き、やがてまた膣奥に熱が広がる。
0268222010/08/31(火) 22:00:40ID:wmyfXMG8
 涙ながらにしゃくり上げる声の中に、いや、と消え入りそうな言葉が混じる。
 もう何度零したか分からない、拒絶の言葉。
 行為に対するものか、自身の体に対してのものなのか、分からなくなりつつある。

 達した男が離れると、強引に体を転がされた。顔や胸を硬い床に押し付けられ、洋子の表情が苦しげに歪む。
 俯せの体勢にされた身を少し浮かせると、いくつもの痛みが走る。
 それでもここから逃れたくて、彼女は手足に思いきり力をこめた。
「っ……! うっ……く……」
 疲労で重い身体を持ち上げて、四つん這いになる。
 そして擦り傷だらけの両手足を動かして、前へ、前へ。
 笑い声がそこかしこから聞こえてくる。何処へ逃げたら良いのか、分からない。
 目隠しが邪魔なのだ。
 動転していて今更のように気付いた洋子が片手を顔に伸ばそうとしたが、遅かった。
 真後ろに迫っていた男が彼女の腰を両手で掴み、後背位で挿入してきたのだ。
 熱の冷めきらぬ秘唇に打ち付けられるものの猛々しさに震え、洋子は嘆きの悲鳴を上げる。
「ひぁっ……もう、いやっ……! いやぁっ……!」
 非力な女の抵抗を嘲笑いながら、男はピストンを繰り返した。
0269222010/08/31(火) 22:03:14ID:wmyfXMG8
 棹に絡み付く襞を突き放すように引き抜いては、閉じかける穴を抉るように貫く。
 最奥まで突き込むたびに、ぱん、ぱん、と洋子の尻に男の下腹部が叩きつけられる。
 相手の事などまるで省みない、一方的な挿入だというのに。
「んあぁ……あっ……こ、こんな……」
 女の肉体は、男を拒まない。
 乱暴に掻き回されて、喜んでいるかのようにうねりペニスを締め付ける自身に、洋子は上擦った声をあげた。
 駄目、駄目と頭の中で自分を責めるのに、身体は信じられない程に彼女を裏切る。
 男の動きに応えて細い腰は揺れ、唇からは媚びるような甘い息が零れる。
 劣情が、拭えぬはずの嫌悪感を上回っていた。

「は……あぁ……んふ……」
 上半身を必死に支えていた腕ががくりと曲がり、洋子の頬が再び石の床に押し付けられた。
 暴力にも、快感にも、抗えるだけの気力はもうない。
 一度諦めが心にさすと、脳内を性感だけが支配しはじめる。
 もう、どうだっていい。ぽつりと、そんな言葉だけが浮かんだ。

「は……あ……」
 男の動きが止み、腹の奥がじわりと熱くなった。
0270222010/08/31(火) 22:04:17ID:wmyfXMG8
 また、中で射精されている。

 虚ろな思考がそこに行き着くと、恐れや絶望だけでない、奇妙な感覚に背がわなないた。
 そんな自分を哀れむ暇もなく萎えきらぬものは抜け出て、すぐにがちがちに勃起したものが洋子の膣をこじ開ける。
 腰の動きや息遣いから別の男だと分かるが、もう厭いの声は上げない。どうせ受け入れる事しか出来ないのだ。
 よほど待ちわびていたらしく、抜き差しされる肉棒の摩擦は激しい。根元まで嵌め込まれると入り口から体液が飛び散り、床にびちゃりと零れる。
 内腿に幾筋も伝う、ぬるい混合液の感触。耳に入ってくる、顔も分からぬ男の荒い呼吸と卑猥きわまりない交わりの音。
 興奮をかきたてる要素ばかりを与えられた身は熱に浮かされ、持ち上げられた尻はねだるように男の腹に擦り付けられた。
 女が抵抗を諦めた事を悟ったのか、数人の男が嗤う。
 そして中を貫く者とは異なる気配が、洋子の傍まで歩み寄ってくる。
 不意に、弾力のある何かで頬をぺちりと叩かれた。
 牡の臭いを放つ生温かいそれは、うっすら開いた彼女の唇に押し付けられる。
「歯ぁ立てんなよ」
 そう告げて指で唇をさらに開かせ、男は中に昂ぶったものを押し込んだ。
0271222010/08/31(火) 22:05:38ID:wmyfXMG8
 噛もうとはしないが、自ら舌を絡めようともしない。
 ささやかな抵抗……という訳ではない。ただ億劫なだけだった。
 男がくたりと垂れていた洋子の頭を髪ごとわし掴みにし、前後に振ってペニスを出し入れする。
「ふぐっ……んむぅ……」
 苦しげに顔を歪める洋子だが、やはり拒まない。されるがままに口淫を受け入れている。
 先端で喉奥を容赦なく突かれて嘔吐き、口内に滲む先走りの苦みに涙を落とす。
 鼻から吸い込む空気は濃密な性臭を体内に送り込み、言い知れぬ不快感を染み渡らせた。

 見も知らぬ男達から、こんなにも酷い辱めを受けているというのに。
 男根を包み込むように口内に唾液が溢れ、出し入れされて鈍い水音が立つ。
 秘唇は喜んでいるかのようにぐずぐずに潤み、膣壁は吐精を乞うて肉棒に吸い付き、締め上げる。
 べたついた指にいたぶられた乳首は硬くしこり、膨らみを撫で回されれば甘く間延びした息が漏れる。
 女の本能は、蹂躙行為を求めてさえいた。

「んうぅっ……ん、ふ、ふっ、んぷっ」
 口の中いっぱいに広がる生臭い白濁を無理矢理飲み下させられながら、洋子は堕ちきらぬ心でただただ早くこの悪夢が終わればいいと願っていた。
0272222010/08/31(火) 22:06:50ID:wmyfXMG8

「はぁー……はぁー……はあぁ……」

 どれだけの時が過ぎただろうか。
 ぐったりと上半身を横たえたままの姿勢で、洋子は背後から秘所を突かれていた。
 男が前後に勢いよく腰を振るたびに、結合部からぐちゅりぐちゅりと泥を掻き混ぜるような音が響く。
 何度も男根を受け入れた秘所はすっかりほぐれきっており、白黄混ざった粘液に塗れた陰唇は熱く蕩けていた。
 精液に紛れて区別はつかないが、彼女自身から漏れ出た愛液の量も相当なものであった。
 最初こそ秘所を傷つけぬ為の潤滑液程度のものだったが、もはやその比ではない。
 どんなに頭で否定しても、本能的な快感を立て続けに与えられた秘部は悦び、ますます涎をたらすのだ。
「ひあぁ……あっ、はあ、あうぅん……」
 黒いアイマスクの下で、洋子の瞳は恍惚に潤む。
 無為な抗いをやめた体は波のように押し寄せる暴虐をあるがまま受け止め、生じる淫悦に溺れていた。
 行為に慣れてしまうと、視界を閉ざされて感じていた恐れも、刺激を引き立てる要素にとって変わっていく。
 汗と唾液と精液とが混じり合って放つ臭いは感覚の麻痺した鼻腔に染み付き、異常なまでの興奮を促す媚薬と化していた。
0273222010/08/31(火) 22:07:57ID:wmyfXMG8
 開いた口から舌をのぞかせ、はっ、はっ、とせわしなく呼吸をする洋子。
 羞恥に嘆く理性の声に、応える事はもう出来そうにない。
 目に映らぬところで男達のいくつもの手が、陰茎が、身体中を犯していた。
 律動に揺れる乳房をぐにぐにと揉みしだかれて。
 際限ない快楽に震えの止まらない腰や足を撫で回されて。
 滑らかな頬や艶やかな髪に一物を擦りつけられて。
 男の臭いと感触を全身にまとわされ、思考は瞬く間に遠ざかっていく。
「ああぁぁ……」
 低い呻きと共に胎内にザーメンを注がれて、洋子は気怠い声を上げた。
 汚されるのに慣れた身とはいえ、哀しみは消えない。新たに流れた涙が、視界を遮ったままの厚布を濡らす。
 用を済ませたものがずるずると外へ出ていった後、開いたままの入り口はひくひくと震えていた。
 何回分の射精を受けたのか。黄ばんだ精液に満ちた秘部は、中が空くとぐぷりと濁った音を立てて外へ漏れ出し、尻や足を汚した。
 しかしその開放感もつかの間のものに過ぎず、すぐまた違うペニスに穴を塞がれる。
 腰を掴まれ激しく揺さぶられ、中を抉られ掻き回される。その繰り返し。
0274222010/08/31(火) 22:09:49ID:wmyfXMG8
 だが、しばらくしてそれが前触れもなく収まった。
 絶えず秘所を埋めていたものがなくなって、冷えた空気がそこに触れる。
 使われ続けていた秘部は状況についていけていないらしく、まだ時々花弁を震わせては中を収縮させている。
 しかし休息を与えられた事に安堵した為か、体のあちこちが疲労や痛みを訴えてきた。
 持ち上げられていた腰を落とし、気怠げに身を寝かせる。
 ──終わったのだろうか。
 どんより靄のかかった頭で、そんな事を思う。
 しかし、やはりそのような事はなく、頬をぺしぺしと叩かれた。
「おい、起きろ」
 どこか楽しげな男の声。まだ、あれが続くのだろうか。
 うずくまったまま身を縮こまらせ、洋子は起き上がろうとしない。
 疲弊した体はこれ以上の酷使を望んではおらず、脱力したまま石床から離れない。
 動かずにいる彼女の耳に舌打ちの音が聞こえたのと同時に、髪をぐいっと掴まれた。
「っ……ぅ……」
「いい事を教えてやる。あんたんトコの所長さんな、今俺らが預かってんだよ」
 所長という単語に、洋子の唇がひくっと震える。
「まだたいした事はしちゃあいないが……後はあんた次第だな」
0275222010/08/31(火) 22:13:00ID:wmyfXMG8
 男の言葉の一つ一つが、鈍った頭の中に毒のようにじわじわと染み込んでくる。
 試すような物言いだったが、選択の余地などありはしなかった。

 洋子がのろのろ体を上げると、男の手は行き先を示すように髪を強く引っ張る。
 それに従って四つん這いで進む彼女だが、動きはおぼつかない。彼女の体力は、もう限界なのだ。
 そんな事には構いもせずに、男は彼女の髪を引いて歩き、やがてぱっとその手を離した。
「ぅ……っ……あぁ……」
 へたりこむ洋子の四方から、また何人かの含み笑いが聞こえる。
 何度聞いても慣れない、悪意に満ちた声だった。
 不意に両脇に誰かの腕が入り込み、体を持ち上げられた。
 逆らう動作も出来ぬままに降ろされた先は、冷たい床ではなかった。
 剥き出しの肌に触れる布のような感触と、その下から感じられる温もり。
 そして間近に感じるくぐもった呼吸音から、何者かの体と密着しているのだと気付く。
 胸の辺りにもたれかかるような体勢にされた事に戸惑って腰をずらすと、秘所に何かが触れた。

 柔らかくも、弾力のある触れ心地。熱く滾った、棒のような形のもの。
 頭で察する前に、背筋がぞくりと震えた。
0276222010/08/31(火) 22:14:08ID:wmyfXMG8
 暴行の続きに対する恐れと無意識の部分の疼きが、洋子の中に再び湧きあがってくる。
 後ろから耳元にぬるい息を吹きかけながら、男が何事かを囁く。
 思考が一瞬停止した。告げられた言葉を反芻し、数秒かけてその意味を理解する。
 自分で挿れて、動け。
 男はそう言ったのだ。
 出来ない──その意を首を小さく、しかし何度も横に振って彼女が示すと、また男が毒を吹き込んでくる。
「"先生"がどうなっても知らねぇぞ?」
「……っ………」

 従うしか、ない。
 零れ落ちた微かな吐息は、深い諦めに満ちていた。

 正面の男の胸から身を少し離し、両手に力を入れて、腰をゆっくりと持ち上げる。
 濡れそぼった割れ目にそそり立ったものが時々触れて、僅かばかりの刺激が生じる。
 その度に反応しそうになる身を抑えながら、片手を男のものに添え、先端を膣口にあてがった。
 びんと張り詰めた男根に触れながら、自分は今、何人目の男のものを受け入れようとしているのだろう、と考える。
 粘液に塗れていないそれは、今まで彼女の中に入り込んできた男のものとは異なると分かる。
 周囲からは無数の野次と嘲笑の声。何人いるのかなど分からないし、数える気も起きなかった
0277222010/08/31(火) 22:16:15ID:wmyfXMG8
 考えるだけ辛くなる疑問を頭の片隅に放り、洋子は腰を落とし始めた。
 顔も分からぬ男に犯される為に。
 熱液でとろとろにほぐれた女陰が、だんだんと肉棒を飲み込んでいく。
 中に湛えていた濁液をほんの僅かな隙間から零しながら。張り出た箇所で襞を押し広げられながら。
「ぁ、っ……!」
 奥に亀頭がぶつかったところで、洋子は喉を反らして息をつまらせた。
 自重を支える腕に力が入らず下半身を下まで落とし込んでしまうと、根元までずっぽりと嵌まってしまい、行き止まりの部分にぐりぐりと押し当たる。
 深い場所から痛みを感じるが、それをも越える快感が腹の底から込み上げてくる。
 飲まれてはいけない。
 自我を保ってなけなしの力を体にこめるも、芯から滲み出る熱に何もかも奪われてしまいそうになる。
 男の方は荒い呼気を漏らすだけで、彼女を急かす真似はしてこない。自分から動こうともしない。
 欲望そのものを叩きつける行為のような恐怖はないが、また別の忌避感を感じずにはいられなかった。
 この男を満たすまで、彼女は望んでもいない性奉仕をし続けなければならないのだ。
 はしたなく腰を使って……男性器を包み、締め付け、それを何度も繰り返して……
0278222010/08/31(火) 22:17:51ID:wmyfXMG8
 そんな自分の有様を思い描きながら、洋子は体を上げていく。

「は……あぁぁ……」
 潤んだ内壁を屹立に擦られ、甘い喘ぎを零してしまう。
 自分の意思ではないのだと、頭でどんなに言い繕っても抑えきれない。
 腰を落としては上げ、男を柔らかく迎え入れては締め上げ、どろりと粘った潤滑液で汚れきった互いを擦り合わせる。
 次第に高まる勢いが、熱量が、理性と体を切り離して忘我の心地へと持っていこうとしている。
 周りからは蔑みの声と笑いが絶え間なく投げつけられる。
 男の上で浅ましく腰を振り、熱っぽい声をあげて悶える自分は、どんなにいやらしく映るのだろう。
 他の者達と違い、目前の男は何も声をかけてはこない。
 時折身じろぎするものの、求めるような動きとはどこか違う。
 だが、きっと嘲笑っているのだろう。周りの男達と同じように、乱れきった姿の自分を。
 快楽を引き出す為に動いているのは彼女だけ。男達は今は皆、傍観者でしかない。

 ただそこにいるだけの男を、自分が、犯しているのだ──
0279222010/08/31(火) 22:19:14ID:wmyfXMG8

「……っ……!!」

 噛み締めた歯がかたかたと震え、涸れた筈の涙がまた流れ落ちた。
 ぐすぐすと啜り泣きながら激しく下半身を揺らし、振り、中の柔肉を男根に押し付けてゆさぶる。
 終わりたい。終わらせたい。ただそれだけを希って。
 ぐちゃぐちゃという水音と自分の上擦った声を耳に入れたくなくて、一心不乱に身を上下し続けた。
 役に立たない両目をぎゅっと閉じてしまうと、熱気とこもった臭いが肌に伝わってくる。
 自身と、何人もの男が分泌したさまざまな液の臭い。
 そして、その中に違和感のあるものがひとつ。

 それは、嗅ぎ慣れた、あの人の──

「はぁっ、ん、んっ、あぁぁー……っ!」
 それと理解しきるより早く、女の限界は訪れた。
 身体を固くこわばらせ、喉を震わせて絶頂の声を放つ洋子。
 きゅうっと収縮させた膣の奥で、熱がじわりと広がっていくのをかろうじて残った思考のかけらで悟った。
 数度震えるものに欲を放たれ、安堵と哀しさが交ざった感情が空虚な心を覆っていく。
0280222010/08/31(火) 22:20:41ID:wmyfXMG8
 体も心も擦り減らして、もう疲れきってしまった。
 今度こそ終わったのだと、思わせてほしい。
 怠さにまかせて男の肩にもたれかかった体勢で荒い息をつきながら、洋子はどこか懐かしさを感じさせる温もりに無意識に頬を寄せていた。


「……………」
 どれくらいの間、そうしていたのだろうか。
 誰かの気配が後ろから近付いてきた事に気付いて、洋子は我を取り戻した。
 太い指が耳の辺りを掠め、何かを外している。
 呼吸を落ち着かせたところでそっと目を開くと、ぼやけた視界に暗闇以外のものが映った。
 ようやく目隠しが外されたらしい。
 これでおしまいなのだ──そう考え至り、ほっと息を吐く。
 まばたきをして目をこらすと、不鮮明だった像がだんだん輪郭を成していく。
 男物のスーツの生地と、その下で汗に湿っているシャツ。
 すっかりよれてしまっている、落ち着いた色合いのネクタイ。
0281222010/08/31(火) 22:22:37ID:wmyfXMG8
 全て、見覚えのあるものだ。それも、ごく最近に。
 状況が掴めないまま、洋子はぼんやりとした眼を上へと向ける。
 緩んだ襟元から覗く汗ばんだ喉元、頤、そして……

 慕ってやまない男性の顔が、真正面から映り込む──

「……ぁ……」

 眼を、大きく見開いた。
 燻っていた熱の名残りが失せ、頭の中が急速に冷えていく。
 猿轡をかまされ、手足の自由を奪われ、彼女に身を寄せられている男。
 疲労の色を濃く浮かばせている顔を強張らせ、交わった視線を離せずにいる男。
 繋がり合ったままの互いの秘部。
 その感触と、彼の苦渋に満ちた表情と、自分達を包み込む嗤いと罵声から、ようやく全てを──理解した。

「あ、あ、あぁぁ……」

 横に何度も首を振り、目の前の事実を弱々しく拒む。
 その無意味さを分かりきっている心が、音を立てて軋む。
 押し潰されて、わなないて、そして──

「──……っ、───!!」

 割れんばかりの叫び声をあげた。

 どんな言葉を、どんな意味を込めて発したのかすら、彼女自身分からなかった。
 両の掌で泣き濡れた顔を覆い、髪を振り乱し、彼の傍から逃げるように身を離してうずくまる。
0282222010/08/31(火) 22:23:55ID:wmyfXMG8
 ぼろぼろになったブラウスで汚された身を庇い、彼の目にとまらぬように背を向ける洋子。
 だが、もう、手遅れだった。
 男達が口々に罵っている。

 今更何を隠すのか。
 あの男は犯されているお前をずっと見ていた。
 助ける事も目を逸らす事も出来ずに、ただ見ているだけだった。そして──

 よがり狂っているお前を見て、昂ぶっていたのだ、と。

 うちひしがれた女にこれ以上ない程の駄目押しをして満足したのか、男らは束縛されたままの彼を振り返る。
 感情全てを抜き取ってしまったかのような彼女の表情とは対称的に、あらゆる負の念だけをかき集めた、憎しみそのものを湛えた眼をしていた。
 しかし男達は動じず、小馬鹿にした笑みを消さない。檻に捕われた獣同然の今の彼は、見せ物に過ぎなかった。
 茫然として俯いたままの洋子の耳に、いくつかの音が入っては通り過ぎていく。
 彼への男達の思い思いの罵声と、数発の殴打の音。
 最後に足音だけがエコーがかったように響き、やがて消えていった。


 静寂だけが残った空間で自失している事、しばし。
 男達の気配が完全に無くなった事に気付いて、洋子はすうっと顔を上げた。
0283222010/08/31(火) 22:25:29ID:wmyfXMG8
 遅々とした動作で後ろを振り向くと、荒く息をついている彼の姿が目に留まる。
 さっきよりも服が汚れ乱れている。
 去り際の暴行のせいだろうか。
 さほど手酷い仕打ちではなかったらしく、痛みを堪えている様子は見られない。
 それだけは、ささやかな救いだった。
 殆ど這うような状態で近付いていく洋子。彼の顔は見ようとせず、俯き続けている。
 目前まで辿り着くと、出されたままの彼のものが視界に映った。
 液に濡れてべたついたそれを見て、彼女の心が再びずきりと疼く──自分が汚したのだ、と。
0284222010/08/31(火) 22:26:42ID:wmyfXMG8
 放り捨てられていたスカートのポケットからハンカチを取り出し、そっと汚れを拭き取る。
 やめろ、とでも言うように足を動かしてきたが、止めなかった。
 そうせずにはいられなかったのだ。
 拭ったものをズボンの中にしまうと、縛られたままの彼の両手に手をかける。
 力の入らない指を懸命に動かし、固く結ばれた縄をほどいていく。
 そうして彼女の指先が血に赤く滲み出した頃、男の腕に自由が戻り、そして──

 彼女の体が、強い力で引き寄せられた。

 長時間荒縄と苦闘し続けて赤黒くなった両腕で、きつくきつく抱き締める。
「───………」

 言葉もなく。

 残された二人は、互いの苦しみと嘆きを、時の許すまで噛み締めていた。
0285222010/08/31(火) 22:28:12ID:wmyfXMG8
終了です。


…ちょっと神宮寺スペシャルくらってきます。
0288他板より2010/09/22(水) 13:02:18ID:eNs/cueL
グルメ・外食板のとあるスレ、開いてここと間違えたのかと思ってビビッた。


131 名前:食いだおれさん[sage] 投稿日:2010/09/18(土) 01:40:47
どれが本人か良く分からんが
>>1の株男は

633 :  株男 [sage]:2010/03/10(水) 22:34:23 ID:WTwUap6u0
洋子だけが頼みの綱だなw

↑の株男と同一人物なのか?そうとしか思えんのだが。
ちなみに俺はかすみだけが頼みの綱の40半のばおっさんだ。
お酒はダメなんで茶でも飲もうか?

132 名前:株男[] 投稿日:2010/09/19(日) 22:55:46
>>131
それ大塚のMのスレのことか?

最近あの店行ってないんで存在を忘れかけてたわ
一度洋子で二時間待ちって言われてあきれて帰って以来ご無沙汰w

134 名前:食いだおれさん[sage] 投稿日:2010/09/22(水) 01:28:38
>>132
やっぱそうか。明日は洋子様の出勤だぞ。
太腿にしがみついて惨めに果てて来るがいい。
0290名無しさん@ピンキー2010/10/05(火) 22:05:50ID:Z82f2K74
私は髪をかき揚げた
0291名無しさん@ピンキー2010/10/06(水) 19:12:45ID:tVo3jsKS
ふもっ!とした食感がいいようだな…
0294名無しさん@ピンキー2010/11/14(日) 23:30:13ID:LpXhrivT
絶対ひのでのエッチはつまんないと思う。
かながわの方がマシだろう。
0295名無しさん@ピンキー2010/11/16(火) 22:14:46ID:7eTJrMHE
横浜港の時点で絶対童貞だよな日之出。
セクース時はエバがリードしてそうなイメージすらあるw
0296名無しさん@ピンキー2010/11/19(金) 22:06:16ID:F1JMTuzN
航海士のひのでを密輸に巻き込もうとして結婚したと考えるのが自然。
外人のねえちゃんがひのでさんで満足できるとは思えんわな。
0297名無しさん@ピンキー2010/11/28(日) 22:10:26ID:FUqMmoPT
まさかのエバ悪女説w
青狼会とも仲良くヤッてそうだ。
神宮寺はこの手の女性キャラ少ない気がする。愛理と将棋のやつの秘書くらいか?
0298名無しさん@ピンキー2010/12/06(月) 21:35:38ID:Sk1T6uat
    iーj;二二;,__r‐、
   {~タ-―=二、`ヾ、~l           >>1  お 前 ア ホ だ ろ
 ,-r'"_,,........,__  ` -、 `i)                                            /|
 彡;:;:;:;:;/~_Z_ ̄`ー、_  `l、       ,.-=-.、.                           ,..ィ"~~~~~:::::ヽ
 7:;:;:;:;:/. `ー-ヲ t‐-、!`ヽi::r   ,:、 ,..ム.゚.,..゚..,.、l                         ,r'"::;;;_;;::::::::::__:::::::\
 ;:;:;:;:;/ /   ,.、 `!~|:::)::/   / :K"/ r:'" ,iii ~\         ,,...-,-、           /,.r''"     ヽ:::::::::::i!
 :;,;-〈 /  Fニニヽ | .|:::l:::ヽ   ラ-{ `"・ ・ ・ 。。 llL_/!      /-v"  `丶、       i"    ,.-。-ュ-.ヽ:::::::::;!
 '   fヽ  ヾ--"  l,/::/r'"  /`ー!: |~r-。、~`-、゚_  lソ     /  l      ` 、      i ,r・')、 |:`''''' " ヽヽ:::::::ヽ
   | ` 、___,..- '"|::::ゝ   /  l ノ i/`"'" ´゚-y' ./メ,      /  (・・)`丶、    '''ヽ     l :~ ヽ! ,..-、  ヾ;:::::::::|
   ヽ   /    レ"`‐.、_./  .レ /:; r-ニ、 K ./ 「    r''  //~~`''ーヾ'ー、   ノ     l   f'" '"~ノ  l |::::::::L
 ヽ        _,.-‐−―`ー"ヽ_l ヾ `ー'",.! | |_/     |  /、,,..-i'''t=ニ;ラ",l|`ゝr'     ヽ   ヽ-‐"  //'"二
  `,.-―'''''''''''<.,_     i"   l  ヽ....,,-" く__/     `ヽy:|`T"~、.,,__  `,i|ヾ |       ヽ、 ,.:-‐-'',/,.r‐''"
 '' "        l     i.   `   /    |,~`-、      | :i|  F‐'''"|  ! |ヽイ、_     ,..-‐f彡ゝ--‐"
           |     `: 、_         ノ   ヽ    ヽ'、  l!;;;;;;;/  / /:::::::`t''''丶、
            l        ~ '' ー― '' "    /"`'' -、   r|ヽ ,......,,..;:"/:::r:、:::::::ノ

0299名無しさん@ピンキー2010/12/09(木) 21:06:34ID:uG+fmMZG
角筈と町子
野田と大森京子
犯罪カップル話を書いてみたいが自分は文才ないわ。
長編書いてる人は凄いよ。
0300名無しさん@ピンキー2010/12/10(金) 20:09:10ID:A6J7mcq3
必要なのは文才よりほとばしる熱意ってじっちゃが言ってた。
犯人カップルいいじゃないか。漫画版夢の終わりにの野田大森の絡みとか好きだった。
0301名無しさん@ピンキー2010/12/15(水) 17:21:49ID:6081jnmH
BITCHな洋子さんがいいなぁ。
ていうか、実際洋子さんはわりと…だよね。
麻薬中毒のろくでなしと付き合ってたり。
0302名無しさん@ピンキー2010/12/17(金) 23:07:03ID:Vgg2Gq5e
>>301
同意。普段清楚に見えるが実は…というのもなかなかいいw
実際アレな男と二度もデキてたしな。
0307名無しさん@ピンキー2011/02/22(火) 22:46:17.39ID:QuloNG26
アプリ配信終了か…
0312名無しさん@ピンキー2011/04/01(金) 22:34:51.25ID:tUkC6qgL
アプリオワタorz…
0320名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/06/16(木) 23:50:51.67ID:7z85OOiu
保管庫見て来たが、未完のもあるんだな。
続きがないと思うと無性に読みたくなる。
0339名無しさん@ピンキー2012/03/21(水) 19:14:58.10ID:DslbZM1Y
新作3DSで出るらしいが、すれちがい通信て…
0343名無しさん@ピンキー2012/06/21(木) 19:17:08.13ID:W/6YnRoy
強姦じゃなくて愛があるもの希望!
0352名無しさん@ピンキー2013/02/20(水) 23:57:01.58ID:bFL5MElH
新作キボン
0354名無しさん@ピンキー2013/05/01(水) 15:39:39.84ID:BGH6XcZm
ほしゅ
0355名無しさん@ピンキー2013/05/01(水) 19:44:18.89ID:5D80k2XH
ほしゅ
0360名無しさん@ピンキー2015/06/04(木) 00:22:19.36ID:pNsddSC8
まだ残ってたのか
0361名無しさん@ピンキー2015/06/11(木) 11:53:22.03ID:X/HShvof
久しぶりに神宮寺のアーカイブをやって、ネットで調べてたらこんなスレを見つけてびっくりした。
Pixivにあんま神宮寺の小説がないから諦めてたけど、ここで楽しませてもらった。職人さんありがとう。
0362名無しさん@ピンキー2015/06/27(土) 09:30:59.22ID:rCQkabu+
>>361
うれしいこと言ってくれるじゃないのw
しかしスレがまだあったとは…
久々に思いついたのでおいときます。

・神宮寺×洋子
・白い影の少女、調査中の一幕
・推理をよく間違える洋子と探偵のお勉強(夜の)
0363名無しさん@ピンキー2015/06/27(土) 09:32:42.51ID:rCQkabu+
      ――3月15日 夜――
     ――新宿中央公園 入口――

「………洋子君、しっかりしてくれ」
「すみません……うっかりしてました」
 共同調査を始めて数日。
 神宮寺は何度目かの溜め息をついていた。
「どうしたんだ? こんな推理を誤るなんて、君らしくもない……体調でも悪いのか?」
「い、いえ。そういう訳では……」
 洋子はそう言うと、申し訳なさそうに頭を下げた。
「これからはちゃんと頑張りますから、私に探偵の事、もっと勉強させてください」
「探偵の勉強……か」
 そういえば、調査を進める事に集中していて、全く彼女の方を気にかけていなかった。
 『ゆうちゃん』の調査が単なる片手間のものではなくなった今、彼女にもこれまで以上に役に立ってもらう必要があるだろう。
 神宮寺はそう考えると、洋子に向き直った。
「そうだな……今でも構わないか?」
「えっ……ここで、ですか?」
 ためらいうつむく洋子を物陰へ誘い、周囲に人の気配がないのを確認して、神宮寺は答える。
「もちろんだ。調査の基本は推理力、記憶力、親密度……あと一つは?」
「ええと……行動力、でしたっけ」
「そういう事だ」
 事もなげに言い、神宮寺は洋子に先を促すように見つめた。
「………………」
 洋子は恥じらうように頬を赤らめ、それでも小さく、こくりと頷いた。

        *  *  *  * *

「ん……ふ……んんっ」
 ちゅぽ、ぶぷ……と、湿った音が女の密やかな声の合間に聞こえる。
 熱くて太い肉の塊を、洋子は懸命に頬張りながら口内全体で愛撫していた。
 暗がりの中で唾液にまみれて僅かに光るそれを、添えた手で撫でながら舌を這わせる。
 夜の公園――木々のささやかなざわめき以外に存在を主張するもののない物影で、淫行に耽る二人の姿は明らかに異質だった。
「そう、もっと深くくわえて……ああ、いいぞ……」
 ペニスをしゃぶりながら前後する洋子の頭を抱え、神宮寺は息をついた。
 絹糸のようななめらかな髪に指を通して撫でると、男根で塞がれたままの唇の隙間から熱い吐息が漏れる。
 喉奥まで届く程に勃起しきったものは刺激にぴくぴくと震え、今にも射精に至りそうだ。
「さあ洋子君……ここからどうしたらいいか、分かるな?」
 神宮寺の声が熱に浮かされた頭の中に届き、洋子は口淫を緩やかなものへ変えながら思案する。

______
   (∀゚ )Ξピキーン
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
洋子「これからどうしましょうか……?」
 ・一気に本番にもつれ込む
→・お口でごっくん
 ・顔射でパック
 ・胸にかけて!胸に!
 ・調査に戻る
0364名無しさん@ピンキー2015/06/27(土) 09:36:06.12ID:rCQkabu+
 こんなにはりつめて苦しげなものを、彼女の準備が整うまで待たせてから膣内に導くのは彼も辛いだろう。
 顔や胸には以前かけられた事があるが、髪や服に付着して後始末に難儀した覚えがある……野外でおこなうべきではない。
 それにここまでしておいてやめるのは生殺しというものだ。
 それならば……答は一つ。

 そう考えると洋子は再びペニスを口に含み、れろりと舌で絡め取る動きを見せた。
 同時に頭を激しく前後に振って先から根元まで目一杯口の中に押し込み、肉棒全体をなぞり上げる。
 彼女が正解を導き出した事に、神宮寺はふっと笑みを浮かべた。
「いい判断だ……出すぞ」
 洋子の愛撫に合わせて腰を振り、欲望の丈を放つ為の動きに専念すると、上り詰めるのに時間はかからなかった。
 生温くねっとりとした口内で粘った熱の塊が、びゅ、びゅっと溢れ出てくる。
「んんぅっ……! んぷ、うっ……」
 口の中いっぱいに広がるその苦味と臭いに顔をしかめながらも、洋子は男根を口から離さない。
 尿道に残った分まで絞り出させるように肉棒に吸い付き、受け止めた。
 精の流出が収まると、喉の手前で留めていたそれを少しずつ飲み込んでいく。
「んっ……んっ……」
 ごくっ……という鈍い音と共に白い喉がひくつき、どろりとした液体を体内へと運ぶ。
 嚥下の度に口内と舌とが動いては、くわえたままのペニスを刺激する……欲を吐ききってうなだれかけていたものが、再び活力を取り戻すのが分かった。
「洋子君」
 全てを喉の奥に収めきって唇から男根を放した洋子に、神宮寺がポケットティッシュを何枚か取り出して差し出した。
 洋子は呼吸を整えてからそれを受けとる。

______
   (∀゚ )Ξピキーン
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
洋子「このティッシュ……何に使いましょうか?」
 ・とっておく
 ・口を拭く
 ・汗を拭く
 ・鼻をかむ
→・ペニスを拭く

 眼前の男性器は唾液と性臭に満ちた白汁にまみれてぬらぬらと光っている。
 洋子は無意識にティッシュを握った手を添え、そっと側面を撫でるように拭き始めた。
 強く擦りすぎないよう、ゆっくりと。もらった紙を全て使って先端から睾丸まで丹念に清める。
 そんな彼女に神宮寺は苦笑めいて口の端を綻ばせ、今度はハンカチを洋子の唇に押し当てた。
 ――なるほど、ティッシュは元々その為の気遣いだったのだろう。
「ありがとうございます」
 洋子は照れを含んだ笑みを浮かべてハンカチを借り、口元のベタつきを拭った。
 今度、洗って返そう……洋子がそう思ってハンカチをポケットにしまうと、神宮寺が声をかける。
「このまま、続けられるかい?」
 彼女が見上げると、神宮寺と目が合う。
0365名無しさん@ピンキー2015/06/27(土) 09:39:46.05ID:rCQkabu+
 静かながらも熱めいた視線。そして彼の欲を示す陰茎は上を向いたままだ。
「……はい」
 洋子ははにかみながら、ストッキングとショーツをずり下げ、前屈みになってスカートの裾をたくし上げる。
 そばにそびえる樹に両手を押し付けた姿勢で待つ彼女の背後に立ち、神宮寺は白く張りのある尻の下の秘所に指を這わせた。
 狭い膣内を指で擦りながら押し広げ、もう一方の手で胸をわし掴みにして捏ね回し、衣服を乱す。
 洋子の唇から艶やかな吐息が零れ、その身がじわじわと流れ込む快感にぞくりと震えた。
「っ……あっ……」
 野外でのフェラチオに興奮を抑えきれなかったのか、彼女の中は既にぬめる愛液を湛えていた。
 指に絡む蜜を馴染ませるように中をかき混ぜると、堪えきれず肢体をこわばらせ、膣をきゅっと締まらせる。
 ……十分にほぐれているようだ。
 神宮寺はそう判断し、指を引き抜いた。
 そして熱をもて余したままの剛直を押しつけると、同じく待ちわびた様子の濡れそぼった女陰へ埋没させていった。
「あぁっ……先生……」
 体の中に直接男の熱を感じ、洋子はうっとりと溜め息をつく。
 愛液で蕩けた穴はきつくも柔らかく神宮寺を受け入れ、抜き差しを繰り返す度に奥へ奥へと彼自身を招き入れた。
「っ……いい締め付けだ……」
 息を乱しつつ、神宮寺は女の膣内の居心地の良さに感じ入る。
 ペニスをぐりぐりと円を描くように動かして中をかき分ければ、襞が濡れた音を立てて吸い付いてくる。
 布越しに胸の膨らみをまさぐってやれば甘い声を漏らして、肩越しに潤んだ瞳で見つめてきた。

 いつだったか、彼女を極上と評した男がいたのを神宮寺は思い出していた。
 名前も顔も記憶の端にすら引っ掛からない……その程度の男だったのだろうが、その評価だけは同意してやっても良い。そう彼は思った。
 最近は少々とぼけた推理をする事がたまに……否、よくあるような気がするが、きっと気のせいに違いない。
 外回りの調査が久々だったから、調子を取り戻せないでいるだけなのだろう。
 ちょっとやそっとのミスくらい、大目に見るべきだ。
 頭の片隅で、「贔屓だっ! 差別だっ!」とやかましく騒ぐ春菜の顔がよぎったが、気にしないでおこう。

 そんな事を考えながらも、神宮寺は腰の動きをだんだんと速めていった。
 洋子は息も絶え絶えに律動にまかせて身体を揺らし、声を上擦らせて絶頂の兆しを示す。
 そろそろ終わりにしても良い頃合いかもしれない。
0366名無しさん@ピンキー2015/06/27(土) 09:42:23.20ID:rCQkabu+
「さあ、洋子君。どこに出して欲しい……?」
 仕上げの問いかけを熱に浮かされた頭で認識し、彼女はその解を探し求めた。

______
   (∀゚ )Ξピキーン
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
洋子「何処に出してもらいましょう……?」
 ・お口でごっくん
 ・膣から抜いて外出し
→・膣内で出してもらう
 ・胸にかけて!胸に!
 ・後ろの穴で……

「あんっ、はぁ、な、中に……中にくださいっ……!」
 全身を覆う熱病めいた快感に理性が押し負け、飛び出したのはそんな言葉。
 その願いに従うかのように、膣壁は彼の暴発寸前のペニスを締め付け、射精をねだる動きを見せた。
「っ……!」
 そのまま出してしまおうか。一瞬そう思った神宮寺だったが、すんでのところで彼女の中から抜け出した。
 名残惜しげにひくつく花弁のすぐ前で男根の先端が震え、多量の粘液を吐き出す。
 それでも彼女の肉体も満たされたらしく、一際高い嬌声を上げて総身をわななかせていた。

        *  *  *  * *

 お互いが我を取り戻した頃、神宮寺は苦笑しながら洋子をたしなめた。
「……洋子君。流石に中はまずいだろう」
「すみません」
 素直に謝りつつも、洋子はでも、と言葉を継ぐ。
「……少しだけ残念です」
「何がだ?」
 身辺を整え、事後の名残を表情にも残さぬ洋子の切り替えの速さに感心しながら、神宮寺は訊ねた。
「子供って可愛いじゃないですか」
 洋子はそう言って、茶目っ気を含んだ笑みをこぼした。
 そういえば託児所の前で子供が欲しいような……と彼女が言っていたのに、神宮寺は思い当たる。
「………まあ、考えておく」
「ふふ」
 はぐらかす神宮寺の言葉に微笑みながら、次の"勉強"はいつになるだろう……と、洋子はひそかに期待しているのであった。



       *  *  *  * *

熊野「……神宮寺君。それは探偵の能力とはあまり関係ないんじゃないかね?」
春菜「ももももしかして、私がパートナーの時も同じ事するんですか!? やだぁ〜」
神宮寺「大丈夫だ。お前を調査に連れていく事はないからな」
0367名無しさん@ピンキー2015/06/27(土) 09:47:39.19ID:rCQkabu+
終了です。
白影の推理カットインでふいていたあの頃が懐かしい…
0368名無しさん@ピンキー2015/06/28(日) 23:06:12.40ID:SMPU3C64
新作だww
しかも笑えるエロとは。また白影やりたくなってきたよ。
0370名無しさん@ピンキー2015/07/08(水) 16:42:02.29ID:Z0p23YLQ
久しぶりにDSやってて神宮寺と恵子の過去に嫉妬した洋子、というシチュエーションが浮かんだけど、文才がないので想像だけで終わった。
0372名無しさん@ピンキー2016/01/14(木) 01:08:00.46ID:6GrIeQzZ
何年かぶりにきてみたら新作が!かいてくれた人ありがとう!
ピキーンに笑ったW エロい上に神宮寺愛にあふれてていいなあ
このスレの作品はどれもほんとにあらゆる面でレベルが高くてすごいと思う
0373名無しさん@ピンキー2016/02/06(土) 23:56:38.53ID:OrgmPAwg
>>372
おだてられると何か書きたくなってしまう、僕の悪い癖です。
神宮寺の誕生日なので、エロじゃないけど小ネタ投下します。
・もしも与那国が謎じけ系キャラだったら

――――――――――――――

  ――「復讐の輪舞」後、街中にて――

神宮寺&洋子「…………」
与那国&DB「…………」

神宮寺「(……嫌な奴に会ってしまった)洋子君、目を合わせるなよ」ヒソヒソ
洋子「はい、先生」ヒソヒソ

与那国「いやー今回も大活躍でしたねー神宮寺さん」
神宮寺「(声をかけてきやがった)……何だ、その棒読みな労いの言葉は」
与那国「そんなモアイみたいな顔してたら女性に怖がられますよ? ほらほら、僕みたいにもっとこう、スマイルスマイル……
 おっと、元々ヤクザみたいな顔していらっしゃいますもんね。笑っても不気味なだけですよね」
DB「社長、地が出てますよ」
与那国「これは失礼」
神宮寺「……で、何の用だ。わざわざ嫌味を言う為に呼び止めた訳でもないだろう」
与那国「いきなり本題に切り込むなんて、随分せっかちでいらっしゃるんですね。即本番だなんて、大抵の女性はドン引きですよ?」
神宮寺「……帰るか、洋子君」
与那国「待ってくださいってば、本当にせっかちですね……もしかして神宮寺さん、早漏?」
DB「『おれはだれよりもはやい』……との事です、社長」
神宮寺「勝手に引用するんじゃない」
洋子「先生、まともに相手をなさらない方がよろしいんじゃ……」
与那国「ああ、お連れの方がいらっしゃったんですねぇそういえば。えぇと……どちら様でしたっけ?」
DB「神宮寺探偵事務所の助手ですよ」
与那国「あぁ、あの。毎度整形疑惑が絶えないあの」
洋子「……先生、殺っちゃっていいですか?」
神宮寺「洋子君、気持ちは分かるが抑えるんだ」
与那国「まあ、冗談はこれぐらいにしておいて…ほら、せっかく満を辞して再登場したイケメンライバルですし。これからもよろしくという事で、ご挨拶に来たんですよ」
神宮寺「……待て。誰が誰のライバルだって?」
与那国「"イケメン"ライバルです。大事な所なんで忘れないで下さい」
0374名無しさん@ピンキー2016/02/06(土) 23:58:28.99ID:OrgmPAwg
神宮寺「洋子君、こいつの言葉を訳せるか?」
洋子「ちょっと何言ってるか分からないですね」
与那国「いやいや、長編シリーズにありがちなマンネリを打破するにはもってこいじゃないですか、イケメンライ(ry」
神宮寺「ライバルと名乗る割には、二度目の登場作のラストにして、尻尾を巻いて逃げ出してただろうが」
与那国「」ピキッ
洋子「もう会いたくないっておっしゃったとうかがったような…」
与那国「」ピキピキッ
神宮寺「お前に関わってる程暇じゃないんだ。じゃあな」
与那国「……ちょっと待ってください」
神宮寺「何だ……まだ何かあるのか」
与那国「こちとら転職までして何ヵ月もかけて丹念に計画立てて頑張った訳ですよ一生懸命……
 それをあっという間に捻り潰すとか、一体どういう神経してるんです?」
神宮寺「知るか」
与那国「ていうか拷問でボッコボコにされた上にヤクザと警察の包囲網かいくぐって逆転勝利とか何なの? 神なの?」
DB「神宮寺だけに」
神宮寺(面倒臭いなこいつら…)
与那国「こっちは時間かけて丹誠込めて全力投球で綿密な計画練ってるわけですよ。
 それをまあ見事に粉微塵にしてくださっちゃって……しかも二度目ですからねこれ。陰謀めいた何かを感じますよ」
神宮寺「謀っているのはお前の方だろうに」
与那国「こうなったら意地でも打ち負かしてやりたくなるじゃないですか。
 敗者の屈辱を乗り越えて返り咲くイケメンライバル……夢がありますよね」
神宮寺「俺はライバルを必要とした事などただの一度もない」
与那国「orz」
神宮寺「そういう訳だ……行こうか、洋子君」
洋子「orz」
神宮寺「何故君まで!?」
洋子「その言い回し……トラウマがよみがえってしまって」つInnocent Blackのパッケージ
神宮寺「そ、それは黒歴史だ、忘れてくれ」アタフタ
DB「Innocent Blackだけに」
神宮寺「やかましい」
与那国「女性を泣かすなんて男の風上にも置けないですよねぇ」
神宮寺「(息を吹き返しやがった)お前らもう帰れ!」

――――――――――――――

とかいうウザキャラになると予想。
もう出てこないだろうけどね!
また何か書けたらスレ埋めにきます。
0375名無しさん@ピンキー2016/02/13(土) 19:51:17.27ID:v7AVxHfT
>>373
与那国ウザすぎワロタww
>>362の人かな?楽しみにしてます
0376名無しさん@ピンキー2016/02/15(月) 23:48:11.25ID:yHNfLTqf
おお、またまた新作が!
こういうノリもいいなーw
与那国は謎じけだったらこんなふうにロボ洋子以上の逸材になりそうだ
神宮寺シリーズは復讐でとまっててワークジャムの行方も知れずで寂しい中
良い物を読ませてもらってありがとう。
まだまだ神宮寺シリーズ好きな人がいるっていうのも嬉しいねほんとに
0377名無しさん@ピンキー2016/03/29(火) 23:59:16.19ID:wbE1S0vF
神宮寺スタッフが別会社でスマホゲー出してるけど、版権なんとかしてまた神宮寺作ってくれないものかねぇ
0378名無しさん@ピンキー2016/05/02(月) 22:55:08.88ID:Z+UauW8N
そういえば神宮寺の権利っていまどうなってんだろうな
またバーかすみで美人姉妹に相手してほしいぜ
0380名無しさん@ピンキー2017/02/09(木) 00:46:22.03ID:a6QgQeVv
シリーズ存続記念カキコ
アークまじありがとう
楽しみだ
0381名無しさん@ピンキー2017/02/09(木) 21:58:45.18ID:8vvHMHh7
新作が出たらここの神が神作品を書いてくれるのを期待してる
時々読み返しにくるけど、ここのはエロも小説としての完成度も高くてほんとにいいもの読ませてもらっているという感謝しかない
0382名無しさん@ピンキー2017/02/27(月) 20:46:58.27ID:Z0PmIscL
新作出たら神が神作投下してくれるって信じてるんだ・・・
0383名無しさん@ピンキー2017/05/29(月) 21:56:59.92ID:K3LCH5Fa
さあ、こっちの新作はいつ来る事やら
0386名無しさん@ピンキー2017/09/06(水) 17:57:08.04ID:np103Jaa
前スレに提案があった着物ネタを書こうと思っています

出来上がったら投下しに来るので、優しくしてください……
0388名無しさん@ピンキー2017/09/07(木) 17:27:40.47ID:lyGoATqu
>>386
神だー!神が降臨したぞー!
全裸待機!
0389名無しさん@ピンキー2017/09/08(金) 01:17:07.81ID:eRak7vOx
>>386
あなたが神か
ゲームクリアしたので
こんどはこっちで新作待機
03903862017/09/11(月) 01:25:39.48ID:TUdDLkhd
386です。
まだまだ完成していませんが、レスありがとうございます!励みになります!

一応ノーマル神宮寺×洋子でいくつもりです。
他にもリクエストあったらお願いします。企画力もなければ文才もないので。。
0391名無しさん@ピンキー2017/09/12(火) 22:34:15.94ID:9ZXEBS1K
かいてくださるのならなんでもありがたいけど
お題があったほうが書きやすいんでしょうか・・・
それならまた今泉×洋子モノが読んでみたいとリクしてみます
前に投下されてたのがしっとり系だったので今度は鬼畜系とか(*´д`*)ハァハァ
03923862017/09/20(水) 09:30:11.88ID:F8K/ocWd
筆が遅くてスミマセン……
ちゃんと書いてるよ!という現状報告です。

書いてたら着物関係なくね?となりましたが、
皆様が全裸待機してくれているので、
賢者化できるように頑張ります。

べ、別に焦らしプレイしてるんじゃないからね!
0393名無しさん@ピンキー2017/10/17(火) 00:32:39.50ID:gwKvHrpj
まだかなー
03943862017/10/30(月) 16:55:24.94ID:4rFRgH4I
すみません、仕事で異動があったのでorz
書いてます、あとはエロだけです(そこが重要なんだろ)!

年内にはあげます!!
0395名無しさん@ピンキー2017/11/11(土) 21:02:33.37ID:NFNv8kXl
全裸で正座して待ってる
03963862017/12/30(土) 23:17:45.96ID:obJOwKg+
エロを書いては消し、書いては消ししてたら大晦日になってしま……っ!

年内にあげると言っていたのにごめんなさい!
とりあえず導入部分だけ書いて残りは来年で。。

全裸で年越しさせてすまん。
0397着物ネタ2017/12/30(土) 23:23:25.93ID:obJOwKg+
「今、何と言った?」
いつも通りの日常に舞い込んだ小さな依頼であるペットの捜索を無事解決し、事務所に戻った神宮寺はテーブルに置かれたコーヒーを一瞥すると洋子の言葉に怪訝な反応を示した。
「ええと……すでに先生には話を通してあると……熊野さんが……」
コーヒーを差し出して事務作業に戻ろうとした洋子も神宮寺の予想外な反応に怪訝な返答をする。
「「………………………………」」
事務所内を妙な沈黙が支配した。だがすぐに神宮寺は我に返り、脳内の記憶を洗いざらい呼び覚ます。ところが、どうにもこうにも記憶にないのだ。洋子が口にした、
「先生、来週末の警視庁の感謝状授与の式典についてなのですが……」
この、文章の中の、たったひとつのキーワードも。
こちらを窺うような上目遣いで見ていた洋子も、神宮寺には話が通っていないことを察したようで、神宮寺の視線を受けると記憶を探るように説明し始めた。

熊野警部から電話があったのは、つい30分ほど前のことだ。事務所の電話が鳴ってワンコール、手慣れた様子で洋子は「はい、神宮寺探偵事務所でございます」と受話器を耳に当てた。すると聞こえてきたのは気さくな中年男性の声で、洋子の顔もすぐに綻ぶ。
「あら、熊野さん、あいにく先生は外出中ですが、何かご用でしたか?」
『おぉ、洋子君か。ちょうど良かった、今日は君に電話をしたんだ』
「私に……ですか?」
『あぁ、神宮寺君から話を聞いてないかね?警視庁の方から神宮寺君に感謝状が送られることになってな』
「まぁ……そうなのですか!先生からは特に……」
『まぁ神宮寺君はそういうことをひけらかすタイプでもないからな』
「確かにそうですね」
言いながら洋子は神宮寺の性格を思い出してクスリと笑った。世間的な名誉になんの価値も見出ださない我が所長は、警視庁の感謝状と言われても眉ひとつ動かさないのだろう。
『それで、洋子君。来週末に感謝状を渡す式典があるのだが』
「式典なんて、そんな大それた……」
『ちょうど警視庁内の取り締まり強化週間の式典があってな。一般人の感謝状授与でもして、署員の士気を上げようという魂胆らしい』
「…………なるほど」
一般人の感謝状で警官の士気が上がるものなのか、むしろ神宮寺は一般人なのかと様々な疑問が洋子の中を駆け巡ったが、追求するのはやめておいた。
『それでここからが本題なのだが、神宮寺君のパートナーとして洋子君に式典へ出席してもらいたい』
「えっ?パートナー……ですか?」
『神宮寺君もきちんとした席で女性の一人も連れていないのは寂しいじゃないか。せっかく洋子君というぴったりな人材がいるのに』
受話器の向こうで豪快に笑う熊野の声が聞こえる。
『警視庁内だけのものとはいえ、ホテルのホールを借りきって行う式典だ、洋子君のような美人さんが来てくれると華やかになっていい』
「そ、そんな……あの、ありがとうございます……」
辿々しく礼を言った次の瞬間、洋子は我が耳を疑うこととなった。
『それで洋子君、君は振袖を持っているかね?』
「えっ!?」
振袖……?洋子の頭にはない単語だ。20歳の時にはすでにニューヨークで過ごしていた。もちろん成人式も日本でしていないし、大学卒業も和服は着ていない。振袖なんてものは、毎年成人の日が近付くとテレビの中で見掛ける、ある種フィクションな物だという認識だった。
「えっと……持っていませんが……」
辛うじて質問されたことにのみ答える。すると熊野はその答えを予想していたようだった。
『ふーむ、やはりそうか。では、当日までに借りるよう手配しよう』
「いえ、そんな。熊野さんのお手を煩わせるわけには……」
『いやいや。やはり日本女性は畏まった場での和服、特に若い女性の振袖は華がある。わしも洋子君の振袖姿が見たいしの!』
こうして力一杯推されてしまっては、洋子としても断るわけにいかなかったのである。

「そういうわけで、今週のどこかで熊野さんのご贔屓にされている呉服屋さんへお着物をお願いして来ようと思うのですが……」
「あ、あぁ……そういうことならいつでも構わない。何かあれば携帯の方に連絡するよ」
「ありがとうございます。それでは明日事務処理を終わらせて、明後日に行って参りますね」
「分かった、そうしてくれ」
神宮寺がマルボロに火をつけそう答えた後、また事務所を沈黙が支配した。それは先程とはうってかわって心地よい沈黙ではあったが、神宮寺は自分の記憶にない式典のことで首を捻るばかりだった。
0398着物ネタ22017/12/30(土) 23:30:27.10ID:obJOwKg+
「おぉ!神宮寺君じゃないか!」
翌日、神宮寺は早速新宿淀橋所にやって来た。熊野も機嫌良く出迎えてくれる。
「熊さん、昨日、事務所に電話をしたみたいだな」
「やはりその件か」
訝しむように切り出した神宮寺をよそに、熊野はニコニコと笑顔を崩さない。
「式典の話、俺は聞いていないんだが」
「言っていないからのぉ」
「な……」
すっとぼけた口調で答える熊野に拍子抜けした神宮寺は珍しく言葉に詰まった。
「どういうことだ?」
「警視庁の感謝状の話が持ち上がったのはすでに先月の話でな。君が数々の事件を解決した功績と、わしが推薦したこともあって、来週の式典で感謝状を渡そうということになったのだよ」
「だが俺にはなんの連絡も来ていないのだが……」
「それはわしが連絡を止めていたからだ」
「なに……?」
話が見えてこない。神宮寺の眉間に皺が寄るのを見て、熊野の笑みが殊更いたずらっぽくなる。
「神宮寺君に前もって打診したところで断られるだけだからの」
「…………」
「ギリギリに、そして洋子君の出席も取り付ければ君も断れまい、と思ったのだ」
「悪どいな……」
「そんなこと言いつつ、君も洋子君の振袖姿を見たいだろう?」
袖でちょいちょい、とつついてくる熊野に対して反応に困る神宮寺だったが、その肯定も否定もしない態度で熊野は満足したようだった。
「ともかく、式典で表彰されるのは君だ、当日突然欠席したりはしないでくれよ」
「依頼が来なければな」
クレームを言いに来たつもりが、すっかり丸め込まれてしまっていた。
0399着物ネタ32017/12/30(土) 23:36:45.63ID:obJOwKg+
式典当日。新宿駅すぐの大きなホテルのロビーで神宮寺は待ち人をしていた。洋子とはこのロビーで待ち合わせだ。
事前に呉服屋で洋子が選んだ振袖はホテルに運び込まれ、髪結いとメイク、着付けもセットでやってもらうことになっている。式典は午後。
前日に洋子は「午前、事務所にお伺いしましょうか?」と言ってくれたが断った。幸か不幸か依頼は入っていないし、優秀な助手は事務仕事を溜めることもない。何より、神宮寺の気分として、洋子と午前中に顔を合わせたくなかったのだ。
(何故なのか自分でも不思議だ……)
大理石の床に足をつけ、大きな柱に背を預けていると、自分はとても場違いな存在のような気になってくる。
(やはりギリギリでも断るべきだったか……)
そう後悔し始めたその時だった。
「先生!」
エレベーターから降りて歩きにくそうにやって来た女性に、神宮寺は一瞬思考が停止した。
「……先生?」
艶やかな黒髪は掬い上げて上品にセットされており、ビードロのトンボ玉のかんざしが遠慮がちに煌めいている。メイクは全体的にハッキリとした色使いがされており、濃紅の唇がしっとりとした色香を放つ。
そして振袖は淡い青紫に白・ピンクの桜、紫の桔梗などが小さく散りばめられた、豪華ながら清楚なものだった。
「……あの、どこかおかしいですか?」
しばらくの間言葉を発さなかった神宮寺を不審に思ったのかその女性は袖を前後に振っておかしいところがないかチェックしている。
「いや……」
神宮寺はその女性に見惚れていたとも言えず、努めて平静を装って言った。
「とても似合っていると思う……では洋子君、会場へ行こうか」
「…………ありがとうございます、そうですね、行きましょう」
いつもと違うメイクだからだろうか、にこりと笑った表情は確かに洋子のものだったが、普段よりも妖艶に見えて、神宮寺はエレベーターのボタンを睨み付けることでしか気を紛らわせなかった。
会場に到着するとすでに集まっていた警視庁の輪の中から熊野警部がやってきていつも神宮寺を出迎えるように挨拶してきた。
「やぁ神宮寺君。来てくれてありがとう。洋子君もいつもより素敵だな」
「ふふ、ありがとうございます」
「もうすぐ式典が始まるぞ。今日わしは推薦人として特別に所轄から呼ばれたんだ、舞台に上がる君を楽しみにしているからな」
「柄にもないことをさせるのは今回で最後にしてくれ」
「ほっほっほ、つれないのぅ」
からからと笑う熊野だが、急に怪しい目付きになった。
「それで洋子君、その素敵な振袖は神宮寺君に好評かい?」
「えっ?その、どうでしょう……?」
「熊さん、変なことを言わないでくれ」
「何を言うか、女性の素晴らしい姿に賛辞を送るのは古今東西問わず男の義務だと思うぞ!」
「いえあの、私は別に」
「この天女のような姿を見て何も言わないほど神宮寺君も唐変木ではあるまい」
いつになく熱の入った追及をしてくる熊野に神宮寺がやや気圧された時だった。
『間もなく、式典を開催します。廊下におられる皆様、ホールへお集まりください』
司会の女性の落ち着いた声が館内放送で響き、廊下にいた出席者がゾロゾロとホールへ入ってくる。その波に押されて、3人は奥のテーブルへと追いやられ、会話もうやむやになってしまった。引き続き仲が良さそうに話す洋子と熊野を横目に、神宮寺はため息をついたのだった。
0400着物ネタ42017/12/30(土) 23:49:10.61ID:obJOwKg+
式典は開会の辞を皮切りに、順次つつがなく進行していた。その中で洋子はなんとなく背中に違和感を感じ、大袈裟にならないようそっと帯に触れてみる。
すると、帯が少し曲がってしまっているようだった。立食形式だったために手に持っていたグラスを一旦テーブルに置き、他の参加者から怪しく映らぬよう自然な動作で壁際まで移動してから帯の傾きを直そうと試みる。
しかし、帯は洋子が触れれば触れるほど型崩れを起こし、焦った洋子はより一層おかしな方向へ手を加えてしまう。内心大慌てでどうしようか思案していた時。
「着物がおかしいのか?」
いつの間にか神宮寺が目の前まで来ていて、心配そうな目で見つめてきた。彼は熊野に付き合って警視庁の方々へ挨拶に行ったはずだった。それなのになぜ。
「壁際で泣きそうなパートナーを放っておけないからな」
それを聞いて洋子は恥ずかしい思いでいっぱいになった。着慣れないものを着ているせいで先生のお手を煩わせてしまった。やっぱりイブニングドレスにするべきだった、と。
しかし神宮寺は呆れるでもなく言葉を続けた。
「着付けをしてくれる人が待機しているのだろう?どこの部屋でやったか教えてくれるかい、一緒に行こう」
「でも、先生はこれから感謝状授与が…………」
「一人でいても意味がないからな」
それに、と付け加えて、神宮寺はどこか安堵したような面持ちで言った。
「堅苦しい場所で息が詰まりそうだ、外に出て休憩したい」
「まあ……」
思わず微笑んでしまう。洋子は可笑しそうに笑って、ではお言葉に甘えます、と囁いた。
04013862017/12/30(土) 23:50:57.00ID:obJOwKg+
導入部分以上です!
思ったより長くなってしまった。。

原作と矛盾があるところは生暖かく見逃してやってもらえるとありがたいです。。

あとはエロだ、エロだけなんだ……!
頑張って書き続けます!
0402名無しさん@ピンキー2017/12/31(日) 20:35:59.85ID:+uF+vP0L
待ってました!
焦る洋子君かわいいなぁ
続き待ってます
0403名無しさん@ピンキー2018/01/10(水) 13:14:13.38ID:fJNump0Q
うおー!神キター!
そしてなんというじらしプレイ!
続きが楽しみだー
0404名無しさん@ピンキー2018/03/28(水) 19:32:36.45ID:ZKhtT96I
(0゚・∀・)wktk
0405名無しさん@ピンキー2018/04/24(火) 21:35:16.60ID:cLq9Eqbd
続きまだかなー
0407名無しさん@ピンキー2018/05/23(水) 22:39:10.42ID:24sbKGWb
新作思ったより早かったな!
ハード買って待つか
0408名無しさん@ピンキー2018/07/04(水) 01:00:23.80ID:wnvks1fY
まだかなー
0409名無しさん@ピンキー2018/07/20(金) 00:48:16.28ID:djEPUrm8
新作が出るたびにDS、PSP、3DSとハードごと買うはめになってたけど、今回もか!(歓喜)

30周年の時に投下しようと思って丸一年…
まだ完成していませんが、置いておきます。

・神宮寺×洋子
・オリジナル設定あり
0410名無しさん@ピンキー2018/07/20(金) 00:49:50.51ID:djEPUrm8
 ―――彼女のいない事務所は、あまりにも静かだ。
 背中越しの窓の向こう側で息づく街の気配を感じながら、心の中で独りごつ。

 いつもより広く見える事務所を窓際からぼんやりと見渡して、神宮寺三郎は愛用のジッポーを取り出した。
 同じく付き合いの長いマルボロを咥え、火を点ける。
 うっすらと漂いはじめる煙で紛らせてみても、部屋の広さは変わらなかった。

 当探偵事務所の唯一の助手――御苑洋子は、長期の休暇をとっていた。
 彼女から申し出があり、受けていた依頼に区切りが付いた頃だったのもあって、二つ返事で承諾したのは先月の事。
 急な相談に彼女にしては珍しいとは思ったものの、特別何を訊く事もしなかった。
 連休の間に遠出でもすれば、いつも洋子は手土産を用意して事務所へやってくる。
 それを見て何処へ行ってきたのかを知るのもいいだろう――そんな事を思ったのが、彼女が休暇に入る前だった。

 秋から冬へと移る、外気が肌を刺すものに変わりつつあるこの時期。
 行楽シーズンには少しばかり遅れた形ではあるが、何処へ足を運ぶのだろうか。
 穏やかながらも意外と行動力のある彼女の背中を助手用のデスク越しに思い出して、ふと気付いたのが、休暇二日目の夕方だった。
 その日は朝から曇天で、風景を鈍色が覆っていた。
 時折降る雨が眼下のアスファルトを黒く染め、空と合わせて見慣れた街の景色を暗く、昏く仕立てあげていた。
 陰鬱さをそのままに、夜が近付くにつれてじわりじわりと迫り来る闇色は、あの悪夢の日を思い起こさせる。
 
 そう。彼女と出会った日が、あの男が死んだ日が、近付いていた。

 決して忘れていたわけではなかった。
 それと結び付けて考える事が遅れるほどに、彼女の様子はいつもと変わりのないものだったのだ。
 考えすぎだ、とも思った。 彼女と組んでもう何年も経つが、去年やその前など、同じ時期に今回のような休日を希望された事はない。 
 だがそれは、彼女が気を遣ってあえてそうしなかっただけなのかもしれない。
 だとしたら今年は、何かが違うという事なのだろうか。
 一度考え出すと際限なく湧き上がる疑問が、胸の奥でざわついてはかき乱す。
 そんな自身に、神宮寺は戸惑っていた。

   *  *  *  *  *  *
0411名無しさん@ピンキー2018/07/20(金) 00:53:47.09ID:djEPUrm8
 そうして、今日に至る。
 十日間にわたる洋子の連休の間に依頼の訪れはなく、神宮寺は焦燥とも不安ともつかない漠然とした靄を心中から拭えないまま、朝を迎えていた。
 窓際に寄りかかって浮かんでは消える紫煙を見ていると、外へと続くドアの向こうから小さな足音が聞こえてきた。
 聞き慣れたそれはドアの前で止まり、施錠を解く音に変わった。
 開かれた入り口に立つ彼女の姿に懐かしささえ覚える程感傷的になっている事に気付き、神宮寺の戸惑いはまたひとつ増えた。
「あら」
 少し驚いたような顔に、洋子は笑みを浮かべた。
「おはようございます、先生。 今朝はお早いお目覚めですね」
「ああ……まあな」
 抱えていた配達物と買い物袋をテーブルに置き、コートをハンガーにかける彼女の動きを、目で追う。 いつもと様子は変わらない。
「連休どうもありがとうございました。 これ、お土産です。
 何か変わった事などありませんでしたか?」
 受け取った手提げ袋の中から、包装紙にくるまれた箱が見える。
 そのロゴと手提げの店名には見覚えがあった。洋子の自宅の近所にあるコーヒー専門店のものだ。
 以前、そこで買ってきたという焼き菓子をコーヒーの付け合わせに食べたのだが、なかなかの逸品だった。
「ありがとう………いや、特別何も」
「そうですか。 ところで……」
 洋子はそう言うと、神宮寺の顔をのぞきこんだ。
 何気ないその仕草にさえ言外の意図を探ろうとする己の無意識に、彼は内心で溜め息をついた。
 そんな自嘲も知らず、洋子は言葉を続ける。
「朝食はお済みですか?」
「いや……まだだが」
「やっぱり……」
 眉根を寄せて怒ってみせるその表情もまた、よく知る彼女のそれだった。
「ちゃんとお食事なさってたんですか? あまり顔色が良くありませんよ?」
 小言を言いながら、洋子はテーブルの上の買い物袋からサンドイッチやら何やら取り出しては並べる。
「どうぞ召し上がってください。 今、コーヒー淹れますね」
「………悪いな」
 燃え尽きかけていた煙草を灰皿に押し付け、神宮寺は言われるままに椅子に腰掛けた。
 程無くして差し出されたカップから漂う香りが鼻をくすぐり、胸中のさざめきを凪がせる。
 同時に曖昧だった空腹感が主張をし始め、神宮寺は目の前の朝食に手を伸ばした。
0412名無しさん@ピンキー2018/07/20(金) 00:57:55.15ID:djEPUrm8
 洋子の存在が足された事務所の風景は、いつも通りとしか言いようのない程、穏やかだ。
 その穏やかさが何故か、気にかかった。
 僅かな違和感。
 まるで、意識的に落ち着き払ってみせているかのような。
 連休明けとは思えないきびきびした動作で窓を開け、やや埃っぽくなった室内の空気を入れ換える彼女の姿に視線を向ける。

 ―――勘ぐりすぎ、だろうか。

   *  *  *  *  *  *

 依頼の入らない一日は、殊更時間の進みが遅く感じられる。
 前の案件を終えて二週間近く経つが、新たな仕事の足音は未だ訪れない。
 夕暮れ時を迎えた事務所内には、洋子がパソコンのキーを打つ音が静かに響いている。
 彼女が不在のうちに散らかしてしまった仕事場は既に元の整った状態を取り戻しており、見慣れたいつもの様相を呈していた。
 つい今朝までの、彼女がいなかった時間など、なかったかのように。
 ふと時計を見ると、店じまいをしても良い時間に差し掛かっているのに気付き、神宮寺は彼女の背に声をかけた。
「洋子君、こんな時間だ。 きりのいいところで終わってくれて構わないよ。」
「はい、わかりました。 ………先生?」
「ん?」
 躊躇いがちに、洋子が神宮寺を振り返る。
「今夜は……何か、ご予定はありますか?」

 一瞬の、間。

「いえ、その……」
 その問いの意を測りかねて黙ったままの神宮寺に、どこか焦ったように彼女は言い繕う。
「久しぶりに、ご一緒にお夕飯でもと思ったのですが……」
「……そうか。 特に用事はないが……」
 言いつつ、咥えていた煙草の灰が落ちかけているのに気付いた。 自然な素振りを装って、神宮寺は灰皿へ穂先の灰を落とす。
「で、では、ご一緒に」
「ああ」
 一つ頷くと、洋子は再びパソコンの画面に向き直り、作業を締めくくりにかかった。
 先程までの滑らかな動きとは違い、彼女の細い指はぎこちなくキーボードの上で踊っている。
 時折タイプミスでもしたのか、液晶の文字が消えては増えるのが神宮寺の目に映る。
 そんな彼女を珍しいと思いつつも、どこか可笑しくて、知らず口の端に笑みが浮かんでいた。
「何処か、行きたい店はあるかい?」
 軽く身支度をして――背広を羽織って財布を懐におさめただけのものだが――神宮寺が希望をうかがうと、洋子は片手で髪に触れた。
 自分から誘ったにもかかわらず、何処で食べようかを考えてはいなかったようだ。
0413名無しさん@ピンキー2018/07/20(金) 01:00:29.66ID:djEPUrm8
「……新宿駅の近くに、前から気になっていたお店があるんですけど」
 少し思案して、洋子が口を開く。
「なら、そこにするか」
「よろしいんですか?」
「気になっていたんだろう?」
「全席禁煙のお店なんですが……」
「……………」
 再び振り向いた洋子の口元が、笑っていた。
「別の所にしましょうか」
「……いや、かまわない」
 昨今煙草を吸えない飲食店は増えている。 そう贅沢な事も言ってはいられない。
「ありがとうございます」
 彼女はそう言って微笑むとパソコンの電源を落とし、室内の戸締まりを済ませた。
 洋子の支度が整うのを確認した神宮寺は、玄関へと足を向けた。
「では、行こうか」

   *  *  *  *  *  *

「ずっと入ってみたいと思っていたんですけど……一人では抵抗があって」
 はにかむ洋子の表情から、少女のような一面が垣間見える。
 洒落た内装のそのレストランは、雑誌で女性客に大人気と紹介されていた店なのだそうだ。
 思い思いに食事を楽しみ、談笑に花を咲かせる若い女性たちを横目に、神宮寺は洋子の向かいに腰掛けた。
 ―――少し、落ち着かない。
 オーダーをとってウェイトレスが下がると、一息ついてグラスの水に口をつける。
「こういうお店にはあまり来られないんですか?」
 神宮寺の様子を見て、どこか可笑しそうに洋子が笑みをこぼした。
「仕事で必要な時に入るくらいだな」
「女性と、ですか?」
 探るような視線から、そっと目をそらす。
「……情報収集のためにな」
「お酒を飲ませてみたり?」
 ……そういえばそんな事もしたな、と神宮寺はグラスで口を塞いで思い返す。
 向けられ続ける視線にちらりと一瞥を返すと、彼女はくすくすと声をもらした。
 よほど来てみたいと思っていた店なのだろうか。 洋子の機嫌はすこぶる良いようだ。
「楽しそうだな」
 彼女の様子につられ、思ったままに口から言葉がこぼれる。
「そうですか?」
 洋子はテーブルの端に備えられていたカトラリーケースに手を伸ばし、まず神宮寺の前にいくつか並べた。
 小さく礼を言う彼に笑いかけ、洋子は言葉を続ける。
「久しぶりに長いお休みをいただいたので、リフレッシュできたみたいです」 
「先月は依頼が立て続けに入って、何度か休日もずれ込んだからな」
 ―――君が休暇に入った途端に仕事が入らなくなったわけだが―――
 という言葉を神宮寺は喉で押し留める。
0414名無しさん@ピンキー2018/07/20(金) 01:04:22.46ID:djEPUrm8
半端ですが、ここまで。
夢の終わりにの前日譚が出るそうなので、
その前には完成させたいです。
(原作にない設定があるので…)
04174092018/08/11(土) 20:16:15.15ID:evp3gG6x
ダイダロス体験版プレイ記念に、続きを途中まで投下します。
ダイダロスタイトルのBGM良すぎて聴いてて涙出てきた…
0418名無しさん@ピンキー2018/08/11(土) 20:23:05.50ID:evp3gG6x
そんな弱音めいた事を助手に漏らすのも、何となく情けない。
「でも、お陰様で遠くまで羽を伸ばせました」

 洋子のその言葉に、みたびグラスに伸ばされようとしていた神宮寺の指が止まった。
 ―――遠くまで。
 そう言った彼女は、変わらぬ穏やかな表情で自身の分のフォークとスプーンを並べている。
 返す言葉を探す神宮寺を、洋子は静かに見つめる。
 まるで、試されているような気がした。
 何処へ、と聞くだけの事なのに、何故こんなにも逡巡するのか彼自身にも分からなかった。
 判然としない緊張感が、互いの動きを止めていた。

 硬直を解いたのは、注文した料理の到着だった。
 ほんのり湯気を漂わせるそれがテーブルに並び、ウェイトレスが一礼して去っていく。
「食べようか」
 そう言うと、神宮寺は食器に手を伸ばした。
「そうですね、いただきます」
 洋子も何事もなかったかのように食事を始めようとした。
 だが、その手をそっとテーブルの上に置き、口を開いた。
「……聞かないんですか?」
「何を」
「何処へ行ったのか」
「話したいのなら、聞こうか」
 投げやりに言ってから、神宮寺も食器から手を離す。
「本当は、気付いていらっしゃるんでしょう?」
 ―――そう、気付いている。
 だからこそ、わざとぞんざいに返してみせたのだ。
 これまでお互いに踏み込まずにいた事に、今触れようとしているその真意を知りたくて。
 あるいは、突き放して打ち切れるものなら、そうなってくれれば良いとも思いつつ。
「気付いているなら、あえて聞く事もないだろう」
 素っ気なく投げた言葉にも、洋子の目は不満の影を見せない。
「お訊きしたい事があるんです」
「何だ?」
「あの花……」
 静かな、それでいてはっきりとした声で彼女は言う。
「彼に毎年、手向けてくださっているそうですね」

「………俺は」
 開かせた唇が、一瞬次の言葉を探しあぐねた。 「俺には、そんな時間はなかっただろう」
「ええ、代わりに行って下さっている方がいるのですよね」


 ―――誰が話したんだ。
 神宮寺は眉をひそめる。
 あえて語らずに潜めていた事を知られているのは、少なからずばつが悪い。
 頭に浮かんだ思い当たる人物の顔には、かつてよく見た意地悪そうな笑みがあった。
 神宮寺が毎年あの男の命日に連絡をとるようにしているその人は、数日前の電話でもその表情を思わせる口調で近況を語った。
『しかしサミー。 お前、この日には毎度欠かさず電話を寄越すよな』
 律儀な奴だ、と付け加えた後、間髪入れずに軽口を叩く。
『わざわざ確認しなくても、大事な元助手の依頼だ。 忘れずきっちりこなしているよ』
「そんな心配はしていない。 俺だって礼の一つくらい言うさ」
『普段は連絡なんて寄越さない癖によく言う』

 最後にくっくっ、と笑って電話を切ったその人物の様子を思い返すものの、何かを含んだような口振りではなかった。
 彼には今までこちらの近況を詳しく話した事はない。 あの事件の関係者である洋子を助手にした事さえも。
 二人が相対したのだとしたら、どこまでが互いに明かされたのだろう。
 やましさがあるわけでもないのに、神宮寺はいつも以上に険しい渋面を作り黙りこくってしまう。
 洋子はそんな彼の顔をじっと正面から見つめていたが、やがて口元を緩める。
「先生……」
 堪えきれない笑いを滲ませて、彼女は言った。 「すごい顔なさってますよ」
0419名無しさん@ピンキー2018/08/11(土) 20:27:42.19ID:evp3gG6x
「……………」
 先ほどまで感じていた緊張感など気のせいだったかのように、洋子は明るく笑っている。
 毒気を抜かれたような気分だ。
「遮ってすみません。 よろしければ、どうぞ召し上がってください」
 ―――別に空腹でしびれをきらしていた訳ではないのだが。
 それでも促されるままにカトラリーを取り、神宮寺は食事に手をつけた。
 思っていたよりも冷めていなかった具材が、放り込んだ口の中でじんわりと熱を広げる。
 言葉も思い付かず、二口、三口と続ける彼を微笑ましげに見つつ、洋子もパスタを口に運んだ。
 美味しい。 彼女が口元に手を寄せて小さく呟くと、神宮寺の胸中のわだかまりが幾分かやわらいでいく。
 そうしてようやく、舌の上を転がるものを旨いと感じ取る事ができた。
 目の前で静やかに食事をしている彼女も、その有り様が纏う穏やかな空気も、慣れ親しんだ光景そのものだというのに。
 形も要因も曖昧な焦燥に、自分だけが翻弄されている。
 黙々と皿の上にあるものを減らしながら、彼は自身の動揺さえ垣間見せた醜態に呆れ果てていた。

 それから、会話らしいものも挟む事なく互いの皿は空になり、満ち足りた身が心のゆとりを少しばかり持たせてくれた。
「美味しかったですね」
 そう微笑んでバッグの中を探る洋子を止め、神宮寺は伝票を手に取った。
「俺が持とう」
 洋子は目を瞬かせ、ためらいがちに口を開く。
「私が決めたお店ですし、せめて自分の分だけでも……」
「まあ、今日は久々に食事らしい食事をさせてもらったからな」
 軽口を言えるだけの余裕が出来ている事に、彼は安堵していた。
「……やっぱり、ちゃんと食べていらっしゃらなかったんですね」
 眉間に皺を寄せた彼女の苦言を聞き流し、席を立つ。
「それに……」
 口を突いて出た言葉を続けるのに、躊躇いはあった。
 このままうやむやにしてしまえば、おそらく彼女も蒸し返す事はないだろう。
 今まで通り、煩雑さと平穏とが折り重なった日常に埋もれて行く断片になるのだろう。
 だが、それでも。

「さっきは、話を止めてしまってすまなかった」
 ―――かつて助手になりたいと言って、あの事件に自分なりに向き合おうと決めた彼女が。
 時を経た今、切り出したのだ。 きっと意味があるはずだ。
「後で続きを聞かせてくれないか」
 出来たばかりのほんの少しの心のゆとりに、焦りも躊躇いも押し流させた。
0420名無しさん@ピンキー2018/08/11(土) 20:32:09.18ID:evp3gG6x
   *  *  *  *  *  *

 店を出て、駐車場まで歩を進める。
 日が落ちても明るさを保ち続ける街は寒さまでは誤魔化せず、頬を撫でる夜風が温もりを奪っていくのが分かる。
 大した距離ではなかったのだが、駐車場に着く前にはジャケット越しに冷えた身が熱を欲し始めていた。
「もう一枚羽織っていらしたら良かったのに」
 何気ない素振りで両手をポケットに突っ込んだ神宮寺だったが、コートをしっかり着込んでいる洋子に苦笑されてしまった。
 今日久しぶりに会ったというのに、もう何度こんな風に笑われただろう。
 首元を覆っている見るからに温かそうなストールに手をかけ、彼女が問いかける。
「お使いになります?」
「……いや、気持ちだけで十分だ」
 停めていたミニはもう目前にあった。 車に乗ってしまえば体も暖まるだろう。
「それで……どうする? 何処か店にでも入るか?」
 シートに腰を落ち着け、キーを差す。 そして近場のバーをいくつか思い巡らせながら、神宮寺は洋子に提案した。
「いえ、大してお時間はいただかないので……」
 そう言って洋子は居住まいを正し、この場で済む話なのだと言外に示した。
 それなら、と神宮寺は周囲に視線を走らせる。
 近隣の飲食店からも少し離れた所にあるこのコインパーキングは、その目的通り車両を停める為だけに人が寄り付くようで、今は人影も気配も感じられない。
 遠くから響く喧騒も、窓一枚隔てたこの場所にはささやかなものでしかない。
 うすら寒い車内で、洋子が口を開くのを静かに待つ。
 車外に遠く近くそびえ立つビルの群れを彩るネオンを他人事のように見つめながら、いつしか神宮寺は懐に手を伸ばしていた。
 煙草が欲しい。
「………ニューヨークの知人から連絡があったんです」
 ややあって、静けさの中に声が降ってきた。
「近々、あのアパートが取り壊されるって。 それでどうしても最後に見ておきたくなって」
 淡々と、それでいて探るように紡がれる言葉から、いつか見た光景が脳内に広がる。
 かつてあの男を追って辿り着いた、アパートの一室。
 あの男と洋子にとっての終わりの場所であり、神宮寺と洋子にとってのはじまりの場所だ。
「……でも、結局間に合わなくて。 私があそこに着いた時にはもう、更地になっていました」
 穏やかな声音の中に、僅かな揺らぎ。
「周りの風景もすっかり変わっていました。 新しい建物ばかりで……あの頃を思わせるものなんて、何一つなくて」

 ―――まるでそれは、全てを、無かった事にしたかのような佇まいで。

 言葉にならなかった洋子の想いを、神宮寺は確かに感じ取った。
 時は過ぎ去っていく。 その中で生きる人間も、それを取り巻くものも、常に前へ進み続ける。
 時の止まったもの達は置き去りにされて、色褪せていく。
 忘れ去られていく。

「でも」
 こみ上げる何かを押し殺すように、力をこめて彼女は続けた。
「忘れずにいてくれる人がいるなら……きっと」
 ―――きっと、彼は救われている。 そう思いたいと。
 願いを含んで響く声が、いつか自身で手向けた花の淡い紫を思い起こさせる。
 神宮寺の依頼通り、海の向こうの恩師が彼に代わって墓前に捧げ続けている、紫苑の花の色を。
「私には……救えなかったから」
 かろうじて神宮寺の耳に届いたその消え入りそうな声は、微かに震えていた。
「……それでも君は彼を最後まで信じた。 そうだろう?」
 洋子の言葉を否むように、神宮寺は言った。 「それは、救いにはならないのか?」
 命を断つ形でしか終わらせられなかった自分の慰みめいた手向けが、救いだなどと言うのなら。
「私には何も変えられなかった……一番、彼の近くにいたはずなのに」
 小さく首を振ってそう言うと、彼女は神宮寺に向き直り、彼の左手に自分の両手を重ねた。
 思わずこわばる彼の手が細い両手に包まれたまま、洋子の額に押し当てられた。
 顔を伏せてそのままじっと静止する彼女の姿は、まるで祈りを捧げているかのようだ。
「………ありがとう」
 洋子の手に、僅かに力がこもる。
「忘れないでいてくれて……ありがとう、ございます」
 彼女の声が、かすれていた。
0421名無しさん@ピンキー2018/08/11(土) 20:40:56.21ID:evp3gG6x
 体の向きを変えると、ぎしりと静かな車内に不釣り合いな大きな音が座席から鳴った。
 構わず神宮寺は洋子の方を向き、右手をそっと彼女の肩に置いた。
「自己満足だ……君が思うような綺麗なものじゃない」
「それなら」
 神宮寺の声に洋子はかぶりを振り、彼の手を放した。
 顔を上げた彼女の顔には、苦しげな表情が浮かんでいる。
「私はもっと酷い人間でした。 あなたがそうは思わないとしても」
「洋子君?」
「忘れてはいけないと思った…………せめて、私だけはって」
 抑え続けていたものを少しずつ、慎重に心の縁から溢れさせるようにして洋子は言った。
「大切だったはずなのに、全部思い出になってしまう……」
 何かを戒めるかのように、洋子は膝の上で両手を固く組む。
「顔が見られなくなって……声が聞けなくなって……鮮やかなままの記憶では、なくなっていって」
 握りしめられた白い拳が、震えていた。
「そんな風に薄れていくのが哀しくて、苦しくて。 何かで繋ぎ止めないと……そう思ってしまったんです。
 だからずっと許さずにい続けるのが正しいんだって、自分に言い聞かせて」
 声音のひとつひとつに、痛みが滲んでいく。
「あなたは助けようとしただけなのに。 本当は分かっていたのに……それでも私は」

 続く言葉を遮って、神宮寺は洋子の体を抱き寄せていた。

「………後悔しているのか?」
 息を呑み硬直する彼女の背に、神宮寺はそっと腕を回す。
「あの時抱いた感情を、間違っていたなんて思わないでくれ」
 一拍おいて、重い声が静寂の中に落ちた。 「彼を、愛していたのなら」
 肩越しに、洋子がぐっと歯を食いしばるのが伝わる。
「あなたを恨んだのは、彼の為だけじゃなかった……」
 押し寄せる感情を堪えきれず、喉を震わせて声を絞り出した。
「きっと何よりも、自分の心を守りたかった……私にはそれが、許せない……」
 どんなに時が経とうとも。 いつか抱いた感情が薄れようとも。
 記憶の欠片は胸に刺さったまま、絶えず訴えかけてくるのだ。
 ―――忘れるな、と。
 自身に課したその戒めこそが、今の自分達を形作っている。
「あの時……もし君が俺を恨まなかったとしても、俺が背負っていくものに変わりはなかった……そう思う」
 あの時の判断を、正しかったとも、間違っていたとも思わない。 思ってはいけない。
 彼の死のその先に、今の自分達は立っている。 それを忘れてはいけない。
 ただ、それでも。
「何かを責め続ける事でしか、忘れずにいられない訳じゃないだろう?」
 腕を緩めて告げる神宮寺に驚き、洋子は顔を上げた。
「………先生が、それをおっしゃるんですか」
 ―――ずっと自分を責め続けている、あなたが。
 痛みを堪えるような表情で呟く洋子の頬に手を添え、口角を上げて見せる。
 ぎこちなく浮かべたその笑みもまた、苦しみを帯びたものだった。
「俺達も、そうだ。 自身を責め合う事でしか、傍にいられないわけじゃない……そうだろう?」
 
 痛みだけでない記憶を重ねてきた。
 互いを誰よりも信じられるようになるだけの日々を、積み上げてきた。
 それなら。

「もう、前に進んでもいいだろう」

 涙の膜で覆われた眼を見つめながら、震える唇に自身のそれを触れ合わせた。
0423名無しさん@ピンキー2018/09/21(金) 10:23:46.69ID:lR3t0IeM
ダイダロス発売日決定記念にみに来たらうおー
表現が大人の上品さがあっていいね!
脳内にしっとりジャズBGMがながれてきたわ
ゲームだと有能しっかり者の面が強調されてるからこそ
ホロッと弱みをみせちゃう洋子君は実に良いな

全裸正座しつつ、しっぽりいたす続きまってます
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