探偵神宮寺三郎のエロパロないですか? 2
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0001名無しさん@ピンキー2009/03/27(金) 23:17:40ID:WMJNSwrU
神宮寺三郎シリーズのSS書いて下さる職人さん、お待ちしてます。

前スレ
探偵神宮寺三郎のエロパロないですか?
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1162302311/
0101222009/06/30(火) 22:19:37ID:CJoBuIfW
終了です。
0103名無しさん@ピンキー2009/07/02(木) 22:12:44ID:UFZcWTPM
いつもながら素晴らしいです。
ゲームの続きなのも盛り上がって良い。
またその内書いてください!
0104名無しさん@ピンキー2009/07/05(日) 00:36:49ID:NsN7gKMe
エロい洋子さんはやっぱいいなぁ
次回作も楽しみにしております
超GJです!!
0106名無しさん@ピンキー2009/07/19(日) 10:41:06ID:cvUWEBwM
亡煙を捜せ!を再プレイしてから>83を読みました。
とてもうまい繋ぎかたですね。神宮寺にはもう少し見てたらとか思いましたがw
デスクに押し付けられてエッチされちゃう洋子さん素晴らしいです。
いつもありがとうございます。

あと、亡煙を捜せ!で、本田哲浩と話がこじれてホテルで食事、一夜を共に
しないと証言しないと言われて仕方なく、みたいのを妄想しました。
どなたかSSにしてほしいです。
0107名無しさん@ピンキー2009/07/22(水) 22:06:55ID:QBH/90Wr
調査中情報を得る為にやむを得ず体を…ってのは、なかなかムッハーなシチュかもな。
0108名無しさん@ピンキー2009/07/30(木) 22:15:57ID:iX8/vyyu
保守
0109名無しさん@ピンキー2009/08/11(火) 20:53:22ID:T7tEsaM2
新作の洋子の立ち絵見たんだが、黒のストッキング履いてた…
なんか、ドキッとした。
0110名無しさん@ピンキー2009/08/13(木) 17:01:43ID:8S2oHRCv
絵がKBに近いのが残念だな。
公式サイトのイラストの洋子なんか最初誰だかわからなかったw
0111名無しさん@ピンキー2009/08/22(土) 22:41:49ID:baaKba98
新作出るわ、アプリ配信のペースは早いわ、サントラ出るわ、最近の勢いはなんなんだろう。
嬉しいけど。
0112名無しさん@ピンキー2009/08/29(土) 19:52:30ID:fk+Ih+Us
Flashゲームのかすみさんにときめいた。でもあれもう神宮寺って感じじゃないよなw
0113名無しさん@ピンキー2009/08/30(日) 23:52:55ID:zScv//Og
アークのノリからしてエロゲ的だったりしたもんなぁ…
オーディションとかもう訳わからん
0114名無しさん@ピンキー2009/09/03(木) 20:04:25ID:hGT/VIcu
いにしえの記憶のスタッフコメントとかすごかったしねw
公式でああいうのやられるととまどう。
0116名無しさん@ピンキー2009/09/10(木) 17:11:54ID:quT9SfUq
新作まであと一週間。
そろそろこちらのSSも恋しくなってきたなぁ…
0117前スレ5972009/09/11(金) 11:30:21ID:lXtGDqFC
規制解除ktkr! 長かった・・・。
とはいえ筆は進んでおりません。
エロ無し系が多くなるかと思いますが、おいおい投下させていただきます。
011922 小ネタ2009/09/15(火) 20:26:58ID:4gTUm9ww
 事務所内に、パソコンのキーを叩く音と淡々とした男の声が響く。
 神宮寺の調査結果を聞きながら、洋子がそれを報告書にまとめあげているところだ。
 ほぼ毎日のパソコン操作に慣れた彼女の指は、滑らかに、そして軽快にキーボードの上で踊る。
 だが、この時ばかりは動きの鈍さを隠せなかった。

「……っ、は……」

 声音混じりの息が、緩んだ唇から漏れた。
 手は止まる事なく文字を入力していくが、その手つきはますますぎこちなくなっている。
 そのさまに気付いてはいるものの、神宮寺の報告の声は途切れない。彼女の脇から伸ばした両手の動きもまた、止まる事はない。
 助手用の椅子に腰掛けて作業する洋子は、神宮寺の手によって後ろから胸を揉みしだかれていた。
 薄手のブラウスのボタンは半端にはずされ、はだけた箇所からは膨らみの形の歪むさまが垣間見える。
 指を食い込ませ、掌を擦りつけるような丹念な愛撫を受けながら、洋子は神宮寺の報告に耳を傾け、パソコンと向き合っているのだ。
「んっ……うぅん……」
 言葉を区切る合間に、神宮寺は洋子のうなじに口付け、甘噛みする。
 吹きかけられる息と刺激に震える女の体を、彼は試すように弄ぶ。
012022 小ネタ2009/09/15(火) 20:28:33ID:4gTUm9ww
 調査内容を細部まで、焦れる程穏やかな口調で語りかける彼は、彼女がこのささやかな快感に耐えかねるのを待っていた。
「ああっ……」
 胸だけでは飽き足らず、神宮寺の片手が下方のスカートをたくし上げた。
 程よく肉付いた腿を男の五指に撫で回され、洋子は思わず声を上げてしまう。
 彼女の細い肩がこわばり、指の動きがぶれる。誤って入力してしまった文字を慌てて削除するが、指の震えは止まらない。
 それに構う事なく、神宮寺は仕事上必要な事だけを洋子の耳元で囁き続けている。両手で施す淫らな行為からは考えられない程に冷静な声で。
 みずみずしい肌の上を滑る指は付け根に行き着き、ついには下着の隙間に潜り込んできた。
 既に蜜を滲ませている秘唇を割り開き、柔らかい粘膜を複数の指で掻き乱す。
 胸を捏ね続ける方の手の優しい動きとくらべると、秘部に宛った指はいくらか乱暴に中をまさぐっている。
 そうしてわざと音を立てて愛撫を重ね、彼女の理性を崩さんとしているのだ。
 耳をくすぐる男の声と、温もりと、快感──その全てに惑わされ、細められた洋子の目がじんわり潤む。
 だが、これでは到底鎮まらない。
012122 小ネタ2009/09/15(火) 20:36:10ID:4gTUm9ww
「あぁ……先生っ……」
 キーを叩く事さえやめて、洋子は背もたれ越しに神宮寺の胸に体を押し付けていた。
 ぎしりと椅子を鳴らして身を委ねてくる彼女の様子を見て、彼は愛撫の手を止める。
「……どうした? 手が止まっているぞ」
「は……ぁ……」
 不意に呼びかけられ、つい先程まで全身に満ちていた甘い浮遊感が遠ざかっていくのが、彼女には感じられた。
 足りない、と体は訴えている。腕に力をこめてみても、集中する事が出来ない。
 感覚の鈍った指をキーボードへ伸ばしてはみたものの、まともに打てるとは思えなかった。
「……すみません」
 消え入りそうな声で詫びながら、洋子はゆるゆると首を振る。
「……無理、です」
「無理……?」
 ひそめた声で問う神宮寺だが、表情は変わらない。想定通りの言葉だったからだ。
「このままじゃ……つらいんです……先生」
 恥ずかしげに目を伏せながらも、半端に疼く箇所を慰めたくて、腿を擦り合わせている。
「お願いです……早く」
 その言葉の通り、乞うような眼差しで洋子は神宮寺を見上げた。「……イかせて、下さい」
 彼女の瞳には、口元に満足そうな笑みを浮かべた男の顔が映っていた。
0122222009/09/15(火) 20:38:48ID:4gTUm9ww
半端に終了。
仕事中のプレイって何気にエロそうですよね。

>>117
おめです。楽しみにしてます。
0126名無しさん@ピンキー2009/09/23(水) 19:41:46ID:CNiYKKcF
>>124
洋子さんの声が妙に高くて微妙にエロいんだが
0128名無しさん@ピンキー2009/09/26(土) 14:45:58ID:op5BwIgO
flashの愛理があからさまにエロかったな。
普段ああいうキャラなんだろうか...
0129名無しさん@ピンキー2009/09/26(土) 22:23:44ID:hyfOkIzr
与那国とデキててもおかしくないよなw


実は姉妹とか実はDBとかありそうだが。
0131名無しさん@ピンキー2009/10/21(水) 18:27:23ID:ehEQWuFq
俊介 早く結婚しようぜ。
0132名無しさん@ピンキー2009/10/21(水) 19:19:10ID:m0AQ0XQE
DB=愛理で妄想したら、与那国×DBが書きたくなった件

DBはもちろん女で
0134名無しさん@ピンキー2009/10/25(日) 12:18:17ID:UVPWhp4z
与那国と親しげな絹江を見て、巧みに未亡人絹江を慰める与那国を想像した

…が、絹江じゃ艶にかけることに気づいたorz
0138名無しさん@ピンキー2009/11/20(金) 23:14:14ID:juMr6W63
洋子君のあのぽってりした唇で濃厚フェラとか、まなみが豊満な胸でパイズリしたりとか、かすみが酔った勢いで襲ってきたりとか、想像するだけでハァハァなんだが俺には書けない…
誰か頼む。
0139名無しさん@ピンキー2009/11/25(水) 18:53:58ID:yDztp2kY
女性キャラ全員攻めなのかw
洋子さんはヤられる側がさまになってると思うが…
0141名無しさん@ピンキー2010/01/16(土) 22:25:36ID:QP5ZnNb7
保守。
大規制のためか書き手さん来ないな…


----------------(以上でよろしくお願いします)
01421412010/01/17(日) 22:31:17ID:P/tw9iAP
最後の行ミスだすまんOTZ
0143名無しさん@ピンキー2010/01/22(金) 20:13:49ID:r64Y7IvJ
そもそもこのスレまだ需要はあるのか
職人が来ないと静かすぎて心配
0146前スレ5972010/01/27(水) 14:56:23ID:3UbskWYq
規制長かったです。
しかし、いつまた巻き込まれるかわかりません・・・。
ところで、22さん、いらっしゃいますか?
ちょっとお願いがあるのですが・・・。
0147222010/01/27(水) 20:17:41ID:QoNaiTeN
もしもし解除記念カキコ。
呼ばれましたかな?
0148前スレ5972010/01/28(木) 12:04:26ID:wiapGqRt
>>147
おお、お呼びだてしてすみません。
ずいぶん前に「今泉の洋子寝取り編」を鋭意製作中と書きましたが、
自分のエロ描写に限界を感じました(マジ才能ない・・・)orz

数日中に洋子を店から連れ帰る今泉の話を投下する予定です。
もしその話が気に入ったらで結構なのですが、22さまにエロ部分を書いていただきたいのです。
22さんの書く今泉のエロ話が読みたいという個人的な願望もあります。

このスレでこういったお願いをするのがOKなのかどうかもわかりませんが、
お気を悪くなさったら、聞き流してください。
0149222010/01/28(木) 20:07:20ID:vFW2ykbt
>>148
ネタ頂けるのはとてもありがたいのでむしろ大歓迎ですw
時間かかるかもですが、キャラとかイメージとか壊さないように頑張ります。
01505972010/01/29(金) 21:27:12ID:TYmUDPa1
>>149
うれしいお言葉ありがとうございます!
早速透過準備・・・と思って文章を読み返しましたら、
かなり前に書いたものなので、けっこう粗が見えてきてしまいました。
大筋は決まってますので、細部の書き直しをしております。
また規制に巻き込まれないうちに投下しようと思いますので、しばしお待ちください。
01515972010/02/04(木) 20:20:27ID:sHUYV03D
パソコン、再び規制くらいましたorz
投下は解除後ということで…すみません。
01525972010/02/10(水) 22:12:25ID:UITGyKtA
今泉×洋子編 投下します。
設定は、22さんが以前お書きになっていた洋子が風俗で働いている話、
それに私が付け加えたプレストーリーの続きです。
風俗で働く洋子を辞めさせることをサブは今泉に任せるが、今泉も洋子を狙っている様子・・・。
今泉が洋子の働く店へと向かうことから始まります。
22さんの良きネタになることを祈ってます。
0153今泉×洋子12010/02/10(水) 22:13:39ID:UITGyKtA
――さて、行くとしますかね

新宿の繁華街、雑居ビルの一角にある一件の風俗店に今泉は足を踏み入れた。
いかつい顔の店長らしき男が近づいてくる。
一般人の客に聞こえないよう配慮し、小さく挨拶をしながら耳元でささやく。
「これは、明治組の・・・。今日はどうなさいました?」
「ここにリョウコという女がいるな」
「ええ、当店のナンバーワンですよ。ご指名ですか? さすがにお目が高い。」
「そいつはアタシの身内だ」
男の顔がさっと青ざめる。
「ま、まさか若頭の・・・・・・」
店長は震えながら小指をおそるおそる立てた。
誤解されたようだが、さっさと用事を済ませたい。今泉は男を促した。
「・・・まあ、そんなところだ。連れて帰らせてもらう。案内しろ」

案内している間、男はすっかり恐縮しきってぺこぺこと頭を下げていた。
「もういい。それよりリョウコの情報は今後一切漏らすな。
・・・いや、最初からいなかったことにしろ。お前の頭の中からもだ。履歴書や写真もすべて破棄させてもらう。
もし守れない場合はどうなるか・・・分かっているだろうな?」
「ひっ! お、お約束します。ですから何卒・・・」
部屋の前に着くと、男が中の女に声をかけた。
「リョウコちゃん、お迎えの方が来たよ」
振り向いた女はまぎれもなく神宮寺三郎の助手――御苑洋子だった。
洋子は何が起こったのか分からず呆然としている。

――すみませんね、御苑さん。詳しい説明は後回しです。

今泉は軽く息を吸い込み、洋子を怒鳴りつけた。
「行くぞ・・・さっさと支度せんかい!」
洋子はびくんと体を震わせ、そそくさと身支度を整え始めた。
その顔は恐怖に青ざめている。

――とにかく、話のできるところに移動しないと

洋子の腕を引っ張り、外へと連れ出し黒塗りの車に乗せる。
「行ってくれ」
運転手にそう命じ、今泉は洋子の方へ視線を移した。
今泉が話しかけようとしたが、洋子は茫然自失している。
洋子の目が宙をさまよう・・・と次の瞬間、洋子の体は力なく今泉の方へ倒れてきた。
「参りましたね・・・」
今泉はため息をつき、洋子が目覚めたときの言い訳を考えていた。
0154今泉×洋子22010/02/10(水) 22:16:05ID:UITGyKtA
車はほどなくして瀟洒なマンションの前に止まった。
「ご苦労だった。今日はもう帰っていいぞ」
車を降りた今泉は洋子を抱きかかえ、建物の一室へと向かった。
ベッドに洋子を横たわらせた後、上着を脱ぎネクタイを緩めソファに身を沈めた。
一日の疲れがどっと出てくる。
意識のない洋子の顔を、今泉はまじまじと見つめた。

――気丈な方かと思いきや・・・まだまだお嬢ちゃんですね、御苑さん。

探偵神宮寺の優秀な片腕。才色兼備の敏腕秘書のイメージが強かった。
しかし眠る洋子の顔は、まだほんの少しあどけなさを残している。
それでも、めったにお目にかかれないいい女だ、と今泉は改めて思う。

――確か、まだ20代半ば・・・。
  そう考えりゃ、モノホンのヤクザに威嚇されて、平気でいる方がおかしいかもしれませんねぇ。
  そんな人にあんな仕事に飛び込もうとまで思いつめさせて・・・神宮寺さんも罪な方だ。

今泉には、なぜ洋子があんな仕事をしていたのか、おおよその見当はついていた。
洋子のことを自分にゆだねたあの神宮寺の態度。
お互いに好意は持っているものの、
まだ神宮寺と洋子の間は、上司と部下という関係以上には進展していないらしい。
それも神宮寺の方が抑制する形で、と今泉は直感していた。

神宮寺の気持ちも分かる。
探偵も所詮は裏稼業だ。神宮寺も明治組だの怪しげな情報屋だの裏社会に生きる人間たちとの付き合いがある。
危険な仕事も秘書なら深入りさせずに済むが、もしそれが愛する女だとしたら?
女を自分のものにしたいという願望と、守るべきもののために身動きが取れなくなるという不安。
その狭間に神宮寺は居続けている。
上司と部下という中途半端な関係のまま女を傍らに置くということで。

しかしそれは洋子にとって生殺しに近い。
表面は取り繕えても、押さえ込まれている「女」の部分はいつか爆発する。
おそらく女として求められたいという欲求を、風俗の仕事でかろうじて発散しているのだろう。
本人が自覚しているのか無意識なのかは別として・・・。
そんな女を今まで何人も今泉は見てきた。
金でも体でも言葉でもいい。女は何かで繋いでおかないと、不安でどこかへ行ってしまう。
少なくとも今泉はそう思っている。

――アタシは生憎と迷う性質(タチ)じゃないんでね。どうなっても悪く思わないでくださいよ、神宮寺さん。
0155今泉×洋子32010/02/10(水) 22:17:40ID:UITGyKtA
御苑洋子は悪夢から目覚めようとしていた。

――怖かった・・・疲れているのかしら。最近書類整理もたまっているし早く起きて事務所に行かなきゃ・・・

しかし、うっすらと開いた目に映ったのは、見覚えのある自分の部屋ではない。
「・・・ここは?」
「気がつかれましたか?」
その声に洋子は思わず洋子は身構えた。
夢ではなかった。
声の聞こえる方に目をやると、長身の男のシルエットが近づいてくる。
「・・・今泉さん」
洋子は恐怖で体が凍りつくような錯覚を覚えた。
しかし、男は洋子の目の前に立つと、いつも通りの慇懃さで頭を深々と下げた。
「御苑さん、先ほどは申し訳ありませんでした。少々芝居が過ぎました」
「芝居?」
「あの店から連れ出すために店長をちょいと脅しましてね。
成り行き上、貴女を丁重に扱えなくなってしまいました。
あんなに驚かせてしまうとは思ってなかったもので・・・お詫びします」
洋子は大きく安堵の息を吐いた。緊張から解かれ、目から涙がこぼれそうになる。
「いつもの今泉さんですね・・・よかった」
「どちらもアタシです。貴女には今まで見せていなかっただけのことでね」
洋子はハッとした。いつも忘れてしまう。この人は明治組の若頭という地位にいるということを。

「これは失礼。お客様に何もお出ししてませんでしたね」
今泉は奥のキッチンへ行き、コーヒーカップを手に戻ってきた。
「こんなものしかありませんが」
そう言いながらサイドテーブルにコーヒーを置いた。
「あ、ありがとうございます」
洋子はベッドに腰掛け、ソファに腰掛けている今泉と向き合った。
この男と二人きりになるのは初めてだ。しかもこんな形で。
知られてはいけないことを知られてしまった。
それがこの男で果たしてよかったのだろうか? もやもやとした不安が湧き上がる。
0156今泉×洋子42010/02/10(水) 22:18:48ID:UITGyKtA
その不安を振り切るようにコーヒーを口にし、洋子は部屋を見回した。
まるでホテルの一室のように生活感のない部屋。
「ここは、今泉さんのご自宅なんですか?」
「別宅、といった方が正しいですね。何かあったときのために押さえてあるだけで、普段は使っていません。
もっとも、こんな使い方をするとは夢にも思いませんでしたが」
コーヒーの苦味で徐々に落ち着きを取り戻しつつあった洋子は、一番の疑問を今泉に投げかけた。
「今泉さん、どうして店にいらしたんですか? 
私があそこで働いているのをなぜご存じだったんですか?」
返ってきたのは当たり前すぎるほどに当たり前の答だった。
「御苑さん、新宿は明治組のシマです。お忘れですか? ヤクザの情報網を舐めてもらっちゃ困ります。
しかもウチの若造たちの間で貴女に入れ込んでるヤツらもいましてね」

洋子は自分の浅はかさを悔いた。
数え切れないほど多くの人が行きかう新宿。
そんな大きな街の片隅なら、源氏名を使えば、誰にも分からないと思っていた自分を。

「御苑さん、貴女はまだこの街の闇の深さを知らなさ過ぎます。
もう、あんな仕事はお辞めになることです。
貴女のようなお嬢さんをあのまま放っておいたら、
どこぞのチンピラかホストの甘い言葉にだまされて金づるにされるのがオチです」
「そ、そんなことはありません・・・私」
「今の貴女は脇が甘すぎますよ。
第一、探偵助手ともあろう人が、明治組の存在を忘れるなんてね」
痛いところを突かれて、洋子は俯くしかなかった。
「それに、アタシの目の届くところで御苑さんに何かあったら、神宮寺さんにも申し訳が立ちませんしね」
「せ、先生は関係ありません! 私が好きでやっていたことなんですから」
0157今泉×洋子52010/02/10(水) 22:20:23ID:UITGyKtA
洋子の見間違いだろうか? 
洋子がそう叫ぶと今泉の目つきがどことなく変わったような気がした。

今泉はゆっくりと脚を組みかえると、フッと笑いながらこう言った。
「ほぉ、何がお好きなんですか?」
「えっ・・・そ、それはその・・・」
予想だにしない問いかけに洋子はしどろもどろになったが、やがて眉をしかめてやっと言葉を返した。
「今日の今泉さんは・・・なんだか意地悪ですね・・・」
今泉はその言葉も軽く受け流した。
「いえ、先ほど貴女が神宮寺さんは関係ないとおっしゃられたのでね。
それならば、今日はただのヤクザの男と風俗の女として
二人で話をしたいと思っただけですよ、リョウコちゃん。
・・・そういえば先ほどの答をまだ聞いていませんね。教えてくれませんか?」

今泉はゆっくりと立ち上がり、洋子に近づいてくる。
「言えなければ私が代わりに答えてあげましょうか?」
0158今泉×洋子62010/02/10(水) 22:21:23ID:UITGyKtA
洋子は逃げられなかった。
いや、正確には逃げようとはしなかった。
今泉の言葉に、心が丸裸にされたような気持ちになっていた。

「リョウコちゃん」と呼ばれた瞬間、
洋子の頭の中にはあの店で接客した男たちの様々な痴態が頭を駆け巡った。
おとなしそうな男、まじめそうな男、若い男から中年まで、
ありとあらゆる男たちが洋子の前で人には見せられないような姿をさらけ出した。
その男たちを観察するのを、洋子はいつの間にか楽しむようになっていた。
時には冷たく、時には面白おかしく。

新宿一帯を束ねる関東明治組の若頭である今泉直久。
それほどの男が自分にどんな姿を見せてくれるのだろうか?!
長い知人でありながら、今までその本性を見せなかった男。
そんな女としての「興味」が今泉に対する「恐怖」を押しのけ始めていた。

――こんなことを考えるなんて、私はどうかしている・・・

今泉の姿は次第に近づいてくる。
体中しびれるような感覚のまま、洋子は立ちすくんでいた。


・・・・・・To be continue
01595972010/02/10(水) 22:26:05ID:UITGyKtA
投下終了いたしました。
0160222010/02/12(金) 18:26:02ID:u2ndVlQ5
>>152
投下超乙です!ここまで考えて頂いてとても嬉しいです。
今書いてる別のものを完成させたら続き書かせて頂きます。
0161222010/02/17(水) 22:35:50ID:TPRNa1LF
神宮寺×洋子で投下します。

・洋子さんが酒に弱い設定
・なんだか襲い受け
0162222010/02/17(水) 22:38:33ID:TPRNa1LF
 ソファーの上には、二つの人影があった。
 細い女の影が、その下の男の体に今にも覆いかぶさりそうな体勢で、彼を見下ろしている。どこか、ぼんやりとした目で。
 対する男も怠そうではあるが、戸惑いを含んだ表情で彼女を見上げている。
 夜半であるが故ブラインドが下ろされ、電気も消してあるので室内は暗い。
 音一つたたない暗闇の中で二人きりというこの状況は、今の彼の冴えない頭では冷静に受け止められそうになかった。
「……先生……」
 溜め息と共に、思いつめたような洋子の声が零れる。
 ソファーの背もたれに置かれていた彼女の手が動き、神宮寺の肩に押し付けられる。
 心地よい温もりではあるが、それに浸る余裕などない。普段と明らかに異なる彼女の雰囲気が、それを許さない。

 ──何故、こんな状況になっているんだ。

 酔って定まらない思考を、神宮寺は懸命に過去へと遡らせた。生温い女の吐息に、昂ぶりそうな自身を抑えながら。

  *  *  *  *  *

 大きな仕事を終え、ささやかな打ち上げと称して近場のバーで彼女と酒を飲み交わしていたのは、つい数時間前の事だ。
 話が弾むにつれて酒も進み、気付けば終電の時間は過ぎていた。
 タクシーを拾って洋子を帰そうにも、彼女も彼もだいぶ酔っている。
 ひとまず酔いが醒めるまで事務所で休ませようかと、神宮寺は彼女を連れて店を出た。
「洋子君……歩けるか?」
「……はい……」
 肩を貸す神宮寺に応える声に、勤務中の張りはない。
 彼の腕に捕まるようにして歩き出すその足どりも、どこか危なっかしい。普段あまり酒を飲まないからなのか、相当酔っているようだ。
 そもそも、洋子と酒を飲みに行く事など滅多にない。今回のような気まぐれがなければ、酔いつぶれた彼女を見るなどという事はなかっただろう。
 絡めた腕、触れる肩から温もりが伝わってくる。酒が入っているので体温は高いが、不思議と熱苦しさは感じない。
 彼が飲みに行く時は大抵一人だ。連れがいたとしても男ばかりで、こんな風に酔った女性を連れ歩く事にはあまり慣れない。ましてや、彼女なら尚更だ。

「……………」

 ふと、神宮寺のしがみつかれている方の腕に不自然な力が入る。彼の肘に、柔らかいものが押し付けられた為だ。
 丸みを帯びた、弾力のある感触。確かめずとも、何であるかは容易に分かる。
 傍らの洋子を見ると、彼の肩に頭をもたれかからせ、うつらうつらしている。力が入らない為、自然と密着してしまうのだろう。
0163222010/02/17(水) 22:41:58ID:TPRNa1LF
(……いかんな)
 涼しい夜風に顔を上げ、一つ深く息を吸う。ゆっくりと吐き出して自身を落ち着かせると、止まりかけていた足を再び前へと歩ませた。

  *  *  *  *  *

 ……そこまでは、鮮明に思い出せた。
 それから事務所まで帰って来たは良いものの、酔いの醒める気配のない洋子をどうして良いか分からず、とりあえず上のフロアのベッドに寝かせる事にしたのだ。
 その際、彼女を運ぶのに手間取ったのを覚えている。
 半分眠っているような状態の彼女は、神宮寺にしがみついて歩いていた。
 支えるにしても不用意に体に触れる訳にもいかず、それでも集中力の欠けた意識下でなんとか無事にベッドに横たえ、自身も下階のソファーに身を沈めたのだ。

 ──が、しかし。
 寝転がってしばらく経って、感じた気配に目を開けてみると、上で寝ている筈の洋子がそこにいた。
 寝ぼけて降りて来てしまったのだろうかとも思ったが、それにしても様子がおかしい。
 神宮寺をじっと見つめて離れないその目は、少し潤んでいる。そして彼の肩に添えられた彼女の掌と指は、時折シャツ越しに感触を確かめるように動く。
 彼女がそれを意識しているかどうかを別にしても、男をその気にさせるには十分な誘惑だった。
「……洋子君」
 それを振り払おうと呼びかける神宮寺の声には、力がこもらない。酔いと眠気のせいだけという訳でもない。
 洋子の体を退かそうと腕を掴んだは良いが、その先へ動かす事が出来ないでいる。
 迷う神宮寺を追い立てるように、彼女はその身をソファーの上に乗せ、彼の脚を跨いで座り込んだ。無造作にめくれたスカートの下の腿が、神宮寺の両足を挟み込んで広がる。
 隙間から見える淡いピンク色の下着から慌てて目を逸らしながら、普段なら絶対にありえないこの状況の原因を神宮寺は察した。
 彼女は、悪酔いしているのだと。

「洋子君、その……降りてくれないか?」
 僅かながら冷静さを取り戻した声で、神宮寺は改めて呼びかける。
 洋子が離れようとする気配はない。これほど近い距離で、聞こえていない筈はないのだが。
 探るように見上げる神宮寺の視線が彼女のそれと交わった。
 ずっと彼の顔を見つめ続けていたのであろうその目は、不満げに細められている。
0164222010/02/17(水) 22:45:00ID:TPRNa1LF
 ──何故だ。気を悪くするような事をしただろうか。
 気まずさに目を逸らす神宮寺。肘かけにもたれた彼の頭のすぐ傍に、洋子は顔を近づけてきた。
「……ひどい」
 耳元でそう囁き、神宮寺の体の上にその身をそっと委ねる。
 柔らかい膨らみが彼の胸板に触れ、その微かな重みに体が強張る。
 落ち着かなければ──そう言い聞かせても、あまりに近すぎる女の感触に酔った彼の身は少しも言う事を聞かない。
「私の気持ち……分かってらっしゃるくせに」
 これまでに聞いた事もない、拗ねたような声で洋子がぽつりと呟いた。
 さらに頬と頬が触れそうな程詰められた距離で、甘ったるい吐息が耳をくすぐる。
 夢かと思う程の、普段と今の彼女のギャップ。
 それがこんなにも欲を煽るものなのかと、神宮寺は内で疼くものに惑っていた。
「……そろそろ、寝よう。明日も仕事が」
「私は」
 神宮寺の言葉を遮って、真正面から顔を見つめる洋子。目が据わっている。
「そういう対象としては、見て頂けないんですか……?」
「そういう訳では……」
「じゃあ……」
 起き上がろうと動かした彼の手に、自身の手を添えて阻む。
「どういう訳なんです?」
 いつになく押しが強い。
 酒で変わる人間はよくいるが、どうやら彼女もその内の一人らしい。
「……………」
 答える言葉が思い浮かばず、動く事さえ出来ずにいる神宮寺に焦れてか、洋子はゆらりと体を起こした。
 しかしながらまだ彼から離れるつもりはないらしく、ブラウスの襟元に指をかけ、ボタンを外しはじめている。
 震える指先のぎこちない動き、そして躊躇うように伏せたその目を見るに、羞恥を感じてはいるようだ。
 恥じらいながらも自身を晒そうとする女を前に、どうして昂ぶるものを抑えきれようか。

 ボタンを全て外し終え、衣服を脱ぎかけた洋子の動きが止まった。
「……先生」
 何かに気付いたような彼女の声に、神宮寺はまずい、と身を捩じらせたが既に遅く。
 座り込んでいる彼女の股下に当たる、硬いもの。
 それの意味するところを察し、洋子は顔を赤らめながらも口元を綻ばせる。
0165222010/02/17(水) 22:47:14ID:TPRNa1LF
「嬉しい……」
 ブラウスの前を掴んで肩まではだけさせると、その細い指で彼のシャツの襟元をつまんだ。
 ひとつひとつ丁寧にボタンを外しながら、洋子は再び身を屈め、神宮寺の肩に顔を乗せる。
 眼前で音を立てて動く喉仏に目を細めると、噛み締めるように呟いた。
「私でも……良いんですね」
「……君こそ」
 ようやく零れ出た神宮寺の声は、普段にもまして低くひそめられていた。やむなくといった響きではあるが、欲を含んでいるのも事実だ。
 ほのかに香る艶やかな黒髪に顔を寄せ、指を絡ませながら続ける。「俺でも、良いのか?」
 洋子が顔を上げると、指の隙間から髪がするりと離れる。
 ほんの一瞬、見つめ合った後の口付け。
 それを答と受け取り、神宮寺は彼女の手に指を添え、唇を啄んだ。
 手の甲を撫でる指先の動きに、ふ、と洋子が息を漏らす。
 僅かに開いた唇を押し開いて舌を入れると、酒の匂いと彼女の温もりを舌先に感じた。内側へ這わせていくと、次第に甘い熱が舌を、意識を包まんとするのが分かる。
 彼女もおそらく同じものを感じているのだろう。重ねた指先は小さく震え、時折開くその眼はうっすらと細められている。
 交わらせた彼女の舌は神宮寺のそれに合わせて動くが、受け止めるのがやっとといった様子だ。
 押しの強さの割に、攻める事には慣れていない。
 それが少しおかしく思えて、揺さぶってやりたくなった。
「んんっ……」
 息を継ごうとする洋子のうなじに手を当てて顔をさらに寄せると、詰まらせた声を喉から零す。
 それだけに留めず、彼女の舌裏を探り緩急をつけてなぞると、重ね合わせた互いの唇の中からねちゃりと音が立つ。
 それに昂ぶりを覚えたのか、洋子は鼻にかかった声音を漏らしながら肩をぴくっと震わせた。
 しばしぬめる口内を味わう内に、彼女の目はすっかり虚ろになっていた。
 自重を支える腕の頼りなげに揺らぐさまを一瞥すると、神宮寺は一旦顔を引いて唇を離した。押さえていた手が離れると力が抜けたのか、彼女の頭は再び彼の肩へと埋まる。
 離した唇から甘い熱を逃がすように、洋子は大きく息を吐いた。
「はあっ……はぁ……」
 温かな重みに心地よさを覚えながら、神宮寺は彼女の顔を覗き込む。
 官能の余韻に浸り潤みを増した洋子の瞳も、次をせがむように彼を見つめ返す。艶に満ちたその眼差しに、神宮寺は思わず嘆息した。
「先生……」
 呼吸を懸命に整えつつ、洋子が呟く。「すごく……上手」
0166222010/02/17(水) 22:49:40ID:TPRNa1LF

 ──これは、褒められていると思って良いのだろうか。

 そんな事を思いつつ、神宮寺は彼女の体に手を伸ばす。
「他の女性とも、こんな風に……?」
 ぽつりと尋ねて、洋子もその手をシャツの隙間から覗く厚い肌の上に滑らせ、呼吸に合わせて動く胸板を指で撫でる。
「……他?」
 ささやかな愛撫にくすぐられながら、神宮寺は彼女の言葉の意味を計りかね、問い返した。
 半端に脱げかけたブラウスの内側に通した両腕が動きを止めたが、一瞬の後にブラジャーのホックを外す。
 するりと落ちたブラジャーをソファーの背もたれにかけ、あらわになった乳房を掌で覆うと、柔肌の吸い付くような手触りを感じた。
 指をそっと押し付けて撫でるように動かすと、白い素肌に徐々に赤みがさし、体の内の高まる熱を感じられるようだ。
「っ……んん……」
 洋子が肩を小さく揺らしながら、濡れ光る唇の隙間から声を漏らす。
 唇を少し震わせて、切なげな目で言葉を発する。
「いるんでしょう……? そういう人」
「……どうして、そう思う?」
 問いかける合間にも、彼の手は止まらない。
 下向きに椀型になった胸をまさぐる手にもはやぎこちなさなどなく、張りのある膨らみに指を食い込ませ、緩やかな動きで揉みほぐしていく。
 硬くなった桃色の突起を親指で何度か転がすと、引き締まった体の上で洋子の指がぴくぴく震えた。
「あぁ……」
 上擦った声と共に、密着した下半身がもどかしげに動き、神宮寺のものをズボン越しに擦る。
 神宮寺は少しばかり息を詰まらせながらも、ソファーに預けていた身を持ち上げ、洋子を足に乗せた状態で向かい合った。
 惚けた表情のままで神宮寺の体にもたれかかってくる彼女。ブラウスの内側に手を伸ばして背や腰を撫で回すとぞくりと身をわななかせ、喉元に甘い息を吐きかけてきた。
「だって……なんだか手慣れてらっしゃるから」
 そう答え、洋子は探るように彼を見つめる。
 期待と不安が半々の視線を、彼は真っ直ぐに受け止めた。
 熱のこもった眼差しと向き合う事、数秒。
 少しの間を置いて、神宮寺は口端をうっすらと緩める。
0167222010/02/17(水) 22:52:41ID:TPRNa1LF
「……想像に任せるよ」
 正直に白状しても良いと思いながらも、神宮寺は敢えてはぐらかしてみせた。
 あまりに真剣な目で見つめてくるから、本気になってしまいそうだったのだ。

 ──何故、よりによって自分なのだろう。
 寄ってくる男はいくらでもいるだろうに。もっとましな付き合いが出来る男も選べるだろうに。
 そんな彼の心中の問いを洋子は知る由もなく。
 しばし神宮寺を見つめた後、彼の首筋に唇を這わせた。
 小さな音を立てて吸い付いた箇所に赤い痕を残し、囁く。
「抱いてください……その人みたいに」
 鬱血した部分をちろりと舐める様子は、素面の彼女からは考えられない程淫らだ。切なそうな表情と相乗して、劣情を掻き立てる。
「……すぐ戻る」
 誤解させたまま否定もせずに、神宮寺はそう告げて立ち上がった。
 応接室を出て行く彼を不安そうに見上げながらも、洋子は黙ってそれを見送る。
 酔いが醒めて冷静になった時、諦めてくれたらいいと神宮寺は考えていた。こうして交わる事を受け入れておいて、今更と思いながらも。
 さほど時を置かずに戻って来た彼は、無言のまま洋子の座り込んでいるソファーに腰を降ろし、彼女の腿を指で撫でた。
 まだ続けてくれるのだと気付いて安堵した彼女は、神宮寺のズボンのベルトをそっと緩める。
 彼の指はやがてスカートの中へと滑り、秘部を覆う下着へと辿り着いた。
 生温かく湿ったそれをずらして、茂みの下の割れ目をなぞる。ぬるりと粘る液が指先を濡らした。
 陰唇を掻き分けて中をまさぐると、ちゅくちゅくとキスのような音を立てて柔肉が指に絡み付く。
「ん、ふっ……あぁ……」
0168222010/02/17(水) 22:55:11ID:TPRNa1LF
 内側を擦る度に足をぴくぴくと震わせ、洋子は掠れた声を漏らす。
 神宮寺のスラックスに伸ばされた彼女の手は、快感に翻弄されてなかなか思うようには動かない。
 それでもなんとかジッパーに指をかけてそこを開き、布越しの神宮寺の昂ぶりに触れた。
「温かい……」
 クスリと微笑む洋子の顔は普段見るそれと変わらないのに、朱に染まった頬と彼女の手の動きが、それをいかがわしさに満ちたものに変える。
 トランクスを両手でそろそろとずらしていくと、半勃ちになった彼の陰茎が洋子の視界に現れた。
 間近で見る事に慣れていないのだろう、頬も耳も真っ赤にして、わななく指先でそれをなぞる。
 洋子の膣を充分に潤いほぐれるまで愛撫した神宮寺は指を引き抜き、男根を前にぎこちなくなっている彼女をどこか楽しそうに眺めると、何事か耳打ちした。
 僅かに身を硬くした洋子だが、こくりと頷いて両手を彼のものに添え、亀頭に口付けた。
 ぷるりと弾力のある唇で触れては離れを繰り返し、神宮寺の様子を確かめながらゆっくりと手をスライドさせる。
「んむ、ふっ……んぅ……」
 こわごわとした手つきと不規則な呼吸は、口淫をし慣れていないのだという事を示している。
 だがそのおぼつかなさや、これで良いのかと時折目で問い掛ける仕草が、男の胸中に疼くものを感じさせた。
 先端から幹へと唇を降ろしていくにつれて、零れる吐息で湿った熱を帯びていく男根。
 開いた唇で側面を咥え控えめに吸い付いていく内に、硬さを増したそれはやがてぴんと反り返った。
 眼前でそそり立ったものに鼓動を高鳴らせて、洋子は上目遣いに彼の顔をうかがう。
 物欲しそうに訴える眼差しを見れば、次に何を求めているのかは明白だ。
 神宮寺は目配せして洋子に顔を上げさせ、ズボンのポケットから何かを取り出した。
 小さな薄い袋を開封した中から出てきた物は、コンドーム。先程、応接室を離れた際に取りに行っていた物だ。
 ごく自然な動作で準備をする彼をなんとなく複雑そうに見つめつつ、洋子もスカートと下着を脱ぎ下半身を露わにする。
0169222010/02/17(水) 22:57:48ID:TPRNa1LF
 乱れたブラウスも脱いでしまおうとしたところで、洋子の背はソファーに深く沈められた。
「……上はそのままで良い」
 そう言ってじっと見下ろす神宮寺。洋子は意味が分からず、ただただ不思議そうに彼を見上げる。

 ──衣服を全て取り払ってしまうより、この方が扇情的だ。

 そんな事はさすがに口にはしない神宮寺だが、瞳に宿った情欲の熱は隠せない。
 その視線を真っ向から受け止めて潤む彼女の目は、色濃い期待に満ちていた。
 それに応えるべく、神宮寺は彼女の足を開かせ、蜜を湛える秘唇に先端を押し当てる。
 ぬちゃ、という水音と共に触れ合った箇所が、相手の熱を求めてじんと疼くのを感じた。
 欲するままに腰を進め、狭く温かい肉の穴を彼自身の形に馴染ませていく。
「ん……あ、うん……はぁっ」
 膣内を深く浅く開く度に耳に入る、上擦った洋子の声。
 圧迫する異物に耐える苦しげな響きは、やがて甘く艶めいたものに転じていた。
 ゴムの中できつく張り詰めた側面で粘膜を擦り、先端で奥をぐりぐりと刺激すれば、感じる悦びに悶えてがくがくと腰を浮かせる。
 その度に彼女の中の襞は肉棒にまとわり付き、離すまいとばかりに強く締め上げるのだ。
「あっ……は、あぅっ……! せん、せっ……せんせぇっ」
 快感に咽びながらの女の呼び声が、彼の内の感情をより激しく高まらせる。
 彼女の気が済むまで、今この時だけ──そんな言い訳めいた理屈を押し退けて、自身の欲の求めるままに彼女と繋がっていたいと。
 諦めて欲しいなどという少し前までの考えは、もはや神宮寺の頭の片隅にすら残っていなかった。
 絶頂が近付くのを感じてか、洋子の腕が首に絡み、ぐっとしがみついてきた。
 同時に秘部の締め付けが増し、摩擦の勢いを一層激しいものにする。
 耳に心地よい女の喜悦の声を堪能しながら、神宮寺も彼女の体を抱いて果てに行き着いたのだった。
0170222010/02/17(水) 23:01:01ID:TPRNa1LF

  *  *  *  *  *

 顔に当たる光の眩しさに、神宮寺は重い瞼を押し上げた。
 ブラインドの隙間から差し込む陽はまだ柔らかいが、寝不足気味の眼にはやけに滲みる。
 ついでに体も怠い。二日酔いだけのせいでは、決してない。
 痛む頭を押さえながら上半身を起こし、自身の状態を確かめる。
 シャツの前は開きっぱなしだが、下着もスラックスも履いている。後始末も済ませて寝たようだ。
 周りを眺めると、すぐに向かいのソファーに横たわる女の姿が視界に入った。
 こちら側を向いて寝息を立てている彼女の肩から腰にかけては、すっかりシワの寄ったブラウスに覆われている。
 しかし前のボタンがはずされたままである為、鎖骨から胸元までよく見える。
 また、下半分も脱いでそのままなので、秘所こそ上からかけておいたスカートで隠れているものの、白く張りある太股は剥きだしなのである。

 ──寝起きには、刺激が強すぎる。

 釘付けになりそうな視線を無理矢理引き剥がしたが、次に目に留まったのは、背もたれに引っ掛けたままのブラジャー。
 再び別の所へ目を向ければ、簡単に折りたたまれた彼女のショーツが。
「……………」

 易々とは崩されぬ理性を持っていると、彼自身疑っていなかった。
 だが、このような光景を目の当たりにして無反応でいられるなら──男ではない。

 立ち上がり、洋子のいるソファーに近付いた。場所をとるテーブルを少しずらし、彼女の前に膝をつく。
 さほど広くないスペースで足を折り曲げて眠る姿は、少々窮屈そうだ。
 乱れた髪を軽く撫でつけながら、穏やかな寝顔を見つめる。
 整った顔立ち。安らかに伏せられた睫。透明感ある頬。
 微かに開かれた唇を指でなぞりながら、数時間前の彼女を思い返す。

 ──この唇が言ったのだ。抱いて、と。

「………ん」
 不意に彼女の眉がしかめられ、唇が声を漏らした。
 うっすらと開いた目。眠たそうに数回瞬きする。
 その様子を、神宮寺は黙って見ている。
「……………」
 見つめ合う事、数秒。

「……っっ……!!」

 みるみるうちに表情が凍りつき、洋子の体はがばりと勢いよく跳ね起きた。
「おはよう」
「せ、せっ、先生っ……! わ、わたし……」
 とりあえず落ち着き払って声をかけてはみたが、神宮寺は心中穏やかではなかった。
 酒癖の悪い人間の中には、酔った時の記憶を失くしてしまう者もいる。
0171222010/02/17(水) 23:04:16ID:TPRNa1LF
 彼女がその手のタイプなら、この状況では彼の方から襲ったと思われかねない。
 しかし、実状は語るにはあまりにも……

「もっ……申し訳ありませんでした」

「…………?」
 洋子の消え入りそうな声が謝罪の言葉を発した事で、神宮寺の思考は一瞬止まった。
 改めて彼女の様子を窺う。
 右手でブラウスの前をぎゅっと握り締め、左手で下を隠すスカートを掴んで俯く姿から、心底から恥じらっているさまが見てとれる。
 が、自分の有様を見て訳が分からず混乱しているといった様子ではない。
 想像していたような、怯えたり詰ったりという態度からは程遠い。
 昨夜の事を覚えていないという訳ではなさそうだ。

 ひとまずの安堵に深く長い溜息をつく神宮寺だが、洋子の方は気が気でない。
 酒の勢いに任せて秘めていた想いを吐露した上、半ば強引に関係を求めてしまったのだ。
 さかんに乱れた髪に指を絡め、彼の様子をうかがったり、慌てて目を逸らしたりしている。
「洋子君」
 静かに呼ばれて、ぎくりと肩を強張らせる彼女。
「一応言っておくが……」
 視線を逸らしたまま、洋子は彼の言葉に耳を傾ける。

 ──なんて事をしてしまったのだろう。どうしよう。何を言われるのだろう。

 きっとそんな声ばかりが脳内に渦巻いているのであろう、彼女の切迫した横顔。
 滅多に見られない光景に口角が緩みそうになるのを抑えながら、焦らすには充分な間を置いて口を開いた。
「誰かと寝たのは、昨夜が久々だ」

「………え」
 おずおずと神宮寺の方に顔を向けた洋子。切れ長の目を見開いて、ぱちぱちと瞬きする。
「……そんなに驚く事かな」
「あ、いえ、そういう訳では……」
 洋子が驚くのは無理もないだろう。彼女が予感していたであろう気まずくなるような反応が、一切なされなかったのだから。
 彼女がされて当然と思っている反応をする気は、神宮寺には毛頭なかった。恥をかかせるだけだからだ。
 そもそも何とも思っていない女性なら、受け入れる事さえしなかっただろう。
「出来れば……」
 まだうろたえている洋子の体を押し倒し、赤く染まった耳に囁く。

 適当な言葉ではぐらかして勘違いさせたにもかかわらず、本当の事を告げたくなった。
 理由は言うまでもない。

「これきりには、したくないんだが」

 この女性を、諦めてしまいたくなくなったからだ。

0172222010/02/17(水) 23:06:29ID:TPRNa1LF
終了です。
そして、二回戦突入な二人…w
01745972010/02/20(土) 00:25:27ID:NxHPCS8N
投下乙です。相変わらずいい仕事っぷり。

>>160
いえ、本当はこの後も全部書くつもりだったんですが…未熟者ですみません。
どうも自分は、段取りはいいセンいくのに、肝心なとこでガッカリさせるタイプのようなので、後を託させていただきました。
wktk状態でお待ちしています。
0175名無しさん@ピンキー2010/02/21(日) 20:56:31ID:jR7oaxAY
久々になんかきてたw
エロくていいなぁ。
0178自己レス2010/03/02(火) 21:12:36ID:nEbI/F8k
>>157 すいません、誤字です。

「言えなければ私が代わりに答えてあげましょうか?」


「言えなければアタシが・・・・・・」

アタシらしくもない・・・
0179名無しさん@ピンキー2010/03/07(日) 20:07:22ID:rLVH/qOg
鬼畜系も読みたいなぁ

何かの事件をきっかけに神宮寺を疎ましく思っているヤクザの襲撃
外出先で神宮寺は不意打ちを受けて昏倒し、連れ去られる

一方、事務所で留守番をしていた洋子も、依頼人を装ってきたヤクザに襲われる
男たちに陵辱される洋子
そこへ神宮寺を襲った男たちが、気を失ったままの神宮寺を連れて戻ってくる
しかし洋子は目隠しをされており神宮寺の存在に気づかない

やがて意識を取り戻した神宮寺が見たものは
複数の男たちに弄ばれている洋子の姿
だが神宮寺も猿轡のうえに手足も拘束されており見守る事しかできない

神宮寺の存在に気づかないまま、快感に耐え切れず嬌声を上げ始める洋子
それを目の当たりにし、意思に反して充血してしまう自らの身体に怒りを覚える神宮寺
それに気づいた男たちは、ニヤつきながら神宮寺の上に洋子を跨らせる

やがて洋子の激しい腰使いに耐え切れず中で果ててしまう神宮寺
直後、目隠しを外された洋子の絶望の悲鳴が響き渡る

職人さんヨロ
0180名無しさん@ピンキー2010/03/08(月) 20:32:09ID:Amnd+OH+
>>179
いいネタだ。ハァハァした。
だがそこまで形になっているなら他書き手の力を借りるまでもなさそうだがw
0182名無しさん@ピンキー2010/03/17(水) 22:48:53ID:0YF0ts1y
職業柄逆恨みされるきっかけには事欠かないからなぁ神宮寺は。
それなりに危ない調査してるのに洋子一人留守番させてる時とか無防備すぎないかと。
>>179的な事にいつなってもおかしくないのかもしれないw
0183名無しさん@ピンキー2010/03/22(月) 00:28:18ID:KR5a+k2E
じゃあ、ここでちょっと箸休め的なおふざけをひとつ。
アプリ風に、沢田研二の曲名も使って。


探偵神宮寺三郎 <コバルトの季節の中で>第4章

「雨、やみませんね」
「ん?ああ」

 俺は振り返り、洋子君の顔を見た。どういうわけだか今日の彼女は艶っぽい。
 いや、俺も疲れているのか、彼女の事をそんなふうな目で見るなんてな。

「・・・先生」
「なんだい?」
「いえ、なんでもありません」

俺はタバコの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・火を消した。

「・・・髪型、変えたんだな」
「えっ?」
「いや、なんでもない」

聞こえていないならそれでいい。
俺は書斎へと続くドアノブに手を掛けた。

「気付いたんだ」
「?」
「この事務所も、そしてこの書斎も、俺一人には広すぎる」
「・・・・・・」

そして、俺と洋子君は狭い部屋で二人きりになった。
俺は洋子君を力任せに・・・いや、やめとこう。
そんなつもりで彼女を部屋に招いた訳ではないからな。

「先生、焦らさないで下さい」

洋子・・・

俺の中で何かが溶け始めた。
それは俺の心を覆う冷たい氷のような・・・

いや・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ふっ・・・
気取るのはもうやめだ。

俺は・・・


俺は洋子にキスをした。


see you in next trouble


おあとがよろしいようで
0184名無しさん@ピンキー2010/03/22(月) 00:30:34ID:KR5a+k2E
ちょっと長過ぎた。二回に分けるべきだった。すいません。
0186名無しさん@ピンキー2010/04/05(月) 19:09:33ID:kgE5NwX/
01875972010/04/13(火) 15:12:36ID:Qxbp4pno
久々に携帯アプリの神宮寺やったら、鬼姫伝の出だしが、自分の書いた洋子風俗編のプレストーリーに似ててびっくりしました。洋子の写真が出てくるとことか。
…盗用はしてません。よくある状況設定とはいえ、こんなこともあるんですねぇ。
0188名無しさん@ピンキー2010/04/13(火) 22:53:35ID:Pfz0tJab
神宮寺があまり動じてなかったのがかえって良かった>鬼姫序盤
二次なら見てて楽しいが、原作がそういう関係を前面に出しすぎると想像の幅が減るのよな…
0189222010/04/20(火) 13:40:41ID:zamGQCu5
前スレ597氏の今泉×洋子の続き投下させて頂きます。
前スレで投下した洋子×神宮寺とは色々差異がありますが、別話として見てもらえたら幸いです。
0190222010/04/20(火) 13:42:52ID:zamGQCu5
 無機質な部屋の中。
 目の前で立ち止まった今泉の顔を、洋子はただじっと見上げていた。
 鷲のような眼。浅黒い肌に刻まれた細く鋭い傷痕。
 口元には僅かに笑みが浮かんでいるのに、その奥の感情を読み取る事の叶わない、彫り深い男の相貌。
 洗練された男らしい面差しは、どこか神宮寺と似たものを感じさせる。
 だが、気配が違う。気性の荒い若衆達を従える極道の若頭に相応しい威圧感を、今この時も完全には打ち消せはしない。
 これまで様々な男の相手をしてきたが、これほど存在感に満ちた男性はいただろうか、と洋子は自問する。
 彼と同業らしき客は何人かいた。しかし、体の内側から滲み出ているようなこの覇気とは、おそらく比べようがない。
 そんな男と今、洋子は二人きりで向き合っている。探偵助手と上司の知人という普段の間柄でなく、一人の男と一人の女として……

 ぞくりと刹那、洋子の身に震えが走った。
 畏怖からくるものだろうか。あるいは本能的な喜びによるものか。

「……今泉さん、は」
 心中の疼くものに気付かれまいとするように、洋子は口を開いた。「どう思われましたか?」
「何をです?」
 低く重い声が、洋子の耳に入る。問いかけの言葉ではあるが、答を分かりきっているかのような穏やかな声音だ。
「あの店での私の事を知って……」
 決まり悪そうに語尾がよどむ。使い分けていた二つの顔を知る男を前にしているのだから、無理もない。
「……夜の仕事をしてる女は、この街には数え切れないほどいます」
 洋子の問いから少し後、今泉は言いながら彼女の隣に腰を預けた。
 風俗嬢とヤクザ。ベッドに並んで座る二人。
 連想される事の中に綺麗なものなど微塵もないが、嫌悪や恐れを感じる事はない。
 そのような清い心身でない事は、自分が一番よく分かっている。
 一体いつから、この感覚に慣れてしまったのだろう。

 自身を省みて苦く微笑む洋子の傍らで、今泉は言葉を続ける。
「抱える事情は様々でしょうが、自分の意思でやってる女が欲しがってるものは、大概決まってます。金か、男か、あるいは……」
 今泉は顔を洋子の方へ向けた。目付きこそ鋭いが、眼光の強さはいくらか薄らいでいる。
「貴女もそいつらと同じ。ただそれだけの事です」
0191222010/04/20(火) 13:44:50ID:zamGQCu5
 同じ──そう言う今泉の声に、侮蔑や同情の響きはない。
 夜の世界や裏社会。真っ当に生きている人間には知り得ない世界の事をこの男は知り尽くし、おそらくそこに生きる者達の考えを尊重している。
 故にそういった場所の住人をむやみに踏みにじったり、哀れんだりはしないのだろう。
「まあしかし」
 洋子の顔にほのかな安堵の色が差したのを見計らったように、今泉は口を開いた。
「いつ、何がどう転がるか分からない世界だ。やはり、貴女のようなお人がいていい所じゃあない。もっと御自分を大事にしてやるべきです」
 真剣な眼差しと言葉に諭され、胸の奥がじわりと熱くなる。

 満たされない想いがあった。
 それを忘れさせて欲しくて、風俗の仕事で自身を満たそうとした。
 金を得る為だけの副業ならば、こんな仕事でなくても良かった。そんな事は最初から分かっていたのだ。
 溜め込み続けてきた気持ちを紛らすには足る仕事だったが、渇きを癒やすには遠いものだった。
 それもその筈。自分を偽って得るものに、心が満たされる訳がないのだから。
 しかし今、洋子は胸中に染み入るような温もりを覚えていた。
 誰かに、自分の事を思ってもらえる喜び──仮染めの娯楽と、どちらが本当に大切にするべきものなのか。答は分かりきっていた。

「……今泉さんのおっしゃる通りです」
 洋子は姿勢を正すと、今泉に深く頭を垂れた。
「よく考えもしないで、ああいう仕事を選んだりして……軽率でした」
 俯く彼女に、少しだけ柔らかめな声が届く。
「余計な世話かとも思いましたが……」
「そんな事はありません」
 遠慮がちな言葉を、洋子は首を振ってさえぎる。
「こうして止めて頂いていなかったら、私……」
 ──今泉が危惧したような状況にまで、いずれは陥っていたかもしれない。
 そればかりか、下手をすれば裏社会にも顔が知れている神宮寺にまで迷惑をかける事にもなりかねない。
 副業自体は、確かに彼には関係のない事だ。
 だが、だからと言ってそれを切り離した見方をしてくれる程、この街は甘くはない。

「店の方にはアタシから話をつけときます。もう顔を出さなくて良いですよ」
「え……でも」
 今泉が既に店主と交渉済みである事を、洋子は知らない。戸惑う彼女に今泉は告げる。
「あの辺りもウチが面倒を見てる店が多いんでね。その方が手っ取り早いでしょう」
 それでも洋子は逡巡している様子で、物言いたげに今泉の顔をじっと見つめる。
 自分で決めて始めた事なのだからこれ以上気を遣わせたくない、という事なのだろう。
 その頑なともとれる態度に、今泉の頬が僅かに動く。
 気分を害した訳ではない。自分に食い下がる堅気の女など滅多にいないものだから、思わず笑ってしまいそうになったのだ。
0192222010/04/20(火) 13:46:42ID:zamGQCu5

 そういえば、と彼女と出会って間もなかった頃の事を思い出す。
 護衛役を頼まれた自分を怪我をしているのだからと怒って帰そうとしたり、あの神宮寺を反論も出来ぬ程の剣幕で叱りつけていたのが、今まさに目の前にいる女だった。
 普段はあんなにもおとなしく、気の強さなどかけらも見当たらないというのに、全く女という生き物は分からない。
 ……ますます興味が湧いてくる。このたおやかな身の内側に、どんな艶姿を秘めているのか。

「……では、条件付きならいかがでしょう?」
 男の内心を知らぬ洋子は、不意の提案に目を瞬かせる。
「条件……?」
 意図が分からず問う洋子の顎を、男の無骨な指先がとらえた。軽く持ち上げ顔を上向かせ、互いの視線を重ねさせる。
「いっ……今泉さん」
 あまりに突然すぎる行動に高い声を上げる洋子。
 構わず顔の距離を縮める今泉の表情は変わらないが、目の輝きが少し強まっている。
「まだアタシの質問に答えてないじゃないですか……リョウコちゃんは、何がお好きなんです?」
「その呼び方、もう……」
「今夜はまだ何も仕事をしてないでしょう。物足りないんじゃあないですか?」
 洋子の肩が強張る。
 確かに今泉が言うように、今日はまだ誰の相手もしていない。
 しかもこれで終わりにしようと決めたばかりだ。全く名残りがないと言えば嘘になる。
「アタシが最後の客じゃあ役者不足ですか?」
「そういう訳では……でも……」
 心底困り果てた様子で眉根を寄せ、彼女は目を逸らした。「今泉さんからお代を頂くなんて……」
「条件付きで、と言ったでしょう」
 言いつつ口端を歪ませ、にやりと笑った。普段彼女に向けていたそれとは異なる笑みだ。
「今夜一晩相手してもらえたら、金を払う代わりに店のモンと話をつけて差し上げる。そういう事です」

 洋子の瞳が再び今泉に向けられ、ぱちぱちと瞬いた。
 しばし固まったままだったその顔が、少しばかり不満げにしかめられる。
「……なんだか、一方的なご提案ですね」
 洋子からしてみれば、そう考えるのも無理はない。
 今泉も、それを承知の上で言っているようだ。変わらず落ち着いたままの態度を見れば分かる。
「でも、貴女は断らないでしょう?」
「どうして、そう思われるんです?」
 顎を掴んでいる男の指が、そろりと肌を撫でた。
「夜の仕事はもう終い……だが、まだ貴女自身、満足出来てないからですよ」

 反論の言葉は、頭の中のどこにもなかった。
 隠し続けてきた自分を知られ、心根に潜む欲を刺激された今、自制など無意味に等しい。
 思い悩んでいた事、今も抱えている気持ち……それら全てが、この男性には見透かされているような気がしていた。
 だから、期待している。求めても満たされなかったものを、この男性なら与えてくれるのではないか、と。
0193222010/04/20(火) 13:48:06ID:zamGQCu5

 洋子の手が上がり、その指が今泉の頬をすうっと撫でた。
 指先は僅かに震えながらも頬骨の辺りを柔らかくなぞり、これより先の行為を厭わぬ事を示している。
「私こそ、今泉さんのお相手には不足かもしれませんけど……」
 ──その手の供給に事欠かない歓楽街の店舗のナンバーワンが、何を謙遜しているのか。
 今泉は内心で笑ったが、洋子は本気でそう思っているらしく、やや緊張した面持ちで顔を彼の首元に寄せつつ、シャツのボタンを外していく。
 厚い肌に唇ではむようなキスを何度か施していくが、赤みすら残らぬささやかなものだ。
 遠慮がちな愛撫が露わになった胸板に行き着いたところで、今泉は苦笑混じりに告げた。
「アタシには特定の女とかはいませんから、そんな加減は無用ですよ」
 返答代わりに薄く笑みを零し、洋子は指で男の硬く締まった胸を優しく撫でながら、乳首に甘く吸い付く。
 唇と舌先を使って適度に刺激を与え、空いている方を愛撫する事も忘れない。大概の男は、これに気を良くしてだらしなく顔を緩めたものだ。
 今前にしている男の反応は殆どないが、僅かに動く胸筋などを見るに、全く感じるものがないという訳ではないらしく、洋子は胸中で安堵の息をついた。
 うなじに這う男の手の動きにこそばゆそうにしながら、洋子は頑強そうな肌に頬と掌で触れる。
 不自然な膨らみや人肌のそれと違う感触の箇所に目を向けると、普通に生きていたなら目にする事すらないような傷痕が、いくつか刻まれていた。
 堅気でない男の体も見てはきたが、取り分け物々しく映る。薄れているものばかりではあるものの、かつて幾度もの修羅場をくぐり抜けてきた事は明白だ。
 初めて出会った日、自分を庇って銃弾を受けたその身で、一人で病院へ行ってしまった事もあった。
 男の懐への愛撫を重ねながら過去の事を思い返し、洋子は改めて気付く。この人はやはり、様々な意味で普通の人間とは異なる人生を送ってきたのだと。
「ん………」
 顔を上げると軽く頭を持ち上げられ、今泉の唇が洋子のそれに触れた。
 応えるように温もりを押し付け、舌で乾いた唇をぬるりと湿らせる。
 隙間に割り込ませて口内までなぞると、舌の表面に苦みを感じた。煙草の名残りだろう。
 煙草混じりのキスの味にはもう慣れたが、それを味わう度に、神宮寺の事を考えている自分がいるのが分かる。
 いつだったか、彼と同じ銘柄の煙草をよく吸うと言っていた客がいた時など、深い口付けを交わしながら想像していた。
 彼の唇もこんな味がするのだろうか、と。
0194222010/04/20(火) 13:50:38ID:zamGQCu5
 意識が過去へ飛んでぼんやりしかけていた事に気付き、ふと今泉の表情をうかがうと、じっと彼女の目を見つめていた。
 唇を一時離し、問い掛けの念をこめて見つめ返すと、響く声音に僅かばかりの愉悦を含ませ、言った。
「……誰の事を考えていたんです?」

 ──見通されている。
「神宮寺は関係ない」などと言っておきながら、今も彼の事を考えている事を。
 しかし、洋子はもう戸惑いを覚えはしなかった。
 先程感じていたように、この男はとうに分かっているのだ。彼女が風俗業などに手を出した理由を。

「……………」
 今泉の肌の上を絶えず滑っていた洋子の手の動きが止み、その顔がゆっくりと俯いた。
 やがて彼の胸に額が擦りつけられ、小さな吐息が漏れる。
「……よく、分からなくなってしまったんです」
 ぽつりと零したその声は力無く、囁きのようであった。
「私が想っているだけで、分かってもらえなくてもかまわないと思っていたんです……なのに」
「踏ん切りがつかなくなった、と」
 頭上から降る声は、思いのほか柔らかかった。洋子はこくりと頷く。
「とても優しいから……時々、勘違いしてしまいそうになって」
 またひとつ、消え入りそうな溜め息が落ちた。

 おそらく──と今泉は考える。
 神宮寺の中で割り切れないでいるところがあるのだろう。
 その為普段接している分にも煮え切らないし、はっきりと距離を置く事も出来ないでいる。
 彼女もそんな半端な形で接されては、諦めきれない。
 勘違いなどと言っているところを見るに、彼の気持ちに気付いてはいないのだろう。
 代わりに伝えてやってもいいかとも思うが、そこまでお人好しではない。
 何よりそれは、自分の役目ではないはずだ。

「違う名前を名乗って、違う自分を装って……忘れられたらいいと思っていたんですけど」
 上手くいかなかった、と曖昧に洋子は笑う。
 穴埋めの娯楽など、所詮は一時のごまかしにすぎない。それでも──
「慰めにはなっていたんでしょう……? だからやめられなかった」
 洋子は俯いたまま答えなかったが、今泉は構わなかった。
 ──最後くらい、せめて気休めよりはマシな思いを。
 そう心で呟くと、今泉は彼女の体を離し、ベッドに横たわらせた。

「あ……え、今泉さん?」
「攻められるばかりってのは性に合わないんでね。こっちも楽しませて下さいよ」
 するすると脱がせたブラウスの内側から現れたのは、仕事用の黒いブラジャーだ。
 反射的に隠そうと洋子は腕を動かしかけたが、動きはびくりと固まる。

 ──何を、今更。

 心中で誰かが、乾いた笑いを零した。
 今まで散々見ず知らずの男達に肌を晒してきたというのに、この期に及んで何を迷っているのか。
 風俗の仕事も、最初こそ気の乗らぬ副業だったが、次第に愉悦さえ覚えていたというのに。

 刹那強張った表情は落ち着きを取り戻し、持ち上がっていた洋子の腕が静かに降ろされる。
 その変化を見ていた今泉が、手を止めて告げた。
「無理強いはしません。嫌ならすぐにでもやめます」
 相変わらずの低い声だが、脅すような響きはない。拒めば彼は本当にやめてくれるだろうし、それを責めもしないだろう。
0195222010/04/20(火) 13:52:13ID:zamGQCu5
 だが、洋子は薄笑みと共に答える。
「大丈夫です。脱がせられるの、慣れていなくて……」
 少し驚いただけ、と言うと今泉に続きを促した。
「リョウコちゃんが? それは意外ですね」
 源氏名で呼んでみせる辺り、彼女の本心は見通しているだろう。下着の黒によく映える白い肌に手を乗せつつも、それ以上はまだ動かさない。
 それも分かった上で、洋子はにこりと微笑む。
「自分で脱いで見せるのも、お仕事でしたから」
 彼女はブラジャーのホックを外し、そっとそれをずらした。その動作に躊躇いは見られない。
 それを確認すると、今泉は徐々にその手の力を強め、女の肌を揉みほぐしていった。
 乳房を掴んで捏ねる手は、強すぎない力で膨らみ全体に感触を刻む。
 硬さを増した突起を弄る指先も、押し潰さぬ程度の細やかな動きでこりこりと擦り、刺激する。
 これまで洋子が受けてきた、求め味わおうとするだけのものとは、明らかに異なる感覚だった。
 優しいと表現するような愛撫とは違うが、欲望のままに押し付けるものからは程遠い。
 五指の丹念な動きで反応が変わる部位を探り当て、感じやすいよう加減して撫で摩ってくる。
 女を慰める事に慣れている男の手だ。
 自分の方がこの人に相手をしてもらっているようだ、と洋子は心地よさに浸りながら思う。

 あるいは、そもそも最初からそうだったのか。
 今夜あの店に彼が訪れたのは、言うまでもなく洋子に風俗業から手を引かせる為だ。
 相手をしてほしいなどというのは彼女の後始末を肩代わりする為の口実に過ぎないし、今泉なら女に不自由してもいないだろう。

 ……かなわない。
 緩やかに身を包む官能に息を震わせながら、洋子はそう思った。

 素肌が火照りによる赤みにいくらか染まると、今泉の手は彼女の胸から離れた。
 そして今度は膝から腿へと掌でなぞり、スカートの内側に潜り込ませてくる。
 内腿の柔らかい肉を指の腹でまさぐられ、時折洋子の体はぴくぴくと震える。
「触られるのも、慣れてないんですか?」
 喉の奥から笑いを漏らしつつ、今泉が問うてきた。
 ぼんやりしてきた頭ではどう答えて良いか分からず、洋子はゆるゆると首を振るだけだ。
 もちろん慣れていない訳ではない。こんなにも心地のよい愛撫を、身に受けるのが久しかったのだ。
 下着の布地までたどり着いた指先が、微かに湿った中心を割れ目に沿って何度か擦ってくる。
「んん……んっ……」
 秘唇に隠されていた小さな突起まで指先で撫でられると、洋子は声を抑えきれなくなり、両足をもどかしそうに動かした。
 指で触れ続けられていた部分の湿りがじわじわと増し、熱をくすぶらせて疼く。
 布越しに指を咥えるように割れ目は動き、抑えきれぬ欲に洋子の顔が恥じらいの朱を浮かべる。
 そのさまを見て今泉は口端を笑みに歪めはしたが、焦らすでもなく下着の中に手を入れた。
 淡い茂みの下の陰唇は生温かい蜜を滲ませており、触れてくる男の指をぬめらせる。
 軽く力をこめただけで、秘唇の中へと招き入れられてしまいそうだ。
「中に挿れても……?」
 許可を求める今泉の問いに洋子は内心戸惑ったが、少しの間の後に頷いた。
0196222010/04/20(火) 13:55:30ID:zamGQCu5
 仕事で触られた事があるのは外側だけで、中まで他人に触れさせた事はない。
 それを厭わず受け入れられるのは、心許せる相手だからか。あるいは疼くその身が求めるからか。
 入り込んできた指は硬く骨張っており、彼女の指よりも一回り太い。
 狭く閉じていた粘膜を拡げ掻きほぐす動きもまた、女をよく知っている男のそれだった。
「く、ふっ……んん……」
 きゅっと口を閉ざして堪える洋子の耳に入るのは、熱に溶けそうな自身の息遣いと、秘部から響く淫らな水音。
 さらに空いている方の手に先程のように胸を弄られ、快感はとどまる事なく彼女の身体を昂ぶらせる。
「んぅっ……は、あぁ……」
 吐息と共に零れる蕩けたような自分の声に、洋子は思わず顔を強張らせた。
 達してしまいそうになった。想い人でもない男の手で。
 秘所はこれまでの心の奥底の飢えを示すように愛液に濡れ光り、男の指に襞をまとわせている。
 自分の意思に関係なしにひくひくと蠢くそこは、指では足りないと訴えているかのようだ。

 後ろめたさを覚えてか唇を噛んで声を殺す洋子に気付き、今泉の愛撫の手が緩む。
「我慢する事はありませんよ。辛くなるだけでしょう」
 見上げる洋子の目には、まだ迷いがうつろっている。それを拭おうと、彼は耳元で囁いた。
「どうせ今日で最後……でしょう?」
「……………」
 洋子はじっと男の眼を見つめ返し、思案した。
 やがて逸らされた目から迷いは失せていたが、彼女の表情はますます恥じらいに染まる。
「あの、じゃあ……私だけじゃなく、今泉さんも……」
 どうやら、自分だけが満たされる事には抵抗があるようだ。
 今泉に断る理由は全くないが、彼女の気持ちを知る分躊躇いはある。本当に良いのかと目で問い掛けると、洋子は小さく笑った。
「今日で最後……ですから」

 ゴムに包まれた、指とは比べものにならない熱の塊を秘唇で受け止めて、洋子は喉を反らしてわなないた。
 久方ぶりに男を受け入れたせいか、悦び震える身を抑えきれない。
 硬くそそり立ったものを飲み込んでは貫かれ、火照った肉壁を擦られ、掻き回される。
 体の内でざわめいていた熱を全て吐き出すように、彼女は唇から喘ぎを漏らしていた。
 何かに縋りたくて両腕を宙に伸ばすと、逞しい腕に抱き返された。ぐっとしがみついて男の肩に顔を埋め、温もりに浸る。
 耳に響く男の呼気はやや荒さを含んでおり、自身の呼吸と重なってますます昂ぶりは増していく。
0197222010/04/20(火) 13:57:12ID:zamGQCu5
 自分が本当に望んでいたのは、こういう事だったのかもしれない──今更のように、洋子は思う。
 自分を理解してくれている誰かと温もりを分け合い、感じ合うような繋がり。
 洋子の脳裏に、再び神宮寺の姿が思い浮かぶ。
 叶う事なら、あの人と求め合いたかった──

 掴みどころのない、想い尽くしても届いているのかさえ分からない、あの男性。
 偽りの名と、作り上げた自分。
 神宮寺にだけは、知られたくないと思っていた筈なのに。
 今ようやく自身の中の気持ちが見えた。本当は彼に、気付いてほしかったのだ。目の前の男性が分かってくれた事を、誰よりも先に。
 探して、見つけて、連れ出してほしかった。抱く感情が軽蔑の類であったとしても。
 こんなにも想い焦がれている自分がいるのだという事を、分かって欲しかったのだ。

 一際激しく膣内を掻き乱されて頂きに押し上げられ、洋子は愛しい男を想いながら、思考を外へと手放していった。


  *  *  *  *  *


 ぱたり、と閉じたドアの音で、洋子の意識は眠りの中から引き上げられた。
 目を開き、ぼやけた視界が鮮明になったところで、横たえていた身をゆっくりと起こす。
 部屋の外へ続くドアの側に佇んでいる今泉は既に衣服に身を包んでおり、手にしていた携帯電話をポケットにしまっている。
 ぼんやりと見つめていると視線に気付き、ああ、と声をかけてきた。
「起こしちまいましたか」
「いえ……お電話ですか?」
「ええ、まあ……」
 少し語尾を濁したが、今泉は落ち着き払ってソファーに腰を沈める。
「店には連絡しておいたんで、その辺は全く問題ありません。いくらか名は知れてますから、しばらくはあの界隈には顔出さない方がいいでしょうがね」
「あ……すみません。本当に何から何まで……」
「ナンバーワンのリョウコちゃん相手に、好き放題やらせてもらいましたからね。これくらいの事は」
 冗談めかした今泉の言葉に、洋子は頬を赤らめる。
 傍らに簡単に畳んで置かれていたブラウスを羽織り、他の衣服を抱えてベッドを降りると、今泉に遠慮がちに尋ねてきた。
「あの……すみません。シャワーをお借りしてもよろしいでしょうか」
「どうぞ。そこのドアの先です」
 礼を言って足早にバスルームへ向かう洋子。初々しささえうかがえるその様に、今泉は微かな笑みを浮かべた。

 一服しながら今泉は再び携帯電話を取り出し、液晶を見つめる。
 開いたのは発信履歴のページ。一番上には神宮寺の名が表示されていた。
 発信時間は七時三十分。つい十分程前のものである。
 日頃の疲れもあった為か、洋子はぐっすりと眠りこんでしまっていた。
 起こすのも忍びないし、神宮寺にも断りは入れてある。
 だが念の為にと連絡を入れてみたところ、起きぬけのような冴えない声で応答が返ってきた。
 一目置いている男の聞いた事のない声音に少々驚きつつも用件を話すと、曖昧な返答だけ聞いて通話を終えた。
 これほどの効果をあげるとは思っていなかった。今泉は苦笑を浮かべる。
 これから先どうしていくかは神宮寺の問題で、今後そこにまで踏み込む事はおそらくないだろう。
 そしてそれは洋子にも言える事だ。風俗嬢を辞めた事で、行き場のない気持ちの矛先は失われた。
 自分をおとしめるような行為にはもう走らないだろうが、想いを満たせた訳ではないだろう。
 だがそれもやはり、彼女自身で向き合うべき問題でしかないのだ。
0198222010/04/20(火) 13:58:39ID:zamGQCu5
 しばらくしてバスルームから出てきた洋子は既に衣服を纏っており、普段と変わらぬ笑みを今泉に向けてきた。
「ありがとうございました……ところで、今何時頃でしょう?」
「ああ……八時を過ぎましたね」
 今泉が腕時計に目を向けて答えると、洋子の笑みが凍りつき、焦りの色を顔に浮かべた。
「大変……早く帰らないと」
「御苑さん?」
 問い掛けると、今日は仕事なのだと言う。
 今から自宅へ戻って事務所に出勤するとなると、遅刻は免れないだろう。
 そう考えたからこそ、今泉は少し前に神宮寺と連絡をとったのだ。彼女は休むかもしれないと。
「今日は休ませてもらったらいかがですか?」
 連絡済みだと言う訳にもいかず提案する今泉だが、そうはいかないと洋子は携帯電話を取り出す。
「書類がかなり溜まっているんです。遅れてでも行かないと……」
 言いながら慌ただしくボタンを押し、電話を耳に当てる。
「あ、先生。おはようございます」
 少し遅れそうだと申し訳なさそうに告げる洋子の表情は、やや気まずげにしかめられている。
 真面目そうな彼女の事だから遅刻をした事などなかっただろうし、昨夜の件がやましいのだろう。
「……え? あの、でも……」
 戸惑いの声を上げる洋子。焦りは失せたが、明らかな困惑の色が見える。
 それから何言か言葉を交わして通話を終わらせた洋子だが、呆気にとられた表情で携帯電話を閉じる。
「何ですって?」
 見当はついているが、あえて尋ねてみる。
「今日も休んでかまわないと……」
 洋子を気遣ってか。あるいはまだ向き合うだけの覚悟が出来ていないのか。
 いずれにせよ、想定通りの答だった。
「なら、ゆっくりしていったら良いでしょう。アタシも今日は大した用事もない」
 ソファーにどかりともたれかかってくつろいで見せる今泉。
 しかし洋子は頷かない。真剣な眼差しで携帯電話を見つめて、しばし佇んでいた。

 ややあって後、洋子はすうっと顔を上げた。その瞳にはもう、惑いはない。
「……やっぱり、行きます」
 そう言って改めて身の周りを整えると、今泉に深く頭を下げた。
「今泉さん。昨夜はお世話になりました……本当に」
「礼を言われる事はしちゃあいませんが……」
 言葉を返しながら、煙草の火を揉み消す。
「大丈夫なんですか? 本当に」
「はい」
 答えて洋子は、すっと背筋を伸ばす。
「先生の助手は、私一人ですから」
 助手──そう言う洋子の声音に少しばかり無理を感じたが、今泉はもはや何も言いはしなかった。
「御苑さん」
 立ち上がりながら、彼は何とは無しに口を開いていた。
「良ければまた、お相手願えますかね?」

 洋子が目を見開いて、今泉を見つめる。
 さほど間を置かずに、その目は細められた。
「もう、充分です。ありがとうございます」
 気を遣って言っているものと思われたらしい。
 その誤解に、今泉は軽く安堵していた。
「では、お邪魔しました」
「ああ、送りましょう」
「助かります」

 部屋を出ていく洋子の顔は、迷いを吹っ切った女のそれとなっていた。
 それを見届けると、今泉は口元に満足そうな笑みを零しつつ、部屋のドアに鍵をかけた。
0199222010/04/20(火) 14:01:02ID:zamGQCu5
終了です。
今泉が人のいいあんちゃんにしか見えない…
02005972010/04/21(水) 09:28:36ID:y37hbopN
>>199
ありがとうございます!念願の今泉エロ、感無量です。
心理描写に気を使われてるな〜と思いましたが、やはり通常では想定できない洋子×今泉ならではのご苦労でしょう。
また機会がありましたらぜひともお願いします!
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