金の力で困ってる女の子を助けてあげたい 4話目
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借金で売られそうになってる少女を即金で買い取って助けてあげたい。
生活に困って野宿している姉妹に仕事場と住居を与えてあげたい。
施設や親に虐待されてる女の子を金で根回しして引き取ってあげたい。
自ら命を絶とうとしてる同級生の人生を買い取って、思い止まらせたい。
難病に喘いでいる薄幸な病人に健康な体をあげたい。
過去スレ
金の力で困ってる女の子を助けてあげたい 3話目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1232296111/
金の力で困ってる女の子を助けてあげたい 2話目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1227429153/
金の力で困ってる女の子を助けてあげたい
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205160163/
保管庫
ttp://wiki.livedoor.jp/helpgirlbymoney/ >>399
亀だがGJ.
こういうのがいいんだよ、こういうのが。 レスありがとうございました
リベンジと思って同じ世界設定で別組を書いたんで曝してみる
金の力というよりは衣食住の保証系だから…スレチだとしたら申し訳ない
ファンタジーもの、獣人要素あり、エロあるけど遠くて薄い、
内容が暴力的というか、すっきりしない終わり方なんで必要であれば「旅立ち」をNGでお願いします この国の空気は淀んでいる、とハーレイトは常々思っていた。
例えば、領主やその家臣が贅を尽くした生活を送る一方で、民衆、特に農民は税を納めるので精一杯という貧しい生活を送っていたり。
例えば、名家と呼ばれる家の出の者は、家や己のプライドに固執するばかりで薄っぺらい華麗さを追い求めていたり。
例えば、主に使える付き人は、上っ面は忠義を誓いつつも、隙あらば寝首を掻いてやろうと目を光らせていたり。
例えば、
「…領主様。ハーレイト、参りました」
「おお、来たか! 此度の働きも見事であったぞ。そなたの治療の甲斐あって倅も大分よくなったようだ。礼を言う」
「光栄の至りでございます」
「そなたにはこれまでも助けられてきた。そこで、特別に褒美を用意したのだ。ほれ、持って来い」
「はっ!」
――奴隷商から買ったのであろう女性を、平然と"褒美"としたり。
「……領主様、この方は」
「うむ。珍しい女であろう? 黒髪に緑眼はこの地方では見られぬ」
「…左様でございますね」
そんなことは聞いていない、とウンザリする内心を隠し、ハーレイトは頭を下げた。
「それなりに見られるので倅にと思っていたのだがな。あいつめ、二十歳を過ぎたものには食指が動かんと言うのだ。
見た通り黙りこくったままで何を考えているか分からぬが…そなた、女扱いには長けているだろう?
働き手としてでも自らを宥める道具としてでも、そなたであれば上手く扱えると思ったのだ」
「私のようなものにそのようなご配慮を…ありがとう存じます」
「なに、これまでの働きを思えば当然のこと。…女、行け」
領主の言葉を受け、女性はよろけながらも歩み寄ってきた。両足首に付けられた鎖がじゃらじゃらと鈍い音をたてる。
膝をついたまま頭を垂れていたハーレイトは、斜め後ろに膝をついた女性が革袋を抱えていることに気がついた。
疑問に思って視線を上げると、領主は物言いたげにこちらを見つめている。
……金貨の代わりに使えない奴隷を押し付けてやれ、ということか。
怒りのあまり牙をむきそうになる自身を必死で押し止め、女性から革袋を受け取り領主へと差し出す。
「…領主様。貴方様の持ち物を頂戴できるだけでも、私にとっては身に余る誉でございます。どうか…」
「なにを申すか」
「折角のお心遣いを申し訳ありませんが…これ以上のご配慮を頂戴しては、末代までの恥でございます。
この者だけでご容赦いただきますよう、料簡してくださいませ」
言って頭を下げると瞬く間に革袋が取り上げられた。上機嫌な声がかけられる。
「ほっほ…まったく、そなたは無欲だな。亜人が皆そなたのように弁えている者ばかりなら良いのだが」
「光栄で御座います」
「うむ。此度はよくやった。今後もよろしく頼むぞ」
「ははっ!」
もう一度だけ深く頭を下げ、視線は合わさぬよう立ちあがった。女性に目で合図して静かに部屋を出る。
門番に挨拶をして城の外に出ると、太陽が空の頂点まで動いていた。
眩しい太陽の光に、ずっと緊張しっぱなしだった体の力が抜け、次いで耳と尻尾もぶるぶると震える。 「…っあー、疲れた!」
大きな声を上げると、隣の女性がびくりと震える。不安と恐怖がないまぜになった瞳がこちらを見つめた。
そんなに怖いだろうか狐のお医者さんと小さい子からも人気なんだけど、
と僅かばかりショックを受けるハーレイトだが、死んだような虚ろな目よりは大分マシかと思い直す。
「えーと、あなたもお疲れ様です。私の名はハーレイト。見ての通り亜人で、医者として働いています」
「わ、私は、イリスと申します。…ハーレイト、様」
「長いからレイでいいですよ。様もいりません」
「で、ですが…」
尚も言い募ろうとするイリスを手で制し、もう片方の手で手を掴む。
説明しなければならないことも聞きたいことも沢山あるが、ひとまずはこの人の生活用品を買わねばなるまい。
「とりあえずお昼ごはんを食べて、あなたの小物を買って、それから家に行きましょう。
腹立たしいのを我慢していたらお腹空きました」
「えっ…?」
「あれ、お腹空いてませんか?」
「……空いています」
弱々しい肯定に自然と頬が綻ぶ。
十数回も怪我や病気を治したことの褒美が女性一人、という発想には色々な意味で呆れてしまったが、人の尊厳を守れたと考えれば納得できないこともない。
…いや、人の尊厳とは本来金で買えるようなものでもないのだけれども。
とにかく今はイリスさんの治療が最優先、と心の中で頷いて、尚も困ったような彼女の手を引いた。 「レイ、ご飯できましたよ」
「…ありがとう…すぐ…行きます…。……ん、これって」
「…文献を読むのは結構ですが、程々にしてくださいね。ご飯が冷めてしまいます」
「……うん」
「…はぁ。今日のお昼は、あなたの好きな、ジャガイモとベーコンのチーズ焼きですよ?」
「すぐ行きます!」
尻尾をぶんぶん振って立ちあがったハーレイトに、イリスは思いきり苦笑した。にこにこと朗らかに笑うハーレイトと共に食卓につく。
「うわぁ、おいしそうだ! いただきます!」
「はい、どうぞ」
挨拶もそこそこにフォークを掴む子どものような姿に、自然と頬が緩む。相変わらず可愛らしい人だ。
イリスがハーレイトと出会ってから、一年の月日が流れていた。
最初のうちこそ、どのような扱いをされるのか分からない不安や恐怖で警戒していたイリスだが、
『ここがイリスさんの部屋です。ここにある以外にも必要な物があれば、遠慮なく言ってください。
貴女には、そうだな…家のことをやってもらえますか? あまり多くは無理ですが、お給金も払いますので。
……どうしたんです? 鳩が豆鉄砲食らったような顔して』
『お大事にどうぞー。…ああ、イリスさん。どうしました? ……え、仕事終わった? ほ、本当ですか?
困ったな…えーと…じゃあ、今日はもう休んじゃってください。折角ですから遊びに行ってはどうですか?
……っと、はいはい、すぐ行きますよ! …すみません、患者さんです。行ってきますね』
『…うん、おいしい。とてもおいしいです。貴女が来てから、ご飯もおいしいし、家もきれいで…本当にありがとうございます。
イリスさんは良いお嫁さんになるでしょうね。…どうしました? 顔が赤いですよ?』
『…こんな夜分にどうしました? 眠れませんか? ……はい、夜の仕事ですか? 夜は、急患がない限り仕事はありませんよ。今日もお疲れさまでした。
……え、そうじゃない? 夜伽? あ、なるほど。分かりました。では、こちらにいらしてください。そうですね、ベッドに入ってもらって。
……さあ、どの本が読みたいですか?』
『ああ、いらっしゃい。また別の本を読みましょうか。…え、夜伽の意味がちがう? ……ああ、そちらの意味でしたか。気付かずにすみませんでした。
…ええとですね…イリスさんは魅力的な女性だと思いますが、そちらの務めは必要ありません。権力を使って人を手篭めにしたくありませんし…
こういうことは、好きな人とだけしたほうがいい…と、私は思いますので』
『…あ、目が覚めましたか。気分はいかがです? って、まだ起きちゃダメですよ。倒れたんですから。
……いえ、変な病気ではありません。ただの疲労です。ゆっくり寝て、休んでください。
…あはは、そんな不安そうな顔しないで。大丈夫、患者さんが来た時以外は、傍にいるから』
ゆっくりじっくりのんびりとほだされてしまった。
なんだこの尻軽女、と思う人もいるかもしれないが、少しだけ考えてみてほしい。
仕えていた主の借金を返すために我が身を売られ、途中まで一緒だった知り合いとも離れ離れにされて、
まったく知らない土地の領主に売られたと思ったら使えない奴隷だとお払い箱。
そんな自分に、住む場所と仕事を与え、対等な立場で関わり、こちらの意思や感情もきちんと尊重してくれるのである。
これでほだされるな、もとい惚れるなと言うならば、一体どんな人物に惚れろというのか。 「……イリス? 私の顔、なにかついてますか?」
美味い美味いと食べていたハーレイトは、彼を微笑んだまま見つめているイリスを不審に思ったのか、きょとんとして首を傾げた。
口元についているポテトが可愛らしい。
「…口元、付いてますよ。ちょっとじっとしててください」
「うわ、ごめん」
「……よし。取れました」
「あはは…ありがとうございます」
照れ笑いするハーレイトに笑顔を返し、自分のものに手をつける。うん、上出来。
「そういえば、今日は、村の寄り合いに呼ばれているんですよね?」
「そうなんですよ。…今までこんなことなかったんですけど…」
「心当たりはないんですか?」
「全く何も。…まぁ、お天道様に後ろ暗いことはしてないし、とりあえず行ってみます」
「…気をつけてくださいね。最近は、なにかと物騒ですから」
「分かってます」
食事を終え、寄り合いに出かけたハーレイトを見送ったイリスは途端に暇になった。
家事云々は午前中に終えてしまったし、彼が不在だということは近隣の人々も知っているので患者が来る可能性も低い。
出かけると言う選択肢も無くはない。だが、家を無人にするわけにはいかないし、ここのところ領主に対する不満の暴動等で物騒だ。
大人しく本でも読もうかな、とハーレイトの部屋に向かったイリスは、ふと思いついて彼のベッドに横になってみた。
ふかふかした枕に顔を埋めると、なんともくすぐったい気分になってくる。
イリスがこうしてハーレイトのベッドに包まるのは珍しいことではない。
一番最初は、何か力になれることはと思い悩んで突撃した結果、幼子のように絵本を読み聞かせられた時であるが、
それ以降も機会があればこうして彼の匂いに包まれることはよくあった。なんというか、安心するのだ。
イリスよりも嗅覚が鋭いハーレイトのことだ。この行為に気付いていないはずはないが、今まで注意を受けたことも無い。
イリスに甘い彼のことである。きっと、甘えたいんだろうなぁとでも思って黙認しているのだろう。
自分よりも年下の家主の優しさに、イリスは、いつも甘えてばかりいる。
奴隷として売られた自分がこんなに幸せでいいのか。
そう思ってしまうくらい、この穏やかで優しい生活に、イリスは幸せを感じていた。
同時に、共に売られた妹分二人のことが脳裏によぎる。亜人の需要がより高いからと言う理由で、海を渡る時に引き離された二人のことを。
――海を渡った先で、私は幸せになることができた。二人も、どうか…優しくしてくれる人と、巡り合えますように。
とんでもなく叶え難い祈りだと分かっていても、そう思わずにはいられなかった。 イリスは玄関の鍵が開けられる音で目を覚ました。ついうとうとしていたらしい。
しまった、と慌てて起き上がるのと、ハーレイトが彼らしくない乱雑な動きで部屋に入ってくるのは同時だった。
「レイ、お帰りなさい! すみません、その、本でも読もうかと思って…っ!?」
慌てて言い訳をするも、言い終わる前に力強い腕に抱きすくめられる。初めての行為に心臓が飛び跳ねた。
「れ、レイっ?! あのっ、ど、どうしたんですか!?」
「…………っ!」
イリスの問いかけにも答えない。本当にどうしたのかと困り果てた彼女は、ふと、ハーレイトの体が小刻みに震えていることに気がついた。
「……レイ? 寄り合いで、なにかあったんですか?」
なるべく落ち着いた声で尋ねると、ハーレイトは小さくうめき声を上げた。金色の髪を梳くように頭を撫でたら甘えるようにすり寄ってくる。
「…………革命が」
「…革命…?」
「……革命が、起こります。明後日の、建国記念日に合わせて」
呻くように吐き出された言葉にイリスは目を見張った。
「…レイ、それは…。……血が流れる、ということですか」
掠れたで尋ねると腕の力が一層強くなる。無言の肯定に背筋が震えた。
「……あなたも、参加するの……?」
思わず零れた言葉に慌てて口を押さえた。患者思いのこの人が、ケガ人を放っておくわけがない。
しかし、以外にも、ハーレイトは首を振る。
「……いや。私は、革命には、参加しません」
「じゃ、じゃあ…どうするんですか…?」
「……逃げます。この国の外に。別の国に」
泣きそうな表情で言いきった彼を見て、イリスはおおよその事態が呑み込めた。 ハーレイトとその両親は、この地域の人々にとって恩人だった。
重税に苦しむ貧しい人々は、怪我や病気をしたとしても治療費が払えない。
そのせいで病院の世話になることができず、取り返しのつかない事態になってしまった人も多くいる。
そんな中、たまたまこの国に移住してきた彼の家族は、自分たちの莫大な貯蓄を切り崩し、ほとんど無償同然で人々への治療を行った。
曰く「お金は困ってる人のために使うのが一番!」というのが家訓だとのこと。
寝る間を惜しんで働いた彼の両親が流行り病に倒れた後も、ハーレイトは一人でこの地域の人々を診ていたらしい。
おかげでこの地域での死亡者の人数は格段に減ったのだ、とこの話をした老女は俯いて言った。
「…"俺たちは親御さんの命を、お前の心を貰って生き延びた。これ以上、命も、心も、貰うわけにはいかない"と言われました」
「…レイ…」
「……情けないことに、何も言えませんでした。私も共に戦うと、言えなかった」
まるで懺悔のように言葉を続ける。少しでも体温を伝えたくて腕に力を込めると、それ以上の力で抱きしめられた。
「イリス、私は…死にたくない。貴女のことを、失いたくない。…ずっと、一緒に、生きていたい…!」
血を吐くように言葉を絞り出したハーレイトを抱きしめる。息を大きく吸って、少しだけ体を引き離した。
様々な感情がぐちゃぐちゃに混ざり合っている瞳を見つめ、できるだけ優しく微笑む。
「大丈夫ですよ、レイ。私が一緒にいます。絶対離れたりしません。あなた一人を置いて行きはしませんから…
だから、全部、分けてください。喜びも、悲しみも、痛みも。私にも分けて、一緒に背負わせてください」
「…イリス…」
「どんなものでも、ちゃんと受け止めますから。レイの全部を私にください」
泣き出しそうな顔になった愛しい人に口付けると、挑みかかるように押し倒された。 「ふぁっ…ぁ、っ…レイぃ…」
互いの唇を貪るような口付けを交わす。キスの合間に名前を呼んだら思った以上に甘ったるい声で恥ずかしくなった。
だが、それを意識するよりも早く口付けられ、冷静な思考はハーレイトの熱に押し流される。
舌唇を食まれたと思ったら上あごをくすぐられ、反射的に縮こまった舌を解すように吸われる。
たまらず背中を掻き抱くと満足げに唇が離れた。二人の間を銀の糸がつたう。
「…イリス」
興奮を隠そうともしない低い声で名を呼ばれ、思わず体中が熱を持つ。腹の奥深くがきゅうと疼いて恥ずかしくなった。
「ぁ…レイ、あの、ひぁっ…」
口をもごもごさせていると首筋を舐められた。熱くぬめりのある感触に肌が粟立つ。
舌でぺろぺろと舐めながらも、彼の右手はシャツの胸元に侵入してきて胸元を柔らかく撫でた。優しい触れかたに背中がぞくりと震える。
「っ、あ…ふぁ…」
もう片方の手は服の上から確認するように乳房をなぞる。間接的な感覚がじれったくて、イリスは無意識のうちに肩を震わせた。
ハーレイトが楽しそうに口元を緩ませる。
「気持ちいいですか、イリス?」
「なっ…き、聞かないで、っ…ください…そんなこと…ひゃんっ!」
指先で胸の頂を擦られ反応してしまう。
いつの間にやらブラウスの前は肌蹴させられていて、さほど大きくも無い己の胸が灯りの下に晒されていた。
恥ずかしくて目を閉じると不満げに口付けられる。
「イリス、ちゃんと目を開けてください」
「だ、だって…恥ずかしい、ですよ…」
「何故? こんなにきれいなのに」
「れ、レイ…」
真顔で言ってくるから性質が悪い。
背に腹は代えられないと恐る恐る目を開くと、優しい笑顔が飛び込んできた。柔らかい表情に腹の奥が切なく疼く。
真っ赤になったイリスの額に口付けて、ハーレイトは乳首を口に含む。指とは違った刺激に背筋が弓なりになった。
「んぁっ! あ、や…レイっ…なめちゃ、やぁ…」
「む…きもひくにゃい、でひゅか?」
「ふぁんっ! しゃ、しゃべっちゃダメです…!」
たまらないと頭を抱えると、耳に触れた指が気持ち良かったのかより甘えるようにしゃぶってくる。
舌で乳首をこねまわし、乳房を甘がみするハーレイトは一見赤子のようだが、それにしては快楽を与えようとする動きが強すぎる。
反対側の胸も優しく愛撫され、腰辺りから湧きあがってくる未知の感覚にイリスは切羽詰まった悲鳴を上げた。
「やぁあっ! レイ、待って…待ってくださいっ! わた、やっ、わたし、おかしくなっ、ぁんっ!」
「いいですね、もっとおかしくなってください」
「ひあぁっ!?」
優しい笑みと共に股の間に膝を押し込まれる。電気のような鋭い快感が背筋を走り抜け、視界に火花が散ったような錯覚を覚えた。
数秒息を詰め、次いでくたりと力を抜いたイリスを見て、ハーレイトは尻尾を揺らす。 「軽くいっちゃいましたか。よかった」
「ん…レイ…」
「ここにいますよ。…服、全部脱いじゃいましょうね」
反論する暇も無く衣服を取り払われる。反射的に手で隠そうとするも、優しい笑顔のまま両手をベッドに縫いつけられた。
「隠さないでください。全部見たいので」
「や…恥ずかしい…」
「その表情もすてきです。…もっと見せて」
耳元で囁かれて嫌が応にも力が抜ける。右手で触れられたそこは、ハーレイトを待ちわびるかのように熱く潤っていた。瞳の奥の光が一層鋭くなる。
「すごい。ここ、こんなに熱くなってますよ」
「はぅっ…や…言わな、で…」
「身体も顔も、真っ赤ですね。…でも、嫌なわけではなさそうだ」
「やっ、ひゃあんっ! や、レイっ…ぅあ…ぁ…」
「こんなにぐちゃぐちゃにしちゃって。私の指が溶けそうですよ」
「…ぁっ…やぁ…」
するりと差し込まれた中指を歓迎するかのように膣壁が絡みつく。
異物感はあるものの、それが目の前で微笑む相手の指だと思うだけで愛おしさが込み上げてくる。
膣壁がきゅうきゅうとしまるので、指の形をはっきりと捉えられてイリスは泣きそうな心地になった。
恥ずかしいのに、訳が分からないくらい胸が熱い。
「入れる前に、解しておかないといけませんからね。動かしますよ」
「えっ…あっ!? ふゎ、あっ…や…レイっ…!」
「…辛くない、ですか…?」
「はっ…だいじょ、ぶ…ぁんっ!」
「それはよかった」
「あぁぁああっ!?」
言葉と共に二本目も突き入れられ、イリスは再び身体を強張らせる。
彼女が息を整えるのを待っていたハーレイトは、ある程度落ち着いたと見るや、二本の指先で腹側のざらざらした壁を擦りあげる。
「んぁあっ!? レイ、まっ…ちょっとまっ、やぁん!」
「ここ、気持ちいいんですね。…こんなのはどうです?」
「ひぁああっ!?」
愛液をたっぷりつけた指で最も敏感な箇所を撫でられて、思わず腰が持ちあがる。愛液を擦りつけるような愛撫に彼女の目の奥で火花が散った。
内と外の弱点を同時に責められて、呆気なく再三の絶頂を迎える。
肩で息をする彼女を労るように数回口付けて、ハーレイトも身に着けていたものを脱ぎ捨てる。
しっかりと引き締まった体躯や、雄々しく猛る彼自身を目にしたイリスは興奮と緊張で身を震わせるが、
嬉しそうにぱたぱたと振られている尻尾が目に入って思わず吹き出してしまった。本当に、なんて、可愛らしい。
不思議そうな表情になったハーレイトに口付けて、腕や足を使って精一杯ねだってみる。
獰猛な光を目に宿しつつも優しく微笑んで、ゆっくりとイリスの中に入ってきた。
指以上の質量に息が詰まるも、散々なぶられた甲斐あってか痛みはほとんどない。
イリスを気遣うハーレイトに微笑んでやると、嬉しそうに頬を緩ませて柔らかく腰をゆする。
硬く張り詰めた剛直が肉壁を抉り、蕩けるような悲鳴を上げぎゅうと眉を寄せてしがみつくと、膣内が暖かい精液で満たされた。 言い様のない幸福感に頬を緩めていたイリスだが、ここで、彼女が予想していなかった事態が起こる。
膣内の一物は衰えるどころか更に硬さを増し、同時に、根元辺りが膨らんでいくのだ。
一瞬何が起こったか掴みかねるものの、ぱたぱたと嬉しそうに揺られっぱなしの尻尾や、
快感に耐えようと伏せられているふさふさの耳が視界に入り、あることを思いつく。
「んっ…ふ…あの…レイ…?」
「……ん?」
「もしか、して…ぁっ…その…まだ、達してません、か…?」
イヌ科の動物の交尾は長い。
一度目の射精は人で言う先走り液と同義で、二度目の射精に精子が含まれており、三度目の断続的な射精で精子に活力を与える。
いつだったか読んだ文献の内容が脳裏に走り、若干表情を引きつらせたイリスに、
「ああ、うん。…もう動いて平気ですか?」
あっさりとした肯定が返ってきた。
と言うか、発言から鑑みると、彼はイリスを気遣っていただけらしい。
平静を装っているものの、明るい茶色の瞳はギラギラと輝いており、ああレイもケダモノなんだなぁと意識が飛びそうになる。
「あの…動く前に、教えて欲しい、んぅっ…ですけど…」
「できれば、手短に」
「……一度いく、までに…どれくらい…っ…かかります、か?」
「純粋な犬たちよりは短いですよ。精々15分くらいです」
私死んじゃう。
ほとんど本能的にそう覚るも、先ほどからずーっと辛抱強く待てをしているハーレイトを見ると、拒否するのも気が引ける。
ええいもうなるようになれ女は度胸! と心中で覚悟を決め深呼吸をひとつ。むせかえりそうな程濃い互いの匂いに頭がくらくらする。
「……やさしく、してください」
「ごめん。もう無理」
子宮口に食い込んだのではと錯覚するほど深く突き上げられて、イリスは果てのない快楽の波に呑み込まれた。 翌日の昼。
主にハーレイトによってまとめられた、最低限の持ち物と路銀を持った二人は、
少し小高い山の山頂から既に大分小さくなった城壁を見つめていた。
あと一度日が落ちて登れば、場内は混乱と喧騒と血で満たされるだろう。
せめて物資だけは、とできる限りの食料衣服医療品とその説明書きを押し付けてきたが、そんなものがどれくらい役に立つかは分からない。
外部の協力者達が未成年の子らを引き受けてくれていたのがせめてもの救いだろうか。
最後に来た報告書によると、皆、衣食住は保障され、きちんとした教育を受ける機会も得られているらしい。
それがこの先も続くことを祈り、二人は城壁に背を向ける。
遠くを見ようと目を細めると、山続きの地平線の向こうに深い青が連なっていた。地図で確認したとおり、海は近いらしい。
「…まずは、海を越える所からですね」
「うん。…海の向こうに、流れものでも永住できる国があるらしいですから、そこを目指そう」
「私も噂で聞いたことがあります。確か…ヨトキって都市から、更に北上した所…だとか」
「ずいぶんと具体的ですね? まぁ、目的地がはっきりしてるのに越したことはないか」
「そうですよ」
穏やかな笑顔を交わし、降ろしていた荷物を背負う。
振り返らずに並んで歩きだした二人の背を爽やかな追い風が優しく撫でていった。 以上!
言い訳したいことは多々ありますが、多くは語るまい
少しでも楽しんでもらえたら幸いです
このスレが再び活気づきますように! GJ!!
なにげに獣姦好きなんで面白かったです
新天地での続編期待してます!
あとイリスの妹分も気になるところ…… イリスの妹分の続き出来たので投下してみる
違う子らを期待してたら申し訳ない。こいつらなんだ…
エロは冒頭のみで薄い、メインヒロインじゃないのと絡んでる、
後半金の力はあるけど趣味に走ってしまった、獣人要素ありなんで、注意してください
NGは「ヨトキ編」でお願いします ヨトキのとある娼館の中で、一人の女性があられもない悲鳴を上げていた。
長い黒髪を振り乱し、絶え間なく与えられる快感から逃れようとしっとり汗ばんだ身体をよじる。
白百合のように真白い柔肌は、抑えきれない熱によって薄紅色に染められていた。
なんなんだ今夜の相手は。辛うじてつなぎとめている理性の隅で女性は思う。
自分の高ぶりや欲求をぶつけてくることは無く、ただ、女性に快楽を与えることにのみ集中している。
自身の技術で相手を悦ばせてやろうという傲慢で自分勝手な愛撫でもない、
こちらの反応を注視しながらやり方を柔軟に変えていくという、女性本位と言えそうなやり方で。
普段はどこか冷めた心持で行為に臨んでいるはずの自分が、
まるで熱に浮かされているかのように、身をよじり、嬌声を上げ、何度目かも分からない絶頂に達する。
久しぶりに演技でない快感に震える自身を見て、朱い目を細める相手に、女性は少しだけ戸惑っていた。
多くの人と物が行き交うヨトキにおいて、娼婦や男娼は珍しい存在ではない。
連れ合いとの交わりのみで満足できる輩や、個人用の性奴隷を持っている輩以外にとっては、
お金を積んで決まりさえ守れば誰とでも床を共にする彼ら彼女らは便利な存在だ。
また、一夜限りで後腐れがない者を相手にできるのは、多くの都市を行き来しあう商人や旅人からも好評だった。
女性が働いているのも、商人や旅人を主な客とする娼館の一つである。
娼婦は全員妊娠を阻む薬を飲み、性器が直接触れることを阻む膜さえ付ければ入れるのも可という方針を取っているので人気は高い。
禁じられているのは、膜を付けずに性交をすることと、傷が残る行為を行うことの二つだけという自由度の高さも、ここの人気に拍車をかけていた。
女性は、清楚な顔立ちと豊満な胸やしなやかな肢体の落差を売りにしていた。
彼女を取る客は男が多く、"純情可憐な乙女が自分の前だけで乱れる"という状況を好む傾向にあった。
というと少々面倒そうだが、卑猥な言葉に恥ずかしがりながら、
ただ撫でただけ揉んだだけの愛撫に少々大げさに身をくねらせてやれば、大体の客が満足した。
この仕事に就いて浅いうちは、どれだけ恥ずかしがれば良いのか、どのくらい感じたふりをするかの加減が難しかったが、
その辺りも経験を重ねることでどうにかできた。
稀に演技をする必要がない相手もいたが、大体の輩は、
女性経験が浅かったりプライドだけが高い俺様だったり妙な勘違いをしていたりと、残念な相手が多かった。
まぁ、経験豊富な輩は"清純な娼婦"なんて矛盾だらけの存在を選んだりしないのだろう。
今夜の相手も、年若く、しかも明日はお休みの人でなんて注文を付けてきたので、またも勘違い君の相手かぁ…と内心落ち込んでいたのだが。
「や、ぁぁああっ! だめ…だめぇっ…また、いっちゃ…!」
「うん、ここもよさそうですね? こんなのはどうでしょうか」
「ぃ、あぁあぁああ!?」
勘違いなんてことなかったです。普通に手慣れてますこの人。どうしよう本気で気持ちいい。 腹の内側のざらざらした部分を少し強めに擦られて、思わず白い喉をのけぞらせて悲鳴を上げる。
絶頂の余韻でぴくぴくと震えたままの女性を見た相手は、必要以上の刺激を与えぬよう注意しながら指を引きぬいた。
つぷりと音を立てひくひくと震える膣口を軽く撫で、肩で息をする彼女に水差しとコップを持ってくる。
「どうぞ。沢山出ちゃいましたから、飲んどいたほうがいいですよ」
「…ぁ…はぃ…ぁりがと…ございます…」
「どういたしまして。…まだ平気そうですか?」
「……ちょ、ちょっとだけ、休んでも……?」
「もちろんです。辛かったらもう終わりでも平気ですからね」
にこりと笑って毛布をかけてくる相手に、女性は困惑が滲む笑顔を見せた。
今夜のお客さんは本当に妙である。
部屋に入ってからしばらくの間は、なんてことのない世間話やヨトキについての質問をしてきて、
いざまぐわいをとベッドにもぐりこんだ後も、下半身は一切露出せずに指と舌だけで女性を腰砕けにしている。
最初のうちこそ女性側にも行為を楽しむ余裕は残されていたが、彼が二回ほど奉仕の申し出を断った辺りから演技等を考える余裕が消え去り、
今となっては完全に相手の手の上で踊らされていた。
もちろん気持ちがよくて嫌なんてことはないのだが、同い年くらいの青年にこんなに好き勝手されてしまうのもなんとなく悔しい。
…それに、折角なら、段々主張をし始めている彼の一物も味わってみたい。
「…あの…」
「はい?」
「ええと、その…さっきから、私ばっかりが気持ちよくなっちゃってますから…私も…」
「いや、それはいいです」
「…でも…」
再三あっさりと断られて、ここまでくると自分の身体が不満なのかと心配になってきた。
そんな女性の内心を察したのか、朱い瞳は優しく緩められる。
「貴女は魅力的だと思いますけど、たまにはこんなのもいいじゃないですか」
「…慰めなくてもいいですよぅ」
「慰める? まさか。長い黒髪も、白くて柔らかい身体も、可愛らしいお顔も、みんな素敵ですよ」
「…だったら…」
私のこと滅茶苦茶にして、と囁いてみると、相手は困ったように笑って覆い被さってきた。
ほぐすようにやわやわと胸を撫でられる。
「実は、芯が強い女の人をくたくたにするのが好きなんです。だから僕のことは気にせずに、訳分かんないーって顔しててください。
それが一番そそられるので」
耳元で言い放たれてどくりと身体の奥が疼いた。
生娘じゃないんだからと自分の反応に呆れるものの、"清純な乙女"としてではなく女性自身の反応を求められて、なんとも嬉しくなってしまう。
それなら甘えさせてもらおうかなぁ、と呟いてみた女性に満面の笑みが返って来て、愛液をたっぷり掬いあげた指先で陰核をくすぐられる。
「…んんっ…ふぁ…そこ、きもちいぃ…」
「それはなにより。…もっともっと、気持ち良くなってくださいね」
そうして結局、宣言通り、起き上がれなくなるまでくたくたに愛撫されるのだった。
……へろへろになった彼女をオカズに、自分で処理していた彼の立派な一物を思い返すと、
どうせ一度きりなんだから入れてもらっても良かったかなぁと思ってしまったりもするのだが。 「ただーいまー」
「おかえり。どうだったよ、都会の女性は」
「中々素敵だったよ。プロ意識も感じられて好感も持てた。しかしまー娼婦ってのも大変だねぇ。
相手の要望を察して巧く応えないといけないんだから」
「まったくだ。で、ちゃんといかせられたか?」
「一応両手は越えた。これなら父さん達も文句は言わないさ」
「そりゃなにより。…まさかとは思うが、ヤッてはないよな?」
「ちゃんと紙で拭いて燃やしたよ」
「なら良し」
宿の部屋に戻って早々散々な会話を交わすイツキとアキラだが、それを聞いている者はいない。先ほどの少女二人は隣の部屋で休んでいた。
「あの二人は?」
「寝てる。何度か見に行ったが完全に熟睡だ」
「ま、そうだね。疲れてて当然だ」
「ああ。…これでラクハルに帰れるな。特産品の相場は確認できたし、イツキが床上手だってのも証明されたし」
「宝石の価値も分かったから、お隣さんへの土産話も出来たしね。彼女たちの準備を整えてもう一日休んだら帰ろう」
「了解」
それにしても今日は疲れたもう寝る、と服を着替えてベッドに倒れ込んだイツキを見て、
同じくベッドに寝転んだままのアキラは楽しそうに笑う。
「これで当面の問題は嫁取り婿取りをどうするかだけだな。今日会った二人はどうよ?」
「…少なくとも…今の段階ではあり得ないね。君こそ…ちっちゃいほうの子、好みじゃないのかい…?」
「シノな。…確かに可愛いと思うけど、まぁ、あっちが俺でも好きになってくれるような広い心の持ち主だったら考えるよ」
「ふあぁ…右に同じさ。…とにかく、彼女たちには…ちゃんとした生活を…しあわせに…」
言いながら意識を手放したイツキに、思わず微笑が零れた。
どうやら我らが若様は、今日出会ったばかりの二人のことも領民として受け入れているらしい。
ラクハルは、少なくともこいつの代は安泰だなと呟いて、アキラもベッドに潜り込んだ。 次の日。
寝ぼけ眼を擦りながら隣の部屋をノックしたイツキは、
「はい。…あ、イツキ。おはよう」
「おはよー、みな…」
乱れたままの大きめの服を着て、耳をぴんと立て、嬉しそうに微笑む少女に迎えられた。一瞬で眠気が吹っ飛んだ。
「…? い」
「ごめん悪かったごめん!」
「ちょっとミナトそんな格好で出ちゃ駄目よ!」
思考停止しつつもドアを閉めた彼の声に部屋の奥から飛んだ鋭い声が被さる。少しの間、わーきゃーどたばたと部屋の中が騒がしくなった。
ちょっと元気が出てきたかなそれにしてもびっくりした驚いた、と止まりかけた息を整えていると、
「…ん? なんか賑やかだな。どうしたんだ?」
四人分の朝ご飯を取りに行っていたアキラが戻って来て、
「…ごめんなさい。もう入って平気」
申し訳なさそうに耳を伏せたシノが再度ドアを開けた。
少女たちは、それぞれ、ミナトとシノと名乗った。
無防備な格好でドアを開けた方がミナト。そんな彼女を強引に引っ張って、男性用の大きい服でも一応の格好はつくように整えたのがシノ。
明るい茶色の髪に鮮やかな青色の瞳を持つシノには豹のような耳と尻尾が、灰色の髪に金色の瞳を持つミナトには狼のような耳と尻尾が、
各々の感情に合わせてぴくぴくと存在を主張している。
小柄で華奢な体つきのシノに対し、ミナトは女性としては長身でしなやかな筋肉も見てとれるが、
互いの性格故か、シノがミナトの姉のような印象を受ける。
「えーと、これからの予定なんだけどね?」
お茶を飲みつつ切り出したイツキに、嬉しそうに美味しそうに卵サンドをかじっていた二人が目を向ける。
「今日中に君たちの準備を整えて、明日は休んで、明後日にはここを発つ。ヨトキからラクハルまでは、汽車と馬車を使って二週間くらいだ。
疲れてるとこ悪いんだけど、もうちょっとだけ頑張ってくれ」
「分かった」
「はい」
「それで、ラクハルに着いてからの身の振り方なんだけど」
その言葉を聞いて、ミナトは興味津々に目を輝かせ、シノは不安そうに尻尾を下げた。
反応が面白いなこの子たち、と内心でアキラと同じ感想を抱きつつ、イツキは説明を続ける。
「君たちがしたいと思った仕事をして、住みたいと思った所に住んでくれればいいよ。
土地は余ってるし仕事も色々あるから、じっくり考えて決めればいい。
僕らが住んでる家にも部屋は余ってるから、当面はそこで暮らしたっていいさ」
「…そんなのんきに構えてて平気なの? 私たち、領主の息子が連れて来たとはいえ、そこの人にとっては余所者でしょ?」
「へーきへーき。元々、流れ者や旅人が多い国だからね。
皆、お互いの過去には不干渉を決め込んでるし、誠実な態度に不誠実な行為を返したりはしないよ」
ひらひらと手を振ってみせるとシノは一応頷いた。未だ信じきってしまって良いのか判断付きかねているようだ。
慎重な姿勢が好ましくて頬を緩めると、今度はミナトが口を開く。
「…シノはともかく、私でもできる仕事はあるのか?」
そう言って、生まれつきなのだという腕の途中から先が無い左腕を振ってみせる彼女に、今度はアキラが笑顔を見せた。
「手足が無い人は他にもいるけど、皆、自立した生活を送ってるぞ。最低限の家事はできるし、剣も扱えるんだろ?」
「うん」
「だったら何の問題も無い。例えば、イツキの護衛とかでもいいしな」
「こらそこ、自分の仕事を人に押し付けない」
「えー。若様に付き添いながらあの館を管理すんの、大変なんだが」
「それが君の仕事だろう?」
「…へーへー、分かりましたよ」
諦めたように肩をすくめるアキラに笑顔を返したイツキは、二人がお茶を飲み終えるのを確認して、
そろそろ買い物に出かけようかと立ち上がった。 人波にもまれつつ活気のある客寄せの声をくぐり抜けつつ、まず一同がやって来たのは旅人向けの衣類店だった。
昨日の女性に旅人向けの服ならここが良いと勧められた店だ。身につける衣服は勿論、靴下や下着や靴といった小物も用意できるのだとか。
恵比寿顔ですっ飛んできた中年女性に二人を任せ、アキラとイツキは女性陣を遠巻きに眺める。
こういう時、よほどのセンスがない限り、男のやることは無い。ただ黙って辛抱強く待つだけだ。
「…おかみさん楽しそうだなぁ」
「あれだけ綺麗な子たちだから、着せ替え甲斐もあるんじゃないかい?」
「そうかもな。お、あの服似合ってる」
「眼福眼福」
次から次へと着ては脱ぎ着ては脱ぎ。
「ミナトさん、次はこれを着てくださいね!」
「え!? は、はい!」
「シノさん、着替えられました?」
「…あ、はい。ええと…」
「きゃー! とってもよくお似合いですよ! もー、どれも似合うから困っちゃうわぁ!」
嬉しそうな悲鳴を上げる女性が満足したのは、結局、シノとミナトが耳と尻尾をへたらせ、
きらりと光る眼を向けられたイツキたちが慌てて会計を済ませてからであった。
「……つかれた」
「……うん」
「だろうな。お疲れさん」
くてっと木製の机に倒れ込んだ二人に、アキラは思わず苦笑した。
今の彼女たちは、綿製のシャツにズボンの上から色違いのマントを身に付け、頑丈な靴を履き、革製の鞄を脇に置いている。
どこからどう見ても自分と同じような旅人風だ。
「…っ、ごめんなさい」
「いいよ。疲れたろ」
「……ありがと」
慌てて姿勢を正そうとしたシノを手で制し、飲み物を買っているイツキに目を向ける。
やはり、シノの方がより慎重派だ。ミナトが無防備すぎるのかもしれないけれど。
オープンテラスから眺める人々は一見皆が活気に満ちていて、しかし、ようく注意して見てみると何人かの目には光が無い。
ラクハルではあり得ない光景だよなぁやっぱり都会って怖い、とひとりごちていると、おぼんを持ったイツキが戻って来た。
「はい、ホットレモネードとココアとミルクティーとコーヒー! 好きなのを選びたまえ」
「速すぎて分からんもう一度」
「…見かけとにおいで分からないかい?」
「あ、ほんとだ」
アキラ達のやり取りに頬を緩ますも、シノとミナトはどうすればいいのかと困り顔だ。
首を傾げてみると、ミナトがすまなそうに肩をすぼめる。
「どれも知ってるけど、味は分からないんだ。二人から先に選んでほしい」
「あ、なるほどな。それなら俺はコーヒーを貰う」
「じゃあ僕はミルクティーにしようかな。えーと…こっちのココアがチョコレートみたいな味、レモネードは、甘酸っぱい感じだよ」
「チョコレート…ああ、イリスがくれたヤツね。それなら、ミナトはこっちで私がこっち」
「あ、ありがとう」
どうやらミナトの方がより甘党らしい。
ふむふむ覚えとこう、と内心頷いていると、店員らしき男性が小さめのパンケーキを二つ運んできた。
バターの上からメープルシロップがたっぷりとかけられていて、一口大に切りそろえられた果物が脇に添えられている。
自分たちの前に置かれたそれを見て、お互いの顔を見て、ミナトとシノはきょとんと首を傾げる。
「君たちのだよ。嫌じゃない味だったらお食べ」
ぱあっと表情が明るくなった。
いただきます! と両手を合わせてパンケーキを口に含んだ二人は、
「…ん…おいしい…」
「わあぁ…!」
片や尻尾をゆらゆら揺らし、片や尾がちぎれんばかりに振り回した。 旅に必要な小物をそろえ、それぞれに短剣と小刀を買い与えられたシノとミナトは、宿のベッドに倒れ込んでいた。
ここの所急展開すぎて思考が追いつかない、と頭を抱えるシノの一方で、ミナトは疲れたなーと声を上げつつも楽しそうだ。
こんなに嬉しそうな彼女の声を聞くのは本当に久しぶりなので嬉しいが、やはり、少しばかり無防備が過ぎるような気がしてしまう。
命を助けられた恩人とはいえ、あの二人が信頼できる人物なのか、まだ分からないのに。
「…私たち、これから、どうなるのかしら」
「どうなるんだろうな」
思わず漏れた声に、気の抜けた言葉が返ってきた。
思わず苦笑して隣を見ると、優しく微笑んだミナトはシノのベッドに乗りこんでくる。
両手を包むように抱えられて、金色の瞳が混乱気味のシノを映す。
「分からないけど、多分、なんとかなるよ」
「…楽観的ねぇ」
「そうかもしれないな。でも、イツキもアキラも、悪い人には見えないんだ」
「私だって…そう思うけど」
本当に信じていいのかは分からないじゃない、と続けることはできなかった。
剣士の娘として広い世界を見た経験があるミナトと、一介の使用人の子に過ぎないシノとでは、人の本質を見抜く力にも差があるだろう。
あの奴隷商から逃げられたのだって、ミナトの力に依るものが大きい。自分がしたことといえば、見張りの数を伝えたのと、
気付かれぬよう二人の鎖を脆くしたことだけだ。
神経質になりすぎているだけだろうかと目を伏せると、大きく暖かい身体に包まれた。
「…私が考えなしな分、いつも、シノが頑張ってくれてるのは分かってるんだけどな?」
「そんなことない」
「ある。…これ以上は、自力で出来ることは限られてるんだから、覚悟を決めた方がいいと思うんだ」
「……それは、そうだけど」
……怖いのだ。人を信じることが。ミナトをも失うことが。
イツキもアキラも、いい人だとは思う。シノたちのために、時間もお金も労力も厭わないで、こちらを安心させようとしてくれている。
敬語も敬称も面倒だからしなくていいと言われた。
胃がびっくりしないようにと消化のしやすいものばかりを食べさせてくれた。
暖かいお湯で身体を洗った後、どんなに小さな傷でも丁寧に手当てをしてくれた。
自分たちに費やした金額は必ず返すと約束したら、金は返さなくていいから無理のない範囲でラクハルに貢献してくれと頼まれた。
大金だというけれど、鉱山に精々二週間程篭もる程度の労力しか払っていない。
それだけで、信頼できる働き手が得られたち儲けものだと笑われた。
優しい人たちだと思う。命の恩人だと思う。信じてついて行きたいと思う。けれど――どうしても、身が竦んでしまう。
元々、望まれて生まれたわけではない。貴族の跡継ぎ息子が気紛れに手を出した使用人が、シノの母親だ。
殺されずに生まれ、働けるようになるまでは世話をしてもらったけれど、シノはいつも厄介者だった。
館の住人はシノを汚点だと疎んだ。使用人たちは、半分は主人の血を引いているシノにどう接すれば良いのかと困惑した。
母親は、嫉妬に狂った正妻に虐め抜かれ、まだ幼いシノを残して逝ってしまった。
親を亡くし奉公に出るしかなかったミナトやイリスと出会わなければ、シノは、とうに自害していたことだろう。
「……大丈夫だよ、シノ」
柔らかい声に、シノの意識は引き戻される。
数回目を瞬くと、優しい手つきで頭が撫でられた。
「私がいる。シノに酷いことなんてさせない。今度こそ、約束する」
「……約束するのなら、この先も一緒にいてくれる方がいい」
「じゃ、それも約束だ」
にっこりと破顔するミナトを見て、自然と頬が綻んだ。
アキラもイツキも、まだ信じることはできないけれど、ミナトのことは信じられる。
彼女が大丈夫だと笑うのだ。多分、きっと、なんとかなるだろう。
お互いの体温を感じながら夢の世界に落ちていった二人は、
「…寝てるのかな? 失礼するよー…ってほんとに寝てた。……ちょっと無防備すぎやしないかい」
呆れたように笑ったイツキから布団を掛けられたことには気が付かなかった。 ここまで!
今更ながら娼婦ものは人を選ぶかもしれないと怖くなってきた
苦手な人がいたら本当にすみません
この女性は、経験も技術もないけれど愛に溢れるご主人様に身請けされ、
彼女の指導によりメキメキと実力をつけたご主人様とラブラブな家庭を築く
なんて裏設定があるのでよかったら誰か書いてください
女の子をお金で引き取る所も山場だけど、引き取った後色んなものを用意するのも
個人的には萌えるんだ。そんな俺はプリティ・ウーマン好き。
ともかく、お目汚し失礼しました! 久々に来たけどまだ作者さんいるんだな、シチュエーションが限られすぎてるんで
良くて類似したジャンルに吸収されるのがオチだと思ってたわ 新天地編が出来ていないのにこんなことを言うのは気が引けるんだが
経済的な問題で学校に行けない女の子を学校に行かすってのはアリだろうか アリだと思う。てかそういうのを考えると、このシチュエーションでの有名文学作品ってアレだよな。
「あしながおじさん」 あしながおじさん募金を純粋な目で見れなくなったじゃないか 某ゲームがまさにここの趣旨どおりだったけど実は意外と需要があるテーマだったみたいだね
これを期にこのジャンルもっと流行って欲しい kwsk
…してほしいけど名前出すのはまずいか。ジャンル教えてくれないか?
小説で似たテーマが書かれることも結構あるし、言葉選ばないで言うとロマンがあるからね
もっと流行ってもいいはず >>430
奴隷との生活って同人エロゲだよ
虐待用奴隷で目に光がない少女を撫でて甘やかす純愛ゲーム
火傷跡あるからそういうの苦手ならごめん
今売上ものすごいからきっとこの手のジャンルが増えるはず >>431
今更にもほどがあるが教えてくれてありがとう!!
理想を具現化してくれたようなゲームだ。本当にありがとう ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています