ドラ○もんの道具を悪用してエロ小説 11
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「あんな娘とい〜いな、できたらい〜な♪」
この世に物の数あれど、手に入るならばこれほど便利な物は無し……。
誰もが思うあんな事やこんな事、このスレにぶつけよう!!
秘密道具さえ使えば、純愛・鬼畜・ネタ・妄想・オリ・版権、制限なしの大解放っ!!
職人降臨大歓迎っ!
・ローカルルール
1、人の嗜好は様々。ツンケンせず、マターリいきましょう。
2、次スレは950踏んだ人か、容量を485KB以上にした人が立ててください。
3、投下祭りとその後の過疎化はここの華。隙を見つけて踊りましょ。
4、基本はsage進行。
過去ログやまとめサイト案内は >>2 らへん。
「・・・はあ、今日も疲れたな」
私、黒木智子は学校から帰宅すると、カバンを無造作に投げ出し、ベッドにぼふ、と身を沈める。そのままずぶずぶと、
本当に身体が沈んでしまいそうなほど、私の心は重苦しかった。
「・・・クラスの連中、今日も一日中やかましかったな・・・聞きたくもないのに聞かされる方の身になってみろっつーんだ。
それにあの体育教師、『ペアになって準備体操ー』とか・・組む相手がいない奴の事も考えろっての」
枕に顔を押し付けたまま、小声でぶつぶつと学校での不満を呟き続ける。これが、ここ最近の私の日課になってしまっていた。
不健康だとはわかっているが、こうでもしないとうさ晴らしもできない。
高校生になって数ヶ月。私はいまだに友達も作れないままだ。
「・・・着替えよ」
一通り愚痴を吐き出したあとで、私はのっそりとベッドから立ち上がり、部屋着に着替える。そして、椅子をきい、と引くと、
デスクトップ型PCの据えつけられた机の前に腰を下ろした。
「・・・さて、今日は何のゲームしようかな・・・最近乙女ゲーばっかだったからたまにはBLでも・・・」
据わった目付きで画面を追いながら、私はあれこれとゲームを物色していく。と、その時、先週買って積んだままにしてある
ゲームがあることを思い出した。
「そうそう、買った後ですぐバグがあるとか聞いてやってなかったんだっけ・・・パッチ公開されたかな」
調べてみると、公式ホームページに対応パッチが公開されていた。
「よし、んじゃこれを落として・・・あ、まだソフトのインストールやってなかったな」
私はがら、と机の引き出しを開ける。
ところが。
「・・・?」
そこには確かに、目的のソフトが入っていた。が、しかし。
まるで見慣れない、真っ白な、半円状の物体が、隣に並んでいた。
「・・・何だこれ?」
私はその白い物体をひょい、とつまみ上げてみる。柔らかな布製だった。
「・・・もしかして、また気づかないうちに、こんな所にパンツ置いてたのか!?」
イヤな記憶がよみがえり、イヤな汗がダラダラと流れ出す。が、よく見るとそれはパンツでは明らかになく、袋状をしていた。
袋と言っても、それほど深さがあるわけでもなく。せいぜい手首が入るくらいのものだ。
ひっくり返したり、裏返したりしている内に、私はソレが、何かに似ている事に気が付いた。
「コレ・・・なんだかあの『ポケット』に似てるな・・」
そう、日本人なら誰もが知ってて誰もが欲しがる、『あの』ポケットである。
「いいよなあ、あのポケット・・・。アレさえあれば、私も夢のリア充生活し放題なのに・・・」
私はそのポケットをお腹の上にそっと乗せてみた。気分はすっかり青色タヌキロボだ。
「ふへへ・・・『はい、タ○○プタ〜』なんてね・・・」
ごそごそとポケットに手を突っ込み、ひょいと取り出す真似をしてみる。と。
その手に、黄色いプロペラがしっかりと握られていた。
「・・・・・・へ?」
一瞬、何が起こったのかわからず固まる私。手の中のプロペラはしっかりとそこにあり、握った感触も伝わってくる。
「いやいやいや・・・え? ・・・ええ!?」
もう一度手首をポケットに突っ込み、ぱっと手を離す。
それから手を引き抜くと、プロペラは、きれいさっぱり無くなっていた。もちろん、袋をのぞきこんでも、そこには何も
見当たらない。
私は、恐る恐るそのポケットを顔の高さにまで持ち上げると、その、極めてシンプルなフォルムを、神を崇める信者のような
面持ちで、じっくりと見つめた。
「ホ・・・ホンモノ?」
(・・・確かめてみる必要がある)
数十分後、部屋の中でポケットを握り締めたまま、私は腕組みをして考え込んでいた。
あれから、『ドア』やら『こんにゃく』やら『電話ボックス』やら、思いつく限りのモノを次々に引っ張り出してみた。
それらは全て、私の期待に応えるように姿を現し、部屋の中を彩っていった。
ますます混乱していく頭をいったん落ち着けるために、それら道具を一旦ポケットにしまいこみ、私はじっくりと思案した。
(何か、何か確信がほしい・・・コレが本物である確信が・・・)
迷ったあげく、私はポケットから一つの道具を取り出した。言った事が全て本当になるクスリ『ウソ800』である。
それを一口ごくり、と飲むと、締め切っていた窓のカーテンを全開にする。外はいい陽気であり、午後の日差しがぽかぽかと
降り注いでいた。
私は一つ息を吸い込むと、窓に向かって声を発した。何を緊張しているのか、声が裏返っているのが自分でもわかる。
「あ・・・ああ〜、今日はいい天気だなあ〜」
次の瞬間。
見る間に雲行きが怪しくなり、ぽつ、ぽつとアスファルトに水滴が落ちたかと思うと、たちまち土砂降りの雨が降り出した。
驚きのあまり、体中がドキドキと音を立てる。続けて私はこうつぶやいた。
「うわ〜! す、すごい大雨だー!」
ぴたり、と雨が止み、太陽が再び顔を覗かせる。
「・・・はっ、ははっ」
思わず、笑みがこぼれてくる。興奮と期待がぐるぐると渦巻く頭で、私はさらに考えた。
(何か・・・! 何かもう一つ・・・そうだ!)
きょろきょろと部屋を見回した私の視線が、壁に向かったところで止まる。この壁の向こうには今、弟の智貴がいるはずだ。
「あー、智貴が今すぐ、私にカップメン持って来てくれたりしないなあ〜」
がちゃり、と部屋のドアが開くと、そこから弟がひょいと覗き込んできた。。
「おい」
いつも通りのぶっきらぼうな口調で話しかけてきたため、私は一瞬、
(ヤバイ! さっきからバカな事言って騒いでるの気づかれたか!?)
と思い、瞬時に身構えた。だがしかし、
「これ、いらねーからやるよ」
と、すっとカップメンを私に手渡すと、そのまま部屋を後にする弟の背中を見送りながら、心の中で快哉を叫んでいた。
(・・・本物だ! 間違いない! 弟が私に食べ物を分けてくれるなんて、SFでもなきゃありっこない!)
そして、今さらながらに自分の手に入れたモノの偉大さを実感し、ぶるり、と身震いをする。
――コレさえあれば、何でもできる。あんなことも、こんなことも。
次の日。
「・・・ふふ・・ふふふ・・・ふへへへ・・・」
教室で、目を真っ赤に充血させて、絶えず低音の笑い声を漏らしている私を見て、クラスの連中が遠巻きに何かを言っている。
昨日までの私なら、そんな状況に耐えられず、寝たフリでやり過ごすか、トイレへと逃げ込んでいたことだろう。
だが、今日からは違う。
私はあいつらよりも、何段も、何十段もランクが上のリア充へと変身を遂げたのだから。
(きっとアレは、かわいそうな私に神様が贈ってくれたプレゼントなんだ・・・)
私のような人生を送っている者にありがちだとは思うが、割といい年になるまで、事あるごとに、『あの』ポケットへの渇望が
頭の中に浮かんできた。ああ、思えば何度『地球はかいばくだん』や『どくさいスイッチ』が欲しいと思った事だろうか。あと、
『のろいのカメラ』とか。
だがいまやそれは現実となり、私の手の中にある。もはや世界をどう動かすかすら、私の手中といっても差し支えないだろう。
そうだ、そして私は新世界の神に―――
「――木さん、黒木さん」
「はぐぇっ!?」
妄想に浸りきっていた所に突然声をかけられ、私は変な声を上げた。話しかけてきたのはクラスの男子で、私の反応に
驚きつつも、言葉を続けた。
「つ・・・次の時間、移動教室だよ? 早く行かないと」
「あ・・・ああ・・・うん、そ、そうだね〜・・・ふへへ・・・」
自分の奇行が急に恥ずかしくなり、私はせいいっぱいの愛想笑いを浮かべて(顔は当然うつむいたままだが)返事をする。
それが聞こえたのか聞こえていないのかは分からないが、男子はさっさと教室を出て行き、廊下で待っていた他の連中と何やら
話しながら去っていく。私もあわてて支度をすると、教室を後にした。
廊下をつかつかと歩きながら、私はさっきの会話を反芻する。
(・・・新世界の神たる私に早くも取り入ろうとするとは・・・さっきの奴、なかなか抜け目ないな・・・。いずれ私が
世界を手に入れた暁には、側近として取り立ててやるとするか。・・・あーでもああいう奴は後々裏切るフラグが・・・)
私の妄想は留まるところを知らず、最終的にはさっきの男子が私の寵愛を得る為、自らの妻を手にかけるところまで発展して
いくのだった。
そして放課後。
私は、新世界の神となるべく、その輝かしい第一歩を踏み出した。
神がいくら全知全能と言えど、一人で出来る事には限界がある。やはり、手足となり駒として動く人間がいなくては話に
ならない。そう、神はあまねく人々に愛され、敬われなければならないのだ。
早く言えば、モテたい。
「・・・くっそ、いつまで待たせんだよ・・・とっとと出てこいマジで」
昇降口の陰に隠れて、私は一人毒づいた。苛立ちに足を踏み鳴らし、右手に持ったポケットをぎゅううっ、と握り締めながら。
私は私の計画を実行に移すため、ここで、とある人物を待ち伏せていた。その人物とは。
「・・・来たっ!」
ちょうどその時、校舎から出てきたのは、私のクラスで一番のイケメン(とか何とか言われて調子に乗っているアホ)男子と、
そいつと付き合っている(男を外面だけでしか判断できない頭のネジも股間もゆるいビッチ)女生徒だった。
そう、毎日毎日、事あるごとに教室でイチャついては他の連中にからかわれ、恥ずかしがりつつもまんざらでもなさそうに、
そろってアホ面をさらしているこの二人が、私の計画のターゲットだ。
「今日はどこ行く?」
「んー、とりあえず洋服見に行きたいんだけど、いい?」
二人は親しげに会話をしながら、あろうことか手を繋いだまま、下校していく。だが、そうは問屋がおろさない。
(覚悟しろ・・・! お前らのリア充生活は、今日この瞬間終わりを迎える・・・!)
私は震える手をポケットにずぼ、と突っ込んだ。
ややあって、引き抜かれた私の手が握っていたのは、奇妙なデザインの時計。
それをすっ、と頭上に掲げると、私は心の中で、今朝からずっと考えていた決め台詞を絶叫しながら、スイッチを押した。
(・・・『世界』! 時よ止まれッ!)
その瞬間。
それまでざわめいていた木々の葉が擦れる音や、校庭のあちらこちらから聞こえていた生徒達の声が、ぴたりと止んだ。
いや、音だけではない。視界に映る全てのものが、まるでビデオを一時停止したかのように、その場で静止している。
そう、私は今、『ウルトラストップウォッチ』を使用し、世界の時間を止めたのだ。
「す・・・すごい! ホントに時間が止まってる・・・」
その、あまりの光景に、私はつい、呆然となって見入ってしまった。
だがすぐに気を取り直すと、校舎の陰から走り出し、校庭の中ほどで寄り添って静止したままの二人へと近づいていく。
「もしもーし・・・お二人さーん」
二人の正面に周り、声をかけてみた。もちろん、二人は何の反応も見せないままだ。
こみあげる感情を抑えきれず、私は低い声で笑った。これで、いよいよ計画を実行に移せる。
「ふふっ・・・覚悟するがいい、今から、お前の全てを私のモノにしてやる・・・」
私の計画。それは、この男の心を篭絡し、私の下僕へと堕としてしまう事だった。
このポケットの力を十全に引き出したならば、恐らく、全世界の人間を一瞬で支配下に置く事も不可能ではないだろう。だが、
やはり物事には順序というものがある。恋愛ゲーだって、最初に落とすのは攻略難易度が低いキャラからと決まってるし。
まずは手近なところから手中に引き込み、徐々に勢力を拡大すればいい。それが私の考えだった。さらに、この男が私に
かしずく姿を見せ付けることで、女の方に絶望と喪失感を与えてやる事もできる。
支配、そして力の誇示。この二つを同時に遂行するのに、うってつけの実験台だった。
(・・・だから別に、バカップル面がムカつくとか、何の悩みもなさそうでうらやましいとか、そういう卑屈な理由では
決して無いのであって・・・)
誰が聞いているわけでもない世界で、私はブツブツと小声で呟きをもらしつつ、ポケットをまさぐる。
今度私が取り出した道具は、『即席スイートホーム』だ。この家に二人の人間が入ると、後から入った人間は先に入っていた
人間のことを心の底から好きになってしまう。この部屋に男を連れ込み、私に心酔させてしまおうという算段だ。
「さて、それじゃあ早速・・・」
私は固まったままの男の肩に手をかけ、ぐい、と引っ張って移動させようとした。が、その時。
「・・・」
隣で、歩き出そうとしている姿勢のままの女子生徒。
その、ひらりと翻りかけたスカートにふと目が止まった。
「―――――!」
―――次にパンツを買いに行く機会があったら、私も、真っ黒のフリル付きの物にしよう。
やや脱線しかけたが、私は気を取り直し、本来の目的へ向けて動き出す。
「よい・・しょっと。くっそ、痩せてるクセに、重いなコイツ・・・」
持ち上げる事など到底出来ないので、仕方なく、男子生徒の身体を横倒しにして、ずるずると地面を引きずる。そうして、
『即席スイートホーム』の開け放ったドアの前まで運んできた。
「ふう・・・疲れた。それじゃ、まずは私が玄関に入って・・・」
部屋へと足を踏み入れた私は、玄関からうんと手を伸ばし、男の体を引っ張り込む。これで条件は整ったはずだ。
「さて、それじゃ時間停止を解除して・・・いや待てよ」
私は考えた。男女がせっかく想いを通じ合わせようという時に、部隊が玄関では味気ない。もっといいシチュエーションが
あるのではないだろうか。例えば・・・そう。
「・・・ベ、ベベ、ベッドの上・・・とか?」
自分の発想に自分で動揺しつつも、私は玄関から続く廊下の先をちらりと見やる。
寝室と思しき一室に、大きなダブルベッドが置かれているのが見えた。
「・・・よ、よし、準備オッケぇ・・・」
心臓が、ばくばくと大きな音を立てている。
震える手に『ウルトラストップウォッチ』を握り締めると、その手でちょん、と男の身体に触れた。時間停止は解除され、
男が再び動き出す。
「―――そうそう、でさ、その時俺が・・・あれ?」
彼女との楽しいおしゃべりの最中、ふと気づくと周囲の風景が一変していた。
そんな突然の出来事に、男がきょとん、とした顔で固まる。
私は、ベッドに仰向けで寝そべらせた男の上に四つん這いになり、顔を思い切り、ぐい、と近づけて、渾身の甘い声を作って
ささやきかけた。
「・・・お、おお、おはよう、ももっ、もう、ああ相変わらず、寝ぼすけなんだか―――」
「う、うわあああっ!!」
私の愛の言葉は悲鳴にかき消され、ついでがばっと身を跳ね起こした男の頭部が、私の額にがつん、と直撃した。
「あがふっ!?」
またしても変な声が出てしまい、私はベッド上で額を押さえてうずくまる。男の方はと言えば、すっかり混乱した様子で辺りを
見回し、自分が上半身裸である事に気づいてまた驚愕し、目の前にいる、男物のワイシャツ一枚の姿でベッドに突っ伏している
私を指さして、声にならない言葉で喚いていた。
そんな男の様子をちらりとうかがい、私は内心焦っていた。
(何で・・・!? 道具の効果が効いてない!? ホントなら、時間停止を解除した瞬間、目の前の私の美しさにすっかり
メロメロになって、両手でぎゅっと優しく包み込んでくれるハズなのに・・・!)
どうしよう、このままでは大騒ぎになってしまう。かくなる上は力ずくでも、と、私が決意したその瞬間。
「・・・?」
不意に、男の喚き声がぴたり、とおさまった。
おそるおそる見上げると、先ほどとはうってかわって、うっとりとした目付きでまっすぐに私の方を見つめている。まるで、
今初めて、こんなに美しい女子がいた事に気づいた、というような表情で。
効果が表れ出したのだ。安心した私は身を起こすと、再びベッド上に四つんばいになる。男の方からは、私の胸がシャツの
隙間から、ちらりと見えているはずだ。
「・・・も、もうっ、どうしたのよ、い、一体・・・」
そして、目をくわっと見開き、口元をひん曲げ、にまあ、と満面の笑みを浮かべた。
私のパーフェクトなスマイルにすっかりあてられてしまったらしい男が、おずおずと手を差し出してくる。
「・・・あ、ああ、ゴメンよ。君があまりにキレイだったから、思わず驚いてしまって・・・」
「はひっ!?」
瞬時に、私の顔が真っ赤になる。身体の内側が、頭のてっぺんからつま先までかっかと熱くなっている。
男子からこんな言葉をかけられたのは、言うまでもなく初めての体験だ。それも、こんな近くで、見つめあったままなんて。
(どうした・・・しっかりしろ! 今まで何人ものイケメンを落としてきた私じゃないか! そうだ、学園一のアイドルだって、
人間と吸血鬼のハーフだって、現代へうっかりタイムスリップしてきたイケメン武将だって・・・!)
あまりの衝撃に対抗するため、記憶の底からありとあらゆる乙女ゲーの体験を引っ張り出している私をよそに、男がさらに
すっ、と手を伸ばし、私の頬に触れる。一瞬、びくん、と私の身体は大きく震えた。
そのまま、男がゆっくりと顔を近づけてくる。無言のまま、徐々に、徐々に。
(え? え? え? ちょ、ちょっと待って・・・こ、これって・・・)
それに気づいた時にはもう遅く、私のファーストキスはいとも簡単に奪われていた。
「・・・!」
さらに男の行為はそれだけに留まらず、私の方へと身体を預けてくる。それを支えきれなくなった私は、ベッド上へ仰向けに
倒れていった。そこに、男の身体が覆いかぶさってくる。
「智子・・・愛してるよ。キミを、俺だけのモノにしたい・・・いいだろ?」
ぼん、と何かがはじける音がした。私の、頭頂部の方から。
もう、何も考えられなくなってしまい、私はわけのわからない言葉を早口でまくし立てる。
「あっ、へっ!? あっ、はい、よ、よろ、よろ、よろしくお願、じゃなっ! えと、あ、か、簡単な女だと思わな・・・」
そんな私にはお構いなしに、男がもう一度、優しく口付けをしてくる。
甘酸っぱい幻想が、隅々にまで広がっていく頭で、私はぼんやりと考えた。
(―――もしかしたらこの人が、私の運命の人なのかもしれない―――)
「・・・あっ、うんっ、はぁっ・・・」
ベッドの上で、私と彼は肌を重ね合わせる。
あまりの恥ずかしさと興奮に、私は彼の顔を見る事も出来ず、目をぎゅっとつむり、ベッド上で仰向けになったまま、身動き
一つ取れないでいた。
そんな私の心を解きほぐそうとしてか、彼がしきりに、私の耳元で甘い言葉をささやいてくれる。
「ほら・・・智子、そんなに怖がらなくても大丈夫。優しくしてあげるから・・・」
名前を呼ばれるたびに、彼の熱い吐息が耳をくすぐり、私の身体がぞくぞくと震える。
そして、シャツをはだけた私の肉体に、彼がすっと手を滑らせてくる。愛おしむように、すみずみを柔らかく撫で回される
その感触に、徐々に私の心が熱っぽくなっていくのがわかった。
(んんっ・・・こんな・・・こんなに、気持ちいいなんてっ・・・)
彼の指が、つん、と私の胸に触れた。その小さな刺激に、私はまたびくり、と反応してしまう。
「智子のココ・・・小さくてかわいいね・・・」
彼のそんな言葉と同時に、ちゅっ、という、湿り気を帯びた音が聞こえてきた。おそるおそる目を開けると、そこには、唇を
すぼめ、私の胸に吸い付いている彼の姿があった。
「やっ、やあっ、ダメっ!恥ずかしいよぉっ!」
私は思わず叫んでしまった。だが、彼はちらりとこちらを見て、くすっと笑ったかと思うと、
「やっと俺のコト、見てくれたね。恥ずかしい事なんてないよ。それに―――」
そう言って、私の下半身へと差し伸べていた手を、くいっ、と動かす。
「っ!?」
突然の刺激に、私は思わず息を飲んだ。そう、彼が今触れているのは、私の――性器の部分だった。
「ほら・・・ココはこんなに濡れて、気持ち良さそうじゃない?」
彼が指を動かすのに合わせて立つ、くちゅくちゅという音が、私にもはっきりと聞こえてきた。
「〜〜〜〜っ!!」
ますます恥ずかしさの募ってきた私は、思わず両手で顔を覆う。手の平に、火を吹きそうなほどに熱くなっている、顔の
体温が伝わってきた。
「心配しないで・・・ちゃんと、智子のこと、気持ちよくしてあげるから・・・」
彼がまた、私にキスをする。二人の唇を触れ合わせたまま、彼の愛撫は続く。ちゅっ、くちゅっと一定のリズムで触れられる
秘裂からは愛液が漏れ出し、まるで蕩けていくかのようだった。
(あっ、はっ・・・やだっ、自分でするのと、全然違う・・・!)
全身を包み込むような、愛情を伴ったその行為が、私を未知の領域へと誘っていく。高みに近づきつつあるのが、自分でも
感じられた。
私の表情や仕草からそれを察したのか、彼が少しずつ、指を動かすペースを速めだす。にちゃっ、ぬちゅっという粘つく
音が大きく響くようになり、それが私の頭の中をいっぱいに占めていく。
「もっ・・・もう、ダメッ・・・!」
ぎゅううっ、と目の前の身体に抱きつき、私は彼の腕の中で果てた。ぶしゅうっ、と愛液がほとばしる感覚があり、全身を、
痺れる様な快感が走り抜けた。
「よかった・・・俺、ちゃんと出来たみたいだね」
はあはあと息を荒げている私を、彼は優しく抱きしめてくれ、頭にそっと手を添えてくれる。一つ一つのその動作から、私への
深い思いやりが伝わってきて、思わず涙がこぼれそうになった。
やがて、私が落ち着きを取り戻してきた頃、彼が、ぽつりと耳元でつぶやいた。
「なあ・・・智子。俺も、そろそろ・・・いいかな?」
―――とうとう、やって来たのだ。この瞬間が。
(おっ・・・きい)
彼のズボンから現れたソレを見て、私は思わず息を飲んだ。
想像していたのとまるで違う、男性の象徴にふさわしい逞しさで、ソレはまっすぐに天を指していた。
「・・・智子、そんなに見られると、恥ずかしいんだけど・・・」
口ごもるような彼の言葉に、私ははっと我に返ると、顔の前でぱたぱたと手を振る。
「ごっ、ごごご、ごめん! その、あの、あんまりスゴかったからつい・・・じゃなくて、な、何言ってんだろ私・・・」
またしても早口になってしまう私。そんな慌てふためく私を見て、彼が思わずといった様子で、ぷっと吹き出した。
つられて私も、くすっと微笑んでしまう。少しの間、私たちは無邪気にけらけらと笑いあっていた。
「・・・それじゃ、いい?」
ふっと、彼が真剣な顔つきに戻って、私に向かって言う。
私も笑うのをやめて、唇をぎゅっと結ぶと、こっくりと、一つうなずき返した。
無言のままで、彼がゆっくりと私に向けて、腰を突き出す。そうして、彼のモノが、私の入り口へぴとりと触れた。肉丘から、
かすかに彼の熱が伝わってくる。
(ああ・・・私、ホントに、しちゃうんだ・・・)
今さらながらにして頭に浮かんだそんな感慨に、私の心と体が打ち震える。けれど、それは決して、恐怖心から来るものでは
なかった。
大丈夫。きっと、彼となら。
恐怖にも勝る愛情が、私を包み込んでくれているから。
「・・・来て・・・」
私は彼の目を見つめ、そうつぶやく。彼は一瞬だけ、にこりと笑顔をくれてから、私の腰に添えた手に、ぐっと力を込める。
そして、私と彼が、一つになろうとする、その瞬間―――
「―――痛ったぁぁっ!?」
唐突に襲ってきた激しい痛みに、私は思わず叫び声を上げた。
(いやっ、ちょっ、ちょっと待って!? こんなに痛いのか!?)
完全に想定を上回る、鈍い痛み。ばっと下腹部を確認すると、彼のモノはまだ先端部分が侵入しただけでしかない。大きく
脈打つ残りの部分を改めてまじまじと見つめ、私は血の気がさーっと引いていくのを感じた。
(嘘だろ!? あんなの全部入れられたら私、完全に内側から破裂するわ! 黒ひげか!)
突然がちがちと歯を鳴らして震えだした私を見て、彼がうろたえ出した。なんとも中途半端な体勢なままで、私を気遣うように
声をかけてくる。
「と、智子、大丈夫? お、俺もあんまり慣れてないから、なるべく優しくするけど、痛かったら言ってくれよ?」
そう言うと、彼は再び下半身に力を込め、挿入を再開しようとしてきた。その感覚に、私は反射的に激しく首を振る。
「ムリムリムリムリムリ! こんなの絶対無理! ちょっと一回、一回ストップしよう!」
あまりに必死じみた私の訴えに、彼がぴたりと動きを止めた。だがしかし、私の中に入り込んでいるアレはとんでもない
異物感を放ったまま、ずきんずきんという痛みを私に与え続けている。
「はおうっ・・! くっ・・んどぅふぅっ・・・!」
痛みをごまかすため、口から変な息と変な声を同時に漏らす私。その間にも、頭の中では必死に現状の分析を続けていた。
(どうする!? ここで止めとくか!? いやしかし、せっかくの処女喪失と下僕ゲットのチャンスが・・・!)
その時、彼が少し体勢を整えようと、ぎしっ、とベッドへ膝を置きなおした。
「ぐふぅっ!?」
そのわずかな動きですら、私の中へは増幅された痛みとして伝わってくる。もはや、選択の余地は残されていなかった。
(ダメだ! 無理だこれ! 諦めよう!)
素早くそう決断した私は、ずりずりと後ろへ這いずり、挿入されているモノを引き抜こうとした。が、しかし。
「待ってよ、智子! 急にどうしたんだい?」
男は私の体を離そうとせず、あくまで食い下がってくる。道具の効果もあるせいでか、どうあっても私の事を愛しぬくつもりで
いるらしい。
(くそっ・・・! なんて自己中な奴だ! 女の事なんてちっとも考えないで、これだからイケメンのヤリチン野郎は・・・!)
内心毒づきながら、私は抵抗を続ける。そして、何とか身をよじると、ベッドのそばに置いておいた例の時計をひっつかんで、
ためらう事なくスイッチを押し、再度、時間を停止させた。
「はぁ・・・はぁ・・・んぎっ!」
その場で固まってしまった男の体から、私は慎重に身を離す。それでも、アレがずるん、と抜ける時には、思わず声が出て
しまった。
「はあ・・・くそ、ひどい目にあった・・・あ! そ、そうだ!」
一息ついた私は、そこである事に気づき、あわてて自分の股間を見下ろした。だいぶ治まってきてはいるが、いまだに
じんじんという感覚が残っているそこからは、しかし血が流れている様子はない。私はほっとした。
「よかった・・・これで処女膜まで持ってかれてたら、完全にビッチの仲間入りをするところだった・・・」
そもそも考えてみれば、古来より処女は聖性を帯びたものとして捉えられてきた。新世界の神たらんとする私はむしろ、純潔を
守りぬくべきなのだ。そう思うと、目の前で間抜けな格好をしたままでいる男の姿が、急に下賤なものに見えてきた、やはり
下等な人間は人間同士、せいぜい獣のように盛っているのがお似合いというものだろう。
私はううん、と一つ背伸びをした。
「それにしても・・・なんか、疲れたな・・・」
先程からの行為や、精神的な気疲れのせいでか、急に睡魔が襲ってきた。
私の目の前にはベッドがあり、私の周囲には、時間を気にする必要のまったくない世界。
男の体をごろん、と無造作にベッドの外へ押しのけると、私はその、柔らかなシーツの上に、ぽすんと体を横たえた。
そして一つ、あくびをすると、うとうとと、眠りの世界へとまどろんでいった。
眠りの中で、夢を見た。
私の大好きなゲーキャラと、何だか細部のはっきりしない、けれど、とても気持ちのいいことをする夢だった。
しばらく後、目覚めた私は、事態の後始末にとりかかった。
男の体に服を着せ、部屋の中に運び込んだ時と同じく、引きずりながら外へ出す。そいつが元々立っていた所までやってくると、
その体を無理やり立たせ、停止直前の状態へと戻した。
『即席スイートホーム』をポケットにしまってから、私はたたた、とその場を離れ、誰にも見られていない校庭の隅に屈み込み、
『ウルトラストップウォッチ』で時間停止を解除した。辺りには再びざわめきが戻り、何事もなかったかのように世界は再開する。
「―――ん、んん・・・?」
校庭の中央、あの男子生徒も意識を取り戻したようだ。だが、その表情には疑問の色が浮かべており、それを察した彼女が
けげんそうに問いかける。
「どうしたの? 急にヘンな顔で考え込んじゃって」
「いや、何か今、一瞬変な夢を見てたような・・・」
「あはっ、何それ? 新手のジョーダンかなんか?」
「冗談じゃないんだけどなぁ」
相変わらずにこやかなままで学校を後にする二人の後姿を見送り、私は一つ「チッ」と舌打ちをする。あの男の記憶については、
後始末をする必要はないはずだった。『即席スイートホーム』から出してさえしまえば、中での出来事は、きれいさっぱり消えて
いるはずだから。
そして、のそりと立ち上がると、校舎の陰に沈みつつある夕日を、ぼんやりと眺めた。
(・・・帰ろう)
ずいぶんと遅くなってしまった。電車を乗り継ぎ、家の最寄り駅に着いた時にはもう夜だ。
(こんな時間まで帰らないで・・・お母さん、怒るかな・・・)
周りの家のそこここで明かりが点きだす中、てくてくと歩く。何とはなしに、制服のポケットに入れてある、あの袋の感触を
確かめながら。
やがて、広い河原を臨む土手に出た。ここまで来れば家はもうすぐそこだ。
「・・・」
だが、私はそこで足を止める。そして、土手を下ると、足元に気を付けながら、川辺までやって来た。さらさらという、
かすかな音を立てながら流れていくその光景を見つめながら、私はしばらくじっと考え込む。
そして、おもむろにポケットを取り出すと、えいっとばかりに勢いをつけて川へ投げ込んだ。
ちゃぽん、という水音さえ立てずに、ポケットは川の流れに溶け込むと、ただされるがままに流れていく。しばらくその様子を
目で追った後、私はくるりと踵を返して川に背を向けた。
(・・・これでいいんだ)
歩き出しながら、私は頭の中で何度も唱える。そう、これでいいんだ。
あんな強大な力を秘めたモノを、誰かが独り占めするなんてこと、あっちゃいけない。ましてや、私の手になんか、到底余る。
もちろん、その気になりさえすれば、どんな事だってできるだろう。でも、それはきっと、世界を歪める行為でしかない。
例えば、私をクラス一の人気者にするとか。
「・・・」
それから、私の見た目を超モテカワ愛され系ゆるふわガールに変身させるとか。
「・・・」
あまつさえ、二次元キャラを自由自在に呼び出して、毎晩とっかえひっかえ夜の相手を――
「―――や、やっぱ、もう一日だけ考えてから!」
ぐるん、と私は振り向くと、足をもつれさせながら全速力で川の渕まで戻ってきた。きょろきょろと川の下流を探し回って、
前方、遥か彼方にそれらしき物体が浮かんでいるの発見する。
「あった! くそ、もうあんな遠くに・・・!」
躊躇しているヒマはない。この川は中央でも浅く、そんなに流れも速くない。
私はカバンをその場に放り出すと、ざぶん、と水を蹴散らして川の中へと突入した。
「待て、この・・・うわっ!」
ずるん、と何かぬるぬるするものを踏みつけ、私はその場で派手にすっ転んだ。しりもちをついてしまい、制服も靴も
びしょ濡れだ。だが、こんな事であきらめるわけにはいかない。
「私の・・・私の人生を変えるために!」
どうにか体勢を立て直した私は、立ったままでは重心的に不利だと判断し、四つん這いで進むことにした。じゃばじゃばと
水をかきわけ、まっしぐらにポケットめざして進んでいく。向こうも流されてはいるが、まだ距離はそう離れてはいない。
このまま行けば、いつか必ず追いつけるはずだ。私は一心不乱に前進し続けた。
(そうだ、私はなるんだ、夢の、夢のリア充に―――!)
「・・・っあー、今日も部活キツかったなー。・・・ん? なあ、アレ見ろよ」
川にかかった鉄橋の上で、何人かの男子中学生が立ち話をしている。
「え? どれどれ・・・うわっ! なんだアレ!?」
「女の人・・・だよな? こんな時間にこんなトコで何やってんだ?」
「何か、探し物でもしてんじゃねーの? ほら、川底のぞきこんでるみたいだし」
「いや、それにしちゃあ物凄い勢いで突っ走ってってるような・・・あ、ほら、黒木も見てみろよ」
黒木と呼ばれた少年が、鉄橋の柵越しに下を眺めた。
「・・・」
「なー、すげーだろ? 何やってんだろうな、あの人」
「・・・・・・知らねえ。つーか、知りたくもねえ」
何だよー、などと言いつつ、その、得体の知れない人物を見物する級友を置いて、智貴はさっさと歩き出した。
―――おそらく今夜展開される、母親の、烈火のような叱責の場を、どうやってスルーするか考えながら。
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