「――音無キルコ、ただいまパトロールから帰還いたしましたっ!」
非の打ち所のない完璧な敬礼ポーズとともに、音無キルコのはつらつとした声が、流島分署に響き渡る。
「……あー……おう、お疲れ……」
机にべったりとつっぷし、死んだ魚のような目をした、この上なくどうでもよさそうな態度で、安錠春樹――「ハル」が、
それを迎えた。
「……ハル先輩」
そんな、元気のかけらも感じられないハルの出迎えに、キルコがはぁ、と聞こえよがしの大きなため息をつく。
それから、右目をキリッと厳しく吊り上げると、ハルに向かって言った。
「失礼を承知で言わせていただきますが、もう少し、やる気を出してもらえませんか? 私たちは仮にも、市民の皆様の安全を
お預かりする仕事に就いてるんです。その我々が全力で仕事に取り組まなければ、皆様も安心して眠れないというものじゃ
ありませんか。まったく、署長が本署へ出向されている、こういう時だからこそ、私達が――」
その時、机にへばりついたままで、黙ってキルコの話を聞いていたハルが、突然ガタン、と椅子を蹴立てて立ち上がると、
目の前に積まれている書類を引っつかんで丸め、キルコの頭をスパーン! と打ちのめした。
「おめーのヘマの始末書書きでこちとらロクに寝てないんじゃあ! やる気あんならもうちょっとミス減らす努力をしろアホぉ!
おっぱい揉むぞ、こら!」
「ああっ、スミマセンっ、スミマセンっ!」
なおもパコパコと叩かれる頭を両手で抱え、キルコは涙目でその場にうずくまりながら、ハルに謝り続けるのだった。