富士子が公園に走っていくと、柔がブランコを静かに揺らしていた。

「猪熊さん・・・」と富士子が声をかける。

「富士子さん・・・。」と、柔らのうれし涙と戸惑いの目つきに、富士子は完全に見抜いてしまった。
女の感は怖いものである。

「どうしたの?・・・」と富士子が優しく問う。ここはママさんの先輩、富士子に柔らが「一本」とられているのである。
「ふ、富士子さん・・・。私、あ・・あの・・・、あの・・・あ、あれが・・・アレがlこないの・・・。
またおじいちゃんに投げ飛ばされちゃうわ・・・」

と、もじもじ戸惑いながらも、なんとなく安心感も漂っている柔であった。

ハッハといつもの調子で走ってきた富士子は「猪熊さん、お久しぶり!」と隣のブランコに乗った。