「どのような意味でしょうか、陸軍大臣」
はっきりとした意思を感じさせる声音で、女は鋭く深く発言する。
「そんなあいまいに言われては、意味を分かりかねます」
あえて具体的な指示を避けていたのは周知の、暗黙の了解であった。
そこで突然、当の大臣に面と向かって糾弾したのに、辺りは戸惑いさざめき――
女だけが口はしに皮肉な笑みを浮かべる。「具体策を」
苦虫を噛み潰した表情で彼女を威嚇する大臣を余裕の表情で追い討ちする様子に、
何人かの重鎮が咳払いをし彼女に自粛を進めたものであるが、彼女はまったく意に介さない。
大臣は深くため息をつき、実に下らぬ、と首を振り、
「わからぬか、私は以前より報告が足りぬといっておる。
足りぬ報告で指示を求めるとは…あきれたものだ」
女はゆっくりと瞬きをしたが、やがてわが意を得たりといわんばかりに瞳をきらめかせた。
「お言葉ですが、大臣。
以前より私の提出した報告書は、承認も押されぬまま文机の隅に置かれたままとか。
私の報告したアイル地方の情勢および奴隷制度の継続に関しての報告内容をご存じないのはなぜなのか、
ご説明いただきましょう。

なお、この件についてはすでに私のほうから陛下に申し上げてありますので、どうぞ、ご安心を」
深々と礼を尽くすものの、その表情はまるでいたずらっぽく、淡々と述べる様子には辺りを払うものがあった。
それは、この女将軍、ミュゼが次なる後ろ盾…今度こそこの国の最高職の寵愛を得たことを暗示するものだった。

こんな感じでどうだ。