>>120
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「…だから…アスナさん、ずっと…」
それは、涙声だった。
シャワーで髪の毛を洗い流した明日菜は、桶に注いだ湯をネギの頭上からどばっと注ぐ。
ネギは、ごしごしと掌で顔を拭っていた。
「ネギ」
「はい」
「だからネギ、こっち向いて」
「はい?いっ!?」
言われるままに振り返ったネギは、
腰に右手を当てて堂々と立っている明日菜を目の当たりにして
慌てて首の向きを元に戻して下を向いた。
「だから、こっちを向くの」
「え?アスナさん?」
「早く」
猛烈な意思のせめぎ合い、何度となく首が前後に振れる心の動きすら、丸で目に見える様だった。
明日菜の念押しを聞いて、ネギは腰掛けを軸におずおずと座ったまま回れ右をする。
「はい、前向いて」
キビキビとした明日菜の口調に、
下を向いていたネギはヤケクソの様にそれに従う。そして、言葉を失う。
「どーお、ネギ?この年頃の半年って早いんだからねー。
あの時よりちょっとは大人になった?」
「わ、分かりません」
頬を染めながらも、ニカッと笑って尋ねる明日菜に
ネギは下を向いてブルブル首を横に振った。
「綺麗だって言ってくれた…」
「え?」