>>195
× ×
「あ、あにょ、やっぱりこう…」
「とーぜん」
「何やってんね…」
ホテル客室のリビングで、ごにょごにょ話し込む脱衣所の声を聞いて小太郎は嘆息する。
「じゃ、頑張ってねー」
脱衣所を出た夏美が、ひらひらと手を振って客室を後にした。
「あ、あの…」
客室内の和室にそっと入った愛衣が小太郎の背中に声を掛ける。
「あの、遅く、なりましたです…」
「ん」
大判の布団の上で、浴衣姿で座ったままの小太郎の背中が返答する。
だが、やはり浴衣姿の愛衣が座る気配を感じて、
小太郎はよっこいしょとばかりに愛衣を向いて座り直した。
「あの…」
「ん」
「あの、ふつつ、ふつちゅっうぅ…」
きちんと三つ指を突いて頭を下げて、頭の中で繰り返していた筈の口上が
半分も進まない内に、愛衣の舌先から口の中に鉄の味が広がる。
「つっ、ごめんなさい。小太郎さんあのふつつか…あっ…」
気が付かない内に綺麗に一本取られた、そんな感じで、愛衣はきゅっと抱き締められていた。