>>198

愛衣は、首を小さく横にふる。
実際、小太郎の指は意外な程に繊細で器用だった。

「あ、あああっ」

小太郎としても、少しでも愛衣の負担を減らしたい、と言うのを最初に考えていたが、
段々、自分の手で愛衣の、あの真面目な愛衣のこの顔を見たい、その思いが強くなっていく。

「あ、あっ、こた、あ、あっ」

静かな部屋に、自分だけに覚えのあった音がぴちゃぴちゃと実際よりもずっと大きく聞こえる。
焼ける様に熱い全身が布団の上で飛び跳ねそうだ。
それは、愛衣にとって好きな男性の前では途方もなく恥ずかしい。
それでも、隠しておけないし隠してはならない自分の姿だと、思考は到底まとまらない。

「こたろ、さ、んっ」
「ええか?」
「はい」

言葉は僅かだった。小太郎が全てを晒す。
愛衣もいい歳、一通りの知識はあるつもりだったが、
最も雄々しい状態を初めて目の当たりにしている以上、全くの平静とはいかない。
やはり、その、自分が多少は知っている自分の中には大き過ぎる気が拭い去れない。
それでもなんでも、全体比としても確かにあんな辺りなどと妙に冷静な考えも現れる。
とにもかくにも、あれは、力一杯自分の事を求めている、
自分に欲情している状態、である事は間違いない。その事に嬉しさも沸き上がる。
小太郎が、震える白い裸体をきゅっと抱き締める。そして、唇を重ねる。
誰に教えられたか、なんて考えるのは嫌な女だ、とチラと考えながらも、
体で示される優しさが愛衣にも伝わる。柔らかなお腹に押し付けられた灼熱の様な感触と共に。
そう、もう我慢出来ないであろう男がこうして愛衣の震えを待ってくれている。
唇が離れ、小太郎の優しい眼差しに愛衣が小さく頷いた。

「い、つっ」
「愛衣、姉ぇ…」

何か言いかける小太郎に、愛衣は一瞬飛びそうだった意識の下でぎゅっと抱き付いた。
そんな愛衣の柔らかさを全身に感じながら、小太郎も又動き出す。