「うち、そんなに色っぽかったん?」
「い、いえその、わたくし決してその様なお嬢様にその様にはい」
「んー、せっちゃんそれてうちに綺麗なお人形さん言うてるみたいなモンやえ」
「いいいえっ、決してその様な、お嬢様は」
「むーっ」
「ん、おほんっ、あ、あの、こ、このちゃんはとても、
とてもお美しい女人にお育ちになられましてはい、お人形などでは到底、及びもつきません」
「んー、大袈裟やけどせっちゃんなら嘘やないな」
「もちろんですお嬢、このちゃん」
力説する刹那に、木乃香がすーっと顔を近づける。
その半開きの瞼から覗く黒い瞳の光は、人を陶然とさせかねない何かがある。
「ドキドキした、せっちゃん?」
「い、いえ、あの、申し訳ございませんっ!
その、お二人のその、神聖な、決して盗み聞きなどするつもりは、ましてああっ」
「刹那さん刹那さああんんっっっ!!!」
「うーん、このベッドてすっぽんでも仕掛けてるん?すぐ出て来るなあ」
正座したままバッとパジャマの前を開いてネギアーティファクトの匕首を逆手に握る刹那と、
その刹那の背後からそのアーティファクトを握る右腕をがっしと抱えるネギが
笑い目で涙を飛ばしている側で、
その二人の背後に現れた白い屏風と刹那の前の三方を眺めた木乃香がのんびりと尋ねる。
「落ち着いた?」
「取り乱してしまいましたはい申し訳ありません」
一段落した後で、ずーんと沈み込んで座り込んでいる刹那の前に、
木乃香がずずずっと前のめりに迫る。
「ほら、綺麗な髪の毛がこんななって」
木乃香が、刹那の乱れ髪を摘んで見せる。
「ほっぺもリンゴみたいに真っ赤になって、
すごーく可愛かったえせっちゃん」
「あ、うう…申し訳ございません」
「なあ、ネギ君」
木乃香の言葉に、刹那が改めてギクリとする。