【水木総合】鬼太郎・三平・悪魔くん【12怪】
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0001名無しさん@ピンキー2011/07/16(土) 22:02:47.46ID:RCGbAFTT
水木作品ならば何でも可。御大見習ってマターリマターリ。SS・イラストよろず投稿千客万来。
猫娘・ネコ娘・ねこ娘から鳥乙女幽子魔女花子、水木ヒロインなら何でも来い。
原作からアニメまで灰になるまで萌えやがってくだちい。
職人様随時募集中。

●【水木総合】鬼太郎・三平・悪魔くん【11怪】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1261805011/l50

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※ SSに関しては>>4参照。読み手も書き手も一度は目を通すべし。
  次スレは、980辺りか500KB使い切る前に検討を
0335◆.QnJ2CGaPk 2012/03/27(火) 21:59:52.13ID:CnvGRvUa
>>332続き

4部続きです。
昨日連投規制のエラー?らしき表示があったので今日も厳しいかも。

・ 鬼太郎×猫娘・総集編
・ お好みに合わせて◆以下NGワード登録なり、スルーよろしこ
・ 基本は何時だって相思相愛♥

誤字脱字、おかしな所があってもキニシナイ(゚∀゚)!!
0336輪廻転生【53】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/27(火) 22:02:13.00ID:CnvGRvUa

「…鬼太郎」
「やぁ、ねこ娘。どうしたんだい?こんな所に呼び出したりして」

「ご注文は?」

店員にに言葉を遮られ、そのまま席に着く。

「鬼太郎、何を注文する?
 ジュースなんて子供っぽいのは、ダメ・だよ?」
「じゃ、コーヒーを」

「かしこまりました」

「本当はケーキも食べたかったりして?」悪戯っぽく笑うねこ娘。
「いや、今日はいいよ。」

暫くして運ばれてきた2つのコーヒーをそれぞれが手にし
ねこ娘は自分のコーヒーをすすりながら訊ねる。

「ねぇ…男の子と女の子が、純喫茶でお茶をするのって、なんていうか知ってる?」
「え?」
「鬼太郎は子供だよね…」
「…自分だって、子供じゃないか…!」

意味ありげなねこ娘の言葉に、少々むっとした鬼太郎は、口調を強めて答えた。

「アタシが子供?」
「そうだよ。」
「あたしがずっと子供のままだと思った?」
「…ねこ娘?」

ねこ娘がアーモンド形の目を細めて笑う。
普段とは違う雰囲気に、何時しか店の空気も変わっていた事に気がつく。

「あたしだって…なれる。綺麗な女の人に……大人に…なれる―――」

ねこ娘の小さな呟きはまるで呪文のように聞こえ、
唱えられるうわ言に併せて目の前の少女は成長していく

「おまえ…ねこ娘じゃないな?!」
「あたしよ?…鬼太郎―――今日だって、
 鬼太郎の家に遊びに行ったのに、鬼太郎居ないんだもん…
 つまらない―――。」

先ほどまでは確かにねこ娘だったのに、目の前に居るのは―――明らかに大人の女性。
本当にこの人がねこ娘だなんて有り得るのか?とっさのことに鬼太郎は身構えた。



「ねぇ…鬼太郎…あたしのコト…もっと好きになってよ―――」



ザワザワ…とした辺りの雰囲気。
やがて、店内全体が歪み始める。
0337輪廻転生【54】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/27(火) 22:03:40.72ID:CnvGRvUa

「うわ―――!!!」
「だって、鬼太郎…大人の女性にしか興味ないんでしょう?
 だからアタシ、大人の姿を手に入れたの。
 ねぇ、鬼太郎…大人になったアタシなら
 好きになってくれる?愛してくれるよね―――?」

向かいの席に座っていた筈の成人女性と化したねこ娘の姿は無く、
目の前には爛々と光る目と裂けた口のみの真っ黒な塊
ザワザワと全身を覆う黒いソレは触手のように伸び、鬼太郎めがけて襲い掛かってきた。





髪の毛―――?!





「髪の毛綱!!」

襲いくる髪には髪で!!対抗し様とした鬼太郎だが、何せ量が違う。
この店に有るもの全て―――店内に居た客さえも髪の毛の創ったまやかしだったのだから

天井から床から壁から、いっせいに鬼太郎に髪の渦が押し寄せる。
目の前のねこ娘は、微動だ似せず目を細めてその光景を眺めていた。

「うふふ…好きよ、鬼太郎―――もう誰にも遠慮なんかしやしないわ。
 鬼太郎はアタシだけのもの、他の誰にも触れさせたりはしない―――」
「ぐぁっ、ねこ娘―――目を覚ますんだ!!」

鬼太郎の叫びも虚しく、視界は髪の毛に覆われ真の暗闇に…
ほんの一瞬、視界を奪われる最後

ねこ娘が微笑んだ気がした―――





「鬼太郎―――!!!」

何者かに取り憑かれ、欲望の塊と化したねこ娘に捕らわれた鬼太郎の元に、仲間が駆けつけ
鬼太郎の救出と共に、ねこ娘から取り付いていたものが離れ、
正気を取り戻したねこ娘の活躍で
印度の羅刹、ラクサシャを倒す事が出来たが、
鬼太郎はこの時初めてねこ娘に全て知られていたことに
知らぬ間に深く傷つけていたことを知った。

何時だって顔を見れば伝えたい言葉が有ったのだが
鬼太郎は自ら自粛していた。
ねこ娘が大事だから、その言葉以外は惜しまなかったし
関係も大切にしてきたつもりだった。

いくら態度で示そうとも、肝心な言葉が足りていなかったのだ。
0338輪廻転生【55】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/27(火) 22:04:41.61ID:CnvGRvUa







事件解決後、鬼太郎はゲゲゲの森に流れる小川にねこ娘を誘い出し、ソフトクリームを手渡した。

「せっかく持ってきてくれたケーキ、台無しになっちゃったからさ。」
「ありがとう。」

一瞬明るい笑顔を取り戻したかのようだったが、直ぐにその表情は暗く沈む。
その理由も解っていたが、肩にポンと手置くとねこ娘がはっとしたようにこちらを振り返った。

「ソフトクリームが溶けてしまう前に食べちゃおうよ。」
「…そうだね。」

川岸に二人仲良く隣り合わせに座り、
素足を川の水につけてブラブラとさせ、暫く無言で食べていた。

鬼太郎は先に食べ終わると、ねこ娘の表情を窺い見る。
何時も明るい笑顔を絶やさぬ少女に、
こんな顔をさせてしまったのが自分だと思うと胸が締め付けられる思いがした。

ねこ娘の心の隙に撮り憑いたラクサシャは許せないが、
その隙を作るきっかけとなった自分はもっと許せなかった。
今直ぐにでも抱きしめて、その愛らしい唇に口付けたい衝動に駆られたが―――

「…ごめん、ねこ娘。」

口から毀れたのは謝罪の言葉。
これまでも幾度と無く、欲望を抑え
このように平静を装い彼女に接してきたのだろう。

でも、二度とあの時のように、恐怖で怯え切った瞳で見られたくなかった。

俯き加減だったネコ娘は目を見開き、弾かれたように鬼太郎のほうを向く。
大きな瞳にはうっすらと涙が滲み、ふるふると力なく首を振った。

「違うよ鬼太郎…謝らなきゃいけないのはあたしなのに―――。」
「いいや違わない。悪いのは僕の方だ、守るべき君をこんなに傷つけてしまったんだから…」
「―――やっぱり、鬼太郎にとってアタシって、小さい子供でしかないんだよね。」
「えぇっ?!何を言って…」

ねこ娘は言葉を躊躇っているのか、下唇をきゅっと噛んだ。

「そんな事無いよ、一体どうしたんだい?」
「だって…鬼太郎あたしの事―――見てくれないじゃない…」

孵変を迎えて時期2年になろうと言うのに、鬼太郎からの積極的な行動は一度も無かった。
何時も一緒で、事件に巻き込まれれば身を挺して庇ってくれた。
優しさに甘えて我侭を言った時も付き合ってくれた。

どんな時でも優しくて…優しすぎて、異性として見てもらえない事が辛かった。
繋がれた手は、幼い妹を守る兄のように思えた。
0339輪廻転生【56】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/27(火) 22:05:50.37ID:CnvGRvUa

「もう隠さなくってもいいよ…アタシが子供だから、
 だから鬼太郎…他の大人の女の人と―――するんでしょう?」

自分を見ていた顔はいつの間にか俯いていて、前髪に隠れて表情は見て取れなかったけれど
震える声に、その瞳は涙に濡れているのだと気付く。
鬼太郎は怖かったのだ。
先の孵変で自分がネコ娘にした罪。
もう、あんな思いはさせたく無かったし、二度と味わいたくなかった。

おばばの妖怪アパートで孵変後の姿を始めて目にした時に再び一目惚れ、
日々を共にするうちに募る愛しさに、現実では適えられぬ欲望を夢に見ることすらあった。

あの日、愛しい想いの影に知った狂気、深い愛故に壊したくなる衝動に、
どうしても自分が許せずに居た。
愛しい少女を手にした自分を抑制する自信が無くて、
激情に流されぬよう自然と距離置いていたのだが、
それが却ってねこ娘を不安にさせていたなんて思いも寄らなかった。

決して隠していた訳ではなかったが、
流石にその口からはっきりと事実を言われれば後ろめたい気分にさせられる。
鬼太郎からすればその場限りで終わる事。
逐一報告するような事ではないのだが、もとより嘘をつくのは上手なほうではない。
ねこ娘に問われれば、鬼太郎は隠す事無くありのままを話してしまう。

但し、一番肝心要の部分をねこ娘は理解しておらず
最悪なことに―――誤解は解けていなかった。

「ち、違うんだ。それは…」
「あたしに言い訳なんてしなくてもいいよ?
 解ってるもん―――誰だって、綺麗な大人の女の人のほうが…
 鬼太郎だってそうでしょう。」

もどかしい―――伝わらない想いがもどかしすぎて、
鬼太郎はたまらずねこ娘の唇を奪った。
想像もしていなかった出来事にねこ娘の頭の中は真っ白になり、
瞳の瞳孔は驚きに縦長に細く伸びる。

「…ゴメン。許されない事も、卑怯なのも解ってる。
 こんなタイミングで君に口付けた僕を軽蔑してくれても構わない。でも―――」

今までずっと胸の中で書け繰り返し言い続けていた言葉を、今伝えずには居られなかった。

「スキ―――だよ、ねこ娘。」

あの時学んだ"言葉”にしなければ伝わらない想い。
解っていたけれど、ずっと自粛してきた言葉。
ねこ娘に何時だって囁き、伝えたかった。
自分がこんなにも彼女を想っている事を

「…うそ」

思いがけない鬼太郎の言葉に、ねこ娘は身体を硬直させた。
0340輪廻転生【57】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/27(火) 22:07:21.86ID:CnvGRvUa

「嘘なんかじゃない。
 何時だって君の顔を見れば”好きだ”と心の中で唱えていたよ。
 でも、僕には口にする資格が無かった。」
「鬼太郎…」
「あの日僕が君にした事は決して許される事じゃない。
 なのに君は優しくて―――。」

いっそ泣き喚いて己の非を罵ってくれた方が楽だった。
その方が情けなく許しも乞えただろう。

けれど、鬼太郎を責める事も無く、
ねこ娘は常に傍で支えて居てくれて、いつも明るい笑顔を絶やさなかった。
その笑顔に幾度と無く救われたことだろう。
その優しさにどれだけ甘えていたのか

「ずっと、ずっと許して欲しかった。
 僕の全てを投げ出して償えるものならば償いたかった。」
「もういいよ、いいのよ…鬼太郎。」

普段は落ち着いて物静かな鬼太郎が取り乱した姿を見て
ねこ娘は思わず抱きしめた。
鬼太郎がずっとあの日の事を背負っていたなんて、
それも自分よりずっと深い傷を心に負って

「もう自分を責めるのはやめて?
 あれは、あたしたちお互いが素直になれなかったのが悪いんだもん。
 鬼太郎だけの罪じゃ…ないよ…。」
「ねこ娘…」

「でも、鬼太郎…すごく怖かったんだよ?」
「―――ごめん…でも、苦しかったんだ。
 君が他の誰かのものになったと思って…気が違いそうだったよ?」

あの時、素直に話せなかった事が、伝えられずに居た想いがこうして言い合える。
本当に、何故あの時それが出来なかったのだろう。

「あたしも…だよ?だから―――他の女の人に触れちゃ…いや」

「誓って触れてないよ、誰にも。
 確かに誤解されるような行動だったし、証明できるものは…何もないけど。
 彼女たちを慰めるために、幻術をかけていただけなんだ。」

鬼太郎はホトホト困り果てた様子でねこ娘に訴えた。
この最悪の誤解だけは何としてでも今!解決したかった。

「ほんとうに?」

瞬きをしたら滴が溢れそうなほど潤んだ瞳で、ねこ娘は鬼太郎を見つめた。
ねこ娘だって本当は鬼太郎は潔癖だと信じていたかったのだ。
でも、ほかの女性と一緒に居たという事実がねこ娘を不安にさせていた。
0341輪廻転生【58】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/27(火) 22:11:10.27ID:CnvGRvUa

彼女はきっと、見た目と同じく穢れを知らぬ純真無垢な少女のままなのだろう。
ただ、鬼太郎には一つ気になることがあった。
以前は時より姿を消すことがあった。
それが何を意味するものか知ってからは、
ずいぶん残酷な事をしてしまったと思い悩んでいたのだが―――

「…ところで、ねこ娘。
 その…君は、季節の―――は、
 大丈夫なのかい?」

「季節…の?」
「その…ほら、春とかに…
 僕は必要ないのかな?…って。」

「…にゃっ!?」

ようやく鬼太郎の言った言葉を理解したねこ娘は
全身を硬直させて赤面した。
今頃になって鬼太郎と触れた唇が熱くなり、早鐘を打つ鼓動が耳まで響く。

急に鬼太郎の隣に座っているのが恥ずかしくなって
彼の顔をまともに見られそうもなく、スカートの裾を握りしめる。

「う…うん…まだ、まだなの。」
「―――そう。」

気にしていた事だけど、ねこ娘が一人苦しんでいないのならば、それは良かった。
良かったけれど―――

ものすごく残念そうに溜息をついた後、
鬼太郎はねこ娘の顔を下から覗き込んで言った。

「でも、これからは我慢なんてしないよ?
 君の本心も知ってしまったしね。
 ねこ娘は”自分を見て”って言ったけど
 僕が今までどんな目で君を見ていたか
 どれだけ君を好きなのか教えてあげる。」

「やだぁ…恥ずかしいよ。」

ねこ娘は鬼太郎を紳士だと思っていたから
この大胆発言に驚きを隠せなかった。
反射的に両手で顔を覆おうとしたが、その手は捉えられ
思わず鬼太郎のほうを見た。
彼は静かに、真っ直ぐにねこ娘を見つめていた。

「僕ももう逃げたりしないから、ねこ娘も逃げないで?
 君を誤解させたり、悲しませるような事は…二度とやらない。
 約束するよ?誰よりも君が好きだから。」
「ん…あたしも、鬼太郎が…好き。誰よりも―――」

夕日に照らされ長く伸びた影がゆっくりと一つに重なる。
互いを大切に思うが故に、相手を傷つけてしまっていた事を知り、
それを乗り越えた二人の結びつきはよりいっそう硬くなった。

                                糸売く
0342輪廻転生【57.5】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/27(火) 22:18:03.14ID:CnvGRvUa
コピペミスしました。
57と58の間に下記文章が入ります。

―――
>>340続き

「本当だよ、それだけは信じてほしい。
 だって、君じゃなきゃ…
 ねこ娘以外じゃ僕の体が反応しないんだ。」

「うん…?」

鬼太郎は上目づかいにねこ娘の表情を探るが
彼女は彼の言った意味を理解できていない様子で
キョトンとしている。

>>341
0343名無しさん@ピンキー2012/03/28(水) 02:06:55.87ID:lKHHwaLN
すごく納得してしまう
5期に行って実写も…読んでみたい
0344◆.QnJ2CGaPk 2012/03/28(水) 21:49:59.29ID:w6d+ok8Y
長編にお付き合いいただき有難うございます。

>>343
5は消化できたらいつか続きとして書いてみたいです。
過去にも投下しましたが、鬼太郎の他に蒼兄さんや黒ちゃんがいて
一筋の妄想が難しいのが困りもの
しかも5は、他にもいろいろ要素が盛りだくさんで
個人的にはオカマと魔女っ娘がツボでした。

映画verは3部張りに切ない感じになっちゃいそうです。

>>341続き

引き続き4部です。

・ 鬼太郎×猫娘・総集編
・ お好みに合わせて◆以下NGワード登録なり、スルーよろしこ
・ 基本は何時だって相思相愛♥

誤字脱字、おかしな所があってもキニシナイ(゚∀゚)!!
0345輪廻転生【59】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/28(水) 21:51:29.76ID:w6d+ok8Y







時代に大きな影響を受けたのか、それとも例の件が強く尾を引いたのか、
一見、冷静で落ち着きのあるように見えた少年、鬼太郎は
他者の痛みのわかる優しい心を持ち合わせていた。

移り行く時代に翻弄される仲間達、新旧の交代。
何かを守る為に命を落としていった仲間、人に伝わらぬ思い―――

遭遇する事件の解決が何時も晴れ晴れしたものとは限らず、結末に疑問を抱いたり
やり切れない思いを抱える事もあった。
後にこれらの経験は妖怪アパートを発展、
ゲゲゲの森の存在自体を大きく変える動機となる。

ゲゲゲファミリーばかりではなく、
ゲゲゲの森や人間界に住まう妖怪達の現在を直に見て知り
人との共存を果たすのは決して容易い事では無いと解っていても、
心根優しい鬼太郎だからこそ、悪夢に襲われ妖怪ノイローゼを発症した。
それは、妖怪代裁判で打ち破られた陰謀に加担していた百ん爺の逆恨み

『睡眠』は3大欲の内の一つに数えられ、
妖怪といえども生きていくためには欠かせない休息の時。
一日の疲れを癒し、精神の均衡を整える為にとても重要な役割を果たしているものでもある。
それを『悪夢』に変えられ、
夢の中での出来事があたかも現実であるように、肉体にも影響を及ぼす。

目の前で眠る鬼太郎の身体には、
次々と決して軽いものではない不自然な傷跡が浮かび上がるのだった。
ねこ娘は堪らず、鬼太郎の傷に自分のハンカチで手当てをしたのだが、
このことで鬼太郎が何か閃いたようだった。

夢の中で戦う事を決意した鬼太郎は、
戦いに備えゲタとチャンチャンコを身につけ眠についた。
ねこ娘は傍らで、鬼太郎が放ったゲタを拾い足に履かせるという事を繰り返していたが、
事態は好転するどころかどんどん深みに堕ちて行くばかり。

初めは戦う事で、抜け道を探した鬼太郎だが、
変らず繰り返される悪夢と睡眠不足。
肉体や精神の健康を奪われ、やがて妖怪ノイローゼを発祥する。

悪夢に対し恐怖するようになり、休息であるはずの睡眠をとる事を精神が拒み、
眠ることによって精神を安定させる事が十分に出来ぬ鬼太郎の精神はやがて蝕まれていく。
このままでは拙いと、井戸仙人に相談し、
その原因と解決の糸口を授かり、向ったのは恐れが淵。

ここでは己が抱いた恐怖が、悪夢の如く実体化し襲い掛かってくる。
悪夢によりすっかり精神が弱っていた鬼太郎は、忘れていた。
何時如何なる時も『一人ではなかった』事に
常に仲間が支えていてくれた。

自分の傍らには、最愛の存在―――ねこ娘が微笑んで居てくれた。

それを思い出させてくれたのは、ねこ娘が手当ての時に巻いてくれた、彼女のハンカチ。
何時だってそうだった、釜なりのときも妖怪塔の時も、彼女は自分を信じて支えてくれた。
0346輪廻転生【60】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/28(水) 21:52:24.19ID:w6d+ok8Y

此処へ来る時にも、自分が必ず立ち直って帰ると信じて、皆で待っていてくれている。
帰らねば、何を自分はこんなところでやっているんだ。
約束したではないか「二度と悲しませるようなことはしない。」と

自分を信じて待っていてくれる仲間の居るゲゲゲの森へ
ねこ娘の元へ帰らねば―――


「僕は、僕は”ゲゲゲの鬼太郎”だー!!」


鬼太郎は己を取り戻し、父と共にゲゲゲの森にあるゲゲゲハウスに帰還した。


「お帰り、鬼太郎―――!」


ゲゲゲハウスにねこ娘の声が響く。
胸に抱きついてきたねこ娘の背に腕を回し、鬼太郎は静かに微笑む。
ねこ娘は瞳を潤ませ、鬼太郎の顔を見上げた。

「ただいま、ねこ娘。…ゴメン、ねこ娘に貰ったハンカチ、
 恐れが淵で無くしてしまったみたいなんだ」
「いいよ、鬼太郎が無事で帰ってきたんだもん。鬼太郎…」

ねこ娘は鬼太郎の胸に顔を埋めた。
幻ではない鬼太郎の存在に、
確かに帰ってきたのだと実感すると涙は溢れて止まらず、
鬼太郎の服に吸い取られていく。

「ありがとう、ねこ娘。君のおかげで帰ってこれた。
 あのハンカチのおかげで、僕は大事なものを見失わずに済んだんだ。」

ねこ娘のハンカチは恐れが淵で失ってしまったが、
自分を信じて待っていてくれた仲間の存在を、
もう忘れることは二度とないだろう。
自分は一人ではない。今も、これからもずっと。

それから直ぐ、立ち直った鬼太郎を深い悲しみに落とす事件や
八百八狸の大騒動もあったが、鬼太郎が挫けることは無かった。

散々絡んできたぬらりひょんも、
妖怪王の一件妖力を使い果たしたのか、
悪さをする力も失われたようで、妖怪がらみの事件はめっきり減った。







「―――静かだね…」



ゲゲゲハウスに遊びに来ていたねこ娘が、とても退屈そうに言う。
平和な日常に、目玉の親父も子啼き爺の所へ将棋を指しに行ったのか
その姿は無く、鬼太郎と二人きりのようだ。
0347輪廻転生【61】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/28(水) 21:53:31.41ID:w6d+ok8Y

「そうかい?たまには良いんじゃないかな…」

鬼太郎は本を片手に返事をする。
その様子をそっけないと感じたのか、
ねこ娘は床に転がると鬼太郎のほうを見た。

「鬼太郎…こんなに天気が良いんだから、外に出ようよ。」
「う〜ん…」

本がよほど面白いのか、
返事を渋る鬼太郎の視線は開かれた頁に釘付けで、
痺れを切らしたねこ娘は顔を覗き込む。

「ねぇってばぁ…」
「ん…」

本に集中している様子の鬼太郎に、
ねこ娘は頬を膨らませてふててしまった。

鬼太郎はねこ娘に気取られぬよう時より本から目を放しては、
彼女の様子を楽しんでいるようだった。
その証拠に、ねこ娘がこちらを見ようとすると、
何気ない顔で本に視線を戻す。

ねこ娘は、暫く天上を見つめ何かを考えていたようだが、
良案でも思いついたのか、鬼太郎の真横に寝転がり、脇に頭をつける。

「お、おい…ねこ娘。」

予想外の行動に、鬼太郎は少し驚いたようだったが、
口調は照れた感じだった。

「だって詰まんないんだもん。
 だからあたしも鬼太郎と一緒にするから、本読んで?」
「しょうがないなぁ…」

ねこ娘と視線の合った鬼太郎は、
にこりと微笑むと腕枕し、二人で本が見えるように開いた。

暫く声に出して読むうちに、
ふと気がつけばねこ娘は鬼太郎の腕の中で寝入ってしまっていた。
穏やかな寝息を立てるね彼女を起こさぬよう、
本をそっと置くと小さな身体を抱き寄せ、鬼太郎も瞳を閉じた。

何時か、妖怪と人間が分かり合える日がくれば、
何時でも穏やかな時を二人で過ごすことが出来るのだろう。
どんなに遅い歩みだとしても彼女と共に大人への階段を翔けて行きたい。
そう願いながら、ねこ娘の頬に口付けたのは、最後の戦いの前だった。


「妖怪天国ツアーに行かねぇかい?」


春も近づいたある日の事。
怪しげなツアー話をねずみ男が持ってきた。
砂かけと子啼きの付き添いと進めもあって、父のツアー参加を快く承諾した。
0348輪廻転生【62】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/28(水) 21:55:11.96ID:w6d+ok8Y

何故ならば、自分は既に前の地獄旅で母に再会を果たしていたし、
何よりも好いた娘が傍に居る今、父の気持ちが何となくわかるからだ。
実際見送りに行ったときの列車はちゃんとしたものだったし、
平和そのものだったから留守を守るぐらいなんでもないと思っていた。
なにより、ねこ娘と一緒だったから。

しかし、それが死神とヒ一族の巫女の罠だとは知るよしも無かった。
そして再び母に助けられようとは。

父と入れ替えにゲゲゲハウスに現れた、
ヒ一族の巫女扮する偽母に気がつかず、毒入りの食事を食べてしまい苦しむ鬼太郎。
異変を察知し現世に来た夜行さん、
そしてねこ娘は成す術が無くただうろたえるだけであった。

其処へ現れたのが、地獄にしか咲かぬ毒消し草の花一輪とアゲハ蝶。
虫や生き物とも心通わす鬼太郎だが、
不思議な偶然よりも鬼太郎の危機を救うほうが優先された。

そして、「妖怪天国ツアー」そのものが怪しいと知り、
父と同行した砂かけ達を追って地獄へ向った。

白蛇と化したヒ一族の巫女に苦戦する鬼太郎の前に、
再び現れた蝶にまたしても危機を救われた鬼太郎は、
蝶の背後にぼんやりと人の姿を見た。
母の名残だという、人形を渡されて鬼太郎はあの蝶は自分の母だと悟った。

あの時、母が現世に残した言霊は、
大気と共に見えなくとも常に夫と子供を守っていたのだ。
わざわざ「妖怪天国ツアー」などに参加せずとも、妻は常に傍に居た。
会いに行こう等と、今思えば馬鹿な事を考えたものだ。

病により愛した妻を失い、
自分は唯一病に犯されていなかった目玉に魂を宿らせ今の姿になった。
ゲゲゲの森と呼ばれるようになったこの場所に腰を落ち着けてから
どのくらいの時が経ったのだろうか?

ふと、高い天井を見上げると茶碗風呂の湯がチャポンと言う音を立てた。

”あなた、あまり長湯をしては身体に毒ですよ?”
「―――うん?」

瞳を閉じれば目蓋の裏に、自分を心配して覗き込む妻の姿が見え、返事をする。
例えその姿は見えなくとも、妻は何時だって傍に居たのだ。
あの時、妻の身は失われ魂は地の底に引き戻されてしまったが、
互いを思う気持ち、我が子を愛しむ思いは同じだった。
身を置く世界の違いはあれど、心は常に一つであったと気が付いた今は、
こうして妻の存在を感じることが出来る。

今は亡き愛妻は、幽霊族の女ではなく異種族の女であった。
ただ、幽霊の血を引く奇妙な血統に生まれた女では有ったから、
人間よりは近い種族の出であったのかもしれない。

しかし、既に数少なくなっていた幽霊族の生粋の血統を守ってきた一族からは
当然婚姻を反対された。
祖先が地上に現れた人に追われ、
争いごとを避けるように隠れ住い此度まで生きてきた一族は、
酷く人間を恐れて居た為に、僅かに人の血を残す妻を娶る事は許されなかった。
0349輪廻転生【63】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/28(水) 21:56:22.15ID:w6d+ok8Y

一族よりも妻を選んだ男は慣れ親しんだ地から離れ、
一族が恐れて近寄らなかった人界へと降りたったが、
人目に触れるように生活を始めた。

この世にたった二人きり、並々ならぬ苦労はあったが幸せだった。
生まれ故郷を去った後に、一族が全滅すると言うショックな出来事もあった。
なかなか子が授からずに悩んだ時もあったが、
妻と共に過ごした掛替えの無い日々は本当に幸せだった。

最愛の妻を失うと同時に、授かった我が愛息子…鬼太郎
異種族の妻の腹から生まれた、
幽霊族の血を継ぐ我が息子は強靭な肉体と能力を授かり、
不死とも言える命を得て父子共々いつしか妖怪と呼ばれるようになった。

外で仲良く戯れる童子童女を見ていたら、ふと己の時の歩みを思い出した。
あの時、自分が妻に惹かれた様に、息子もまたあの少女に惹かれるのだろう。

それは生粋とはいえぬ、互いの存在の為なのか、
内に流れる唯一の同族の血…人の血が本能的に呼び合うのかは解らない。
ただ、二人が…他の誰もが気づく事の無い、
目に見えぬ奇妙な縁に結ばれている事だけは確かだった。

異性の幼馴染として繋がれていた幼い手は、
やがて恋人同士として繋がれるようになるのだろう。
そして自分が妻を娶ったように、一生を添い遂げる伴侶と為るに違いない。

この世に生を受けた時に付けた名に恥じる事無く、
強く逞しく育った息子の傍らには幼馴染の少女が妻として寄り添っって行くのだろう。
自分が選んび、今まで歩んできた道も、
息子が選びこれから歩もうとしている道が正しいかどうかは解らない。

父は只、息子が選んだ一族の行く末を若い二人にに託し、見届ける事しか出来ない。
繁栄しても、例え滅びの道を進むにしても。

それが「死」を拒絶してまで現世に止まった自分の定めなのだ―――

”私達の子は―――逞しく育ってますね。”
「うむ―――あれに勝る宝などない…自慢の息子じゃよ。」

風に撫でられ、妻の髪がさらりと揺れる。
そよ風に運ばれてきたのか茶碗風呂には桜の花びらが一枚。

”あら、近くに花が咲いているのかしら?”
「かもしれんのう。」

チャポン…手ぬぐいでぬぐうと湯船が揺れ水音が静かに響く。
今まで歩んできた道のりが正しかったとは言い切れないが、
自分が選んだ道が間違っていたとは思わない。

なぜならば―――

「わしらは素晴らしい息子に恵まれた。そうは思わんか?」
”そうですね”

おぼろげに妻が微笑む。
妻を選んだことで、素晴らしい仲間、
そして何者にも代え難い大切な宝物である息子を授かる事が出来た。
0350輪廻転生【64】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/28(水) 21:57:30.92ID:w6d+ok8Y

事件など無い静かな時に身を浸し、幸せに酔う目玉の親父であったが、
孵変の時が近いのを長年の経験から察知していた。
約十年おきに興る人間界の大きな変化は、人に身近な妖怪ほど影響を受けやすい。
避けられぬ運命、来るべき時には、又歩む道を選ばなければならなのだ。

時の流れを肌で感じ、
新たな時代の訪れを予感しつつある目玉の親父とは対照的に
鬼太郎とねこ娘は、何も知らまま
変わらぬ日々を過ごしていた。

ゲゲゲの森を抜ける薫風にピンク色のリボンを靡かせ少女が一人。
手土産を持って向かうは、ゲゲゲハウスに居るであろう少年の元へ。

「こんにちは、鬼太郎居る?」

木の梯子を上がり、
そっと簾を持ち上げて覗くと床の上で読書中の少年の姿があった。

「やぁ、ねこ娘。良い所へ来てくれたね。」
「”いい所”って…?」

言われた意味が解らず、小首をかしげる少女に対して少年は微笑んで手招く。
ねこ娘は招かれるままゲゲゲハウスに入り、
手に持っていた袋をちゃぶ台の上に置いた。

「この辺に座ってくれるかい?」
「いい…けど?」

少年は自分の頭の近くへと少女を座らせ、
その膝へと頭を乗せて仰向けになる。

「有難う。」

驚きに瞳を丸くしたが満足そうな顔で見上げられ、
何も言う事が出来なくなってしまう。

「…何の本読んでるの?」
「これかい?この本は、薬草に関する本だよ。
 父さんが井戸千人に借りた本なんだけど、面白くてね。
 ところで、ねこ娘は僕に用事があったんじゃないのかい?」

「あ…うん。
 えっとね、オババが桜餅作ったから鬼太郎にって。
 あたしも一緒に作ったんだよ。」
「有難う。後で一緒に食べようか。」
「うん!」

ねこ娘の膝枕、仄かな甘い香り。
眠気を誘われて鬼太郎は大きなあくびを一つする。

「そういえば、今朝から父さんの姿が見えないんだけど
 ねこ娘、知らないかい?」
「あれ?親父さんならオババ達と一緒に出かけたよ。
 それでオババが朝から色々作ってて
 あたしも一緒にお手伝いしたんだよ。」
「…そう。」

眠気に襲われた鬼太郎の朦朧とした返事に、
お喋りに夢中になり始めたねこ娘は気が付かない。
0351輪廻転生【65】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/28(水) 21:58:40.50ID:w6d+ok8Y

「でね、でね。桜餅の餡子を煮るのに
 オババと交代で二日もかけて作ったんだよぉ。
 粒餡と漉し餡と両方!
 すっごく美味しく出来たんだから。」

「それは…楽しみ、だね。」
「でしょ?桜の葉っぱはね、
 去年オババと塩漬けにしたやつなんだよ。
 で、オジジが川沿いで遅咲きの桜を見つけてね
 親父さんと桜の木下でお酒でも呑みながら
 将棋しようって事に成ったらしいの。
 それでオババが、折角だから作った桜餅を持って
 お花見しようって…鬼太郎?」

いつの間にか鬼太郎は安らかな寝息を立てて寝入っており
本を持っていた手が、床に滑り落ちた事でねこ娘は気が付いた。

「もう鬼太郎ったら、直ぐ寝ちゃうんだから…。」

そう言って寝顔を見れば、見た目相応の幼い寝顔で思わず頬が緩んでしまう。
ねこ娘は知っている。

かまなりに妖力の源である髪を奪われ、
高熱に魘され床に伏せっていた時、妖怪ノイローゼに係り、
悪夢が現実となって肉体に及ぼす苦痛に歪めた寝顔に、
どうする事も出来ずただ側で見守る事しか出来なかった。

己の非力さを思い知らされた苦い過去、
忘れる事など出来るはずも無い。
だからこそ、鬼太郎の穏やかな寝顔を見守ってあげたいと、
眠りを妨げるような事はしたくなかった。

戦いを好まず、穏やかで他愛の無い日々を好む少年は、
生まれ持った凄まじい力で権力を振るうわけでもなく、
他者の為に、人や妖怪が共に仲良く暮らす為ならば、
自分の能力を惜しまず発揮し、好まざる戦いにも自ら挑んだ。

こうして無邪気な寝姿を見ていると、
鬼太郎がとても凄い妖力の持ち主だとは思えない。
最も、妖怪を見た目で判断する事は間違いなのだが。

それよりも、ついお喋りに夢中になってしまい、
鬼太郎の変化に気づけなかった自分を省みる。
鬼太郎が身を挺して庇ってくれる事が多々有った。

多分、無意識だろう。しかし、何時も鬼太郎には、助けられてばかりだ。
そんな自分は、少しでも鬼太郎の助けに成る事が出来て居るのだろうか?
ふとそんな思いが過り、自分より長い髪の毛をそっと撫でると鬼太郎の寝顔が綻ぶ。

「…ねこ、むすめ。」
「や、やだっ…鬼太郎ったら。
 一体どんな夢を見ているのよ。」

思いがけない少年の寝言に、ねこ娘は耳まで赤く染め上げ、目を細めた。
膝を鬼太郎に貸し、身動きできないねこ娘もやがて睡魔に襲われ、
ウトウトと微睡始めた。

春が過ぎ、初夏が近づきつつあるゲゲゲの森には
若葉の香りを含んだ爽やかな風が吹きぬける。
0352輪廻転生【66】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/28(水) 22:00:36.63ID:w6d+ok8Y

幾ら暖かな陽気になってきたとはいえ、風はまだまだ冷たさを含み
素足を撫でられれば、その肌寒さにぶるりと身震いし、意識が目覚めた。
いつの間にか転寝をしてしまった事に気が付いて、
寝てしまう前何をしていたのかと
寝ぼけ眼で見上げると、小さなピンク色が目に映る。

「…桜?」

鬼太郎は思わず呟いた。
時期的に、咲いている桜はあるだろうがゲゲゲの森の桜は、ほぼ散ってしまい
今は新緑の葉桜と成りつつある。
ただぼんやりと、瞳に見える桜色に無意識に手を伸ばす。

「鬼太郎?」

指先に触れた柔らかな感触共に、聞きなれた声が耳を擽ると
意識が息に目覚め、視界が開けると自分が触れたのは、ねこ娘の唇だと気づく。

そうだ、ねこ娘の膝枕で読書をしている最中、
本の内容から全く違う話に変わっていき
彼女の話し声を聞いているうちに、
心地のよい声と窓から差し込む暖かな陽だまりに眠気を誘われたのだ。

当のねこ娘は、寝ぼけた鬼太郎の指が唇に触れ、驚いて名を呼んだ様だった。
そしてその指はまだ、ねこ娘の唇に触れており、
目覚めた鬼太郎は驚き顔のねこ娘と視線が合うと
軽く微笑み返し、桜色の唇を指先でなぞる。

「ごめん、桜の花弁かと思った。」
「もう、鬼太郎ったら…
 話の途中で寝ちゃうんだもん。」

軽く頬を膨らませて怒ったように見せるねこ娘の様子が愛らしくて、
つい笑みが漏れてしまう。
そうは言いつつも、寝入ってしまった自分を
起さずに休ませてくれる彼女の優しさを解っていた。
解っていても、ついつい彼女の優しさに甘んじてしまう狡い自分が居る。

「ねこ娘の膝枕が余りにも具合が良くてさ。」
「にゃっ!」

にっこり微笑んでねこ娘を見上げると、ねこ娘は頬を赤らめて視線を反らした。
彼女が怒っては無いであろう事は肌で解る。
見た目は幼い子供のままの二人だが、付き合いは決して短くは無い。
ねこ娘の反応に、鬼太郎はくすくす笑いながら問いかける。

「…で、さっきの話の続き。
 何処までしたかな?」
「えぇっ…っと。
 オジジが川沿いで遅咲きの八重桜を見つけたから
 オババが今度はそこで花見をしようって…」
「ああ、そうだったね。
 それで父さんも出かけていたんだっけ。」
「そうだよ、鬼太郎。思い出した?」

コロコロと鈴を鳴らすような笑い声が心地よい。
桜色のねこ娘の唇をぼんやりと眺めながら、
先ほど触れた指の感触を思い出し、胸が高鳴る。
0353輪廻転生【67】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/28(水) 22:03:37.29ID:w6d+ok8Y

瑞々しいサクランボの様にぷっくりとした唇は、
一体どんな味がするのだろうか?

幾度と無く味わった唇は魅力的で、飽きることが無く
邪な考えを誘いがちだ。
しかし、今日は甘いに違いない。
だって、彼女からはこんなにも甘い香りがするのだから。

柔らかいのに弾力のある、ねこ娘の桜唇。
魅惑的な味を確めるべく奪う事は、
その気に成りさえすれば今直ぐにでも出来る事だが、
この穏やかな一時を壊す気には到底なれない。

ねこ娘から仄かに漂う甘い香りが再び眠気を誘う。
鬼太郎は先ほどねこ娘の唇を触れた指先で自分の唇を触れると、
再び隻眼を伏せた。

閉ざされた瞳の奥、全くの闇の中舞うのは一片の桜。
それは幾度と無く闇の深淵に呑まれそうになる自分を救ってくれたねこ娘そのもの。
恐れヶ淵を乗り越える事が出来たのも、ねこ娘が居たから。
彼女が居たら、希望が持てた。自分自身を見失わずに居る事が出来た。
だから今は闇を恐れる事無く漆黒の寝床に身を沈められる。

ねこ娘の温もりを肌に感じながら、鬼太郎は深い眠りに付くのだった。









                               糸売く
0354輪廻転生【68】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/29(木) 21:55:02.61ID:+CxORJF4




『運命の時』それはある日突然、何の前触れも無く訪れる。



木々が鬱蒼と茂るゲゲゲの森の、
更に奥深くに有るゲゲゲハウスへ続く道。
その道筋を知る数少ない者が一人、とぼとぼと歩いていた。

辿る足取りには力が無く、
歩みに合わせて赤いスカートの裾は淋しそうに揺れ、
常に明るい彼女を知る者ならば、全くの別人に見えたかもしれない。

ほぼ毎日通ったこの道は、
昨日まではウキウキするような楽しさが有ったと言うのに、
気分のせいか何時までたっても辿り着けない。

心なしか森に拒まれ、迷宮を彷徨っているのではないかとさえ思われた。
大好きな者の家へと続くこの道が、今日は暗く遠く感じる。

重い足を引きずりながらも、
ゲゲゲハウスが目に映れば安著の溜息が漏れたが、
気分が明るくなる事は無かった。

家に上がる梯子の袂で、
不安を携えたアーモンド形の瞳は部屋の入り口を縋るように見つめていたが、
意を決したように梯子を上っていった。

そっと簾を手でよけ、遠慮がちに中を覗き、
鬼太郎の後姿を所在を確かめる。
外に居た時に、既に彼がいることはにおいで感じ取ってはいたが、
目でも確認しておきたかった。

「…こんにちは」

やっと絞り出したような弱々しい声は、泣き声に変りそうに聞こえた。

「ねこ娘?どうしたんだい。」
「…」

二人は浅い仲ではない、
声だけでねこ娘の身に何かが起こったであろう事を感じた。

それでも勤めてにこやかに、
笑顔で振り返ったが瞳に映った彼女の顔色は蒼白で、
鬼太郎は立ち上がるとねこ娘の手を取り部屋へ招き入れ座らせたのだが、
ねこ娘の指定席である鬼太郎の隣に腰掛けても、
ぎゅっとつかんだスカートの裾を凝視していて、こちらを向いてはくれない。

普段の彼女らしからぬ態度、
かなり思いつめた様子に何か父に大事な相談事でも有ったのだろうかと問い掛けてみる。

「今日は…父さんに何か用事が有ったのかい?」

0355輪廻転生【69】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/29(木) 21:55:57.93ID:+CxORJF4

ゲゲゲハウスでは日常的な光景である目玉の親父の茶碗風呂を楽しむ姿は無く、
机には伏せられた茶碗だけがあり、
こなき爺に呼ばれて化け烏と共に出かけたばかりだと鬼太郎が説明したが、
ねこ娘はただ首を横に振った。

父に相談しに来たのではないとすると、話があるのは自分だろう。
俯いた顔は前髪に隠れて表情は読取れず、
ねこ娘から話してくれる様子は無い。

もともと余り気が利く方ではなく、
口が達者なわけでもないから、
ねこ娘の心を解き解す事の出来ない自分が歯がゆく感じた。

掛けるべき言葉が見つからず、肩に手を置いたはいいが、
如何する事も出来ずに無言のまま顔を覗き込むと、不意にねこ娘と視線が交わった。

綺麗なアーモンド形の瞳には、
瞬きすれば直ぐにでも零れてしまいそうな程に涙が浮かんでいる。
鬼太郎は、はっと息を呑む。



…以前にも、同じような事が無かっただろうか?



しかも、一度ばかりではない。
嫌な予感がする。
もしかして…

「…ねこ娘…もしかして…”兆”が表れたのかい?」

俯いたねこ娘の小さな肩が、びくりと竦んだ。
―――図星だ。

ねこ娘が落ち込んでいる原因が漸く解ると緊張が解け、
鬼太郎は掴んだ肩を引いて胸に抱きとめた。

「…大丈夫だよ。ねこ娘がそうなるなら…僕だって時期になるさ。」

なんて事だろう。
つい先日、この先を夢見てお互い語り合ったばかりだというのに―――





0356輪廻転生【70】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/29(木) 21:56:49.17ID:+CxORJF4

『…髪結び猫?』

鬼太郎の発した言葉を、ねこ娘はそのまま疑問で返した。
彼女が口にした妖の名は古い文献に隠される様に記されていた。











「おや?」

ある朝、数少ない冬物と春物の入れ替えをしていた鬼太郎は
一冊の古書に気が付いた。
すっかりホコリがかぶっていた本を両手で持ち上げ、
木戸の窓を開ると埃を吹く。

「ゲ…ゲホッ…こ…この本は?」

吹いた埃に思わずむせ、焼けた緑色の本の表紙に目をやった。
以前ねこ娘が持ってきた猫族妖怪に関する書物であった。
猫仙人の時にねこ娘がわざわざ持ち寄ってくれた書物であったが、
父のうっかりした一言で怒らせてしまいそのまま返し忘れていたのだ。

結局あのときのことはきちんとした謝罪もせずに、
ねこ娘がその場に駆けつけてきてくれたので、
有耶無耶になってしまっていた。

見つけてしまった以上、
借りたこの本も何時までも持っているわけには行かないが、
返すにも”いわく”があるゆえに気まずい。
さてどうしたものかと何気に頁を捲った時に、ふと違和感を感じた。

その頁に手を止めると、
厚さ的にも作りも他のページと大差がないが、
明らかに不自然だと第六感が告げる。

鬼太郎はふとした閃きで、その頁に妖気を送ってみた。
すると、違和感を感じた頁が送った妖気に反応して見る見る剥がれて2枚に増えたのだ。

「こ…これはっ…」

そして、隠されていた開きの頁を見て固唾を呑んだ。
態々他の頁と変わり無い仕様にしながら、何故隠さねばならなかったのか
そこに描かれていたもの…とは?

「鬼太郎、片付けは終わったのか?」
「すみません父さん、本を返しに行ってきます。」
「…ん?おい鬼太郎!!」
0357輪廻転生【71】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/29(木) 21:57:44.63ID:+CxORJF4

鬼太郎は、その本を見せる事で
あの時不快な思いをさせてしまった事を思い出させてしまうのでは?と
不安で躊躇っていたのだが、そんな事はどこへやら
本を閉じると着物の入れ替えをしていた事も忘れて、
ねこ娘のところへ駆けていった。


ねこ娘の住まい―――現在は砂かけが管理する妖怪アパートの一室に在る。
一気に駆けてきた鬼太郎は両手を膝につき、
ぜいぜいと息をしながらヘアのドアをノックした。

「は〜い。」

中からは部屋に住まう幼き住人の声がして、部屋の入り口が開かれた。

「あれ、どうしたの鬼太郎?」

呼吸が落ち着かずに、まだ肩で大きな息を付く少年を見て不思議そうに名を呼んだ。

「こ…この本、ねこ娘に返そうと思…って…」
「あ〜コレ鬼太郎の家に忘れてきてだんだぁ。」

ねこ娘はその本を置いてきた理由などすっかり忘れているようだった。

「ありがと♥鬼太郎。」
「ちょ…まって…凄いもの…見つけたんだ。」

その言葉に一瞬猫目を大きく見開き、
ぱちくりと瞬きしそのまま少年を部屋に招きいれると再び戸は閉ざされた。
部屋に招かれた少年は、家主に進められるわけでもなく
ちゃぶ台の周りに置かれた座布団に鎮座する。
その場所は既に彼の定位置で、座った少年の目の前に少女は湯飲みを置いた。

置かれた湯飲みは客用のものではなく、
少年専用の湯飲みでこの部屋には他にも
いくつか少年のものらしき物が幾つかあるようだ。

「…で、凄いものって…なぁに?」

好奇心旺盛な子猫のように、瞳をきらきらさせて少年のほうへ身を乗り出した。
少年は漸く落ち着いたらしく、指を挟んであった本の頁を開く…が

「あれ?確かに開いていたページに指を挟んで持ってきたはずなのに…」
「この頁に書かれている猫妖怪がどうかしたの?」
「いや、この頁じゃないんだ…そうか、妖気に反応して開くんだな…」

鬼太郎は最初にこのページを開いた時と同じように再び妖気を送り込むと、
先程の隠し頁が再び開かれる。

「…ちょ、ちょっと鬼太郎…これって…」
「さっき家でこの本を見つけた時に気が付いたんだ。
 どうやら妖気を送る事で見られるようなんだ。」

二人の目の前に開かれた頁には妖怪文字で「髪結び猫」と書かれており、
隣頁には墓場で火の玉を周りに侍らせ髪を結う、
17〜8位の妖艶な美女が描かれていた。
0358輪廻転生【72】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/29(木) 21:58:31.89ID:+CxORJF4

纏う衣装に時代の違いはあれど、
一度その姿を直に見ているから鬼太郎は知っていた。
その時は何も知らなかったから、羅刹の見せた幻影かと思っていたが―――
でもここに描かれているのは…

「…君、だと思うんだ。」
「待ってよ鬼太郎。
 あたしは丹波の生まれではないし、
 彼女が最近現れたのは大正時代が最後よ?」

ねこ娘は鬼太郎の幼馴染…
大正時代にはまだ生まれても無い存在であるからだ。

「うん、恐らく”彼女”はもう別のものになっている可能性が高いと思う。」
「それって、孵変で変わってしまっているって事?」
「…多分、ね。
 それに、この本は僕達が知っている部分とずいぶん違う事も記されているようだし。
 元々僕達妖怪は文字という文化はなくて、
 妖怪文字が使われ始めたのも人が文字を使い始めるようになった後だし…
 そういった意味で人間に依存している部分がこういった書物に矛盾を生んでいるのかも…」

元々自然のものから生まれた妖怪には「文字」と言う文化はなかった。
彼らは陽気で祭り好きではあったが、勤勉ではない。
しかし、人から妖怪になるものがポツリポツリと生まれ始めた頃、
全世界規模で妖怪文字は急速に広がっていった。

「もしかして、呼応しているってそういう意味なのかしら?」

「呼応している?」
「ええ、本を借りる時に聞いたの。人の情報に呼応しているって。
 だから、人の持つ記録に書かれた事がこの辞典に反映されているのかもしれない。
 だとしたら、あたし達が知っている情報との相違があってもおかしくないわ。」

「じゃぁ、この頁が隠されていたのは?」
「彼女が今現在は存在しないから…じゃないかしら?
 他にもそういった頁があるんだと思う。
 でも鬼太郎は何故あたしだと思ったの?」

「一度…見たんだ。」
「…え?だって存在していたら隠す意味なんて無いんじゃ?」
「今は居ないよ。
 君自身は見ていないから解らないと思うけど、
 ラクサシャに捕り憑かれて成長した君と瓜二つなんだ。」

聞かされた羅刹の名に不可解な出来事を思い出したのか、
大きく見開かれた目の瞳孔が縦長に伸びる。

”お前は―――ねこ娘じゃないな?ねこ娘はどこだっ!!”

目の前で変化していったねこ娘を見ていたはずなのに、
目の当たりの光景が信じらず咄嗟に吐いたその言葉が、
ねこ娘を傷つけラクサシャの妖力を増大させる結果となった。
0359輪廻転生【73】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/29(木) 21:59:15.22ID:+CxORJF4

「あの時は何も知らなかったから…
 でも、この本の記述を知っていたら
 あんな酷い事言わなかったかもしれない。」

「でも鬼太郎…彼女は化けるほうの種族みたいよ?」
「反映しているのは人の文献なんだろう?
 僕は、君と同じ側の妖怪だと感じたよ。
 時代を超えて度々姿を現すようだから、
 恐らく継承型の妖怪…じゃないかな。」

「継承型?」
「うん。
 何らかの理由で、この妖怪の名と姿は
 受け継がれて残ってきたんだと思う。」

「…だったら嬉しいな。」

ねこ娘は頬を赤らめて俯いた。

「…でも、もし鬼太郎や親父さんと同じ種族の女の子が見つかったら、
 大人になって…ね?」
「ねこ娘…」

鬼太郎はため息混じりに名を呼ぶ

「だって…石女じゃない保証はないし
 今度孵変する時は獣の姿になるかもしれない…」

「ねこ娘っ!」

今までに聞いた事のない怒りのこもった鬼太郎の呼び声に驚き、身を振るわせる。

「…ご、ごめん。
 驚かせるつもりは無かったんだ。
 けど…ねこ娘、君は僕との婚姻を破棄するつもりなのかい?」
「えっ…?」

―――それは、以前ねこ娘に頼まれて案内した場所での出来事だった。

「おーい、ねこ娘。こっちだ、こっちにおいでよ!!」
「あ〜んっ!まってよ、鬼太郎…!!」

辺り一面に色とりどりの花が咲き乱れる丘へ、ねこ娘と鬼太郎は来ていた。

「ほら、こっち、こっちだよ。」

ねこ娘は鬼太郎に呼ばれるまま、鬼太郎の後を追う。

ふと、嘗て枕返しに見せられた夢…を思い出した。
悪夢に変わる前に一瞬見た夢に、今の光景はとてもよく似ていて…

山頂に漂う白い霞が、風に吹かれて流れる様が現実感を更に遠ざけている。
もしかしたら今、夢を見ているのではないかと思う。
0360輪廻転生【74】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/29(木) 22:00:15.71ID:+CxORJF4

「ほら、ごらんよ。この花はまだ摘んでいないだろう?」
「あ、ほんとうだぁ〜。」

そう言って鬼太郎は一本の花を手折ってねこ娘に渡した。
既にねこ娘の腕の中には、いろんな種類の花束が出来上がっている。
ねこ娘は、手渡された花を一緒に束ねると、
両手でもち、片足を軸にくるりと回って見せた。

「うふふ、まるで花嫁さんのブーケみたい。」

言葉には深い意図はなく、
ねこ娘は束ねられた花の甘い香を胸いっぱいに吸い込む。
一面の花畑、鬼太郎と自分のほかには誰の姿もなく
まるでお姫様にでもなったような気分だった。

「ね、鬼太郎。こうすると花嫁さんぽくない?」

花に囲まれて、赤いスカートの裾を翻し満面の笑みを浮かべるねこ娘の姿に、
鬼太郎は少し不安になった。

「ねぇ、ねこ娘。」
「なぁに?鬼太郎。」

「君は、誰のお嫁さんになるの?」
「えっ…?」

想像すらしていなかった問いかけに、ねこ娘は聞き返してしまった。

「花束を抱えて花嫁さんのつもりだったんだろう…隣には、誰がいたの?」

時より見せる鬼太郎の無表情な顔。
その表情からは何を考えて質問されているのか、全く読み取る事ができない。

問われて、ねこ娘は困ってしまった。
お嫁さんになれるのなら、鬼太郎のお嫁さんになりたい…でも、そう応えるのは少々躊躇われた。

「…」

鬼太郎は弱気な気持ちを悟られまいと普通にしているつもりだったが、
それはまるで能面のようになっていて、
ねこ娘から見れば「鬼太郎だ。」…と応えにくくさせていた。

普段こんな事を鬼太郎に聞かれたことなんて無かったから、
夢ではないかと言う思いが再びねこ娘の脳裏をよぎった。
夢ならば恥かしがる事も無いと思うが、
例え夢でも相手に嫌がられるのはショックに変わりは無い。
もし、これが悪夢に変わったら…


「ねぇ…」


鬼太郎は答えを催促する。
自分だと言う答えを言って欲しい。

「あたし…あたしは…鬼太郎のお嫁さんになれたら…いいなーって…」
0361輪廻転生【75】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/29(木) 22:01:14.97ID:+CxORJF4

突っ張るように下に伸ばした腕の先の花束に視線をやれば、自然と俯く。
言ってしまって恥かしさの余りに、ねこ娘の頬は耳の先まで赤く染まっていた。
やはり夢なんかではない現実に、ねこ娘は身体の熱が急速に上がるのを感じた。

「じゃぁ、なるかい?」

期待していた答えに、鬼太郎はねこ娘の手を引く。
そして、左手の薬指に手折った花を巻いた。
淡いピンク色の花の指輪だ。

ねこ娘は薬指にはめられた花のリングに、潤んだ瞳を見開く。
これは「ごっこ」遊びなのだろうか、それとも約束の「しるし」なのだろうか…?

花のリングをはめた指を、胸の前で握る。

「こんなのは、人間がやる儀式でしかないけれど。」

そう言って鬼太郎は「ふふふ」と笑った。
ああ、そうか
これは指輪の交換の儀式なんだと、
ねこ娘もまた鬼太郎が自分にしてくれた花と同じ花を花束から抜き取ると、
鬼太郎の左の薬指に結ぶ。
自分の手を取り、同じように花を結ぶねこ娘を見て鬼太郎が言う。

「…でも、ね?僕は本気だよ。」
「えっ…?」

漸く花を結び終えたねこ娘が、鬼太郎を見上げる。
何時に無く真剣な眼差しで、花のリングを結んだ手を頬に添えられるとねこ娘は、
ビクンと身を震わせて瞳を閉じた。

「今此処で、ねこ娘を僕のお嫁さんにするよ。」
「…鬼太郎。」

ねこ娘は閉じた瞳をそっと開いて、再び鬼太郎を見た。
そもそも、彼等妖怪が夫婦になる為には人間のような書類手続きなどは必要ない。
互いの合意が得られればそれでいいのだ。

しかし、周囲からも正式に認めて貰うためにはそれなりの条件は有ったのだが…
今現在、幾つかの条件を除けば、彼等は夫婦とはそう変わりない関係であるとも言え
周囲からも二人の関係は黙認はされていた。

「そりゃ、ねこ娘も僕も幼すぎるけど…
皆に認めてもらえるまで待っていられるほど、
僕は気長にしていられないよ。」

突然の結婚の申込みに、驚いたねこ娘は答えを返す事が出来ずに居た。
それは自分たちがもっと幼かった頃に交わした、
遠い未来の約束なんかではない。

”いつか僕のお嫁さんになってくれる?”
”うん!”

まだ夫婦になる意味すらよくわかっていなかった頃、よく交わした言葉。
正にその言葉が此処で現実になろうとしている。
0362輪廻転生【76】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/29(木) 22:04:25.91ID:+CxORJF4

「…」
「ねぇ、ねこ娘…答えてよ。
 僕はもう…君を僕だけのものにしてしまいたいんだ。
 先の約束だけじゃ…不安でし方が無くて…」

「それとも、君を束縛しようとする僕は…嫌かい?」
「…そ、そんな事!!」

まさか鬼太郎が自分の事をそこまで深く想ってくれているなんて、
これっぽっちも知らなかったのだ。
むしろ不安だったのはねこ娘も同じだ。
事件の手紙で呼び出されれば、先にはいろんな異性との出会いも有る。
魅力的な大人の異性に比べれば、格段に劣る自分に、
何時か鬼太郎が愛想を尽かすのでは無いかと思っていた。

「だって…あたし、ぜんぜん美人じゃないよ?」
「そんな事無いさ、ねこ娘は誰よりも可愛いよ。」
「お転婆だし…猫化しちゃうし…普通の女の子じゃないんだよ?」
「知っているよ。僕だって、普通の男の子じゃないさ。
 それに…僕はそんなところも含めて、ねこ娘の全部が好きなんだよ。」
「皆にだって、鬼太郎のお嫁さん…って認めてもらえないかもしれないよ?」
「僕のお嫁さんを決めるのは皆じゃない。僕のお嫁さんを決めるのは僕自身だろう?
 僕は…僕がねこ娘をお嫁さんに欲しいんだから…ね。」

それが答えだということも解っている。
でもちゃんとした返事を聞きたくて、
”大丈夫、ねこ娘だ誰よりも美人になるよ。僕が保証する。”そう耳元で囁いて、額を合わせた。
地面に置かれたねこ娘の手の上に自分の手を重ね合わせて、返答逃れ出来ないようにして。

「鬼太郎―――。」
「答えてよ…ねこ娘、僕のお嫁さんになってくれるかい?」


「…―――はい。」

漸く得た返事に、鬼太郎の口元が嬉しさに歪む。
そのまま身を重ねるように唇を併せ、花畑に二人の身が沈んでいく。

「だ、駄目だよ…鬼太郎…もし誰かが来たら―――。」
「大丈夫だよ。花以外誰も見てやしないさ。
 それに…此処に咲いている花たちが、今日の証人だからね。」

そう言われてねこ娘の頬がますます赤く染まる。

「ふふふ、だってねこ娘がいけないんだよ?
 僕の事、こんなに夢中にさせて…
 だから、ねこ娘の目が他に向かないように、
 僕と同じぐらいに虜にしなくちゃね?」

これ以上鬼太郎の虜になってしまったら
一体自分はどうなってしまうのだろうか…という思考は、
再び併せられた口付けによって蕩かされる。
色とりどりの花が咲き乱れる丘で、
少女が一人の少年に娶られた―――

それは紛れも無く二人にとって現実であった筈だ。

                                糸売く
0365輪廻転生【77】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/30(金) 21:46:03.39ID:a4gOlBVm
>>362続き







「約束、しただろう?
 君は僕のお嫁さんになるって返事…したじゃないか。
 そりゃぁ父さんたちに比べれば僕達はまだまだ子供かもしれないけど、
 僕はあの日から夫婦として君と居たよ。」
「忘れてないよ。
 けど…あたしだって何時大人になれるかわからない。
 髪結び猫を継ぐのはあたしじゃないかもしれないじゃない。」

「名は変わるかもしれないが確かに君だ。
 大人の姿になった君を僕は見たんだ。
 なれないなんて…言い切れないだろう?
 一緒に大人になるのも、僕の妻として隣に居てくれるのも、
 ねこ娘…君だから僕は望んだんだ。」
「…」
「君はもっと自分に自信を持ったほうがいいよ。
 他の誰でもない僕自身が選んだんだ、間違いなんかあるもんか。
 それに…一族の血を引くものが他に居るなら、
 別に子を成せばいいじゃないか。
 父さんだってそう言うと思うよ?」

ねこ娘は幽霊族が滅んだ理由を知らない。
彼らの血を引く鬼太郎も父から詳しい話を聞かされていたわけではなかったが、
その理由にはうすうす感づいていた。

「鬼太郎…」
「血も一族も関係ない。
 だから君は、僕と一緒に居ればいい。
 僕たちは家族なんだから。」

鬼太郎の言葉に、ねこ娘の胸はきゅんとした。
さとこママの家族の絆が戻った時、羨ましくて思わず呟いた言葉。

”―――家族って…いいなぁ―――”

あの時も”僕たちの家へ帰ろう”と鬼太郎は言ってくれたけど
ずっと覚えていてくれた事、現実に家族であると言ってくれた事に
ねこ娘は幸せだと感じた。

ああ、やっぱりこの人なのだと
鬼太郎じゃなきゃ駄目なんだと改めて実感した。

「ありがと、鬼太郎。
 あたし…大人になったら、鬼太郎の赤ちゃん…いーっぱい産むね。
 親父さんや鬼太郎が寂しい思いなんかしないぐらいたくさん…ね?」

微笑んだ瞳からは嬉し涙が伝う。
現実的、尚且つ大胆なねこ娘の発言に
鬼太郎は顔を赤らめたまま微笑み返す。
0366輪廻転生【78】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/30(金) 21:46:50.75ID:a4gOlBVm

「ああ、きっとだ。」

涙をぬぐい手に手を重ね、
二人の身までもがゆるりと重なりひとつとなる。

隠された頁の違和感に鬼太郎が妖気を送り込み
頁が開いたのは偶然だったのだったのか、
或いは必然だったとも言える出来事だったのではないだろうか?

互いにゆっくりと成長の道を辿るのか、
孵変により急激な成長を遂げるのかは解らない。
只己が儘である為に彼らは変わる。

時にはその名も姿も捨てて―――







ねこ娘に現れた兆は「孵変」の兆。
時代が大きく揺るぐ時に本人の意思とは全く関係が無く突如現れ、
本人が望んでも望まなくてもやがて強制的に行われる儀式。

性格は「孵変」後の姿に多少影響されはするが、
時代に合わせ、姿形は変容しても魂は常に一つ。
当然、記憶も心もそのまま引き継がれる。

それでも、己を媒体に新しい自分の姿が形成される様を眺めながら、
今の自分が徐々に失われていく様子、
自分が自分でなくなる瞬間の恐怖たるや尋常ではない。

妖怪として既に数回の「孵変」をねこ娘は経験していたが、
恐ろしかった。

「孵変」の後に今の自分は居ない。
今までの自分を鬼太郎はずっと愛してはくれたけれど
「孵変」後にどうなってしまうかも解らない。
どんな姿になってしまうかも解らないのだ。

「…きっ…たろ…っ…ら…な…で…」

ねこ娘の喉の奥から搾り出すようにして発せられた声は、
既に涙声に変っていて言葉をきちんと発する事が出来なくなっていた。

ずっと我慢していたものが一気に溢れ出したのだろう。
堰を切ったようにねこ娘は鬼太郎のチャンチャンコを握り締めて泣きじゃくった。
泣き過ぎて止まらなくなった嗚咽を繰り返すねこ娘を、
鬼太郎はただ優しく抱きしめているほか無かった。

「…僕がねこ娘の事…嫌いになるわけが無いじゃないか…。
 だから、ねこ娘も…僕が変わってしまっても嫌いにならないで?」

ねこ娘はまだ泣いていて、
しゃくりあげていてとても言葉に出来なかったから、
コクコクと何度も頷いた。
0367輪廻転生【79】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/30(金) 21:48:34.32ID:a4gOlBVm

お互い解ってはいる、好きなのは外見では無い。
外見だって好きではないといったら嘘にはなるが、お互いの心があっての存在なのだ。

ねこ娘は不安を吐き出し、
泣くだけ泣いたら落ち着いてきた様子で、
時より肩を震わせるものの鬼太郎に身を預けたままじっとしていた。

不意に鬼太郎の顔が近づけば、自然と瞳が閉じ、
目尻に溜まっていた最後の一滴が頬を伝い落ちる。
鬼太郎はそれを唇で拭い、目蓋に口付けた。

「…大丈夫、ねこ娘なら変ってしまっても今と同じぐらい可愛いよ。」
「…!!」

その言葉に、ねこ娘はアーモンド形の瞳を大きく見開いた。
微笑んだ鬼太郎と視線が合うと猫目が細く縦長に伸び、頬が徐々に赤く染まっていく。

表れた痕は腹から生えるようにして身体を乗っ取って行く。
自分と自分が一対にして向き合う瞬間…「孵変」は終わる。

古い自分と新しい自分と向き合う一瞬。
自分でありながら飲み込まれていく恐ろしさは何度味わっても馴染む事など無い。
そうして妖怪は時代に合わせ、これからも幾世紀も生きていくのだ。

「…」

鬼太郎はくすくす笑いながら、身を強張らせているねこ娘を抱き直した。

実は、幽霊族の末裔である鬼太郎とその父は
自らの意思で「孵変」することの出来るものであった。

それはの親子だけの秘密で他に誰も知る者は無い。
ただ、ネコ娘だけは先の件からうすうす感づいている様子だったが、告げてはいない。
だから、自ら「孵変」を望まなければ人よりは成長が遅いものの、
やがては大人へと成長する事が可能なのだ。
しかし、彼はそれを望まなかった。

ねこ娘が新たな時代に合わせて生まれ変わるのならば、自分も生まれ変わろう。
そうして、ねこ娘と同じ時期に同じ数だけ繰り返した。

鬼太郎にとっては「孵変」の恐怖よりも、
ねこ娘と運命を分かつ事のほうが、
失う事のほうが何よりも怖かった。

今までずっとそうしてきたように、
これからも常に彼女と同じ目線で、同じ時を生きて行きたい。

この世界の全て、ありとあらゆる者に平和と言う調和が訪れれば、
ゆっくりでもいい共に大人への階段を歩んでいけるのだろうか?
父と母のように、いつなれるとも解らぬがそれが彼の望み。

幽霊族と人間と言う異種族であった両親が自分を生したように、
幽霊族と猫族といつか次世代を生しえるように。
いつか必ず訪れるとも解らぬねこ娘の成長を、ただひたすら待っているのだ。

無意識のうちに少女を抱いた腕に力が篭り、
どうしたのかとねこ娘が鬼太郎の顔を覗く。
0368輪廻転生【80】 ◆.QnJ2CGaPk 2012/03/30(金) 21:50:13.64ID:a4gOlBVm

表情のどこかに不安を感じ取れば、
鬼太郎も自分と同じ想いを秘めているのだろうかと思うと、
なぜか安心して…自然と笑みが零れた。
鬼太郎が自分を落ち着かせるようにしてくれたように、
そっとその身を抱きしめた。



「大好き…ずっと…ずっと…鬼太郎だけ」



ねこ娘の囁きに、鬼太郎も「僕もだよ。」と言葉を返す。
やがて訪れる彼らの変化に、ゲゲゲの伝説は新たな幕を開けるのだ。






                           糸冬
0376名無しさん@ピンキー2012/04/13(金) 23:05:22.39ID:hjhbVUx6
一応内容を一部予告します
マジで見たくないなら言って下さい

「ねこ娘陵辱ものリレー」リメイク版
ただし強姦はないで途中で抵抗
結末はリレー解答予定です
0377名無しさん@ピンキー2012/04/14(土) 16:34:10.50ID:a0A5X9+5
またか、、、
予告の誘い受け具合から嫌な予感はしてたんだ
0378名無しさん@ピンキー2012/04/14(土) 17:15:08.05ID:Gp2A0SZU
>>376-377
「ねこ娘陵辱ものリレー」はトップバッターだったから
リメイク版1号になるのは別に不思議ではない
ただ、いっそのこと初期スレの投下作は10作くらいリメイクしてほしいかな?
時代も変わったし・・・
0379名無しさん@ピンキー2012/04/15(日) 20:39:53.33ID:bG2fb4dl
>>376
ネコ娘には犯された負い目を感じさせるSSだったから
せめて健全なエッチでリメイクされたらな
0380名無しさん@ピンキー2012/04/17(火) 21:27:50.12ID:qDIGfSIP
新年度なので、新しいネ申の降臨も期待したいが
王見ネ申の糸売きを著しく投下願いたい。

前スレの続きも気になるが
>>251の続きも気になる
0381名無しさん@ピンキー2012/04/20(金) 18:58:37.87ID:sGVoujYm
現ネ申の続き
前スレの続き
>>251の続き
ネコ娘陵辱ものの続き

全部見たいってのはダメ?
0384名無しさん@ピンキー2012/04/25(水) 21:17:56.34ID:SmpjIrI7
春のせいか「手」の回の手首や「髪様」の髪のように
鬼太郎のちんこも取れて思い通りに動かせるんじゃないかという妄想が脳から離れない。

野沢鬼太郎は本編で手とか取れる描写があったから普通にできそうだが
『実用』しそうなのは何だか別の鬼太郎なイメージ……
0385名無しさん@ピンキー2012/04/29(日) 21:15:32.74ID:7/1PCgn3
>>384
2猫の場合、性的な意味で弄繰り回し、もんどりうつ2鬼太郎
3ネコの場合、本体が無くても好いようにされてしまう
4ねこの場合、性的な意味でなく、興味津々で弄繰り回しそう
5ネコの場合、装着したまま人間界やバイトへ
0386名無しさん@ピンキー2012/05/02(水) 04:47:59.42ID:cg1eofJd
現ネ申の続き、前スレの続き、>>251の続き、ネコ娘陵辱ものの続き
まだかな?

0387名無しさん@ピンキー2012/05/08(火) 20:38:50.42ID:1LBEFRZU
現ネ申
前スレの続き
>>251
ネコ娘陵辱もの

これらはそれぞれ何期のネコだったかな?

038911-819 ◆F/SJSONz34bK 2012/05/17(木) 23:59:06.42ID:+dYIxE1B
三期大奥パロ 諸般の事情で中断しておりました、すいません。
またボチボチ書きますので投下いたします。

前回終わりは
>>251

*******
注意:
    適当時代物
    エロ本
    今回濡れ場なし

です、2レス程度投下します。
0390三期大奥パロ ◆F/SJSONz34bK 2012/05/18(金) 00:00:35.71ID:+dYIxE1B
※※※

姿を見ず、声を聞かなくてもネコ娘の身辺から鬼太郎の気配が消えたわけではない、
鬼太郎はこの城の若君なのだ、消息が耳に入らない方が不思議な事だった。

自分から問うことも出来ず、側の者同士が話す言葉の中に、
次の間へ出入りする物売りの声に鬼太郎の消息を求める、
”若君は元服した” ”御輿入れが決まったらしい”
喜ばしい事として語られる知らせにネコ娘の心はきしんだ、
鬼太郎は大人になって……誰かと結婚するのだ。
胸が掻きむしられるような気持ちになって、ネコ娘は……好きだという気持ちが
ただ暖かいものだけではないということを深く思い知ったのだった。

※※※

鬼太郎は未だ訪ねては来ない、不安と嘆きを感じながらも
塞ぎこむ間を与えないかのようにネコ娘の日々は忙しくなっていった。
手習いの時間が増えた、側に新しい者が増えて慌ただしくあちらこちらへと物を動かす、
時にはネコ娘を日に何度も風呂に入れて着替えさせなどする。

風呂は嫌いではなかったが、その間控えている者達が見るのが気にかかる、
まるでネコ娘の体の何かを確かめるように視線が走る、
白い肌の上を、伸びやかな手足を、ふくらんだ胸を、ほっそりとくびれた腰を、
きゅっと締まって丸い尻を、へその下のうっすらとした陰りを……
近ごろ円やかさを増したネコ娘の裸身を撫でるような視線は
落ち着かない気分になるのだが、意義を申し立てるのははばかられる雰囲気だった。

※※※
0391三期大奥パロ ◆F/SJSONz34bK 2012/05/18(金) 00:02:08.75ID:MMSC3ofn

手習いの間にぽっかりと空いた時間、ネコ娘は何をする気にもなれずにぼんやりとしていた、
以前はこんな時は鬼太郎が訪ねてきたのだ……と思うと胸が痛い、
あの時の鬼太郎はとても恐ろしかったのに、未だ鬼太郎を嫌いだとは思えなかった、
”きっともう来ない””考えるだけ辛い”そう思うのに考えるのを止めることはできない、
笑う顔が、頼もしい手が、名前を呼ぶ声が、みんな好きだったのに、
きっともう逢えないのだと考えると涙が零れそうになって慌てて目を瞑り
うたた寝でもしているように見せようと脇机にもたれて俯くとそっと声が掛けられ、
反射的に上げた顔を巡らせると衝立の陰からおばばが手招きしていた。

差し招かれた衝立の中には大きな文箱を持った古参の侍女が控えていて、
促されて座るとネコ娘の膝の上に色とりどりの錦絵が広げられ……
広げられた錦絵に描かれたものを理解した瞬間に卒倒しそうになった。
目もあやな錦絵に色とりどりに描かれていたのは
子細に描かれた男女の様々な交合の図だったからだ。


腰を抜かしたネコ娘の背を支えた砂掛けのおばばが「しっかりせい」と
叱咤し、「お気を強く」と侍女が宥める声をかける。

そう言われても、鬼太郎とその父以外の男とはほとんど会うことなどない
ネコ娘からすれば男の腰から生えた大きくて恐ろしげなものが
女の体へ突きつけられ、貫きなどしている様はいかにも異様で恐ろしく見える。
絵巻の中の行いにあの日の恐ろしかった鬼太郎が思い起こされて
膝の上の絵を払い落とし、嫌々をしながら逃げようとしたが押しとどめられた。

「男女の間ではあたりまえのこと、恐ろしいことではありません」
確かにあのあと体には傷の一つ、血の一筋もついてはいなかったから
そうなのかもしれないが自失するほどの衝撃が忘れられたわけではない、
見ることを拒むように固く目をつぶって硬直しているネコ娘の様子に
おばばがため息をつき、多少怖がるのは仕方ないが大丈夫かのう、と零すのに
まだ床入りまでには間がありますから、と応じた侍女が
ネコ娘の耳元に「若君がおいでになります」と囁きかけた。

驚きに目を見開いたネコ娘に侍女が笑って頷く、
すっと……あの奇妙な熱が出た時も側にいた者の
言葉の意図が分からずにネコ娘は呆然としながらも考えを巡らせる、
鬼太郎は……誰か遠くから来る人と結婚するのになぜ来ると言うのだろう。
「こうして見ればまだ幼くてかわいそうな気もするのう」
「でもいつかはなさることなのですし、大丈夫ですよ」
おばばたちの話す声がどこか上滑りして聞こえる、
自分は鬼太郎のためにここにいたというのに……鬼太郎のために
何かできるというのはかつては嬉しいことだったのに、
先にある別れを知ってしまった今では胸が締め付けられるようだった、
まだ、何か鬼太郎のためにできることがあるのだろうか……。

侍女が順を追って語る『作法』によると絵のようなことがあるが
身を任せよ、とのことらしい、『大人になったのだ』と言っていた
鬼太郎の目が思い出される。

きっとこういったことが鬼太郎が大人になるために必要なことなのだろう、
そういう役目をする者がいる、と人の話に聞いたこともあった、
何かがすとんと腑に落ちたような気がして、ネコ娘はなんとか頷いたのだった。


※※※(つづく)


次は濡れ場あり(予定)
0393名無しさん@ピンキー2012/05/18(金) 22:41:31.62ID:Jxr2Ginr
ネ申キテタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!
0398名無しさん@ピンキー2012/06/28(木) 07:57:08.79ID:qudHVTp9
現ネ申
前スレ
ネコ娘陵辱もの

この3つの続きはまだでしょうか?

0399名無しさん@ピンキー2012/06/28(木) 22:52:33.52ID:y4hcHY92
3つとも続きが気になる
どなたかオリジナルでも投稿願います
0406名無しさん@ピンキー2012/08/20(月) 00:07:28.67ID:K1rqZPE9
保守代わりに
(いやな人もいるだろうけど)
2525でいい感じのキタネコ動画見つけた。
sm15744674
歴代鬼太郎と歴代猫娘(寝子含む)の動画。
0408名無しさん@ピンキー2012/08/27(月) 23:58:49.62ID:Tuj5vGbL
お化けさんたちはお盆であちこちの肝試しにコソッと混ざったりして
(彼らとしては)大忙しだったろうから今ごろは温泉にでも出掛けてるよ
041011-819 ◆F/SJSONz34bK 2012/08/31(金) 21:58:40.05ID:HO4y0qHh
随分間が開きましたが三期大奥パロディ投下します。

前回は>>389-391
その前>>242-251
最初 >>235-237

注意
  大奥パロディ(適当時代物)
  回想回

です、3レス程度です
  
0411三期大奥パロ ◆F/SJSONz34bK 2012/08/31(金) 22:00:09.03ID:HO4y0qHh
※※※

祝い膳の支度がされるのを待つ間、鬼太郎は落ち着かない気分であぐらをかき直した、
方法は他にもあったはずなのに何故あんなことをしてしまったのだろうと思いながらも
それを正すことが出来ないまま今日まで来てしまったのだ、
ネコ娘と最後にあってから二月が過ぎてしまっていた。


父に呼ばれたのはその日より数日前の事だった、また何か解決しなければならない
事件でも起こったのかと思ったのだがそんな様子はなく、話しにくそうにしている
父の様子を不思議に思いながら促されて座ると不意にネコ娘の話を切り出されたのだ。

ネコ娘は熱を出していて会わせてもらえなかった、父もきっと心配なのだろうと思ったのだが……
そうではなかった、鬼太郎が『大人になった』のと同じようにネコ娘も大人になったのだという、
鬼太郎が精通を迎えたのは数ヶ月前、恥じることではないと教えられてはいたが
ソレが起こる時の戦いの高揚にも似た気分の高まりと、その後の虚脱感はどこか後ろめたいものだった
―ネコ娘もそんな風になるのだろうか……という考えに至るか至らないかのうちに父の問いかけが降ってくる。

「お前はネコ娘のことをどう思っておる」
「どう……って……」

今まで考えたこともなかったので何とも間抜けた返事が出た、
どこか幼い考えだったが、会いに行けばいる、というのが当たり前で考えたことが無かったのだ。

「そうじゃな、順を追って話すことにしよう…… お前、ネコ娘がここへ来た時のことを覚えておるか」
首を横に振る、お互いに手を引きあってどこへでも行った、この森のあらゆる場所にネコ娘との日々があった、
今まで当然だと思っていたことの中に始まりやひょっとしたら終わりが埋もれているのかも知れない、
と考えると背筋が薄寒かった。

「ネコ娘はお前たちがほんの幼い頃に猫の一族から預かったんじゃ」
口を噤んだまま頷く、いつまで、とか何のために、とか口を開いて問うのは恐ろしくで出来なかった。

「最初は猫族からこちらと縁組したいという申し出じゃった」
「じゃが、それはお前に来た話だったので、お前のことをわしが決めてしまうのは
良くないことだと思って話を預からせてもらったのじゃ」
0412三期大奥パロ ◆F/SJSONz34bK 2012/08/31(金) 22:01:37.56ID:HO4y0qHh

―(目玉の回想)―

猫族からご子息の妻を、という申し出を受け、送られた乗り物に乗り、
途中からは名も知らなない宿場を過ぎて猫の暮らす街へ訪れて歓待を受け、
大きな虎猫から見せられたのがネコ娘だった、垣間見た先にいた幼い娘は
ぱっちりした目をして、健康で活発そうな明るい笑顔の娘だった。

目玉の妻、鬼太郎の母は偶然に見初めた女性だった、
気立ての良い女、申し分の無い妻だったが釣り合いの取れない身分であり、
自身が病を得、妻が子を残して亡くなった時、野合(正式でない結婚)などという
不道徳の報いであるという流言があったことを知っている。
妻を迎えたことを後悔したことも、恥じたことも無かったが
父としては息子がこのようなことで苦労せず、幸福になってほしいという思いもあった。


今までこういった申し出が無かったわけではないが、まだ先のことと断ってきた。
実のところ生まれてすぐに親が決めてしまうことも珍しいことではないのだが、
歩き始めたばかりの我が子の未来を定めてしまうことには抵抗があった。

だが、今は生垣の向こう側で気づかずに遊んでいる童女を熱心に見ているのだ、
謎の多い猫族の申し出に応じて赴いたのは内情をうかがい知る事ができるのかという
下心だけだけではないのだろう。

「いかがですか」
生垣の向こうを見つめている目玉へ声が掛けられる、大きな虎猫――猫又が太い葉巻を咥え、
一本をこちらへ差し出していた、受け取るために向き直って声をあげる。

「あなたはあの子と私の息子に縁があると思われるのですか」
「だからこちらへお招きしたのです」

目玉は一抱えほどある葉巻を受け取って考え込んだ、
断るのであれば招かれて来る必要はなかった、娘たちの良し悪しを値踏みするつもりは無かったし、
知れば断りづらくなるのも確かだったので今までは詳細など何も見ずに断ってきたのだ。
幽霊族に明確な予知の力などないが、何かの予兆を感じてきたのかもしれない、目玉は深く息をついた。

「わしは知恵者などと言われておりますが判らぬことなど山ほどあります、先のことなどなおさらで、
良いお話だとは思うのですがわしがこの子らの行く末を決めてしまうことは良くないと思うのです、
わしの子がこの子を見、自分で決められるようになるまでこのお話、預からせていただけませぬか」

猫又は大きく頷いた
「それでよろしいでしょう、また乗り物を用意しますのでそれまでおくつろぎください、
必要な物があればおっしゃっていただければいつでも用意いたします」


――気がつけば猫目の少女と共に帰途についていた、どうにも不思議な体験だったが
そのうちに経った二人の子供――鬼太郎とネコ娘が遊ぶほほえましい姿が見られるようになってからは
何か不可思議な力が働いていたにしろ招かれたことは良かったのだと思うようになっていたのだった。


―(目玉の回想は終わる)―
0413三期大奥パロ ◆F/SJSONz34bK 2012/08/31(金) 22:04:55.18ID:HO4y0qHh

「お前も大人になり、元服するべき齢だ、お前がよいと思うのなら申し出を受けて
お前たちを夫婦にしようと思っておる、大きな事なので今すぐにとは言わないがお前が決めなさい」

鬼太郎は大きく息をついた、父が決められないと思ったことを自分が決断するという事には重圧があった、
よく知っていると思っていた少女のことを何も知らなかったのだと思うと
暗闇に放り出されたような不安があった、判断のための材料が欲しくて父に問いかける。

「猫の町というのはどんな……どこにある場所なんですか」
「わしも一度招かれたきりじゃ、折々に送られて来るものはあるがどこにあるのかはわしにもわからん」

「もし、ひょとしてネコ娘がそこに帰りたいと入ったら……」
自分の発した言葉が恐ろしくなって鬼太郎は口を噤んだ、
だが言葉は取り戻すことが出来ないものだ、それならばネコ娘は帰すことになると、
また、無為にここに留め置くことは一族が良しとしないだろうということを告げられて目の前が暗くなる、
気づけばネコ娘と話してきますと言い置いて父の前から飛び出していた。


ネコ娘の住まいへ息を切らせて訪れたがまだ寝付いているのだと告げられて
数日をジリジリと待ち、ようやくあったネコ娘は変わらない様子で迎えてくれた、
誘い出して共に見た光景は明るくきれいで手放せないと思った、
本当にただ一緒にいて欲しいと告げるつもりだった、どこへも行かせたくなかった、
どこへも行かれないように……めちゃくちゃにしてしまいたかった。

どれもきっと本心だった、最後の一線は果たさなかった……果たせなかったが
いつも元気なネコ娘が震えながら泣きじゃくる姿は幼く、痛々しくて
悔やんでも悔やみきれない気持ちでネコ娘を送り届けて戻り
父にネコ娘をどこへも行かせないでくださいと懇願した、
自分がどんな様子だったのか父がなんと言ったのか覚えていない、
嗜好も行動も散り散りでもう一度、もう一度ネコ娘に会って謝らなければならないと走ったが
閉門の刻限だと入り口で止められてしまった。

それから何度も、何ちも通ったが、今は会わせられないと告げられるばかりで
思い余って人目をを盗んで隔てを乗り越えて忍び込んだ。
難しいことではなかった、そうやってネコ娘と二人、抜け出して遊んだこともある、
だが、そうして見たネコ娘は泣きも笑いもせず、
ただぼんやりと窓辺に座っていて声をかけるのがためらわれた、
そのうちに中から声が掛けられたのかそちらを振り向く様子を見て
声をかける機会は失ってしまったのだがほんの少し安堵する、
表情なく座るネコ娘はまるで人形のようで……呼んでも応えてくれないのではないかと思えたからだ。

結局、姿を垣間見ただけで戻るとネコ娘の住まいから使いが訪れていたのだ。

※※※(つづく)



次回こそ濡れ場ありの予定
野沢鬼太郎やほしの鬼太郎だと「やった!」とか「そうなんですか(照)」なんて様子でお嫁にもらって話が終わる気がしてきた。
0417名無しさん@ピンキー2012/09/17(月) 07:08:52.64ID:9AHf/vX0
GJJJJJ

で、

現ネ申
前スレ
ネコ娘陵辱もの

この3つの続きはまだでしょうか?

0420名無しさん@ピンキー2012/11/05(月) 23:38:31.89ID:oct4tSK1
age
0421名無しさん@ピンキー2012/11/21(水) 04:04:27.81ID:efN4kNXZ
昔は倉庫に絵板もあって活気があったんだけど
最近は寂しいな・・・
「通りすがり」って方の三田ネコ絵が大好きだったんだけど
今もここを見られてるのかな?
またどっかに三田ネコ絵を投下されないかな?
0424名無しさん@ピンキー2013/02/04(月) 21:43:56.22ID:hOO5pOwn
倉庫がまた見れなくなったぞ
どうなるのかな?
0427名無しさん@ピンキー2013/02/13(水) 23:08:25.53ID:PU/CfjqF
保管庫の管理人様
このスレをご覧になってたら復活させてください
(できれば過去の絵板も)
0428名無しさん@ピンキー2013/04/11(木) 10:57:44.47ID:iZs+O9V6
ho
0432名無しさん@ピンキー2013/06/11(火) 09:57:30.36ID:I4lModgX
「ねこ娘陵辱ものリレー」リメイク版
ただし強姦はなしで途中で抵抗
結末はリレー解答

投稿してよろしいかな?
0434名無しさん@ピンキー2013/06/14(金) 18:52:37.28ID:3LeJCwUe
ではでは
暑い日の妖しい倒錯(?)の世界としてw
「ねこ娘陵辱ものリレー」リメイク版
(強姦なしの途中抵抗)
※結末はリレー解答にて


ボチボチ投下させていただこう

管理人さんが見てるのならば、倉庫番も復活してほしい

あと絵師の皆様、よろしければイメージ画をこちらにご投下くださいまし
http://www.kembo.org/nekomusume/upload.html
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