彼女はきっと、見た目と同じく穢れを知らぬ純真無垢な少女のままなのだろう。
ただ、鬼太郎には一つ気になることがあった。
以前は時より姿を消すことがあった。
それが何を意味するものか知ってからは、
ずいぶん残酷な事をしてしまったと思い悩んでいたのだが―――
「…ところで、ねこ娘。
その…君は、季節の―――は、
大丈夫なのかい?」
「季節…の?」
「その…ほら、春とかに…
僕は必要ないのかな?…って。」
「…にゃっ!?」
ようやく鬼太郎の言った言葉を理解したねこ娘は
全身を硬直させて赤面した。
今頃になって鬼太郎と触れた唇が熱くなり、早鐘を打つ鼓動が耳まで響く。
急に鬼太郎の隣に座っているのが恥ずかしくなって
彼の顔をまともに見られそうもなく、スカートの裾を握りしめる。
「う…うん…まだ、まだなの。」
「―――そう。」
気にしていた事だけど、ねこ娘が一人苦しんでいないのならば、それは良かった。
良かったけれど―――
ものすごく残念そうに溜息をついた後、
鬼太郎はねこ娘の顔を下から覗き込んで言った。
「でも、これからは我慢なんてしないよ?
君の本心も知ってしまったしね。
ねこ娘は”自分を見て”って言ったけど
僕が今までどんな目で君を見ていたか
どれだけ君を好きなのか教えてあげる。」
「やだぁ…恥ずかしいよ。」
ねこ娘は鬼太郎を紳士だと思っていたから
この大胆発言に驚きを隠せなかった。
反射的に両手で顔を覆おうとしたが、その手は捉えられ
思わず鬼太郎のほうを見た。
彼は静かに、真っ直ぐにねこ娘を見つめていた。
「僕ももう逃げたりしないから、ねこ娘も逃げないで?
君を誤解させたり、悲しませるような事は…二度とやらない。
約束するよ?誰よりも君が好きだから。」
「ん…あたしも、鬼太郎が…好き。誰よりも―――」
夕日に照らされ長く伸びた影がゆっくりと一つに重なる。
互いを大切に思うが故に、相手を傷つけてしまっていた事を知り、
それを乗り越えた二人の結びつきはよりいっそう硬くなった。
糸売く