「はく…ッ」

意地の悪い顔でニヤニヤと笑って、唾液でてろてろに光った乳首に吸い付く。
ちゅ、ちゅ、ともどかしい強さで吸い上げるも、しかし陽毬はぐっと歯をくいしばって喘ぐのを堪えた。

「可愛くないな」

僕はまたしても苛立った。
陽毬は、僕の真意を分かっていて、その上で僕の陽毬に対する理不尽な行為に甘んじている。
我慢している。
僕が彼女を「家族」に選んでしまったことで、背負わせてしまった高倉家の罪と罰を、僕の弱さも理解した上で、全て受け入れようとしている。
何故かと言えば、僕のことが「好き」だからだ。

吐き気がした。

僕は犯罪者の子供で。
両親がたくさんの人を殺した日に生を受けて。
犠牲者の中の一人が真犯人に仕立てあげられ騒がれていた間も。
たくさんの人達が後遺症に苦しんで、ベッドの上で亡くなっていった間も。
偽りの「家族」ごっこで幸せに暮らし。
のうのうと今日まで生きてきた。
それなのに、どうして。
すべてを知る誰かに受け入れて貰えるなんて、愛されるだなんて。
そんなこと、許されるはずがない。
僕は、許さない。
だから、傷つけたくなる。
僕も、僕を好いてくれる人も。
ゴキブリを殺虫剤で殺すように。
遠ざけたくなる。
罰を受けるのは僕一人で充分だから。
僕だけは一生、誰にも愛されても、許されてもいけない人間だから。

「く…っん…っ」

陽毬の顔が苦痛に歪む。
僕の顔も同じように歪んでいるのだろう。
射精感が高まってきて、僕は陽毬の乳首から唇を離して腰の動きを更に速める。
ぱちゅんぱちゅんといういやらしい音が隣の部屋で眠る冠葉に聞こえていればいいと思う。

「はっ…あっ…陽毬…っ」
「ふ…っぅ、」
「イキそ…っ陽毬の中に出すよ…ッ」
「ぐっンッ」

陽毬はぶんぶんと首を振った。
やめて、とでも言いたいのだろうか。

「やめてほしいの…?」
「じゃあまず陽毬が、」
「『高倉』陽毬をやめてくれない?」

にっこり笑ってそう言えば。
陽毬は絶句して、そして。

「嫌」

と、小さく、だがはっきりとそういったので、僕は舌打ちして陽毬の膣に三度にわたって吐精した。