お姫様でエロなスレ14
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そんなはずはない……発しようとした言葉は口の中で溶けて無くなって、出るのは落ち着か
ない喘ぎばかり。乳首を一回摘み上げられるたびに身体からどんどん力が抜けていって、この
まま触られたら、倒れこんでしまいそうな気さえした。
「嘘よ、気持ちいいわけ、ないじゃない…………」
本来なら自分に触れることすら許されないはずの男に肌を晒し、あげく相手に身体を委ねて
しまっている。しかもその行為が行われている場所は、裸になることなど到底許されない森の
中だった。二重の許されなさが、恐怖の中であってもネフェティアに怒りを覚えさせ、同時に
今すぐ死んでしまいたい、消えてしまいたい……こういった感情も頭の中で膨らみ続けていた。
「そうか? その割には、可愛い声出してるぞ」
「違う、これは…………ああんっ」
頭の中に積み重なっていく考えを、男の舌がかき混ぜてどろどろしたものに変えてしまう。
生まれて初めて与えられた刺激は、ひどく異様なもので、円を描き、舌先でつつき、巻きつき
……とねちっこささえ感じさせる繊細な動きをネフェティアは気持ち悪く感じた。にもかかわ
らず、疼きは強くなる一方で、触られることをいやだとは思わない、もう一人の自分がいるこ
とに気がついた。
「ん、く……っ、やめて……」
それを追い出すように、脂汗を流して苦悶しながら切羽詰った声を出す。心なしか疼きが弱
くなったような気がする。せめて男の舌を気持ち悪く思っていたかった、冷静になって逃げる
機会を窺わなければならない、一国の王女が誰とも知らない男にいいようにされたくはない…
…自分の心の内に力を蓄えようと、ネフェティアは身を固くした。
もっとも、身体は素直なもので、男がもたらす刺激に、乳頭は次第にこわばりを見せ始め、
つられて周囲も盛り上がりつつあった。
「……もうちょっと素直になったらどうだ?」
舌なめずりをする男、歪む笑み、上ずる息遣い、蠢く舌、厚い胸板から発散される男臭さ、
全てから目を背けることはできない、低い声でささやきつつ唇でしこり立った先端をついばみ、
ちゅううっと強く吸い上げてくる。なぞり撫でる舌よりも刺激は強く、瞼の裏に火花が飛び
散った。
「んっ、あああん!」
汚された……温かいぬめりが空気に触れて冷やされていく中でネフェティアはそう考える。
染み一つないまっさらな布に泥がついてしまったみたいに汚れはどんどん広がっていく。こび
りついた泥がどんなに手で拭っても落ちないように、心を閉ざし、何もかもから逃げようと
思っても、唾液を通じて入り込んだ男の欲望を振り払うことはできなかった。
男は右の乳首を舌で、左の乳首を指先でそれぞれ転がしていた。乳首が取れてしまうのでは、
と思うくらいに引っ張られた次は、形を確かめるように優しくいたわり、そうかと思えば歯を
立ててきて……翻弄されるネフェティアの中にもう一人の自分が再び現れ、気持ちいい……気
持ちいい……と頭の中でささやき続けた。
「はうっ……んあぁ……」
「気持ちよさそうな顔しやがって、姫様も、本当はこうされたかったんじゃないのか?」
男の言葉で、はっと我に返る。気持ちよさそうな顔をしている……? そんなはずはない、
姫として、誰よりも清らかであろうとした自分が、男の卑劣な行為で快楽を覚えるなどあるは
ずはない。だが、普段の凛とした自分が内側から崩されようとしているのも事実だった。
――――――――――――――――――――――――
ネフェティアの敏感な身体は、男の愛撫によって官能が咲き開こうとしていた。顔を見れば、
昂然としたものが浮かんでいた、瞳には嫌悪の中にも恍惚とした光が見て取れる。しかし、彼
女の厚みのある唇は、怒りに震えており、男にまったく心を許していないのがわかった。
「……せっかくなんだからもっと楽しもうぜ、いいだろ?」
たわわな乳房を包み捏ね、大きなふくらみの形を歪ませる。乳房の量感に酔いしれながら、
薄桃色の皮膜を親指で弾く。同時に唇での刺激も強くし、ネフェティアに休むことを許さない。
「ん、くっ……人を、呼ぶわ……あなたなんて、死刑にしてあげる」
「ふん…………誰かに見られても、いいってことか……構わないぞ、叫んでみろよ」
できるはずはない、事実、挑発した男にネフェティアは目を伏せ、あっさりと屈してしまっ
た。姫として育てられたからやはり人一倍羞恥心は強いのだろう。食いしばった歯、刺々しい
目が証明していた。どこまでも男を拒もうとする彼女に愛おしさを覚えつつも、付け上がらせ
てならないと軽く手を振りかぶった。 「ひっ…………!」
おびえたように首をすくめたネフェティアを地面に跪かせる、そして豊満な乳房の谷間に、
露出させたそそり立つ肉棒を挟み擦らせた。逃げようと身体をばたつかせるネフェティアを木
に押し付けて、ふわふわぷるぷるの大きな乳房を両側から揉み寄せて、むにゅりと肉の狭間に
埋もれさせた。
「んうっ、な、何を……?」
影を落とした顔に怪訝の色が浮かぶ、これだけ立派な胸をしておきながらどこまでも無垢な
ようで、衝動に駆られた男は果敢に腰を前後させ、濡れたビロードのようにしっとりとすべす
べした乳肌に先走りをなすりつけた。往復運動に合わせてたぷんったぷんっと揺れる乳球が、
男のペニスにぶつかり、硬竿を扱き上げる。
「姫様はパイズリも知らないのか、こんなでかい胸してるくせによ」
パイズリとは何か、それを説明してやるといわんばかりに寄せられたことで狭まった胸の谷
間を掻き分ける。みっちりと詰まったそこは、汗と鈴口からにじみ出る液体がローションの役
割を果たし、圧迫感の割ににちゃにちゃとした粘っこさと滑りのよさを感じる。
さらに、乳房を揉みたくる手汗がネフェティアの胸に集まる太陽の光を反射させ、巨大な宝
石を思わせるきらめきを見せた。男はその輝きに魅入られてしまい、頼りなさげな柔らかささ
え見せる肉弾で射精衝動を高め続けた。
「やっ……やめて、いや、ぁ……」
「こんなところで止めようなんて、無理に決まってるだろ?」
果実を揉みくちゃにする手に自分の手を添えるネフェティア、未知の感覚への恐怖と困惑が
指の一本一本からも伝わった。もちろん男に許す理由などないので軽く流して、迫力たっぷり
に揺れる肉の果実で挟まった竿を押しつぶした。乳房の重さ、柔らかさ、肌の滑らかさ、全て
が一体となり、ペニスと溶け合う。にゅるにゅると不思議な生き物のように手の中でぬめり、
肉刀を包み込んで踊る左右の山は、揉み回されてこなれていき、解れた柔らかさを見せるよう
になっていた。
「はうっ、んあぁ……だめ、だ……め…………ううっ」
救いを求めるすすり泣きの声は、静かに地面に吸い込まれる。あくまで楚々とした様子のネ
フェティアは、悦楽よりも苦痛を表にまとわせていた。容易に快楽には溺れたりしないと言い
たげで、それが男のサディスティックな気持ちに火をつけてしまう。
「なるほどな、姫様はもっと激しいのが好みってことか」
乳房の安らかな包み心地に酔いしれ、射精寸前のところまで追い込まれた男は、切っ先を彼
女の口元に押し付け、それを頬張らせた。
「んああっ! やあ、あぁ……く、んっ……むう……」
「舌を使ってきれいに舐めるんだ、いいな」
噛み付かれる危険性もあったが、頬を軽く叩いてやれば素直なもので、ネフェティアは口を
すぼませながら、舌先でちろちろと鈴口を舐め始めた。肉厚の唇がカリ首に押し当てられ、亀
頭にはつるつるとした内頬や上顎が密着し、たまった唾液が潤滑油となりエラの張った部分が
にゅるにゅるぴちゃぴちゃと擦れ合う。小さな柔舌は出口の周囲をなぞりながらゆっくりと中
央向かって進み始める。初めてにもかかわらずなかなかの舌使いで、男の下腹部に射精寸前の
痺れが襲い掛かった。
「く、……スケベな身体してるだけあってうまいじゃないか」
両胸をさらに寄せれば、鉄竿の側面と裏筋は体液でぬめり輝く柔らかい乳房に完全に飲み込
まれてしまっていた。
まだだ、もっとだ……男は念じる。しかし、ネフェティアの舌と唇の動きは思った以上に巧
妙で、ひとりでに前後する腰を止めることもできなくなっていた。渦巻く激情、そしてそれを
見透かしたように翻弄してくる雪白の乳、いくかいくまいか……すれすれのところで悩んでい
たが、男は快楽をむさぼることよりも精を吐き出すことを選び、亀頭を温かく濡れた口内粘膜
へと張り付かせる。
「うっ……出すぞ、受け取れ…………!」
射精を決めれば後は早い、蠢く精液は堰を切って、我先へと溜め込まれた袋から、発射口へ
と走り出した。男の頭の中が真っ白になるとともに痛みにも近い快楽が、一回の脈動ごとに
次々と迫ってきた。
――――――――――――――――――――――――
「ん、んーっ……ん、んんっ、んぐ……ぐ、っ……」
それはあまりにも突然だった。男が低く呻いたかと思うと、穴から生臭くどろっとした液体
がほとばしった。その液体はネフェティアの口の中に容赦なく撒き散らされ、あまりの濃さに
飲み下さないと息苦しささえ覚えてしまった。
「ん、ぅ……っ、ぐ、ん……ふうっ、ああぁ……んんっ」
飲んだら飲んだで強烈な臭気が鼻から抜け、異常な不快感は吐き気と変わり、危うく吐き出
してしまいそうだった。だが、口は完全にペニスでふさがれており、棒が脈打つたびに、青臭
い何かが吐き出されるので、ただ飲み込むことしかできない。
「ふう、たまんねえ、たまんねえよ姫様……っ! 俺のザーメン飲んでやがる……」
男の至福の表情とは裏腹に、ネフェティアは必死に精液を喉からお腹に運んでいた。それは
作りたてのスープのように熱く、喉が焼けそうだった。お腹の中もかあっと熱を帯び始め、そ
れが勢いよく全身を走りぬけた。
「へ、へへへっ…………こぼさないで飲めよ、わかってるよな」
歪みきった笑みを浮かべた男は、ようやく満足したようでペニスを引き抜いた。男の言葉に、
ネフェティアはきゅっと口を閉じて、手で押さえたままおぞましい臭いを放つそれを全部飲み
込んだ。たまった液体が無くなっても、口の中で残りカスが糸を引き、たとえようのないまず
さは口の中に残り続けている。
「言っとくけど、これで終わりじゃないからな……」
これ以上何をさせようというのか……男を逆上させたら何をしてくるかわからない、恐怖心
からか男に従い続けた。しかし、恥じ入る気持ちも拒絶する気持ちもいまだ残り続けている。
丸い頬を撫でる男の手が熱い、指は胸からお腹へと進み、ドレスの裾をまくり始める。頬には
触られたときの感触が残像のように残っていた。
「何を、するの……?」
「どこまでお姫様なんだよ、セックスするに決まってんだろ」
セックス……本で読んだことがある、男女の子作りの行為。射精のショックでぼんやりとし
ていた身体に意識が戻った。白濁液に覆い隠されていた恥ずかしい、つらい、悲しいという気
持ちが再度噴き上がってきた。
「いやっ……これ以上の侮辱は、許しません……!」
唇をきつく締めて、ねめつける男の目つきを跳ね返す。ただ、できるのはそれだけで反撃ど
ころか逃げることもできなかった。ドレスの裾は太ももが露になるくらいにまくれ上がり、そ
の奥の三角形の布に、男の視線が突き刺さる。
「パンツも脱いで………へっ、生えてないのかよ」
男の嘲る笑い、その理由は一本の毛も生えていない自分の秘密の部分にあった。このことは
ごく近くにいる侍女でさえ知らない……強引に心の中を暴かれた気がして、ネフェティアは火
を噴かんばかりに、赤く火照った顔を右に左にねじる。
「あ、ああ……見ないで……」
長い髪がすべて逆立つような寒気が襲ってきた。抵抗しようと細い喉をやっとの思いで動か
す、出たのは糸よりもずっとか細い声だけだったが。そんな思いを全て踏みにじるように男は、
ネフェティアの脚を大きく開いて、くつろげ広げられた肉の唇と、その奥に縮こまっている桃
色の肉に、今にも止まりそうなほどゆっくりとした目線をなぞらせていく。
「すごいな、大人みたいな身体のくせに、こっちは子供かよ……」
無毛のスリットは、乳首と同じく、むっちりと肉のついた艶やかな身体には不釣合いなほど
に幼さを残していた。野太い指がその部分の周囲を這い回る。柔らかい部分は皮膚が薄いのか、
軽く指が掠めただけでもそこが痺れてしまう。さらに指先が土手をつつき、筋を押し広げて、
ピンク色の肉に直接触れると、さらに痺れは強くなり、触られた後もひくひくと疼き続けてい
た。
「ひうっ……やめ、っ…………んあああっ!」
弧を描く指が、ネフェティアの全てを知り尽くしたような動きを見せる。筋の周りを這い回
り、浅く潜った指が入り口を優しくかき混ぜる……解れてきたところで、今度は人差し指が3
分の1くらいまで入り込み、閉じた唇肉を拭いはがし始めた。
「やあんっ、やだ、やだぁ……っ、離しなさい、んううっ」
神の雷が降りてきた、そんな気さえした。一度何も感じなくなり、そのすぐ後に身体がふわ
ふわと浮かんでしまいそうな、すーっと落ちていくような不思議な感覚だった。 気持ちいいでしょ……ささやきかけるもう一人の自分は、心の中に入り込み、操り糸で自分
を縛る。こみ上げてくる気持ちよさを否定するだけの力は、もうネフェティアには残されてい
ない。だが、自分を律し続けた心は強く、次は羞恥と後ろめたさが全身を取り巻く鎧となった。
こんなところで、こんな男に……民も、兵も、侍女も、貴族も、そして父と母も、ネフェ
ティアを高潔な王女であると思っているはずだ、卑しい男に自由に身体を弄ばれ、あまつさえ
官能を引き出されるなどあってはならない……それは死に勝る屈辱のはず。全身を熱く火照ら
せながらも、身を焦がす恥じ入りがネフェティアの唯一の救いだった、恥を恥と思える、それ
はまだ自分が自分でいられるということだったから。
――――――――――――――――――――――――
「ちっ…………」
やはり姫ということで気位が高いのか、ネフェティアが屈する様子は見られない。表情こそ
目尻の下がった情惑的な、色気のにじみ出るものに変化しているが、身をずらしたり、男の手
を振り払おうとしたりと、依然として抵抗は収まらなかった。そこで男はもっと辱めてやろう
と、彼女を立たせたまましゃがみ、つるつるの一本筋に向かって舌を伸ばした。
「ひあっ……だ、めっ! そんなところ……」
「……何が駄目なんだ、こっちのほうがもっと気持ちよくなれるぞ」
舌の上で蕩けてしまいそうな土手肉の柔らかさ、マシュマロを思わせるふにふにした撫で心
地の外唇を舌でこじ開けると、中にはねっとりととろみを帯びた内唇があった。甘蜜を湛えた
粘膜をかまいたてながら、男は舌を奥へ奥へとくぐらせた。
「あっ、んああっ! や、っ……はあうっ」
ネフェティアの声は困惑混じりだが、快美を帯びたか、一段と甲高くなった。男は一度舌を
引き戻して、わずかに口を開いた姫の清唇に目をやった。どこか饐えた……だが蜂蜜のように
甘ったるい匂いを放つそこは、密やかなたたずまいで、油を塗りつけた溝からはから小さな顔
肉翅が顔を覗かせており、桃色の美しい蝶と見紛うほどだった。
蝶が守るのは奥にある穴、やはり処女なのだろうか、肉色の洞窟はぴったりと閉じて侵入者
を拒んでいた。
「やっぱり経験はないのか……姫様のエロい身体なら100本くらいチンポくわえ込んでても不
思議じゃないんだけどな」
目を上にやると、先の丸まった突起が狭間から頭を出していた。薄皮に包まれたそこを一撫
ですると、ネフェティアが風を切るような鋭い声を発した。割れ目が花びらなら、クリトリス
はさしずめ花の種で、軽く触れただけでも今にも芽吹かんばかりに硬く膨らみ始めた。
「さてと……今度は、姫様をたっぷりと気持ちよくしてやるからな」
男は再び顔を近づけて、可憐な様相を見せるローズピンクの生肉に唇を押し付け、ずずずっ
と音を立てて蜜をすすった。ネフェティアの粘膜フリルは、一定の間隔で息づきながらぬちゃ
ぬちゃと粘っこい蜜を溢れさせている。
決して枯れることのない泉……その水は甘くわずかにねとついている、男は強く吸い付いた
まま自分の渇きを潤し続けた。
「ん、あっ……う、ああぁ……やめて、こんな、あああん」
ネフェティアの花唇を封じたまま、男は舌で肉穴の形を探る。膣孔は狭く、粘膜には複雑な
模様が深く刻み込まれていた。波線の集まりは奥に進むごとに縮こまり、ここにペニスを挿入
したらと想像しただけで、射精したばかりにもかかわらず亀頭が天を突く。
「はあっ、ああっ! んんぅっ……絶対に、許さない、んふうあっ」
舌を伝い粘液が流れ込み、舌裏に溜まる。言葉でどれだけ嫌悪を表しても、身体はあっさり
と反応してしまっている。舌が入り組んだ襞をなぞっただけで、ネフェティアはびくっびくっ
と身体を痙攣させ、男にもたれかかってきた。
さらに、男はつつましい花弁をさらにほころばせてやろうと、濃い肌色をした秘肉の両畝を
舌で掃き上げつつ、引きつりそうになるくらいまで舌を伸ばし、まだ触れていない膣壁を舐め
上げる。そうしながら、小さな花びらを左右から摘み上げ、引き伸ばしつつ親指と人差し指で
擦り上げた。
「ひゃう、うんんっ! あ、はあぁ…………」
「お、だんだんと感じてきてるんじゃないのか?」
舌や、指に伝わる柔らかく、熱い感触……触れるたびに潤みは強くなり、清らかな泉はやが
て、熱をたたえた沼のようなぬかるみに変貌した。肉路は淫液を滴らせ、割れ弾けんばかりの
瑞々しさを見せており、舌で軽く押しただけでぬたついた液体がにじみ出てきた。 顔を上げると、ネフェティアは目を閉じてふるふると身体を震わせていた。舌で責める前は、
弱弱しいながらも何らかの抵抗をしていたが、今は喘ぎをこぼすだけで、両腕は力なく垂れ下
がり、脚も無防備に開かれていた。ここが押し時だと、男は不規則な襞をなぞるように舌先を
泳がせた。
「あ、んっ……ぅ、あ、はああう……ああんっ!」
彼女の膣内は思っていた以上に複雑な形をしている。さらに、呼吸のたびに収縮し舌を締め
付けてくる。舌よりずっと太いペニスならより大きな圧力を楽しめるだろう。赤桃肉を舐め
しゃぶりながら、男はいつも以上に逞しく勃起したペニスをなだめるようにさすった。
「クリトリスも硬くなって……蓋を開ければ姫様も女ってわけか」
経験のないネフェティアでも、絶え間ない刺激を浴びることで性感を掘り起こされてしまっ
たようだった。もう一歩踏み込もうと、男は皮をかぶった肉真珠を指で転がしつつ、包皮をめ
くり上げて、隠された桃色の宝石を暴きたてようとした。
蜜と唾液中でおぼれかかっている小さな尖りを押して、捏ねて、薙ぎ伏せて……こりこりと
した鋭敏な突起を思いのままにいたぶった。そのたびに絹を裂くような、悲鳴に近い声が上
がった。
――――――――――――――――――――――――
蛞蝓が膣穴を這い進み、花筒は男の唾液に汚されてしまった。気持ちいい……身体を弄ばれ
ることがこんなに気持ちいいなんてまったく知らなかった。しかし、この快楽に溺れるのだけ
は絶対に嫌だった。
「どうだ、いいだろ……?」
舌が往復すると、頭の中でぐちょぐちょと粘り気のある濡れた音が大きく響く。目を瞑ると
音はますます大きくなり、合わせて響く、風に擦れ合う葉の音は恥ずかしい、はしたない……
と自分を笑っているようにも聞こえた。本当なら、今すぐ男の手を拒み逃げ出すべきなのだろ
う、だが、拒否の言葉さえ口の中に吸い込まれてしまい、何も言うことができなかった。
「…………ん、っ……」
うねくる舌が生きた洞窟を掘り進み、肉の合わせ目からは唾液と愛液の混じり合ったものが
こぼれ、細い滝となって太もものほうまで垂れている。舐られるほどに高ぶっていく官能、心
の奥底でくすぶったそれが、男を求め、さらなる愛撫を受け入れようとしている。しかし、一
人の女としての開花をどうしても許すことができなかった。
こんなのは気持ち悪くて恥ずかしいだけ……変わりゆく気持ちを打ち消そうとするが、身も
だえが激しくなる一方で、腰は大きくねじられてくねる。苦痛混じりの声は、悦びそのものの
声に変わろうとしていた。
「本当は気持ちいいんだろ? ここは俺と姫様の二人きりだ……もっと声を出してもいいんだ
ぞ」
舌は肉筒の作りを確かめるようにはいずりながら、奥へとどんどん進む。刺激に慣れた手前
とは違い、手付かずの部分は新しい気持ちよさを身体の中に送り込んできた。もっと快楽をむ
さぼりたいという思いと、それを浅ましく思う理性が何度もぶつかり合っていた。もっとも、
ぶつかり合うたびに理性は揺さぶられ、今にも消えてしまいそうになっていたが。
その葛藤を知ってか知らずか、男は三角形に尖ったクリトリスを包み隠す皮を剥き、その部
分を指先で扱き転がし始める。再度神の雷がネフェティアの身体を貫いた。ごく小さな突起か
ら下腹、手足、背中と強烈な快感が走り抜けた。そして、水をいっぱいまで注いだコップから
中身が溢れてしまうような……何かが漏れ出す感覚が全身を包み込んだ。
「はひゃっ! あ、んっ……そこは……ああああっ!」
「いいのか? 姫様のくせにこんなに淫乱で……初めてだったらもっと嫌がれよ」
男の見下した笑い、なぜ王女である自分にここまで偉そうにできるのか……ただ、心はとも
かく身体は傲慢男に従おうとしているのも事実だった、柔肉の割れ目から、半濁水を滴らせて
いるのがその証拠だろう。
さらに、男の舌が追い討ちをかける。深くねじ込まれる舌の動きに合わせて、クリトリスを
揉み転がす。気持ちよかった、今すぐ、あられもなく叫んでしまいたいほどに……姫としての
地位がそれを許さなかった。少しでも今置かれている状況から逃げようと、顔をそむけるが、
男の指、舌、呼吸、匂い……全てがネフェティアを吸い寄せて引き付ける。 「ひゃあん、っ! あひいっ、ああ、んんっ……はあああっ! 違う、違うのぉっ!」
指の腹が、敏感な突起に巧みな振動を送り続ける。先端の蕾は構い立てられたことで、指を
弾くまでに硬く膨らんでいた。絶え間なく雷を浴び続けた身体は、自分の意思とは関係なく乱
れ、男の顔に割れ目を押し付けるような動きさえしてしまうときもあった。
「……何が違うんだ?」
舌を引き抜いた男は、指で入り口を浅くかき混ぜると、銀水に濡れた人差し指をネフェティ
アの口の中に押し込んだ。広がる生々しい液体の味……噛み付いてしまえばよかったのだが、
後で何をされるかと思うと怖くなり、男の促すままに指をちゅうちゅうとしゃぶった。
「もうわかっただろ? 姫様は知らない男に弄られて感じる変態なんだよ」
「んむ……ぅ、ん、んっ…………」
違うと言いたかったが、しゃぶっている指が邪魔をする。それでも、首を振って、何とか男
を拒絶しようとした。
「強情だな、何でそんな嘘つくんだ?」
男の舌が、こんどは桃色の突起に巻きついた。淫口から溢れたぬかるみを身にまとい照り光
る媚粒を、舌で捏ね回し、同時に人差し指が膣孔に侵入する。小さな豆粒は、他のどの部分よ
りも敏感で、舌のざらつきや温かさまで手に取るようにわかってしまった。
「やめて、んああっ……はあ、っ、んんんんっ!」
反り返ったりくの字に曲がったりして、男の指は襞壁を押し広げる。中の肉にぶつかるたび
に膣内が閉まり、男の太い、節くれ立った指をいっそう強く感じた。
「マンコ触られて、エロい声出して……本当はもっと、ぐちょぐちょになるまでしてほしいん
だろ?」
「やあ、んっ……こんなの、気持ち悪い、だけ……あああんぅっ」
ネフェティアが途切れ途切れになりながらも叫んだように、心の中は、望みもしないのに恥
ずかしい事をしてくる男に対する拒否感と、異性の前で肌を晒してしまっていることによる羞
恥心でいっぱいだった……少なくとも自分ではそう信じていた。しかし、理性や倫理観がかろ
うじて蓋をしている心の奥底では、もっと指が逞しく猛々しく暴れこんでくることを期待しは
じめてしまっていた。
そして、性感を引き出されつつある身体は、その蓋にひびを入れようとしていた。あふれ出
んとする浅ましい気持ち……必死にそれを押さえつけた、自分の立場を考えろと。
しかし、男の言う通り素直になってもいいのかもしれない。ここには誰もいない、城から誰
かが来る可能性も無いに等しい……だから、今だけは少し気持ちよくなっても、後で何事も無
かったかのように振舞えば、全てをなかったことにできる。
「あっ…………!」
ここまで考えたところで、ネフェティアは消え入りたいほどの強烈な自己嫌悪に襲われる。
強引に身体を開かれて、指弄を繰り出し、全てを自分のものにしようとする男を悦んで求めよ
うとしたなんて……恥辱のあまり顔から火が出そうだった。
その一方で、心の中で膨らむ自己嫌悪や後ろめたさが快楽を引き立てるスパイスになってい
ることにも気がついた。恥ずかしい、気持ち悪いと思えば思うほど、急激に豆粒やクレバスは
敏感になり、身体が浮かび上がりそうになった。それをごまかすように、爪を立てたまま固く
握りこぶしを作る。強い痛みが気持ちよさを忘れさせてくれる気がしたが、押し寄せる大波に、
苦痛は全て洗い流されてしまう。
「……へへっ、そろそろいかせてやるよ」
男の舌の蠢きはますます大きく、早くなり、割れ口から肉芽まで縦横無尽に動き始める。絡
まった舌とくぐり込んだ指とが合わさってより大きな快楽を生み、ネフェティアを溺れさせる。
「んぁあっ、だめ、だめ……あああん、や、だ、んんうっ……見ないでぇ」
こんな自分を見たら、みんなはどう思うだろうか……知っている顔が浮かんでは消え、流さ
れそうになるところを、ある者は見下し、そしてある者は嘲り……責め立てる言葉が頭の中で
響いた。ネフェティア自身もわかっていた、これ以上男を受け入れてはいけないと。だが、責
められるほどに身体も心も異常なまでに高ぶってしまう。
「はあ、ああっ、だめ、だめ、だめなのっ、こんなの、はああっ」
瞬間、全身が浮かび上がりそうになる、瞳の中で大小さまざまな星がきらめき、手足が急に
重たくなり、すっと力が抜けた。 ――――――――――――――――――――――――
「おっと、ここまでだ……」
ネフェティアの喘ぎが大きくなる。おそらく絶頂を迎える寸前なのだろうが、男はあえて指
を止めた。煮立てた水飴を思わせるとろみと熱は名残惜しく、湯気の立った指は柔肉を食べ足
りないのか小刻みに震えていた。
名残惜しいのは彼女も同じようで、男の指と秘処を熱っぽい視線のまま交互に見つめている。
本人は絶対に認めないだろうが。
「こ、これで…………?」
「そんなわけないだろ? ここから先はチンポで気持ちよくしてやるよ」
すでに逸物は猛々しく上を向いている、軽く切っ先を撫でてやれば、待ちきれない様子でび
くりと跳ねる。男は強引にネフェティアを後ろ向きにして、お尻を突き出させる。
満月のように豊穣な、しかしたるみのない色白のヒップが目の前に差し出される。下方には
亀裂が走り、そこから作りたてのゼリーのようなピンク色の粘膜が少しだけ顔を覗かせていた。
男は釣鐘状になった重たい乳房を捏ね回しながら、腫れ上がった亀頭を蜜で照り光る入り口
に押し当てる。粘膜同士が触れた瞬間、ペニスをふんわりとしたクリームとトロ肉が包み込ん
だ。
「ひうっ……! な、何を…………?」
狼狽と恐怖に満ちた声を発したネフェティアを無視し、男はゆっくりと腰を沈める。柔らか
い肉ではあったが、指一本でも窮屈だったそこは、それよりもはるかに太いペニスなど受け入
れられるはずも無く、異物を押し戻そうと強烈な収縮を見せた。
「やめてっ! いやああ、痛い!! あああああっ!」
膣口すぐの肉が噛み付いてくる、その瞬間、ネフェティアが脂汗を浮かばせながら悲痛な叫
びを上げる。あまり叫ばれて誰かが来てしまうのも都合が悪かった。
「そんなに痛いのは嫌か…………それならいいものがあるぞ」
あらかじめ用意しておいた、痛みを薄れさせる薬が入った小瓶をちらつかせる。よほど痛
かったのか、それを見せた途端、ネフェティアはふらふらと手を伸ばしてきた。
「……その代わり、俺とキスするんだ、いいな?」
「…………っ! そんなこと、できません……」
「そうか……じゃあしょうがないな」
入り口に浅く押し込めた肉竿をゆっくりと前後させる。ごくわずかな抽送であっても、ネ
フェティアは首を振り、苦悶の表情を見せる。開いた花唇の奥の、蚯蚓を詰め込んだような襞
の感触に酔いしれながら、男はだんだんと腰の前後運動を大きくしていく。
「わかり、ああんっ……ました、キス、しますから……ぁ」
顔だけをこちらに向けた彼女の髪を掴んで、強引に唇を奪う。瑞々しい唇、小さな舌、つる
つるとした傷一つない粘膜、ほんのりとわずかに甘い唾液……男が至福に浸る一方で、目の前
の王女は目の前で大事な物を奪われたような、理不尽に押し付けられた絶望に整った顔を歪ま
せていた。その悲痛な表情も被虐のたっぷり乗ったものでしかなく、掬い取った唾液を咀嚼し
ながら、歯の一本一本まで舐め尽してしまう。途中、ネフェティアが息苦しそうに鼻で呼吸し
たり、胸板を何度も叩いてきたが、男は構わずに舌を絡ませ続けた。
「初めてが素敵な王子様じゃなくて、残念だったな」
唇を離すとお互いの舌先が銀色の糸でつながっていた。二人の唾液が絡まりあったそれは、
ネフェティアが顔を大きく背けたところでぷつりと切れてしまう。細い糸の末路を見守りつつ、
男は小瓶を渡した。そして彼女がそれを飲み干したところで、ストロークを再開し、一気に肉
刀を半分ほど鞘に埋め込んでしまった。
「うううっ、あああんっ!」
気持ちよさはそのままで、苦痛だけを無くしてくれる薬……これのおかげで、ネフェティア
の処女穴を思う存分に亀頭で押し広げ、かき回すことができる。先端を奥まで打ち込むと、突
き出されたお尻がぷるんっと弾み、柔らかい感触が腰に伝わってきた。
「はうぅ、っ……んんっ、んう、あああんっ!」
「なかなかいい具合じゃないか……それに……」
指や舌で弄繰り回したときとは比べ物にならないほどの圧迫感、しかしただ締め付けてくる
だけではなく、ぴったりと張り付いた柔らかい膣肉が、不規則な蠢動を繰り出し、裏筋からカ
リ首までうねうねと揉み捏ねてくる。今にも溶け崩れそうな潤み肉の狭間をほころばせながら、
男は猛然と最奥向かって突き上げを繰り返す。
「あ、ああぅっ、だめ、やああん、はあ、う、あああぁ……」 自分の恥骨で、相手の恥骨を右に左に擦り上げると、ペニスを挿入する角度も変わり、愛液
に溺れるペニスが押し寄せる襞肉に強く押し付けられる。入り組んで、細かく縮こまった模様
を撹拌すると、肉の壁がせめぎあい、さらに圧力が強まった。
「あんなに嫌がってたのに、ずいぶんと気持ちよさそうじゃないか?」
――――――――――――――――――――――――
男のあざ笑う声に、自分が夢中になって快楽をむさぼっていたことに気がついてしまう。薬
のおかげで痛みはほとんどない。本で読んだときは死んでしまうくらい痛いと聞いていた……
しかし、逆に痛みがないため、膣内は肉棒の気持ちよさに落ちかけ、潤みを吐き出すことでさ
らに先端を奥に導こうとしていた。
「違う、ん、嫌、ぁ……嫌、なのに……っ」
ネフェティアは、唇を捧げてまで痛みから逃れようとしたことを今更ながら後悔した。仮に、
身体を引き裂かれるほどに痛かったら、男を憎むことも呪うこともできただろう。でも、前後
に這い回り、絡まる襞虫もものともせずに突き進む肉の槍は、ただひたすらに気持ちよさだけ
をネフェティアの身体に教え込み、悦楽を餌に、彼女の身体を意のままに操ろうとしているよ
うだった。
身体の中で、ペニスを締め付けて歓迎する……こんなに嫌がっているのに、あっさりと憎む
べき相手を喜ばせようとしている、男を心で拒否しようとするほどに、身体は反発し、より大
きな気持ちよさを返してくる。王女としての誇りも、守ってきた純潔も、男は全てを踏みに
じった。
膣内を行き来する太く、固い棒は全てを蹂躙する。しかし、奪うばかりではなかった。蜜溜
まりを泳ぎ、深部まで進もうとする尖端は、愛液を潤滑油としながらも膣壁を擦ることで、ネ
フェティアを法悦の焔で燃え焦がそうとしてくる。
「あ、んっあ……ぁ、はう、んふ……いや、いや……っ」
舐めるように身体に巻きついた炎は、男と自分を一つに溶け合わせる、浮かんでは落ちて、
軽くなっては重たくなって、熱くなっては冷たくなって、うれしくなっては悲しくなって……
ありとあらゆる感情と感覚の奔流が一つとなって背筋を走り抜けた。一本の束は頭の中で光と
なって降り注ぎ、こんなところで気持ちよくなってはいけない、自分は王女なんだという理性
を塗りつぶし始めた。
「何が嫌だよ、自分から腰振ってるくせに」
遠くから男の声が聞こえる、そんなはずはない、違う、本当に違うのかな、そうかもしれな
いしそうじゃないかもしれない、もしかしたらそうかも、気持ちいいのかも……感情が置き換
わり、身体だけではなく気持ちの上でも男を受け入れようとしている自分に気づいてしまった。
「っ……あ、ああっ、っはあ……ん、ぅっ…………」
鳥のさえずり、虫の鳴き声、風に揺れる木々……周りにあるすべてがはしたない、浅ましい
と自分を笑っているようにも感じられた。もっとも、最後の一線を越えてしまった今では、羞
恥はこの上ない快感だった。ネフェティア自身ももうわかっている、男の硬竿を膣孔の奥のほ
うがほしがっているということを。だから、もう何も気にしなくていい、男さえ黙っていれば
誰にも知られずにすむ……だから、ちょっとくらい…………
「っあ、はう、ああんっ! ああ、ああっ、いい、いい……っ!」
認めれば後は楽だった、全身を凝固させ、背中をぐっとそらし、肉を分け進む亀頭に手付か
ずの奥を擦らせた。息も止まりそうな痺れ、それが収まると今度は甘い疼きが這いずり、頭の
芯にまで響いた。男を受け入れると、あとはただ往復するペニスをむさぼるだけ……おぞまし
さすら感じていた最初のころが嘘のようだった。
男も、ネフェティアの態度の変化を察したようで、生きた貝のように蠢く穴筒に、屹立を、
ひねりを加えながらゆっくりと胎内にねじ込んでいった。
――――――――――――――――――――――――
分身を包み込むゼリー状の粘膜の心地よさが、屹立だけでなく下半身全体に広がり、下半身
が溶けていきそうだった。それでいて、ぷるぷるとした弾力だけではなく、ふわふわとした肉
のじゅうたんが敷き詰められており、その心地に酔いしれて、つい腰の動きを止めてしまう。
「やっと素直になったな……チンポの味はどうだ?」
「あ、はっ、はあぁ……違うのぉ、今だけ、今だけ…………なんだからぁ!」 ネフェティアが振り向く、潤んだ瞳は見開かれているが、その視線は宙をさまよっていた。
子宮へと向かう径は、うねくり、縮こまり、ペニスの行く手を阻もうとしていた。男もそれに
対抗しようと、大きな白桃を思わせる丸尻をわしづかみにして、肌と肌とを密着してより深く
まで剛直を差し込もうとした。
ネフェティアの膣内は、挿し口の狭まった一輪挿しの花瓶に近い形をしており、入り口に比
べると中の穴は細く、狭隘だった。ここまでは同じだが、底のほうほど口が狭くなっておりよ
り窮屈だった。必然的に摩擦も大きくなるが、結合部どころか、太ももまでよごす花蜜がロー
ションとなり、秘奥まで進んでも、抽送の速度にほとんど変化はなかった。
「ん、はあぁ、んう、あああんっ、だめ、はあ、奥は……っ」
後ろから手を回し、たっぷりと実って垂れ下がった乳房を揉みつぶさんと掴む。手の中でひ
しゃげる乳房の触り心地が、興奮をより強いものとした。さらに、ネフェティアが手を振り払
おうと身を捩るので、膣壁のくねり具合に変化がもたらされ、男の射精衝動をより強いものと
した。
「奥のほうが気持ちいいぞ……ほら、どうだ?」
突き刺さったペニスにまとわりつく生きた洞窟、侵入者を飲み込もうとするそれは、襞を張
り付かせるばかりではなく、大小さまざまな粟立ちがカリ首を執拗に扱く。起伏に富んだ穴の
中で肉茎が前後するたびに、ずちゅ、ぐちゅっと粘っこい、生々しい音が周囲に響いた。そし
て、この刺激により泉の水がいっそう溢れ、男のズボンにまで彼女の愛液がべったりと付着し
た。
「あ、あっ、ああん! はあ、あ、う……く、ぅ…………」
深く、浅くと匂い立つ淫水でぬかるむ快楽の裂け目に突き入れを続けると、ネフェティアの
身体もお返しをしようとしているのか、膣襞の縮まりがいっそう激しいものになり始める。歯
のない口で噛まれているようで、気がつけば収縮と弛緩を繰り返す花壷にペニスはほとんど飲
み込まれてしまっていた。
「……初めてなのに、ここまでくわえ込むなんてな、身体もスケベだと、マンコもスケベにな
るんだな」
「ん、あっ、くううっ……は、あっ、だめ、それ以上、んんっ、進んじゃ……!」
小さな身体だが肉路は深く、男の長大な竿でも3分の2ほど挿入しただけでは、子宮への入り
口にはたどり着けなかった。狭くなった膣奥はこれでもかとペニスに向かって押し寄せ、あと
少しのところで亀頭を押しとどめようとしてくる。
「嫌なのか? それじゃあ…………」
からかい半分で竿を戻そうと腰を引いたところで、ネフェティアの声の調子が変わった。高
く喘いでいた声は、わずかに調子が戻り、散り際の花のような悲しみの色を顔に映し出した。
「ふえ、っ……あ、ああぁ…………んんっ!」
女が叫んだ瞬間、男は肉路がぎゅっと締まるのを感じた。異物を追い出す動きではなく、引
き止める動き……心の移ろいが膣肉の蠕動にも現れているみたいで、最後の扉への径がゆっく
りと開かれ始めた。
「やめてほしくないんだろ? ちゃんと言ったら続けてやるよ」
今すぐにでも抽送を再開し、奥の肉まで突き上げたかった。だが、ネフェティアに自分から
おねだりをさせたかった。今までずっと偉そうにしてきたであろう王女を自分の足元に跪かせ
たかった。弱弱しく濡れた瞳、わずかに開いた唇を見ているだけで身体中がぞくぞくとしてく
るのがわかる。
「うっ…………」
「まあ、嫌ならいいんだけどな、ここで終わりにするだけだ」
もちろん終わりにするつもりなどない、だが声を潜めたことでそれを真に受けたのか、向こ
うは今にも何か言いたげに、落ち着かない視線を男に向ける。
「…………っ、して、ください……もっと、奥まで、んんっ」
しばらくの躊躇の後、聞こえたのは男の望んだ言葉……だがまだ足りない。小さく、ゆっく
りと腰を振って、ペニスをせがむネフェティアを焦らし続ける。 「惜しいな、いいか……俺の言う通りに言え。牝豚ネフェティアのスケベな濡れマンコに、あ
なた様のおちんちんをぶち込んで、おちんちんがほしくてしょうがない私をいかせてください
……って言ってみろ」
「………………………め、め……牝豚ネフェティアの、ううっ……スケベな、濡れマンコにっ、
あなた様のおちんちんをぶち込んで………………おちんちんがほしくてしょうがない私をいか
せてください」
「……よし、いい子だ……もっと気持ちよくしてやるからな」
言い切った彼女の顔を見ると、あからさまに恍惚としたものが見て取れた。男は一度ペニス
を引き抜き、ネフェティアの身体を反転させると向かい合った姿勢のまま、細い腰を抱きかか
えて、反り返った肉剣を一気に子宮口まで突き立てた。
眉をしかめつつも、脱力しきった、陶然とした顔を見せるネフェティア、あんなに嫌がって
いた彼女はもうどこにもおらず、今ここにいるのは快楽に溺れた一匹のメスだった。
「はあ、ああっ…………!」
湿ったの中を歓喜の声がこだまする。それは、どんな上等な楽器よりも艶やかで可憐な音色
で、こりこりとしたもう一つの扉を亀頭でつつきながら、男は思わず音色に聞き入ってしまう。
最奥の周囲は、カリ首をいたぶるために設えられた粒立ちが並んでおり、最後の入り口を押し
突いた瞬間に、いっせいに起き上がって、鞘に収めた刀身の周りで蠢き、むさぼり、ぞよめき
あい、うねくり始めた。
一度腰を引いても、極上の快楽を思い出すだけで、砲身は再び膣内に吸い込まれた。男は、
重たそうに弾む乳房の波打ちを眺めながら、大きく深いストロークを何度も続け、翅の折り重
なった壷口から、びっしりと襞を敷き詰めた花鞘、粟立ちがそこら中にある奥処と、満遍なく、
荒々しく、それでいてじっくりとした抜き差しを何度も繰り返す。
「くっ……」
互いの肌を重ねあうことでもたらされる柔らかさ、そして弾けんばかりに瑞々しい膣肉、常
に上に立とうとしていた男だったが、ネフェティアの淫穴の感触に、気を抜けば射精してしま
いそうなところまで追い詰められていた。
――――――――――――――――――――――――
ドレスの引っかかった背中を木に押し付けられ、逞しい腕に抱かれ、ネフェティアは一番奥
の閉じた部分に何度も何度も切っ先を突きつけられていた。ここが一番敏感なようで、亀頭が
強く当たると一瞬何も考えられなくなり、頭の中が真っ白になってしまう。自分が溶けてなく
なってしまうのではと思うくらいの強烈な快感だった。
「あっ…………! だめ、そこっ、ああっいいっ……んうっ、はああぁ」
男の両手が乳首を摘み上げる、揉みつぶすほどに強い力がこもっていたが、おかしくなって
しまいそうな気持ちよさが身体中を駆け巡っていたので、抓られても引っかかれても、気持ち
よくなってしまう。今ならどこを触られても快感の稲妻が身体を貫いてしまうだろう。
「もっとよくなりたいだろ……? そっちは自分で触ってみろ」
男が示したのは、上向きに尖りを見せたクリトリス。言われるがままに瑪瑙の輝きを放つそ
こを摘んでみると、ペニスの出し入れとはまた違った快楽が背筋を走った。鋭い何かが身体に
突き刺さる、もう何がなんだか、自分でもよくわからなくなっている。さまざまな悦楽が一つ
に混じり合い頭をぼんやりとさせる、気持ちいいのかどうかすらもはっきりとしない。
ただ、身体も、心もそのはっきりとしない何かを求めていた。
「ん、んっ…………んむぅ」
男の顔が近づいてくる、それをぼんやりと見ていたらいきなり唇を奪われた。だが、ネフェ
ティアも舌を自分から絡みつかせてそれを歓迎する。くっついている部分が多ければ多いほど
もっともっとおかしくなれるのではないかと思ったからだった。
「ん、はうっ、んふ…………ぅ、もっと、はああ…………」
真っ白な光が頭の中に降り注ぐ、両足は地面にしっかりとついているのに、まったく重さを
感じない、宙に浮いているようだった。生温い波が身体中を包み込む、瞼の裏ではいくつも星
がきらめき、降り注ぎ、打ち上げられ、回転し……さらに星の色は黄色からピンク、そして青
へとさまざまな色に変わった。
「ああ、ああっ、んあああぁ……だめ、おかしい、こんな、ああああっ!!」
絶頂を知らないネフェティアは、ただ戸惑うばかりだった。わかるのは、身体ごと闇の中に
沈んでいく錯覚に陥り、意識が遠のいていくことだけだった。 「っく、いくぞ…………!」
絞り出すような声がした途端、男の前後運動がいきなり止まる。そして亀頭が大きく膨らん
だかと思うと、身体の奥に向かって何かが迸った。びくびくっとペニスが脈打つたびに、子宮
がじわりと熱くなる。この熱が快楽の波に変わり、ネフェティアの身体はオルガスムスに向
かって一気に駆け上がった。
「あっ…………ああああああああっ!!」
胎内に射精されてしまえばどうなるか、わからないわけではない。しかし、浴びせかけられ
る精液がこの上なく気持ちよくて、不安も全部溶けてなくなっていった。一回の脈動ごとに、
下腹を天に突きあげ、思いきりのけ反りながら火のついたような感泣をあげた。
躍り上がった身体、飛び散る汗と涎、頭の中で起こる小さな爆発、絶叫の中、ネフェティア
の意識は次第に薄れていった。
――――気を失っていたのはほんの一瞬だったようだ。引き抜かれるペニスと蓋を失って結合
部からどろりと垂れる精液の感触に意識を引き戻された。
「……………………」
「あんなに乱れるなんてな、姫様よりも商売女のほうが向いてるんじゃないのか?」
絶頂の余韻に浸りながらも、訪れるのは激しい後悔……一時の快楽のために男に屈し、あげ
くその精を身に浴びてしまった。父や母にも、いずれ出会うであろう自分の全てを捧げる相手
にも、顔向けできないことをしてしまった。
「またここに来たら、相手してやるからな……」
どこかすっきりした様子の男は、精を吐き出せればもう用はないといわんばかりにさっさと
立ち去ってしまった。憎い相手のはずなのに……後ろ姿を見送る目はぼんやりしたものになっ
てしまう。
もし、またあの男に出会ったら、今度はもっとひどいことをされてしまうかもしれない、次
は城の中にまで忍び込んできて自分を求めるかもしれない……それだけは嫌だという気持ちと、
それでもいいという気持ちが心の中で何度もぶつかり合っている。
「…………そんな……っ、うう……」
男を憎みきれないことに、自分が一人の女として開花しようとしていることに、ネフェティ
アの目の前は真っ暗になる。ただ、その闇はひどく甘美なものに感じられた。
以上です。
今後はスレの容量にも気をつけます、すみませんでした。 >>14さん長編乙、つかエロさ爆発、ネフェティアはMですな。
こんなすごいエロの後に投下します。
前スレ>>467の続き
皇子×スティア
おまけ
「ここが君の部屋?」
「あ……う、うん」
今のボクはものすごい格好だ。俗に言うお姫様抱っこ状態。
驚くのはまだ早い、なんとこの皇子はボクを抱っこしたまま大広間を風が縫うように抜けてきた。
だけど、その間、誰もこちらを見向きもしなかった。陛下も親父も大臣やミーナも。
認識すらされていないと言った方がいいのかもしれない。始めからそこにいない存在。
存在自体が希薄になる魔法は伊達じゃないらしい。
皇子はボクをベッドにすっと下ろすと、カーテンを開けた。
月明かりに照らされ、部屋が少し明るくなった。
「下着だけ先に脱いじゃったし……順番が逆になったね」
確かに……今、スカートの下には何も付けていない。
ボクは手に持った下着を今さらながらに恥ずかしく思った。
「ううう……ぬ、脱ぐ…の?」
人前でドレスを脱ぐのはさすがに抵抗がある。だけど皇子はニコニコしながら
「僕に脱がして欲しい?着たままでもいいよ、すごく興奮するし」
「い、いやだ!いやだ!いやだぁ!自分でする!自分で脱ぐから!向こう向いてよ」
ボクはがぁッと喚き散らして、窓の方向を指した。しかし皇子は言った。
「見たいんだ」
「清々しい顔をして言うな!このスケベ!向こう向けったら向け!向きやがれ!」
「鏡あるかな?それも全身鏡」
「眼を潰してから貸してやるよ」
皇子は渋々、後ろを向いた。ボクも後ろを向いてドレスに手を掛ける。 スカートとストッキングを脱いで、胸元の紐を解く。
このドレスはおっぱいを寄せあげて根本から搾り出すように締めつけるコルセットがある
ボクはその止め金を外した。解放されたおっぱいがふるんと弾みを付けてこぼれ落ちてくる。
そこそこ育っているおっぱいだが不安げなボクの意思とは裏腹にその先端が
本能的に察しているのかピンと存在を主張している。
スカートを脱いだお尻もなんだかむずむずして、恥ずかしい話だけ……濡れている。
「も、もう…こっち向いてもいいよ…」
ボクはおっぱいとアソコを腕で隠して皇子に言った。が、皇子は後ろを向いたまま言った。
「スティアって着やせするタイプなんだ。スレンダーな身体だなって思っていたけど
お尻の曲線と肉付きがすごく綺麗だし、大きすぎず、かといって小さすぎもせず
後ろから見る君のお尻、とっても魅力的だよ。胸も形が良いし、将来はリンゴくらいに育って欲しいな」
「なっ……ど、どうやって!?」
ボクは手で胸と股間を隠したまま怒鳴った。
「光を屈折させてね……ボクの眼に映るようにした。
真っ暗だとできないけど月明かりくらいの光があればできるんだ」
「そ、そんな…それも魔法!?」
どんだけ御都合主義な魔法なんだ。魔法使いの元祖って生粋のエロジジイなんじゃないのか!?
「これは光学魔法の応用だよ。魔法学校で親友に教えてもらったんだ、
スティア…とっても魅力的な身体だよ。でも、できればストッキングは脱いでほしくなかっ――――――」
ボクは問答無用で殴った。それもグーで。
「裸の君はとてもステキだよ。ストッキングは邪道だね」
皇子は赤くなった頬をしきりに撫でながら言った。どうせ治療魔法でも掛けているんだろう。
ボクの緊張はすっかり解けて、皇子と一緒にベッドに寝そべった。
「…………ティスってさ…すっごく手慣れているような気がするんだけど
ホントに初めてなの?」
「さっき言ったとおり、実戦するのは初めてだよ」
「めちゃくちゃ含みのある言い方だね」
『実戦』は初めてだけど、侍女のお尻で毎日かかさず予習、復習、練習していましたなんてオチじゃないだろうな?
「まぁ…女の子の裸は小さい時、妹と一緒にお風呂はいった時くらいかな?」
「へぇ…妹さんがいるの?」
「ああ……今は臣下の屋敷からお嬢様学校に通っているから城にはいないけど…君に似てお転婆だからね」
「あら、気が合いそうだこと」
ボクはわざとらしく上品な口調で言った。
「じゃあ、もし妹さんがボクみたいに誰かとエッチしていたら、ティス兄様としてはどうする?」
何気ない質問だった。
「それはもちろん」
「もちろん?」
「リュティを汚した身の程知らずの大馬鹿ボケナス野郎の目玉をスプーンでくりぬいて、去勢させたあと、死なない程度に切り刻む。
ああ、切る順番は足の指――(中略)―――その後市中引き回しの刑、磔にしてありとあらゆる苦痛を――(中略)――
それで骨になったら鞭で打って永久に生まれないよう黒魔術で処置するんだ」
リュティスは中略部分も含めて10分くらい語った。それも終始、笑顔だった。
………大馬鹿ボケナス野郎は皇子様、あんただよ。このシスコン野郎
「まぁ…それは置いて…僕は長男だし、王位の継承者としてそれなりに勉強しなくちゃならない。将来迎える王妃様を幸せにする為にも。
好きな女性1人幸せにできない王が国民を幸せにできるワケないからね。
となると当然、夜のお勤めも頑張らないと。初夜で王妃に幻滅されるなんてイヤじゃないか。
だから性の勉強も頑張った。どうやったら喜ばせられるか、感じさせられるか、四十八通りの技術はマスターしたつもり。
断っておくけど、勉強はあくまで書物で学んだよ。年頃の女性の肌を見るのも触るのも君が初めて」
「あ…あ、そう…そーなんだ…はは」
優秀な頭脳の持ち主は夜の仕事も熱心ってことらしい。皇子が努力家なのも何となくわかる。
でも、すごく大事な事を言っているような気がするんだけど、なんかそんな気がしない。
「……勉強熱心なのはわかったんだけど…出会ったばかりのボクといきなりって、その勉強の中にもあったの?」
「ないよ」
皇子の答えは実に素っ気なかった。 「じゃあ、なんで…その…ボクと…」
「君と話してわかった。きっとこのお姫様は『運命の女性』だってね。僕は絶対、君をお嫁さんにして幸せにしてみせる」
「ま、真顔で…そんな……バカ」
ボクは恥ずかしくなって言った、自分でもわかる……たぶん、ボクもリュティスのことが好き……なのかも。
だんだんとその気になっていったボクにリュティスは言った。
「それに君は体力に自信がありそうだから椋鳥(むくどり)や潰し駒掛け、慣れてきたら梃子掛(てこがかり)
とかも出来そうだよね?夜は退屈させないであげる」
「は、はぁ?むくどり…つぶしこまがけ?て、てこ…何だよ、ソレ」
「ん、ああ。セックスの体位の名称だよ。けっこう激しい体位だからもっと慣れてからの方が――――――」
ボクはもっかいグーで殴りました。
「すみませんでした」
……これから人生で一度きりしかないイベントだってのに、なんて緊張感のない情事なんだろう。
夢にみた初体験とはほど遠い気がする。ボクは仰向けになって天井を見た。
(………でも緊張してガチガチになるよりかはいいかも……)
そう、緊張してワケのわからないウチに終わるのも癪だ。皇子の口はアレだけど、努力家のようだし
気持ちよくしてくれる分には悪い気はしない。ボクも年頃の女の子だし、口には出して言えないけど
自慰は週3〜4回の頻度でしている。ボクは……その…結構…エッチなのかもしれない。
そんな事を思っていると皇子が上着を脱いでボクの上になった。
体つきは細いけど、うっすらとみえる筋肉は男のソレ、腹筋も分かれているし、結構鍛えているのかもしれない。
「じ、準備……で、できた?」
「うん…綺麗だよ…スティア」
皇子の唇が耳の敏感なところに落とされる。
「あ………」
「スティア……ゆっくり、優しくしてあげるよ」
皇子はボクのおっぱいの根本をそっと掴んでボクの顔を覗き込んだ。
「あ…ん…そ、そんなこと……」
「ふふ…耳に息を吹きかけるだけでまたピクンピクンってアソコが反応してる…気持ちいい?」
皇子は両手をボクのお尻にまわして後ろからアソコを手でなぞった。
「あ…い、いきなり…そんなトコ」
つつーっと軽くなぞるように愛撫を始める。あ…や、やば…これ…ん
「はっ…あっ…テ、ティス…ちょ…ン」
「どうしたの………切ない声だして」
意地悪く笑いながら皇子は軽くさする動きから、核にあたる突起をクニュと摘んだ。
「あっ!だ、だめ…も、も、やめ」
「もうイッちゃいそう?とっても感度がいいんだね、スティアは自分でするの好きなんだ、」
ボクは皇子の言葉など上の空。
眉を潜めて腰をキュッと引いた瞬間、アソコがピクンと引きつり達してしまった。
「あっ……ぅわ…あ…はっ…んくっ…う、ううっ…」
皇子はピクン…ピクンと引きつる背中にキスして、ボクの潤んだ眼を覗き込んだ。
「泣く程気持ちよかった?」
「…自分以外の指で…達っしちゃうのは屈辱だよ」 「そうなの?…こんなことされても?」
皇子は背後からボクのおっぱいをふにっと両手で掴んだ。
「あ…ん」
背後からの愛撫。お尻に硬いアレが当たっている、ものすごく熱くビクビク脈動している。
「柔らかい……川でみた時はごめんね…この突起は何かな?」
皇子はおっぱいを下から上へと掬い上げるようにして、先端の乳首をコリコリと摘んだ。
「あっ…あああ、ち、乳首…やめ」
「…どうしたの?おっぱい気持ちいい?」
「う…うう…い、言わせないでよ」
ねっとりと唇を合わせて、舌を絡ませてくる。もうはなすがままだ。
身体の芯が熱くなり、くちゅ…と淫猥な蜜がアソコを濡らしている。
アソコから愛液がとろっと太腿をつたって垂れ落ちてくる。それを感じ取ったのか、皇子が言った。
「スティアの身体…見せてくれる?」
何だって?皇子はボクのお臍の辺りから下をじっと見ていた。
初めて見る女性の身体に驚いているのか、とにかくその眼だけは男のそれ。
何を見たいか…その意を理解したボクはおずおずと言った。
「そ、そんなに見たいの?」
「見たい」
……ボクは見られて感じるタイプじゃないのになぁ…どうかしている。
その……ア、アソコを見せるなんて。
「……綺麗なモノじゃないけど…それでも見たい?」
「君の身体で…綺麗じゃないところなんてないよ」
ボクはリンゴみたいに顔が赤く、紅潮してきた。
自分でもわかる…皇子の言葉に興奮し、発情しているのだ。やばい…でも…身体が火照って……
「ベ…ベッドから降りて……その…ひ、膝立ちで…うん、その体勢の方が…」
「………ゴク」
皇子が生唾をのむ込む音。ボクはベッドに腰掛けての前で少し足を開いて見せた。
「……こ、これが…ボクの………お、女の…ところ」
顔から火が出るくらい恥ずかしいけど…ボクは言った。
あ…今、とろっってすごく濡れてるのに…うう。
「これで満足?」
「スティアの……書物で見たときより…ずっと綺麗だね」
「そ、そんな恥ずかしいこと言うな!」
ボクはかぁと赤くなって思わず声を上げた。
「ご、ごめん……でも、初めて見るのから…つい…ね?」
次の瞬間、皇子はボクのアソコに吸い付いてきた。キスするように啄むような感じから
舌でねっとりと秘裂沿いに舌から上へ、上から下へ。太腿をがっちりとホールドして激しく責めてきた。
「はっ――――――んん!くっ……ふっ!」
最後に一気に核を吸い上げられ、ボクは思わず達してしまった。
ガクガクと腰が揺れて、身体が大きく仰け反り、ベッドに倒れた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
い、いきなりだけど…ま、また…ううエッチだ…何でこんなに簡単に……
でも気持ちよかった……ボクは心地よい疲労感にゴロリと横にうつ伏せになった。
このまま枕に顔を押しつけて寝たい……そんな事を思っていると、がおそるおそる声を掛けてきた。
「今度はボクの番かな」
皇子がズボンを脱いだ。初めてみる男のア、アレ……あ、あんな大きいサイズなの?
見るのは初めてだけど…あんな大きいのがボクのアソコに?
ドクンドクンと脈打ち、180度の角度で反り返り先端からは少し透明な粘液がこぼれだしていた。
ボクのお尻に欲情でもしたのかしきりにソレを扱いている。
「テ、ティスって………お尻が好きなの?」
「スティアの健康的な太腿とお尻はすごく魅力的だと思う、もちろんおっぱいも」
「……変態……」
「否定はしないよ……いい…スティアの中に入りたい。後ろからいい?」
「う、後ろからは…い、イヤ……ちゃんと前から…して」
い、犬みたいにバックからされるのは何か屈辱的だし、初めては正常位がいい。
「仰せのままに。お姫様♪」
皇子は向き直ったボクの股に身体を割り込ませ、アソコの窪みにあてがう。
先端の半分ほど埋まると恥ずかしい液がいよいよ溢れだした。 「スティア、大丈夫?…ゆっくりいれるけど、痛かったら言って」
「う、うん…あっ」
「いくよ……くッ」
「あッ………ほ、本当に入って…」
ずるっと皇子のがボクの中に入ってきた。圧倒的な圧迫感にチリチリとボクの脳を焼いていく。
い、痛い……けど、それと同時に痛みとは違う何かが押し寄せてくる。ボクは皇子のアレに圧倒された。
「ああうっ!か、硬い……」
「くっ…んぅ」
身体の中心に熱く溶けた鉄棒を突っ込まれたような感じがする。
十分に濡れていたけど痛い。膣壁を押しかえすようなアレが奥へ奥へと進んでくる。
ボクは目を閉じて、荒い息をつきながら歯を食いしばった。
「あ…あ…スティアのここ…気持ちいいよ」
「あ…痛っ…あ、あんまり…動いちゃ…くっ」
ボクの腰に手を回して腰を進める皇子。
「あ…熱い……スティア、ごめん…ちょっと我慢できそうにない、気持ちよすぎる」
「えっ…あぐっ!?ティス!ちょっと、い、痛い!あ、あんまり激しくっ!!」
ティスはボクの腰を掴み、貪るようにがつがつ突き上げた。
もうたまらないという具合にボクのお尻を鷲掴んで荒々しく腰を打ちつける。
激しい腰使いにボクは声を上げ、シーツを握りしめ大きく喘いだ。
「あっああっ!」
「お、お尻…お尻…柔らかい……スティア…スティア!」
皇子が最奥にズブッと突き刺すように腰をくり出した。
それと同時にぶりゅッと熱い体液が吐き出された。
「あッ、熱っ!…ダ、ダメ!な、中はッ――――――」
「と、止まらない!スティア!」
快楽に震える皇子の苦しそうな顔、あの余裕気なティスの顔からは想像できない顔だ。
しかもボクに密着して、「うっ…うう…」と声を押し殺している。
ああ…さ、最悪だ…膣内で出されちゃった………ボクは呆然と天井を見上げていた。
皇子はまだ密着して、腰を動かしている。
「ふッ…ふッ…」と小刻みに息を吐き、腰をボクの股に打ちつけるたびに
びゅる…びゅるる…と精液を射精し続けている。
うう…こんなに大量にぶちまけられたら…あッ…うう…
ようやく出し尽くしたのか、何度か押し込んだ後、名残惜しくずるずるっと
ボクの中から萎えかけたアレを引き抜き始めた。
つぷっと膣口から弾むようにして先端が抜かれた時、ヨーグルトみたいな精子が
ドロッとボクのアソコからこぼれた。
「はァ…はっ……あ」
ボクは荒い息をつきながら気だるく起き上がった。
激しい行為の最中は気付かなかったけど猛烈に暑い。
全身に汗と体液にまみれ、致した後の独特な臭気が鼻をつく。
「テ、ティス……暑いからちょっと離れて……ん…喉が渇いた…」
実際はそれどころじゃないのだけれども思考が霞む。とにかく水、水、水が欲しい。 「ん…スティア…ん…」
呆けた様な声を出してはまだアレを握ってボクから離れた。
ボクは全裸のまま脱いだ下着や衣服に目を向けベッドから下りた。
水差しはテーブルの上だ。とりあえず床に落ちているシャツを取ろうと屈んだ時
「――――っん」
下腹部からどぷッと精液の塊が太腿を伝って逆流してきた。
ボクは咄嗟に立ち上がって、股に手をやった。
「うわ……さ、最悪…」
次の瞬間、がばっと後ろから抱きつかれ、ボクは反射的に壁に両手をついた。
「テ、ティス!?」
「スティア…ごめん……も、もう一回。君のお尻をみてたらまた催してきて…」
皇子はボクのお尻にぐいっとアレを押しつけた。
「えっ…ちょっと、待っ…ボクはもう、もう限界――――あぐっ」
皇子のアレが再び硬くなり強引に押しこまれ、思いっきり下から突き上げられた。
「あっ…い、いやっ…、ダメ…こ、これ…キツすぎ」
そして始まるピストン運動。ボクの腰を両手で掴み込みパンパンパンと激しく
腰を振り出した。その動きに合わせておっぱいがぷるんぷるんと跳ね回った。
「スティア、スティア…ごめん、こ、こんなにき、気持ちいいなんて…あ、か、加減がきかなくて
あ、も、もう出る…出るよ!」
皇子はボクのおっぱいにぎゅっと指を食い込ませて、膣内で精子をぶちまけた。
「あっあっ…こ、こんなに出されたら――――出されたら」
皇子はまだ背中に密着して、腰を動かしている。射精しながら腰を動かしている。
冗談抜きでも、もう限界だ………あっ…ま、またのアレが射精して……ううっ…この猿めっ!
その後、4回くらい出してようやくボクから離れた。
ボクの股もお尻もドロドロだ。もう汗なのか体液なのか判別もつかない。
ぐったりしたボクはベッドに倒れていた。起き上がるのも気だるく、またその力もない。
「あ…スティア…」
致した後、皇子が下着だけ履いて声をかけてきた。
「何だよ……またお尻とかおっぱいとか言わないでよ……口とか言ったらぶっ殺す」
「そ、そうじゃなくて……そのみ、水を…持ってきたんだけど」
ボクは皇子からコップを受け取り、一気飲みすると皇子が持っていた水差しを奪って
浴びるように飲み、飲み干した。少し元気が出たボクは半身だけ起こして言った。
「……中で出していいなんて言ってないんだけど?」
「気がついたら――――――その、抜けなくなって…ご、ごめん」
「…………この猿」
「………か、返す言葉もないよ。本当にごめん」
「この変態、性欲猿、尻フェチ、腰振り人形、変態!変態!変態!妊娠したらどうするんだよ、このバカッバカッバカッ!」
ちょっと言いすぎたかもしれない。いや、まだ甘い!だってそうだろう?
「で、でも――――――」
「でも?何だよ、何か言いたいの?」
「僕と君の相性はばっちりみたいだし」
ボクはもう問答無用で思いっきり皇子の額に頭突きしてやった。
その頃、来客用にあてがわれた一室
「ティータ……晩餐会の時、魅了の魔法…使っていたよね?」
椅子に腰掛けた王が秘書官に問いかけた。
「はい……しかしせっかくワンサイズ下のドレスを着ても陛下は見向きもしませんし、
このドレス…キツいので下着を履かなかったんですよ。
大臣や王を引き寄せるのは実に恥辱でした。婦人や同性からは髪の毛を何本差し上げたか…」
「皇子がわがままを言ってすまなかったね」
「始めからこのおつもりだったのですね」
「ん?何がだい、ティータ」
「陛下は元々あの姫君を殿下の后になさるおつもりだったのでしょう?」
今頃、契りを結んでいるだろう二人を思い、秘書官は言った。
「ははは、それは考えすぎだよ。私はそこまで知恵が回らないな」
「………全く、こんなにいい女が側にいるのに…」
「ま、まぁ…君とは政務のパートナーとして…ね?」
「確かに……プリン姉様から『本番禁止』と厳命されていますし、側室を廃されたのは実に残念です」
「ちょ……テ、ティータ…?」
王の目の前でドレスの胸元を広げ、スカートを捲り上げ褐色の尻をむき出しにした女秘書官。
「本番厳禁……つまりは私の生殖器に挿入しなければ問題ないのです。陛下、まず口淫などいかがです?」
そう言ってダークエルフの秘書官は王の股に顔を埋めた。
(あ……ああ、す、すまない。王妃……願わくば愛娘だけは純情で可憐であらんこと――――――うっ)
「へっくしゅ!!」
「姫様?」
「ん〜誰か噂でもしてたのかな…」
ここはリューティルが下宿しているマイスティン家の屋敷。
それも私室としてあてがわれている部屋だった。
「た、体調が優れないのであ、あれば――――――」
「ふふん……じゃあ、私の身も心も温めて欲しいなぁキルシェ?」
リューティルは女子校の制服姿でキルシェの上に跨っている。
「ふふ…パンティー脱いじゃったからこのままでもOKだよ」
「ひ、姫様…い、いけませ――――――」
「また言ってる……ふふ、今日はいつも通っているお嬢様学校の制服コスでしてあげるよ。
ほら…紅いタイに紺のブレザーに赤いスカート…ニーソックスに
伊達メガネなんかも…どう、燃える?燃えるでしょ?ねぇ、キルシェ?」
「うう…ひ、姫様、このような…いけませ――――――」
リューティルは強情な従者にとどめの一撃を食らわせることにした
「あはっ……今日の授業中にね、キルシェのが私のアソコからドロって出てきたんだよ?
ばれなかったけど、私さとーっても恥ずかしかったんだから……ねぇお兄様、リュティに種付けしてくださいませ♪」
「う、うう、うおおおあああっ!」
「きゃっ!?」
「姫様、姫様、姫様ぁ!」
「あん、あん、あん!キルシェ、すごい!あはっ激しいよォ!」
おしまい >>16
GJ!
王子、テラスでの会話は良かったのにどうしてこうなったw
>>16
おつおつ
何度読んでも皇子様は姫様に非童貞であることがばれそうになって
童貞っぽく振舞ってるように見えるw
テラスからお姫様抱っこで連れ出すとこまでの流れは童貞には無理だろ
それはそうと、前の皇女様が海に行く話のとき、皇子様は王様に連れられて
諸外国を訪問中、ってなってたんだな、でも今回の最後で皇女様はは下宿先にいるから
別の訪問の時? >>24
はい、別訪問の時でOKです。
次回はリューティルが通うお嬢様学校の話なんかを考え中。
貴族の令嬢やお準姫に値する女生徒とかおもしろそう。
個人的にスピンオフ話が好きなので宿屋の娘のエッジやアリスの
エロ小話など投下先は別ですが書いたりしてます。
機会があれば陛下×女秘書官なども書いてみたいなと思う今日この頃。
今年もよろしくお願いします。 職人の皆様、投下乙です。
では投下します。
ユゥとメイリン5
※注意事項
やや鬱展開あり、陵辱あり 薄明かりの中に、淡く浮かび上がる寝顔を見詰めていた。
僕の隣で規則正しい寝息を立てる可愛い女の子、メイリン。
──このまま、朝が来なければいいのに。
何度そう思ったか分からない。
このまま、何もかもを眠らせた、静かな時がいつまでも続けばいいのに。
メイリンが僕の隣にいて、僕だけがメイリンの隣にいて。
囲われた狭い世界の中で、二人だけで生きられたらいいのに。
メイリンの艶のある黒髪をそっと撫でる。絹糸よりも滑らかな髪が、うねるように緩く
編まれていて、その流れにそっと指を沿わせるように撫でる。彼女を起こしたりしないように。
メイリンが、好きだ。
一度自覚してしまえば、その感情はひどく僕の内側を焦がした。
僕らの『クニ』を滅ぼした国の偉い人の娘で、すっごいお姫様で、僕とは生まれも育ちも
まるっきり違う女の子。
でも、優しくしてくれた。
僕の失った故郷の話を、興味深げに聞いてくれた。とても楽しそうに、目をきらきらさせて。
僕の一族のことも、僕の家族のことさえ、気遣っていてくれた。
そして、たくさんのことを教えてくれた。この巨大な国のこと、その周りの国のこと、学問の
こと、交易のこと、武芸のこと、そして、花のこと。
あのひとときを、楽しい──と思ってしまうのは、罪なことだろうか?
僕が話して、メイリンが話して、メイリンが笑って。
いつまでも、いつまでも、そうしていたいと願ってしまう──それは、罪だろうか。故郷の神々と、
同郷の人々に対する。
それでも、知らぬ間に夜は更けて。
その闇の先に、必ず、新しい朝は来てしまうのだった。
* * *
「──メイリンの、護衛?」
「そうだ、おまえもそろそろ、もう少し役立つ仕事をしろ。護衛は二人一組で付くからな。一人が
役立たずでも、何とかなる。」
僕がその話を聞いたのは、夕刻の稽古の時だった。冬も大分深まっていて、日が暮れると、身体を
激しく動かしていてもかなり寒い。それでもユイウ様は帰ってきてからの稽古を欠かしたりはしなかった。
庭に明かりを点して、身を切るような寒さの中、剣を合わせる。どんなに寒くても、相手の動きに
全神経を使い、鋭く飛んでくる一撃を交わしてなんとか防いでいるだけで、終わる頃には全身から
汗が噴き出している。特にユイウ様の剣は鋭くて重くて、守りから攻めに入る動きが滑らかで隙が
なく、一瞬たりとも気の抜けない相手だった。
全身の関節が笑い、喉がひりひりするほどに息を乱している僕とは違って、歩けるようになると同時に
体術を仕込まれ、物心が付くと同時に剣を取ったというユイウ様は、少し汗をかくだけでほとんど
息を乱さない。
刑部でも師範格と対等にやりあう位の腕だと言う話も──勿論メイリンから聞いたのだが──頷ける。
そして最後には次の日の日中にやっておくべき『宿題』、つまり基礎鍛錬が課されて終わる。
メイリンの護衛を務めるという任務も、その『宿題』の一つとして課された。
この邸の護衛を務める人達にも、たまに鍛錬をみて貰ったりしてそれなりに馴染んでいる。そのうち
一人と組んで、明後日の帰りから輪番でメイリンの護衛を務めるという話だ。
「まあ、なにかあっても身を盾にするくらいしか出来ないだろうけどな。むしろメイリンのために、
その身を犠牲にして死ね。」
言うこともやることもキツくて容赦のない人だけれど、ユイウ様には──もう一人の兄、スゥフォン様
にも、僕の能力も、努力も、可能性も、冷徹に観察されているのを感じる。そのユイウ様が、二人の護衛の
うちの補佐役とはいえ、大切な妹であるメイリンの護衛を任せてくれるのは、なんだか認められたみたいで
誇らしかった。
だからその日は単純に喜んで、期待と不安の入り混じった気持ちで胸を膨らませていた。新たな任務が、
僕とメイリンの関係を決定的に壊してしまうなんて、思いもせずに。
* * *
この邸において、『信用される』ということは、意外と重い意味を持っていた。長くここで暮らすほど、
ひしひしとそれを感じる。
この邸の主は皇族であり、奥方自身も政府の高官であるため、入ってくる使用人の身元は非常に厳しく
審査される。逆恨みしたり、何かに利用しようとして強引な手段に出る輩が少なくないらしいのだ。
僕の『クニ』はシン国と戦を交えた小国であり、その点では『信用できない』に限りなく近いわけだが、
その上でメイリンの護衛を任されるというのは、僕がこの邸に入ってからの努力の積み重ねの結果だと、
僕と組んで護衛にあたる古参の護衛士は褒めてくれた。
彼はこの邸に入ってから長く、メイリンのことも小さいときから護っているのだという。
彼に限らず、この邸の使用人たちは皆、誇りを持ってこの邸に仕えていた。かなりの忠誠心を要求される
代わりに、他の貴族の邸に比べて、きめ細かく厚待遇らしいのだ。
僕も、それは感じる。いつもいい扱いを受けているし──メイリンの兄上達の悪口雑言は別として──
メイリンは僕を馬鹿にした態度なんて取ったことはなかった。特に、たまにメイリンの房室で夕食を
一緒に摂ることがあったりすると、メイリンはやたらと僕にいっぱい食べさせようとする。僕らの
『クニ』が長い間飢饉にさいなまれていたせいで、僕はシン国の同年代の青年達と比べても小柄なのだそうだ。
「ユゥはまだ、これから大きくなる。」
そういってメイリンは、自分の分のおかずからもひょいひょいと僕の皿に移してくる。
もちろん、主人格であるメイリンと僕とでは皿に乗っている内容も質も量も初めから差があるのだが。
「有難う。……だけどまさか、自分の嫌いなものを僕にくれてるんじゃないよね?」
そう訊くとメイリンは真っ赤になって反論する。
「ばかな。私は好き嫌いなどせぬ。現に、いま与えているものも、どちらかと言うと好物ばかりだ。」
確かに……というか、ここで出されるものは、どれもこれも美味しいと思う。使用人の食事にさえ、
毎日のように肉か魚の主菜が付き、随分豪華だ。
「じゃあ、姫様が食べればいいのに。姫様だって、成長期なんだし。」
「むぅ……。女子(おなご)はなにかと、大変なのだ。迂闊に好物ばかり食してしまうと、変なとこに贅肉が…」
「別に、ついてないと思うけど。」
僕はメイリンを見た。ほっそりとした顔つき、肩も首も細くて余分な肉などどこにも見当たらない。
「だから苦労しておるのだっ!! 太ったら、すぐに見られてしまうではないか!! ……おまえに。」
「細いし、もっとふっくらしてもいいくらいだと思うけど。」
メイリンは両手のひらをぺとり、と自分の胸にあてて横目でちらと僕を見た。
「……ユゥはもしかして、『ほーまんな美女』とかが好きなのか?」
「『ほーまん』? ああ、豊満? 太ってるってこと?」
「人によっては、ああいうのが『色香がある』とか言うらしいが。」
僕はぴんと来なかった。僕らの一族にはあんまり太った人はいなかったし、こちらに来てからも、
市場を見るための『宿題』として買出しを手伝ったりはしているけど、外でもこの邸でも、メイリンより
綺麗な女の人には会ったことがない。
「それとも実は、ユゥには郷里(さと)の方で密かに言い交わした娘でも、おったかの? 許嫁は、
居なかったと聞いておるが。」
「いないけど、なんで?」
確かに僕の周りにも、親に許嫁を決めてもらう前に自力で約束を取り付けてくるような奴も居るには居た。
でも僕は、それほど器用ではない。
「…なんだかわたしに、つれないではないか。ユゥは、どういう女が好みなのだ?」
「どういう、って……」
容姿は、メイリンほど綺麗な娘は居ないと思う。胸だって、メイリンくらいあれば充分だと思うし、
体型だって凄く綺麗だ。何よりメイリンには緊張感を持って鍛えている人特有のしなやかさがあると
思うんだ。勿論いまのメイリンよりもっと肉付きが良くなってもぜんぜん構わないし、遠慮せず
もっと食べていいと思う。
メイリンがメイリンがメイリンがメイリンが。
好み、と訊かれてメイリンのことしか思い浮かばない自分に戸惑う。昔はもっと色々…でも、昔のこと
なんて、もう思い出せない。
『ご主人様に対するお世辞』として、ここでメイリンを褒めておくのが普通だと思うけれど、何しろ本当に
本気でメイリンのことしか考えられないので、恥ずかしくて何も言えなくなる。ここでさらっとメイリンを
褒めていい気持ちにさせられるくらい器用なら、それこそ自力で許嫁くらい見つけてこれたかもしれないのだ。
「別に、僕の好みなんて、どうでもいいでしょう……。」
そう言うのがやっとだった。
「じゃあ姫様は、どういう女の人が美人だと思うの。」
憮然として拗ねるメイリンに、逆に質問してみると、途端に胸を張って得意そうに応える。
「ふむ。それは当然、母上様だな。わたしにとって、都で一番の美姫と言えば、母上様だ。」
これはいい質問だったみたいだ。メイリンは滔々と続ける。
「美しくて聡明でお強くて……自分に厳しく、他人には優しい。そして何より、父上様に愛されておる。
母上様はいつもわたしの理想であり、目標でもある。」
両親のことを話すメイリンはいつも誇らしげで、メイリンがそんなにも褒める『母上様』にも、一度くらいは
会ってみたいと思った。──勿論、一刀両断されるのでなければだけど。
それからメイリンは、『母上様』がいかに美しくて素晴らしいかを語り、僕の目論見どおり、さっきの話題は
どこかへ行ってしまった。
* * *
夕刻になってから、メイリンがいつも通る道を辿り、古参の護衛士と共に初めてメイリンを迎えに出る。
この時間に外に出たことはなかったが、大通りはいろんな人でごった返していた。沢山の人、多様な装い、
西や東の遠方から来た様々な荷物。王都であるこの街が、いかに大きく豊かであるか、いかに遠方からの
商人を集める吸引力があるかを物語る。
雑踏の中で、僕はもう一人の護衛士に尋ねた。
「こんなに人が居て、護衛には差し障りないんですか?」
人が居た方がかえって安全なこともある、と低い声で彼は言った。
メイリンの通う『学院』を見るのも初めてだった。そこは堅牢な壁で囲まれた広い建物で、入り口は全て
自前の護衛士が詰めており、ちょっとした宮殿にも見えた。
通行証を見せて中に入ると、よく手入れされた庭園の中に回廊で結ばれた広い建物が続いており、そこに
通う学院生らしき人たちがゆったりとあちこちで迎えを待っていた。
そこでのメイリンを見た気持ちを、どう言えばいいだろう。
きちんと正装したメイリンは、邸でも見ていたけれど、やっぱり外の壮麗な建物の前で見ると、より
映えて見えた。
彼女は建物を取り囲む回廊の階(きざはし)に腰掛けて、楽しそうに笑っていた。
僕の、知らない男と、一緒に。
──『あいつはいずれふさわしい家格の男の元に嫁ぐのだから。』──
ユイウ様にそう言われても、僕はそのときまで何も分かっていなかった。
メイリンに、ふさわしい男。高い教養と、上品な物腰、優雅な振る舞い。僕とは生まれる前から圧倒的に
差のついている、この中華の国の連綿たる伝統と文化を受け継いだ男。その体に流れるのは、この国を
支配する、貴族の血。
メイリンの隣に居たのは、正にそういう男だった。見るからに上質な衣を纏って、二人の周りの空気さえも
違って見える。
それに比べて、僕が着ているのは奴僕の青衣で。彼我のあまりの違いに声も出ない。
そして感じたのは──目の前が真っ赤に染まるような──嫉妬心。
嫉妬というのは、僕ら桂花の民にとって、忌むべき感情だった。
森の恵みは万人に与えられ、多く取りすぎた者は少ない者に分け与える。体の丈夫な者は、弱い者を
助けてやる。壮健な者は、老いた者を助ける。その助け合いの中で、妬みや嫉みなどの感情は邪魔に
なるだけだ。
病になる者が健康な者を羨んでもどうなるものでもなく、皆それぞれの天命を受け入れて謙虚に生きた。
シン国に来てからも、僕は自分の出自や境遇を恥じたことはなかった。
僕はいろいろなものを失ったけれど、一番大事な故郷の人達すら裏切ったけれど、それもまた、僕に
与えられた天命で、逆らっても仕方ない。与えられたものの中で精一杯に努力してこそ、道は拓ける。
なのに、そのとき僕が感じた感情は、紛れもなく嫉妬だった。羨ましい、妬ましい、あれが欲しい。
彼にあり、僕にないものが。
財力が。家柄が。その血が。メイリンの横に居るために必要な、すべての要素が。
そのとき分かった。僕は今まで、心に蓋をして生きてきたのだ。暗い欲望も、人の持ち物を妬む心も、
こんなにも僕の心の中に──噴き出すほどに、あるじゃないか。
メイリンは、僕の姿を見つけるとぱっと明るい顔になり、手を振った。
でも僕は、いまの顔を見られたくなかった。
身の丈に合わぬ、過ぎた欲望、自らの境遇を僻む気持ち、そして何より、他人の持ち物を妬む心。
黒々とした心を抱える僕はいま、どんな顔をしているのだろうか。
「ユゥっ! 今日の帰りから、ユゥの番なんだね。一緒に帰ろっ!!」
「……当然です。一緒に帰るために、迎えに来たんですから。」
僕は少し俯いて、メイリンの方を直視しないようにしながらぼそぼそと答えた。それでもメイリンは
明るく上機嫌そうに振舞う。その明るさも、いまは少し突き刺さるようだった。
「ねえユゥ、手、つないで。」
「駄目です、なるべく手は開けておかないと。」
僕は下っ端としてメイリンの荷物を持ってあげる。そして教えられたとおりに答える。
メイリンはぷっとふくれた。
「けち。せっかくの初日なのに。」
「姫様、彼は任務中です。あまり煩わされませぬよう。」
もう一人の護衛士がやんわりと嗜める。彼は随分と古参で、メイリンも言うことを訊かざるを
得ないようだ。
「つまんないのっ。」
メイリンはそう言い放つと、ぽてぽてと僕の前を歩き始めた。僕のほうを見ないでくれるのは、
いまだけは助かる。
いろんなことを考えすぎて、頭がずきずきするほどだ。
綺麗な、綺麗なメイリン。
いまの僕には、メイリンを視界に入れることすらおこがましい気がする。そして、メイリンを見る
ほどに、心が暗く澱んでいくのが判る。
こんな感情、知りたくもなかった。
* * *
邸へ帰ってすぐに、「頭痛と吐き気がする、伝染(うつ)してしまってはいけない」と称して使用人部屋の
僕に与えられた寝台に入ってうずくまった。この邸に連れてこられてからいままで、調子を崩したことは
なかったけど、むしろその所為で皆あっさりと信じてくれた。
頭は本当にずきずきと痛んだ。目をつぶると、脳裏に次々と光景が浮かんだ。
花に囲まれた、知らない邸に立つメイリン。そのそばには、知らない男が立っている。多分、今日学院で
見た男に似ている。微笑むメイリン。男もきっと笑って……
そして、抱き合う。
メイリンがいつか彼女に見合う貴族の家に嫁ぐとしても、それは彼女にとっては嫌々従わねばならない
義務のようなもので、僕と一緒に居るときのような輝く笑顔は見せないのだろうと、なぜか勝手に思っていた。
でもきっと──ユイウ様の言うとおり──メイリンは誰にだって優しい。
メイリンに笑いかけられて、優しくされたら、どんな男だって一発で恋に落ちてしまうだろう。
メイリンは幸せになる。きっとどんなところに行っても、幸せになれる女の子だと思う。
僕が、そこにいなくても。
怒りなのか憤りなのか哀しみなのか悔しさなのかわからない感情が、体の中で息も出来ないくらい暴れていた。
僕は訳のわからない気持ちに突き動かされてしまわないよう。左手の爪を右手の甲に、血が滲むほどに
食い込ませて、じっと耐えていた。
こんな風に考えるのはおかしいと、理性では分かっていた。
僕はただ、メイリンに拾われた奴隷なのに。
自分が何か、メイリンに対して権利を持っているように感じてしまうなんて。
本来なら、嫉妬する権利も、怒る権利もありはしない。
それでも、奴隷の身でも、哀しいほどに、心は自由なのだった。
自由に欲望を持ち、願望を持ち、将来が拓けることを夢見る。一方で、怒り、妬み、憤り、嫉妬する。
僕は自分の感情を息苦しく持て余しながら、むしろこの息苦しさのままにこの命が尽きてしまえばいいのに、
とさえ思っていた。
メイリンを、あの綺麗な身体を、こぼれるような笑みを、夜毎に抱き合ったあのあたたかさを──永遠に
失うとしたら、そのあとどうやって生きていったらいいのかわからない。
僕を支え続けた故郷への道のりのこともそのときは頭の中から消えうせて、ただメイリンのことだけで
一杯になってしまっている。
そして──夢うつつに狭い寝台に転がるうちに、何度も血濡れになった自分の姿を瞼の裏に見た。
足元には血だまりと、倒れている男。上質で仕立ての良い服を纏った、貴族の男。
更にもう一人、さらりとした絹の襦裙、複雑に編み上げられた髪、細い体。その身体が、力なく血だまりに
倒れている。
────メイリンだ。
そのたびに、声にならない悲鳴を上げて目を開く。
決してそんなことはしたくないはずなのに、手の届かないメイリンを永遠に自分のものにしたいと願った
なら……いつか、そうするのかもしれない。あの、いつもくるくると表情を変える、生命力に溢れた女の子を、
僕のこの手で。
でも、そんなことは間違ってる。そんなことでは手に入らない。
だけど、他の誰にも渡さないことは出来る。
相反する感情に引き裂かれながら、何度目かに冷たい汗をかいて飛び起きたとき、すっかり夜は更けていた。
いつもなら、メイリンと二人で居る時間だ。
メイリンに会いたい。
今すぐ会いたい。おかしなことを考えてしまうのも、メイリンがいないせいだ。今日はほんのちょっとしか、
メイリンを見ていない。
我知らず、使用人部屋を飛び出し、駆け出していた。
廊下を歩く使用人達も、控えている衛士達も、僕がメイリンの房室へ向かうのを特に咎め立てする気配は
なかった。
メイリンでさえ、そうだった。
僕が扉の前で訪問を告げると、弾んだ声で自ら扉を開けてくれた。
「ユゥっ?! もういいの? お見舞いに行ったけど、伝染ったらいけないって、入れてもらえなかったの。」
メイリンはいつだって優しい。それに可愛くて、扇情的でさえある。まだ水気を含んだ髪がしっとりと
つややかで、夜の薄明かりの中でメイリンに匂いたつような色気を添えている。
その姿を視界に捉えただけで、僕を支配していた息苦しさがすっと引いて行くのが分かる。
メイリンが、好きだ。心から。
だからこそ、物言わぬ従者として、心のない奴隷として、傍にいるのはもう限界だ。
僕は手を伸ばしてメイリンの首に触れた。
なんて細さなんだろう。鍛えがたい、人の急所の一つ。
脈部を正しく締めれば、数秒で昏倒する。気道を塞げば、死に至る。
なのにメイリンは、少し人を信用しすぎだと思うんだ。僕の指がその首の細さを測るように喉元にさえ
伸びているのに、彼女は不思議そうな目で僕を見ているだけ。
とくり、とくり、と僕の指に規則的な脈動が伝わる。メイリンの命の音だ。
そして僕は少し安心する。
まだ僕は、これを止めたいとは思わない。いまは、まだ。いつまでも感じていたいとさえ思う。
でも、それは叶わない。
だから、メイリンと一緒に居るのは、もう終わりにするべきだ。
すとんと、心が定まった。後から思うと、なぜそのときに、それが唯一の正解だと思ったのか、上手く
説明できない。
ただ、そういう欲望はずっと僕の心の奥に隠れていて、その行為は確かに僕の願望だった、と思う。
初めの夜に、斬首に値すると書面で宣言されたその行為。
「君のことが嫌いだ、メイリン。」
僕が嫌いなのは、僕だ。だから君も、僕を嫌いになってしまえばいい。
彼女は少し息を詰めるようにして、僕の目を見る。
「身分と権力があれば、なんでも思い通りになると思っているの? 人の心でさえも。
僕は、もう君の遊びに付き合うのはうんざりだ。」
言ってから、気付く。僕がどれだけ自ら従っていたのかを。
随分戸惑ったし、振り回されることもあったけど、いつだってメイリンは良い主人で、僕はメイリンの
傍で彼女に従って、幸せだった。
「大っ嫌いだ。」
ひどい言葉を吐くのは、簡単だ。簡単すぎて笑いそうになるくらい。
思っているのと、反対を言えばいい。
「初めからずっと、そう思っていた。僕たちの『クニ』を滅ぼした側の人間のくせに。」
そうか、僕は初めからメイリンが好きだったんだ。ずっと、好きだったんだ。
そして、いまも大好きだ。
僕はじり、とメイリンに詰め寄った。メイリンは哀しげに眉を寄せ、いまにも泣きそうだ。
「優しげな猫なで声を出して、僕らの誇りさえ、根こそぎ奪うつもりか。」
誇りを、差し出したのは僕のほうだ。そしていつの間にか、故郷へ帰ることよりもメイリンと
一緒にいることのほうが心の中で大きくなっていた。
「だからこれは────罰。」
震えるメイリンを抱きかかえるようにして寝台へと運び、なるべく乱暴に放り出すと、その上にのしかかり、
組み伏せた。
「ユゥ? 何を……」
「高貴なお姫様には、いい罰になるだろうね。……下賎の血を、孕むがいい」
必ず僕は罰を受けるだろう。娘を溺愛するという父親が、こんなことをする僕を許すとは思わない。
だけど、ただ、メイリンに僕の傷痕を残したかったのかもしれない。
はじめてを捧げあって、肌を触れ合って、未熟な性への好奇心を共有した。
その大切な時間が、メイリンの従うべき貴族のしきたりの前に塵芥になるのなら、もっと強く、もっと深く、
僕のことを刻みたかった。
そして、誰かに裁かれるなら、メイリンに裁いて欲しかった。
「や…っ、痛い……! こわいよ、ユゥ……!!」
細い腕、華奢で柔らかなメイリンの身体。
男の身体は、こんな風にも女の身体を傷つけてしまえる。
あのメイリンと会った最初の夜、彼女の安全のために、僕に手枷は正しく必要だった。
僕は『クニ』を失った哀れな子供で、メイリンは僕の『クニ』を滅ぼした国のお姫様で。
それでも、時間を遡れたとしても、このちょっと危なっかしくて魅力的なお姫様に、僕はどうしようもなく
心を奪われてしまうのだろう。
「やめ……っ、んん…っ!!」
声を上げれば、すぐに誰かが飛んできて、外側からでも、閂がかかっていても扉をこじ開けるだろう。
僕はほどいた夜着の帯を丸めてメイリンの口に捻じ込んだ。鈴を鳴らすような素敵な声が、くぐもった
悲鳴に変わる。自力で口の異物を外せないよう、両手も拘束して天蓋の柱に括りつけた。
僕の目の前で自由を奪われ、しどけない姿を晒すメイリンは、ひどく魅惑的だった。
このまま無理矢理にでも、どこか遠くへ攫ってしまったら、どうなるだろう?
メイリンだけの力では出られないような深い森に入って、誰にも知られず、ふたりきりで。
獣を狩り、鳥を射て、森の恵みを受けてふたりで暮らす──
僕はかぶりを振った。僕がこの王都に来ても、故郷をどれだけ大切に思っていたかを考えれば、
メイリンの家族も、育った家も、メイリンが従わねばならない規範でさえも、メイリンを育んだ全てから
切り離してしまうのがどんなに酷いことか分かる。
だから、許して。最後に一度だけ傷つけてしまうことを。
いいや、許さないで、憎んで。一生憎み続けて。
初めから居なかったように、忘れ去られるよりずっといい。
忘れないで、僕を。
そして、君の手で裁いて。
僕は出来るだけ感情を殺してメイリンを乱暴に、酷薄に扱った。メイリンが心置きなく僕を憎めるように。
僕はそのとき確かにメイリンを抱いたけれど、いつものように彼女を気持ちよくしてあげる甘い時間では
なかった。
それは、暴力だった。
誰かが異常に気付く前に終えなければならなくて、あまり時間はなくて。
怯えたメイリンはいつものようには濡れず、充分に準備が整わないまま繋がらなければならなかった。
「んっ、んんっ!!」
拘束されたまま僕に貫かれる瞬間、メイリンは身体を捩ってくぐもった悲鳴を上げる。その声にすら、
ゾクゾクとした
仄暗い悦びを感じていた。
僕を痛みと怒りと、嫌悪と憎しみと共に心に刻んでくれればいい。
そしてその憎しみを、ずっと忘れずにいてくれたらいい。
あまり濡れていないメイリンのなかはひどく擦れて、僕も長くは続けられなかった。
──これが、最後なのに。
そう思っても、いずれ終わりのときは来る。僕は湧き上がってきた快感をとうとう押さえきれなくなり、
初めてメイリンの内部に放った。
初めての体内への射精は、ことのほか大きな快感を生んだ。精を放っている間にも、内部の肉襞が波打つ
ように動き、残滓までを吸い尽くすようだった。最後まで受け入れさせた、という実感が、体のすみずみまで
染み渡った。
それは、ひとりよがりの快感だったかもしれないけど。
生涯で最後になるかもしれない余韻をゆっくりと味わってから、メイリンの手首を縛った帯をほどいて
あげる。手が自由になると、メイリンは口に詰められていた帯を自分で取った。
メイリンは、ひどく泣いていた。
メイリンに痛みを与えること、憎まれることを望んでいたはずなのに、その涙は僕の深いところを
突き動かしそうになる。いますぐに彼女の足元にひれ伏して謝り、手を尽くしてその痛みを和らげて
あげたかった。
でも、もうそんなことは出来ないし、許されない。
メイリンを、暴力で陵辱した。泣いているのにも構わず、苦痛を与えた。
あとは、その報いを受けるだけだ。
「ユゥの、ばかっ……。」
メイリンは流れる涙を拭いもせず、夜着の襟をきつく合わせた。
「わたしはまだ妊娠など、許されておらぬのに。たとえ孕んだとしても、堕ろすことになってしまうのに。」
メイリンはその辺に掛けてあった上着を掴むと、ぱたぱたと足音を残して走り去った。
おそらく、だれかしら呼んでくるつもりなのだろう。
「堕胎、か。そうだよな……。」
これで全て失うのだ。と僕は思った。
無理矢理陵辱したのも、斬首と引き換えにしてでも、彼女の中に自分のかけらを残したかった、という
気持ちがあったんだろう。
僕が死んでしまうとしても、メイリンの元に──或いは他のどこかで養育されるとしても──僕の一部が
残り続けるとしたら、死んでも悔いはないと思った。
でも、そんな風に上手くいくはずもない。
僕は故郷で裏切り者になり、心の中ですら、故郷を捨ててメイリンで一杯にしてしまった。
そして幼い恋情と破局の予感に耐え切れず、自らそれを壊した。
運良く子供を孕んでいても、堕胎で無に帰される。
あとに残るのは、痛みの記憶と憎しみだけ。
それでも、いつかこの手でメイリン自身を壊してしまうより、僕が全てを失う方が、ずっといい。
「寒い…な。」
僕は膝を抱えて、寝台の端に寄りかかり『誰か』が来るのを待った。
王都の冬は、桂花山よりは幾分かましだが、それでも厳しい。
居室の中でさえ、朝方には手洗い桶の水が凍りつくほどだ。
布団にくるまっていたような薄着で、既に火の気の絶えた房室で、長い間じっとしているのは命取りだと
いうことも知っていた。でも動く気にはなれなかった。
「忘れられた、かな……。」
『誰か』はなかなか来なかった。忘れられることが一番恐かった。何もかも失って、更に忘れ去られること。
行為のあとの熱を失って急速に冷えてゆく手足は、僕の心のようだった。絶望に凍てついて、冷たくなってゆく。
もう何もかも、終わりにしたい。
そう、呼吸をすることさえも。
怖くはなかった。
死ねば、桂花の民は誰もが、山に還る──僕らはそう信じていた。
山の神々は、許す神だ。どんな罪人も、穢れも、その深い懐に取り込んで浄化してくれる。
僕も、少し遠回りしたけれど、魂だけになれば、山の神はきっと許して、受け入れてくれるだろう。
ただ、生まれる前の場所に、還るだけだ。
すぐに、眠気がやってきた。山育ちの僕は、その眠気が危険であることは分かっていた。
薄れる意識の中で、ぼんやりと、もしメイリンと僕の立場が逆だったら良かったのになあ、などと考えていた。
僕らの『クニ』は負けてなくて、戦に参加したメイリンは、僕の小隊に捕らえられてしまうとか。
そうしたら、誰にも触らせず、誰にも見せずに、僕だけのものにしてしまうのに。
僕の手に入るものなら、何でもあげる。笑顔を見せてくれるまで、うんと優しくしてあげるんだ。
そして僕の子を産ませて、妻にする。メイリンの産む子どもは、どんなにか可愛いだろう──
そんなことは、ありえないけど。
僕は静かな気持ちで、目を閉じた。
意識は、じきに心地良い闇に取り込まれた。
────続く────
愛故の暴走とか大好物です!
注意事項読んで、まさかユゥ以外に…と読むのが怖かったけど安心…したのに
低体温症なんてヤバイじゃないか…
続き楽しみにしてます!
こりゃまずいだろ。奴隷が姫様に暴行して中にって…
ユゥが処罰されない方法はメイリンが泣き寝入り。
でも孕んでたら……ああ〜気になるぜ 前回の重い展開に自分でも耐えられないヘタレなので、今回は急いで仕上げてすぐ来ました。
投下します。
ユゥとメイリン6
※注意事項
今回微エロまで。
8レスの予定
目が覚めて初めに見たのは、見慣れぬ天井だった。
喉がからからに渇いていて、頭がぼうっとする。節々の痛む体を動かして周りを見廻すと、埃の積もった箱、
掃除道具、梯子やそのほかのよく分からない道具類が棚に置かれていた。多分、物置部屋だ。
開いた場所に俄か作りの寝台が設えてあって、そこに寝かされている。
どうして、こんなところに寝ているんだっけ?
考えようとしても、頭が朦朧として考えが上手く纏まらない。
水だ、とにかく、水。
ひどく喉が渇いていて、水が欲しいのに、体が重くて動くこともままならない。
漸く体を起こしたと思ったら、眩暈がして、大きな音を立てて床に倒れこんでしまった。
それでやっと気がついたけど、どうやら熱があるみたいだ。床の高さから見上げる天井が、ゆっくりと
回転して見える。
仕方なく寝台に戻ってから暫くして、大きな足音がしたかと思うと、扉がギッ、と開いて、怒った顔の
鄭(チョウ)おばさんが現れた。
この邸の女中頭で、勿論この邸には長く仕えていて、僕もこまごまと、よくお世話になっている。
おばさんは入るなり、手に持っていた手桶で僕の頭をがつんと殴った。
「ぐっ……」
おばさんの一撃は、頭痛のする僕にはありえないほど響いた。そして、その言葉も。
「このっ!! 悪餓鬼がっっ!! 姫様に、何をした?!」
そうだ、メイリン。
僕はもうメイリンに、憎まれ、嫌われているはずだ。
そのことを思い出して、おばさんに殴られたときよりももっと鋭い痛みが胸に広がる。
ぜいぜいと息をするばかりで声の出せない僕に、おばさんがなみなみと水の入った茶碗を差し出す。
水差しは、何のことはない、物置棚の一角にそっと置かれていた。
それを一気に飲み干してから、居住まいを正して覚悟を決めて答える。
「すべて、姫様の仰った通りです。」
僕はここに、監禁されているのだろうか。斬首までの短い間。
そう思いながら室内を見廻していると、ふいに脳天におばさんの二撃目を喰らってしまった。痛みに
声も出ない。
「姫様が何も仰らなかったから、訊いてるんだよ!! 正直に答えな!!」
おばさんは怒りに震えながら僕を睨みつけた。
「姫様が夜中にあたしの寝床にもぐり込んで来なさるときはね、何かひどくお辛いことがあったときとか、
恐い目に遭いなさったときなんだよ!!
それなのに、姫様は今回に限って、なんでもないと仰る。ところが朝になったらあんたが姫様の寝室で
倒れてるし、姫様の様子からも、あんたが姫様に何かしたってことは、明白なんだ。さあ吐きな!!
どんな狼藉を働いたんだい?!」
おばさんの剣幕とは裏腹に、僕はまだ熱と痛みでぼうっとしていた。
──庇われた、のだろうか?
僕を罰する気なら、凄く簡単だったはずだ、ただ誰かを呼べばいい。
何故、そうしなかったのだろう?
何故、何も言わなかったのだろう?
出来ることなら、訊いてみたい。
「あの……それで姫様は、いまどこに?」
「今朝、御発ちになった。」
おばさんは苛々しながら僕をねめつけた。
「あんたね……、自分の周りで起こっていたこと、何も憶えてないのかい。何日寝てたのかも。」
そういえば、体がやたらとだるくて、関節が軋む。寝ていたのは一晩だけ、ではないのだろうか。
「三日だよ、三日!! しかもその間、誰が世話してたと思う?!」
「あ……すみません。お世話になりました。」
僕はてっきり、おばさんが世話をしてくれたのだと思い、お礼を言った。
「違──うっ!! 姫様だよ、姫様!!! お前ごときに、直々に!!!
肺炎まで起こしたあんたをあたし達がこんなところに隔離したにもかかわらず、目覚めるまではと、
かいがいしく世話をなさって夜も昼も離れようとはなさらなかった!!
そして仰ることは、『早く元気になって欲しい』『目が覚めたらわたしと仲直りして欲しい』と来たもんだ!!」
おばさんは、我慢できなくなった様子でまた僕の脳天に手桶を振り下ろした。が、僕は今度は間一髪で避けた。
メイリンが……僕の看病? しかも、『仲直りして欲しい』?
「避けるとは生意気な……こういうときは、殴られときな!!」
「すみません癖になってて……避けないとまた愚図とかゴミとか言われてユイウ様に罰稽古を食らう
ような気がして。」
「安心していい、長公子様も二公子様も旦那様に呼ばれて、とっくに邸を空けていらっしゃる。
姫様だけは、おまえの傍を離れるのを嫌がって出発を延期なさったが、今朝には容態も落ち着いたんで、
御発ちになった。」
「御発ちになった……どこへ?」
「あたし達には、知らされていない。ただ、長旅の用意はしていらした。」
メイリンが……いない? この邸のどこにも?
僕を、置いていった? 何にも言わずに?
あんなことがあった上に、意識もなく臥せっていたのだからそれも当然なんだろうけど、僕は突然
何もないところに放り出されたような酷い喪失感を感じた。
「置いていくくらいなら……殺してくれればよかったのに。」
そう呟いた途端、後頭部にもう一度鋭い一撃を食らった。やばい、また不意打ちで食らってしまった。
おばさん侮りがたし。
「いい若いもんが、命を粗末にするようなことを言うんじゃない!!
あたしはね、あんたを元気にすることと、姫様に平身低頭詫びを入れさせることを請け負ったんだ。舐めた
口きくと、承知しないからね!!」
「だって」
僕はやっとの思いで反論した。
「あの戦場で拾われたときから、僕の命は姫様のものでしょう? そしてそれも、姫様が他の男と結婚でも
すれば、必要なくなる!!」
本来なら、必要とされなくなったときが自由になる好機の筈で、僕はそれを待っていたはずだった。
なのになんで今は、必要とされなくなったときのことを考えるだけでこんなに死にそうな気持ちになるのか。
おばさんはちょっと呆れた、気の抜けたような声であー、と呟いた。
「…姫様はまだ学生だから、結婚は少なく見積もってもあと二年はないだろ?」
「でも婚約だけなら、すぐにでもあるかもしれない……釣り合う家格の男と。」
おばさんはまあねえ、とか、そういうことか、とか、曖昧な相槌を打った。
「あと二年かそこら、誠心誠意お仕えして、そのあとは放免していただくとか。」
「あと二年も優しくされて、そのあといらないものとして棄てられるよりは、今すぐ終わらせたい。」
おばさんは、もう手桶で殴ろうとはしなかった。代わりに、あんたはまだ乙女心も分からない馬鹿な
餓鬼なんだね、と言った。
「そういう風に思ってるって、姫様か旦那様に、ちゃんと言ったかい?」
「メイリ…じゃなかった、姫様に? とんでもない!! 姫様に直接『勘違いするな』なんて言われたら僕、
死んじゃうよ!!」
実際に死ぬわけじゃなくて、心が死にそうに苦しいのに、体はなんともなくてお腹がすいたり眠くなったり、
普通に生きていってしまう、その矛盾がどうしようもなく苦しいのだ。
「言ってみなよ。」
鄭おばさんは、軽い口調で言った。
「おばさんは、僕が姫様に対して邪まな感情を抱くのは、いけないことだと思わないの。
ユイウ様なら、いつもそう言うよ。『勘違いするな』『身分を弁えろ』って。」
「長公子様は、奥様に似て厳格な方だからね。
だけどあたしとしては、あんなに可憐で気立てが良い姫様に何も言わずに、自分だけで抱え込んだ末に
姫様を泣かせて何かを解決した気になる方が、よっぽどいけないことだと思うよ。
あんたは、そんなに人と上手くやっていくのが苦手な子だったかね? あたしを含めてみんな、あんたの
ことをもっと心根の真っ直ぐな子だと思ってたけどね。」
「……ごめんなさい。」
僕はなんとなく、桂花の民としての振る舞いを避難された気がして、素直に謝った。
「謝るなら、姫様に謝りな。
それに、この邸で最終的に物事をお決めになるのは、旦那様だ。旦那様は、弱い立場のあたし達を
ことさらに苛めたりはなさらない。きっとあんたにも、何かいいようにして下さる。」
敵には容赦がないけどねえ、とおばさんはぼそりと小声で零した。
何かいいようにして下さる、の内容が、他の女を見つけてくれるとかだったら絶対に願い下げなんだけど、
と密かに思う。何をどうしたら好転するというんだろう。
「それに多分、姫様は、今あんたが言ったようなことをお聞かせしたら、喜ばれるだろうね。」
メイリンが喜ぶ──
それを聞いた瞬間、メイリンの花のような笑顔を思い出して、心がぽわっと浮き立つ。
「そんなはず、ないよ。」
きっとあれだ、奴隷の忠誠を喜ぶとか、そういう意味だ。本気で好きとか言っても、困らせるだけだ。
……と必死に否定しても、心がなんだか浮かれていくのを止められない。本当にどうかしてる。
「あんたみたいな若造と、あたしみたいな熟女では、どっちが女心が分かるだろうね?」
自信ありげなおばさんを前にして、僕だって短い期間だけど、この邸に来てからは誰よりも長い時間を
共にしてるんだから! と無駄に張り合いそうになる。
「と、に、か、く!! 体をしっかり直すことと、姫様が帰ってきたら、御満足頂けるまで謝ること!
このふたつは、このあたしの年季にかけて、守ってもらうよ!」
鄭おばさんは、この邸での年季は多分一、二を争うくらいなんじゃないだろうか。
僕はこの自称熟女のおばさんにそれ以上逆らっても無駄な気がして、まずは大人しく養生することにした。
* *
僕の肺炎が跡形もなく治る頃になっても、メイリンたちは──ユイウ様、スゥフォン様、それから旦那様も含めて、
なかなか帰ってこなかった。
この邸の主人格の人間は、学院があるからと残された末子のシゥウェン様と、時々帰っているという奥様のみ。
ただし、僕はひきつづき奥様の気配すら感じることはなく、主人の気配の希薄なこの邸は、ひどく静かで
寂しそうにさえ見えた。
シゥウェン様は、時々兄上から言付かったという『宿題』を渡しに来た。彼はいつも無口で、必要最低限
しか口を開こうとはしなかった。
僕が彼とまともに口を利いたのは、彼の大切な姉の話をしたときだけだ。
「……出て行けばいいのに。」
僕と比べても少し背の低い少年は、ぽつりとそう言った。
兄上達と比べて、まだ体つきは随分と華奢で、女の子のようですらあった。
「は?」
「メイリンを、泣かせたそうじゃないか。気に入らないことがあるなら、出て行けばいいのに。
今なら誰も、おまえを止めはしない。出て行って、家族の元にでもどこにでも行けよ。」
彼は吐き捨てるように言った。
ここを出て、桂花の民の元に帰る? この邸を抜け出して?
この邸に来たばかりの頃は、想像もつかなかった。だけど今は、地理も分かるし、地図さえ持っている。
関所を通るのは難しいけれど、抜け道があるのも知っている。お金は持っていないけど、その辺で日雇いで
働けばなんとかなるし、出来ないことではなかった。
それでも、僕はかぶりを振る。
「鄭おばさんと、約束したんです、姫様の帰りを待つって。帰ってきたら、ちゃんと謝るって。
勿論姫様が僕に出て行けというなら、そうします。」
彼はキッと僕を睨んだ。
「メイリンの帰りなんて、待つ必要ない。今すぐ出て行けよ、この山ザル。」
一応悪口を混ぜてみていることは分かるが、根が真面目なのか、ユイウ様ほどの迫力も、スゥフォン様の
ほどのキレもない。ちょっと上げておいて物凄く落すとか、油断させておいて鋭く切り込むとかの技を
全く使わない悪口は稚拙で、微笑ましくさえあった。
「御本人のいないところでは、『姉上』とは呼ばれないんですね、三公子様。」
呼び方のことを指摘すると、彼はさっと顔を赤らめた。僕も本人の前では名前呼びするかどうかにいつも
気をつけているから何となく分かる。多分彼も、他の兄弟の例に漏れず、あの綺麗で魅力的な姉を、
特別に慕っているのだろう。
「おまえみたいな下賎の者が、メイリンに近づくなっ!! 無礼者!!」
彼にしては珍しく声を張り上げ、強い目で僕を見据えて怒鳴りつけると、次の瞬間にはくるりと踵を返し、
真っ直ぐに背中を伸ばしてつかつかと去っていった。
メイリンの弟としての彼の怒りももっともである。
メイリンはいい主人として僕に優しくしてくれたのに、僕は勝手な理屈をつけて、彼女を傷つけたし、
泣かせた。メイリンが庇ってくれた所為で誰も知らないけれど、きっと彼が僕のしたことを本当に知って
いたら、首を刎ねるべき、って言ったんだろうな。
ねえメイリン、どうして僕を庇ったりしたの。
君にとって、僕はなんだった?
まだ本当に、僕と仲直りしたい、なんて思ってくれてるの。
僕はここで、君を待つ。もう一度会ったら、約束通り平べったくなるまで謝るよ。
誰に背いたとしても、僕はもう君だけには背かない。
メイリンが僕に出て行けと言ったら……と、そこでさっき自分が言った事を思い出して死にそうな気持ちになる。
うーん、そうしたら……自分の気持ちをとりあえず言ってみよう。出て行きたくないって。
その後もメイリン達はなかなか帰らず、時はゆっくりと過ぎていった。
王都である盛陽は雪深くはなかったが、それでも冬が深まる季節は何度か雪下ろしと雪かきが必要だった。
勿論、いい鍛錬になるとか言って、若い僕は便利にこき使われた。ユイウ様のいない間、僕の稽古の面倒を
見てくれたのは家令であるツァオという男で、邸中の力仕事を経験させてくれてそれはそれで面白かったが、
手合わせのときには、ユイウ様よりはるかに手加減を知らなかった。
ひどく寒い夜には、メイリンがどこかで凍えていないようにと祈った。晴れた暖かい日には、メイリンが
ふと帰ってくるような気がして、何度も門の前を見に出てみたりした。
そして、厳冬の季節を越え、ある日、雪の中で庭の梅の木が、ふっくらした小さな蕾をつけているのに気付く。
もうすぐ冬が、終わるのだ。
雪の中で、寒さに耐えて咲く花。
この邸の誰からも愛されている姫君、梅玲[メイリン]と、同じ名を持つ花。
この邸の南向きの庭には、かなり立派な梅林がある。
──この梅は、結婚なさってすぐの頃、父上が母上の名にちなんで植えさせたのだ。
いつかメイリンが、誇らしげにそう語っていた。
──美しい林であろ? 父上が、木々の手入れにも心を砕かれておるのだ。
もっとも母上は、恥ずかしがって滅多にここに近寄られたりはせぬのだが。
両親のことを話すメイリンはいつも幸せそうで、くすぐったいくらいだった。
両親にも兄弟にも惜しみなく愛されて、その分周りの人間にもとことん優しく出来る女の子。
誰が、メイリンを好きにならずにいられるだろう。
そう、僕がメイリンを好きで仕方なくたって、ぜんぜんおかしくなんかない。
たとえ、かつては敵同士だったとしても。
──これだけの梅が一斉に花開くと、なかなか壮観なのだぞ。
今年は一緒に見られるな、ねぇユゥ、きっと一緒に見よう。
そういって零れるように笑うメイリンは、きっとどんな花よりも美しかった。
ねえメイリン、もうすぐ君の名の花が咲く。
いま君はどこで、この空を見ているの。
逢いたい。
君に逢いたい。
痛いほどに、そう思う。
* *
その夜、メイリンの夢を見た。
真っ暗な中に雪がしんしんと降る、寒い夜。
雪明りでぼんやりと明るく見える中、ほっそりとした人影が見える。
ああ、メイリンだ。
近づく前からなぜかそう思う。きっちりと編み上げて左右にひと房ずつ細く垂らした編み髪、
優美な細いうなじ。
僕に気がついて、振り返る。──離れてからずっと、待ち望んでいた瞬間だ。
──……ユゥ……
鈴を鳴らすような声が、僕の名を呼ぶ。もうそれだけで、胸が一杯になってしまう。
彼女の手を取ると、雪の中でその体はまるで氷の塊のように冷え切っていた。
「メイリン?! どうしたのこんなに冷えて!! 早く邸に入って、火を熾してもらって温まらなきゃ!!」
少しでも温めるように、思わず抱きしめる。
僕の腕の中で、メイリンがぽつりと言った。
──ユゥは、わたしのこと、嫌いなの?
その声があまりに儚げで哀しげで、胸をぎゅっとつかまれたような感じがする。やっぱり、メイリンが
哀しそうなのは嫌だ。絶対嫌だ。
「違うんだ、好き。君が好き。好きでそうしようもなかったんだ。
ごめんね、ごめんね、ごめんね──!!」
もう何をどう謝るんだったか忘れてしまった。謝れといったのは誰だっけ。何を謝れと言ったのだっけ──?
言葉が出てこない代わりにぎゅっと抱きしめて、冷えたその体が、少しでも暖まってほしいと思った。
代わりに僕が、氷のようになっても構わない。
「ふむ。では、許す。」
耳元ではっきりとした、よく通る声がして目が醒める。
えっ?
ここは間違いなく、使用人部屋の僕の粗末な寝台だ。そして僕の隣にいるのは。
「め、メイリン?! どうして?! まだこれも夢なの?!」
「いま帰った。あまり大声を出すな。せっかく寝た他の者が起きる。」
そう、ここは大部屋だ。周りの寝台には他の下男が寝ていて、決してメイリンが足を踏み入れるような
ところではない。
……っていうか、何でこんな密着してるの。
「言っておくが、わたしがおまえの寝台に潜りこんだ訳ではないぞ。
おまえを起こしにきたら、おまえの方がわたしを強引に引きこんだのだ。」
そう言って身を起こすメイリンは、横になって僅かに乱れてはいたが、まだきっちりとした正装をしていた。
いつもより華やかな、桜色の豪奢な絹の襦裙。細かく編み上げられて簪で飾られた髪。薄く紅を引いた唇。
一瞬、何もかも忘れて見蕩れてしまう。
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!!」
状況がさっぱりつかめないのでとりあえず謝っておく。謝りつつも、ちらちらと久しぶりのメイリンを
盗み見ていた。
ああ、メイリンってこんなにも可愛かっただろうか。勿論初めて見たときからとんでもなく綺麗な女の子
だとは思っていたけど、こんなにも…何というか、匂い立つような、光り輝くような、幻惑するような、
可愛さだっただろうか。
「ここは狭いし、わたしも着替えておらぬから、わたしの寝室へゆくぞ。
まったく、おまえが主人の褥を温めておかぬから、わたしがこんなところまで来る羽目になったではないか。」
メイリンは迷わず先に立って、背中をぴんと伸ばしてすたすたと歩く。
僕の方はといえば、ゆくぞ、と言われたからにはついて行っていいのだろうが、少し自信がなくて
離れたところを歩く。
さっき、許す、と言われただろうか? 何をどこまで許す? そんなに簡単に?
逡巡する僕をメイリンが振り返る。
「どうした? 足元がおぼつかないなら、手を引いてあげようか?」
そんなことはない、廊下にはまだ明かりがぽつぽつ灯っているし、ちゃんと歩けます、と答えようと
したけれど、差し出された手のひらの魅力には勝てなかった。
ほっそりとしてなめらかな手を握ると、その指先ははっとするほど冷たい。
思わず包み込むようにぎゅっと握ると、向こうもぎゅっと握り返してくる。
それだけでもう幸せな気分が満ちて、他には何もいらないとさえ思う。
好き、好き。君が好き。
言葉にできないこの気持ちが、繋いだ手から伝わればいい。
そう思いながら、やわらかな手を握って暗い廊下を歩いた。
メイリンの房室に着くと、火鉢には火が入っていて、数人の侍女が控えていた。
「おまえ達、こんな夜遅くに起こして、済まなかった。」
メイリンが詫びると、侍女達はにっこり笑って応え、なめらかな動作で主人の髪をほどき、衣を脱がせて
体を拭いたりし始めた。
僕はメイリン付きの従者で、いわゆる『男ではない』扱いなので、こういうときも外に出されたりしない。
男としてのものを要求されるときもあるのに……と納得いかない思いだが、毎回、目のやり場に困って
いいのか眼福に喜んでいいのか迷う。
「今日はもう遅いし、わたしも疲れた…。簡単でいい。
薬酒で体を温めてから眠る……。ユゥ、わたしのお気に入りのやつ、出してきて。」
用事を言いつけられ、この場を離れられることに、ちょっと安心する。
『お気に入りのやつ』というのは、実は薬酒でもなんでもなく、ただの梅酒だ。メイリンの御自慢の梅林で
取れた梅の実を、メイリンのお気に入りの配合で漬けたやつ。毎年甕ひとつ分は自分用に取り置きしているらしい。
梅酒を薬酒の括りに入れるの? と僕が怪訝な顔をするといつも、『梅は古来より不老長寿の妙薬として
珍重されてきたのだぞ!! だからこれは薬酒!!』と、真っ赤な顔で反論して、可愛い。
メイリンとしてはシン国の基準で言えば成人していないので飲酒は禁じられているが、薬酒はその範疇では
ないので可、ということらしい。真面目なんだか不真面目なんだか。
やはりメイリンお気に入りの、模様の付いた細瓶に入った梅酒を隣室の棚から取ってくると、着替えの
終わったメイリンが、目をしょぼしょぼさせながら小卓の脇の椅子に腰掛けていた。
「お湯を持ってきて貰ったから、割って温かいのが飲みたい。ユゥも飲む?」
「お供します、姫様。」
メイリンに酒を勧められたら断らないのが二人の間の小さな約束事だ。断るとメイリンが拗ねるのだ。
僕は深めの杯に梅酒を注いでお湯で割って差し出す。メイリンがいつも飲む、六対四の比率で。
自分用にも同じようにして注いでいると、とろんとした瞳で杯に口をつけながら、メイリンが言った。
「姫様、じゃなくてメイリン、って呼ぶの。」
「はい、メイリン。」
まだ後片付けをしている侍女が傍にいて、決して二人きりというわけではなかったが、僕は迷わずそう呼んだ。
メイリンの言うことなら何でも聞いてあげたかったし、何よりそう呼びたかった。
「はいもだめ。そんなによそよそしい言い方しないで。」
「うん、メイリン。君の言う通りにする。」
後ろで扉の閉まる気配がする。最後の侍女がいまそっと、音を立てないよう出て行った。
「ふふ……ユゥ、今日は素直。」
椅子の背もたれにもたれかかりながら、メイリンは蕩けた表情で笑った。もう酔っているのだろうか。
それとも、単に疲れて眠いから、こんな風に妙に色っぽくなっているのだろうか。
もしそうなら、他の男の前で疲れたり眠くなったりするのは、是非止めて頂きたい。
「仲直り、したいから……。あの、鄭おばさんが、そのほうが姫様が喜ぶって、だから……。」
出て行けとか、この期に及んで言われたらどうしよう、と一抹の不安がよぎる。しかしメイリンの
答えはあっさりしていた。
「ふむ、さっき、許すと言ったのに。それに、月のものも順調に来たし。」
月のもの────。
そのときはじめて、メイリンに僕の子供を宿して貰いたかったんだ、それが一番の望みだったんだ、と気付く。
その目論みはとうに失敗していた。
例え妊娠していても、強制的に堕胎させられるなら、失敗した方が良かったに決まっているが、もし
子供が出来ていたら、メイリンがどうしたのか知りたかった。
怒るのか、泣くのか、少しは悩むのか、それとも──?
「仲直りは……せねばならぬ。これからもっと……いそがしく、なる。ユゥにはてつだって…もらわねば。
なにか……たりぬかの? ……そうだ。」
メイリンのろれつの廻らなくなってきた言葉をぼんやりと聞いていると、突然、メイリンは隣の椅子に
座っていた僕の首に腕を廻し、しなだれかかってきた。何が起こったのかわからず固まっている僕の唇に、
なにか、柔らかいものが触れる。
瞬間、すべての音も気配も弾け飛び、世界は僕とメイリンだけになる。
甘い、甘い世界。他には何もいらない。
君が欲しい、君が。もう全部、僕に頂戴───
「……ぷはっ!!」
苦しげにメイリンが息継ぎする声で我に返った。つい夢中になって加減を忘れてしまったみたいだ。
「もぉっ、そんなに激しくくちづけたら、息ができないよ。もっと、やさしく……。」
抗議する声も、少し怒ったような表情も、可愛くて愛しくて仕方がない。
僕は、どうかしてしまったんだろうか?
メイリンは、僕の首に腕を廻したまま、僕の膝の上でころんと丸くなった。
「でも、これで仲直りね。もう、眠くなっちゃった。寝台に連れて行って、ユゥ。」
なんだか、メイリンの方も、いつもより甘えたがりになってるような気がする。
言われた通りに細い体を抱えて立ち上がると腕の中のメイリンがぽつりと言った。
「わたしねえ、すっごく大変だったの……。でもすっごく頑張ったの……。だからほめて、思いっきり。」
「頑張ったんだね、メイリン。」
何のことかは分からないけど僕は素直に褒めた。
メイリンは、滅多にこういう自慢はしない。そのメイリンが、自分から大変で頑張ったなんて言うほどなら、
それは本当にそうなのだろう。
「それからぁ。」
急速にろれつの廻らなくなってきた舌で、メイリンはなおも喋ろうとする。
「さっきわたしのこと……、すきって…、いった……。あれ、ほんと?」
「本当だよ。」
「そぉゆうときはぁっ、すきだよメイリン、って、ゆうのぉっ。」
メイリンは身体もくてんとしてきて、瞼も重く、いまにも寝てしまいそうだ。明日になっても、いまの会話を
憶えているかどうか怪しい。
それでもいま、言ってみたかった。
「好きだよ、メイリン。」
メイリンはまるで上等のお菓子を食べたときのようにくふふ、と笑って、言った。
「わたしもよ。」
それからまた、くふふ、と笑う。
ちょっと待って、それってどういう意味なの。
「いっぱい、はなさなきゃいけないことがある……。でももうねむいから、またあした。」
そうっと寝台に下ろしてあげると、メイリンはほとんど寝ているようだった。ただし、僕の袖は離さない。
「きょうはねぇ、よとぎはなし。でもさむいからぁ、ずっとそばにいて、あたためて。
それからぁ、わたしがねむるまで、かみをなでていて。がんばった、ごほうびに。」
一緒にいることを許されて、胸の中に灯がともったようになる。
「君の望むままに、メイリン。」
ほとんど意識を失う寸前まで僕に甘え続けるメイリンを、どうしてこんなに可愛く感じるんだろう。僕が
隣に身を横たえると、小さな子供のように擦り寄ってくる。
寝入りばなを起こされて、ちょっと目が冴えてしまったけれど、今夜はメイリンの寝顔を見ていられれば
もう他は何も望まなかった。
拭いただけの髪からも、冷たさの残る手足からも、旅の匂いがした。
どこをどう旅して、何を頑張ってきたのだろう。
手伝って欲しいことって、なに。君の傍に、僕の居場所はあるの。
好きって、どういう意味。
君にとって、僕はなに。
訊きたい事は山ほどあったけど、触れ合っているうちに、すべてどこかへ溶けてゆく。
何度か髪を撫でているうちに、すうっと、メイリンの息が寝息に変わっていった。
好きだよ、メイリン。
おやすみ。
──続く──
今回の投下はひとまず以上。
また書けたらまた来ます。 気の効いた言葉を思いつかないので
GJ!!とだけ。
このシリーズ面白すぎる GJGJ!
メイリンは本当にかわいいな
何を頑張ったんだろう
シゥウェンのシスコンぶりもさすがっす メイリンかわいいなぁ! 読み返すとパパママも相変わらずで癒される! おねむで子供っぽくなって色々本音が出るメイリンかわいすぎるw
時間的演出がにくいですね。
冬に出立し、梅がつぼみをつける頃までかかる遠出のおしごと。
とするとやはり…。それに、メイリンの父上はあの方ですしw
というか、リアルで梅花咲く季節に投稿来そうな予感 貧乏で一日の食事もロクに食べられないような青年が偶然に美姫を助けたことで、美姫とその母の未亡人女王の二人に王宮に呼び出され、二人ともとラブラブする話 >>56
精霊の守り人思い出したな
姫様の周りの従者たちがあっさり激流に飲まれる中、迷わず川に飛び込んで
助け切るくらいの大立ち回りできればそういうこともあるかも試練 >>57
貧乏ながら誠実で真面目でよく働く青年が、偶然賊に襲われる美少女を発見、救出し、国の然るべき機関に預ける
数日後、青年がいつものように農仕事をしていると、国からの使者が来て有無を言わさず青年を王宮に連れていく
王宮に連れて行かれた青年は、何人もの侍女に風呂に入らされて、汚れを清めた後、見たこともないような服を着せられる
その姿の青年に抱き着いて来る少女がいた。
その少女こそ、数日前に青年が賊より救った美少女で、実はその国の姫だった
少女に連れられて行った先では、贅沢のかぎりを尽くした食事が並べられたテーブルに、妙齢ながら絶世の美女がいた
その美女は、夫たる国王亡き後に独力で国を監理する女王だった
食事の後、眠ってしまった幼姫を寝室に運んだ青年を、女王は誘惑し、交わることに・・・・・
一度で終わらぬ交わりを、目覚めた幼姫は見ていて・・・
みたいなテンプレ話 もうほとんどできてるやーん
ていうか書いてくださいお願いします 純白のノースリーブワンピースに素足に赤い靴を履いた9歳のお姫様が隣国の侵略に
遭って目の前で両親を処刑される一部始終を目の当たりにした後に、手錠を掛けられて
市中を引き回しにされて居城の地下牢に監禁し着衣調教する話を書いてみようと思って
るんですが。 ノースリーブワンピース…ってことは時代はいつくらいの設定?
お姫様がブラジャーやパンティーはいてるなら近代に入ってるから
国際法があって酷いことはされないと思うし、
そんなの関係ないくらい昔なら、コルセットとかドロワーズとかむしろはいてないとかで
お姫様が腕とか脚とか見せるのははしたないと思うな〜 侵略してきて国王を処刑するような隣国が、王女だけ生かしておく理由がほしいなあ。
中世でも、キリスト教徒同士だったらそう酷いことしないよ。
とっ捕まえて身代金要求が基本で、人質は丁重に扱う。
交渉する気がない異教徒相手の場合は逆に遠慮なく殺すんじゃないかなあ。
まあこういうリアリティは求めるほうが無粋なのかもしれないけど。
senkaなんてファンタジーもいいところだと思うし >>61
侵略→残虐陵辱なら、戦火スレの方がいいかもねー。 >>61
国王夫妻は射殺した後に遺体を焼却し、原形を留めない程度に砕いて下水に流して処分する。勿論王女の面前で。 >>65
なんか相当怨まれてるな。むしろ隣国じゃなくてレジスタンスのイメージ
戦火スレ向きだな >>61>>65
0時の鐘の合図で処刑執行(銃殺)
→遺体の処理(焼却、粉砕、廃棄処分)
→日出から日没まで共に市中引き回し(おおよそ6時〜20時まで)
→全財産及び家名の剥奪、幽閉 >>62
中国みたいな人権蹂躙国家もあるので設定次第では全然行けるでしょ。
国際人道法に則って保護を求めたお姫様が戦争で死亡したことにされて監禁調教とか。
国ぐるみの陰謀隠蔽論なんて別に現代でも珍しくないし。
流れをきってすみません。投下します。
覇王の孫娘
学園
自慰
前編
私立アイリス女子学院は終戦後創立された女子高等学校である。
旧帝都には古い歴史をもち、伝統と格式を重んじる名門女子校なるお嬢様学校がある。
そこに通うのは大貴族、大財閥のご令嬢に大国のお姫様。
本来なら皇女であるリューティルもそこに通うべきなのだが、
宮廷晩餐会や諸々の行事などで見知り合いが多い。
よって旧帝国の皇女様が通う事になれば、
やれ貢ぎ物だ、やれおべっかだと毎日のようにつきまとわれるだろう。
そういった者達から『皇女様』『皇女様』とちやほやされるのが苦手なリューティルは
『帝都内にあるお嬢様学校だけは絶対イヤ!』と父王に言った。
困り果てた父王は王妃並びに宰相とあれこれと相談した。
その結果、マイステン家からほど近いこの女子学院に通うことになったのだ。
とはいえアイリス女子学院は平民が通う学校ではない。
私立校であるだけに学費、給食費などはかなりの額がかかる。
そこに通う生徒は小貴族や商人の娘、それに裕福な部族の娘等々、
帝都内のお嬢様学校に比べれば、やや見劣りするもののアイリス女子学院も
またお嬢様学校なのである。 「あ、リッシにレンシェ、おはよう」
リューティルは教室に入ると友人である二人に挨拶した。
「おっはよ、リュティ」
ボーイッシュな少女が言った。本名はアイリッシュ=ヴェルマン
金髪をショートにし、褐色の肌とエメラルドグリーンの瞳をもつ
彼女は西海岸に本社を置く貿易商の社長令嬢だ。
令嬢といっても気さくな性格でリューティルとはすぐに仲良くなった。
「おはようございます。リューティルさん」
微笑んで挨拶を返す少女はファルレンシェ=フォンドリア。
絹糸のような銀髪を肩まで伸ばし、切りそろえている。
いかにもお嬢様な彼女はこの辺りの名士であるフォンドリア家の令嬢。
祖先にハイエルフの血をもち、かなりの美貌をもつ。
この二人は学校の寄宿舎に入っており、部屋も隣室だという。
「あれ、ナージェはまだ来てないの?」
「そうですわね、まだ見えられていないようですが…」
「ナージェはいつも時間ギリギリに来るしね」
ナジェンタ=レッシーナ、もう一人の友人であり紡績会社の社長令嬢だ。
ワーウルフのハーフであり運動神経、能力は抜群だが朝にものすごく弱く、
いつも遅刻ギリギリに来る。アイリッシュやファルレンシェと
違って実家から通っているということも一つの要因なのだろう。
それでも走って何とか間に合うのだから、
ワーウルフの血は伊達ではないということを物語っている。
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン
始業のチャイムが鳴った。チャイムが鳴り終わるまでに教室に
入らなければ遅刻となる。
「ああああっ、間に合ったー!!」
教室のドアが開き、ナジェンタが駆け込んできた。 珍しくもないが外国がそこまでやるならそれなりの動機は要るよ。
その人権蹂躙国家である中国でもダライ・ラマを殺害したりはしてないわけで。
外国の侵略なんかよりも革命とかのほうがよほどありえそうだ。
ルイ16世にチャールズ1世にニコライ2世にと枚挙に暇がないし。 「お、おは…よリュティ、リッシ、レンシェはあはあはあ」
だらだら汗をかき、息も絶え絶えに挨拶するナージェはかなり危ない。
「朝から発情、乙。ナージェ」
アイリッシュがけらけら笑い言った。
「はいはい、朝からそーゆーこと言わないの、リッシ。
おはよ、ナージェ」
「おはようございます、ナジェンタさん」
チャイムが鳴り終わって、担任の教師が入ってきた。
ピシッとした背筋、キリッとしたメガネにさっぱりしたショートカット。
服装の下からでもわかる豊満な乳。名をアクス=アノンと言った。
高い学歴をかわれてこの学園に招かれたのだ。
また武道にも精通しており、特に槍術に長けている。
一度、学園に侵入した盗人をモップの一突きで倒してしまったらしい。
それ以来、かつての勇者軍に所属していた戦士だ!とか、覇王軍の
血騎士団兵だ!などそういった噂が絶えない。
「起立、礼。先生おはようございます」
クラスの委員が号令をかけた。
「おはようございます」
続くクラスの生徒達。
「皆さん、おはようございます。では出席を取る前に……
それはレッシーナさんでいいのかしら、フォンドリアさん?」
アクス教諭は机に突っ伏し、肩で息をしているナージェを指して言った。
「ただ屍のようですわ」
ニッコリとファルレンシェ。
「そう……残念ですね。御親族には最後まで立派だったと伝えましょう」
あちこちでクスクスと笑い声が聞こえる。
「先生、屍じゃないわ……ナジェンタ、生きてます」
息も絶え絶えにナージェが答え、朝のホームルームが始まった。
ホームルームを終えて、ナージェはようやく復活した。
「くっそ、あのメガネおっぱいめ!」
「あははは、いつも遅刻するナージェが悪いんだよ」
アイリッシュが笑って言った。
「レンシェもレンシェだよ。何よ、屍って!あたしはゾンビか!?」
「申し訳ありません。アニマルゾンビですわね」
「そういう意味じゃねぇ!わああっ、リュティ…レンシェがいじめるよォ」
がばっとリューティルに抱きつくナージェ。
「はいはい、よしよし。それからブラはフロントホックだからね
外せないからね、そこんトコよろしくね」
背中に回した手をつねり、リューティルはため息をついた。
「ちぇ、つまんねーの…空気読んでよ、もう」
「いや、だから拗ねても全然可愛いないから」
いつもの4人でのやりとりと共に始業のチャイムがなった。 午前中の授業を終えて、昼休み。大食堂での昼食だ。
この学園では日替わりでランチが用意される。
生徒たちにとっては普通のランチだが、1食にかかる食費は
平民が通う学校の1年分の学費に相当する。
「今日はコンソメスープにシーフードピラフ、それにマカロニサラダに
紅茶とヨーグルトね」
リューティルが食事がのったトレーを置き、言った。
「シーフードがメインか…私は肉の方がよかったなぁ」
とこれはナージェ。あまりシーフードは好きではないらしい。
「好き嫌いはよくないぜ、ナージェ。好き嫌いしていると
アクス先生みたいにおっぱい大きくならないよ?はぐはぐ……ん、これは
西海岸のアサリとビッククラブの子供ね、ダシが効いていて美味い!」
リッシがピラフをスプーンですくいながら言った。
さすが地元の貿易商家。海産物は好物なようだ。
「そうですわね。好き嫌いなさると栄養が胸部と臀部にいきませんし
お肉ばかりですとふくよかになって大変ですもの。
その点でいえば、リューティルさんは心配ありませんね」
紅茶を手に持ち、微笑むレンシェ。
「そうかなぁ?……平均的だと思うケド」
本人を除く、三人の視線がリューティルの身体に集まる。
「な、何?みんな…そ、そんなに見ないでよ」
「このお嬢様はそんな贅沢なコトをおっしゃるのか……」
とリッシ。
「色白でいらして…」
微笑みながらレンシェ。
「おっぱいもお尻も大きすぎず小さすぎず…」
最後にナージェ。
「い、いやぁ…でもさ…そんなの自分で思って育つものじゃないし…
他のクラスメイトだって理想的な体つきの人いるじゃない」
リューティルは苦笑いしながら言った。その言葉にナージェが噛みついた。
「そうかなぁ…リュティは下級生に『リューティル様、いつもお綺麗です』とか
『お姉様、お慕い申し上げております』『私とお付き合いしてくださいませ』
とか大人気じゃん。私なんて陰で『ワンワン様』とか『雌犬姫』とか呼ばれてるんだよ?」
「それはナージェの言動が原因だろ?まぁそれは置いといて……
私もリュティ…なんていうか…こう、色っぽいというか…
とにかく綺麗なんだよ。うん」
「うん、リュティの乳は私が揉んで育てたのだ、感謝するがよい!」
ナージェが自分の胸に両手をあてて言った。
「ワンワン様はいつもお元気そうで…私もアイリッシュさんの言う通りだと
思います。リューティルさんは本当にお姿が麗しい、少し妬けてしまいます」
「おい、レンシェ、今さらりとワンワン様って言ったよね?」
「さあ、むずかしいことで。わかりかねますわ」
おっとりとした口調でレンシェが返す。
「ははは、まぁまぁナーひゃっ!」
突然、リューティルが声を上げた。
「ん、どうかしたのリュティ?」
アイリッシュが声をかけてきた。
「んん、な、何でもない…ごめん、ごめん」
リューティルはそう言いつつ、密かに
手を動かしスカートの上から股間をなぞった。
(き、昨日の……キルシェのがちょっと出てきた……
や、やばい…後でお手洗いにいかないと……)
『お嬢様、お帰りなさいませ』
学園からの送迎の馬車が屋敷の前に止まり、リューティルが降りてくると
ティニアとアリアエルが頭を垂れ、迎えた。
「ただいま、ティニー、アリア。出迎えてくれてありがとう」
リューティルはにこっと笑って、メイドを労った。
馬車を見送り、屋敷へ向かう3人。
「鞄をお持ちます、姫様」
「今日の夕食はリューティル様のお好きなパスタでーす」
ワイワイと会話を交わす一行。
「ホント?楽しみ♪鞄はいいよ、自分で持って行くから」
メイドたちに手を振り、リューティルは屋敷の中へと入っていった。
2階へ上がり、自分の部屋に向かう。が、何を思ったかキルシェの部屋の前で
立ち止まり、中へと入った。
「あれ…まだ帰ってきてないのか…」
帰宅した後、いつもキルシェの部屋に立ち寄り、『ただいま』というのだが
私用で出かけているらしい。
「まぁ…いいか、入って待ってるか…」
ちなみにティニアとアリアエルだけは2人の仲を知っている。
机の上においてあった従者の読書用眼鏡をかけベッドへダイブ。
「ひ、姫様!いけません!私のような者と……なんちゃって
ふふ…キルシェのニオイだ……」
俯せになり枕に顔を押しつけ、愛しいニオイを胸一杯に吸い込む。
「ん……何か固いモノがある…何だろ?」
リューティルは枕の下に違和感を感じ、がばっと枕をあげた。
そこにあったのは明らかにソレとわかる表紙の本だった。
それも7冊もあった。タイトルは
『ドMなプレイで楽しむ夜』
『制服ニーソで足コキ罵り』
『デカ・パイ・ズリ!!』
『ねこみみすとニャン』
『アナル』
『野外セックス』
『あなたの雄犬・雌犬首輪でワンワン』
「キ、キルシェ…こんなのが好きだったんだ」
ペラペラと捲っていくといかにも見せつけるような感じで
見事なおっぱいや尻を晒している女性達。
どうやったらこんなアングルで撮れるのか疑わしい写真。
場所は夜の町や森、果ては昼間の公園や野外での写真。
衣装は格好は様々だ。従者の趣向がこんな領域までに及んでいたのかと
リューティルは呆気にとられた。 「す、すごい……キルシェも何だかんだ言ってノリノリだったんだ。
しかもコレ……」
男が踏まれて嬉々としているシーンが何ページか折られている。
「いつもキルシェは受けだけど…あれだけじゃ満足してないのか……
悪いコトしちゃったなぁ……ん、で、でも…」
リューティルはキョロョキョロと周囲を見回し、カーテンを閉めた。
「……こ、こんなの見てたら……鍵を閉めて…は、早めに終わらせよう…」
顔を赤くしてリューティルは
スカートの裾をめくり上げパンティをむき出しにした。
学校のトイレで何とかふき取ったが、未だに湿り気が取れない。
「ん…でも…いいか…どうせ濡れるだろうし…キルシェの枕…」
くんくんとニオイを嗅ぎながら下着をむき出しにしているのだと思うと
いつもとは違う羞恥が胸を高ぶらせる
指先で濡れた秘部部の筋つーとなぞった、ヒダが熱い体液で濡れ
筋の終着にある小さな泉から懇々と岩清水のように湧き出だしている。
「ん……く…はぁ」
妄想の中ではキルシェの趣向とは異なるプレイで興じていた。
普段ではありえない、そうキルシェの責めだ。
獣のように激しく犯される自身。
いつも女性上位で交わる体位ではなく、正常位で責められる。
場所は部屋ではなく、野外。
草むらでキルシェに組み敷かれ、半裸のままで強引に挿入される。
『い、痛い、痛い!やめて』と泣いても止まらない責め。
その背徳感がさらに自慰の熱を高めた。
下着が水を吸ったように秘部からはくちゅくちゅと粘着音が響く。
指の腹で陰核を押し潰し、摘むようにしてクリクリと転がす。
「くっ……んんん」
声が漏れそうになると枕に顔を埋める。
誰に聞かれるわけでもないのだが、自身の喘ぎ声は恥ずかしいものだ。
が、枕に押しつけた鼻孔からキルシェのニオイに触れた。
くちゅくちゅと陰核の弄りではもどかしくなり、リューティルは直接
秘部へと指を進めた。
「はぁ…はぁ……んっ」
………つぷっという感触と共に熱い膣壁が指を圧迫する。
「はぅン!んっくうう」
たまらず首をのけ反らせてしまい、甲高い甘い声がもれた。
唇を真一文字に引き締め、声を我慢する。
熱い吐息を吐く唇は濡れ、唾液に触れた髪の毛が
何本かべっとりと頬に張り付いていた。 「はぁ…はぁ…キルシェ…んっキルシェの…」
激しく指を抜き差しすると昂ぶりが上昇気流のようにゾクゾクゾクと
高みへと連れて行く。
妄想の中でキルシェに激しく突かれている。
思うがままに激しく突かれている。いつもの口調ではなく
荒々しく『リュティ!リュティ!出すぞ!私の種を付けしてやる!』と
腰を突き上げ、膣内に大量の体液をぶちまけられる妄想。
「はッ…くぅ、んんんッ!あ、ダ、ダメッ!も、もう!」
リューティルの身体を閃光のような快感が突き抜けていった。
何もない空間にふわりと投げ出されたような浮遊感に、
圧倒的な解放感にとらわれる。
「ん……んッ…」
ピクンピクンと震える身体。荒い息が治まり、大きく息を吐き出す。
けだるい恍惚と秘部を濡らした体液の熱い滑りが自慰の余韻を残していた。
「ん……ふぅ…イッちゃった…」
その時、ガチャリとドアが開いた。
この部屋の主の帰宅だ。
続
何となく姫様が学園に通っている日常を書きたかったので
書いてみました。あんまり姫様感がなくてすみません。
いつか凌辱モノも書いてみようかな… >>76
GJ!!!
姫様がお嬢様に囲まれる日常もイイ!
7冊のエロ本は本人所有か、どっかから来たのかw >>78スマソ。>>73の次が抜けていた。以下、>>73の続き
午後のマイステン家
「あーくっそ〜…あのダークエルフめ、皿ぐらいいいじゃん。何十枚もあるんだから!」
屋敷に勤めるメイドのティニアがココアが入ったカップをドンと机の上に置いた。
ここは屋敷に勤める者達の休憩室。
屋敷に勤めるメイドはワーウルフのティニア、アリアエルそれにマムの3人である。
それに専属のコックが2人と庭師の老人が1人。計6名の者が住み込みで働いている。
「お皿は料理を乗せる大事な食器ッスからねぇ…はい、クッキー焼いたッス」
専属コックの1人、ルチアナが言った。こちらは人間の女性である。
白いコック姿で赤い頭髪と首に巻いた赤いスカーフがトレードマークだ。
「あ〜ありがと。ん〜クッキーのいい匂い。ルッチはお菓子作りの天才だな」
「えへへ、それほどでも」
バリバリとチョコチップ入りのクッキーを食べるティニー。
「そういう問題ではありませんよ…はむはむ。ティニー今日で何枚目ですか?」
もう一人のメイドのアリアエルがたしなめるように言った。
「ん〜…今週はまだ5枚目かな?」
指を折って計算するワーウルフ。
「うわ…そんなにッスか?料理乗った皿だったら師匠にぶっ飛ばされるッス」
師匠とはコック長のヴァルカレッジという人間の男性である。
ひょろっとした背の高い青年でいつもニコニコしている。
「あのコック長が怒るのか?迫力なさそうだけど…」
「料理のことに関しては厳格なんッス。マジで怖いです」
ルチアナが腕を組んでうんうんと頷いた。
「全く…1枚、いくらすると思っているのですか、私達の1ヶ月のお給料の
半分はしますよ?」
はぁ…とため息をついてアリアエルはクッキーを摘まんだ。
「あちゃ〜そりゃキルシェ様も怒っても仕方ないッスね」
「それでもさぁ…あーもう!むしゃくしゃするぜ!」
頭を抱えてティニアは呻いた。
「さぁお嬢様がお帰りになる時間ですよ。行きましょう」
「あたしも調理場に戻るッス。お嬢様の食事すんだら今夜の賄食もってまた来るッス」
「期待してるぜルッチ。あ、ティニーごめん。ちょっと先に行ってて」
「ティニー、どこに行くのですか?」
「あら、いやだわ。お花摘みに行くのよ、アリアさん♪」
「お手洗いですか……先に行きますよ」
と、アリアエルが先に行った事を確認するとティニアはとある物を持ち
あろうことか当主であるキルシェの私室に入った。
「ククク……今日はマムの掃除当番だし…マムはキルシェ様にゾッコンだからね…
エロ本見つけた日には…『キルシェ様の変態!幻滅しました』って言って…
ざまァみろって感じだわ」
とブツブツ呟いて購入した数々のアダルテトな本を取り出した。
しかもかなり重度な趣向の本ばかりだ。
「場所は……そうね、妥当なトコで枕の下かな…見つけやすいだろうし」
そう言ってティニアは枕の下に本を重ねるとそそくさと部屋を出て行った。
「……っーかマム、お使い長いな…そろそろ帰って来てもいいのに…
帰り道に迷ったとかじゃねぇだろうな、あはははは」
実際、マムは迷っていた。さして遠くない町での買い物だったハズが
帰り道を間違い、森の中で1夜を明かすことなど、ティニアは知ろう由もなかった。 連投ですみません>>76の続き
覇王の孫娘
本番
「おかえり、キルシェ」
「はい、ただいま戻りま――姫様!なぜ私の部屋に!?」
キルシェはリューティルが自分の私室にいることに驚いた。
侍女に見られては非常にまずい。
しかしリューティルは気にもかけず言った。
「キルシェ……股を開いてそこに座りなさい」
メガネをくいっと上げて皇女は言った。
「な、何を言っておられるのですか!?」
「座れ」
「は……は…はい」
リューティルの眼力に萎縮し、哀れな従者は力なく座った。
「足が疲れちゃったわ……揉んでくれる?」
「何を仰っておられるのですか!姫様の御足に触れるなど―――」
「昨日の夜は私の足にねっとり絡ませていたクセに」
「あ…あ…あぅ」
昨夜の情事のことを指摘され、キルシェはしぶしぶリューティルの
右足を手に取った。
「あ……んっ…そこ、もうちょっと強く」
「は、はい」
ぐいぐいと力を込めて従者は主君の足を揉む。
ニーソックスに包まれた足、白い太腿、その先には白い下着が覗く。
「どうしたのキルシェ…何か見える?」
わざと見せつけるようにして股を広げる皇女。
「ひ、姫様!一体、な、何を」
「キルシェもこういうの好きでしょ?本当はパンティ履いていない方が
いいんじゃないの?」
リューティルは冷ややかに笑って足を伸ばした。 「じゃ、こういうのがいい?」
「なっ―――あぐっ!?」
片足をあげてキルシェの股間をぐにゅっと踏みつけた。もちろん加減はしてある。
「ひ、姫様、お、おやめ下さい。私にはこういう趣向はありません」
「ふぅん…そう、皇女である私に嘘ついちゃうんだ」
くにくにと軽く足に力を込め、従者の顔を覗き込むようにして言った。
「踏みつけているのに段々硬くなってきたよ?本当は気持ちイイんでしょ?」
ペニスの先端を足の親指と人差し指ではさみ、ぐにゅっと圧迫した。
「いっ痛!そ、そのような事はご、ございっ…ませ…ぐっ」
「なら今から私の言うとおりにして忠誠を示しなさい」
「な、何を…」
リューティルはスカートの中に手を入れ、濡れたパンティをしゅるっと
抜き取り、スカートを捲り挙げた。
パンティーに覆われていた下腹部がさらけ出され、
キルシェのペニスはますます硬くなった。
「キルシェのオチンチンだけ出してオナニーしながら私のココを舐めなさい」
キルシェに迫ってくる白い下腹部。股から覗く秘裂は先ほどの自慰で十分に濡れていた。
「なっ―――!?」
皇女の命令とはいえ、キルシェの尊厳を著しく損なう命令。
この上ない辱めだった。 「一体、どうされたのですか姫様!こ、このような淫らなお戯れはおやめになってください」
「私の命令が聞けないの?このエロ従者、ダメチンポ、私のお尻に発情する変態!」
「姫様……ど、どうかお許しを!」
既に泣きが入っているキルシェ。その言葉にゾクゾクきたリューティル。
(もっと苛めないと、ドMなキルシェは詈られて喜ぶみたいだし……
そ、それにコレすごく気持ちいい…やばっ…ハマりそう♪)
勘違い皇女の嗜虐心に火が付いた。
「にゅちゅ…くちゅ…はぁん」
「ん…ふふ、毎日してるだけあって上手いじゃない…んくっ」
命令通りズボンのベルトを緩め、ペニスだけ露出させたキルシェが
リューティルの秘所に舌で奉仕していた。
臍から下腹部へ舌を這わせるとうっすらと茂るリューティルの恥毛。
2枚の秘裂の上端は肉が少し盛り上がり、陰核の存在を伺わせる。
「オナニーの手が止まってるよ…あっ…ちゃんとしてよ…んっ」
「う…はァ…ちゅるじゅる…」
キルシェは片手を伸ばし、起立しているペニスをシュシュと扱きだした。
「ん…キルシェてそういう風にするんだ…あっ…ちょっと感動しちゃうなァ
生のオナニー見られるなんて…んんっあ…ン…イ…あ…ン」
ベッドに腰掛けるリューティルの腰がふるふると震えた。
絶頂に達したのだ。その甘い声にキルシェもまた興奮し、
「……ひ、姫さ…うっ!」
鈴口に手をあて、射精した。びゅるっぴゅっと飛び出す精液。
荒い息をつきながら、虚ろな皇女だったが従者の射精をみると
カッと目を開いて怒鳴った。
「こ、このダメチンポ!誰が射精していいって言ったァ!ああん!」
「そ、そんな…ひ、姫様…の…淫らな姿を…うう」
「私をオカズに?ふふ…本当にどうしょうもない変態ね。いいわ、特別に
許可してあげる……」 リューティルはベッドから立ち上がると、壁に手をついた。
両手でスカートの裾を腰まで たくし上げると
白くもっちっとした形の良い尻が丸見えになる。
「鞭の後には飴を上げないとしつけにならないし…
さぁ、キルシェの大好きなお尻だよ。
紅いタイに紺のブレザー、赤いスカート…ニーソックスに
おまけの伊達メガネ……
アイリス女子学院の制服を着た私と着衣エッチできる
なんて贅沢だねぇ……キルシェ」
「あ…ひ、姫様…」
「このままバックからして…ね?」
キルシェは両手でこねるようにしてリューティルの尻を揉みし抱いた。
いつまでもこね回していたいほど柔らかな尻。時折、見える皇女は秘裂は
しっとりと濡れていて、綺麗に生えそろった恥毛が妖艶な輝きを見せる。
「あ…いいよ…キルシェの手つき、とっても感じる」
キルシェはもう我慢できないといった様に右手をせわしく離し、
いきり立つペニスに手を添えた。
熱く溶けた鉄のような肉棒の先からは先走り汁がぷしゅ…ぷしゅっと
飛び出している。
「もう我慢できないって感じだね…いいよ、来てキルシェ」
リューティルが白いブラウスの前を開き、ブラジャーをまくり上げた。
白い乳房がぷるんと震え、飛び出す。
「姫様、も、申し訳ありません!」
キルシェはブレザーを荒々しく剥ぐようにして背中を露出させた。
「ん…もう…ふふ…激しいキルシェも素敵だよ」
皇女は甘く囁き、潤んだ眼で従者をみた。
キルシェはしっかりとペニスを掴んで腰を突き上げるようにして皇女の中に押し入った。
「あああっ、キルシェのすご…い、いつもより…か、硬い!」
「ああ、姫様…姫様…あ、熱い…熱すぎます!」
リューティルは壁に爪を立てるようにして身体を支えた。
ガクガクと両足が震え、内股になる。キルシェは根本までペニスを埋没させると
腰をくねらせ、快楽を貪るようにして腰を振り出した。
「あっ!はぁン!ふっ!キルシェ、キルシェ!くぅ!」
皇女の色めきだった雌猫のような声。
キルシェは皇女に後ろから密着すると、壁に押し付け尻を突き上げた。 「あっはぁぁ!はげ、激しい…ンぁ!」
「あ、ひ…姫様のお尻の肉厚が…姫様、姫様!」
キルシェは両手で皇女の尻を掴み込み、がっつくように何度も何度も腰を叩きつけた。
私室で半裸、尻だけを剥いて獣のように行為に及んでいる。
しかも女子学院の制服で着した皇女はいつも以上に刺激的で、淫靡だった。
「ああッ!!激しいよ!わ、私、もう、もうイッちゃう!」
「姫様、わ、私も!もう…で、出る!出ます!」
リューティルが唇を噛み、頭を振って叫ぶように言った。
「ああッ!ん、ふふっ…キルシェの精子!
私の膣内にぶちまけて 種、種付けして!私に種付けして!」
「ああッ、出る、出ます!わ、私…の姫様に! 種付け!」
壁に押し付けた皇女の背筋が弓のように反りかえった。
ほぼ同時にキルシェのペニスからダムが決壊したような勢いで
最奥に精子をぶちまけた。
「あっ…あ、ああ…あ、熱い……すご…熱いのが出てるよ…キルシェの
赤ちゃんも種が私の中を…泳いでるんだね…あは」
下から突き上げられ、体内にひろがる熱い精液を感じながらリューティルは
呆けたように言った。
「ひ、姫様…ふッ…んん」
その言葉に焚きつけられたのかキルシェはリューティルの
尻肉をぐにゅっと鷲掴み、更に突き上げた。
「きゃわっ!ま、まだ出るのキルシェ!?あ…あン、あはッ、ンン!」
リューティルが余韻に耽っている間もキルシェはぺたん…ぺたんと
腰を突き上げ、奥へ奥へと孕むように 射精しながら腰を振った。
「あ…あ…んうう…姫様…ああ…姫様」
「はぁ…はぁ…あ…ん…ね…つ、次はベッドで…ね、キルシェ…」 その後、ベッドに移動し続けて2回戦。そのまま3回戦、そして4回戦が終了した。
二人は寄り添い、軽いキスを交わしながら事後のピロトークタイム。
「姫様…おひとつお聞きしたいことがあるのですが…」
「なあに…キルシェ?」
「さきの…その…叱責や足の踏みつけは一体…」
キルシェは暗い表情をした。自身に何らかの落ち度があったのかと
リューティルに尋ねているらしい。
「え……キルシェはああいう罵りとか責めが好きなんでしょ?」
「は…はぁ?」
キルシェはきょとんとした。構わず皇女は続ける。
「いやぁ〜キルシェも何だかんだ言ってエッチの勉強してくれてたんだね。
私は嬉しいよ。しかもМ気質だったなんて…これからいっぱい責めてあげる」
「は?」
「あと意外だったのはキルシェのエッチ趣向がとっても多いってコト。
私は…その…おっぱいで挟むのはできないし…外もちょっと…あ、あと
お尻と首輪でお散歩はごめんなさい。そのかわり猫耳ならできる…にゃん」
「あ、あの〜姫様?」
「何かにゃん♪」
「その……」
「にゃん、にゃん♪」
「一体、何のお話をなされているのですか?」
「…………にゃん?」 後日、ティニアはキルシェに激しい叱責をくらい
『これから3ヶ月間は給料なし。最低限の衣食住だけはつけてやる。それが不服なら解雇』
との条件をつきつけられ、涙ながらに承諾したという。ちなみに最低限の食とは
小さなパン1個、キャベツのスープ、干し肉3枚、水1杯。
この貧しい食事が1日2回。ワーウルフのティニーは3日で
気が狂いそうになりドクターストップがかかった。
その後、使いから戻ったマムがキルシェの部屋から出たゴミの中に件の雑誌を見つけた。
彼女はそれを密かに持ち帰りキルシェの使用した跡がないか1枚、1枚確認し、熟読した。
「キルシェ様…ああキルシェ様の使った跡がないのは残念です。
でもキルシェ様ってこういったのが好きなんだ……私は胸もないし…
魅力ないけど…お、お尻と首輪でワンワンくらいならできるかなぁ…」
そうつぶやき、自作のキルシェ人形をギュッと抱きしめながら秘所に手を伸ばした。
おしまい GJ!
エッチな本の仕込みに、結局みんなおお喜びですな。
姫様は理想のエッチが出来たし、従者君も結局ノリノリだし、めでたしめでたし。 投下します。
ユゥとメイリン7
注意事項:非エロ
そろそろ設定説明回。7レスの予定。
翌朝のメイリンは、うって変わって静かだった。
朝食は、珍しく──というか、僕がこの邸に来てから初めて──メイリンの房室で、一緒に摂った。
けれど、メイリンはじっとあらぬ一点を見詰めたままで、箸も一向に進まない。
寝惚けているのか、旅の疲れが抜けないのか、それとも僕が何か粗々でもしたのか。ひどく気に
なったが、メイリンは「ユゥは食べて」と言ったきり動かない箸を持ち続けていた。
主人格であるメイリンが食べ終われば、僕も終わらざるを得ない。メイリンが、僕の食べ終わるのを
待ってくれているのは明白だった。
メイリンと初めて共にした朝食は、少し慌ただしく終わった。
「済まない、今朝はもう、食べられない。」
そう言って、硬い表情で皿を下げさせたメイリンは、長椅子へと移り、卓を挟んだ向かいの椅子に
僕を掛けさせた。
「今日は、話があると言った。──まずはよい報せから。」
メイリンは小さな平たい布包みを取り出した。手のひらに載るほどの大きさのそれを受け取り、
開けてみると、中には折り畳まれた紙が入っていた。
「読んで。」
促されてその紙を開いてみる。
「手紙……?」
そこに並んでいたのは、懐かしい筆跡。ふくよかで丸みのある母の字と、個性的で飛び跳ねる
ような妹のユイの字。懐かしさと温かさのあまり視界が滲む。
母と妹が、僕に手紙を書いてくれていたなんて。
蒲州を転々としながらも、労役は多いがさほど過酷ではなく、住むところにも食べるものにも
困っていないこと。
偉い姫様がやって来て、皆のこまごまとした不安や不満を聞いて、助けてくれたこと。何より、
僕の消息を知らせてくれたこと。その姫様が、通事も使わず、上手に僕らの言葉を話すので
吃驚したこと──
ユイの手紙にも、「きれいなお姫様が来て、みんなにお菓子を配ってくれた」と書いてあった。
「これが、メイリンの『頑張ったこと』?」
僕は素直に感嘆した。文面から、メイリンが僕の同胞のために心を砕いてくれた様子が
伝わってくる。
やっぱりメイリンは、お高く留まったお姫様ではなく、賢くて優しい、凄い女の子だ。
「いや、これは楽な仕事。父上が資金を調達してくださったので、大した交渉も必要なかった。」
「あの『偉い人』が?! 確かに僕にいくつか約束してくださったけど……こういうことまで、
してくれるものなの?」
「父上は慈善はなさらない。」
メイリンはきっぱりと言った。
「言うなれば、これは、投資だと。そのうち、ユゥにも分かる。──多分。」
「とうし?」
「その話は、あと。いいから、次を読んで。」
──ちゃんとしたお邸で、大事にされていると聞いて、安心しました。
あの姫様の元で暮らしているなら、心配は要りませんね。
桂花の民には、定住と耕作の権利が与えられると、姫様が教えてくださいました。
どこへ行くのかはまだ分からないけれど、わたし達きっと頑張ります。
落ち着いて生活できるようになったら、あなたもわたし達と一緒に、暮らしましょう──
「えっ? 定住? 耕作? 権利? 奴隷として、じゃなく??」
「そこはユゥの功績だな。
戦は最短で終わり、生き残りの収容にも、日数はかからなかった。
一日でも短く終わったということは、それだけ兵を動かす戦費がかからなかったということ。
当然、敗戦の民に課せられる賠償金も少なくて済む。」
「そうじゃなくて、戦に負けて連れて行かれたら、普通、奴隷として売られるんじゃあ……」
メイリンは驚いた表情で、目をまるくして僕を見た。
「ユゥ、いつの時代の話をしているの? スゥフォン兄様に、習わなかった?」
「……えっ」
法学、通商学、歴史学……今までに習った内容を必死に頭に思い浮かべてみる。
スゥフォン様の質問に答えられないときも、
『この頭の中に、ちゃんと脳味噌は詰まってるのかな? …一度、開けて調べてみようか…?』
と本気とも冗談ともつかぬ薄い笑みでぎっ、と頭を?まれたりして震え上がるけれど、
メイリンの質問に答えられないのは、ひどく申し訳ない気持ちになる。
「シン王朝になってからは、奴隷を耕作に従事させることは禁じられている。耕作させる場合は、
必ず臣民としての籍を与え、所有と報酬の権利を認めなければならない。
……なぜか分かる? ユゥ。」
僕は緊張して首を横に振った。今まで習ったことを必死に思い出そうとしているけど、
耕作に奴隷が使えないというのは初耳だ……と思う。
それを見てメイリンはぷくっ、と可愛く頬を膨らませる。
「もぉっ、兄上様ったら、大事なとこなのに、手を抜いたなー?
じゃあユゥ、前朝スイが滅んだ要因は?」
メイリンの次の質問だ。歴史か、歴史。ちょっと苦手だったんだけど。
「えと……、周辺国との戦…には勝った。けど最後の遠征で…戦費がかさんで…財政が傾いた。
その他に、大規模工事の乱発、急激な改革への不満、青徳農法の失敗──」
「そう、それ。」
メイリンの瞳が輝いた。でも僕は、書物に書かれていた言葉をそれほど深く理解している
わけでもなくて、どれのことだか分からず戸惑う。
「前朝は、周辺国との戦を繰り返し、そこそこ勝った。そして大量の戦争奴隷を獲得した。
国内に溢れる大量の奴隷をどうするか──一番簡単なのは、余っている土地を耕作させて、
穀物を生産させること。
前朝最後の皇帝は彼らを一箇所に集め、管理して広い農地を耕させることにした。そして
その地を青徳と名づけた。青々とした美しい農地の広がる土地にするつもりだったのだろう。」
「……しかし青徳は、十年あまりで失敗……。」
僕は、書物から憶えた言葉をそのまま口に出した。僕が知っているのは、その辺までだ。
「そう、結果的に、青徳はほんの十年あまりで失敗した。広大な農地の所有者は皇帝であり、
管理していたのは、鍬を振るったこともない一握りの司農官であった。
彼らは知りもしなかったのだ、土を育むということを。」
メイリンはそこでちょっと僕を見て、「これ習った?」と聞いた。
「全然。」
と僕が答えると、メイリンは兄の不手際にぷりぷり怒りながら話を続けた。
「ここは、ユゥにとっても重要なとこだから。
青徳では、土を触ったこともない小数の人間が、奴隷による強制労働で、広大な農地を
作物で一杯にしようとしたのだ。
司農官達は肥料を撒いて土を良好な状態に保つことなど知らなかったし、それは下々の者が
勝手にやる事だと思っていた。
一方、周辺国から連行された奴隷達には何の権限も与えられていなかったし、言葉も
禄に通じず、処罰を覚悟で新しい提案などする義理も、また余力もなかった。
結果、青徳では最初の数年は大きな実りがあり、それからだんだんと収量が落ちた。
司農官たちはその理由も分からぬまま翌年も、そのまた翌年も種蒔きを行わせ、奴隷達を
酷使した。何も採れなくなるまで。
そしてついに──一部の土地では灌漑の失敗により、塩が浮き出て不毛の土地になった。
そしてその他の地は、土の滋養を失い続け、草すら生えぬ硬く締まった土くれの塊になった。
今も青徳には、広大な不毛の地が広がる。」
「……えっ? 誰か、肥料を入れてやり直した人はいないの?」
僕は少し驚きの声を上げた。
「勿論シン王朝になってから、農法の研究は盛んに行われた。
しかし塩の浮いてしまった土地は、水を撒いてもどんどん塩が浮くだけだし、硬く締まった
土には肥料も水もほとんど入らなかった。
土くれの塊になってからでは遅い、というのが大方の司農博士達の意見だ。
研究はまだ続けられているが、青徳のようになった土地を再び緑で満たす方法は、分かっていない。
それゆえ、シン王朝になってからは、耕作するものは小作に至るまで、すべて自らの
権限の元に耕作する土地に責任を持ち、農地を良好な状態に保たねばたねばならぬ。何人(なんぴと)も、
耕作する者から権限を奪ってはならぬし、権限を持たぬものに耕作させる場合には、
新たに与えねばならぬ。」
たしか、その青徳の農地では数年間は豊富な収量があり、安価な穀物が大量に出回った。
そしてその後は供給量が急激に落ち込み、穀物の価格が乱高下した。市場は混乱し、農民の
作付けも、民の生活も混乱し、既に傾いていた国家財政への、最後の一撃になった──
「だから、桂花の民にも、土地に対する権限が与えられる、ということ?」
「そう、ユゥの働きもあって、桂花の民は、かなりの数の生き残りがいる。わが国では奴隷の
耕作を禁ずる国法の所為もあって、これだけの人数を捌く奴隷市場など存在せぬし、耕されて
いない国土はまだあるのだ。
朝廷としては、定住させて、税と共に戦費を回収した方が、確実だ。」
戦勝国であるシン国の、思っていたよりも寛大な措置に僕は驚いていた。それでもメイリンは
表情を緩めることなく言う。
「安心するのはまだ早い。桂花の民は山の民で、焼き畑で暮らしてきた。深耕する習慣すらない。
平地で農耕を営み、朝廷に税と戦費の返済分を納めながらの暮らしは、平坦ではありえない。」
「……もとの桂花山で暮らしながら、税を納めるという方法ではいけないの?」
僕は不思議に思った。農民としての権利を認められ、戦費を朝廷に返済することで許される
とするなら、慣れた土地のほうがはるかに効率が良いのではないだろうか。
「ふむ。先程、青徳の事例はユゥにとっても重要だと言った、その意味が分かる?」
僕はまた首を横に振った。メイリンからの質問はスゥフォン様のときみたいに震え上がる
ようなこともないけれど、メイリンの期待に添えていない自分がいたたまれなくなる。
けれどメイリンは、僕が答えられるかどうかにはあまり頓着していないようだった。かまわず
次の言葉を続ける。
「桂花山でも青徳と同じようなことが、起こりつつある。」
* * *
茫然としてなにか言葉を探す僕を置いて、メイリンは自ら立って棚から細長い箱を取り出して
きた。
蓋を開けると、巻かれた布の地図が入っていて、彼女は卓上に丁寧にそれを広げた。
「長い話になるだろう。
ユゥにとっては初耳のことも、また聞いていたことと逆の事実もあるだろう。
しかし、まずは心をまっさらにして、我らの側の言い分を聞かねばならぬ。
おまえの一族の擁護はそのあとで、存分に聞くといい。」
メイリンの広げた地図には山河が描かれていて、細かくシン国の地名が書き入れてある。
うねる河筋の周りに、沢山の×印があって、数字が書いてある。一番大きく書かれている
地名は蒲州、山は──
「桂花山……」
懐かしい故郷の名前に、目が釘付けになる。僕らにとっては広すぎるくらいだった故郷の山も、
シン国の国土に囲まれて窮屈そうに縮こまっていた。
メイリンの白く細い指が河を示す線を辿る。
「これが鶴江[ホー・チアン]。蒲州中を蛇行し、潤す河だ。桂花山を水源とする。この河は、
桂花の言葉ではなんと呼ばれていた?」
「蔦川…。」
僕は桂花の言葉で答えた。そしてメイリンは難なくそれをシン国の読み方で発音する。
もう随分ふたつの言葉を使いこなしているようだ。
「鶴江には支流ごとに細かく名前がついている。蔦川[ニアオ・チュワン]もその扱いだ。
ただし蒲州の管轄下ではなかったので、この地図にその名は書かれていない。」
鶴江、と書かれたその河は、桂花山から出て、周りの細い川と合流を繰り返しながら、
地図の中を蛇行していた。
「水勢学はもう学んだな? 川の源流はどこから生まれる?」
「…土の中。」
突然、質問の分野がまたがって吃驚する。確か、スゥフォン様はそんな風に表現していた。
土から川? と印象深かったから憶えている。
「そう、土の中。地下に水がある。それが地上に出てきたのが、川あるいは河。
では、地下水の最も重要な入り口は?」
「…森。」
少し、鳥肌が立ってきた。メイリンがこれから語ることを聞きたい、でも少し怖い、そんな
気持ちだ。
「父上は十年ほど前から、鶴江に注目していらした。
いまは年が明けて光興十五年になったばかりだから、大体光興四年の頃からと考えてよい。
だから父上は桂花山の地形にも、言葉にも、人物関係にも既に精通していらして、戦が起こった
際には、是非にと軍師に推されたのだ。
かなり渋っていらしたが、結局は他に人材がおらず、母上も強く推されたので、仕方なく
お引き受けになった。」
十年ほど前──
一瞬、六歳の頃のメイリンと、七歳の頃の僕が、向かい合って座っているような錯覚を覚えた。
きっとメイリンは、その頃からとんでもなく可愛かったんだろうな。その頃から知り合って
いたら、どうなっていただろう。
「蒲州では、河堰の決壊が増えていた。この地図には、遡って光興元年からの堰の決壊場所が
記されておる。
×印がそれで、横の数字が決壊した年だ。」
くねくねと曲がる大河に纏わり付くように、沢山の×印が書き込まれていた。×、×、×、
また×。一つの場所に沢山の×が書き込まれている所もある。二年、五年、六年、九年
、十年、十二年、十四年。
「何度も決壊しているのは、土砂が溜まり易い地形の所だ。上流から大量の土が流れてくる
ようになっていたのだ。上流とはすなわち──」
「桂花山?」
僕が最後の言葉を引き取り、メイリンが頷いた。
「桂花山にはシン国の支配の及ばぬ民が住んでいた。父上はすぐに人を遣って調べ始め、
数年のうちにこう結論付けた。すなわち、『桂花山に住む民は、この山の中だけで
暮らすには、増え過ぎた。』」
「増え過ぎ?! そんなっ…!!」
思わず僕は立ち上がっていた。
僕達にとって山は、まだ十分に広すぎた。僕が憶えているだけでも何人もの人が、山の中で
行方が分からなくなっていたし、そんなときに歩いて探し回るには何日もかかって、大人の
男たちをどれだけ狩りだしても、山のすべてを見て廻るには足りなかった。
それでも、メイリンの静かな目を見て我に返る。そうだ、まずは聞け、といわれたのだった。
「どうして…そんなことが、言えるの。」
僕がすとんと腰を下ろすとメイリンは何事もなかったように続けた。
「ふむ…、森が、荒れ始めていた。
桂花の民は森を焼き、畑を作って生きる。そして数年分作物を育て、木が生えてくるように
なったら、そこを放棄して次に移る。そうすると、そこの土地はいずれ再び森になる。おまえ達は
また移動して別の森を焼き、それを繰り返す……ここまでは、よいな?
畑地が再び森になるのと、森を焼いて畑地にする速さが、釣りあうまでならいい。
ところが、父上が調べたときには既に、回復よりも森を焼く速さの方が勝っていた。おまえ達は
限度を越えて畑地を増やし、結果として森になりきる前の裸地が増え、『涸れ谷』至る所に
見られた。従軍した折、わたしも沢山見た。」
『涸れ谷』は……習った。雨が地面を穿って、小さな谷のように土が削り取られてしまった場所。
流れるのは養分をたっぷりと含んだ土だ。これがあるのは、森としても耕地としても、
あまりよくない状態──
そうだ、僕の故郷の山にだって、そんな小さな谷がいくつもあったじゃないか。
そのすべては、またいずれ森に飲み込まれるものと思っていたけれど。
「じゃあ、桂花山の『涸れ谷』で削りとられた土が……蔦川を流れ下って、下流で堰を埋めた?」
「まあ、そうだ。しかしここで重要なのは、何度も堰が埋まるほどに、山から土が失われて
しまったということだ。
上から下へと流れ下ることは容易い。しかし下から上へと運び上げることは……困難だ。
今のまま土が流れ出し続ければ、いずれ桂花山すべてが不毛の地となる。
朝廷はこの報告を重く見、蒲州総督府を通じて桂花の民と交渉を試みた。五年前のことだ。」
「そんな……父さんから、聞いたこともない。そんなこと。」
メイリンは僕の言葉に頷いた。
「そこがお前たち一族の閉鎖的なところだ。外との折衝は限られたものだけが行い、その内容は
秘密にされた。父上の調べ上げた事実は多岐に渡り、わが国で多少なりとも学識のあるものならば
納得させるのに充分だったが、おまえ達にとっては、そうではなかった。」
「理解できなかったんだ、難しくて。」
そりゃそうだろう。それだけの内容を理解しうるような学問的素養は、桂花山には存在しない。
僕だってほんの四月(よつき)ほど前の知識で今の話を聞かされても、どこまでついて行けるか怪しい。
僕達にとって、森はあくまで美しく豊かで、ずっと変わらないものだった。急に他国の人間に、
おまえ達の森が壊れかけだと言われても、むきになって反発するのがおちだ。
「そうだ、異文化圏との交渉の際には、共通の認識がどこまであるかが肝要だ。
しかし我が国と桂花の民との間には交流がなく、言葉も違い、おまえ達の言葉で説明しようにも、
対応しうるだけの語彙が、桂花の文化にそもそもなかった。」
なるほど…と僕も頷いた。僕らの間では、山を下りた麓の世界は遠い世界で、ほとんど
別世界だった。商品のやり取りすら、ほとんどない。
僕は首長家の素養としてかろうじて片言のシン国語が喋れるが、ほかの多くの桂花の民は、
言葉も知らず、山の外にどんな国があるのか、見たこともなかった。
「そして桂花側はそのとき、我が国の示した懸念を、すべて嘘と断じた。
父上は……っ、父上は、いつだって根拠のあることしか仰らないのに!! 山奥の蛮族が、
無礼なことを!!!!」
突如怒り出したメイリンに僕が吃驚していると、彼女はそこでふぅ、と言葉を切った。
「……当時はわたしも、このように思っておった。なにぶん、父上のことについては
譲れぬ性質(たち)ゆえ。
しかし、今なら、少し分かる気もするのだ。相手の側にも同じように譲れぬものが
あったのではと。
当時の我々の要求は、『飢饉に対して食糧を援助する。代わりに民の三分の一を、
下山させよ。』というものだった。」
「そんな! 下山って、僕らは桂花山しか知らないのに、そんな簡単に…っ?!
他国の言動に簡単に従って故郷を捨てるくらいなら、死んだ方がまし…?!」
あれ、こんな言葉を、どこかで聞いたような。
僕はそうか、と思った。
五年前、僕らは旱魃に苦しめられ、飢饉だった。
僕たちの困窮に乗じて、シン国は交渉を行った。
きっと僕たちの側は、「足元を見られた」と思った。
足元を見られ、騙されそうになっているのだと。
そして必死に、頑なに、撥ね付けた。
「我が国と桂花の民との間には、共通の概念が決定的に不足していた。
知っているか、ユゥ。我が国は、朝貢して帰順する国にはすべて、王族から
『留学生』か『出仕者』を出すことを義務付けておる。我が国の論理を学ばせ、
交渉を容易にするためにだ。
ユゥは年の頃もちょうどよいし、もし五年前に桂花の民との交渉が上手く行っていれば、
ユゥは『留学生』として、盛陽の学院でわたしと卓を並べていたやも知れぬ。」
「……えっ? メイリンの通っている学院って、身分が高くて優秀な人しか、
入れないんじゃないの?」
僕には想像が出来なかった。あのゆったりと、気品のある人たちの中に……僕がいる図を。
「留学生枠というものがあるのだ。勿論入る前も、入った後もみっちりとしごかれるがな。
だが、そうやって同じ空気を吸い、苦楽を共にし、同じ釜の飯を分け合って、共通の土台
というものを築くのだ。
ふふ……何を隠そう、私の母上様も、『留学生』であらせられた。西方の国からいらしたのだぞ。
そして盛陽学院で父上に、見初められた。」
メイリンは両親の自慢話をするいつもの姿勢で、誇らしげに胸を張った。
「共通の概念……共通の土台……。それが、僕がここで学問を修めた理由?」
あのとき、僕がここに来てすぐに、メイリンはなんと言っていたっけ?
「僕たちの『クニ』とメイリンの国が何故戦わなければならなかったのか……その理由を、
いまなら僕は、答えられるかな?」
「それは、もういいのだ。」
メイリンはゆっくりとかぶりを振った。
「ユゥと一緒に暮らして、いろんなことを話し合って、ずっと見ていれば……わたしにも分かる。
桂花の民は、別に戦が好きなわけではなかったのだと。殊更にシン国の国土を傷つけて、
同胞を傷つけることを望んでいたのでは、なかったのだと。
おまえ達はただ、静かに生きて、森を愛して、家族を愛して、ずっとずっと、そうして生きて
ゆきたかっただけ。
いままで長い間そうして生きてこれたのに、なぜ今になってそれが出来なくなったのか、
分からなかっただけ。
わたしもそれが理解できたから……」
メイリンはそこではっと言葉を切った。
「……そんなことより、急いでせねばならぬ話があった。わたしはそのために、急いで
帰ってきたのだ。」
メイリンはきゅっと唇を引き結んだ。
「ユゥ、心して聞いて。」
彼女は急に視線を落とし、充分に間を取ってから、悲しげに、重々しげに次の一言を押し出した。
「ユゥの父、ウォン・フェイが間もなく処刑される。ユゥは父上に、会わねばならない。」
──続く──
奴隷制農法による農地の土壌流失はローマのラティフンディウムを参考にしました。
世界史の文脈ではほぼ語られませんが、あちら方面では農法のまずさによる農地の砂漠化はわりと多いらしく、
特にラティフンディウムはひどかったらしいです。紀元前の出来事なのに「跡地はいまだに草もろくに生えぬ荒地」
であると本で読んだときには、震え上がりました。
中国での事例は、長い歴史に埋もれて見えにくいのですが、やはりなんかあったらしいです。
それでは、次は数日後にまた来ます。 >>96
GJ
この2人のこれからももちろんですが、あのお母上が今どうなされているかも結構気になったり。 お久しぶりです! 異文化交流して賢くなりつつある二人がとりあえず可愛いですな
内容はシビアだけど! ◯○陛下は10歳の王女の面前で国王夫妻を斬首刑に処し、 王女の二の腕に
「売女」の刺青を入れ、家紋に×印の首輪と手錠を鎖で繋いで市中引き回した後に
地下牢に換金する事を望んでいます。
ttp://shindanmaker.com/195373
看守達の慰み者になる姫様が可哀想。 は11歳の王女の面前で国王夫妻を生き埋めに処し、 王女の二の腕に「罪人」の刺青を入れ、家紋に×印の首輪と手錠を鎖で繋いで晒し者にした後に奴隷とする事を望んでいます。
なんという…… 3回やってみたら
奴隷 売春婦 慰み者 がでてきたw 読み応えがあって勉強になるな〜素晴らしい!!
続編待っています!!! >>102
早速続編を作ってみました。文字制限があるので結構難しい。
要望があれば随時反映させて頂きます。
王国を乗っ取って王女を地下牢に監禁してみたー
ttp://shindanmaker.com/196326 水を差すようだか、続編期待されてるのはSSの方なんじゃ…。 投下します。
ユゥとメイリン8
注意:非エロ
6レスの予定
「話さなきゃならないこと」が多すぎて、前回「メイリンの頑張ったこと」
まで辿りつきませんでした。今回やっとその話が展開できます。
……。
……………………………。
「えっ、と、父さん??」
思ってもいなかったことを言われて戸惑う。でもメイリンは、確かに僕の父さんの名前を
口にした。ウォン・フェイと。
混乱する僕に構わず、メイリンは話を進める。
「フェイは、生き残った親族との面会を条件に、すべての罪状を認め、首長権の相続にも同意した。
他の親族には、既に蒲州で面会した。あとはユゥだけ。
だからユゥは、父上に会わねばならない。」
「待って──僕、父さんは、あの戦で死んだとばかり…。」
「敵将を生きて捕らえるのも、戦略のうちだ。たとえ相手が討ち死にするつもりでも。
わたしの父上に、手抜かりはない──。」
けれど、僕の父の生存はいままで機密扱いだったのだと、メイリンは語った。だから、僕の家族の
安否を告げるときも、父さんのことはさりげなくはぐらかしたのだと。
「ユゥの兄弟達は、残念ながら亡くなっていた。長兄は捕らえられて獄中死、次兄は戦いの中で死んだ。
ウォン家の長男は、捕らえられたあと、シン国から与えられる食事を摂ることを虜囚の辱めとして
拒否し、飢えて死んだそうだ。
これは、今回の蒲州行きでやっとわたしにも知らされた。いままでは、二人の安否すら
知らされなかった。」
少しだけ、メイリンが今朝、食事が喉を通らなかった理由がわかった気がする。メイリンは、こんな
話題を胸に抱えたまま、元気に食事が出来る女の子ではないのだ。
「ウォン・フェイは……処刑されるために、生かされた。
父上は仰った。責任を取る者が、必要なのだと。
フェイはそれを理解し、納得した。そして生きた。
彼が罪人として死ぬことで、残った民への処遇は寛大になる。」
それを僕に告げるメイリンも、充分に辛そうだった。けれどまだまだ話は続く。
「フェイの罪状は、強硬派として開戦し、徒(いたずら)に同胞の血を流したこと。度重なる交渉の席で、
我が国の譲歩にもかかわらず強硬な姿勢を崩さず、すべて決裂へと持ち込んだこと。ひいては蒲州の
民の命をも軽んじたこと。
そして最終的に、穏健派であった自らの義兄を手に掛けてまで、開戦に踏み切ったこと。
我が国への協力者ではあったが自らの縁者でもあった者を手に掛けたことが、結局は朝廷側の怒りを
買った。処刑すべしとの意見が大勢を占め、フェイにやり直す機会は与えられなかった。」
「えっ……? 父さんが、誰を手に掛けた……?」
「スウ・カオは、おまえの母、スウ夫人の兄だな。フェイにとっては、義兄にあたる。」
「スウ伯父さんが?! そんな、伯父さんは、毒草に当たって死ん────」
戦の前にもたくさんの人が死んだ。飢えで、飢えに伴う病で、食糧として食べた、慣れない野草で。
誰もが、生きていくのに必死だった。
スウ伯父さんは、胸を掻きむしって事切れているのを発見されたのでは、なかったか。そんな
ことはあの頃はもう珍しくもなく、飢えのために誤って食べてはいけない草を食べたのだろう、
と言われた。
でも、あのときそう言ったのは、父さんではなかっただろうか?
「スウ家は旧家として発言権を持ち、穏健派として我が国と通じていた。わたしもよくその名を
耳にしていたので、殺されたと聞いたときには残念だった。」
「何かの間違いじゃあ……」
「残念ながら、証拠はうちの鼠さんがちゃんと持ち出してきた。
フェイがスウ・カオに差し入れた饅頭の中から、猛毒の草の根が見つかっている。」
えっ? ねずみが? 持ち出して???
変な顔をした僕に、メイリンは苦笑して説明してくれた。
「ああ、『鼠さん』というのは、我が家では間諜の隠語でな。これに対して『猫さん』は現地での
協力者のことを指す。スウ・カオは長い間、我らに協力する『猫さん』であった。」
「……そっか。」
僕は力なく笑った。あまりに多くのことを聞き過ぎて、何がなんだか分からない。
「何を、どう考えていいのか、分からない……。頭の中が、ぐちゃぐちゃで。」
「何も考えずともよい。」
メイリンはふんわりと笑った。
「ただ、聞いたことを忘れないで。そうすればいつか、心の中に落ちてくる。考えるのは、
それからでよい。
明日にはユゥは、父と対面せねばならぬ。
心をまっさらにして、あちらの側の言い分を聞いてやるべきだ。」
僕も笑い返そうとして、ふと止まる。
「えっ? 明日?!」
「そう明日。おまえの父もわたしも忙しくて、使える日は、あまりなかった。
もうおまえたちには時間が残されていない。フェイは三日ののちに、処刑される。」
その日はその後、どうやって過ごしたのか記憶にない。用事を言いつけられた覚えもないから、
ぼんやりと過ごしてしまったのかもしれない。夜さえも、寝ていたのか起きていたのか曖昧で、
闇の中何度も目を開いたような気もするし、すべてが夢の中だったような気もした。
それでも、父さんと会わなければならないこと、父さんの処刑が迫っていることは結局
夢ではなく、夜は必ず明けてしまうのだった。
どんなに迷っても、苦しくても。
* *
次の朝は、早くに起こされた。
メイリンの侍女達と、邸の下男たちに囲まれ、口に詰め込まれるようにして朝食を取らされた。
それからがしがし洗われたり、顔のあちこちに剃刀を当てられたり、髪を引っ張られたり
切られたり、あちこち小突き回されたりしているうちに…なんか、着替えさせられていた。
「おお、なかなかに映えるな。髪も伸ばさせておいて、良かった。結うのには足りたようだ。」
僕の出来上がりを見に来たメイリンも、いつもより華やかに装っていた。
色みは抑えられているが、いつもより上質な生地の襦裙、細やかな仕上がりの裾の刺繍。髪飾りの
ひとつひとつも、しっとりと密やかに品のある輝きを放っていた。
僕の方は…明らかに絹製の、ゆったりとした濃紺の袍。髪はぎゅっと高く引き絞られて、
シン国人がするように結われている。
「あの……、なに、じゃなかった、何でしょうか僕のこの服装は。」
「ふむ、これから行く獄舎の責任者は、法務機関である大理寺の長であり、刑部の中でもきっての
堅物、大理卿どのだ。
ユイウ兄様も刑部ではあるが、兄様とは比べ物にならん厳格ぶりだ。
失礼があってもいかんが、舐められてもいかん。
官僚というのは人をみかけで判断するからな、姿形だけでも、整えておかねば。」
僕の装いを上から下まで丹念に眺めて、メイリンは嬉しそうに目を細める。
「これならば問題ないだろう、よく似合っているよ、ユゥ。」
なんだかよく分からないけど、メイリンに褒められるのは気恥ずかしい。顔が熱くなる。
「…髪が上に引っ張られて、変な顔になってる気がする。」
「そんなことはないよ。大丈夫、すぐに慣れる。……まあ父上様だけは、結い髪がお嫌いで、
すぐにほどいてしまわれるのだが、普通の人間はちゃんと毎日、そうして結っているのだから。」
そういえばメイリンの『父上』だけは髪を結わずに、横でゆるく束ねているだけだった気がする。
他はどこへ行っても、きちんと撫でつけているかどうかの違いはあるけど、シン国の大人は大体、
高い位置に髷を作って結い上げている。
「……なんか、変な感じ。」
突然高い服を着せられて、髪を油で撫でつけられて、居心地の悪い思いをしたけれど、面会場所
まで行くのに馬車の中に招き入れられて、吃驚した。
「あの、僕とかは、馬車の後を歩いて付いていくものじゃないの。」
「ふふ、馬鹿を申すな。そんな正装で馬車の後を徒歩で歩かせたら、汚れてしまうし、悪目立ち
してしまうであろ。」
揺れる馬車の中で、メイリンはそう言って鈴のような声でころころと笑う。
薄い簾の向こうに馬と人がいるのは分かっているけど、狭い馬車の座席でメイリンと二人っきりで、
膝を突き合わせるのは、ひどく場違いみたいで緊張する。
「ユゥ、これからいく場所では、とにかく堂々としていること。きょろきょろしてはならぬ。
こんなところは、見慣れすぎて飽きた、というくらいの態度で居るのだ。」
「どういう態度か、想像もつかないよ!!」
メイリンは時々無茶を言う。どんな場所かも全く分からないのに、どうやって見慣れたような態度を
取れというのだろう。
「では、わたしを見て、わたしに倣えばよい。」
メイリンは、落ち着き払い、背筋をぴんと伸ばして言った。確かに、メイリンはいつも堂々としている。
「……いきなり言われても、自信ないよ……」
僕は少し目を伏せた。どうすればメイリンくらい堂々としていられるのか、考えたこともないし、
そんな風にしようと思ったこともない。
「心配ない、そうしていても、それなりに貴公子然として見えるよ。」
メイリンに褒められて、益々身の置き所がなくなる。きっと僕の緊張をほぐそうとしてお世辞を言って
くれてるのだと思うが、むしろ逆効果だ。
「それから今日は、他にもユゥの親族が来るぞ。ウォン・カイだ、おまえの叔父の。」
「……カイ叔父さん?」
「そう、カイが新たな首長として、フェイの後を継いだ。いまは、手続きのために王都に来ている。」
カイ叔父さんは、父さんの弟だ。父さんの後を継ぐのは、シン国の用意した全く別の人かと
思ったけれど、なんだ、割と普通にカイ叔父さんが継ぐのか。
「カイは、フェイによる義兄殺害の一件を知って、フェイと同じ強硬派から、穏健派へと鞍替えした。
カイの鞍替えにより、桂花の民に対する戦後処理が一気に進んだ。
あとは……、落ち着き先も、良いように決まれば良いのだが。」
メイリンは覗き窓を開けて外を見た。間もなく目的地に着くらしい。
「そう、それから、今日のユゥは、わたしの従者ではなく、桂花の民の首長の親族だ。そのように、
堂々と振舞え。わたしのことは、メイリンと呼ぶこと。これは、『命令』。」
メイリンがこんなにはっきりと迷わずに、僕に命令するのは滅多にないことで、僕は更に緊張する。
目的地の建物は、壮大で堅牢な、シン国の国力を誇示するかのような建物だった。
僕が王都に来たばかりの頃なら、この大きさにさぞ吃驚しただろうと思う。でも、この盛陽に来て
四月(よつき)あまり、それなりにこの都市の大きさ、壮麗さにも慣れてきたところなので、メイリンの
言った通りに平静さを保つことができた。というか、メイリンがあまりに自然に堂々と振舞うので、
僕はその陰に隠れているだけで済んだ。
そして通されたのは、落ち着いた調度品の並ぶ、明らかに接客用の部屋。
そしてそこには、カイ叔父さんが座っていた。
「叔父さん…!」
カイ叔父さんは、シン国中枢機関の張りつめた空気の中で、そこだけ桂花山の空気を纏っているように、
僕たちの民族の、見慣れた服でそこにいた。叔父さんはこの王都に来てから、初めて会う同郷の民だ。
けれどカイ叔父さんは、僕に応えるより先に、メイリンに対して膝を突き、胸の前で拱手して、
シン国式の臣下の礼を取った。
「南山[ナンシャン]郡主様……!!」
皇帝の娘は公主と呼ばれるが、メイリンの父上の爵号は国王であるので、メイリンは成人すれば郡主と
呼ばれるお姫様である。そう聞いたことはあったが、まだ邸ではメイリンを『郡主様』と呼ぶ人たちは
いなかった。
「まだ決まってもおらぬのに。そのような物言いは控えよ。」
臣下の礼を取る叔父さんと、それを当然のように受けるメイリン。メイリンが身分の高いお姫様だと
いうことは知っていても、二人がどういう知り合いなのか分からない。
「いえ、今朝方、決定が下りました。貴女が正式に南山郡主様です。
報告を受け取っておられないのなら、おそらく行き違いになったのでしょう。」
「……そうか、決まったか。それはめでたい。」
メイリンは悠然と頷いた。
「どういうこと?! 叔父さん、メイリンを知ってるの?! 決まったって、何のこと?!」
僕の良く知っているはずの二人が、僕の前で、僕の知らない話をしている。それだけで、なんだか
凄く不安になる。
「ユゥ、久しぶりだ。立派になった。見違えたよ。」
叔父さんは穏やかに言った。
「我々は敗けた。それは知っているだろう。
だがシン国は寛大にも、我らを臣民として、迎え入れてくださる。
私は名目上、兄さんの跡を継いだけれど、既に首長という役目は形式だけのものだ。
ここに居られるチェン・メイリン様がこれから、我々の新しい領主様になる。」
「メイリンが……!! 領主様?! 僕たちの?!」
僕は驚いた。それはそれは驚いた。
だってシン国の領主というのは、偉そうでふんぞり返ってて、領民から搾り取ることしか考えていない
ようなおじさんがなるものだと思っていた。メイリンとは、似ても似つかない。
「いつから……!! どうして、僕に、教えてくれなかったの……!!」
そしてそんな重大なことを、叔父さんは知っていて、僕は知らなかった。ひどく疎外されたような、
悲しくて、苦しい気持ちになって、混乱する。
「ユゥ、落ち着いて。
決まってもいないことを、そう簡単に、吹聴できるはずがなかろう? 決まらなかったら…その、
恥ずかしいではないか。大体ユゥは昨日は途中から呆けてしまって、あまり話は出来なかったし。
わたしもこの話を聞いたのは、父上に呼び出されてからだ。
諾、と答えた途端にあちこち引き回されたり、計画を立てるために幾晩も徹夜を強いられたり。
父上の怖ろしさの一端を、垣間見てしまったよ。」
メイリンは僕を宥めるように優しくそう話す。そうだ、メイリンが帰って来たのは、ほんの一昨日だ。
一昨日会って、許されたばかりだというのに、僕はなんて欲張りなんだろう。メイリンのことを、
何もかも知っていたいだなんて。
「あ……、ごめんなさい…。ただメイリンが昨日の朝、『よい報せから』なんて言ったから、それほど
よい報せがあるなら、先に教えて欲しかったというか。
決まっても決まらなくても、とびきりのよい報せだと思うし。」
「ユゥは、わたしが領主になること、よいことだと思う?」
「思う! 思うよ!!! メイリン以上にいい領主様なんて、到底思いつかない!!!」
メイリンの父上はシン国朝廷の中でも抜群に桂花の民に詳しいのだと、メイリンは言った。
それなら、その娘のメイリンだって、他のどんな偉い人達より遥かに僕たちの事情に詳しいと思う。
実際にいろんなことを深く知っているし、僕たちのことを馬鹿にしたこともない。それに頭だっていいし、
一度言ったことはやり遂げる誠実さだって持っている。
「……よかった。」
メイリンはそれまでの堂々とした、凛々しい表情をふっと緩めて、ほんわりと頬を染めた。
なにこの可愛さ。どうしてこんな場面で壊滅的に可愛くなるんだろう。メイリンの可愛さは、
いつだって暴力的だ。
僕はなすすべもなく、その表情に見蕩れた。
「仲が良いのは宜しいですが、私の存在を、忘れちゃいませんかねえ……?」
カイ叔父さんが、横からそろそろと口を挟む。
「わ、忘れてませんよ?! 叔父さんのことは、一瞬たりとも忘れてません!!」
他人の存在が無ければ、この手がどんな不埒なことをしでかしていたか分からない。何しろこの手に、
もう手枷は嵌っていないのだから。
「わたしも、忘れておらぬよ、カイ。」
メイリンはさっと先程の取り澄ました顔に戻って応えた。本当にメイリンは、落ち着いてる。
「姫様は我々の人数だけでなく、家族構成や持病の有無などもきめ細やかに調べられて、新領地である
南山地方の測量も指揮され、詳細な計画書をお書きになった。それがシン国の朝廷にも、陛下にも
認められたのでしょう。」
カイ叔父さんがそう褒めると、メイリンはどんよりと暗い表情になり、溜息をついた。
「ああ……あれは悪夢のような、忙しさだった……。
兄上様たちも必要な数字を出すところまでは手伝ってくださるのだが、重要な決断はわたしが
すべきだと……。そしてひたすら駄目出しをなさるのだ。何度、直しの朱墨で真っ赤になった書類を
突き返されたことか……。
いざというときの兄上様たちの厳しさは、ユゥも知っておるであろ? わたしはもう、心身共に、
満身創痍であるよ…。」
「もしかして、それがメイリンの『頑張ったこと』?」
「頑張った…ふむ、今回の頑張りは、盛陽学院の入試の何倍も頑張ったな…。
わたしにも多少は、体力と経験が身についていたということか。
しかし何と言ってもまだまだ若輩者。それが故に、わざわざ領地経営の計画などを奏上書として
したためねばならなかったのだ。」
「でも、それが認められたんでしょ?」
僕の言葉に、メイリンは顔を曇らせた。
「それはどうだか…。父上は、計画書の仕上がり具合を、『三割だ』と仰った。
それでも通ったということは、もう時間が無いと判断されたのであろう。
南山地方は名前はよいが、実際は山の南にあるだけの、広大な湿地と草原だ。これから入植し、
開墾する作業が待っている。
雪融けの時期は早いし、春の種蒔きの時期までにそこそこの準備を整えるには、いつまでも計画書を
こねくり回している時期でもないということかも知れぬ。
ならばカイ、すぐに移動の準備を始めなければ。スウ夫人に手紙を書いて、皆に支度するようにと。」
「え、か、母さん?」
スウ夫人は、僕の母の名だ。僕の身内の名が、また突然出てきて吃驚する。
「そう、カイを王都に呼ぶ間、留守を任せている。頼りになるよ、前首長夫人は。
そして……ユゥ。」
メイリンの大きな瞳がぴたりと僕を見据えた。自然と背筋が伸びるような、強い眼差しで。
「はいっ!」
「わたしが南山に赴任したら、ユゥには、わたしの補佐をしてもらいたい。
桂花の民とシン国の間に共通の知識基盤がなかったこと、その結果どうなったかは、もう話したな?
双方の習俗、考え方を深く知り、仲立ちをする人材が、是非とも必要なのだ。
桂花の民は既に、シン国の臣民となった。これからは互いに、折り合ってゆかねばならぬ。
わたしの意志を皆に伝え、皆の願いをわたしに伝える。
そういう役を、ユゥにやって欲しい。できる? ユゥ。」
メイリンの傍で──
なにか、メイリンと一緒に居られる理由を与えられること。それが、僕の願いだった。
一方で故郷への想いも経ち難くあって。
迷って、引き裂かれそうだった。
なのに、メイリンはすごい。いつだって、僕の想像を軽々と越える。
こんなにすごくて、素晴らしい女の子が他に居るだろうか?
でも僕は欲張りだから、更なる願いを口にする。
「……ずっと傍に、いてもいい?」
そうするとメイリンはにっこりと魅力的に笑って、頷いてくれる。
「うん、いてくれないと困る。」
幸せだ。
幸せすぎて、死んでしまいそうなくらい。
「あの…、僕は、結局役に立たなかったのかと、思ってた…。
戦が起きた理由を、いつか答えてくれと言われたのに、いつの間にかメイリンは僕よりずっと深く、
ずっと広く、何もかも把握してるし。
僕が居た意味も、宙に浮いたまま、消えてしまったのかと思った。」
メイリンは大きな瞳をくるりとさせて、また笑う。
「ユゥが居た意味がないなんて、そんなこと、あるはずないよ。
ユゥはもうわたしに、いろんなことを、教えてくれたでしょう?
故郷と故郷の皆を、大事に想っていること。いつだって家族の身を、案じていること。
ユゥたちが多くを望まず、故郷の山と共に生きてきたこと。
そして森の匂い。ユゥたちの信じる、目に見えない山の神々の息遣い。そういうものを崇めて、
大切にしていること。
以前から父上はわたしに、『貴族の妻になるのが嫌なら、地方領主にしてあげる。』と仰っていた。
でも具体的に、今回の話が持ち上がったのは、急なこと。
成人すればいつかは王都を離れて、遠い土地を治めるものと思っていたけれど、こんなに急に、
若いわたしに持ちかけられた話を受けようと思ったのは、ユゥの一族のこと、誰かがちゃんと
引き受けるべきだと思ったから。」
メイリンは、自分にお鉢が廻った来たのは、朝廷側の事情もあるのだと言う。
借金を抱えた、言葉も禄に通じない異民族を、分散させていろんな土地に割り振るには、
費用と手間がかかる。
その点、今回の戦の最大の功臣の娘であり、皇族であるメイリンが領主となるなら、色々と面目も、
言い訳も立つ。
メイリンの父上が功績の報賞として新たな領地を賜り、それを譲り受けた娘が地方領主になる。
皇族を領主に据えることで、準直轄領としての体裁が整い、征服した民族を移住させる先としても
体面が保てる。
「わたしが女であり、若輩者であるがゆえに、朝議でも散々に紛糾したらしいが…結局はよい代案が、
出なかったのであろうな。」
僕はあまりのことに、もう声も出なかった。
こんなに凄くてかっこいい女の子を相手に、惚れずに居られるだろうか。
無理です。絶対無理。
だから僕は間違ってないし、他にどうしようもない。
もう僕の一生を、君に捧げる。ずっと傍に居る。
誰が、なんと言っても。
メイリンの目がはっと見開かれ、何か別のものを捉えた。
「大理卿どの」
僕は振り返って一瞬、彫像が立っているのかと思った。それほどに、踵から脳天まで鉄の芯が
通っているかのような真っ直ぐな立ち姿。鷹を思わせる鋭い眼光と、いかめしく刻まれた皺。
真一文字に引き結ばれた口。
どうやら、彼がメイリンの言っていた大理卿らしい。たとえ厳格な人物だと前もって聞かされて
いなかったとしても、この人物がとてつもなく厳格であるということは、疑いようもなかった。
──続く── 以上です。
今回はあと一話続けて投下の予定ですが、まだ仕上がっていないので、多分、一週間後くらいに
また来ます。 投下します。
ユゥとメイリン9
注意:非エロ
設定説明回は今回で終了。
8レスの予定。
「お待たせしましたかな、チェンの姫君」
大理卿は深く地に響くような声でそう言った。
「いや、大理卿殿を万が一にもお待たせしては失礼に当たると思い、早めに来て待ち合わせて
おったのです。話をしながらゆるりと待たせていただきました。」
メイリンの方も背筋を正して、完璧に作りこまれた笑顔を浮かべて応える。
手の中にはいつの間にか書状が用意してあって、メイリンはそれをくるりと広げた。
「本日の面会のことは、既にお聞き及びのことと存じますが、これがその許可証です。」
「聞いている。こちらが最後の面会人──囚人の、御子息か。なるほど、面影がある。」
鋭い視線を向けられて、僕は小動物のように竦みあがってしまう。平然としているメイリンが
不思議なくらいだ。
「──では、ついて来られよ。」
大理卿は僕にだけそう声を掛けると、真っ直ぐの姿勢のまま踵を軸にくるりと向きを変えた。
「えっ? 僕だけ? メイリンとカイ叔父さんは?」
このおじさんと僕だけとか、突然言わないで欲しい。
「わたしたちはおまえの付き添いだ。面会はおまえだけ。後で迎えに行くから、しっかり──
その、別れを惜しんでくるといい。」
メイリンは最後のほう、少し言いにくそうに言葉を濁した。カイ叔父さんは無言で僕を見送った。
僕は戸惑いながら、後姿までいかめしい大理卿について、長く暗い廊下を歩いた。
暫くして、木の扉がいくつも並ぶ建物に入り、そのうちの扉の一つで足を止める。
扉には閂がかかり、錠がつき、開閉できる小窓がついていた。
そばに居た衛兵が大理卿から鍵を受け取り、錠を開けて閂を外す。
「ウォン・フェイ。貴殿の待っていた、面会人だ。」
衛兵が扉を開くのと同時に、大理卿は声を掛けた。
扉が開いて、僕ははっと息を飲む。
あまりに何もない房室、まっすぐな壁、まっすぐな天井。粗末で小さな寝台に、小さな
卓と椅子。卓の上には、わずかな書物。そして、父さんがいた。
白髪ばかりになった髪、血色がくすんで皺の増えた顔、丸まった背中、細く痩せた手足。
ほんの数ヶ月でひとまわり以上小さくなったように見える父の姿に、しばし絶句する。
「では、わたしはこれで。面会時間は半刻。終わりはまたお知らせする。」
高官である大理卿が立ち会うのはここまでのようだ。
僕は茫然としたまま、扉が閉まる音と、規則的な足音が遠ざかるのを聞いていた。
「しばらく見ないうちに、大きくなったな、ユゥ。」
久しぶりの再会で泣くなんてみっともないと思いながらも、僕はこみ上げる涙を止める
ことが出来なかった。
父さんはもっと強く、生命力に溢れた人ではなかっただろうか?
もっと近寄り難く、猛々しい人ではなかっただろうか?
こんなに弱々しく、ぼくに微笑みかける人ではなかったはずなのに。
父さんを見て、僕がどれだけあの邸で恵まれていたのかが分かる。
あの邸に来てから、飢えたことなど、なかった。むしろどんどん体を動かして腹を減らし、
たくさん食べるように強要されたほどだ。飢饉の故郷ではとても贅沢だったその行為。
そうすることで、強い体を造っておくようにと。
書物も学問も経験も、潤沢に与えられた。メイリンの語る言葉を理解できるように。
メイリンの兄上達は言葉はきつかったけれど、結局のところ、本当に酷いことはされなかった。
邸の使用人の皆も、ひとり遠くからやってきた僕のことを、何かと気遣ってくれた。習慣の違い、
言葉の違い、食べ物の違い。あらゆる違いに戸惑う僕を、彼らは受け入れて、温かく接して
くれたのではなかっただろうか。
「…大きくなった。背も伸びたかな。」
父さんはもう一度そう言って、僕の肩を叩いた。その手のひらの軽さと弱々しさも、ひどく切ない。
「あ、あのね、父さん。」
僕は沈黙に耐えきれなくなってようやく口を開いた。
「僕たちの領主様が決まったの、聞いた? 生き残った皆、まとめて面倒見てくれるって。」
「聞いたとも。やはりあの姫君に決まったのだな。」
「…メイリンを知ってるの?」
「蒲州で労役中の皆に会いに行くとき、あの姫君に同行させて戴いたのだよ。
なかなか肝の据わった娘だ。あの若さで領主になって、周りの大人にいいように翻弄されなければ
よいが……。」
父さんまでメイリンを知っていて、しかも褒めてくれるので、僕は悲しい気分も忘れ、なんだか
嬉しくなってしまう。
「大丈夫だよ。メイリンの父上っていうのが、シン国のすっごく偉い人なんだ。あっ、そういえば
母上の方もすっごく偉い人だった……。だから、きっとメイリンをまわりから守ってくれる…!
それにメイリン自身も、すっごく頭がいいし、頑張りやさんだし、言ったことは守るし、
邸の皆からもとても好かれてるんだ。
僕のことも、桂花の民だからって一度も馬鹿にしたことはないし、本当にいろんなことを知ってる。
若くたって、メイリンはいい領主様になるよ!」
父さんは目を細めて言った。
「おまえは、あの姫君に、惚れておるのか。」
「はああっ?!」
完全に、不意打ちである。かっと顔が火照るのが分かる。
「どうしてそんな話になるの?! いまそんな話、してなかったよね?!
父さんって、そんな話、する人だったっけ?! 本当に本物??!!!」
落ち着け、落ち着け僕。
僕がメイリンを好きでも、何の問題もない。メイリンは僕たち一族のために色んなことをして
くれたし、これから僕たちの、領主様になるんだし、何よりメイリンは、……メイリンなんだもの。
「はは、ははははっ!!!」
気がつくと、父さんは思い切り破顔して笑っていた。
「おまえは、相変わらず、嘘が吐けない…」
随分と痩せて生気のない顔だったけれど、笑うと以前に戻ったような気になる。
父さんがいて。兄さん達もいて。母さんと、ユイと、僕がいて。
飢えていても、窮乏しても、何とかそうやって暮らしていけると思っていた。
でも、そんな未来図は永遠に失われた。
兄さん達は既に居ない。父さんも、間もなく死ぬ。
「どうして……。」
もうほとんど時間は残されていないのに、こんな話をするのは嫌だった。でも、いま聞かなければ、
もう二度と聞くことは出来ない。
「…沢山の人が死んでしまうような戦を、しなければならなかったんだろう…。
兄さん達も死んで、伯父さんも、父さんも死んで、敵も味方も、沢山の人が死んで……。どうして
そんな戦を、してしまったの?
シン国は、ぼくたちに死ねと言ったわけでは、なかったんでしょう? ただ山を下りろと言った
だけだった。」
父さんは、静かに言った。
「私が、すべて悪かったのだよ。」
すべてを諦めたような、静かな目をして。
「そうじゃない、僕が聞きたいのは、そんなことじゃなくて…!」
メイリンはなんと言ったっけ。心をまっさらにして……。
「…父さんの言い分を、聞かせてよ。」
僕はまっすぐに父さんを見た。
「父さんには、父さんなりの、正しさがあったはずなんだ。
それが分からないと、僕はこの先ずっと、大悪人の息子なのかと、迷わなきゃいけない!」
父さんは、罪を背負って死ぬ。父さん自身は既に納得しているのだろう。
でも、僕たちはこの先も生きる。僕もユイも母さんも、それから父さんを首長としてきた皆も。
生きるためには、物語が必要だ。戦勝国であるシン国に、断罪するための悪人が必要なのと同じように。
「……甘い言葉は、刃よりも恐ろしい。」
父さんは、かすれた声で語った。
「前朝スイの頃から、この中華の国は、異民族に対して寛容な政策を取ってきたことは儂等も
知っている。そして山奥の、辺境の、様々な『クニ』が、独立を棄て、高い文化と高い技術力を
求めて巨大な国に帰順した。」
前朝のスイ国も、いまのシン国も、異民族を受け入れ、文化も技術も惜しみなく与えてきたのだ
という。
けれど、大帝国と国交を持った小さな『クニ』のほとんどは、次々と国力を失い、国としての体裁を
失っていったのだと。土地は荒れ、若く力のあるものから去り、かつてそこに、独自の歴史と文化を
持った『クニ』が存在したという記録すら残せぬままに、多くの辺境の『クニ』が大国に吸収されて
消えていった。
「富は、低きより高きに流れる。」
かの国と交流を持った『クニ』は、大国の大きさと文化の高さに圧倒され、触発されて、それまでより
多くを望むようになってしまう。よく効く薬を、便利な道具を、或いは美しい宝飾品を、なめらかな絹を、
あるいは華やかな衣服を。
人は誰しも愚かで、何もなければそれなりに暮らすことが出来ても、一旦豊かさを知ってしまえば、
欲は際限なく湧いてくる。
シン国の文化も技術も豊かさも、桂花山のそれより圧倒的に高い。悲しいほどに。もしも門戸を開いて
しまえば、僅かな富も人も、急速に流れ出してしまうだろう──それが、父さんたちの考えだった。
「シン国と交流を持たないという取り決めは、長いあいだ、ウォン家を含む五大家の総意であった。」
父さんの言葉で、僕は首長という立場がけして絶対的なものではないことにふと思い至る。一握りの
人間が決めていたのだとしても、たった一人が決めていたのではない。そして父さんだって協議の
結果に従ったのだ。
「なのに、その中でひとり、義兄さんだけが……独断で、シン国に通じた。義兄さんはそのときの
五大家の中でも年長で、儂もまた、教えを請う立場だったのに。」
父さんはそこで、少し沈黙した。
「多分……少し分かる、と思う。そのときの父さんの気持ちは。
怒りで自分を見失うときだってある。それが正しいことじゃないと分かっていたとしても。」
真っ黒で正しくない感情が噴き出して、どうにもならなくなることもあると、僕はもう知っている。
常に自分を律していても、むしろそれだからこそ、どろどろとした暗い気持ちが少しずつ
溜まってしまうことも。
「でも、父さんは伯父さんと、仲が良かった。」
「そうだな……、だからこそ、よりにもよって義兄さんが儂等を騙し、裏切って敵国と通じているなどと、
信じたくはなかった。だから…。」
「本当に、シン国のいう通り、父さんがやったの。」
僕はまだ信じたくはなかった。父さんが身内を殺したなんて、全部嘘ならいいのにと思った。むしろ
戦が起こったことも、僕たちが敗けたことも、父さんが死ぬことも全部嘘だったらいいのに。
「義兄さんを除いた協議の上ではあったが、毒を盛ったのは儂だ。あのころはもう、皆が正気を
失っていた。
しかし、見届けるほど肝が据わっていたわけでもなかったな…怖かったのだ。義兄さんの死に顔は、
儂を非難し、罵倒しているようだった。」
僕はほとんど見せてもらえなかったけど、伯父さんの苦悶を浮かべた死に顔は、一瞬見ただけでも
印象に残っている。僕はそのとき、毒草と間違うような草でさえ口にしなければならない僕らの
現状──このどうしようもない窮状、飢えを憎んでいるのだと思ったけれど。
「父さん、伯父さんはきっともう怒ってないよ。
僕たちは結局、山を下りることになったし、シン国に受け入れられて、生きてゆく…伯父さんの
言ったとおりに、なったんだもの。」
大した根拠もなかったけれど、気休めにしか過ぎなかったけれど、僕はそう言った。
「ずっと、考えていた…あのとき、義兄さんの忠告を聞いておけば、儂は息子達を失わずに
済んだのかと。
儂等は、門戸を開いて大国に吸収され、取るに足らない蛮族として消え去るよりも、闘って、
我等の民がここにいた証を歴史に刻むことを望んだ。
しかし、結果はどうだ。人が死んだ、敵も味方も。それだけだ。
儂等が下した決断も、儂等が愚かであったことの証明にしかならなかったのだろうか。」
父さんの、以前よりも落ち窪んだ目が、僅かに涙で濡れていた。
「僕は…シン国で、歴史を学んだよ。」
僕はなにか──父さんに何か言ってあげたくて、必死に言葉を探す。
「中華の国には、そりゃあ長い歴史があるんだ。
そして、あんなに凄い学問があって、あんなに賢い人たちが沢山いるのに、あの国は賢い選択だけを
しているわけじゃない。どうみてもおかしなことをして、国全体が上手く行かなくなって、何度も
国が斃れたり、興ったりを繰り返しているんだ。
スウフォン様は──あ、僕に歴史を教えてくれた人だけど──こう言ったよ。
『間違わないことが重要なんじゃない、間違いから学び続けることが重要なんだ』
って。だから…」
僕はそこで言葉に詰まった。何を言っても、父さんにやり直しが許されているわけではない。
「あの姫君が、おまえのことを、褒めていたよ。戦のときのおまえは、よい働きをしたと。
おまえのおかげで、多くの民が、臣民として受け入れられたのだと 。」
僕はまた泣きそうになった。死んでも屈することなかれ、という言葉に従わず、一度は裏切り者と
呼ばれたはずの僕がそんな風に言われるのが、いいことか悪いことかに関係なく、無性に悲しかった。
桂花の民は、完全に敗けたのだ。あのころ僕らが寄って立っていた論拠も何もかもすべてが、
脆くも崩れ去った。
「皆がやり直せるのは、おまえのおかげだ…。」
「僕たちは、生きるよ。桂花山を失っても、シン国の民になっても、僕たちは、僕たちだ。
何を遺していけるのかは分からないけど……まずは頑張って、生きてみる。」
父さんはまた微笑んだ。その静かさが、悲しかった。
「母さんと、ユイを頼む。そして、残った皆のことも。」
「大丈夫だよ。カイ叔父さんも居るし、新しい領主様も居る。きっと、上手くいく…。」
上手くいっても、その先を父さんが見ることはないけれど。それはとても、悲しいけれど。
「あの姫君か。おまえは、いたくあの姫君を信頼しておるのだな。」
「へ、変な勘繰りは、しないでくれる?! 別に可愛いからとか女の子だからとか、そういうのを
抜きにして、メイリンは皆に好かれてるし、頭もいいし、メイリンが引き受けたのならちゃんと
やるって、そう思うだけだから!
それに例え僕がメイリンを好きでも、悪いことなんかない。心は、いつだって自由なんだから…!!」
父さんの顔に浮かんでいるのは、怒りでも非難でも戸惑いでもなかった。ただ何もかもの事情を
受け入れたように、静かに笑んでいた。
「ならばおまえが、助けてあげなさい。おまえは長じれば、兄達を助け、補佐する役につくはず
だった。代わりにあの姫君を助けて差し上げればよい。」
「……言われなくとも、そうするよ。」
メイリンは、いつだって僕に優しくしてくれた。そのメイリンの、役に立ちたい。
ずっと傍に居て、彼女のために、何かしてあげたい。
静寂を破るように、外から足音が聞こえた。
がちゃり、と鍵を開け、閂を外して入ってきたのは、さっきとは違う若い官吏と、その後にメイリンと
カイ叔父さん。
一番初めに口を開いたのはメイリンだ。
「名残惜しかろうが、時間だ。話はできたか。」
父さんとこうしていられる時間は僅かで、もう終わる。僕はどれだけのことを話せば終わりにできる
のか、分からなかった。しかし問いは僕に向けられたものではなかった。
「はい、姫様。──いえ、郡主様。おかげさまで。有難うございました。」
迷わずそう応える父の声に、また泣きそうになる。父はいま、何を思ってこんなにはっきりと終わりを
告げられるのか、この数ヶ月、何を考えて生きてきたのか。
「任命の件、聞いたのか。わたしがおまえの同胞達を引き受けることになった。最後におまえに報せる
ことが出来て、よかった。」
「おめでとうございます。」
父は拱手してシン国式の礼を取った。その姿も、僕の記憶している父とは違っていて、ひどく切ない。
「フェイの死後は、最終的に、埋葬が許可されている。すぐには無理だが、ほとぼりが冷めてからなら、
フェイの希望通り、桂花山に移すこともできるだろう。
ここにいる二人のどちらかが、いずれおまえの骨を故郷に連れ帰ってくれる。わたしが、必ず
そのように取り計らう。」
「有難うございます。」
死後、だなんて。
まだ父さんは、ここにいて、息をしているのに。
政治的な事情については、理解していた。シン国の方にも人的、経済的な被害が出ていて、敵国の
誰かを処罰して見せないと収まりがつかないこと、父さんが既にその事情で納得していることも。
ただ、そういう事情とは全く別に家族への情が存在していて、それが誰にも──父さんにさえも、
掬い上げてもらえなくて、行き場のない感情を持て余すような感じだった。
それからメイリンと叔父さんは父さんと何か二言、三言ほど話していた。
「ユゥ、最後にまだ話しておきたいことはある? 処刑当日の立会いを、フェイは望まないから、
これが最後になる。」
処刑──。
言葉の一つひとつが、僕を打ちのめす。
最後に一体何を言えば、納得して別れられるというのだろう。
何か、言わなければ。そう思うほどに、喉はつまり、涙が滲んだ。
「泣くな。おまえはもう、一人前の男なのだから。」
父さんの声が響く。分かってる、泣いてる場合なんかじゃない。
「郡主様、桂花の民のこと、よろしくお願いします。」
父はメイリンに向き直って言った。
「それから、私の息子のことも。この通り、頼りない息子ですが。」
「ユゥとカイに、助けてもらわねばならぬのは、わたしの方だ。心配ない、ユゥの優しさも情の篤さも、
長所であるよ。」
メイリンの言葉を聞いて、父さんは声を立てて笑う。
ああ、父さんはいま笑えるんだ…と、それを聞いて思う。
「もう、おまえも行きなさい。今日は会えてよかった。」
ぽん、と父さんが手のひらを僕の頭に乗せた。その細さと軽さに、また涙が出てきてしまう。
「僕も……、会えてよかった。」
漸く最後に、それだけが言えた。
同行した官吏が、入り口を示す。もう出ろということだろう。
長い廊下を戻って来た道を戻り、馬車に乗る段になって、泣いた顔のままメイリンと差し向かいに
座らねばならないのか──というか、思い切り泣いているところを見られていたことに気付き、
慌てて顔を背ける。
そんな僕を、横に座るよう招き入れて、メイリンはこう言う。
「ごめんね。」
なめらかな手をそっと重ねられて初めて、僕は自分の手が震えていたことを知った。
「今日のことは、大人の都合のため、フェイのためで、ユゥの気持ちは考えられていなかった。
ユゥには、辛かったかもしれない。フェイの生存が機密だったせいで、ユゥには心の準備をする
期間すら、与えられなかった。」
「メイリンの所為じゃ、ないよ……。」
やめて、もうやめて。そんな風に言われると、また泣きたくなるから。
メイリンの前で、これ以上の醜態を晒したくはないのに。
「涙を恥じる必要はない。」
なんとか泣くのを堪えようとする僕に、メイリンは静かに言った。
「親の死に際して涙を零さぬ者がいれば、そ奴が恥じればよいのだ。」
それから、すっと軽く寄りかかってくる。横から寄りかかるメイリンを支えようとすると、僕のほうも
安定が取れて楽になるんだな、と思った。
「……疲れた?」
メイリンがそう訊く。
疲れた。疲れていた。もうこれ以上動けないくらい。
地の底に潜って、帰ってきたような疲労だった。
声を出すのも辛くて、ゆっくりと頷く。
寄り添うメイリンは僕の顔を見ていなかったが、体の動きで分かったみたいだった。
メイリンは、ちょっとずるいと思う。
こんな時にこんな風に、傍に居てくれるなんて。
持て余す感情も、メイリンだけがそっと掬い上げてくれるなんて。
どれだけ僕の心を占めれば気が済むんだろう。
もうメイリンの傍で頑張って頑張って、「ユゥがいないと何も出来ない」くらいに言わせないと、見合わない。
それから馬車が邸につくまでの間、僕は静かに泣き続けた。
泣いている間もずっとかたわらのメイリンは柔らかくて温かくて、最後のほうは何で泣いてるんだか
分からなくなってきたくらいだ。馬車を降りる頃には、気持ちは大分軽々としていた。
* *
帰ってすぐから、邸は大忙しだった。メイリンが、正式な任命を受け、地方領主になることが決まって
その準備に追われた。メイリンはもう学院に通う必要はなかったが、手続きやらで何かと毎日のように
外出した。
僕の方はといえば、出立のための荷造りとか、必要な人員の手配とか、道中の資財と宿の確保とか、
慣れないことを任されて忙しかった。
勿論僕に大人数での移動はおろか旅の経験があるわけもなく、いちいち家令のツァオ氏や、他の旅慣れ
した使用人に聞かないと分からないのだった。
これって二度手間なんじゃないんですかと訊いたら、「次からはおまえ一人でやるんだ」とツァオ氏に
怖い目で睨まれた。
何だかんだ言って仕事を任されるのは嬉しかったし、忙しいのも有難かった。余計なことを考えずに済むから。
それでも、メイリンと大理寺に出かけた二日後の昼、メイリンの房室に呼ばれた。
目を閉じて手を合わせるメイリンを見て、刑が執行されるのはこの日の正午だと言われたことを思い出す。
故郷でのやり方とは違うけれど、ここではそうするのが言いような気がして、メイリンに倣って手を
合わせ、静かに父のために祈った。
その数日後には、朝廷での任命式があって、メイリンを金糸銀糸の刺繍の衣と、ありったけの宝飾品で
飾り立てるために、侍女たちが朝から大騒ぎだった。
僕も忙しくしていたのであまり顔をあわせなかったが、ユイウ様とスゥフォン様も、勿論旦那様も
帰っていらしていて、妹の晴れ姿を楽しみに何度も見に来ていた。
普段あまり飾らないメイリンの周りに集まって、こっちがいい、あっちが似合うという話は
本人よりも周りが盛り上がっていたけれど、なんか分かる気がする。
着飾ったメイリンは、名工の手による良く出来たお人形みたいだ。理想的を形にしたような
姿かたちで、どんなに派手な装飾品も似合ってしまうし、地味にすれば元々の美しさが際立つ。
手をかけることそのものが楽しい……、と侍女達は大はしゃぎだった。
任命式のために煌びやかに装ったメイリンを見て、きれいだとかかわいいだとかよりも先に、誇らしい
気持ちで一杯になる。
僕よりもひとつ歳下なのに、大人ですら怯む難しい役を買って出た。
僕の好きになったのはこんなに凄い女の子です。そう声を大にして言いたい気分だった。
まあもちろん、口に出したりはしないけど。
そんな風に忙しくしていたから、メイリンの寝室に呼ばれないのは、単に忙しいからだ、と自分に
言い聞かせた。メイリンは相変わらず優しいし、細やかに気を遣ってくれるし、目が合えば笑いかけて
くれるし、皆に見えないところでそっと手も繋いでくれる。
だから、寝室に呼ばれることが無くなって、毎日使用人部屋で寝ていても、嫌われているわけじゃ
ないはずだ……と必死で考えたかった。
でも、ひと月ほど前、メイリンが蒲州に行く前に僕がしたことを思えば、やはり遠ざけられても
仕方がないのかな、と思ったりもする。許す、とは言われたものの、もっと何か言い訳したほうが
良かったんじゃないのか。それともメイリンにとっての『遊び』の期間はもう、終わってしまったのか。
そんなもやもやを抱えていたある日の午後、メイリンが息せき切ってやってきた。
「どうしようっ、ユゥ!!」
眉根を寄せて、いかにも切羽詰った表情で僕を見上げる。眦にはうっすら涙も浮かんでいて、
彼女の憂いを取り除くためなら何でもしてあげたい気分になる。
「……どうしたの?」
「ちちうえが、父上様が、ユゥを、任地の南山に連れて行ってはいけないって、仰るの!!」
メイリンは、いまにも泣きそうな声でそう言った。
──続く── すみません数え間違い、全部で7レスで終了でした。申し訳ない。
>>116,>>117
ぐぐってみたら、この作品に関係するネタだったのですね。
星界シリーズのジントですか。確かにちょっと似てます。
姫様の世界は広いです。
設定説明回の間、なんかユゥ君はおあずけをくらっていました。
がんばれ少年。
毎回、次こそはサクサク書けたらいいなあ、と思うのですが、やはり遅いようです。
では、また書けた頃にまた来ます。 GJ.今回も楽しんで読ませていただきました。
次回、更新も楽しみにしています。 >>61
炎天下の鉱山で、両足に10ポンドずつの鉄球を付けて日没から日の出までの
約15時間強制労働なんてのもいいかもしれない。 幼少から幼なじみだった隣国の王子のもとに嫁いだ姫
初めて会った時から一目惚れで、とても優しい魅力的な王子で
愛を語り合った人だったが
結婚初夜、連れて来られた夫婦の寝室は拘束具と責め具で埋め尽くされていた
卑猥な刺青を掘られクリ皮を切除されニプルピアスを施され
何リットルも浣腸されて噴水のごとく脱糞させられ
精液にまみれた食事を与えられ
秘薬で全身の性感を高められ
そうして生まれ変わった姫だが対外的には公表されず
しかしその絶頂で潤んだ瞳は愛ゆえと
疼く子宮に震える足は緊張ゆえと
民草は実際を知らず好意的に解釈してゆく 攻め落とした国の王女を国民全員の眼前で陵辱して、その様子に国中の男が欲情しているのを見せつけたい。愛すべき国民達が自分へ欲望の眼差しを向けるのを見せて、雄への恐怖をちらつかせたい。
そしてその夜に国中の女を城に集め、男達と王女に対しては「今夜一晩、王女が娼婦の格好をして広場に拘束された状態で放置される」旨を周知する。
王女の手前平静を装うが、遠まわしに「王女を一晩好きにしてよい」との命令に歓喜する男達。国民の敬愛への信頼と大多数の雄への恐怖に揺れる王女。 >>130
ノースリーブワンピースは薄汚れ、素足に履いた靴は穴が開いて底が擦り切れ、
手枷と足枷と首輪を付けられて、過労死寸前までこき使われる王女ちゃんが
可哀想萌え(;´Д`)ハァハァ まとめでロウィーナ様とアルフレッド読んで萌え萌えなんだけど、もう更新されてないのかな… >>141
残念ながらないんだよ・・・
自分もいまだに待ってるんだけど 色々ってなんだ!
オススメあるなら、最近ここを知った俺に教えてくれ 保管庫の作品を片っぱしから読めばいいと思うよ
好みもあるし
個人的にはいぬのおひめさま、ガルィア王室繁盛記、
中華の国の物語シリーズが好きだけど
どれも長いからなぁ・・・。 >>145のあげてる話もどれも好きだ
保管庫の「姫とお見合い」とかも好きだなー
メインの話はこのスレじゃないけど兄夫婦も良かった >>145
そこら辺はやはり鉄板だよねえ
どれも味があってすばらしい マチルド姫、可愛くて一途で好きだw
そして兄夫婦も好きだぁ〜馴れ初めはあんなんだけど、兄貴性格悪ぃけど、
読んでいくうちにそこすらも魅力的に見えてしまう不思議。
あと天然なセシリア姫になんだいいつつ引きずられているエルドのカップルもイイ。 頼むから淫乱姫のやつの続きを書いてくれ
あれの雰囲気が好きすぎるのに ローランとアグレイアの話好きだ。
あの作者さん他にも何か書いてないのかな 俺もあれ好きだった
おもえばこのスレも長寿スレの一員になったね >>153
ローランとアグレイアの作者さんはイヴァンナタリーの作者さんと同じ
このスレの豆知識な イヴォット(貴族と平民)、アーデルハイト、ユーリアンも好きだなぁ >>155
ありがとう。見つけましたので、ゆっくり読みます。 イヴァンナタリーのエロな新作をいつまでも待ってる… 同士よ…
あの作者さんのもう一人の姫の話も
待ってるんだ
ローランとアグレイアの話も何回読んでも良い 長女次女末っ子の話はあるけど気の弱い三女の話はないもんなー
自分もずっと待ってる
スレ違うけどサディアスとクロードの話も好きだった >>161
サディアスとクロードってなんだっけ
読んだことある気がするが思い出せない >>163
男装少女スレにある
イヴァンの衛兵長と副官(男装の女)の話 ttp://mimizun.com/log/2ch/eroparo/1123336678/
このスレ見ると、読者(42番)のリクエストからわずか二日後に
書き出しているんだね、サディアス編。
筆の早さも、勢いも、完成度もすごいな…! この流れでは投下しにくいかもしれないが、もちろん完全新作もお待ちしております >>169
お付きの騎士に抱っこされてるのとかいいですね では、流れを読まず投下します。
ユゥとメイリン10
8レスの予定
……。
……………………………。
………………………………………………………………えっ?
「任地の南山[ナンシャン]に連れて行けないって、どういうこと? メイリンは僕に、ずっと一緒に
居てもいいって、言ったよね? 僕との約束を、破ったりしないよね?」
メイリンは、一度言ったことを簡単に覆したりしない。でもメイリンが最大の敬意を払っていて、
絶対的に信頼し、服従している『父上様』が、任地に僕を同伴してはいけないと言ったのなら、
一体どうするのだろう。心の中に不安が広がる。押しつぶされそうになりながらメイリンを見た。
メイリンは僕の言葉に戸惑うように瞳を揺らし、それからそっと目を伏せる。
「それは……その……、父上様の仰ることにも、一理ある。父上様が仰っているのは、ユゥを
今のままで連れて行ってはいけないということなの。それはまあ、わたしも少しはそう思っていたし……」
メイリンは長い睫を揺らして頬を染めた。もじもじと指先を組んだり外したり、せわしなく動かしている。
ん?
なんだろうこの感じ?
僕は思っていたのと少し違うメイリンの反応に、違和感を覚える。
「……あとは、ユゥの選択に、委ねられている。わたしだってユゥと共に行きたい。
だから……ね? 分かるでしょう。お願い……。」
メイリンは潤みを帯びた大きな目を上げて、まっすぐに僕を見つめた。その目に見つめられるだけで、
彼女の望むことならなんだって叶えてあげたくて堪らなくなる。
でも、一体何をお願いされるようなことがあるんだろう? 僕に言うことを聞かすなら、ただ命令すればいい。
奴隷である僕に選択権があるなんて、ここに来てから聞いたことも考えたことも無い。
なんだか、難しい質問に答えろと言われて、その答えのための知識をまるきり持っていない場面のような
気分だ。相手の望む答えを見つけなきゃと思っているのに、頭の中は空回りするばかりで、手がかりの
一つすら見つけられない。
「なんのこと? 言って。僕はいつだって、メイリンの言う通りにする──。」
メイリンは悲しげにふるりとかぶりを振った。
「それじゃあ、駄目なの。ユゥ自身が決めて、ユゥの意思で選ばないとだめ。」
違和感が更に大きくなる。僕の意思で決める? メイリンが突然何を言い出したのかが全く分からない。
メイリンはほとんど泣きそうだった。切なげに切実に、僕が何かの選択を──メイリンの望む選択を
──するのを待っている。なぜそんな表情をするのだろう? メイリンのために出来ることがあるなら、
僕は何もかもその通りにするのに。
「どうして?ユゥ。いつもみたいに、焦らして意地悪しているの? ずっと一緒に居てくれるって言ったのに。
それともやっぱり、わたしのことが嫌いなの。」
メイリンの大きな瞳の端に、ぷわっと涙の粒が盛り上がった。
そんなわけない。メイリンが嫌いなんて、ありえない。
さっきから何かが噛みあっていなかった。なのにメイリンはひどく混乱して、傷ついてさえいる。
「あの…ね、メイリン。落ち着いて聞いて。君のために、なんでもしてあげたい。どんなことでも。
でも、今求められているものが、なんなのか分からないんだ。奴隷である僕に、なんの選択が
許されているのかも。」
「……どれい?」
メイリンは一瞬、大きな目を更に大きく見開いた。
「ユゥはわたしの従僕でしょ? なんで奴隷なの?」
急に問い返されて僕は戸惑う。
「えーと、そのふたつの違いが分からない……」
「刺青も焼印も押されてないのに、何で奴隷なの? 逃げ出して良民に紛れたら、分からなくなるじゃない。」
彼女は、奴隷と言うのは固定された身分で、消えない印をつけて所有された人たちのことだと言う。
「ユゥは捕虜。身柄はこの家で預かり、わたしが使うことを許されている……いまは。」
僕は頭を抱えた。そう説明されても、何が違うのか分からなかった。
「だからぁ、奴隷じゃなくて捕虜なんだから、何年かすれば放免されるでしょ。」
放免──?
もちろん聞いたことも無かった。ずっと何かしら踏みつけられて生きてゆくのだと思っていた。
それが故郷の人々を助けてもらった代償なのだと。
「じゃあ……万が一、今回一緒に行けなかったとしても、何年かして放免されたら、メイリンの任地に行ける?」
僕は少しほっとする。二度と会えなくなるわけじゃないんだったら、何とか耐えられるかもしれない。
でもメイリンは、僕の言葉を聞いた途端にきゅっと眉を寄せて思いっきり拗ねた顔をした。
「そんなこと……! わたしの……を断ったユゥを、わたしの領地に受け入れるはず、無いじゃない…!!」
…………………………………………………………………………………えっ?
なんかすっごい空耳を聞いたような気がする。
きっとそれは僕の願望とか妄想とかで出来ているに違いない。だってあまりに都合が良すぎる。
「いま、なんて言ったの、メイリン?」
メイリンは顔を真っ赤にして拗ねている。
「ユイウ兄様から聞いたでしょ。確かに伝えたって、そう言ってたもん。」
「聞いてない、聞いてないよ。誓って言うけど、それを匂わせるようなことは、一言だって聞いてない。」
もし欠片ほどでもそれを思わせるようなことを言われたら、僕は天まで舞い上がっていたに違いない。
「だって兄様が、何度もよぉく言って聞かせたって。」
「僕がいつも言われていたのは、『妹は誰にでも優しい』、『お前はただの下僕』、『勘違いするな』、
『身分を弁えろ』。それだけだけど。」
「だって…、だって…、兄上様が、女の方からそんなことを直接言うのははしたないって言って……。
自分がちゃんと伝えたから、お前は黙ってろって……!!!」
メイリンは少しずつ僕の言ったことを聞いてくれているようだった。真っ赤なまま目を見開いてぷるぷる
震えている。
「一言も聞いてないよ。命を賭けてもいい。」
だからもう一度言って、と言おうとしたとき、メイリンはもう風のように駆け出していた。
「どういうこと?! どういうことなの?! 兄上様!! ユイウ兄様──!!!!」
ふわりと風に靡く裳裾を翻し、凄い速さで回廊を駆け抜けてゆく。
暫く茫然としていた僕は、ユイウ様が昼間は出仕していて邸の中にはいないことを思い出す。こんな
中途半端な空耳を聞いたまま放っておかれるのは御免だ。
なんか、メイリンの口から、求婚、という言葉が出ていたような。ただの願望かもしれないけど。
僕はメイリンが外出の用意をしたのかと思って、馬車の様子を見るため厩に先に行ってみた。それから
門番にも聞いてみた。どちらにもメイリンは来ていないようだった。メイリンが外出するようなら、
引き止めて、せめて僕に報せて欲しいと頼んでそこを離れた。
それからメイリンの房室にも行ってみたが、やはりメイリンの影は無かった。
なんとなく、僕は邸の南側に足を向けた。いつかメイリンが言っていたのだ。一人になりたいときそこへ行くと。
北向きの庭園には、まだ僅かに残雪があった。けれど南向きの庭にはもう雪は無く、代わりに白い梅の花びらが
残雪のように地面を彩っていた。
清冽な香りの中、梅園の一角に、大き目の庭石が配置されている場所がある。そうっと足音を殺して近づくと、
庭石の向こうにメイリンの細い編み髪が見えた。膝を抱えて座り込んでいる。
「メイリン。」
僕が声を掛けると、彼女はびくっと肩を震わせた。
「何で泣いてるの。」
メイリンは目を真っ赤にして泣きはらしていた。ひっく、としゃくりあげる声が聞こえる。
「もう、いいもん。ユゥだって、いきなり言われても困るだろうし。」
はっきり聞く前からいきなりいいもんとか言われても困る。まだ返事をする暇さえ与えられていない。
メイリンの顔を覗き込むように、僕は腰を下ろす。泣きはらした顔も、やけに可愛い。
「まだ聞いてない。」
「ユゥはいつだってわたしに、つれないもん。一緒にいるのは良くても、結婚するのは嫌なんだ。
わたしが、我儘だから?」
妙な方向に考えが暴走してるみたいだ。どうしてそこで泣いてるのか、訳が分からない。メイリンと
結婚するのを嫌がる男なんて、いるはずないのに。
「メイリンに、我儘なところなんてないよ。」
メイリンは、いつだって優しくて、思い遣りがある女の子だ。邸の使用人たちだってそう言っている。
「じゃあ、じゃあ、わたしと、結婚する?」
「する。」
もちろん即答した。考える必要が、あるとは思えなかった。むしろメイリンが泣く必要が分からない。
メイリンはそこで、いきなり飴を貰った子供のように顔を上げる。
「本当? 嫌々じゃない? わたしが、自分の領地に受け入れないって言ったから。」
もう涙は止まっている。まったく女の子は変わり身が早い。
「嫌がる理由が無いよ。」
「だって、ずっと返事、くれなかったし。」
「聞いてないものには、返事のしようが無いよ。」
メイリンはだって、と口を尖らせる。そのさますら、食べてしまいたいほど可愛い。
「あのさ、そういう種類の伝言をユイウ様経由で伝えようとしても、永遠に伝わらないと思うよ。僕だって、
妹がそういう状況だったら、伝えたって言って死んでも伝えないと思うし。」
あのユイウ様が、可愛い妹のメイリンからの結婚の打診なんてことを、どんな理由があっても僕に
伝えるとは思えなかった。というか、突然の話で全く実感が湧かない。
メイリンは、だって兄上様が二人とも、ちゃんと伝えてあるって言ったもの! と何度も繰り返す。
どうやら、メイリンと兄君たちの間では、メイリンからの求婚の申し入れは伝えたものの、僕が迷って
返事を引き延ばしているという話になっていたようだ。
どうして僕がそんな勿体ないことをするものか。冗談もいい加減にして欲しい。
そしてメイリン自身は、女性がそういうことを言い出すのははしたない、というしきたりに渋々従って
直接問いただすのは控えさせられていたらしい。普段の積極性からは考えられないが、婦人学とか
持ち出され、「婦女子のはしたない行為は最も嫌われる」と言いくるめられてたとかなんとか。
「すぐに返事が来ない時点で、変だって思わないの。」
「だって、ユゥの考えてることなんか何ひとつ、分からない。」
メイリンはぷっと柔らかそうな頬を膨らませる。
「はじめてなんだもの。家族以外の男の子と仲良くなるのも、仲良くなりたいと思ったのも、その……、
そういうこと、したのも、ぜんぶ。」
メイリンが可愛すぎて気が遠くなりそうだった。生まれておよそ十七年間、家族以外の女の子に
縁の無かった僕には、いつだってメイリンは刺激が強すぎる。
「だから、ユゥの考えてることなんか、ぜんぜん、わかんない。」
ぎゅっと膝を抱きかかえて丸くなっているメイリンのこめかみに、強引にくちづけた。もっとこっちを
向いて欲しい。僕の理性は今にも弾け飛びそうだった。
「メイリン、したい……ねえ、いい?」
「あっ……、だめ」
メイリンは僕の口にぺたりと手のひらをつけて押し戻そうとした。労働を知らない彼女の手のひらは、
白くてなめらかだ。その指には、うっすらと剣だこがあるけれど。それもまた可愛らしい。
僕はその手を逃がさないよう自分の手を重ね、やわらかな手のひらをちゅっと音を立てて吸いたて、
舌を出して舐めしゃぶった。こんなやり方で今の僕が押し留められるはずがない。
「どうして? 僕の妻になってくれるんでしょう? そしたら君は、僕の、僕だけのものでしょう?」
自分で言ってて、頭のどこかが焼き切れそうだった。これで否定されたら、急転直下で死ねそうだ。
メイリンはおずおずと次の言葉を唇に載せた。
「だって……喪中、だもの。」
「……っっ!!」
雷で打たれたような衝撃だった。なぜ拒まれてるのだろうとしか考えなかった自分を恥じる。死者を
弔うための禁欲期間。そういう習慣は、もちろん僕たちの習慣の中にも一応ある。
父の死は国に決められた死で、突然に知らされ見届けることすら許されなくて、実感の無い、遠くに
たなびく煙でしかなかった。父のためになにひとつ、葬式はおろか、異郷の中で服喪することすら
出来なかったけど、確かに僕は肉親を亡くしたのだ。
「……僕の、ため?」
そんな中で、メイリンだけは、一緒に祈ってくれたじゃないか。
メイリンはこくりと頷く。
「ユゥの父上の喪中にはしたないことして、嫌われたくないし。」
嫌う。嫌うって。一体どこからそんな発想が出てくるんだろう。
分からないのはメイリンの方だ。
そしてメイリンは、いつだって上手に僕の理性を壊す。
「一体いつまで、我慢すればいいの。」
「えっと……?」
メイリンは眉を寄せて考え込む。
「父に対する服喪期間は、二年……?」
「無い無い無いないないないっっっっ!!!!!」
思わず大声を出してしまった。出たメイリンの曖昧性知識。
「それは確かシン国の公職の規定であって、ものに応じてもっと色々な解禁期間が、あるでしょう。」
二年とか、生き物としての生理の限界を軽く凌駕している。
メイリンは小首を傾げる。
「じゃあ、四十九日?」
「それも、長すぎ。」
そんなに長く待たされてたまるか。
「僕らのクニでは、七日経つと家の中から死者の魂が離れるって言って、そのとき一通りの喪が
あけるんだけど、それでどう?」
「ユゥがいいなら、それでいい。」
メイリンは素直に頷いた。
「七日、もう経ってるよね。」
僕は心の中で日数を数えた。正確に言うと、今日の正午で丸七日。こういう場合は当日から起算するから、
昨日の夜で喪が明けた計算になる。しまった半日損した。
メイリンの顎を軽く持ち上げると、今度は抵抗しなかった。桜桃のような美味しそうな唇に、僕のそれを重ねる。
貪って、全部食べてしまいたい。いつもより性急に深く口付け、メイリンの柔らかい舌を、甘い口中を味わう。
こうしてメイリンに触れるのは、一体どのくらいぶりだろう。衣から立ち昇るかぐわしい香りに、
その体の細さと柔らかさに、唇の甘さに陶然とする。こうして唇を合わせているだけで、うっかりすると
達してしまいそうだ。
「あ……こんなところで、それ以上は、だめ……。」
メイリンは僕の腕の中で体をくねらせた。その視線はとろんと蕩けて、濡れて艶めいている。僕を押し返そうと
する腕の力はとても弱くて、まるで誘っているかのようだ。
「ふた月も、君に触れてなかった。これ以上焦らされたら、死んでしまいそう……」
メイリンは大きな瞳をしばたかせて、不思議そうに聞く。
「ユゥも、そういうこと、したくなるの?」
「なっ……!!」
何言ってるの。あどけなくさえ見える表情で、何てこと言い出すの。
「だって、誘うのも命じるのも、いつも、わたしだけだった。」
メイリンは少し拗ねたようにそう言う。
「あ……、ぼっ……!!」
あるじはメイリンで、僕はその下僕だった。そういう決まりだったでしょう。僕はあまりのことに、
口をぱくぱくさせるばかりだ。
「別に、ユゥから誘ってはだめ、なんて言ったことないし。」
何言い出してるの。どうしてこの期に及んで、そんなこと言うの。健全な若い男の性欲嘗めてんの。
めちゃくちゃにされたいの。それとも僕をめちゃくちゃにしたいの。
メイリンはいつも上手に僕を壊す。
「君が好き、好き、すき。欲しい、欲しい、ちょうだい──!」
力の加減も何もかも忘れて、思いっきり彼女の身体を抱きしめた。華奢なメイリンの感触と香りが僕の全身を
満たす。彼女のほっそりとした両腕がゆっくりと僕の背中を撫でて、ぎゅっと抱き返してくれたときには、
なぜだか泣きそうになった。もしかすると本当は、泣いてしまっていたかもしれないけど、そんなことは
もう憶えていない。
メイリンの裙の合わせ目をより分けて足の付け根をまさぐると、そこはすでにしっとりと熱く濡れていて、
僕の指を迎え入れた。
少し湿り気の残る梅園の下草の上に彼女を押し倒す。ちょっと恥らうような表情を見せたけれど、それ以上の
抵抗はもう無かった。
爆発寸前の僕は余裕もなく、綺麗に着飾ったメイリンの襟元を緩めることもなしに、脚を開かせた。
慌しく自分のそれも取り出して、潤みの中心に押し当てる。充分に濡れていても、久しぶりのそこは、
記憶よりもずっと狭かった。
「ひっ……! いっ……! あ、あぁ……!!」
僕に貫かれてメイリンは、激しく身悶えた。桜色の衣に包まれたままの胸が、大きく上下している。
まるいその膨らみに誘われるように手を伸ばし、それから捏ね回すように揉みしだいた。
頬には、うっすらと涙の跡がある。ばかみたいだ。僕がつれなくて泣いちゃうなんて。僕はいつだって
君に夢中じゃないか。こんなにも。
僕は舌を出して、薄い塩の味がする涙の跡を舐め上げる。メイリンの悲しいことは全部、僕が食べてあげたい。
「痛い? メイリン。」
僕の方は沸き上がる快感と多幸感に、気が遠くなりそうだ。僕の問いかけにメイリンは、ぎゅっと閉じていた
目をうっすらと開く。
「さいしょ……だけ。いまは……いたく、ない。」
動かずにいられたのは、その辺までが限界だった。僕の中で少しでも長く愉しみたい気持ちと、早く頂点を
極めたい気持ちがせめぎあっていたけど、どちらもメイリンの魅力には勝てるはずも無かった。
「メイリン、君の中……、すごく、キツい……。気持ちよくて、もう出ちゃいそう……。このまま、
中に出して、いい?」
「だめっ……、任地についたら、たくさん……することがある……。まだ、だめ。」
激しく突き上げられる中でも、メイリンはそこのところはきっぱりしていた。『まだ』ってことは、
『そのうち』があるってことだ。僕はそれだけで満足して頷き、最後までメイリンを責め立てる事に集中する。
限界は、すぐに来た。
「あぁっ、ユゥっ、ユゥっ!」
高く細い声に耳朶を擽られながら、彼女が纏ったままの下衣の中に精を吐き出した。
* *
柔らかな日差しが二人を包み、早春の風が汗ばんだ肌を柔らかく撫でていた。
「あ…あ…、こんなところでは、駄目だって言ったのに……。」
恥ずかしげにそう抗議するメイリンは、それでも僕の腕の中に抱かれたままでいる。
丸く小さな白梅の花弁がいくつも舞い降りる頃になっても、離れるのが勿体なくて身体を動かすことが出来ない。
「だめ、って言う割には、いつも結局は許してくれるよね、メイリンは。」
「もう。ユゥはいつもずるい。」
僕の言葉に、メイリンはぷっと頬を膨らます。
「ずるいのはメイリンだ、いつだって。」
きっと僕は、メイリンのためなら炎の中にさえ飛び込んでゆくのだろう。ともかくずるい。可愛いのは、
それだけでずるい。
「僕はメイリンが、好きなだけ。」
いつもなら恥ずかしいこんな台詞も、肌を合わせているうちはするっと口に出せてしまう。きっと、
メイリンの肌が暖かくて、気持ちがいい所為だ。
メイリンは僕の衣の襟の辺りをもじもじと弄びながら、頬を染める。
「あ、あのね、ユゥ。わたしと結婚するって言ったの、嘘じゃない、よね?」
「そっちこそ。」
取り消されたくないのは僕のほうだ。
「えっと……、わたしがユゥの家に嫁ぐのではなくて、ユゥがわたしのところに、婿入りしてもらうことに
なるの。いい?」
「ああ、そういえば、そういうことに、なるだろうね。」
細かいことは考えてなかったけど、実際にはメイリンはこの国の皇族のすっごいお姫様なんだから、僕の方が
メイリンに合わせることになるのだろう。
「それから、領主はあくまでわたしで、ユゥはその夫。……でも、ユゥのこと大切に、するから。」
「僕は君の傍にいて、君の手助けをしてあげる……そういうこと?」
メイリンが南山の領地を得たのも、メイリン自身が頑張ったからだ。そのことについて異論は無かった。
メイリンは嬉しそうな表情で、うんうんと頷く。
「うん、そういう、こと。」
それから急に体を起こして、神妙な顔で言う。
「そして、これはとっても大切なことだけど、ユゥは、わたしの他に妾を置いてはだめ。」
「めかけ?」
「二番目以降の、妻のこと。」
僕はちょっと考えた。妻と言うのは大抵、一人なものではないのか。
「僕ら桂花の民の間では、一人なのが普通だと思うけど。」
「違うもん! ユゥの一族の男たちも、みんなこっそり妾を持ってるの! わたしちゃんと、調べたんだから!
でも駄目! ユゥはだめ!」
メイリンは顔を真っ赤にして叫んだ。メイリンはいつも、妙なことに詳しい。
「……ユゥが他の女の人ともするなんて、わたし、耐えられないもの……。」
急にしおらしくなって俯くメイリンを、僕は危うく押し倒すところだった。僕はメイリンのくるくると
良く変わる表情に弱いみたいだ。
「そんな風に言われたら、どんな約束をするより効きそうだ。ねえ、メイリンの方は?」
「わたし?」
メイリンは自分に話題が振られることなど、予想もしていないようだった。
「メイリンの方は、他の夫を持つつもりなの。」
「まさか。生涯たった一人の夫に仕えることこそ女のよろこび。母上がいつもそう仰ってる。貞節を
守ることは、当然のつとめ。」
メイリンは薄めの胸を張って言った。
「つまり、メイリンには僕だけで、僕にはメイリンだけ。そういうこと?」
「そう、そう、そういう、ことなの。」
僕の言葉にメイリンは、ぱあっと花がほころぶように笑う。
でも、なんだろう。何かがひっかかる。何かを、ずっと前に言ってたような……?
「そうだ、確かメイリンは『そういう普通は嫌いだ』って言ったんじゃ、なかったっけ?」
随分前のことだ。僕とメイリンが初めて会った夜に、メイリンがそう言った。僕はえらく酔狂なお姫様だと
思ったんだっけ。
「それはっ……! だって、ちゃんと選ぶためには、多少の試しは、許されるべきっ……!!」
メイリンはかっと顔中を朱に染める。
「『ものは試し』?」
たしかあのとき、メイリンはそう言った。
「そう、そうっ!! 試してみて、わたしが気に入り、ユゥが気に入れば、夫にしていいって、そういう約束、
だったもの!!」
はあ?!
そんなおいしい話、聞いてないし。断じて、聞いてない。
「わたしはすぐに、気に入ったと伝えた……。でも、ユゥからの返事は、ずっとなくて。」
メイリンはぷっと頬を膨らます。
「だって聞いてないんだから、仕方ないよ。僕が聞いてたのは、『勘違いするな』とか、『身分を弁えろ』
とか、あと『メイリンはいずれ、相応しい家格の男に嫁ぐ』とかもあったっけ。」
そのときの気持ちを思い出して僕は少し、溜息をつく。
──あれは全く、かなりの拷問だった。
「だからずっとメイリンのことは、好きになっちゃいけない女の子だと思ってた。」
それでも、好きで仕方がなかった。綺麗で可愛くて、すっごいお姫様なのに思い遣りがあって優しくて、
でも危なっかしくて、いつも目を離せない。
「メイリンは、僕のものにはならないんだって……。今の関係も、すぐに終わってしまうものなんだって、
思ってた。だから、あんなこと。」
「あんなこと?」
メイリンは澄んだ瞳で聞き返す。僕は少し恥ずかしくなった。
「その……メイリンが、邸を空けて遠くへ行く前、僕は君に乱暴した……!」
あれこそひどい暴走だ。ひとりで何もかも抱え込んで、自分だけで何かを終わらせようとした。
「何もかも、終わらせたかった。僕自身さえも。叶わないなら、これ以上好きになりたくなかった。君に
嫌われてしまいたかった。そして君だけに、罰されたかった。」
メイリンは僕の話を聞くと、きゅっと形のよい眉を寄せた。
「あの、馬鹿兄……!」
メイリンが、敬愛してやまない兄上のことを悪し様に言うのをはじめて聞いた気がする。
「ユゥのことを、散々悪く言っておいて……!! 自分が、嘘を吐いて話を混ぜてたんじゃないか……!!」
予想外の怒りの矛先に、僕はちょっと戸惑う。
「蒲州でもしつこく、やめておけとか、あいつにその気はないんだとか!! 鬱陶しいったら!! わたしには、
ちゃんと伝えたから黙って待てとかきつく言ってきて……、ああ、騙されたー! だーまーされたー!」
いつか仕返ししてやるー!!とか、大層な剣幕である。
可愛いくて最強な妹を怒らせたユイウ様のことが、少しだけ心配になる。うん、勿論自業自得だけど。
「ねえユゥ、じゃあもしわたしの申し入れが正しく伝わっていたら、もっと早く返事をくれた?」
「間違いなく。」
メイリンはそれだけでは満足せず、もっと踏み込んだ答えを求めてくる。
「いつ頃には、くれた?」
「メイリンの方は、いつ頃返事したの。」
「うんとね、ユゥの手枷を、外した日には。」
僕はぶっ、と噴き出した。思ったより随分、早かった。それは僕の憶えている限り、この邸に来て
三日目のことだ。
「決断が、早いんだね。」
僕は憶えておこうと思った。メイリンは、いざという時には決断がとても早いお姫様だ。
「だって、なんだかいいと思ったんだもの。一緒にいて楽しいし、お喋りしても楽しいし。」
メイリンはそこできゅっと唇を噛む。
「でも、ユイウ兄様は、ユゥは桂花の民の男だから、自分のクニを滅ぼした軍師の娘に対して、
わだかまりがあるんだって言ったの。父上様も、ゆっくり待ってあげなさいって。だからわたし、
ずっと待ってたの。」
うわあ、なんというまことしやかな嘘。確かにそういう気持ちがあったことは否定しない。本当に
メイリンの兄上は、僕のことをよく観察してる。
「確かにそういう風にも思ってはいたけど、メイリンから夫にしてもいいって言われてたら……見境なく、
即答してたと思うよ。結局は誰も、メイリンの魅力には勝てないもの。」
「他の誰も、必要ない。わたしは、ユゥだけでいい。」
メイリンは、極上の笑みを浮かべて言った。そんなところに、やっぱり勝てないと思う。
考えてみると、初めから負け通しだ。そしてそれも、悪くないと思ってしまうあたりが、すっかり参って
いるっていうんだろう。
それも仕方がない。だって、メイリンは、メイリンなんだもの。
──続く── 以上です。
年度末からの生活激変により、自分的にはいいところで滞ってました。
落ち着いてきたので続き。今回は数日後に次まで投下します。 リアルタイムで乙
ユウくんの方も可愛いから、本当このシリーズ好き お疲れ様です。続きお待ちしておりました。素晴らしい。 某国に、一人の姫がいた。
古の神話の女神のごとき美貌、天使のごとき慈愛、そして戦神のごとき勇猛。
全てを兼ね備えたその姫を、人々は称え、その物語に酔いしれていた。
『ラヴィリス姫』、その人に。
―――たった一人を除いては。
ラヴィリスの率いる蛮賊討伐の軍が帰路に立ち寄った村は、酷く寂れていた。
村人の影はほぼなく、一人の青年が畑仕事に勤しむ姿があるだけ。
その青年に、ラヴィリス姫が声をかけた瞬間である。
「出ていってくれ!」
青年の怒声に、ラヴィリスは酷く困惑した。
その青年の無礼に、副官が首をはねるかと聞いてきたが、ラヴィリスは首を横に振って見せた。
「国のお偉いさんがたに蛮賊討伐の依頼をして、六年だ!六年無視して、つまらないパーティや何やらにうつつを抜かしてたやつらが、来るな!」
「六年だと?つい最近のことと聞いたが・・・」
「おまえらのことなんざ、知るか!蛮賊に畑を荒らされ、村の仲間や家族はみんな殺された!生き残ったのは俺一人だ!」
ラヴィリスが副官に目線を寄せると、副官は仰々しく頷いた。
「恐らく、貴族の一人――少し前に粛正として処刑された方が、握りつぶしていたかと」
「知らないと言ってるだろう!ともかく、出てけ!貴族様に、俺の苦労なんて分からないんだろうが!出ていけ!」
「一つ聞く。お前、一人で村を立て直すことが叶うと思っているのか?」
副官の挑発的な声に、青年は一層声を荒げた。
「叶うか叶わないかじゃねぇよ!俺はな、この村に生まれ、この村で育ち、この村で恋人も作った!役に立たないお偉いさんに依頼して馬鹿を見るなら、一人でやって死んだほうがマシだ!」
「恋人、とな?」
ラヴィリスの声に、青年の声が、今度は沈む。
「蛮賊に殺された。慰みものにされて、その後・・・・」
青年の声色が、闇に染まる。
ラヴィリスには分かる。
復讐心に満ちた、その声の色と重さを。
「そうか。すまなかったな。我々は城へ帰投する―――行くぞ!」
ラヴィリスの号令の元、騎馬隊が整列したまま、村と呼ぶには余りに寂しい場所を駆け抜ける。
ラヴィリスは、知らなかった。
自身が戦で華々しく戦い、日頃は不自由なく満たされた日々を送る中でも、青年のような者もいるのだと。
(救いたいな――彼を)
ラヴィリスに宿った小さな想いが、後に彼女の未来を定めることになるのだが――今はまだ、誰もそれを知らなかった。
続かない。 ラヴィリス姫が城下町に着くと、住人たちはこぞってラヴィリスの姿を見に、遠くに近くに集まる。
そして、その視線にも種類があることを、ラヴィリスは理解している。
純粋な憧憬、ラヴィリスへのやっかみ、恋慕や愛欲の類いなど、浴びることにもなれたような視線ばかりではあるが。
(――あの男の眼は、違ったな)
寂しさと切なさと敵意の混じった視線でラヴィリスを貫いた、あの寒村の青年を思い出すたび、ラヴィリスは何とも言えない感情が湧き出すのを知覚している。
そも、騎士団を率いるようになってからの、『国のため』『人々のため』『平和のため』という建前を覆しかねない感情に、困惑しているのはラヴィリス自身だ。
(一番救いたいもの―――見つかった)
父たる国王に、かの寒村と、そこに住む青年の救済を申し出よう。
喝采で送る民衆に手を振ることも忘れて、ラヴィリスは小さく決意したのだった。
――そして二週間後。
ラヴィリスは、単身寒村へと向かった。
両親は納得していたものの、軍を公に動かすだけの大事とは認められず、結果ラヴィリスが一人で向かい、青年と正面から話し合うことにしたのだ。
最も、ラヴィリスとてその心積もりだったことに変わりはないため、嬉々として名馬に鞭を振るい、疾風のごとき速さで城を、城下町を出たのだった。
「・・・・なんだ?」
「なんだとは、挨拶だな。私は君と話をしたくて来たんだ」
ラヴィリスが村に到着した時、青年は一人で畑に何かの種を蒔いていた。
挨拶への返答がつれない言葉だったことに、ラヴィリスは全く戸惑いもせず、言葉を紡ぐ。
「率直に言おう。君を、私の執事として雇いたい」
「――は?」
「文字通りだ。この村を国の保護下で再度生き返らせたい、そしてその代償に、君には私の執事として働いて欲しい」
ラヴィリスの声色に嘘偽りはない。
となると、今度は青年が困惑する番だった。
「あんた、国の偉いさんか?」
「そう。王家継承の第一候補にして唯一の王女、ラヴィリスだよ」
「・・・・そうかい、からかいに来たのか?」
青年の表情に、失望の色が広がる。
村を立て直したいのは、青年の全霊をかける夢だったのだろう。
しかし、来たのは軍を率いるが能の娘ひとり。
確約されているわけでもない契約を結ぶほど、青年は愚かではない。のだが――
「からかいではないよ。私は君を必要としているんだ」
続くか分からない
僕はその後、メイリンの下肢を拭くために寝室まで運んであげた。もちろん綺麗に拭き清めるため、寝台に
座らせて上から順に脱がしてあげる。
「あの……ね、ユゥ。拭くだけなら、ちょっとめくって拭いて、汚れたとこだけ替えればいいような?」
「だめだめ、そんな適当なことしちゃ。メイリンはお姫様なんだから。それとも、男の精液を身体につけた
まま過ごす趣味でもあるの。」
僕は順調に帯をはずしながら言った。着替えはいつも見ているのだから、脱がすのは簡単だ。上着を脱がせて、
さっきは着付けた上からしか触れなかった胸の線をなぞる。
「そこ、は、……関係ない、と思う……。」
「黙って。大人しくしてないと、拭いてあげないよ?」
少し触ってあげただけで、柔らかな胸の先端は、下着の上からでも分かるくらいにぷっくりと尖ってくる。
その先端を摘まんでゆっくりと弄ると、メイリンはたまらず甘い声を上げた。
「あんっ……、だめ、さっきした、ばかりなのに……。」
「しっかり反応してるのに、またそんなこと言うんだ。いつだって、メイリンの『だめ』は、『悦い』って
意味なんだから。」
僕が笑みを含んだ声でそう告げると、メイリンは真っ赤になって口をぱくぱくさせる。
「そうだ、いつも初めには、こうしてあげる約束だった。」
僕はメイリンの顎を軽く持ち上げて、噛み付くように激しくくちづけた。少しも逃がさないように、きつく
抱きしめる。合わせた唇から、唾液をまとめて送り込むと、メイリンはびくりと身体を震わせて、大した
抵抗もせずにそれを飲み下した。甘い、甘い唇。綺麗に並んだ真珠のような歯も、その奥に隠れている
柔らかい舌も、もう全部僕のものだ。
くちづけが終わっても、しどけなく開いたままの唇を指でなぞり、唇の端から零れた唾液を拭い取ってあげる。
とろんと蕩けたような瞳で僕を見上げるメイリンは、この上もなく扇情的だ。
「メイリン、僕を気に入ってくれたってことは、夜伽の方も、気に入ってくれた?」
まあ何を試すかといって、そっちの相性を試すってことだったんだろうな。それだけでも充分過ぎるほど、
ぶっとんだ上流階級だと思うけれど。
「よ……夜は、少し、意地悪だと思った……。」
「ふうん? 意地悪くされるのが、好きなんだ?」
僕がからかうようにそう訊くと、メイリンは更に耳朶まで真っ赤になる。
「そういうこと、言ってるんじゃ、なくて……」
まあ、なんと答えてもたっぷり苛めてあげるけれど。メイリンはそもそも、可愛すぎるんだ。あれだけ煽って
おいて、一回で終わるわけがない。嘗めるな。若い男の健全な性欲、嘗めるな。
下帯も裙も順に脱がせて、下着に手をかける。一番下に着た単(ひとえ)の衣は、べっとりと白濁で濡れて
太ももに貼りついていた。ゆっくりとメイリンを裸に剥きながら、ひどい臭気を放つそれをむしろ白い肌に
塗りこめるように指でなぞる。
「これ……気持ち悪かった? すぐに、拭いてあげるからね?」
一糸纏わぬ姿になったメイリンは、じっとしてないと拭いてあげないと言うと、美しい肢体を明るく陽光に
照らされながら、神妙に待っていた。
初めて会った夜も完璧な美しさだと思ったけれど、男を知ったその身体は、よりいっそう艶めいて美しさを
増している。
ふっくらと量感と柔らかさが加わって、男の手を誘うように揺れる胸のふたつの膨らみ。その頂で薔薇色に
色づいて、肌の美しさに彩を加える赤い果実。少しずつくびれてきた腰、そのせいで一層強調されるように
なったまるいお尻。すっきりと伸びる細い脚は、感じてくるといつだってきゅっと僕に絡むのだ。
乾いた布と、湿らせた布を交互に使って、メイリンのきめの細かい柔肌をそっと拭いてあげる。メイリンは
この白濁の処理には割と神経質だから、丁寧に拭く。
メイリンの肌は、近くで見てもとても綺麗だ。いつもきっちりと衣で隠された素肌は、抜けるように白いのに
ほんのりと健やかに赤みがさして、触ると釉をかけた陶磁器のようにすべすべで、なのに温かくて柔らかくて、
こんなに触り心地のいいものは他にないとさえ思う。
「ここも拭いてあげなきゃね。」
当然のように、僕はメイリンの脚を開かせた。芳醇な雌の匂いが立ち昇る。
「そこはっ! 拭かなくて、いいと思う!!」
真っ赤になって抵抗するメイリンを、僕は優しく押さえ込む。
「どうして? ほら、濡れてる……。」
水滴をひとつずつ拭くときのように、清潔な布の端を尖らせて持ち、その先端でそっと触れる。ひくつく
花芯から溢れる蜜は糸を引くばかりで、布の先だけで何度触れてあげても一向に減ってゆかない。
ただその微かな刺激に、花弁が喘ぐように揺れるだけだ。
「ユゥ、だめ、だめ……っ!!」
「邪魔をしちゃ駄目だって、言ったよね? じっとしてて。」
メイリンがあんまり秘所を手で覆い隠そうと暴れるので、もうひとつ手拭いを持ってきて、後ろでくるくると
巻き付けて両の腕を優しく縛める。
「こんなに明るいところで、そんなとこ、みないで……! 恥ずかしい……!」
メイリンは両腕の自由を奪われ、身悶えて抗議する。でももちろん、脚は閉じさせてあげない。
僕は彼女の脚をいっぱいに開かせて、その秘密の部分を存分に鑑賞した。
「大丈夫、とっても綺麗だよ。」
それは偽らざる、素直な感想だ。メイリンの大切な部分が、僕に反応して揺れるのは、特にうっとり
するほど綺麗な光景だった。
確かに宵闇に揺れる蝋燭の炎の灯りと違って、陽の光の射す今は、複雑な肉の襞の陰まで余すところなく
見える。白い肌の中心でひくつく花芽は快感を求めて勃ち上がり、赤黒い血の色を思わせる花弁を開くと
中は鮮やかな桃色の肉で、蜜を滴らせながら僕を誘っている。
「いやらしい花みたいだ。」
僕はまた布の先でその花に触れた。今すぐその蜜をすすりたて、溢れる蜜壷の中に指を遊ばせたくて
堪らなかったが、もうそんなに急ぐ必要はない。
だってメイリンは、これからずっと僕の傍に居てくれるんだから。
布の先で触れるたびに、その花は恥ずかしげに震えた。花弁を指で広げ、もっとその蜜を吸い取ろうと
するほどに奥から溢れ出て、滴って夜具までを濡らす。
「そんなので……っ。つついてばかり、いないで……。わたし、おかしくなっちゃう……。もっと
ちゃんと、触って……。」
とうとうメイリンが先に音を上げた。もちろん僕にも異存はない。
「いつでも君の、望むままに。僕に、どうしてほしい?」
「あ……、ユゥのそれを、挿れて欲しい……。」
僕の一物は衣の中で、準備万端だった。というか先程精を放ったにもかかわらず、ほとんど萎えていない。
「今日は、性急なんだね、メイリン。」
そう言う僕のほうも限界だった。相手を焦らすときには、自分もまた焦らされている。早くメイリンと
ひとつになりたくて堪らない。
帯を解いて衣を脱ぎ捨て、天を向いた自分の一部を握る。ゆっくりと綺麗に濡れた花の中に埋め込むように
進めると、メイリンのそこは、熱く僕を包み込んで嬉しそうに歓迎してくれた。
「────っっ!!」
一気に奥まで捻じ込むと、メイリンは声にならない悲鳴を上げて身体をしならせた。仰け反った喉が
苦しげに呼吸を求めるのを、陶然として見つめる。軽く達してしまったみたいだ。
さっきもいったばかりなのに、なんて感じやすい、素敵な身体をしてるんだろう、メイリンは。
細い腰を抱き寄せて、反った身体を続けざまに何度も突き上げると、細い身体はがくがくと震えて、
繋がったところは僕を一層締め付ける。震えが治まってくったりするまで、何度でも何度でも、
そうしてあげた。
* *
「ね……、ユゥ。腕、ほどいて。ぎゅって、したい……。」
とろとろに蕩けた表情で、しばらくぐったりとしていたメイリンは、漸く甘えるようにそう言った。
「ぎゅっとして欲しい。」
メイリンの腕に巻いた布は、それほど強く結んだわけでもなく、抱き合ったままでも簡単に解けた。
自由になった細腕はたちまち僕の背を抱く。僕はまた嬉しくて泣きそうになった。
「メイリン……君が好き。」
僕もメイリンをきつく抱きしめた。言いようのない幸福感で満たされる。身体は溶け合ってひとつに
混じり合ってしまいそうで、僕の一部はまだメイリンの内で包まれている。これ以上の完璧が
あるだろうか。この完璧さの終わりをもたらす快感すら、今は憎かった。
どのくらい、そうしていたのだろう。それはほんの少しの間のようでもあり、永遠のようでもある。
この時間を途切れさせたくはないのに、何かに突き動かされるようにゆるゆると動き始めてしまう。
気の遠くなりそうな快感の中で、僕をこんなにも突き動かしてしまうものは何なんだろうとか、
うっすらと考える。
「んんっ……、好き、ユゥ……。」
メイリンがまたきゅっと抱きついてくる。その瞬間、なんだか分かった気がした。
僕を突き動かすもの。それはこの可愛い暴君、メイリンだ。
メイリンだけが、いつも僕をおかしくさせる。
メイリンが、いつも僕を支配する。
いつだって君に優しくして、微笑む顔が見たいのに、意地悪して泣きそうになるのも見たい。頑張って
びっくりさせたいし、驚かせたいし、死ぬほど笑わせたりもしたい。
でもこんな風に、快感でとろとろに蕩けた表情も、格別だ。
ああ、僕を支配するのが君なら、仕方がない。だって、メイリンなんだもの。
最高の時間はずっとは続かない。でも終わりを恐れる必要もない。
今日も明日も明後日も、君は僕のものなんだから。
僕はすっかり観念して、快感の命ずるままに身を委ねる。腰の動きは意識せずとも自然に速まっていった。
メイリンは僕にぴったりと抱きついて、揺らされるたびに可愛い嬌声を上げる。
「メイリン、気持ちいい?」
「気持ちいい……。」
「僕にこうされるの、好き?」
「ユゥにされるの、好き……。」
メイリンはうわごとのように繰り返しているだけなのに、その言葉はどうしてこんなにも僕の下半身を
直撃するように響くのだろう。いつだってメイリンは可愛い凶器だ。僕を上手に壊す。僕は熱が
せり上がってくるのを感じて、一層強く腰を振りたくる。
「あぁっ!! あっ、ユゥ、好き、好きっ!!」
メイリンは掠れかけた声で叫んだ。僕は残ったなけなしの理性でメイリンから僕の分身を引き抜くと、
白い腹の上に欲望の飛沫を浴びせた。
* *
「あの……ね。ユゥが意外と……その、男女の閨の営みが好きなことは分かったけど、その……
そういうことは、わたし以外としちゃ、駄目だからね。」
褥で単を羽織ながら僕に身体を拭かれて、メイリンはまたしてもそんなことを言い出す。僕は思わず
転びそうになった。
「それはさっき、約束したんじゃなかったっけ?」
「でもでもっ!! ユゥはそんなに、女の身体には興味がないと思ってたし……。以前読んだ本に、
男は欲望が大きいほど多くの女性を侍らせたがるって、書いてあった……!!」
「……ぷっ。」
僕は思わず吹き出した。メイリンの変に偏った知識はいつも怪しげな本からだ。しかもそんな
怪しげな知識で、泣きそうなくらい真面目に心配している。
「メイリンって、馬鹿なの。」
僕はこんなにメイリンを見ていて、こんなに夢中なのに。どうして他の女のこととか考える
余裕があると思うんだろう。
「ば、馬鹿っ……?!」
メイリンは大きな目を更に大きく剥いて、真っ赤になる。それもまた可愛い。
「だってあんまり馬鹿なこと、心配してるし。なんて言うんだっけ、こういうの。……鈍い?」
「ど、どうしてそんなっ……父上様と同じようなこと、言うの?」
「……言われてたんだ。」
少なくとも、僕の気持ちはメイリンの兄上達には筒抜けだった。多分、周りの使用人の皆にも
だだ漏れだったに違いない。気付いてないのは、メイリンだけだ。
「おまえは母親に似て、色恋に鈍いねって。でも、人の心なんて、目に見えないもの。」
メイリンは拗ねて口を尖らせた。メイリンは他のことならかなりの聡さを見せるのに、こと
色恋に関しては多分壊滅的に鈍感だ。
「メイリンはさ、侍女とかついてるのに、そういう話、しないの。」
「わたし付きの侍女は皆、母上様がお選びになっているので……、男女のこととか、はしたない
話は一切、厳禁なの。」
それで変な本から変な偏った知識つけてるのか。もっと自然にそういう話題に慣れさせておいた
方がいいのに。
「僕が君に夢中なことくらい、どっから見ても丸分かりだと思うけど。」
言ってて恥ずかしい。結局分かりやすい、単純な奴だよな、僕って。
「わたし、男の人から好かれたこと、ないもの。」
メイリンがとんでもないことを言い出すので僕は座ったまま転がりそうになった。無い無いないない。
それは無い。
「まさか。」
僕はメイリンの頭のてっぺんから脚の爪先までをまじまじと見た。情事のあと薄衣を纏っただけの
彼女は、しっとりとした色気を湛えて、息を飲むほどに妖艶だ。
「母上のお客の高官とかが、二番目の妻にならないかと言ってきたこととかならあったけど……、
三十ほど年上のおじさんだったし、ひどく酔ってるみたいだったから、頭から水をかけて差し上げた。
その後その人は出入り禁止になったみたいで、二度と会わなかったけど。」
出入り禁止とか生ぬるい。僕がそこにいたら、メイリンにそんなことを言う奴は、もっと酷い目に
あわせてやるのに。
「メイリンの行ってた、学問所とかは? あそこは同い年くらいの男が、わんさかいたじゃないか。」
「あそこにいるのは、ぜんぶ学友。第一いいとこの坊ちゃん達なんだから、皇族であるチェン家の
気位の高い娘とどうこうなろうなんて変わり者はいないの。皆自分と同じか、ちょっと家格の低い
くらいの、大人しくて従順な娘を許嫁に貰ってる。」
僕は理解できなかった。こんな可愛い女の子がそばに居て、心を奪われない奴が居るなんて。
「いつか、一緒に居た奴は?」
「いつか?」
「僕が君を、初めて迎えに行った日、一緒に居た奴。」
メイリンはうーん、と眉を寄せた。全く思い出せないらしい。いつも比較的仲の良い数人と、講義の
内容について喋りながら迎えを待つから、その中の誰かだろうと言った。
「第一ねえ、学院の皆は、兄上様が恐いの、卒院してからまで、無駄に目を光らせてるんだもの。
それから父上様も、上流階級の間ではちょっとした有名人でね、ほとんどの学院生は、恐がって
近寄ってこないの。」
比較的仲の良い数人は、皆それぞれに可愛い許婚の居る『安全な』学友なのだそうだ。
そういえばユイウ様達が、メイリンには悪い虫がつかないよう目を光らせていた、と言っていたっけ。
多分、摘まんで棄てられた悪い虫も、それなりに居たんだろうな。ご愁傷様。
「それに、わたしみたいに何にでも首を突っ込んで、解決したがる娘は、嫌われるの。女のくせに、
我儘だって。」
「それは、我儘じゃないよ。」
僕は自信を持って言った。
「メイリンの、優しさだ。それを我儘だなんて言う人達のことは、放っておけばいい。」
僕はメイリンの横に座り、細い肩を抱いた。
「つまりメイリンは、圧倒的に経験が足りないんだね。そして生身の男のこともよく分かってない。」
メイリンは大きな瞳をくるくるさせる。
「ん? んー? そう、かも?」
「じゃあ、初心(うぶ)なメイリンに、色々教えてあげなきゃね。」
僕はメイリンのうなじに、ちゅっとくちづけた。彼女は小さくひゃっと声を上げる。
「え、えっと……。」
「メイリンはさ、僕のここが硬くなる現象、今まで何だと思ってたの。」
僕はメイリンのほっそりした手を取って僕の股間を触らせた。そこはまた硬さを取り戻しつつある。
彼女は真っ赤になって急いで手を引っ込めた。
「それは……、男は女が誘えば、相手が誰でもそうなるって……。」
「僕は多分、一度くらいなら何とかなるかもしれないけど、次からは無理だな、試してみたことないけど。」
「でもユゥは、わたしがご主人様だから、命令だから夜伽に応じてるって、いつもそう言ってた。」
きょとんとした目をして、メイリンは僕を見上げる。
「それは……、そう言ったかもしれないけど。」
ああくそ、まだ言わなきゃいけないのか。鈍いって大変だ。
「要は、好きだからしたいとか言っても駄目だと思ってそう言ってただけ!! どうせしたかっただけだよ!!」
言わせんな恥ずかしい。
「メイリンを目の前にして、好きだなー可愛いなー、とか考えると、すぐこうなるの!!」
今だって飽きずにそんなことばっか考えてますよ! 悪い?! だって仕方ないだろ、健全な男なんだから!!
「……いつから?」
「いつから?! 最初っからに決まってるだろ!! メイリンは最初っから可愛いんだから!! 自覚ないの?!」
メイリンは変な形に唇を引き結んで、ぷるぷる震えていた。その目に涙の雫が盛り上がる。
うわ、なんでそこで泣く。
「……そんなこと、一回も言わなかった……!」
「言ったよ!! 可愛いって。」
確か可愛いとは言った。睦言の最中とかに。言ったはず。
「聞いてないよう……!!」
メイリンは真珠のような涙の粒を零す。ああはい負け負け。僕の負けです。泣かれると弱い。
僕は優しくメイリンの頭を撫でてあげる。
「じゃあ、これから憶えて。僕はメイリンが好きで、可愛くて、なんでもしてあげたいの。分かった?」
メイリンはしゃくりあげながら、僕を上目遣いで睨む。まだ納得してないらしい。
「こんなに可愛いのに不安になっちゃうなんて、メイリンはちょっと考えすぎだと思うんだ。
頭でばっかり考えてないで、体も動かした方がいいよ。」
「体を? 動かす?」
メイリンは軽く首を捻っている。本当に、分かってないなあ。
「僕がどのくらい君を好きか、疑いようもないくらい、分からせてあげる。」
僕は彼女への愛しさをたっぷり込めて言った。
メイリンが息を飲むより、僕が彼女を捕まえる方が早かった。愛情を込めてぎゅっと抱きしめる。
「離れていた時間の分も、たっぷり、僕を君の中に刻み込んであげるね。」
「あの……、あの……、あんまり酷く、しないで……。」
メイリンは可愛らしく震える。
「勿論。大好きな君を、うんと優しく、苛めてあげる。」
僕はメイリンをどんな風に啼かせてあげるか、幾通りも想像した。それは例えようもなく甘美な頭の
使い方だった。
そして僕達はそれから次の朝まで、二人きりで甘い甘い時間を過ごした。
──続く──
以上です。
メイリンの逆光源氏計画なのは一部の人にはバレバレでしたね。
さっさと展開させてしまえばいいのに、予想外に時間かかってすみません。
今回は以上です。また書けたらまた来ます。
追伸:保管庫の管理人様、拙作を含む保管作業ありがとうございました。 >>195
乙ですの!
というわけで、自分も続きをば。 ラヴィリスの声に、青年はため息をついた。
その溜め息一つさえ、ラヴィリスは気に入った。
「もう一度言う。私の執事として、共に居て欲しい。願わくば、執事を超えた、私の伴侶となって欲しいんだ」
ラヴィリスの猛る情熱は、隠しようが無かった。
青年はもう一つ溜め息を着くと、優しく笑んだ。
「理由は聞かない。だが、俺は君を知らない。知ろうとも思わない。権謀渦巻く場所に行くつもりもない」
「つれないな。だけど、私だって子供の使いで来ているんじゃないんだよ」
初めて見た青年の笑みを、ラヴィリスは胸に刻んだ。
「初めてなんだ。今まで、何不自由無く暮らしてきたのは事実さ。だけど、そんなものを全て捨ててでも、私は君が欲しいんだ」
初めての感情だった。
誰もに可愛がられ、敬われ、大事にされていた彼女に向けられた、生の感情そのままの怒声。
同時に、自分の無知を痛感もした。
そして、ラヴィリスは知った。
自分に真っ直ぐな感情をぶつけてくれる存在が、両親以外にいなかったことを。
真っ直ぐな感情をぶつけられることの、嬉しさを。
世間知らずを理解した姫がその喜びを思慕にすり替えるまで、時間はかからなかった。
「幸い私は未だ乙女の身だ。君の好みに開発してくれてもいい。縛られようと、如何な羞恥を与えられようと、君の奴隷にされようと構わない。望むなら、喜んで切り刻まれよう。だから、私を受け入れて欲しいんだよ」
「そういう問題じゃあないんだ」
青年の制止に、ラヴィリスは頷く。
「俺には、恋人がいたと言ったな。そして彼女が死んだことも」
「あぁ、確かに聞いている」
「つまり、君は永劫一番になることはないんだ。俺の中でね」
「だが、二番にはなれるのだろう?」
「一番ではないけどな」
青年が意地悪げに笑う。
ラヴィリスがそれに微笑み返す。
「恋人、伴侶とまではいかなくても。この村の再興を私にも手伝わせて欲しい」
「苦難の道だぜ。報われもしない努力の日々だからな」
「苦難結構じゃないか。城で本を読むよりも、戦場で采配を振るうよりも、学ぶことがありそうだ」
青年が、怒りだけの人でなくて良かったと、ラヴィリスは呟く。
「君の名前を聞きたいな。私はラヴィリス。ラヴィリス=エル=エリシアスだ」
「俺はセフィラスだよ」
二人が手を繋ぐ。
確固とした絆がひとつ、生まれた証だった。
続く?次があれば次辺りに濡れ場を入れたいなぁ セフィラスは夜明けが好きだ。
なんとも言えぬ爽やかな気分になれる上に、涼やかだし。
大地を耕し、大地と共に生きてきたセフィラスだからこそ、夜明けの素晴らしさは人一倍理解していると自負している。
――が、今はそれどころではない。
全裸にエプロン、それも布地を限りなく減らした薄い品を身に着けたラヴィリスが、セフィラスの肉槍に奉仕している。
「んう、んん、んんん・・・♪」
「気持ちいいよ、ラヴィ・・」
「んふ・・ぅん・・・っ♪」
姫の豊満な、ともすれば巨乳を越え、爆乳と呼ばれそうな乳肉に挟まれ、更に先端を口内で愛撫される感触は、毎度のことながら極上の快楽である。
何よりも、人々が敬い憧れる戦女神の淫乱を知るのが自分一人と言うのは、ひどく誇らしいことだ。
セフィラスがグッとラヴィリスの頭を掴み、その暖かな口内を犯すと、ラヴィリスは自らの口に突き立てられた肉で快楽を求める。
「射精すぞ、ラヴィ!」
「ん、ん、んんぅっ♪」
紅潮したラヴィリスの頬が、縦に動こうとする。
それだけでセフィラスは理解し、ラヴィリスの喉に灼熱を射ち出した。
ビュク、ビュク、と勢い良く射たれる度に、ラヴィリスの細い喉が動き、飲み干そうとする。
10秒か、20秒かの射精の後、最後の一射分を口内でかき混ぜ、味わい、満足げに飲み干したラヴィリスは、姫と呼ばれていた頃には想像も出来ぬ淫靡な笑みを見せていた。
「おはようセラ。朝一はやはりセラのミルクに限るな」
「おはようラヴィ。・・全く、君が淫乱なのは恋人付き合いの頃から解っていたけど、こう毎朝毎晩とは思わなかったよ」
「仕方ないだろう?処女だった私の初めてを月夜の下で奪ったのは、セラ、君だよ?あんなに気持ち良くて幸せなこと、私は知らなかった」
「俺も、君が淫乱だとは思わなかったがね。野外で尻穴を犯されて、放尿しながら絶頂したり、それを嫌がるどころか大好きになるなんてさ」
「普通にセックスするのも気持ち良くて好きだし、私が上に乗るのも好きだよ。犬のように首輪を付けられて、四つん這いで犯されるのもいい。尻穴を犯されるのも、大好きだよ」
「とんだ変態姫だ」
「私をそうしたのは、セラ、君だよ?」
二人とも全裸のまま、時折キスなどをしながら語り合う。
二人が初めて交わってから、いつも性交の後はこうやって語り合っていた。 セフィラスのいた大地は、今や寒村などと揶揄されることもない、立派な観光地になっている。
大地の精霊と遭遇したセフィラスが、たった一度だけの浮気として大地の精霊を愛し、彼女に気に入られた結果、かの村には花が咲き乱れ、巨大な温泉が沸き出たからだ。
最も、その村を管理するのはセフィラスとラヴィリスの二人なのだが。
ラヴィリスは、人の妻となることを両親に伝えた結果、多大なる反発を受け―――はしなかった。
むしろ、寒村として見捨てられかけた大地を蘇らせ、更には総じて気難しいと呼ばれる精霊の加護を受けた男が相手と聞き、国を挙げた祝宴にされたぐらいだ。
ラヴィリスが戦女神として前線に立つことをやめたのは、自らの立場を重んじたからだった。
セフィラスの妻となる身が、戦場で命を落とすわけにはいかなかったし、何よりもセフィラスと離れたくなかった。
事実二人で村を興し、観光地とし、そして今も、ラヴィリスはセフィラスの隣に居続けた。
二人が子供を作らぬのは、ラヴィリスの強い要望があってのことだった。
なんでも、『子供を作っては育児と村の管理に追われ、セラと愛し合う暇がなくなるじゃないか!私はまだまだセラに愛されたいし、セラを愛したいのだ!』と豪語したとか。
それを聞いたラヴィリスの父である現国王は、自分が妻に毎日搾られ、変態の如き調教を与えさせられた日々を思い返し、セフィラスに同情したという。
――そして、セフィラスとラヴィリスのその後について、少しだけ触れよう。
セフィラスは『開拓王』として、前国王直々に王位を継承されることとなる。
本人は嫌ったが、村ひとつを立派に蘇らせた経歴に文句の付けようはなく、彼の存命中は争いのない平和な国となった。
ラヴィリスはセフィラスの隣を離れることがなく、二人は呪いで離れられぬと言われる程だったという。
妃となってからも、その美貌は兵士たちの士気を高揚させるに足りるものであり、国の象徴であったらしい―――
続く? >>61
とある王城の地下牢に幼い王女が幽閉されていた。数日前の軍部によるクーデターにより彼女は両親である国王夫妻と引き離されていた。彼女は下着同然の白いキャミソールワンピースに素足という囚われの身ではあったが、食事は十分に与えられており手厚い保護を受けていた。 >>204
王女が眠りに就いているとふと鉄格子が開いて従者が入ってきた。
「姫様、ご両親の元へお連れします。まず、お履き物をお召しください。」と彼女の足元を丁寧に拭い、彼女は足裏に伝わる感触を確かめつつ、新たに誂えた革靴に素足を収めた。そして、城を後にした。 >>205
王女と従者を乗せた馬車は小一時間程で城下町にある闘技場に到着した。従者は「いよいよご対面でございます。姫様とはここでお別れです。」と言い放ち、兵士に王女を引き渡してその場を後にした。 >>204
幼女の素足履きフェチの変態さん乙です。
是非とも続きをお願いします。 >>202
乙!
もっとねっとりエロが欲しかった
高貴な淫乱はツボでした
番外編あったらヨロです 一覧に更新が出てこないと思ってたら鯖移転していたとは・・・
ひつまぶし、続く?と言いつつネタ振りしまくりじゃないですかw
月下の破瓜とか野外調教あれこれとか精霊と浮気とか、
父王の調教の日々とか、どれとは言いませんので続きください! >>209
父王の調教:苦手にしてたつよきっすな女の子に首輪やら鞭やらロウソクを渡され、女の子がデレデレのとろとろになるまで調教しつづける数ヶ月の話
月下のロストヴァージン:村を再興するために頑張るセフィの側に居続けたラヴィが、キスと共におねだりするような話。
精霊さんとの浮気:浮気やないよ?本妻が納得してのラブコメだよ?本妻が我慢できずに3Pになったりするけど
こんな構想 >>210
何という素敵な構想…!
ぜひ見たいなーとちらりと言ってみます 他のスレに途中まで投下して、3年ほど放置していたパロディの加筆修正、完成版。
特殊嗜好を含むため、こちらに投下する。
元ネタ:「妖ノ宮」っていう和風姫ゲー。
属性:女性向け男女恋愛、ハゲ、スカトロ、カニバリズム要素、SM要素。
苦手な人は注意して下さい。
■登場人物
妖ノ宮(あやしのみや)……あやかしと人間の混血児。趣味は放火。
法縁(ほうえん)……妖ノ宮の婿。僧形の超絶イケメンカリスマ指圧師。
五光夢路(ごこう・ゆめじ)……妖ノ宮の後見人。あやかし討伐組織の総長。
火炎車(かえんしゃ)……妖ノ宮のお友達。人を喰う凶悪な妖怪。 『妖ノ宮』
あやかしと人間が共生する、極東の神秘の島国、八蔓(ハチマン)。
呼び名の由来は、「かつて八柱のオロチがツルのように絡まり合い、生まれた土地」とされる伝承。
多種多様な都市国家が群雄割拠し、成り立っている列島である。
人の子もあやかしも、激しく短い一生を送り、天寿を全うすることは少ない混沌の時代であった。
このハチマンにおいて、国内の医療市場を牛耳る存在が慈院(じいん)である。
慈院とは、老若男女を問わず、広くハチマン中に顧客を抱える、指圧治療師の組合。
まだ医療技術の未発達だったハチマンにとって、貴重な医の担い手と言えた。
彼らを統率するのは、余酪(よらく)地方の領主にして慈院総元締め、法縁(ほうえん)。
彼はしたたかな野心家の男で、医療の独占状況をよいことに、甘い汁を吸う稀代の悪党だった。
法縁は筋金入りの守銭奴。
自分が頭首に代替わりしてからは、慈院の運営をカネ儲け主義に走らせる。
治療費を法外に吊り上げ、暴利を貪ったのだ。
また横領、脱税、贈収賄、そしてセクハラ、パワハラ、しかもマザコンのうえにロリコン……
あらゆる不正行為と、神技の域とまで称される「癒しの指」の技術を悪用し、勢力拡大に成功してゆく。
その狡猾さから頭角を現した法縁は、さらに盤石の地位を得る。
国家連合の盟主、主君筋である神流河(かんながわ)国の姫宮をめとり、みごと逆玉の輿に乗ったのだ。
半人半妖であることから、妖ノ宮(あやしのみや)とあだ名される、弱冠十六歳の少女。
彼女は、志半ばにして非業の死を遂げたハチマンの英傑、覇乱王(はらんおう)、
神流河正義(かんながわ・まさよし)の遺児。
乱世に咲きし可憐な悪の華である。
この姫君が法縁をみそめ、弱みを握って彼を脅迫し、求婚した。
そして互いに利害の一致を見た結果、めおとの契りを結んだのだ。
妖ノ宮は人食い鬼の放火魔だったので、法縁とは悪党同士お似合いだった。
時期を同じく、覇乱王の四人の重臣、四天王による覇権争い
「四天相克(してんそうこく)」の動乱も収束。
妖ノ宮を奉戴していた五光夢路(ごこう・ゆめじ)派閥の勝利をもって、幕を閉じる。
妖ノ宮が神流河国の王になり、妖ノ宮と法縁はめでたく盛大な祝言を挙げた。
ふたりは今まで以上に一致団結し、弱き民からカネを巻き上げ、苦しめ続けた。
これは、そんな悪鬼のような夫婦の物語。 <一>開幕
ここは首都、百錬京(ひゃくれんきょう)の西に位置する傘下都市――余酪(よらく)地方、慈院本部。
自然豊かな山々に囲まれた、堂々たる山門。
山門をくぐると、広大な敷地には白砂が撒かれ、閑静清浄なおもむきの木造建築が構えている。
時刻は宵の口。
等間隔に並ぶ吊り灯ろうが、入り組んだ回廊の夜闇を照らしていた。
大勢の門弟たちを養う大所帯である立派な屋敷。
景観からも裕福な暮らしがうかがえる。
それは、弱者たちの屍の上に築かれた栄華だった。
そんな悪徳領主の館にて、新妻の妖ノ宮(あやしのみや)は、ひとり文机に向かっていた。
普段は百錬京の風雲城で生活し、政務を処理しているのだが、今は用事があり慈院本部に滞在していた。
世間を欺くためのインチキ二重帳簿をつけている最中である。
こうした悪事にも平然と手を染める娘だが、彼女は見目麗しかった。
容姿だけを見れば、蝶よ花よと育てられた人畜無害な深窓の美姫。
まるで幼女の面影を残す和人形だった。
しかしちまたでは「大妖を母に持ち、妖術でもって人心を操る」と噂され、
畏怖の対象となっている妖女である。
「おなかすいた……ごはん、まだかなぁ」
記帳する筆を置いて一息つくと、空腹をつぶやく。
と言っても、先ほど夕餉を済ませたばかり。
ふっくらと炊きあげた、在田産の最高級白米をたらふく喰ったばかりである。
厨房におやつを貰いに行くか、または妖ノ宮の精神世界「真なる座所」に潜り、
お供のニンジンと戯れるか、それとも、どこかに放火して気分転換でもするか……。
悩んでいると、ふいに食べ物の気配を感知する。
「あっ、おいしそうな匂いが近づいてくる」
しばらく待っていると、荘厳な錦絵をあしらった襖を引き開き、薫香を連れて和室に入る者があった。
僧形の青年――伴侶の法縁(ほうえん)である。
「ヌフフ……妖ノ宮、今帰った。いい子に留守番しておったか?」
「あら。お帰りなさい、あなた」
中立組織、調停(ちょうてい)の都、松左京(まつさきょう)の往診から帰邸した彼に、
妖ノ宮は可愛らしく抱きついた。
よろめく法縁。
「おっと、危ない。ヌフッ、どうした。わしが居なくて淋しかったか? ヌフフフ」
ヌフフ、と不気味に笑いながら、幼妻の丸い頭をやわらかく撫でる。
「別に! ちっとも淋しくなんてなかった。調子に乗らないで、つるっぱげ」
「…………」
慈院は剃髪し法衣をまとうことを制服としており、彼も紫の衣と贅沢な金襴の袈裟を身につけている。
聖職者のなりをしているものの、法縁は汚れきった男である。 まず人相から邪悪で、絵に描いたようなふてぶてしい面構え。
年の頃は「おっさん」と形容するにはまだ早いが、
かと言って「お兄さん」と呼ぶのもそろそろ厳しい、微妙なところ。
見るからに胡散臭い人物である。
妖ノ宮は、夫に座布団を勧めながら言った。
「座って。外は寒かったでしょう、すぐにお茶を淹れるわね。夕餉は食べてきたの?」
「ほれ、これは土産じゃ。腹をすかして居るのではないかと思ってな。
包みを解いてみろ。おぬしの好きな饅頭が入っている」
「わあい! お菓子大好き。おまんじゅう、ちょうだい」
嬉しそうに土産を受け取り、茶器の用意を始める妖ノ宮。
新たな金ヅルの資産家を掴んできた法縁は、上機嫌だった。
「喜べ、妖ノ宮。調停の大貴族から、また“暖かいご支援”を頂戴したぞ。
まったく笑いが止まらぬなぁ! ……ヌフ、ヌフハハハハ! 力こそ正義! カネこそが正義なのだ!」
この「暖かいご支援」という言葉は、脅迫による搾取を意味している。
脅迫は法縁の十八番である。
彼は医療従事者でありながら、甘美な権力の味に魅入られしカネの亡者だった。
「悪さばかりしていると、そのうち罰が当たるわよ。法縁殿」
「フン……どの口が言っている。罰なぞ当たりゃせんよ。
なにせ我が慈院は、天下の妖ノ宮様の加護を受けているのだからな」
過日の跡目争い「四天相克(してんそうこく)」を勝ち抜いた妖ノ宮は、覇乱王の正式な後継者。
王婿の恩恵を享受した慈院も、今や揺るぎなき組織である。
自らも趨勢に乗ろうと、ハチマン各地の有力諸侯が、法縁への取り入りに躍起だった。
「ヌ、おぬし」
ふいに何事か気づき、目を眇める法縁。
妖ノ宮の小作りなかんばせを、しげしげと眺める。
「ははあ、ちと顔色が悪いな。疲れが溜まっていると見える」
「そう? 確かにおなかは、すいてるけど……」
妖ノ宮は夫を見上げ、小首をかしげた。
「……おぬしは常に腹をすかしておるな」
本人は頓着しなかったが、実際のところ、彼女は心身ともに疲弊していた。
神流河(かんながわ)国の新しい君主として、激務をこなす毎日……。
それなりに楽しく幸せではあったが……甘くも何ともない、法縁とのあわただしい新婚生活。
共に過ごす時間すら、ろくに確保できない日々が続く。
新天地の慣れない仕事に戸惑う場面も多く、無理が重なったのである。
「どれ、久しぶりに施術してやろう。湯で身体を温めて来い」
「でも。あなたも疲れているでしょう? 往診から戻ったばかりだもの。今日はもう休んで」
「なに、おぬしに体調を崩されでもしたら、わしが困るのでな。
ゆっくりと……時間をかけて……揉みほぐして……癒してやろう……ヌフフ!」
どうやら法縁なりに、妖ノ宮を心配しているらしかった。 <二>指圧
湯浴みを終えて妖ノ宮が戻る。
寝所の座敷はよく暖められ、畳にはすでに布団が敷かれていた。
軽く焚いた香のただよいが、彼女の身体をふわりと包んだ。
「ほれ、ここへ来い」
僧装を解き、法縁は白衣姿となって待っていた。
彼の手招きに応じ、布団の上にちょこんと正座する妖ノ宮。
湯あがりの着衣は薄い寝間着のみ。
カラスの濡れ羽色の髪を高く結いあげてまとめ、人外の証である尖耳を露わにしている。
袖をたくしあげ襷を結び、法縁は張りきって腕まくりをした。
膝立ちになって妖ノ宮の背後に陣取ると、肩の触診を始める。
「……ずいぶんと、身体を酷使しているようだな」
熟達した治療師は、患部に触れるだけで相手の体調を読み取ってしまう。
「んっ、そこ」
押し揉まれた部位が痛気持ちよく、妖ノ宮は思わず鼻を鳴らす。
眉上で切り整えられた前髪を掻き分け、法縁の手指がこめかみを押さえると、ゆっくり円を描く。
「わしの指は癒しの指。力を抜き、わしに全てを委ねるのだ。
雲オロチの腕に抱かれているが如き、極楽浄土へと連れて行ってやろう!」
幼妻の耳元でそう囁いてから、彼はほくそ笑んだ。
――生命維持の源とされる、生気と血液を気血という。
気血の循環系として、人体をすみずみまで巡る道すじが経絡。
おもに十二本の経脈があり、五臓六腑から出発し、全身を一巡りして再び戻ってくる。
これらの経路上にそって点在する要所が、いわゆるツボ、経穴である。
健康に変調をきたすと、それが経絡を通じて関連ある経穴に伝わり、凝りやへこみ、
皮膚のざらつきとなって現れる。
指圧とは、経穴を刺激することによって内臓諸器官に働きかけ、気血の流動を促進し、
自然治癒力を引き出す手技療法のひとつである。
また慈院の指圧術「癒しの指」は、人間の身体能力を一時的にだが、
劇的に増強するといったことも可能とし、軍事にも重宝されていた。
特に頭首である法縁の技量は群を抜いていた。 ――華奢な四肢が、敷布の上でうつぶせになっている。
力加減を誤って扱えば、たやすく折れてしまいそうな身体である。
法縁はその細身に馬乗りになって跨った。
爪を短く切り揃えた指先で、背の柔肉に位置を定める。
そっと親指を投じると、彼の商売道具が……じわり、と掛け布に沈み込んだ。
的確な取穴だった。
体重を乗せ、奥に深く圧を入れる。
「……ぁ、ぅ〜っ……いぎぃぃ……」
えも言われぬ圧痛に、押し殺した呻きがあがる。
「ほら、まだ無駄に力んでおるぞ。遠慮するな、声を我慢することはない」
「ぁっ、は、ぅ〜!」
「次はこちらの経穴だ!」
枕に顔を埋めた妖ノ宮は、押し寄せる快痛の波に呑まれていった。
秩序ある規則的な指さばき。
この妙技を、唯一いつでもどこでも無料で味わえるのが、妻である妖ノ宮の特権だった。
次第に、体内を回る気血の流れが調整されてゆく。
筋肉の緊張はやわらぎ血流も良好、可動域が増え、細胞が見る見ると活性化した。
「段々と身体が軽くなって来たであろう」
「……ふぁ……は、ぁ……」
切れ目のない加圧に合わせ、妖ノ宮は穏やかに呼吸する。
彼女はふわふわと夢見心地をたゆたっていた。
酒に酔ったような酩酊感に眠気をもよおす。
妖ノ宮はまどろみ――何かを尋ねる法縁の声も、意識の遠くに聞こえる。
全ての工程を消化する頃、彼女は健やかな寝息を立てていた。 <三>B面
「……妖ノ宮、妖ノ宮。これ、妖ノ宮よ。わしの姫」
「ん……ほうえん、わたし、眠ってたの……?」
低い呼び声に覚醒した妖ノ宮は、のろのろと布団から起き出した。
寝惚けまなこを小さな両手で擦っている。
「む、目覚めたか。さあ、これをお上がり。わしの煎じた薬湯だ。気分が落ち着く。熱いから気を付けてな」
そう言って、湯気のたち昇る陶器を載せた盆を差し出す。
妖ノ宮が眠っている間に淹れたものだ。
「いい匂い……いただきます」
愛情たっぷりの施術に安らいだ妖ノ宮は、屈託なく微笑んだ。
渋くこうばしい風味を楽しみながら、法縁手製のお茶をすする。
すぐに身体の芯から温まり、発汗する。
「おいしい。法縁殿、ありがとう。疲れが抜けて、すっかり楽になりまし――」
「さあて、では最後の仕上げといこうかの。身に付けているもの全て脱いで、そこに横になれ」
述べようとした礼を法縁が遮った。
予想外の指示にきょとん、とした後、妖ノ宮は頬をプクッと膨らます。
「……すけべ。今夜はいや」
「はて、助平なのはどちらだか。わしはただ、ヌッフフ! 総仕上げに必要であるから、
脱げと言っているまで。いったい何を期待しておるのかな」
「変なことしないで下さいね」
彼の怪しい笑みに疑いの眼差しを向けながら、釘を刺す。
「ああ。しない、しないぞ。だからとっとと脱ぐ! ヌフ、ヌフフフフフッ!」
「する癖に……」
布団から枕をどかし、替わりに折りたたんだ数枚の手拭いを重ねて置く。
生まれたままの姿になった妖ノ宮は、それを顎の下にし、腹ばいに寝そべった。
行燈の淡い照明によって、しなやかな裸身がぼうっと浮かびあがる。
白いうなじに、汗で湿ったおくれ毛が貼りついている。
「よいか、妖ノ宮。治療こそ我が命。そう、万人の幸せこそが……
いや、おぬしの幸せこそ、わしの幸せ。ヌフ、ヌフフフ……」
わざとらしく殊勝な物言いをする法縁。
何か言い返そうと妖ノ宮が身じろぎしたとき、大きな手が静かに脊柱へ乗せられた。
労わるような、心地よい熱を帯びる厚い皮膚。
――言葉が出てこなくなってしまう。
ただそこに触れられているだけで、掌から放出される慈しみの「気」が、体内に浸透するようだった。 法縁は薬箱から小瓶を取り出し開封した。
粘り気のある液体を適量手に垂らし、しばらく体温であたためる。
「ゆくぞ、妖ノ宮よ」
「ひゃ、何ですか? 冷たい。ぬるぬるする」
「これか? これはな、ただの潤滑液だ。指の滑りを良くする、な」
植物から抽出した精油を用い、法縁が調合した非常に高価な品だ。
ほのかに立ち込める陶酔的な香気には、催淫効果がある。
「ぷぷ……くすぐったい」
背のこそばゆさに耐えかね、妖ノ宮はくすくすと笑い出した。
「こら、笑うでない。いい子だから大人しくしておれ」
震える脇腹にとろみを広めながら注意する。
「なによ、子供あつかいしないで。私はもう子供じゃない」
柔らかな女体の背面をゆっくり按摩しながら、円滑液をなじませてゆく。
少女の透明感あふれる肌が、法縁の手によって一層ピカピカに磨かれる。
――やはり布越しに触れられるのと、素肌へ直に触れられるのとでは、違う。
男女の肌同士の摩擦が、妖ノ宮にもどかしい劣情を喚起させるのだった。
入念に下地を作ってから、法縁は頃合いを見計らって話しかける。
「それにしても、けしからん。実に、けしからんなあ」
言うと、粘液で濡れ光るプリプリの尻たぶを鷲掴みにした。
「全くけしからん尻じゃ。ようし、こうしてくれる!」
「ぁう! 嘘つき、いやらしいことはしないって約束したのに。法縁のはげ。つるっぱげ!」
「ヌフ!? 禿げ、禿げだと!? なんと。まさか女房から禿げ呼ばわりされるとは!
わしはもう立ち直れぬ。……ヌフハハハッ、こやつ! この鬼嫁めぇ」
「誰が鬼嫁なの。もう一度言ってみなさい!」
焚きつけられた法縁は反撃に出た。
仙骨の辺りにある窪みに指を添えると、ぐっぐっと、手際良く押し広げる。
「あっあっ、やぁんっ」
妖ノ宮の身が跳ねた。
潤滑油のぬめりを使い、男の太い指が尻の割れ目を往復する。
尻えくぼの凹みや足のつけ根を圧し、菊蕾に指先を当てて振動させると、いじらしい嬌声があがる。
法縁は、実に楽しそうに弾力ある双臀をこねくり回した。
「ほうれ、ほうれ! どうした、そんなに尻を振って」
卑猥な手つきから逃れようと、妖ノ宮はむっちりした小ぶりの尻山を持ち上げ、左右に捩じる。
それが意図せず挑発的な動きになってしまう。
「ぃや、だめ、ほうえん、法縁ったら! 妖怪髪なし。すけべな人は嫌い!
もうっ、……お、おしりやめてぇ……っ」
桃尻への執拗な責めは続いた。
何という尻への執念。
彼女の尻は法縁のお気に入りなのだ。 内腿の際どい箇所に触れられたとき、妖ノ宮はとうとう本音を漏らした。
「嫌なの。顔が、見えないままなのはいや……あなたの顔、見たい……だから」
「よしよし、では前もしてやろうな」
涙目になって請われた法縁は、嬉々として応じた。
彼の言葉を聞き、妖ノ宮は気だるげに上体を起こす。
そっと顔を寄せ、首に細腕を回し、口づけをせがむ仕草を見せる。
「法縁殿……」
「それはまた後で、な」
「…………」
制止された妖ノ宮は、何とも複雑な表情を浮かべるのだった。
少女の火照った肉体があおむけに横たわる。
すかさず、晒された下半身の茂みに保温用の手拭いが被せられた。
妖ノ宮は胸の前で両腕を交差させ、乳白色のなだらかな丘陵を抱き隠している。
「……どうせ、小さいと思ってるんでしょ」
目をそらし、脈絡なくつぶやく妖ノ宮。
「は、何のことだ?」
「大きくて綺麗な患者さんだったら嬉しいんでしょ、浮気者」
あどけない彼女は、まだ幼児体型の域を出ていない。
慎ましく控えめな膨らみである。
「待て、わしはまだ何も言っとらんぞ。浮気もしておらぬし。何故ならば命が惜しいからな。
それに患者のことは、骨と筋肉の集合体としか思っていない」
そして、患者は「カネを運んでくる物体」でしかない。
「言わなくても分かってるんだから……」
むくれる妖ノ宮。
法縁は、女性患者に平気でセクハラじみた施術をするため、浮気の心配がある。
黙ってさえいれば、彼は引目鉤鼻の純和風イケメン……
ハチマン一の男前である(と妖ノ宮は思っている)。
やきもちを妬くのも無理はない。
「ん。しかしまあ、おぬしが気に病んでいると申すのなら。
ヌフフフ、たっぷりと時間をかけて……わしが乳を大きくしてやろう」
ポキポキと得意げに指を鳴らす法縁。
「お願いします、法縁先生」
「よかろう、万事わしに任せておけ。おぬしの乳は責任を持って育てる。今夜は寝かさんぞ!」
彼は歯を出して力強く笑いかけた。 <四>A面
法縁は姿勢を正し、仰臥する妖ノ宮のあたま側に座り直した。
蛇を彷彿とさせる、切れ長の鋭い双眸が、彼女を逆さまに覗き込む。
……妖ノ宮は、自分がまるで俎上の魚にでもなったかのような錯覚に陥った。
生殺与奪の権を握られ、今から好き勝手に料理されようとしている。
三枚におろされるのかも知れない。
手の平に円滑油をまぶして補充し、作業に取りかかる法縁。
指先で、体側に深く重くらせんを描いてゆく。
心臓を目指し炙るように熱を送ってゆく。
「しかし、おぬし。よく喰う割に全く太らんな。面妖な。これもあやかしの血か?
育ち盛りだろうに、どこもかしこも、ちっこい」
按摩する手の流れを止めぬまま、そう述べる。
「……お黙り。ちっこいって言わないで。法縁なんてもう知らない。
仕返しに、髪が一生はえてこない呪詛をかけてやる!」
「ハッ、やれるもんならやってみれ。散髪代の節約になって調度いいわい」
「イーッだ!」
彼の憎まれ口に、妖ノ宮は歯を剥き出しにして威嚇した。
「何がイーッだ、だ。めんこいのう。これでも喰らえ」
彼女の額にぱちん、とデコピンをお見舞いする。
「いたっ」
その攻撃に妖ノ宮はますます膨れた。
「これ、その奇怪な顔は止めろ。せっかくの別嬪が台無しじゃぞ」
「ぷしゅう」
法縁は膨張した頬を親指と人さし指で挟んで潰し、強制的に空気を抜いた。
肉を掬いあげて放し、握って絞り、波立たせる。
圧を変化させながら、表皮に円運動を加える。
大きく揉んだり、小さく揉んだり――抑揚をつけ、筋肉のこわばりを取りのぞき、経絡を流す。
施術に集中している彼の表情は、職人のものだった。
凛々しくすらあった。
一方妖ノ宮は、焦燥感にかられていた。
閉じられた薄いまぶたが震えている。
血行の良くなった雪肌には赤みが増し、細かい汗に濡れた胸が、切なげに上下している。
いつまで経っても、法縁が核心に触れようとしないのだ。 幼い乳頭はすでに勃ちあがっていたが、時おり気紛れな指先が掠めていくのみで、もどかしい。
平らな腹の産毛を逆撫でる、遊ぶような指遣いに、焦れる。
催眠にかかったように朦朧とし、意識が落ちそうになると、たちまち性感によって掬い上げられ、
その度に入眠から引き戻される。
生かさず殺さずを保つ「蛇の生殺し状態」だった。
――もっと強い刺激が、決定的な刺激が欲しい。
妖ノ宮の眦から、恍惚の涙が一すじ伝った。
「……おねがい、意地悪しないで……はげてるくせに……」
「なんだ、泣くな。どうして欲しいのか言ってみろ」
落涙を爪の甲で拭いながら、なだめる法縁。
「口づけしてほしい……あと、その……す……」
「す?」
「……吸って」
「何を」
「胸、吸ってほしいの……」
「そうそう、そうやって素直に申せば良いのだ」
立場の優位を確かめて満足したのか、彼は恩着せがましく言った。
「よし、今おぬしの貧乳を――
ヌ、ヌファーッ!! お母ちゃぁぁぁぁん! コラッ、わしの頭を齧るなァーーッ!!」
なんと、屈み込んだ坊主頭に、妖ノ宮がガブリと噛みついた。
法縁が血のにじむ頭皮をさすると、小さな歯形が残っている。
「ヒギィ、は、歯形が、歯形が付いた! まったく凶暴なおなごじゃな。
もっと、優しくしてくれても良いのではないか!?」
「あなたが悪いのよ、貧乳って言うから。いい気味!」
煽り耐性の高い法縁も、頭を齧られてさすがに怒ったのか、妖ノ宮の希望に応えなかった。
代わりに下肢を覆う厚手の手拭いに腕を伸ばす。
「――さて! そろそろいくか。長らく待たせたな」
「えっ、そっちはしなくていい……」
最後の防具を引っぱられ、慌てて鼠径部を押さえる妖ノ宮。
しかし抵抗虚しく、あっけなく引き剥がされる。
「おや。この染みは何だ?」
「…………」
妖ノ宮は赤面し睫毛を伏せた。
彼女の尻の下には、淫水の染みが広がっていた。 法縁は骨盤を手の平で揺さぶり、熱と振動を深部まで――子宮まで響かせる。
女陰は、とっくに溶けそうな程ふやけていた。
さやに収まった肉豆は腫れ、固く芯を持っている。
彼は肉豆の根元をとんとんと軽く叩き、点圧して潰した。
また、蜜汁でぬめる会陰を点圧する。
「んっ、ぁんぅ……」
そうすると、妖ノ宮の中心に、甘く痺れるような腹圧がかかった。
「! ほうえん、まって。やめて」
妖ノ宮が唐突に、働く手を払いのけようとする。
「途中では止められぬなぁ」
しかし抗議は一蹴される。
彼女は法縁の下で必死にもがいた。
内腿同士をいらいらと擦り合わせている。
「か、厠にいきたいの……さっき飲んだお茶が……」
治療によって代謝が活性化し、先ほど摂取した薬湯が排出されようとしているのだ。
「ヌフフ、ならば此処ですればよい。わしの目の前で」
悪趣味な要求に唖然とする妖ノ宮。
「なに言ってるの……あ……出ちゃう、お小水が……嫌、いやぁ」
生臭坊主の陰湿な笑み。
「わしとおぬしの仲ではないか、今更恥ずかしがることも無かろう? ん?」
「見ないで。み、見ちゃだめ! おしっこ、みないで……おしっこするところ、みちゃだめぇ……」
羞恥と混乱によって、呂律がうまく回らない。
法縁は、五指でわざと彼女の下腹部を圧迫した。
外部から促され膀胱が決壊する。
「ぁあ、あーっ! おさないで……ミヤ、いっちゃう、みゃいっちゃ――」
きれいな放物線を描いて噴き出す、黄色い液体。
男に鑑賞されながら、はしたなくも大股開きで放尿する。
脆く儚げな肢体がわななき、脱力した。
……辺りには湯気が立ち昇る。
恥辱を与えた張本人は彼女に覆い被さり、嫌味ったらしく顔を寄せ、さらに追い打ちをかけた。
「ヌフハハハッ! こやつ、小便を引っかけよった! そんなに気持ち良かったか、この淫乱が」
「……ぐすっ、でちゃった……もうやだ、この男……」
彼女は己のみじめさに泣き濡れた。
これでは、神流河の王の威厳も何もあったものではない。
しかし、ほっと解放感もあった。 <五>(∪^ω^)わんわんお
――座敷中に、パシャパシャと水の爆ぜる音が響く。
たらいに張った湯で、法縁が両手を清めている音だ。
布団にくるまった妖ノ宮は、それを離れて聞いていた。
全身に塗り込められていた潤滑液は、蒸したおしぼりで丁寧に清拭され、
汚れた寝具は清潔な新品と交換されている。
商売道具の手入れが完了すると、法縁はニヤニヤしながら振り返った。
「何か言うことは?」
目が合った途端、妖ノ宮は慌てて顔を引っ込める。
頭から掛け布団を被り、彼の視線から隠れてしまう。
「ぅ〜っ」
恥ずかしそうな、くぐもった呻き。
「……私が悪いんじゃないもん」
「わしが悪いんでもないもん」
法縁が意地悪く茶化すと、妖ノ宮は貝のように押し黙り、布団から出てこなくなった。
「ミヤ」
法縁にしては珍しく、妖ノ宮の本名を呼ぶ。
……自分の男から本名で呼び掛けられてしまっては、さすがに無碍に出来ない。
ミヤ姫――妖ノ宮は、おずおずと顔を現わした。
赤く染まった鼻頭や、泣き腫らした目元がいとけない。
「機嫌を直せ。いい加減、出ておいで」
法縁は、様子をうかがう彼女から布団を力づくで引っぺがし、抱きすくめた。
すると妖ノ宮が、彼の白衣の衿にいきなり腕を突っ込んだ。
「法縁、法縁、こちょこちょ〜」
腋の下から腰にかけて、こちょこちょと肋骨をくすぐり始める。
「ヌファッ、ヌヒャヒャヒャヒャヒャ! こら、よせ! アヒャヒャヒャヒャ、やめんか! ヌフフフッ!」
「こちょこちょ〜、法縁、こちょこちょ〜」
キャッキャとじゃれつく妖ノ宮から逃れ、法縁が身を捩ると、ふたりは縺れて後ろに転倒した。
取っ組み合いになり、布団の上でごろごろと転がる。
はだけた着物の合わせから法縁の男体が覗く。
指圧師とは、足腰にひどく負担のかかる職業……強健な肉体でなければ続かない、重労働である。
加えて、彼はカネ儲けのためにハチマン中を東奔西走する、忙しい男。
チラつく胸筋や腹筋は健康的で逞しい。
――露出した男の外皮は、妖ノ宮に食欲を誘発した。
彼を経口摂取したい衝動にかられたが、今は抑える。
喰おうと思えば、いつでも喰えるのだ。 「ちゅっ」
どさくさに紛れ、妖ノ宮は相手の口を啄ばんだ。
不意をつかれた法縁が驚いた顔をすると、彼女はエヘヘ、とはにかんだ。
「ふむ。どうしたものかな……おぬしの所為で、こんなことに成ってしまったぞ」
こともなげに言うと白衣の裾をぺろんとめくり、欲情の証を見せつける。
「あなたの、おっきくなってる」
前を張らした下帯は先走りでぐっしょりと濡れ、中身が透けて見えている。
ずっと妻の艶容を眺め、辛抱していたのだから当然だ。
「責任を取って頂けますかな、妖ノ宮先生」
褌の隆起を指でスーッと逆撫でながら、声色を作る妖ノ宮。
「いいでしょう、今度は私が癒してあげましょう。ぬふふ」
「ン? 何だそれは。わしの真似か?」
「うん。あなたのマネ。ぬふ、ぬふふふ」
「…………」
一瞬、剣呑な表情になって口を噤むが、法縁はすぐに相好を崩した。
「ヌフフ」「ぬふふ」
互いに顔を見合わせ、ふたり仲良くヌフフ、とほくそ笑む。
そんな和やかな空気の中、急に妖ノ宮の語調が変わった。
法縁を睥睨しながら鋭く言い放つ。
「ところで法縁、私は誰ですか? あなたはさっきから誰と口をきいているの。
生意気よ。いつもみたいに、可愛くおねだりしなきゃダメ」
法縁は少しムッとするが、潔く観念した。
「……わん」
社会的地位も名誉もある男性が、何の迷いもなく犬の鳴き真似を始める。
「わん! わんわんっ! この法縁めは、貴女様のイヌでございます!
わんわんわん! (∪^ω^)わんわんお!」
「そんなに大きくして。ほんとにイヌみたい、あなたはイヌよ! イヌイヌ!」
「貴女様こそ、八蔓に降臨せし凄艶なる天女、妖ノ宮様。まさに火のオロチの化身!
神流河に咲き乱れし不滅花! 我が慈院の守護女神! カネの生る木……金の卵、
じゃなかった客寄せパンダ! いや、ええと列島の真の支配者、麗しき女帝!
わたくしめと婚姻して頂きたい位でございます! あ、もうしてるか」
「そうじゃないでしょう、法縁。聞こえないわ、もっと大きな声でいって! このろりこん」
ずっと年若の、十六歳の少女から命令される彼の姿は、無様だった。
法縁は妖ノ宮に逆らえないのだ。
「はい、喜んでー! 妖ノ宮様を嫁に頂き、身に余る僥倖! 恐悦至極! 妖ノ宮様バンザイ!
わしは八蔓一の果報者でございますーー!! どうぞ何なりと、お申し付け下さい」
とかなんとか胡散臭い慇懃無礼な台詞を吐きながら、彼は平身低頭する。 問いが核心に迫ってゆく。
「では、私とおカネと、どっちが大事なの?」
「無論カネだ!」
即答。
その刹那――空中に青い鬼火が生まれる。
色素の薄い、妖ノ宮のとび色の瞳が変化した。
瞳孔が縦に細く開き、化け猫のような黄金の虹彩に輝く。
同時に室内が鳴動する。
妖ノ宮から赤黒い燐光が立ち昇り、周囲に渦巻き妖気が充満した。
「あ、熱い! あちち」
法縁にも火の粉が降りかかる。
「違いました今のは間違いました! 誤解です!! ――嘘だ、悪かった。わしが悪かったから
妖術はよせ妖術は! 勿論、貴女様でございますよ。ひと目拝見したその時から、ずっと
お慕い申し上げておりました! あなた様だけに忠誠を誓っております!! 失言をお許し下さい」
全身に脂汗をにじませながら、法縁はただちに言い改めた。
「かっこいいから許す」
薄い皮の下に潜めていた毒婦の気性が、表出する。
「謝って、最後にハチマンの皆さんにあやまって! 私も一緒に謝るから」
「畏まりました! 八蔓の皆様、この度は私ども夫婦が圧政を敷き、搾取に次ぐ搾取を重ね、
誠に申し訳ございません!!!! しかしながら、このまま皆様方の尻の毛まで毟り取る
予定でございますので、そのつもりで宜しくお願い申し上げます!!」
「ククク……法縁、クックック……ハチマンのみなさん、ごめんなさい」
「……ったく。これで満足か。やれやれ、仕様のない奴じゃ。気が済んだのなら、はよう奉仕せい」
ご機嫌取りに必要な儀式は果たした、とばかりに、法縁はさっと手の平を返す。
妖ノ宮は脱力した。
何ごとか、わずかに思案する素振りを見せる妖ノ宮。
次の瞬間――妖ノ宮は猛烈な勢いで法縁に襲いかかった。
「法縁ンーーーーッッ!!」
主の叫びに応え、忠実に呼び返す法縁。
「妖ノ宮様ァアーーーーッ!!!!」
イエ゛アアアアア。
妖ノ宮と法縁は絡まり合い、布団に倒れ込んだ……。 <六>情交
時刻はすでに深更。
「変なにおい」
湯浴みを済ませていない男の股ぐらに顔を寄せ、妖ノ宮はくんくんと鼻を鳴らした。
紅葉のような愛くるしい手が褌を解けば、黒々とした陰毛と張りつめた肉茎が現れる。
彼女はさっそく魔羅に悪戯をし始めた。
「くすっ……へんなの」
いちいち弾む様子を面白がって、肉塊を人さし指でツンツンとつつく。
「……人の物で遊ぶでない。それはおぬしの玩具ではないのだぞ」
「なに言ってるのよ。これは私のよ」
「いや、まあ確かにおぬしの物でもあるが……」
気を遣って陰部を清拭しようとする男の手を、妖ノ宮は止めた。
「待って。そのままでいい」
妖ノ宮は糸を引く先端を頬張るために、「あーん」と口をいっぱいに開いた。
「入らない」
「あまり無理をするな。おぬしは口が小さい」
口に含むことを諦めた彼女は、茎に白魚の指を添え、外周を確かめながらゆっくり上下に擦り始めた。
同時に、体外に放り出された無防備な内臓――重たげにぶら下がるふぐりを優しく揉み転がした。
「ぬふぅ……」
浮いた血管を舌で巻き、鈴口をえぐると、妖ノ宮の頭上で吐息が聞こえる。
「……おぬしの口撫は指圧より気持ちいい……女人とは恐ろしいものよ」
吸茎に浸っているのか、あんなに饒舌だった法縁の口数が少なくなった。
今まで夫から指導されてきた通りの技巧を、しばらく続ける。
すると睾丸が根元に迫りあがり、それは吐精が近いことを知らせていた。
「まずい、離せ。おぬしの口が汚れる。ぬ、あぁっ……」
煮えたぎった子種が一気に男根を駆けあがる。
妖ノ宮は陰茎を吐き出すが、代わりに、噴出する白濁が顔にかかってしまった。
「すまん。大丈夫か、目に入らなかったか?」
「うん。だいじょうぶ」
焦り、乾いた手拭いで放たれた精液を優しく拭き取ってやる法縁。
それまで飄々としていた彼の表情が、女を渇望する男の表情になっていた。
「妖ノ宮、そろそろ我慢ならぬのだが……」
いまだ彼の硬度は保たれている。
「わかってる」
――妖ノ宮の内臓に入りたいのだと、理解する。
妖ノ宮が髪に挿していたかんざしを抜くと、黒絹がサラサラ肩に滑落した。
「法縁」
宙に舞い散る漆黒の光沢が、許しの合図だった。 二つの息づかいが混じり合い、夜気に溶ける。
長く濃厚な前戯を終え、ふたりは櫓がけの体位で交わっていた。
すでに互いに汗まみれだった。
――肌を重ねて密着すると、どうしようもなく愛おしさが込みあげる。
妖ノ宮は相手の口を吸い、尖った鷲鼻と耳を愛咬した。
彼のこめかみに光る汗を舐め、顎の輪郭を舌先で辿り、突き出した咽喉ぼとけに赤い舌を這わせる。
「また大きく……」
妖ノ宮の腹の中で、法縁がさらに反り返った。
坊主頭を抱きかかえ、せわしなく腰を振る。
「んっ、ぁ……はぁ、あなたが、好き……っ! 愛してる」
剥き出しの乳頭に吸いついていた法縁は面をあげ、妖ノ宮と目線を合わせた。
「もちろん、わしも愛しているよ――――カネの次にな!!」
拝金主義者に相応しい、いっそ清々しい程の返答。
「あっそ!」
妖ノ宮は彼を乱暴に押し倒し、時雨茶臼へと移行する。
「はぁ、はぁ……ヌフフ。そんなに締め付けて。妖ノ宮様は、本当に騎乗位がお好きですなあ!」
天に伸ばした両手で白い乳房を玩弄しながら、そう揶揄する。
「言っちゃだめぇ!」
照れ隠しに平手打ちを喰らわす妖ノ宮。
頬を張られた法縁は、仕返しに下から激しく突きあげた。
「……この、人を尻に敷きおって!」
「んっ、ん……あっ、あ、あぁん……っ」
若々しく丈夫な胸筋に手を置き、彼女は必死に縦揺れに耐える。
間もなく、情事の終息も見えてくるという頃。
「ぁあ! やぁ……また、またお小水が……」
「妖ノ宮よ、我が君」
尿意に身震いする彼女に向かって、法縁は神妙に願い出た。
「貴女様のご聖水、どうぞ、わたくしめの口にお出し下さい」
「……このオスイヌ」
高貴さすら帯びる声音で悪態をつくと、腰を浮かせて移動し、躊躇なく愛する男の顔面に座る。
顔面騎乗された法縁は、充血した陰唇をくわえ、音を立てながら愛液を味わった。
ふたりの間で、あたたかな聖水の授受が行われる。
「ごぼ、げほぉごぼっ」
下賜された黄金の水流が法縁の口から溢れ、呼吸を塞ぎ、次々と首筋にこぼれ落ちる。
「ありがとう、ございます。かはっ、た、大変おいしゅうございます……ぉごほっ」
彫りの深い精悍な面立ちをみっともないアヘ顔に歪め、彼は飲尿した。
そして射精した。 <七>睦言
法縁は情事の後の一服をしていた。
その表情にはさすがに疲労の色が見える。
……若い奥方を貰うと、いろいろ大変なのだ。
脇息に体重を預け、横にいる妖ノ宮の寝姿を見おろす。
「人の縁とは不思議なものだな。よもや、あの妖ノ宮と夫婦になろうとは」
紫煙をくゆらせ、遠い目をしながら独りごちる。
「まあ、おぬしは男の趣味が抜群によいから、仕方ないな。さすがは覇乱王のご長女」
誰に聞かせるでもなく、遠回しな自画自賛をする。
風邪をひかぬよう、布団を首元まで引きあげ掛け直してやると、ちょうど彼女が目を醒ました。
「明日もまた早い。今しばらく休んでおれ、ミヤ」
「……あなたは寝ないの? 一緒に寝よう。腕枕してくれると嬉しいな」
誘いには応じず、ただ曖昧に笑いかけ、法縁は黒糸の束をくしゃりと梳いた。
それから小気味よい音を立てながら、片手で煙草盆に灰を落とし込む。
その様子を目に入れた妖ノ宮は、好奇心にかられて手を伸ばした。
「ねぇねぇ。それ、どんな味がするの? 吸ってみたい」
「駄ぁ目だ、身体に悪い。子供が喫むものではない」
煙管を高く掲げられ、届かぬようにされてしまう。
「けちはげ」
小さく毒づく。
「ムッ、あのな、何度言ったら分かる。これは禿げではなく、剃髪と言うてだな……まあよい、覚えておれ。
そんなことより、今度二人きりで温泉にでも行って、ゆっくり子作りするか……」
楽しげな旅行計画を立てる彼に、そっとしな垂れかかる妖ノ宮。
「だったら、あなたを食べてみたい」
「……は?」
法縁は固まる。
「お友達の火炎車(かえんしゃ)さんがね、教えてくれたの。欲の皮がつっぱった人間は、
特別においしいんですって。そう、例えばあなたみたいに強欲な人は、
踊り食いしてもよいほどに絶品で、嚥下した後も身体によくなじむの」
物騒な固有名詞を耳にし、法縁は警戒するように目を細めた。
「ほう。一時期八蔓中を荒らし回っていた大妖が、確か火炎車とかいう名だったな?
最近はふっつり姿を消したと聞いているが……」
彼は探るような視線をむける。
「なるほど……つまりおぬしは、あやかし討伐組織“赤月”に身を置きながら、
天敵である大妖とも通じておったと言うわけか。ヌフフフ。本性を現わしよったな、女狐め。
で、そのお友達の火炎車さんとやらは、今どこにおる?」 妖ノ宮は腹をさすり禍々しく微笑んだ。
そして赤い舌をぺろりと出すと、舌舐めずりする。
「脂が乗っていておいしかった。てへぺろ」
予想通りの回答。
「それは妬けるな」
底冷えのする原始的な恐怖が、法縁にヒタヒタと忍び寄る。
「分かったぞ。ひょっとして、アレか。わしとの結婚は体目当てか。おっかない女が居たものじゃな」
――当たっている。
ある意味、肉体目的で正しい。
冗談めかして言うものの、彼は蒼白になっていた。
「全くおぬしには、騙されたわ。四天相克の折りは、てっきり
座敷牢で飼い殺しにされている仔猫かと思うて近付いてみたが……
ところがどっこい、腹をすかした猛虎が爪を研ぎながら待ち構えて居たのだからな。
おぬしの毒牙にかけられ、可哀想なわし様ちゃん!」
強気に皮肉ってから、彼は恐ろしい事実を確認しようとする。
「わ、わしを喰う気か?」
尋ねた相手は何も答えない。
「……構わんよ」
先に法縁が言葉を続ける。
「この魂、喰わせてやっても。おぬしになら」
想定外の一言に驚き、双瞳を見開く妖ノ宮。
「わしはな、おぬしに惚れとる。骨の髄まで。おぬしもわしにゾッコンなのであろう?」
それは強烈な愛の告白だった。
が、法縁はすぐにハッとし、急いで訂正する。
「……と、言うのはほんの冗談じゃ。今のは口が滑った。――そんな目でわしを見るな」
妖ノ宮は獲物を狙う狩人の顔つき……捕食者の眼光で法縁を見つめていた。
「饅頭でも喰うか? ほれ」
「うん。食べる」
まんじゅうをやるから喰わないでくれ、と言わんばかりの体で話題をそらす。
法縁が帰路で買ってきてくれた、お土産のおまんじゅうである。
さっそく渡された包みを解き、妖ノ宮は悪戯っぽく笑う。
「あーげない。ぜんぶ私の」
栗鼠のように頬袋を膨らませ、むしゃむしゃと夢中でむさぼる。
「ヌフフ、食い意地が張っておるのう。慌てるな、良く噛んで喰え」
彼はおもむろに頑丈な腕を差し出し、面倒臭そうに添い寝をした。
「喰い終わったら、さっさと寝ろ。ご所望通り腕枕をしてやる」
妖ノ宮は口元についたアンコを拭うと、素直に寝床に潜ったのだった。 <八>夢
法縁!法縁!法縁!法縁ンぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっアッー!あぁああああああ!!!
法縁法縁法縁んンぅううぁわぁああああ!!!髪がない☆
あぁクンカクンカ!金襴の袈裟クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!
お線香のいい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!法縁たんの禿げ頭をツルツル撫でたいお!ツルツル!あぁあ!!
間違えた!キュッキュと頭磨きしたいお!キュッキュ!キュッキュ!
禿げ禿げキュッキュ!ツルツルキュッキュ…きゅんきゅんきゅい!!
マジHAGE1000%☆ハチマン一禿げの似合う男!!
慈院焼却の法縁たんかわいかったよぅ!!お母ちゃぁぁぁぁん!
あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
異人追放令されて良かったね法縁たん!あぁあああああ!かわいい!法縁たん!
キモかわいい!あっああぁああ!(∪^ω^)わんわんお!!!
立ち絵もかっこい…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!そう言えば立ち絵なかったぁぁぁぁあああ!!!!
しかも顔グラ一個しかない!!!!あ…イベントスチルもよく考えたら…
法 縁 ち ゃ ん は スチルが一枚 し か な い?
にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
鶴田画伯の美人画みたいな顔してるよねっ!!攻略所要時間たったの30分!!!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!
ハッチマーン!!フッジサーン/^o^\意問山ァ!!ヌフフぅぅうあああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!四天相克なんかやめ…て…え!?
見…てる?白無垢スチルの法縁ちゃんが私を見てる?
パッケージ裏の法縁ちゃんが私を見てる!法縁ちゃんが私に話しかけてる!
夢路派の法縁ちゃんがカネを無心してる!!
法縁ちゃんが私に暖かいご支援を要求してる!!!貴様にやるカネなどない!!
よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!自害しない私!
いやっほぉおおおおおおお!!!私には法縁ちゃんがいる!!
やったよ伽藍!!ひとりでできるもん!!!
あ、コミック版の法縁ちゃああああああああああああああん!!
あ!コミック版には出番ないんだった!!!テヘッペロペロ!
いやぁあああああああああああああああ!!!!あっあんああっああんあ御影様ぁあ!!
エ、エクレール!!有為吟帝ぃいいいいいい!!!輝治ぅううう!!
ヌフフフううっうぅうう!!私の想いよ法縁へ届け!!余酪の法縁へ届け! <九>終幕
気持ち良さそうに大イビキをかく法縁。
腕枕をしていたはずが、いつの間にか、彼の方が妖ノ宮の胸に潜り込んでいる。
「……ヌフ、ヌフフフ……おカネ様……むにゃむにゃ……」
おカネの夢を見ているのだろう、幸せそうな寝言である。
妖ノ宮は吹き出した。
「ふふっ……愛い奴め」
おカネと固く契りを結んでいる、残念なイケメン。
彼の人生の真の伴侶は、おカネ様なのだ。
つるりと剃りあげた坊主頭の丸みを撫で回すと、先ほど妖ノ宮が作った歯形が、今も残っている。
「頭つるつる〜はげはげ☆」
法縁の頭部は、妖ノ宮のお気に入り。
数ある男の髪型の中でも、一番かっこいい髪型はツルッパゲである。ね☆
――何の悩みごともなさそうな寝顔を眺めていると、深い愛情が湧くと同時に、猛烈な食欲も覚える。
妖ノ宮の眼前に出現した男達の中で、一番おいしそうだった男が法縁だ。
彼はあやかしにとって、とびっきりのご馳走……しかも毒入りのご馳走である。
邪悪な魂の中で燃え盛る欲望の炎が、あやしの血を騒がせる。
妖ノ宮は、まつりごとの世界に生きてきた娘。
邪魔な政敵を妖術で祟り殺す、焼き殺す、喰い殺し吸収するなどと言うことは、日常茶飯事だった。
ときに、親しい友人や血を分けた兄弟までも手にかけた。
法縁も同じようなものだ。
悪意にまみれた過酷な人間関係を処理し、仲間を利用しまた利用され、蹴落とし、
踏みにじってでものし上がる。
この激動の時代、彼ほど強く悪く明るい男でなければ、生きてはゆけない。
しかもこの男は、罪悪感と言うものを一切持たぬ根っからの悪党である。
彼のような白アリ系男子を王配に選んだ妖ノ宮は、きっと為政者として失格、不正解。
自分の民の慟哭が、今も痛いほど耳に聞こえているというのに。
悪妻は百年の不作、されど悪夫は千年の飢饉。
男の破壊力と、恋に狂った女人の破壊力は、それほど凄まじいのだ。
恐らく法縁などは、ハチマンの表舞台から消えるのが正史だったはず。
それが、偉大なる八龍のご意思だっただろう。
しかし妖ノ宮が延命し、歴史を歪めてしまった。
ならば彼の生命に、彼女が最後まで責任を持たなければならない。 妖ノ宮と法縁は一蓮托生の共犯者。
ふたりの行く末には、間違いなく破滅が待っている。
こんな悪辣で危うい生き様をしていては、長生きなど出来ない。
土に還らず幽冥に落ちる。
あるいは――調停から人類の敵と見なされ、宇宙の理にのっとり、全ては人の子らの未来のために
粛清されるかも知れない。
それでも妖ノ宮は、法縁と共に生きたいと思っている。
そして、いつか彼を「真なる座所」に招きたい。
ただし、あくまで両者合意のうえに行われなければならない。
そう、彼が「妖ノ宮の血肉の一部に、養分になりたい」と意思表示したとき。
互いが一つに溶け合うときなのだ。
翌朝。
外で雀がチュンチュンと囀っている。
「ふぁぁ……」
起床した妖ノ宮の視界に、金と紫の色彩、金襴の袈裟と紫の僧衣が現れた。
それは、朝の身支度をしている夫の後ろ姿だった。
手拭いを使いキュッキュと頭磨きしている。
妖ノ宮は背後からそろそろとにじり寄り、首に飛びついて元気に挨拶する。
「おはよう。法縁殿」
「……おぉっと。ヌ、脅かすな。心の臓が止まるかと思ったぞ。おはよう、妖ノ宮」
背中にまろやかな胸を押しつけられ、法縁は満更でもないようだった。
まあ、ただのちっぱいだが。
一緒に朝餉の膳をつつくふたり。
ヌフフ、と微笑みながら、法縁は妖ノ宮に語りかけた。
「妖ノ宮。我々は今以上に、もっと儲けねばならん。おぬしにも贅沢させてやりたいし、
これから生まれて来るであろう子供の為にもな」
妖ノ宮もいつものように笑い返す。
「そうね。じゃあ、私は法縁のことを全力で守る」
――八蔓という名の島に、神流河という国があり、妖ノ宮と呼ばれる姫がいた。
彼女の傍らには、いつも僧形の指圧師が寄り添っていたという。
ふたりという災いに内側からじわじわと破壊され、あらゆる不正義が横行し、国は荒廃した。
崩壊する世界の中で、妖ノ宮と法縁がどうなったのか。
それは後世に伝わってはいない。
――――終 劇――――
ヌフフ 以上。
元ネタは、政治的な駆け引きを行いながら、自分の派閥を形成し
だいたい1年間をかけてヒロインの婿を探す姫ゲー。
婿候補は、あらゆる属性から厳選された20名近くのイケメン達。
下は16歳から、上は300歳まで幅ひろい年代の男が揃っている。
青い肌の半魚人、銀色の狼男、40代のベテラン忍者、狐耳の陰陽師……と、よりどりみどり。
最終的に選択した婿によって、ヒロインの人生と国の歴史が変化する。
多数いる婿候補の中でも、ひときわ異様な空気を放っているのが今回の法縁。
ゲーム中では、とっ捕まえて牢屋にぶち込むことも、妖術を使ってサクッと喰うことも出来る。
じっとりと暗い雰囲気のオカルトめいた作品ですが、良ゲーだと思います。 『開拓王と戦姫』
そのラブストーリーは、国の民に留まらず他国の者さえもが憧れるものだった。
男たちはこぞって仕官したり畑仕事に精を出すようになり、女たちはそんな男への憧憬を胸に、男たちをサポートするようになっていた。
意図せぬ場所で世界が回るなか、開拓王セフィラスは、頭を抱えていた。
その理由とは―――
「御父様♪」
甘えた声で抱きついてくる、美少女姫―――シャルラーノ。通称シャル。
この娘、セフィラスが大地の精霊シャルティーノと性交した時にシャルティーノが孕んだ娘である。
正妻たるラヴィリスとの間には、未だに子はおらぬのに、シャルティーノは既に二人目の子を孕んでいる――それはどうでもいい。
シャルは精霊の血を受け継いでいるからか、齢10にして世界でも有数の美女となり、育っている。
それだけならまだしも、シャルティーノがセフィラスと性交している時に興味本意で乱入、セフィラスの制止も聞かずに処女を散らしたほどのファザコンである。
その件について、ラヴィリスは笑いながら許してくれたし、シャルティーノは母娘でセフィラスに孕まされることを期待し、喜んでいた。
まさに四面楚歌である。
「御父様?お悩みですの?」
「シャル、僕はね、シャルとは結婚出来ないんだよ」
「解っていますわ、御父様」
「そうか、解ってくれるか、シャル」
「ですが、結婚などするつもりはありませんわ。私はお母様と共に、御父様に愛されていれば幸せですもの」
「わかってない!何一つ解ってない!」
「妻でなくとも、妾でなくとも、御父様の精を身に受け、子を成し、未来を紡ぎたいのです」
「駄目だ、ラヴィリスとシャルティーノの二人以外を孕ませるなど、出来ん!」
「・・・・・・・」
「あ・・・・・」
「御父様は、シャルがお嫌いですか?」
「シャルの事は、嫌いではないよ。愛しているとも。娘として、だが」
「それならば、娘の幸福を考えて下さいまし・・・そこいらの在り来たりな男性などでは、ダメなのです。私は、御父様以外を愛するなど出来ません・・」
「シャル・・・」
「愛してくださいまし、このはしたなくも淫乱で変態の我が身を、御父様の色に染め上げ、性欲処理の道具にしてくださいまし・・・♪」
シャルがドレスを肌蹴させると、母親譲りの巨乳やら絞まった腰、ムチムチの太ももや尻が露になる。
据え膳を前にして食わぬわけにはいかぬ――葛藤と共に、セフィラスはシャルを抱いたのだった どうでもいいけど、40ぐらいの将軍が、他国を攻め滅ぼす時に美しい姫を見つけて保護、親の真似事をしながらも自分好みに姫を調教とかありそうだよね 保守ついでに小ネタ投下
「妾は公国の正統な後継者、エストティータなるぞ!
店主よ、妾はこのぺろぺろきゃんでーを所望するぞ」
「おや…可愛いお嬢ちゃん…だねぇ」
老婆がよっこいしょと腰を上げ、瓶に詰めてある棒付き飴を手に取った。
「苦しゅうない、価格を申してみよ」
「え…ああ……えーと…」
「あーっ!見つけましたよ、姫様!ダメじゃないですかぁ!御一人で出歩いては!」
駄菓子屋の入り口で女従者が声をあげた。 「……………………」
護衛兼教育係のクーリガンがこめかみに手を当てながら公女の後ろを歩く。
「ん?どうした、リーガ…妾に何か言いたげだな?申してみよ」
「は、はぁ…姫様…平穏な世とはいえ――」
「図が高い!控えろ!控えろォ!妾を見ろすなー!」
悲しいかな王女の身長は140p、対する従者は180pはある。
じたばたじたばたと暴れる公女。
「要するに、姫様どうぞ♪」
もう一人の従者、ティニーファが王女をひょいと抱え、
クーリガンが膝をついてようやく目線が合う。
「ふん、苦しゅうない。申してみよ」
「平穏な世をはいえ、多くの庶民が往来する街中でペロペロキャンディーを
1つ購入するのに大声で名乗らないでくださいませんか?」
「『往来』とはなんぞ?」
「……………………」
従者はしばらく沈黙した。
「姫様、要するに往来とは『オールライト』の略でして、
『承知、よろしい』という意味です」
「なんだ。そういう意味か、民が承知しておるのだ。よいことではないか。
フフフ、フハハハハハッ!アーハッハッハ!」
「そうですよね。キャハハハ、ハーハッハッハ!」
高らかに笑う公女と侍女。
「………意味が違いますから、いいかげんなことを教えないでくださいティニー」
「大丈夫ですよ。公国随一の騎士様が付いているですから。100人くらいで
囲まれても、5分くらいで殺れますよね?」
ニッコリと公女御付の侍女がぶっそうなことを言った。
「会話の意味がつながっていませんし無茶を言わないでください」
長身の騎士はげんなりと言った。
ここは大陸南西部に位置する公国だ。数十年前に大陸全土を巻き込んだ大戦が
勃発したが、公国は大陸から海を隔てた位置にあり、戦略的に価値がなかった為
戦火に巻き込まれることはなかった。そう、公国は島国であり、交易がなくとも自給自足
の国であり、陽気な気風が漂う国なのである。
続かない >>234
3年越しの完成を見られるとは
GJであります >>195
遅まきながらGJ!
文体も世界観も本当に好みだ
続き楽しみにしてる >>234
実は元スレで超待ってた!
たまたま巡回した先で見たのは驚いたがw
髪がない☆で噴いた
ルイズコピペで初めて不意をつかれたわ
相変わらず面白かったです、読ませてくれてありがとう! >>234
まさか妖ノ宮ネタが読めるとは!!
シュールなのにおもろいしラブいしでなんか萌えました。GJ!!!
なんか久しぶりにプレイしたくなってきたわ。あれ外道プレイが楽しいんだよな 旧倉庫見れない?と思って来てみたら、そうかみんな見れてなかったか
見れなくなったね
他の過去ログを探して何とか見てるけど、
名作揃いだからMOTTAINAI! 割と最近ここに来たため、まだ読んでないとか途中とかのがあって
かなり残念
なんとかWikiの方に移動するとかできないかな・・・ とりあえずここで見える
http://wayback.archive.org/web/*/http://vs8.f-t-s.com/~pinkprincess/princess/index.html web archive のを一枚にしたもの
復帰までのつなぎにど〜ぞ
ttp://file2.rdy.jp/cache/ >>252-253
ありがとう!!
諦めてたアグレイアに会えた嬉しい お姫様が身分を隠してエロい服を着るのと、
Hで呪われた服を無理矢理着せられるorつい着てしまうのと、
どっちがエロいと思う? >>258
前者はイケナイことを少しずつ大きなものへ進めるドキドキ感(/型)
後者は被虐を姫の都合良くかつ綱渡りにどれくらい使えるか(√型)
と仮定して
短編読み切りなら最初から飛ばせる後者、中編以上なら前者のほうがエロいな
姫属性って基本清楚系だから、姫も読者もどれだけ昂ぶった状態を維持できるかだと思う このスレお姫さまなら割と縛りなしでなんでもありだったのか…
現代もので異世界お姫さまが、とかでもいいのか知らん? ディズニー映画の『魔法にかけられて』みたいなかんじか キャラサロンでのまとも意見
642 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2012/09/15(土) 23:50:40.65 ID:???
◆EqHQZWqzBが書くと情熱によって絶対荒れるのが分かっているからな
あとSSの内容も手伝って評判は良くない
643 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2012/09/17(月) 08:27:50.76 ID:???
◆EqHQZWqzBは実際情熱だろ
デカ尻に擬音多用
尻描写への以上なこだわり…
644 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2012/09/17(月) 13:29:58.72 ID:???
>>643
つまり叩きから何まで情熱の自演か……
645 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2012/09/17(月) 19:10:58.42 ID:???
>>644
おそらくはな
まあ情熱ならやりかねない
みんなの嫌われ者◆EqHQZWqzB
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=1206516
※情熱の作品を読む前にこの批評を読んで、中立的な視点をもっておくこと!!
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1314119998/217
俺の新作にも10点よろ
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=30208377
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=30268120
<情熱の演じる女キャラの簡単な特徴>
・ケツがでかい
・頭が悪い
・芋臭い
・平気で寝落ちすっぽかしをかます
・やたらと【】で注文つける
・特に文章量にはうるさい
・感謝や謝罪といった感情が根本的に欠落している
・長文
・尻コキ
・盗撮
・痴漢
・擬音でたぷたぷとかぷるぷるとか
・ケツの感触や匂いを果物に例えて
・奇形サイズまで肥大化
・幼児パンツ
・相手はキモオタ
・ケツ文字を書く
・【お尻の匂いをかいでどんな匂いだったか果物にたとえて教えてくれませんか?】
・【もっと長文を希望します】
・【お尻の感触を食べ物にたとえてほしいです】
【あと擬音もふんだんに使ってほしかったり……】
ここらへんは特に重要だから覚えておくように!
<情熱の特徴>
・長文傾向(短文は嫌いな様子)
・とにかく要求が多い(一度言うことを聞くと際限なく)
・名無しの時は初心者を狙って強引な尻コキ(尻コキ出来れば誰でもおk)
・ネカマの時は気に食わないとすぐ落ちる(ゆえに反感を買う)
・オリキャラ、キャラサロン、雛雛、ピンクの難民、ピンクのなんでもなどを股にかける(凄まじい尻への執念)
・その際いずれも待機ageスレを用いる(スレをそのままageることもしばしば)
・使用キャラやスレが多すぎて本人も把握し切れていない(たまに混乱している様子)
・特徴的な文章の癖がある(書くとバレるのでこれは伏せておく)
・たまに発狂する(順や男児がいい例)
・とにかく尻コキに拘る(挿入やアナルには興味なし)
・キモオタに盗撮&痴漢されるのが好き(自己投影?)
・擬音要求(これぞ情熱ならでは)
・尻の感触や匂いを果物に例えたがる(凡人には理解不能)
・小さい尻も肥大化させたがる(ただし最近は叩かれるので控えめ)
・幼児パンツ大好き(やたらと下着に注文をつける)
・体は成熟しているが精神は幼いキャラを好む(この傾向は非常に顕著)
・尻文字をかいたり尻を地震のように揺らしたり(もはやギャグの領域)
489 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2012/05/08(火) 15:19:53.59 ID:???
エロパロで尻コキSS書いてるのは別人だろ
493 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2012/05/08(火) 17:43:42.66 ID:???
>>489
文章が違うだけで別人と判断するのは短絡過ぎる
情熱はただ荒らすために邪神SSコピペするようなやつだぞ
あの尻コキSSだって、作るのに手間かからんだろう
普通の人間なら、そんなつまらない事に時間を使うなんて考えられないだろうが
情熱は暇をもてあましているキチガイだぞ?
哀れ情熱wwwwww 情熱がこのスレで行った悪行
スレの要領も考えずにSS投下、挙句スレがいっぱいに
勝手に新スレを立てて続きを投下
まさに邪神 どこかにお姫様落ちてないかな…
魔界お姫さまとか異星お姫さまとかとボーイミーツガール >>281
なんか今週のジャンプに載ってた読みきり「恋愛銀河区石川荘」がそんなかんじだった
異星の第一皇女で難民となった民を救うためレトロなロボット乗って地球侵略しながら
正体を隠してボロアパートに臣下と共に住み、隣の男の子が気になるが放課後は
侵略作戦のため暇がなく…なラブコメで、姫様可愛かった 褐色銀髪で頭脳明晰だけど世間知らずな姫という電波を受信 褐色娘とかまじ大好物よ
アラビアンナイトなお姫様とか書いてみたくはある 「婚約者、ですか」
未だ15歳の姫は、母の言葉を鸚鵡返しに返し、首を傾げた。
見目麗しく、肉体は青さと共に大人に匹敵する成長を見せる姫だが、天然気味でボケッとしているのが欠点の娘である。
「そうよ。貴女ももう15。伴侶を選ぶぐらいは出来るでしょう」
「伴侶?なら、サスケがいいわ」
姫の言葉に、母は幾らか驚き――しかし娘には悟られぬよう、解ったわと頷いた。
サスケとは、姫と仲の良い近衛兵の一人である。
眉目秀麗とは言えぬ、むしろ平均よりは下の男だが、どういうことか人に好かれる才能があった。
何事にも真剣で思いやりがある点は、人としての美点に相応しい。
サスケが近衛兵になったのは、かつて誘拐された姫を助けたのが家もない浮浪していた頃のサスケであり、その恩義に応えた国王の取り計らいである。
「サスケ?彼は三十路過ぎ、貴女は未だ二十歳に満たぬ若さよ?その美貌ならば騎士団の英雄でもすぐに虜になるわ」
「でも、それはサスケではないのでしょう?」
娘の言葉に、母は唸る。
昔からそうだ、この娘はサスケが大好きで仕方がないのだ。
何故かと問えば、決まってこう答える。
『サスケは温かく、優しく、大きいから』と。
数年前に王が亡くなり、王妃が一人で娘を育てていたが、それにも限度がある。
そんな時、姫は決まってサスケと一緒にいた。
「解ったわ、サスケね」
「お母様も、一度サスケと仲良くしてみて?サスケは悪人ではないもの、お母様のことも気にしていたわ」
娘の言葉を背に、王妃はサスケに与えられた部屋に向かう。
サスケが悪人でないなど先刻承知の話である。
ただ、王妃は嫉妬しているのだ。
サスケに抱かれるのが自分でなく、娘になるということが。 おいどうしたいつまで全裸待機させる気だ風邪ひくじゃねーかGJ続き求む 王女が賊に拐われる。
その報が王と王妃の耳に入ったのは、冬にしては暖かな日の昼下がりだったか。
王と王妃の焦燥と困惑は、見ているほうが痛ましくなるほどだったが、程なくして王女が城に帰ってきたことで、事態は然程大きくもならずに収束を迎えた。
王女は一人の騎士――漆黒の鎧を纏う、無口な騎士に連れられて戻ってきた。
その異形に王たちは彼に警戒心を抱いたが、王女が漆黒の騎士に助けられたと訴えかけ、その疑いは容易く晴れた。
王国の冒険者たちは、悉くが冒険者のためのギルドに加入している。
負傷した時の保険やクエストの斡旋、仲間の収集など、ギルドの与える恩恵は限りなく大きい。
しかし、そこに求められるのは少なからぬ社交性。
漆黒の騎士には、その社交性が致命的に欠けていた。
それゆえ、やることは単独独断での討伐や救出などばかりだった。
しかし、王女を救出した騎士に与えられたのは、ギルドで百度依頼を達成したとて届かぬほどの資産と豪邸、そして王女直属の護衛騎士という、とんでもない立場だった。
そして、今は――
「私はディランが好きなの。解る?」
「解りますとも。解りますから、そんな大声を出さないで戴きたい。国王に聞こえてみなさい、俺の首が飛びますから」
「あら?知らなかったの?」
事件から十年弱。
愛らしかった王女は女神か天使かと敬われるほどに美しく育ち、漆黒の騎士は純銀の鎧に身を包んでいた。
しかし、そこで出てきたのは王女の婚姻での問題である。
美しく聡明な王女を我が妻にと、国内のみならず国外の貴族が日々王宮に詰め寄せては、騎士に門前払いを食らっている。
「お父様も言ってたわ、ディランのような武と知の何れも優れる貴族ならば、私の婿に相応しいのに、って」
「国王何いってんだ!」
「それともディランは私が嫌い?」
「嫌いじゃないですけど!むしろ家事万能で美人の幼妻とか最高ですけど!」
王女の部屋で、騎士は王女に押し倒され、馬乗りにされていた。
確かにこの王女の好意に、騎士は少し程度ながら気付いていた。
が、そこにあるのは、長らく彼女を守る騎士への憧れ――憧憬であると、思っていたのに。
「私はいいわ、助けられてから、ディラン以外を好きになった覚えはないもの」
「っ!?」
「王女でなくてもいい……一人の女として、私を愛して?」
騎士の顔に、王女の涙の雫が零れる。
長年見守った少女の決意を感じとり、騎士は王女を抱き締めた。 「ようこそいらっしゃった、異世界の勇者よ!」
「勇者じゃないんですが」
「ははは、そう謙遜しなさんな!」
がはははは!と豪快に笑う王を見ながら、憮然としているであろう自分の顔を思い浮かべる。
異世界からの召喚とやらに巻き込まれて、なんてネトゲやエロゲやラノベみたいな状況になった俺は、昨日からこの王に何度イラついたことか。
しかも世界を救う冒険やらならまだしも、世継ぎを作るための種馬である。
正直ナメてんじゃねぇよと言いたい。
「あの、勇者様」
「勇者じゃねぇっすよ」
「……旦那様」
「結婚してねぇよ!」
イライラする俺の隣には、この国の一粒種、褐色の肌に白銀の髪、ぷるんと揺れる美乳が愛らしいお姫様がいる。
「私のこと、お嫌いですか?」
「好きも嫌いもねぇよ。ロクにあんたのことも知らねぇのに、早々決められるか」
「マリィはいい娘だぞ!勇者どのの妻にぴったりだ!」
「勇者じゃねぇっつってんだよ!」 インスピレーションを受けて、
初めてSSを執筆中なんだが、
まだプロットの三分の二しか終わってないのにもう6000文字弱…
いささか書きすぎなんじゃないだろうかと不安だよorz >>296です
女王×部下ものです
・SS初投稿なので大目に見てください
・極微エロ
・主人公が超ヘタレ
だけどおk?
若い男女の声が聞こえる。
「や、やめてくれよ、こんなのおかしいっ!
大体、お前はこの国を守るという責務が‥‥」
「いや。決めたから、今日はあなたのものだから、私は。」
そう言って服を脱ぐ女、彼女の服は色使いこそ地味だが気品のあるメイド服である。
「おお俺とおまえの関係はあくまでも部下と上司であああああって!?そんなっ‥‥関係には‥‥」
どうやら下着類を身に着けずにメイド服を着ていたようで、いきなり全裸になってしまった彼女を見て完全に動揺してしまっている男を尻目に、女は凛とした姿で腰に手を当て立っている。
女はスレンダーでモデル体型、という表現がぴったりな体格をしている。
手足は長く、腰はくびれていて美しい。
しかし、よく見ると細いながらもその体の中に秘めた筋力を感じさせる引き締まった体であることもわかる。
髪はまるで夜の闇で色を付けたように黒く、腰にまで届きそうな長いポニーテールにしている。
大きな瞳は髪と比べるとやや薄いが同系統の色合いの黒で、意志の強い彼女の性格がうかがえるきりっとした印象を持たせる。
体つきのほぼすべてが素晴らしい次元でまとまっていながら、それでいて人間離れした印象を持たせず、神々しさと庶民的な雰囲気を持ち合わせている。
ちなみに胸はどうかというと‥‥残念なことになっている。
「いけないんだ!俺は確かに、お前に心から忠誠を誓っている!なんだってお前のためなら全力を尽くす‥‥だけど、こんなことは俺にはできない!」
「ふふ‥‥でも、私の仕事だから、これがね。」
男の払おうとした手を避けて女は彼の肩をつかみ、押し出すように突き出し、背後のベッドに倒れこませる。
「ぐっ‥それは間違い!なんだっつ----むぐっ!?」
抗議の声を封じるように女は男の体に跳びかかり、彼を押し倒すと同時に彼の唇を奪った-----
「うわああああああああっ!?
う‥‥あ‥?夢‥‥かよ‥‥よかった‥。」
飛び起きた彼が頭の中を整理し終わるのと、声を聞いて部下が駆け付けたのはほぼ同時だった。
「ありえねぇ‥俺と、あいつが関係を持とうとする夢を初夢に見るなんて‥‥っ!
なんであんな夢を見るかよ‥あいつに顔を合わせるのがつらいな‥ハァ‥‥。」
独り言をつぶやく彼はさる国の若き将軍で、国王とは知己の関係の側近中の側近である。
「失礼します。将軍、陛下の演説の時間が迫っています。支度を急いでください。」
彼は初夢の何とも言えないもやもやした感覚を引きずりつつ着替えをしている。
彼が夢の中で危うく襲われそうになった相手だが、名前をナターシャと言い、彼の幼馴染で彼の主君、
つまり、この国を治める女王その人なのである。
彼の一族は王家に代々使えている大臣の家柄の一つで、王家に忠誠を誓っているという事情もあり、彼としてはすさまじく彼女を見るのが気まずく、できれば一日くらいは会いたくもないというのが本音ではある。
「おっと、悪かった。全速力で用意してすぐに向かうからそっちは警備とかを頼むよ。」
「了解です。将軍の全速力に期待しますね。」
だが、現実はそんなことは許されず、彼は他の大臣たちと女王の年初めの演説に出席せねばならず、
多くの国民の前で演説をする彼女を見て気まずい思いと闘い続けなければならないのである。
「(‥‥気が重い、重すぎる。まぁ、俺に演説の出番がないだけマシかもしれないがな‥)」
そうは思っていてもいざ国民の前に立つと思うと、なるべくそちらに集中するしかなくなってくる。
彼が控え室で毅然とした表情をしていると、「しけた顔してるね。どしたの?」と目の前を通った人影から声をかけられた。
一応、将軍という地位にいる彼にこのようなフォーマルな場でくだけた話し方をする人物はかなり限定されている。
それに、常に倒置で会話する口調は先ほど夢の中で聞いたばかりである。
「1年に一度のことで緊張してるんだよ、察してくれよ、ナターシャ。
というか、主役なんだから逆にそっちはもっと緊張してくれよ。
部下の気が緩むかもしれないだろうが‥‥あぁ!?」
振り向いた彼を漫画で表現するなら眼球が飛び出す描写がされているだろう。
彼女、女王ナターシャは夢に出てきたあのメイド服を着て、同じく夢に出てきた腰に手を当てた立ち姿で彼の後ろに立っていたのだから。 題名忘れてた、
「初めの朝は」
目の前を通られたときは集中している最中で上の空だったので気づけなかったが、こうも凝視するとどうしても気づいてしまう。そういうわけで動揺で彼の寿命はマッハである。
「えっ、えええ?どうしたんだよその恰好は?」
「うん。一応、この国の女王って言っても、この国に使える一人の人間にすぎない、私は。って、言いたくて、だからちょっと借りてみたんだ、城の侍女のものを。」
「‥‥まあお前らしいっていえば十分お前らしいかな。でもびっくりだ、確かにこれは国民に対する宣伝効果は大きいな。よく考えたな。えらいえらい。」
「‥ありがとう。君たちに褒められると嬉しいよ。私には特別な言葉だから。」
まだ演説は終えてないので髪型を崩さないようにそっとやさしく彼に頭を撫でられ、少し得意げな彼女のドヤ顔にも見える表情は彼には非常に愛らしく見えた。
「いい感触だったと思う、去年よりは。そうだ‥教えてよ、あなたの感想を。せっかくだから。」
「ん、いいと思うぜ?それこそ即位してから最高だったと思う。(正直、目のやりどころに困ったわ‥‥)」
平常心で接せるだけまだ慣れてマシになってはいるが、それでも気恥ずかしさで顔を見ることができない。
まるで背後霊でも見ているように彼女の」肩の後ろに視線を合わせている。
「そうだ、お前のことだから、きっとその恰好で城の掃除とかするつもりなんだろう?」
「うん、そうそう。」
彼女には厄介な趣味‥のようなものがある。
公務のほぼない日や空き時間のある日は市民の生活ぶりを知る、という名目で様々な職業を一日体験する。
彼女が小さいころから城の侍女に混じって真似事をしているのを見ている彼にとっては彼女が市民の生活を気にするのは見慣れたものだが、
即位してすぐは思い付きで動いているようにも見える彼女の行動力に皆悩まされたものであった。
「(たしか、ナターシャみたいなヤツをコスプレイヤーって呼ぶって騎士団長が言ってたっけか‥‥)」
「ん?なぁに?似合ってないかな、もしかして‥」
「い、いやいやいや!似合ってるぜ!そんなこと考えてるんじゃないんだ、すまないな。」
「そう、ごめんね、杞憂だったわね。
この後メイド長に手伝えることがないか聞いてくるけど、そっちも言ってよね、私に用があれば。」
「え、そうだなぁ‥昼休みの後の演習を視察してくれたらうれしいぜ。士気の向上につながるしな。
でも、あんまり自由にするのもほどほどにな。
なんつってもお前がこの国で一番偉いってことを失念するなよ‥‥俺が言えた義理じゃないが。」
「了解。だから視察の件は任しといてね、承ったから。」
じゃあね。と、手をひらひらと振りながら元気に歩いていく彼女の姿は実にかわいらしい。
だが、メイド服に身を包み、長いポニーテールを振りながら立ち去っていく彼女の本当の姿は、
この国で誰よりも強く、気高く、勇敢にして聡明な王族の当主なのである。
そして、彼女がこのような茶目っ気を見せたり、弱みを見せたりするのは、彼女が子供のときから付き合いのある一部の人間と、城を職場とする人間の数名だけなのである。
「(‥俺の一族は、お前の先祖に拾われて、側近に任命されて今につながる。
お前の笑顔は、この国は、俺が‥‥いや、俺たちが、絶対に守ってやるから、安心してお前はお前のままでいてくれよな。)」
角を曲がり去っていく黒髪の影が見えなくなる刹那、そう心の中でつぶやき、
彼は振り返り控え室へ着替えに向かった。 何かおかしなところがあれば、遠慮なく突っ込んでくださいね。
「おお、騎士団長。」
「なんだ、遅かったじゃないか将軍。
まぁちょうどいいや、俺はもうそろそろ用は済むから交代だな。」
そういって控え室から退席した彼は騎士団長。
少々性格にムラのある人物だが、なかなかの好漢である。
なかなかに豪快な人物のため、騎士というより冒険者や戦士のような印象のある人物ではあるが、
それでも彼の人をまとめ上げる素質は本物で、警察業務を完全に統御し切れている。
そんな彼も女王や将軍とは同年代の幼馴染。彼女を守る重臣の一人である。
「しかし、姫さんの演説、立派になったもんだ。
俺らがガキん頃の姫さんとは全く変わっちまったなぁ。」
「そりゃそうだろ。あいつはお転婆だけど昔っから冴えてるヤツだったじゃないか。」
「いや、そうなんだけどな‥‥
昔はな、俺はあの姫さんが王様で大丈夫かなーこの国。とか思ってたんだよ。
それが立派に、あんな演説までそつなくこなせるんだからなぁー‥‥」
しみじみとした口調で話す騎士団長。
潤んだ瞳と遠くを見つめる視線により彼にとって彼女が大切な存在だということが丸わかりである。
「お前‥‥まさかとは思うが、ナターシャに惚れたか?」
「あっハハハ‥‥そうかもな、
でもだとしたらそれはお前も同じじゃねぇの?
なんかお前、あいつのことを話してるとき、鼻の下が長いんだよなぁー?」
それを聞いた将軍はというと、割と薄い目を見開き、頬と耳を真っ赤にしている。
「は?‥‥はぁ!?わけのわからんことはよしてくれ、俺は部下であいつは上司。それが全てだってよぉ‥!」
「あははははは!図星か?それとも今気づいたってか?
あーおかしい‥‥ま、ならより一層姫さんのために励まなくちゃな。
姫さん、根を詰めてばっかりみたいだしなぁ。
公務は姫さんがやるしかないが、他のことはなるべく手伝ってやらないと‥で、その姫さんは何やってんだ?」
「いつもの真似事だ。今はメイド長のところにいるぜ。」
「そうか‥あ、付きあわせて悪かったな。じゃあ俺はここでな。じゃあな。」
「ん、そうだ、今度一杯やらないか?新年のお祭り騒ぎに乗っかろうぜ?」
「それ、いいな。考えとくよ。」
そう言うとそそくさと騎士団長は出て行った。
「(あいつ、ナターシャに会いに行ったのか?絶対あいつ茶化すんだろうなぁ‥‥)」
一抹の不安を感じる将軍であったが、彼らとは長い付き合いからの経験から、大したことはないと、
気にせず着替えを続行した。 微エロシーンその2
今考えると、冗長だな‥‥
「‥‥俺で本当にいいのかよ?ナターシャさぁ‥‥?
お前には騎士団長が‥‥」
「いいんだ。今夜はだめだ、あなたじゃなきゃ。
それに、いつも駄目って絶対言う、あなたは。
じゃ、いつやるか‥今でしょ!」
「う‥。お前、何ちゅうことを言うんだよ‥‥」
いきなりのキスで動揺に動揺した彼の心に、艶のある声が染み渡る。
ここまでに起こったことが整理できず混乱している彼の隙を見計らって、上に跨った女王は服を素早くも丁寧にはぎ取っていく。
「やめてくれ‥」と蚊が鳴くような声で抗議する彼ではあったが、ベッドについた手を足で押さえられてしまい、彼女を制止することはできないでいる。
彼が動揺しているのは彼女の行動によるものだけではない。
小さい頃から彼女たちとは共に過ごしてきた彼にとっては、彼女がこのような行為に誘ってくること自体が彼が思う彼女の像から離れたことであり、
彼は想定外の事態が次々と起こる彼女の新たな一面を見て圧倒されているのである。
「ふふ、逞しいわね‥あなたの腹筋は相変わらず割れていて。」
つーっと腹部をなぞる彼女の指に驚き、くすぐられたときに出るような素っ頓狂な声が出てしまう。
「見事ね、きれいな三角になってるわよ、下着が。」
「え?どういうこと‥うわぁ。」
パンツ一丁という格好まで脱がされた彼の股間は彼の拒絶の態度とは異なり、見事にテントを張ってこれから起こるであろう行為への期待を示してしまっている。
それもそのはず彼女の成熟した姿は特別なものであり、ましてやその裸など、彼にとっては視覚から伝わる媚薬のごとく彼を熱くさせてくれるのだ‥
なお、彼は大人の女性の裸体を見たことはこれが初めてである-つまり、彼は童貞である-。
「任せて、よね‥ふふ、」
「いや、それでも‥お前が乗り気でも、俺には‥今更だけど‥ごめん。」
「‥‥いくじなしだね。」
これには若干彼女も煮え切らない態度にイラついてきているが、
彼にとっては幼馴染とはいえ国王と行為を行うなどまったくもって畏れ多く、
また彼自身自分は彼女の相手が務まる人物、ゆくゆくは彼女の夫となる人物たる器ではないという思いもあり、最後の一線を越えさせないでいるのだ。
さらにもう一つ、いや、これは彼にとって最も重要な事項であるが、
彼は自分と彼女との種族の違いを気にしていた。
彼の耳は頭頂部まで伸びている。彼はエルフであった。
ただでさえ貞操を大事にする彼ら一族の習わしによりみだらな行為を行うなど恥ずかしいという思いもあったし、彼個人としても代々人間の女性によって統治されてきたこの国の系譜に、人外の自分が書き記されることがあってはならないという負い目ともいえる感情があったのだ。
「あなたも私も責任は重いよ、多くの部下をまとめる長、だから。
なのに、そんなに弱々しい態度をするあなたには‥
根性を叩き直さなきゃいけないわね、おしおきをして。」
そう言うと彼女は、先ほど彼の上に位置どってからずっと浮かせていた腰を彼の頑丈そうな胴体につけ、上下に動かしつつ徐々に下腹部へと擦っていく。
「う‥な、にを?」
彼が腹部を触られるのが苦手なのはすでに彼女は知っている。
ぞわっとするくすぐられたときに感じる独特な気持ち悪さに身もだえしていると、不意に「ねぇ‥見てよ、ここ」と言われた。
彼がくすぐったさから閉じていた目を開けると、彼女は彼の胴体の一番下、彼の愚息に跨り、体をそらせ、互いの性の象徴が彼に見えるような体勢をとっていた。
「素直に、もっとお互いが気持ちいいと思えるようにしようと思ってたけど、変えるわ、方針を。
あなたは楽しむんだ、私のココで。
全力を出して吹き飛ばすから、今感じてる罪悪感なら。」
そう言い終わるとほぼ同時に彼の愚息を片手で掴み、
彼女の茂みの元へと導く-----
「うわああああああああっ!?
‥‥‥‥あぁ?‥よかったー‥、夢だったか‥‥。」
「どうしたんだ?悪夢なんて珍しいな、あなたにしては。」
飛び起きた彼の目の前にはただ、心配そうな目で見つめてくる主君が写っていた。 しばらくつなぎの部分になります。
「アイエエエエ!ナターシャ!?ナターシャナンデ!?」
「あなた、昼過ぎまで寝てるつもりだったでしょう?今日が祝日だから。
起こそうと思って来たのよ、掃除の時に近くに来たから。」
「そうか‥って、まだ侍女ごっこしているつもりなのか?」
「ごっこって何よ、一応家事くらいの雑用なら完璧にできるのよ?私は。」
「いや、それくらい知ってるよ‥小さい頃からお前よく雑用の手伝いをしてたの、俺見てるし。」
「じゃあ、考えてから話しなさいよ、それを考慮して!
むぅ、ちょっとムカッとした。仕事に戻るから、私。じゃあね。」
頭の中が整理し切れていない彼を機嫌が悪いと誤解したのだろう。
彼女は近くに立てかけたモップを手に取り、彼の部屋を足早に出て行った。
先ほどのナターシャの言った通り、今日は休みである。
この国には祝日が少なく、代わりに一度休みとなると必ずと言っていいほど連休となるくらい集中している。
年始もそれに漏れず、国王の演説から3日間、ほぼ全ての国民が休みを取るようになっている。
この間は兵は親元に帰り、軍や騎士団は完全に停止する。
危なっかしい慣習ではあるが、地理的に周りの国から攻めづらいこの国は3日間くらいなら外敵に備えるのを怠っても一応は平気であるし、
賊徒もこの期間中はお祭り騒ぎをしているので、街を襲うことはない。
そのため、城に部屋を持つ重臣たちは暇を持て余しがちになる。
そういう事情で彼は怠惰を貪ろうと企んではいたが、昨日の悪夢の続きを見てしまうという最悪な経験をしてしまったため、完全に眼が冴えてしまっていた。
「(‥顔でも洗いに行こう。ついでに、メイド長に頼んでなんかすぐに用意できるものでも作ってもらおう…うん、そうするか。)」
彼の薄い目が寝起きのためあまり開いていなく、はたから見たら寝ぼけているか立ったまま寝ているように見える状態で今できることを考え、行動する。
「よお‥‥珍しいな、今日みたいな日にいつも通りの時間に起きるなんて‥。」
「そっくりその台詞を返すぜ‥‥昨日、『明日は昼にブランチ。朝飯を食うくらいなら寝てる方がいい。』といったのはどいつだ?」
「まぁなぁ‥」
メイド長を探しに向かった食堂には騎士団長がいた。
だが、彼の様子は少しだけおかしかった。
彼は夜型の人間だが朝にも強い。むしろ、起きてすぐと寝る少し前が一番テンションが高いくらいだ。
しかし、今の彼は徹夜明けのように精根尽き果てたような表情をしているうえ、
彼の特徴的な猫のようなピンと立った耳の先が少しだけ垂れてしまっている。
幼馴染としての勘で感じた、これは何かあったと。
「朝っぱらからいざこざでも起こしたか?
どうせ近衛兵長かナターシャにでもなんか変なことを言ったんだろう?
あいつら、全く冗談が通じないからなぁ‥‥」
軽い気持ちでからかった将軍であったが、それに対して騎士団長は、一瞬身を震わせてから、少しだけうつむいた。
「多分、多分だが‥明日、お前もこんな感じだと思うぞ。
きっと‥いや、俺にとって驚きだっただけなんだ。忘れろ。」
そう言って置かれていた焼き魚に手を付けだした騎士団長。
なんだよ。途中でやめるなよ。などと言って問い詰めたが、全然何を言おうとしたのか彼は言うことはなかった。
「まったく、気持ち悪いな‥気になってくるじゃないか‥‥」
ぶつぶつと文句を言いながら誰か文句に付き合ってくれる人はいないかと庭園に足を運んだのと、少し離れたところにいたナターシャが彼の足音に気づいて近寄ったのはほぼ同時刻だった。 ほのぼの路線でしばらく進みます。
どうしたの?と声をかける彼女の声に何でもないよと軽くあしらい進んでいった彼だが、ふと思うところがあり、振り返る。
本来、彼女はあまり朝に強くはない。
大体起きてから活動を開始するまで30分はかかる。
しかし彼女は起床時間が同じ自分の自室に上がりこみ、起こしに来ていた。
しかも、その前から掃除の仕事をしていたと話す。
それに、化粧のりが最近悪い、とこぼしていた顔はなぜかすっぴんのままである。
「今度は何の仕事だ?」
「侍女は庭師としての仕事もこなすって、言ってたから、近衛兵長が。」
剣術に精通している彼女には、なぜか剪定のための枝切りバサミもさまになる。
メイド服をきちんと着こなしていることも相まってその道の職人にも見えてくるから不思議だ。
「あ‥そう。頑張れよな。」
「まぁ、頑張ってるけどね、今まさに。」
そう言って空をハサミで切って見せる彼女、ハサミで切るときの金属が擦れる音はひどく冷たく感じる。
「それもそうだな。じゃあ、より一層頑張ってくれよな。」
そう言って奥に進んだ彼は、ぶらぶら歩いて行ってたどり着いた迷路庭園の中で、
迷って半べそ状態の近衛兵長を救出し、愚痴に付き合わせたのだった。 彼は強烈な朴念仁設定だったりします。
「(目が回る‥‥確、実、に飲みすぎた…)」
頭を抱えて自室に戻る最中の将軍。
この日は夕方から城で新年会が催され、国の権力者や地方自治隊の長、国の援助を受けている学者などが集まっていた。
国が主催する会とはいえ、小国であるうえに参加者は毎年ほぼ同じのため、会はとても家庭的で、
どちらかというと組合の会合や親族の寄合を彷彿とさせる和気あいあいな雰囲気で、
彼はその場の勢いで酒の早飲み勝負に興じ、通常の3倍のスピードで飲み食いしてしまって顔を真っ赤にし、耳を角に例えられ赤鬼などとからかわれたりされていた。
もちろんそんなことをすれば体に負担はかかり、現在の彼の辛そうな状態につながっているのである。
「あーあー、何してるの?また飲みすぎたの?
ダメだって、無理して飲んだら。
何度も言ったと思うけど?あなたは内臓が強くないんだから‥」
手洗い場から戻ろうとしていたナターシャが彼を見つけ、駆け寄る。
「すまない‥はは、さっきメイド長が飲みすぎて俺が介抱したばっかりなのに、今度はお前に俺が介抱されるのか。
これはとんだ無礼講だな‥‥うげぇ‥」
「もう、ぶつくさ喋るからそうなるんだよ、ただでさえ気持ち悪そうなのに、黙ってても。
それに、今は私はまだ侍女の仕事をしてるんだから。」
「う‥そうだな、悪いが、肩、貸してくれ。
とりあえず部屋で休む。」
「分かった。みんなには伝えとくから、もう寝るって。
ゆっくり休みなよ、だから。」
ふらつきながらもなんとか部屋まで戻り、彼は彼女へ精いっぱいの笑顔をする。
「ありがとな。一時はまずいかとも思ったが朝まで寝たら何とかなりそうだよ。
お前がそばにいてくれたおかげかもな。」
「そうかな?明日のために休んでよ、まぁとりあえずさ。」
お前のおかげ。という言葉を聞いて気恥ずかしくなったのか、彼女は酒が回って桜色になった顔をさらに赤くし、それだけ言うとそそくさと彼の部屋から出て行った。
割と長めのスカートから中のチュチュが見える程の速さで走る足音が遠くなっていく。
新年会の会場とは逆へ音が去っていくが、これはおそらく一度部屋に帰ったに違いない。
「やれやれ、よーやく部屋だ。
あっ、朝のこともあるし、なんか不気味だから鍵はかけておこう。」
そう言って部屋に鍵はかけたが、酔いと気持ち悪さから他のことには大して頭も回らず、歯を磨くのも忘れて彼はベッドに飛び込んだ。
「(あいつの髪‥いい匂いだったな。俺も同じ石鹸を使おうかな…?)」
前の二日とは違い、彼は夢は見なかった、もしかしたら見ていたかもしれないが、
あんなこともあれば、たとえ二日間の悪夢が同時に襲い掛かったとしても覚えてはいないだろう。 スレチな気がしてきた。
「うん‥ん?あれ、なんか違和感があるような‥‥」
「んん、んっふ‥‥‥んは。ふあ、起きたみたいだね。」
彼が目を覚ますと、彼の下半身にかかっているはずの掛布団が手前に折りたたまれ、視界には天井とたたまれた羽根布団。
他に見えるのは質素な装飾ながらも大きな照明と、揺れる特徴的な髪の束。
「な、お前‥ナターシャ?そこで、何を?どうやって、ここに?」
声と髪型で特定されてしまった彼女は、どうやら彼の敷布団をまくり上げてその中をまさぐるようなしぐさをしている。
先日の悪夢の続きかと一瞬疑ったが、この肌の感覚、彼の将としての感覚が、これが現実であると伝えてくれた。
それに、彼女に起きぬけに出会うのは昨日経験したばかりで慣れもある。
しかし、彼には納得いかない、この状況がどこか現実味を帯びてないように感じさせたことがあった。
「なぜ!?鍵はかけたはずだぞ!?お前、一体!?」
上体を起こして腕で体を支え、足元に膝立ちになっている彼女を見すえて尋ねる。
昨日彼が自室に戻ってからできたことは、部屋にかけたこと、それだけであるのでよく覚えている。
その証拠に今の彼の状態は髪はくしゃくしゃで、会に出るということで用意したくだけた服はしわだらけになっており、
ズボンに至っては足元まですり落ちている。
しかし、何かがおかしい。
「え‥‥お前、なん、な、にを?」
どうやら、起きてすぐから感じている違和感はこれらしい。
彼の下半身ははだけているというどころの話ではなくなっていた。
股間は完全に露出しており、下着すらはぎ取られている。
それだけではない、普段は下着の中でこじんまりとしている彼の愚息が何やらぬらぬらとした液体につつまれ、赤身がかってその存在を主張している。
「どゆこと?なんで俺こんなことに?」
先ほどから語尾が上がりに上がっている彼とは対照的に、彼女はというとあっけらかんとして彼の疑問を聞いている。
下半身を完全に露出してしまっている彼の陰部に正対したメイド服姿の彼女は、目をうっとりさせて彼の瞳を見つめる。
まるで主人との夜伽を始めようとするようにも見える彼女の醸し出している空気は、色欲の瘴気を纏っているようにも感じさせる色気がある。
しかし、性に関しては疎い彼はその仕草を無視して彼女を問い詰めることを続けている。
生来の彼の生真面目さが出ているともいえるが、その裏でこの状況から想定できる展開を考えることから逃げているとも見える。
「とりあえず整理させてくれよ、ちょっと理解が追い付かねぇ。」
彼女の目を見られない。
いつも見ている彼女なのに、いつも見かけている服を着ているのに、
いつもの自室なのに、今このときは全てが彼の混乱を助長する気がした。
「いいの、理解しないで。
今は任せてくれればいいから、私に。」
何のことだ。と尋ねる声を彼女は気にしない。 これはひどい。
「んふぅ‥‥あなたのココ、なかなかで、感心したんだよ?」
そう言うと彼女は指で彼の分身をつまんですぐ離したり、指ではじいたりつついたりし始めた。
そのたびにしびれるような感覚が彼の神経に叩き込まれる。
「な、な、なぁ!?」
「よかった、寝てるうちからやっておいて。
出来上がっちゃったみたいだね、すっかり。
ふふ‥楽しくなったよ、少し。」
急に細かく震える彼の分身を握りしめ、指を踊らせるようにして揉みしだき、
直後にあふれてきた透明な液体をすくい取り、全体に塗りたくる彼女の白魚のように美しい指。
国内最高の剣士である彼女らしい力強い愛撫はまるで聖剣を握りしめて眼前の彼と闘っているような激しさを持つ。
短めに切りそろえられた爪が、細長い指の腹が、手のひらが、彼の急所に触れるたびにうめくような声が出てしまう。
「気持ちいいでしょ。どう?」
「あ、ああ‥‥」
悪夢のときと同様、彼は彼女とこのような関係になるのを望んでいないので、できればこの責め手から逃れたいのだが、
彼女の手による刺激で体がこわばり、ベッドについた両腕を離せないでいた。
「さて、それじゃあ‥‥始めさせてもらうわね、お仕事の本番。」
侍女の姿をした気高き女王は、にやりと一瞬表情を変え、彼の股へと顔を潜り込ませ、彼の分身の先端と口づけをいくつも重ねた。
「どんどん出るわね、溢れそうだわ、このままじゃ‥どうしようか?」
首を傾げて尋ねる彼女だが、強い刺激を味わった彼は息が荒く、上を向いたまま答えない。
そもそも彼はこのような行為の最中に出る質問の答えなど考えたくもない。
「それじゃあ私が考えちゃうよ?返事がないなら。
あ、これはどうだろうね。」
彼女は急に口を開け、口づけを交わしたその先端を一気に口に含み、指で揉みつつ吸い上げようとしてみせた。
「あっあっ!?くっぁ‥!」
先ほどまでの責めですら、体の自由がきかないほどに高まってしまった彼の体が、さらに一気に駆け上がっていく。
「‥っ!出ちまう!離れてくれっ!お前を汚したく、な‥あっ‥‥!」
「‥‥‥やだねっ♪」
彼の必死の懇願に彼女は一瞬顔を離そうとしたが、不意に一気に顔を戻し、彼に止めを指すべく口内に半分ほどを含んだ。
「あぁっ、あっ‥‥ああ‥‥(終わった‥かも、しれない‥)」
「んっんんんーーーっ♪」
天にも昇る感覚と男としての悦びに、諦めや後悔、懺悔の念は押し流され。彼は意識を手放すことを無意識に選んだ---- これで終了。閲覧サンクス
「で、質問の時間だ。
まず一つ、なんでお前はここに入って来れた?」
「前に、城下町で有名な義賊と会ったことがあったわよね、私一人で。
その時に鍵開けの技術を、ちょっと‥‥」
「‥‥(あの時もっと真剣に止めればよかったな。)
次、何故お前がこんなことをするんだ?
侍女の仕事の中には、こんなことは決してないぞっ!」
「え‥‥?だって、騎士団長が
『皆の慰み者になるのも仕事のうち』だと‥‥‥?」
唖然とする彼だが、無理もない、これは彼自身がよく知っているが、昔から彼女には一切の冗談が通じないのだ。
とにかく、これで後で痛い目に遭わせる人物は特定できた。
「なんでそんなことを真に受けるんだよ‥馬鹿じゃん‥
それに、なんかあの時楽しそうじゃなかったか?お前‥」
「えへへ、初めは騎士団長の相手をしたんだけど、実は。で、楽しくなっちゃって、その時に。」
「‥‥‥‥(え?もしかして昨日あいつが言わなかったことって、これ?)」
「それで、あなたともやってみたくなったけど、どうせ意地でもやってくれないでしょう?ウブだからね、あなたは。
だから、酔っぱらった今なら大丈夫だと思って‥」
「‥‥あぅ。」
「ちょっと!?ああっ、起きて〜っ!」
幼なじみは大変な性癖を開拓してしまいました。
その衝撃に、若き将軍は意識を闇に投じてしまったのだった。
もしかしたらあの悪夢は正夢になるかもしれない、意識の片隅でそう思い胸を膨らませようとする邪念を感じながら、意識を失う寸前に目に入ったのは、彼女の膨らみのない胸だった。 指摘ありがとうございますっ今後も精進します。
ネタが浮かんだら続編を作ろうとも思ってますがどうでしょう? もっとまとめて投下した方が
間隔が10分20分空くのはいかんよ >>310
書きながら投稿してたので…後半は睡魔との戦いでした(汗
今後は間隔を狭くしますね
>>311
ありがとうございます。でもそれは文章構成に難アリ、ということでしょうね
ちなみに、エロい初夢が正夢になる、という電波を元にこの作品を作りましたです >>312
書きながら、じゃなくて書き上げてからまとめて投下するもんだ >>312
最低限この板にあるSS書き手控え室スレの過去ログでも見て
掲示板の投下作法くらいは押さえた方がいいぞ
次のSS投下待ってる 面白かったが、毎レスごとに作者がコメントいれられると萎える
そういうのは名前欄でやってくれ 頑張るから待ってくれ、今論文で忙しい、
…百合と普通ならどっちがイイと思います? 論文を書くつもりがSSを書いていた。何を言ってるk(ry
「うん、不審物は見つからないな。おい、そっちはどうだ?」
「探知魔法の結果は異状なし、君はどう思う?」
「別に変なにおいもしないし、毒物はないと思うべ。」
1月1日、新年を迎えるこの日はこの国ではとても大切な意味を持っている。
この国の君主である女王が演説を行うからである。
しかし、この国の慣習として新年は親元に帰り家族で過ごすというのが当たり前で、
そのため軍や騎士団の活動は停止してしまっている。
なので、演説が行われる会場の安全を確認し、女王を警護する役割を任せられる人物は非常に限られている。
「よし、じゃあ俺はここで警備を続けるけど、いったん解散ということでよろしくなぁ。」
そう言い会場の見回りを続ける彼はそのうちの一人で、名前をリバイブルと言う。
彼は城内の自室で警察業務を取り仕切る騎士団長だ。
「了解した。通信用のマジックアイテムは携帯しておくので、何かあれば連絡を。」
「解散かいさーん!じゃあちょっとおかしでも食べに行ってくるべ。」
「そーいえば将軍は来なかったなぁ‥‥まったく、平和ボケしやがって‥‥!」
彼は同僚の将軍が手伝いに来なかったことが気に入らないらしく、長細い彼の尻尾を床に叩きつけている。
今日の演説には彼女の命を危険にさらすリスクが少なからずはある。
いざ演説を行う最中はもとより、こうして開始前から警戒を怠らないことが重要なのに彼は何をやっているのか。
「精が出るってところかな、騎士団長。」
イライラのために毛が逆立つ彼の前に現れたのは、彼の主君である女王、ナターシャだ。
多民族国家のこの国では珍しいほぼ純粋な人間である彼女は、獣人である彼とは違い儚い美しさを持っている。
しかし、そんな見た目と違い性格は活発で、実にボーイッシュである。
「姫さん‥精なんてでねぇよ、退屈だ。大体、この広場を俺ら三人で異常がないか確認するってのは厳しいぜ、これが。」
「ごくろうさま。ホントはやってもらうつもりだったんだけど‥メイド長と将軍にもね。」
「なんだぁ、将軍のやつ仕事をすっぽかしたのかと思ったけど違うのか?」
「なんでも、少しそっとしておいてほしいんだって、ひどい悪夢を見たから。」
「ちっ、やっぱりズル休みってことじゃねぇか‥
あぁ、あんまりここにいてもアレだぞ。俺と話してるより、お前は自分の演説の練習でもしてろって。」
「それもそうだね、じゃあ、またね。」
散歩がてら朝の挨拶に来た彼女は帰り、後に残されたのは騎士団長。
なぜか彼の鼻息は少し荒くなっている。
それもそのはず獣人という種族に生まれた彼には発情期と言える期間があり、定期的に性欲が高まってしまう。
さらに、女王は彼の幼馴染であり、彼が思いを寄せている人物である。
そのため今の会話ですっかり興奮してしまい、彼の股間は服の上からでもわかるほどに張りつめている。
「あーあ、何とかして今姫さんとどうにかならないものかねぇ‥‥
まぁ、いずれはできることはできるんだがなぁ‥」
実はいずれ女王と彼が結婚することが決まっている。
この国の王族は代々もっとも年の近い重臣の家系の者と結婚するしきたりになっていて、
一月しか年に差のない二人は、いわば許婚の関係にあるのだ。
「(一度でいいから今、姫さんと‥ああ頭の中エロいことしか考えられねぇ‥しゃあない、今日のうちに一回抜いとくか‥)」
「団長さん、開場するけど大丈夫べか?」
「(!? あぁ、近衛兵長かびっくりしたなぁもう!)‥わかった、観客の誘導は頼むぞ。」
「任せといて下さい!」
と言いつつフンスと鼻を鳴らして駆け出した少女がしばらくして、
おそらく城の門に尾を挟んだのであろう、豪快な悲鳴を上げたのが聞こえ、彼はいろいろな不満を溜め息にして吐き出した。 「‥‥‥というわけでありまして、このたびはわれらが女王、ナターシャ様の演説を行うことになった。
では、女王様、こちらへ‥‥」
騎士団長は先ほどの見回りの前にいやというほど顔を見ている大臣の堅苦しい前置きにあくびが出そうになっていたが、
次の瞬間、彼はその眼を見開いた。
「‥新年おめでとう、市民のみんな。
この格好は、私もこの国に使える一個人であるという決意の表れと思ってもらっていい。」
壇上に登場した彼女はなんとメイド服に身を包んでいた。
一瞬完全にあっけにとられていた彼だが、なるほど職業体験を趣味とする彼女のやりそうなことだと、
そう思ってしばらく考え込んだのちに、
「これだな!」と下種な笑みを浮かべながら小さくつぶやいた。
儀礼用の正装を脱ぎ、着替えを済ませて将軍から聞き出した場所へと足を運ぶ。目的地はメイド長と女王のいる食堂だ。
女王はメイド服を着る侍女としてふさわしい仕事をしに行ったという。
後ろから将軍がまだ何か話しかけてきているようだが、振り返って適当に返事だけして無視することとする。
「あ、騎士団長‥女王様を冷やかしに来たのでしょうか?女王様に悪戯をしたらどうなるかはご存知ですよね?」
「当たってるけどその言い方はないだろうがおい。」
言葉にトゲがあるメイド長の発言もとりあえず放っておく。
「(メイド長にとって姫さんは妹みたいなものだもんなぁ‥)」
「そうそう、弟さんたちが用があるそうですよ。早めに話をしてあげてくださいね。」
「あいつらが?」
あいつら、というのは彼の二人の弟で、異母兄弟の関係にあたる。
それを示すように、次男は昆虫、三男は軟体動物を思わせる特徴を持つ亜人である。
二人とも実家で彼の帰宅を待っているとばかり思っていたので、彼は疑問に思った。
「用ってなんか言ってたか?」
「いいえ、お二人ともあんまり喋る方でもないですからね‥」
「誰の話?ねぇ。」
しめた、無駄話のおかげで目標を視界に捕捉だぜ。
「いや、大した話でもないから気にすんな。
それよりも‥ちょっと伝えとく必要のあることがあってなぁ‥姫さん、話聞いてくれないかい?」
「ん‥わかった。了解よ。」
「あまりお時間を取らせないようにお願いしますね。女王様には軍の視察をするお仕事があるそうなので。」
「あー、何、すぐに終わるから。」
「えええっ!?知らないわ、そ、そんなこと。」
「そう言われてもだなぁ‥もしかしたらと思って言っておいて正解だったな。ははは!」
「でも、経験なんてないけど、いいの?」
「いいんだよ。お前が誠心誠意『仕事』してくれれば俺だって満足だしよぉ。」
この国には奴隷階級は存在しない。
彼はそれを逆手に取り、侍女としての仕事には性奴隷として重臣たちの夜のお供をすると大ウソを吹き込んだのだ。
いわゆるセクハラを趣味とする彼らしい行動であり、人を疑うことを知らない彼女のことをよく理解した上での行動でもある。
「‥わかった。何をすればいいのかな、私は。」
「変に気張らなくたって大丈夫だぜ。俺に任せれば素直にお互いが気持ちいいと思えるようにしようと思ってるから。」
何が大丈夫よ、と彼女がつぶやいたようだが彼は無視することにする。後は流れに任せてしまえばどうにかなるのだから。 「おお〜いらっしゃい!えっと‥リライブさんでしたっけ?」
「それはウチの弟だぜ。俺は虫人じゃないだろ。」
「ええ〜っ。あっ、ダスティスリィさんですね?」
「それもウチの弟‥‥‥いいかげんさぁ、俺ら兄弟しか注文をしに来ないんだから覚えろよなぁ?
俺は猫人のリバイブルだ。頼むよクシー大博士さんよぉ。」
「いや〜ホントごめんねあはは。」
彼女—パッと見では性別が分からないほどに汚らしい恰好をしているが—は国が誇るお抱え発明家で、
名前はクシーという。
城の近くの研究所で魔力で作動するマジックアイテムを取り扱い、医者としても活動する稀有な学者だ。
「それで、今日はどんなネタを持ち込みなのかな?あ、理由とかはいいよ、そんなの気にしないし。」
「そうだな、さっそく商談としようかなぁ。」
「‥‥‥‥な、る、ほ、どぉ〜っ!その発想はなかったよ!
あ、でも大丈夫!実現するのは理論的には簡単だから、夕方にはできるよ!紅茶でも出すから待っててよ!」
「うん。そうか、今日中で助かったぜ。‥って、すごい色の茶だな。なんなんだこれは?」
「これ?自分で品種改良したやつで、病気の予防になる効能を増やしてみたんだけど、どう?」
「‥まず自分で飲んでから人に出せよな。」
こんな調子なので、彼女と普通に関われる人数は限られている。
「おまたせね!これが完成品と注文の品ね!壊れにくくできてるけど、なんかあったらすぐ持ってきてね〜」
「ありがとうな。あ、今日はいくら出せばいい?」
「いやいや〜今日は祝日ですから趣味でやってるようなもんですよ。
お代は素敵なアイデアを持ち込んでくれたということで手をうっちゃいます!」
「気前いいじゃないかぁ?いったいどうしたんだ?」
「へへ、実は新しく見つかった遺跡に古代の兵器があるんじゃないかという話を聞いて〜
このウキウキを誰かと共有できただけでもうれしくて〜っ!」
「へぇ、じゃあ調査の時にはウチの弟たちを使ってやってくれな。それじゃあ。」
「はい!いつでも注文待ってますから〜!」
「‥‥あー、ほんとにいい発想だよ。相手の魔力を使って動くマジックアイテム。
はっ!こ、これは、お師匠を見返すチャンスじゃないだろうか。ふふふ‥」
城の自室に帰った彼がまず行ったのは彼女、クシーから受け取った荷物の確認である。
まず袋から取り出されたのは、ハリのある素材でできた中空の張り子のようなもの
次に、気味の悪いまんまるな固体が入った瓶詰めの液体
最後に、中ほどで二つに割れているよく磨かれた金属でできた首輪
「えーっと、たしか鍵がついてて‥あった。」
首輪には窪みがあり、付けた後は彼が手にした鍵を差し込んで外すようだ。
彼女の配慮か、鍵には首から下げられるくらいの長い紐がついているので、彼はさっそく首にかけてみた。
「‥ん!ちゃんと希望通りの機能があるみたいだな‥感心感心。
おっと、夕飯の時間だな。どうせやることもないし、さっさと行ってさっさと帰ってこようかねぇ。」
そう独り言をつぶやいて食堂へと向かった彼が浮かべた笑みは先ほどよりさらに悪戯っぽいものだった。 「あ、騎士団長、早いですね。‥まだ女王様は来ていませんよ。」
「別に暇だから早く来ただけだって、カッカするなよ、ハハハ‥。
そうだ、明日の新年会のために食材ならそろってるだろ?今日は久しぶりにムニエルを頼むぜ!」
「わかりました。でも、明日食べる分ですからおかわりはだめですからね。」
「え〜?じゃあ一緒に何か他にも適当に頼むよ。もちろん魚でな。」
というわけで彼がメイド長の作った鮭のムニエルとイワナの塩焼きを平らげつつ後から来た近衛兵長と話をしているうちに、
料理の匂いにつられてやってきたのは、大臣と女王。
「おお、私より先に君が食卓に着いているとは珍しい。部屋に閉じこもって、よほど暇だったんだろ?
メイド長、適当な大きさの肉があれば軽く焼いて、一斤くらいのパンと一緒に持ってきてくれ。」
「まぁな。(大臣は俺がクシーのとこに行ったのを部屋に帰ったと勘違いしてるみたいだな‥)」
「そんなこと言って、どこのどなたかな?
『暇だから軍の演習を見に来たが、どいつもこいつも帰省して、だれもいないな!』とか言ってたのは?」
「う‥そ、そんなことより女王様、食事を楽しむとしましょうか。」
「あ、なら俺はここで部屋に帰るとするな。じゃ、また明日。」とやおら彼は立ち上がり、
女王の席の後ろを横切るとき「姫さんとは今夜また会うけどな‥」と言って彼女の顔を真っ赤にさせた。
「(なにをされるんだろうか‥いったい。)」
「女王様、顔が赤いですよ。熱があるならクシーさんに相談した方がよろしいのでは?」
「あ、違うんだ。平気だよ、体調は。」
「む、そうですか。でも、風邪をひいてからでは遅いので、早く寝てくださいね。これもお国のためです。」
若干心配そうな顔をした大臣は両手を使って肉を切り分けながら、パンをちぎって口の中に放り込んでいた。
大臣は種族は人間だが、腕がなんと四本もある。
その理由と、この国の重役に年寄りのいない理由は同じである。
今の女王ナターシャが女王に即位する少し前、この国には壊死を起こすはやり病が蔓延した。
幸い、致死率が特別高いわけではなかったが、体力のない高齢者はこの病により全滅。
クシーとその師匠が薬を開発することに成功したものの、すでに前女王は崩御し、大臣も上半身に深刻な後遺症を負った。
彼の本来の腕はもうない。今彼が動かしている腕は、クシーが開発した彼の魔力によって動く義手である。
先ほど彼が彼女に対してクシーの名を出したのは、自分を救ってくれたクシーを信頼しているからなのだ。
「げっぷ‥‥し、失礼しました!」
「いいよ、別に。誰がこの国の事務処理をするっていうのよ、他に。
君がたくさん食べて魔力をためないと、仕事にならないんだから。」
「いやはや‥、気を遣わせてしまいましたか。ますます恐縮です。」
そう言って目に涙をためている彼とは逆に、彼女は騎士団長の言った『仕事』をこなせるかという不安でいっぱいだった。
「‥気が重い。ううーっ‥あいつとはもっと後にしたかったのに‥こんなことは、さ。」
月夜に照らされた廊下を愚痴を言いながら歩く女性が一人。女王、ナターシャだ。
「でも、いずれはやらなきゃいけないわけだし‥‥許婚だから。」
長い黒髪はポニーテールに束ねられているにもかかわらず、腰まで届いている。
「いや、でもいやじゃないから断れないし‥だってあいつだもん、相手が。うぅ。」
メイド服を着ている彼女は騎士団長のことを考えていた。
周囲にセクハラを行い、しょっちゅうメイド長に包丁を投げつけられていた彼。
発情期だから、と言ってあちこちで自分にハグをしてきて近衛兵長に勘違いさせてしまった彼。
将軍を童貞とからかって逆鱗に触れ、土魔法で泥の中に埋められた彼。
小さい頃、寝ている大臣の顔に落書きをして殴り合いのケンカになったこともあった。
「(いつも迷惑かけてるように見えて、本当は周りの空気を明るくしようとしてたのよね、彼。)」
王族という特別な立場にいる彼女にとって、勝手気ままに振る舞う騎士団長はいつも気になる存在だった。
思えばメイド長、大臣、将軍など、比較的年が近い人たちとは昔からよく遊んでいたが、その中でも同い年は彼だけだ。
妹のようにかわいがってくれたメイド長。
物心ついたころには自分に対して自らの主君として接していた大臣。
弟分として切磋琢磨し合った将軍。
そして、ケンカを繰り返しながらも、よく一緒に行動してた騎士団長。
「(考えれば考えるほど、特別視してた‥‥あいつを。)」 立ち止まる。
突き当たりにあるこの扉は騎士団長の部屋につながっているものだ。
「‥ふ。どうしてあのとき断れなかったんだろうって思ってたけど‥簡単なことだったね。
昔から、好きだったんだ、あいつのこと。」
「‥起きてる?」
「おいおい、こっちが予定入れさせたんだから寝てるわけがないだろうが。
まぁとにかく扉越しに話してるのもなんだ、入ってこっちに来なよ。」
「‥‥わかった。」
彼女が部屋に入ると、奥でベッドの上であぐらをかいていた騎士団長が手招きをしていた。
彼は下着姿で、窓から差し込む月明かりを浴びていた。
猫人である彼は、胴体と手足に短い毛がびっしり生えていて、他には猫耳と尻尾、牙が特徴的だ。
彼の背の高さもあり、猛獣がそこにいるような迫力を出している。
「まーそのなんだな、ここに座ってくれないか?」
とりあえず指示に従い、ベッドに腰掛ける。
「まさか、もうこんなことになるなんてな、ハハハ‥‥まぁこれも侍女の『仕事』だからな、しょうがないや。」
そういう彼の声は上ずっている‥緊張しているらしい。
「えっとだな、経験のない姫さんにいきなりこんなことをさせても何の面白味もないからよ‥
ちょっといくつか道具を用意しておいた。もちろん、使ってもいいよな?姫さん?」
どうせ、立場からして断ることなんてできないのに‥
仕方ないのでうなずいてみると、彼はベッドの下から袋を取り出し中をあさった。
「‥これこれ。姫さんには今晩これを付けてもらうからよ。」
「なにこれ?ただ輪っかにしか見えないけど?」
「まぁ見てなって、‥‥ほら!」
彼女に差し出されたよくわからない輪っかは、彼が手の中でごそごそしているうちに半分に割れていた。
「‥‥これをどうするのさ、これから?」
「どんくさいなぁ。ちょっと頭を貸してくれ。」
彼は彼女の肩を持って自分の体にもたれかけさせ、割れた輪っかを彼女の首へあてがい、元の輪っかへと戻した。
輪っかは彼女の首に嵌まり込み、月明かりを反射させている。
「‥首輪?しかも、これって‥マジックアイテム?」
「正解だ。それ、クシーの作ったものなんだ。頑丈さ、安全性、効果、どれも一級品のやつさ。」
「何の効果があるの?というか、なんか力を吸い出されてる感じがあるんだけど、さっきから。」
「あぁ、その効果は実際使うときになったら言うよ。なんだかわからない方が姫さんもドキドキするだろう?
次に使うのはこいつだ。見た目はあれだがこいつもクシーが作ったやつだから安心しろよな。」
正直に言えばもやもやするので今教えてくれた方がいい。と言うべきか迷っていた彼女に突き出された瓶。
中には緑色の液体となにやら白黒の丸いものが入っている。
「うわっなによこれ‥目玉じゃない?この丸いのって‥‥」
「なんでも、ブロブって言う家畜化したスライムらしいぜ。こいつも能力はおいおい説明するとして、だ‥」
意味ありげにあけた間により、身構える彼女。
「服を、脱いでくれ。」
彼の眼は肉食獣のそれであった。 「ふ、服は脱いだぞ。い、いいよね‥‥?これで‥」
「だめだめ、こういうことは全裸でやるもんなんだ。下着も脱いで一緒に置いてくれよ。」
このオス猫が。見え隠れする下心にちょっと腹を立てる彼女だが、だからと言って反抗したら彼を怒らせかねない。
侍女に扮した私は格下の者として我慢をしなくてはならないのだ‥今は。
「‥なぁ、早くしてくれよなぁ。」
「そう言われても‥恥ずかしいこともあるんだ、いくら君でもさ。」
いくら幼馴染と言え、『仕事』としてやらねばならないこととはいえ、人に裸を見せるのは相当な覚悟がいる。
彼女は、ブラジャーを脱いだところでそこから先は踏ん切りがつかず、
手ブラのままショーツに手をかけられずにベッドの上で立ち尽くしていた。
「仕方ないなぁ。じゃあさっそく使うとするかな。よっと。」
そう言うと彼は立ち上がり、彼女の首輪を触って念を送る。
すると、彼女は突然全身の力が入らなくなりベッドにあおむけに倒れこむ。
「な、な、何よこれ!?体が動かない!?どうなってるの‥?」
「その首輪の能力その一だな。
なんでも体を動かすための力を完全に吸い取って、動けなくさせられるってことなんだってさ。」
彼女の顔から血の気がなくなる。
この首輪の能力はすさまじい能力だ、こうされては彼の行動を一切止めることなどできない。
ウキウキとした様子で彼がショーツを彼女からはぎ取り、彼女が脱いだ服の束の上に置いたときに、
彼女は自らの生殺与奪の権を完全に彼に明け渡したのだ。と実感した。
彼女は、生まれて初めて完全に人の下に立ったのだ。
「ははあ、大人になってからお前のここを見るのは初めてだが‥生えてないな。」
「ははは‥そうなのよ。昔から産毛くらいしか生えなくて。」
よくある話で、激しい運動をする選手などは、服と体が擦れてムダ毛が生えにくい肌質になることがある。
彼女もまた剣術を熱心に習い、幼いころから激しい運動を繰り返したので、このようなことが起きたのだろう。
「じゃあその産毛すらこれでさようならだなー。」
と言って彼が手にしたのはあの瓶。すでにフタは開いている。
「どういうことなの?何をするって言うのよ、そのブロブって‥」
「まぁ見てなって‥」
それだけ言うと彼は首輪の力をいったん切り、瓶の中身をやっと動けるようになった彼女の腰に落とした。
ブロブという一つ目のスライムが体を起こした彼女と目を合わせつつ下腹部と股に広がる。
「痒いよ‥ピリピリして。」
「初めはそんなもんだって言ってたぜ。まぁとにかく待ちなって。」と言った刹那だった。
ブロブの液体の部分が震えて彼女の体を刺激する。
どこにそのような筋力があるのかさらに揉みほぐすように力を加えていく。
「おお‥マッサージしてくれてるみたいだよ。たしかに気持ちいいね、これ‥‥‥えっ?うあっ、やめて!」
結論を言えば、このブロブは体を揉みほぐすことが役目ではない。
ブロブは力を込めて彼女の尻肉を左右に開くと、自らの一部を彼女の肛門の中に挿入したのだ。
その量はほんの少しずつで、太さはそこらの雑草の茎のようなものだが、
それでも排泄の孔から逆流してくるそれを当然だが彼女は無視することはできない。
「ちょ、うわ、ねぇ‥なんなのよぉ!これぇ‥‥」
「そいつはしばらく瓶の中で絶食状態だったから、食料を求めてるんだ。
今からお前の体の中の便を溶かして取り込むんだよ。ちょうどいいから宿便をすっきりしてもらいなよな。」
「なっ!?そんな‥あっ!動かないでっ‥う、うんち食べないでえええええっ!」
一応ブロブには人間の意思を読み取る能力があるのだが、今は生存欲がそれを押さえつける。
彼女の中に入ったブロブの一部は、直腸、大腸の先まで進み彼女の便‥‥餌を取り込んでいく。
初めは少量だったその一部は、栄養を取り込み肥大化し、彼女の腹部を満たす。
「っくぅ‥‥おなかがぁ‥」
「うわーっ、ちょっと膨らんでるのが分かるよ‥‥もう少しの辛抱だから、がんばれ!姫さん!」
「な、に、をっ、頑張れって、いうのよ!」
口論を続けるうちにブロブは満足したのか、その動きを止め、太く長くなった体を彼女から引き抜こうとしている。
だが、それは彼女にとってはとてつもない感覚を生むことになる。
「え!?あっ!う、うんちが、止まらないぃぃ!」
当然のことだが、腸の中に入っているものが体から抜けるときは必ず肛門から出ていく。
彼女は今、排泄をするその瞬間のときのあの感覚を延々と感じさせられているのである。
排泄という身近な快楽を塗り重ねられることにより、彼女の体は徐々に出来上がっていく。 ブロブは彼女の体の中に入っていた量の三分の二ほどを出して止まった。
残りは彼女の体内で次の餌を待ち構えるつもりのようだ。
「‥はぁ‥はぁ‥‥‥」
「どうだった?初めは気持ち悪いかもしれないけど、クセになるって言ってたがよ‥‥?」
「(正直に言って、すごく気持ちよかったよ。これ。というか、あの人は自分で試したってことなの、これを‥‥?)」
と、彼女がこの場にいない発明家の裏の趣味に驚愕している間に、ブロブは彼の方を見て目で何かを訴えかけている。
「ん?あ、そうだっなぁ、こいつ、人の気持ちが分かるらしいんだ。すごいよなぁ。」
へぇ。としか彼女には返す言葉がない。
肛門にさっきから嵌まり込んでいるブロブが震えることで生まれる微妙な感覚のせいで返事を考える余裕すらないのだ。
「それじゃあ、ブロブ、次の段階への移行を許可するぞ。指示があるまで好きにやってくれ。」
「っ!?まだ、あるの、なんか‥‥?ひゃっ!」
ブロブは栄養を取り込み増えた体積にものを言わせて彼女の体全体に広がり、被膜のような姿になった。
現代風に言えば、継ぎ目のない緑色のキャットスーツを着ているような格好である。
ちょっと無理をしたのであろう、目玉は少し縮んでしまっていて彼女のへその窪みに身を寄せている。
「おおぅ‥体中でさわさわ動いてるよ、これ。」
「ここからがこいつの真骨頂らしいぞ。
俺は次の支度をしているから、しばらく楽しんでおいてくれよ。」
世の中には肌の角質を食べる魚というのがいるらしいが、今ブロブが行っている行為はまさにそれの上位互換と言える。
ブロブは彼女の体中の古い皮膚、ムダ毛、汗を食べていく。へそに陣取った目玉はへそのゴマを食べているらしい。
普通ならば、これは気持ち悪いほどにくすぐったい程度で済む問題である。
しかし、今の彼女は尻穴から塗りつけられた快楽で敏感な状態である。
そのため「ふぅあっ!あっ、っんひゃ!くうぅっ!」などという声を止められないでいる‥
「はぁ、はぁ、はぁ‥っあぁっ!?‥‥あぁ‥はぁ。」
「悪い悪い、姫さんがあんまりお楽しみだから声をかけられなくてさぁ‥」
意地の悪そうな顔で声をかける彼。彼女は心の中でふざけないでよ、と罵った。
隣の部屋にいる近衛兵長が飛んできたらどうするつもりだったのか。
彼女は若く、まだ大人の情事を見せても良い歳じゃない。
「言っとくがお前が思ってるより大きな声は出てなかったぜ‥‥
途中で首輪の力を使ってお前の声を出にくくさせてもらったからな。」
そ、そんな馬鹿なと思い、抗議の声を上げようとするが、たしかに舌が痺れて言葉にならない。
恐ろしいことにこの首輪は声を封じることもできるのか。
「ビビってるかもしれないから言っておくけど、こいつは一度に一つのことしかできないんだ。
頭が回らないだろうから噛み砕いて説明するけど、
こいつの力だけで姫さんをモノ同然にすることはできないってことだな。」
それを聞いて少しは安心するが、この首輪で体の自由を奪われたうえに猿轡を噛まされたら一緒じゃないかなぁとも思う。
で、一体君は何をしていたのよ。と言おうとするが、舌が痺れているためにうめき声しか出せなかった。
言葉で気持ちを伝えることがいかに素晴らしいことかを再認識させられる。
「(あぁ私は食べられる寸前まで弄ばれる猫の獲物のようなものなのであろうな。)」
そう考えている彼女の前に、また新たな器具が見せびらかされた。
今度はなにやら筒状である。 「あんあおえ。」
「あー悪い。そろそろ機能を解除して‥ほら、喋れるぞ。」
「あ、あー、あー‥しゃべれるね、たしかに。」
「『なんだこれ?』って言いたかったんだろ?
こいつは姫さんに使うもんじゃなくてな、俺に使うものなんだ。」
「君に?」
彼は彼女の質問には答えずに、下着を脱ぎ捨てた。
彼女の前に晒される赤黒い肉棒。かつて見た彼のそれとその姿は大きく異なっている。
皮に包まれていた本体が今は姿を見せ、己を包み込む孔はないかと探るようにひくひくと動いている。
だが、最も変わったと言えるのは、その側面。
バラの枝やアロエを思わせる棘が生えているのだ。
「ハハハ‥驚くだろ、自分でも驚いたんだ。無理もないだろーな。
こいつは猫人に特有の特徴らしくて、もちろんこんなの将軍や大臣にはついてないぜ。」
「これ‥‥痛そうね、ちょっと。」
「痛そうじゃないんだ、痛いんだよ。
なんでも、本物の猫はこれを『刺激を与える』ために使うらしいからな。当然俺のこれも痛い。
そこで、これの登場ってわけなんだな。」
そう言うと、彼は彼女を包むブロブをすくい、その筒の中と自身の肉棒に塗って滑りが良くなったのを確認した。
「これは俗にペニスサックというもので、チンチンがちっこい奴が水増しに使うものだが、
俺の場合はこの棘をこれでしまっちまおうって魂胆だ。こうすれば痛くないし、避妊も簡単。一石二鳥!」
意気揚々と器具を装着する彼を見て、まったく彼らしいと、彼女は笑みを浮かべた。
発情期という概念のある彼は性に対する知識欲が昔から大きかった。
だからこそ、彼女と彼との種族の性行為の違いを理解し、このような機転を働かせられたのだろう。
「へぇ、ありがたい話じゃない。よくやったわね、君にしては。」
「ちょっとちょっと、それってまるで俺が配慮のできない奴だと思われてたってことかよ。
それはないぜ‥だって俺っ」
「そんなことは言ってない!」
「‥?姫さん‥?」
「そんなこと‥‥ありえない。
君は‥ううん、リバイブルは、自分なりに努力してた‥いつもみんなが明るい気分でいられるように。」
「姫さん‥」
「女の子たちにちょっかいかけるってやり方はあんまり感心できないけど、
それでも、あなたはあなたなりに努力してるって、知ってたから‥私は!」
「‥ハハ、照れるぜおい‥」
「好きよ、リバイブル。」
「え?」
「ずっと気付いてないふりをしてた。意識してるだけだって、許婚だから。
でも、さっき分かったんだ。本当の意味で、あなたが好きだって‥私は。」
「‥冗談じゃないんだろうな?」
「冗談で嫌いとは言える。だけどこんなこと冗談じゃ言えないよ‥?
‥‥‥愛してるなんて。」
「‥姫さん!」
緑の被膜に包まれた体を毛むくじゃらのケモノの体が抱きしめる。
彼が流す涙と汗は彼女の纏うブロブに吸収され、増えた体積の量だけ彼の体にも纏わりつく。
その瞬間、彼女たちの心は繋がったのだった。 「あっはは‥‥全く予想外だったぜ。俺はこの気持ちは一方通行で、
姫さんは俺のことを政略結婚の相手くらいにしか考えてないと思ってたのに。」
「たしかに、さっき食堂であったときは考えもしなかった‥こんな風に互いを想ってるなんて。
あ、あと、名前で呼んで‥今はその、女王じゃなくて、一人の侍女として、ここにいるんだから。」
「ハハ、そこの設定は崩さないんだな、姫さ‥いや、ナターシャ。」
長い抱擁の中の、いつ始まったかすらわからない熱い接吻。
経験のない彼女にはいったいどうしたらいいかわからないものであったが、彼が自ら動いて教えてくれた。
そしてその勢いそのままにいよいよという体勢になったのである。
「じゃあ‥お願い、ここ‥なんでしょう?」
それだけ言うと彼女はベッドに手を付き、股を開いてひくひくと動く彼女の入り口を彼に見せる。
それと同時にブロブに指示を出し、外陰部を開かせ中の様子を見せることも忘れない。
「おお、もうこいつはナターシャの一部みたいに動くな、感心感心。
中は‥‥うーん、よくわからないけど、緑だねぇ。」
「ちょっと‥それ以外に何か感想はないの?えっちなことが好きなくせに‥」
事実、彼女から分泌される愛液はブロブに餌として取り込まれているので夜目が利く彼が見ても中の状態は何とも言いがたい。
そもそも部屋の明かりは月明かりのみに頼っているので、たとえ通常の状態でも観察するのは難しいだろう。
困惑気味の彼はとりあえず首輪を触り念を唱える。
「今度は何?今度は‥どこも拘束されてないわね。」
「今送った指示は苦痛の除去、感覚の拘束さ。こんなにいい雰囲気を処女喪失の痛みで狂わせるわけにもいかないしなー。」
「‥意外と切実ね。満点ってところかな、えらいえらい。」
「ん‥‥ハハ、ナターシャに良い子良い子されるなんて思ってもみなかったぜ。」
そう言いつつ、彼はサックに包まれた愚息を彼女の広げられた外陰部へとあてがう。
「‥行くからな。」
「うん、頼むよ」
ズン、という音がしたようにも思える。
彼女の下腹部は、大した抵抗もなく彼の肉棒を飲み込んだ。
「おい、痛くはないよな?
というか、逆に何も感じなかったんだが‥膜の。」
今の感覚に違和感を感じた彼は、考えた末に一つの結論を出す。
「ナターシャ‥もしかして、あの時に。」
あの時というのは、彼女が以前将軍たちと冬の山で訓練を行った時のこと。
彼女は湖が凍っているのに気付き、遊び半分で上を歩いたところ、
足を滑らせて尻もちをつき、氷が割れて冷水の中に落ちるという事故を起こしていた。
「あの時、あちこちから出血してたって将軍は言ってが‥
ナターシャ、氷の上で転んだ時‥膜が、破けたのか?」
「‥うん。」
顔を真っ赤にする彼女。
それもそのはず、このような大事な時に恋人に人生の恥を冷静に分析されてしまったのだ。誰だって恥ずかしい。
「あーあ‥なんだよ、残念。せっかくナターシャの初めてをもらおうと思ったのになぁ‥‥
ケツの方はブロブにあげちゃったし。」
「で、でもさっきのが初めてだよ‥その、キス‥」
「おお、そうだったか、じゃあそれで妥協するよ。
それじゃあ動くぜ。」
ちょっと人を捕まえて妥協とは失礼だな、と言いたかったが、彼が動くことで生じる未知の感覚に驚き、反論する余裕もない。
彼女が纏うブロブによって敏感になった体、
彼女が付けている首輪によって痛みや気持ち悪さが除去される神経、
彼女の体内のツボを刺激する彼のサック、
彼が用意した道具は的確に彼女の感覚を快楽のみに囲い込んでいく。
「‥!っふぅ!っあ!あ!あ!あっ!?だめ‥‥なんか変だよぉ!」
「変じゃない変じゃないよ。っく!きつっ‥
そ、そういうのを気持ちいいって言う‥っ!‥んだぜ。」
「ふあっ、っぁあ、はああっ!き、気持ちいい?私、気持ちいいんだね、リバイブルと一つになれて‥
あっ、ああ!なんか!なんかっ、くるよ!なんかくるってぇ!」
「っふ、っふぅ!そ、それは、っぅ!い、イクって言うんだ‥ぜ。」
「うぅ!い、イク?イク?イク!イっちゃう!い、イっちゃううううううぅ!」
「あぁあああ!?す、すごぉ!お、れもだめだ。ふあああああっ!」 二人はしばらくの間真っ白に染まった頭を整理し、向き合った。
「本当にありがとうな。いい『仕事』っぷりだったよ。楽しかった。」
「‥?何を言ってるの?まだ終わってないじゃない。ほら。」
ナターシャは、彼の肉棒をつまみながら言う。確かに今だ張りつめていて、まだ出るものは出そうだ。
「っ!?ちょ、なにやってるんだ!もう俺は満足だって!」
「だーめ‥!今のうちに全部出してやるんだからっ‥リバイブルにしばらく発情期なんて来ないように‥!」
「お、おぉい。目が、目が怖いぜ?もしかして、そんなにお前に迷惑をかけてたのかっ!?」
「近衛兵長がここでの挨拶はハグで交わすものだと勘違いしてるのよ!あなたのセクハラのせいで!
あぁ腹立ってきた!そうね‥このまま離さないよ、あと7回は付きあわせるんだから!」
「え、え?‥えぇ!?おいやめろ離せ‥
ちょ、そんなにブロブを塗ったら俺の毛が‥‥にゃ、にゃはあああああっっ!?」
「そこまでだよ!
私の兄さんを喰らう淫魔め!覚悟し‥‥じょ、女王様ああああああ!?」
「(り、リライブ!?いやあああああ最悪だああああああ!!!!!)」
「あーっめんどくせぇことにまぁ‥
小兄貴、こんなこと自分たちが首を突っ込むことじゃないぜ‥‥」
「ダスティは黙って自分の任務を遂行する!」
「うへぇ、分かったからそうカリカリしないでくれ‥」
「え、えっと‥弟君たち?私が、ついやったことで、その、さっきのは‥」
「「これはウチの兄弟のことなんで姫様は口を出さないでください!」」
「ナターシャ‥もう夜更けだし、部屋に帰りなよ‥とてもじゃないが今は無理だ‥
ほら、この鍵でそれは外れるから‥‥」
「え、わ、わかった‥」
「しかし、大兄貴‥何やってるんだよ。これで自分たちはこんな夜中に大兄貴を問い詰めるって作業が増えたんだぞ!」
「そんな愚痴を言う許可は出していません!仕事は!?」
「うへぇ、悪い、小兄貴。」
今の彼の状況は‥絶体絶命である。
彼女との行為のまさにその時を見られ、弟リライブに問い詰められているのだ。
彼は兄とは似ず規律を重んじる性格をしている。
「許婚という関係‥‥しかも、相手はあの女王様ですよ!?
関係を持つなら、せめて国民に対しての婚姻の発表や挙式を終えてから‥!」
「おおお、落ち着けって小兄貴〜っ‥」
「さっきから口を挟んで!氷漬けにされたいか!ダスティ!」
「そ、それは勘弁だ!しょ、触手が全滅する!」
この場を逃げ出そうにも、末弟ダスティスリィの触手に絡め取られて身動きが取れず、
延々と続く説教を聞いているほかにこの場をしのぐ方法がない‥‥
「大体ですね、前から繁殖期などという言い訳をかさにして、
騎士団の女性の皆さんにふしだらな行為を働いていること!今日はこれがそもそも言おうとしていた‥‥‥‥‥‥‥」
「(あぁ、俺、終わったな‥‥)」
この日、騎士団長は一睡もすることができなかったのだと、後日ダスティスリィは女王に報告し、
その報告を聞いている最中の彼女は、彼の触手を観察し、指で金属の輪をいじくっていたという。 以上で終了になります。
前回の将軍の話の別視点のつもりが、こっちが本編みたいになっちゃったよ。 お姫様が侵略者のおっさんとか兵士に無理矢理犯されるの、すごい萌える
でも自分では書けないジレンマ 投下乙
明の英宗とか言う皇帝が騎馬民族との戦闘で捕虜に→解放されるも弟がすでに即位し邪魔者として幽閉
とか言う経歴で(その後クーデターに担ぎ出され皇帝に復帰)ウィキによれば捕虜になったとき20代前半……!
これは女帝に脳内置換しての妄想がはかどるな。ハーンに陵辱されたり、弟のゆがんだ欲望が噴出したり、
自分を担ぎ出した悪徳大臣に脅迫されたり…… あまり壮大なストーリーは書けないけど
こう、世間知らずなお姫様に間違った知識を吹き込んで主人公のされるがままにしたい、という物が作りたい 俺、偶然現実社会に逆召喚されたお姫様と
普通にいちゃいちゃラブラブするものを書きたいと思ってる まぁ「書きたいと思ってる」と「書き始めた」と「「書き上げた」の間には
高い壁があるからな 「姫?」
とある国の王宮の中園。身軽に動けるよう軽く武装した騎士が、あたりを見回している。
「姫、どちらにおられる?クローディア様!」
あたりは美しく刈り込まれた芝生に、大きな樹が濃い影を落とし、その間に人の背の高さほどの潅木が
程よい距離で植えられている美しい庭園だ。
後ろで僅かに潅木の枝が揺れた音を逃さず、騎士は後ろを振り返った。
生い茂った枝を持ち上げると、騎士が守るべき人である国王の一人娘、クローディアの悪戯っぽい瞳が覗いた。
「姫、お戯れはお止めください。あなたはこの国の姫であり、
いつ何時、曲者にお命を狙われるかわからないお立場なのですよ」
そうはいっても久しく戦争のない平和な王国の安全な王宮で、蝶よ花よと育てられた甘ったれの一人娘は
そんな危機意識は持ち合わせていなかった。
「うふふ、ごめんなさい。だって、ただお散歩しているだけじゃつまらなくて」
「姫様がそうやって私をからかって退屈しのぎをされるたび、こちらは5年も寿命が縮む思いをいたします」
「もう!ちょっとかくれんぼに付き合ってくれるくらいいいじゃない」
「そうやって隠れているところを狙われたらどうなさるおつもりです」
「私は大丈夫。だってエリオットが守ってくれているんですもの」
「では私の目の届かないところに隠れるのはお止めください」
「んもう!それじゃかくれんぼにならないじゃない!
・・・わかった。いいこと思いついたわ!エリオットが私と一緒に隠れてくれればいいのよ。鬼は女官たちで。すごいいい考えだわ!」
クローディアは自分の思いつきに舞い上がって、子供のようにはしゃいでいる。
もうすぐ15歳になろうというのに、同じ年頃のほかの子供と交わる機会が少ないせいか、
クローディアはどうにも幼さの抜けない娘だった。
「ね!どう?エリオット。これなら危なくないでしょ?」
「ま・・・まあ、姫が一人で隠れられるのに比べれば・・・ですが」
それを聞くとクローディアはすぐに女官たちを呼びに駆け出した。
「マーサ!エリナ!来てちょうだい!あ、クレア、こっちよ!」
数人の女官たちを集め、100数えてから自分を探すように言うと、クローディアはエリオットの手をとった。
「ほら行きましょエリオット!急いで隠れなきゃ」
軽く溜息をつき、エリオットは諦めたようにクローディアに従う。
あちらこちらと移動した後、庭師たちの作業道具を置く納屋と、その脇の茂みの隙間にしゃがみこんだクローティアの背後に、
同じくエリオットもかがんで身を隠す。
ふと見ると、春の暖かい日差しの中、庭園をあちらこちら歩き回ったためか、クローディアの額やこめかみにはうっすらと汗が浮かんでいる。
さきほどまでは気がつかなかったのに、狭い茂みの影に一緒に身を寄せていると、普段よりずっと距離が近い。
エリオットは思わず一歩後ろに下がった。
クローディアは全く意に介さず、瞳をキラキラさせて茂みの向こうを見つめている。
「うふふ、マーサったらあんなところを探して。違うってば……あ、クレアがこっちに来るわ!」
クローディアはとっさにエリオットを振り返り、手を掴んだ。
「エリオット、静かにしててね!声を出しちゃダメよ!」
人差し指を立てて唇に当てる。
遊びに夢中になったクローディアの頬は紅潮し、息は弾んでいる。
わずかに香る甘酸っぱいような汗の匂いに、エリオットは軽い目眩を覚えた。 やさぐれ姫様がピュアショタなしたっぱを凌辱みたいです 前スレだったかな、古い方の保管庫が404になってしまって
代わりのページ作ってくれた人がいて大変感謝したものだが
それも今見たら404になってる模様
ttp://file2.rdy.jp/cache/
できればもっかいうpしていただけないだろうか
今度こそちゃんとローカルに保存しますんでm(_ _)m 先帝の女二宮の藤田侯爵夫人系子はその話を聞いた時一瞬戸惑った。
その話は娘の寿賀子が多羅尾男爵との婚約が進んでいるということだった。
なぜならその昔、女二宮は多羅尾男爵の兄、多羅尾子爵と交際していたのだった。
しかし子爵の多羅尾家では皇女の降嫁先としては家格が低すぎる。
なので女二宮と多羅尾子爵は別れたのだった。
その後女二宮は藤田侯爵に降嫁して五人の娘を産んだのだった。一方多羅尾子爵は結婚と離婚を繰り返していて婚外子もいるほどだった。
両家顔合わせの日、女二宮は憂鬱だった。なぜなら多羅尾男爵の親代わりとして多羅尾子爵が来るからだった。遥か昔の若い頃の出来事とはいえ女二宮は多羅尾子爵とのことを引きずっていたのだった。
そしていよいよ顔合わせ。何でもないふうに多羅尾子爵は挨拶してくる。そして終始無言の女二宮に対し、多羅尾子爵は藤田侯爵と歓談するのだった。
それから数年が経ち衝撃的な出来事が起きた。それは戸田子爵に嫁いだ長女の美奈子が不倫の果てに家出したというのだ。そしてその不倫相手は何と多羅尾子爵だったのだ。
驚く女二宮。そして女二宮は多羅尾子爵を呼び出したのだった。 女二宮は多羅尾子爵を問い詰める。多羅尾子爵は開き直ったどころか女二宮を押し倒したのだった。
多羅尾子爵のテクに堕ちていく女二宮。女二宮は久しぶりに絶頂を迎えたあげく中出しされたのだった。
そして多羅尾子爵夫人は娘を連れて出ていったので美奈子は多羅尾家に入ったのだった。やがて美奈子の妊娠が判明する。美奈子はまだ離婚していなかったが産むことにした。
そして女二宮の妊娠も判明する。しかし相手は多羅尾子爵だったので女二宮は密かに中絶した。
その後も密かに多羅尾子爵と関係する女二宮。それは美奈子が多羅尾子爵の娘を産んでからも変わることはなかったのだった。美奈子はようやく離婚が成立して娘もようやく戸籍を取得出来たのだった。 「書きたい」ならそいつ如何だからどうしようもないが
「読みたい」なら「何を」か言えよw 現代のお姫様…レオタードでワークアウトもありっすか? 幼くして天才的政治力を発揮するロリ姫
この年齢差では間違いは起きないだろうと世話係を任命された俺に、彼女は言った
自分は姫であると当時に神話の女神の転生体である、と
そして俺はその女神の夫の転生体であり、彼女とは結ばれる運命だという。
幼い肉体とは裏腹に彼女の魂は夫である俺との肉欲の日々を求める
立場的にも人道的にも誘いを断る俺に、彼女からの執拗な誘惑が始まった 2ヶ月も書き込みがないとはどういうことじゃ
もう誰も妾のことなど気にかけておらぬのじゃな… 一方、美奈子が多羅尾子爵と略奪婚した結果、美奈子と寿賀子の姉妹仲は非常に悪化したのだった。
普通なら既に両人とも嫁いでいるので最低限の付き合いだけですむのだが
先に述べたとおり美奈子と寿賀子の夫も兄弟な上、多羅尾男爵家は多羅尾子爵家の本家で、本家より分家のほうが位が高いこと、
分家の次男坊だった寿賀子の夫が本家に養子入りしたという多羅尾家独自の事情が二人の心理的な争いに火花をつけたのだった。 また、多羅尾男爵(と寿賀子)には既に二人の息子がいたが多羅尾子爵には婚外子含め娘しかいなかった(美奈子は最初の夫との間に息子がいる)。
美奈子はまだ若いので更なる出産の可能性があったが寿賀子は自分の息子を子爵家に送り込む気が満々だった。
一方女二宮は年齢的に出産の可能性がなくなっていき藤田侯爵の跡取りを得ることが難しくなった。
このとき多羅尾子爵との不倫に走らず侯爵との夫婦生活を継続していれば息子を産むことが出来たかも知れないと後悔したのだった。 さて、女二宮の出産が難しくなったことにより各方面から養子縁組の打診が出てくるようになる。間侯爵もその一人だった。間侯爵は藤田侯爵の従弟にあたりかねてから伯母の嫁ぎ先の藤田侯爵家に息子を送り込もうと画策していて女二宮に近づいたのだった。 しかし間侯爵の次男はまだ小学校に入ったばかりであり女二宮は少し気が早いんじゃと思ったが間侯爵の目的はそれだけではなかった。 むかしむかし、どっかの王国に美しい姫がおった
容姿端麗、スポーツ万能と絵に描いたような姫でした
ただ一つ残念な点、彼女がスケベ全開な性格である点を除いて
・万年エロ妄想
・お気に入りのショタを女装させて侍女にする
・レイプされたいと本当にレイプされる、あまり興奮しなかったからレイプ犯全員抹殺
・自分の命を狙う暗殺少女、王国に潜入している女スパイ、恒点観測に来た宇宙人(♀)、先ほどの侍女(♂)の姉を弱味握り自身の通う学院の生徒と教師として編入&採用そして部活という名のハーレムを作る
残念エロ姫のハーレム部活 エルドとセシリアの続きが読みたいなあ
キャラがみんな魅力的でテンプレート感なくて好きだ 鎌倉時代とかのお姫様だったら財産持ってたり、
偉い人たちもエロい人ばかりだから、
エロいこともあったかもね。 完結しなかったせいか今でもいぬのおひめさまが気になっている
作者はなろうかどっかで書いてんのかなあ 厳密には王国とかのお姫様ではないですがドレスフェチの入っ
ている自分的には「ドレス
を着た お姫様のいるわけない空間にいるお姫様」というシチュ
エーションがかなりいいの
です。
「学校のお姫様」
ある高校にお姫様が、もしくは結婚披露宴で着るようなカラー
ドレスを身にまとい学校に通う咲綺という女の子がいました。
彼女は顔がかわいかったのと相まって「クラスのお姫様」とし
て主に男子から人気を集めていましたがアンチもいました。 麗
「最近咲綺調子乗ってない?」 朝美「たしかに!あんなドレス
なんか着ちゃってさ、まさに「私お姫様ですので」なんて言わ
んばかりの主張だよねwww」 鞠「私達でお仕置きしよう?」 麗、
朝美「そうだね!」
そうして彼女たちは計画を立てました。それは数日後、ビスチ
ェスタイルでない長袖のドレスを着た咲綺のもとに降りかかっ
てくるのです。
当日、咲綺の机に一通の手紙が入っていました。 「放課後、体
育館裏で話したいことがある。」とラブレターのような文面で
した。咲綺はこの手紙をラブレターと受け取り放課後、予定通
り体育館裏に行くことにしました。
体育館裏に行くとそこには彼女に気のある男子ではなく麗、朝
美、鞠の3名の女子がいました。本来いるはずの男子がいなく
て、なんのことがわからない咲綺を麗たちは羽交い締めにし、
叫ばれると困るので口に手を当てられました。
やがて咲綺は目隠しされ、空き教室へと連れてかれました。空
き教室のホコリまみれの机、そして咲綺の華やかなドレス。ど
う見ても異様な環境です。やがて3人の女子のうち一人、麗が教
室から出ていきました。咲綺は逃げ出すチャンスだと思いまし
た。しかし、その希望は絶望へと変わるのです。そう、麗の連
れてきたのは待機していた同じ学年の男子だったのです。彼ら
は口々に「あぁ〜、お姫様とヤれるなんて夢のようだぜ」や
「チンポギンギンだぜ」なんて言って男のそれをためていたの
でした。彼女を拘束する担当は女子たちから男子へと変わり、
ジタバタ動こうとしても全く動かなくなりました。すると限界
になった男子たちが集団でお姫様のお姫様たらしめていたドレ
ス、貸衣装落ちで少々くたびれていたとはいえ華やかで豪華な
装飾はこのドレスを高級なものとすぐに想像がつきます、さら
に裾を膨らましていたパニエ、彼女のこだわりでふわふわのシ
フォン生地の重なっているものをも引き裂いて彼女を下着姿に
しました。そこからの咲綺の記憶は消えていました。おそらく
男子たちで何回も代わる代わる自分のためていたものを彼女に
放出していたのでしょう。彼女はやがて意識を失い、起きた頃
にはもうすっかり日が暮れて夜になっていました。彼女は自分
の教室に行き、自分の体操着を着たあと、例の空き教室に行き
ドレスやパニエのの残骸を集めました。そして彼女は集めたそ
れらを見て「あぁ、お気に入りのドレスが…」と嘆きました。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています