ブリティッシュがUKパンクとなり、カツマスターと対決する前夜…

 テスタ・ロッサの家に水音が響く。
「ん……ふぅ……」
 抱き合い、口付けを交わし合うスーツ姿の男女。
「アリス……」
 唇を離す二人。男が女の瞳を見つめ、名を呼ぶ。アリスと呼ばれた女は微笑み、答える。
「なあに?テスタ……」
「次の戦い…アリスも参加するんだろ?」
「何よいきなり……まあ、そうね。」
 そう返すアリスを見てテスタは安堵した。アウトレイジの戦いでは、多分だが彼女の命が奪われる事はないだろうと思ったからだ、カツキング達と一緒にいればなおさらに、と。だが彼女が次に発した一言は彼の表情を崩すには十分だった。
「あなたと一緒にね。」
「……!何故……それを?」
 テスタはオラクル達がブリティッシュとカツキングの邪魔をするだろうと思い、そのことは話さず、明日はカツキング側の一人として一人で行動するとアリスには話しておいた。
その時、彼女は「じゃあ私もカツキングの側につくわ。」と言っていた。だが彼女は自分と行動を共にするという。彼女は全てを知っているのだろうが、テスタは聞かずにはいられなかった。
「愚問ね、全ての情報は私の手の内にあるのよ、あんたの足りない脳ミソの中身も全てね。」
「かなわないな……アリスには……」
 ため息をつき、でも、とテスタは言葉を続ける。
「知っているならわかるだろう、俺はアリスをオラクルとの戦いに巻き込みたくない、だから一緒には戦えない。」
 アリスには分かっている。本気でテスタがアリスを巻き込みたくないと思っていることも。それがアリスにとってはとても嬉しく、同時にとても腹立たしい。
「テスタの馬鹿……」
 ぼそりと、アリスは俯いてつぶやく。とても小さく、テスタの耳には聞き取りきれないような声量で。
「アリス……?」
 テスタは俯いたきりの恋人を呼ぶ。アリスは俯きながらテスタの胸に体を預ける。
「馬鹿っ……テスタの馬鹿!いつ私が一人になってまで生きたいって言ったのよ!私はあなたを愛しているわ!あなたが居ない世界なんて考えられないくらいに……」
 テスタの胸で、アリスは胸中を吐露する。
「あなたが笑っていると胸が暖かくなるの、あなたがジャッキーに挑んだ時は怪我をしないように願ったわ……正義を曲げないあなたが好き、優しいあなたが大好き…愛してる。」
 アリスの言葉を聞き、意を決したようにテスタが口を開く。
「わかった……一緒に行こうアリス、俺もアリスを……愛している。」
「テスタぁ……んっ……」
 テスタの言葉に顔を上げたアリスの唇をテスタが奪う。そのまま二人は抱き合い、時には舌を絡ませ、何度も何度も口づけをした。