【貴方なしでは】依存スレッド11【生きられない】
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0001名無しさん@ピンキー2012/03/04(日) 21:40:16.93ID:QL5uVT5M
・身体的、精神的、あるいは金銭や社会的地位など
 ありとあらゆる”対人関係”における依存関係について小説を書いてみるスレッドです
・依存の程度は「貴方が居なければ生きられない」から「居たほうがいいかな?」ぐらいまで何でもOK
・対人ではなく対物でもOK
・男→女、女→男どちらでもOK
・キャラは既存でもオリジナルでもOK
・でも未完のまま放置は勘弁願います!

エロパロ依存スレ保管庫
http://wiki.livedoor.jp/izon_matome/

【貴方なしでは】依存スレッド10【生きられない】

http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1321629440/
0470名無しさん@ピンキー2013/09/02(月) 03:28:15.93ID:VM9lmUGp
避難所の続きを投下します

・軽依存?
・不思議な所あり
・全5話の予定
0471名無しさん@ピンキー2013/09/02(月) 03:30:13.46ID:VM9lmUGp
第3話

「幸は戻ってきましたか?!」
駈け込んだ出入口から見たのは、バスの車内灯の下で首を振る立浜さんのみだった。
「幸はやっぱり…」
幸は雨を避ける為にバスに乗ろうとした時、
いきなり恐慌状態になって何処かへ走っていってしまったらしい。
急な事と幸がランタンを持っていてそれを落とした為
立浜さんが懐中電灯で探しても見つからなかった。
「私が手でも掴んでいれば…」
立浜さんが悔やんでいるがそれはしょうがない。
足を挫いている事もあるが幸は夕方の食事の準備の時はバスに乗るのに何も支障がなかったのだ。
まさかまた駅前の様に、いや、それ以上の状態になるとは思えまい。
「もう一度探しに行って来ます」
「では今度は私も」
「いや、立浜さんはここで待っていてください」
「しかし」
「雨は止みましたが足下の良くない所もある。それに…」
「それに?」
「幸は多分、山の中に行ったと思う」
推測ではあるがさっきの捜索時を考えると可能性は高い。
坂の上までは行ったような形跡があったがアスファルトの道路を歩いて行った様子はなかったし
少し行った所に登山道の様な山への入口があったからだ。
「山へ?」
「山へ入るなだらかな道があったからそこから行ったかもしれません」
驚くというか何か思案している立浜さん。
「とにかく今度は荷も持っていきます」
急いで俺はリュックサックから不要な物をバスの座席に降ろしロープやタオルを準備した。

 *
0472名無しさん@ピンキー2013/09/02(月) 03:32:51.12ID:VM9lmUGp
「では、立浜さん、あとはお願いします」
リュックサックを背負い灯火したランタンを手に持ってバスの立浜さんに言った。
「ま、待ってください!」
立浜さんに腕を捕まえられる。
一刻も早く行きたいのに止められ、振り解こうかと立浜さんを見たら、深刻な顔をしていた。
「もし、もしもですよ?なにか山の中であったら、円喜(まるき)に縁ある者と言ってください。
 それが村の者でもそれでだいたい話は通りますから」
「円喜?」
「まぁここら辺りの地主というかそんなものです」
(あぁ、権力者の所有の山だからか)
「大丈夫ですかね?俺、無関係ですけど?」
「村人の縁ある者ではあるので。最悪、私と若生さんの知り合いの方でなんとかできるかと」
「江藤さんが円喜さんに口利き…できるかなぁ」
腰のサックのナイフに触れて思う。
これをくれた江藤さんは活動的でいい人で頼り甲斐があるけど頼らない人だった。
何か迷惑というか人を巻き込まない様に動いていたので
本当はあまり人と関りたくないかもしれない。
「江藤?もしかして、下の名前は耕太郎くん?」
「え?あぁはい、そうです。知ってるんですか江藤さんを?」
「知ってるも何も耕太郎くんとは同級生だよ!そうか、それなら円喜に縁ある者で大丈夫!」
満面の笑みでばんばんと肩を叩く立浜さん。
「太鼓判ですか?」
「そりゃあ、もう!耕太郎くんは円喜の唯くんと…」
「唯くんと?」
「この先は耕太郎くんに聞いて下さい」
にたっと人の悪い笑みで立浜さんは言った。何を含んでいるんだろう?
「は、はぁ。じゃあ、行ってきます」
「お気をつけて!必ず幸ちゃんを見つけて下さい!」
江藤さんにいろいろ聞く事ができたが、今は幸を探す事。
無事でいてくれ、幸!

 *

「幸ーーーーっ!」
月明かりの山中に木霊する。
山に入ってから30分ほど経ったが幸は見つからない。
歩いている踏み固められた道の右側は上り斜面、
左側が下り斜面で続いていたが道中その両方に形跡は見当たらなかった。
「道をそのまま歩いて行ったのか?」
中学生の女の子が暗い山道を普通ではないとはいえこれ以上歩いて行くのは考えにくい。
「引き返すか…ん?」
踵を返した俺の視界に薄緑色が入った。
下り斜面を2mほど下りた所で薄緑色は弱弱しく光っている。
「髪留め!」
何かの陰で向かってくる時には見えなかったのかわからないが
幸にあげた髪留めのケミホタルに違いなかった。
髪留めの上方辺りの道端の樹の幹にロープを縛り、腰にかけて斜面を下りる。
髪留めを拾ってからランタンで周囲を見る。
「落ち葉が削れた跡がある…」
その跡を目で追って斜面の下にランタンの明りをかざす。
少し離れた場所に白い物が見える。
「幸!」
それは幸のワンピースだった。
俺は急いでその場所まで下りた。
0473名無しさん@ピンキー2013/09/02(月) 03:34:32.49ID:VM9lmUGp
 *

「トンネルの跡か?」
落ち葉の中に半ば埋もれる形の幸を助け出したが、抱えた幸の冷たさとまた降り始めた雨の為、
バスには戻らず運良く近くにあった洞穴に入った。
洞穴は俺が立ったら頭をぶつけるぐらい天井は低く、奥にまだ長そうだ。
幸を天井にぶつけない様に背負いつつ、降ろしたリュックサックからシュラフを出す。
伸ばしたシュラフに幸を寝かせてランタンでよく見ると白い顔は所々土や落ち葉で汚れ濡れていて唇も紫色だ。
「焚き火はできそうにないな…」
幸の体をタオルで拭きながら温める方法を考える。
バーナーとカップはあるのでお湯は作れるが暖をとるには心許ない。
毛布はあるが濡れたワンピースのままでは体温を奪い続けるだろう。シュラフに入れても同じだ。
と、なるとあの手段しかない。
「…許せ、幸。非常事態だ」
俺は幸の上半身を起こしワンピースを脱がせる。
(冷え切っているな…)
下着だけになった肌を乾布摩擦のように拭いて温め、開いたシュラフの中に寝かせて上から毛布をかける。
壁と壁の間に紐を張り、ワンピースを掛けてから自分の服を掌で触ってみる。
「さすがに濡れてるな」
雨と汗で濡れた服のままシュラフに入るわけにはいかないので服を脱ぎ、Tシャツも脱いで紐にかける。
「…下も脱ぐべきか。いやさすがに…しかしこれも濡れているし…」
ベルトに手をかけ逡巡する。
上半身裸の現状もやばいがパンツ一丁の格好が許されるのは姫を助けに行く騎士のみ。
(髭の量が多ければ俺もアーサーみたいに…いやいや)
阿呆な葛藤をしていると、とある物思い出し、リュックサックを漁り始める。
「あった!」
リュックサックの底から出したのはボロボロのジャージの下。
「服として使ってなかったが、まだ穿けたな」
化繊のジャージは寸足らずで所々に焼けた跡やとれない油汚れ跡、そして穴が開いている。
鍋敷きや熱い物に使われたりしたので仕方がない。
「これでなんとか…」
俺は覚悟を決めてシュラフに入った。

 *
0474名無しさん@ピンキー2013/09/02(月) 03:36:38.65ID:VM9lmUGp
シュラフに入ってどれくらい経ったろう。
ランタンの弱くしてある灯りでは置いてある腕時計の時間は見えない。
俺の胸に背を当てた状態で入っている幸の体は冷たさもなくなり震えもなくなった。
顔色はわからないが当てた手で感じる分では頬もそれなりに温度を取り戻していた。
覚悟を決めて入って良かったと思う。
今日日の中学生の発育はなかなか怪しからん。特に尻肉の柔らかさは…いや、辛かった。
それよりも新陳代謝が良い為か発熱量が多くて冬場は助かるのだが
夏場で役に立ったのは初めてではなかっただろうか?
あと、この2人用シュラフをくれた江藤さんに感謝。
貰った時はわざわざ俺の大きさに合わせて買ってくれたかと思ったが
使ってみると言われた通りに使用済みだったが一体誰と入ったのだろう?
「まさか、今の俺みたいに使ってたりしてな…」
「ん…」
幸から声が漏れる。
「起きたか?」
ゆっくりと幸を左へずらして並ぶ様にして幸の顔を覗き込む。
まだ寝ている様だったが目尻に滴があったので拭った。
「おとうさん…おかあさん…」
幸の口からか細く漏れるのを俺は聞き逃さなかった。
「俺はここにいるからな」
これで心細さが少しでも解消してくれればいいのだがと思いながら
ぽんぽんと幸の頭を優しく左手で叩く。
「んん…」
幸がいきなりころんと俺の方へ寝返りを打った。
(ちょ、ちょっと待て!)
焦って幸から離れようとしたのが悪かった。
シュラフを体で引っ張った為、左腕で捲き込みながら幸を胸元に抱く形になる。
「ん…」
幸は仰向けの俺の上にうつ伏せで乗っている状態になっている。
幸の柔らかい体が押しつけられるだけでも大事なのに、もぞもぞと太腿でこちらの股間を擦る。
その上、移動した時にずれたのか幸の肩からブラの紐はずれており、
胸に幸の下着越しではない生乳を当てられていた。
(なにか、なにかより柔らかいのが!より柔らかいのが!)
この後、抱き着き始めた幸を降ろすまで天国のような地獄が続いた事だけは言っておく。

 *
0475名無しさん@ピンキー2013/09/02(月) 03:37:43.86ID:VM9lmUGp
洞窟を出て空を見上げると月明りを遮る雲は見えない。
この様子なら夜明けと共にバスに戻れるだろう。
そうなると山を廻って村へ行く仕事があるので寝ておきたい。
体が冷える前に洞窟に戻ると幸はシュラフの中で毛布に抱き着いて寝ていた。
どうやら抱き癖があるようだ。
さっきは困ったがこれなら大丈夫だろう。
シュラフのチャックに手をかけ引こうとした時、洞穴の奥から物音がした。
「熊?」
即座に腰のナイフを出して構えて幸を背に奥の闇と対峙する。
「ばれちゃったじゃないか!」
「私は知らん」
「もう少しだったのにぃ」
奥から小声だが子供のような声で言い争いをしている。
「誰かいるのか?!」
幸を起さない程度の声で奥に言ってみる。
少しの間。
「戻るぞ!」
「ばれたのにか?」
「このままにはできないわよぅ」
また子供の声で言い争い。
(熊でなくて一安心だがこんな所に子供がいるのはおかしい…)
「誰か知らないが出て来てくれないか?」
また少しの間。
「出て来いって言ってるぞ?」
「で、のこのこ出てぶすりと」
「先手必勝?」
(ナイフがいかんという事か?)
何者かわからないので防衛の為のナイフをしまうのはリスクがあるが
このままでは出てこないのでサックに収めた。
「ナイフはしまったから出て来てくれ」
「では出るか」
「出るのかよ!」
「出るつもりだったんでしょう?」
と言い争いしながら奥から出てきたのは
化粧をしていないお稚児さんみたいな服装の3人の子供だった。

<つづく>
0484名無しさん@ピンキー2013/09/12(木) 13:09:16.66ID:DzXVfQcW
あげ
0486名無しさん@ピンキー2013/09/13(金) 17:38:05.47ID:qWLehXN7
今書いてる途中だけど、保管庫みる限りどうしても似たようなものになってしまうね…
0489名無しさん@ピンキー2013/09/13(金) 18:26:08.27ID:FxGeMoh3
変にオリジナリティ追求して依存度下がるより遥かにマシ
0495名無しさん@ピンキー2013/09/15(日) 02:12:44.36ID:zfc3Iu81
ええええ
ムチムチのエロチックボンバイエて
よく分からない……
0496名無しさん@ピンキー2013/09/15(日) 13:28:03.46ID:DTKD3Zxl
だからムチムチの太ももでいろんな角度からボンバイエででかいオッパイボヨンでアヒー!だよ
0497名無しさん@ピンキー2013/09/15(日) 16:09:00.72ID:zfc3Iu81
>>496
ボンバイエがいまいち
調べたら殺せって意味らしいが
そもそも依存に関係あるのかそれ…
0499名無しさん@ピンキー2013/09/16(月) 15:38:26.68ID:kP2v7/3I
ところで、保管庫のなかでオススメものって何がある?
できれば完結済みか今も継続中なのがいいんだけど。

宜しくお願いします。
0503名無しさん@ピンキー2013/09/17(火) 02:45:30.77ID:cL5Vp4bH
wkz◆5bXzwvtu.E氏のわたしの棲む部屋

俺はこういうのがすき
0508名無しさん@ピンキー2013/09/18(水) 02:06:56.41ID:9Z2KIEvN
依存っていう狭いカテゴリーの中で飽きさせず魅せるってのは凄いよね
保管庫の作品は何度も読みたくなる作品ばかりだし
0513名無しさん@ピンキー2013/09/21(土) 23:48:42.43ID:eGIQVl8d
そうだねぇ
あー子供の頃から依存させる依存調教もの来ないかなぁ
0514名無しさん@ピンキー2013/09/22(日) 00:55:51.29ID:sqWez8TB
ねっとりとした依存調教いいよね
片親の子とか寂しい女の子を
0516『徒花』第一話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/23(月) 22:45:44.38ID:ET2TJG0M
初投稿失礼します

教師主人公と、オナニー(セックス)中毒の優等生ヒロインの話
依存度は中程度
全部で六話前後の予定です
0517『徒花』第一話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/23(月) 22:46:28.04ID:ET2TJG0M
「――本日のHRは以上だ。日直、号令」
 信行の言葉を合図に、立ち上がった日直が礼を促す。
 生徒全員が一斉に席を立ち、頭を下げ、それが済むと同時に、
放課後の教室はたちまち喧騒に飲み込まれた。
 連れ立って部活動へ向かう者、席に居残って雑談を始める者、
鞄を手に帰途を急ぐ者。様々な人の波を視界に捉えながら、
信行は教室の隅に視線を投げる。
 窓際の、一番後ろの座席。目当ての人物はそこで、友人と何やら
話し込んでいる様子だった。
「能美」
 教壇を動かず、その横顔に声を掛ける。名を呼ばれた女生徒――能美綾は、
はいと応じてこちらに駆け寄ってきた。
「悪いな。話中に呼び立てて」
「いえ、いいんです。それで、津田先生。私に何か御用ですか?」
 緩やかに頭を振り、信行を見上げる綾。その拍子に、長い黒髪がさらりと
肩を流れていく。束の間、その動きに目を奪われた。
「……先生?」
 不思議そうに、綾がまた問う。わずかに首を傾げ、こちらを見上げる
その面差しは、取り立てて美人でもなければ、可憐な訳でもなかった。
けれど、どんな時でも真っ直ぐに相手を見つめる瞳には、他の誰にも
似ていない、彼女の心根の清さが映る。
 その輝きを、信行はいつも、美しいと思うのだ。
「…………。……あの」
「いや、すまない。少し考え事をしていた。それより、昼に相談された件だが」
 ほんのりと朱に染まる頬から視線を剥がし、教卓を片付けながら口を開く。
そうしていないと、またいつまでも見入ってしまう気がした。
「急な職員会議が入ってな。先に生徒会室で待っていろ。後で行く」
「はい。分かりました、先生」
「なになに? 綾、生徒会の用事ー?」
「うん、ちょっと。ごめん、買い物はまた今度誘って」
「いいよいいよ、気にしないで。それにしても、もうすぐ試験期間だっていうのに
また居残りなんて、生徒会長は大変だねー」
 会話が聞こえていたのか、先程綾と話していた生徒がこちらへ向かってくる。
話し込む少女達の声を聞きながら、信行は教室を後にした。
0518『徒花』第一話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/23(月) 22:48:03.22ID:ET2TJG0M
 会議は思いの外長引き、細々とした用事を済ませて職員室を出た頃には、
辺りはすっかり茜色に染まっていた。
 差し込む西日に目を細めながら、待ち人のいる部屋へと急ぐ。生徒会室の
扉を開けると、彼女は一人、机に向かって参考書を広げていた。
「明かりぐらい点ければいいものを。目に悪いぞ」
「あ、先生……すみません、気が付かなくて……」
「いや、いい。それより、待たせてすまなかったな」
「いえ、いいんです。私のほうこそ、申し訳ありません。お忙しいのに無理を言って……」
「無理であればそう言う。引き受けたのは私の判断だ。能美が気に病む
必要はない。それより、見てほしいものというのは?」
「あ、はい。こちらです」
 手近な椅子に腰を下ろす信行に、綾は書類の束を差し出す。見てみれば、
先立って生徒会に提出された各部活からの要望書をまとめたものらしい。
 茶を淹れるという綾に礼を述べ、早速書類に目を通し始めた信行は、
整然とまとめられたその内容に目を瞠った。
 生徒会が要望書の提出を締め切ったのは、確か先週の土曜だったはずだ。
今日はまだ週が明けたばかりの月曜日。だというのに、この内容の充実ぶりは
どうしたことか。
「……仕事が早いな。休みの間も学校に来ていたのか」
「はい。丁度、時間がありましたから」
 湯飲みを机に置いて、綾ははにかむように微笑む。そのくらい、なんでもない
ことだと言うように。しかし、学期末試験を間近に控えた時期の学生に、
暇があるはずもない。
 責任感の強い彼女のことだ。きっと遊びや休息に当てる時間を割いて、
会長としての職を全うしようと努力したのに違いない。勿論、それを言い訳に
勉強を怠けることもなく。
 それだけの努力をして、代償を払って、しかし、彼女はそれを鼻にかけはしない。
自分はやるべきことをしただけだからと、なんの賞賛も求めずに、ただ、黙って
前を向いている。
 立派な子だと思う、心底。二回りも年の違う信行でさえ、彼女のひたむきさな
生き方には、頭の下がる思いがする。
 だからこそ、信じているのだ―― その貴さは、たった一つの瑕瑾如きで、
価値を失ってしまうものではないと。
0519『徒花』第一話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/23(月) 22:50:35.97ID:ET2TJG0M
 ふと窓の外に目をやると、西の空を染め上げていた太陽は、一日の務めを
終えて地平に没しようとしていた。
「……もうこんな時間か」
 書類を机に置き、席を立つ。物音を聞き付けて、綾がゆっくりとこちらを見た。
「リストは一通り目を通した。別段訂正する箇所もない。このまま私が預かるが、
構わんな?」
「……は、い」
 小さく頷く彼女の前には、先程と同じようにノートと参考書が広げられている。
だが、いつの頃からか、シャープペンを握っていた手は動きを止め、膝の上で
所在無さげに縮こまっていた。
 その指でスカートの端を握り、綾は、何か言いたげに信行の顔を見つめる。
唇が、何度か開きかけ――しかし、そこから言葉が出てくることはなく、彼女は
力なく俯いた。
 その様子を、不審だとは思わない。こうなるだろうという予感は、昼休み、
相談があると持ちかけられた時からあったのだから。
 項垂れる少女から視線を外し、信行は窓へと向かう。カーテンを引くと、
ただでさえ仄暗かった室内から一気に光が消えた。
 部屋の鍵は、入ってきた時に施錠してある。こうしてカーテンを閉めてしまえば、
外にいる者達に中の様子は分からない。
「――能美」
 振り向いて、名前を呼ぶ。それだけで、綾は傍目にも分かる程に身を震わせた。
 椅子を引き、彼女の顔を正面から覗き込む。膝の上で握り締められた手に
掌を重ねると、細い体がびくりと跳ねた。
「せん、せ……」
 啜り泣くような声を零して、綾がおずおずと顔を上げる。暗がりに慣れてきた
目には、その頬が赤く上気しているのがはっきりと見て取れた。
「先、生……ごめ、ん、なさ……わた、し……」
「分かっている……辛いんだろう?」
 潤んだ瞳から流れ落ちる雫を、そっと拭ってやる。途端、彼女は打たれたように
身を竦ませ、掠れた悲鳴を上げた。
「能美?」
「…………っ!」
 ぎゅっと目を閉じ、小刻みに身をわななかせるその仕草に、もしやと思って
視線を下げる。
 スカートの上からでは分からなかったが、信行がそこに目をやるのと同時に、
綾ははっと肩を震わせ、隠すようにスカートを押さえた。その行動を見れば、
何が起きたのかは疑う余地もない。
 一瞬、信行は発するべき言葉を見失う。
 その反応を、どう解釈したのか。一際大きく体を震わせたかと思うと、
綾は火が付いたように泣きじゃくり始めた。
0520『徒花』第一話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/23(月) 22:52:01.69ID:ET2TJG0M
「ごめ、なさっ……ごめんなさい、ごめんなさいっ……わた、し……!」
 自分の体の浅ましさに打ちのめされ、少女は細い体を縮めて涙を零す。
 その姿はまるで、この世のどこにも居場所がないのだというかのようで――
抱き締めてやらずにはいられず、信行は彼女の震える背に腕を回した。
「せ、ん……せ……」
「嫌か?」
「違……でも、私、こんなだから、また……っ」
「それでいい」
 囁いて、そっと耳朶に口付ける。ただそれだけの刺激にも、綾は怯えるように
息を詰め、激しく身をわななかせた。
「お前の体がそうなのは、お前の所為じゃない」
 異常な程、敏感に反応してしまう体。事実、それは“異常”と表現する
他ないものなのだと、信行は既に知っている。
 だから彼は、何かを求めるように縋り付いてくる指を拒まない。己の立場も、
ここがどこであるのかも、全て承知した上で、抱き締めた少女の体に手を伸ばす。
 腿の間に指先を潜り込ませると、案の定、そこは滴り落ちた蜜にぐっしょりと
濡れていた。
「……先、生」
「よく我慢したな。すぐ楽にしてやるから、安心しろ」
 震える体を抱き締めてやりながら、ショーツの淵に指を掛ける。綾は
拒むこともなく、むしろ先をねだるように、自分から腰を浮かせた。



 濡れた下着を下ろし、汚れてしまわないようスカートも脱がせて、椅子の
前に屈み込む。丁度、ぴたりと閉じ合わされた彼女の膝が眼下にくる位置だ。
「先生……」
 その膝をもじもじと擦り合わせ、綾は潤んだ目で信行を見つめる。
見つめるだけで、何も言わない。本当はすぐにも楽にしてほしいはずなのに、
耐えがたいもどかしさを耐えて、じっと信行に身を任せている。
 どうしてほしいのかと、そう尋ねれば、彼女はきっと口を噤むだろう。羞恥の
為ではなく、信行に迷惑を掛けまいとする気持ちから。もしこのまま放っておけば、
この少女は気が狂うまで、そうして一人で苦しみに耐え続けるに違いない。
 そういう子なのだと、知っている。だから信行は何も言わず、強引に足を開かせた。
「ぁ……!」
 突然の行動に、綾は戸惑ったような声を漏らす。
 だが、それだけだ。
 腿を押さえられ、目一杯に広げた足の間を覗き込まれても、彼女は
身を捩ろうとさえしない。袖口を噛み、ぎゅっと目を閉じて、ただ小刻みに
四肢を震わせるばかりだ。
 細く響く泣き声には、それでも確かに、先を期待する色が混ざっている。
それを証明するように、しとどに濡れた秘処から、また新しい蜜が零れた。
0521『徒花』第一話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/23(月) 22:53:58.78ID:ET2TJG0M
 少女の体とはいえ、淡い繁みに覆われた性器は、大人の女のそれとなんら
変わらない色香を放ち、男を誘う。ふっくらと肉付いた秘唇の狭間、小さな
膣口がひくひくと蠢いて雫を垂らす様を見せられれば、欲情しない男などいないだろう。
 しかし今、信行の胸に込み上げるのは、情欲とは似ても似つかない
痛ましさの念だった。
「せん、せぇ……っ」
 束の間、沈思に耽ってしまった意識を、弱弱しい泣き声が引き戻す。
快楽をねだる欲と、そんな自分を厭う悲しみで、引き裂かれる寸前の声が。
「……すまん」
 憂いは消えない、そんな声を聞かされてしまえばなおのこと。だが、下手に
自分が躊躇しては、彼女の苦悩を長引かせるだけだ。
 小さく息を吐き、胸の内の葛藤に区切りをつけると、信行は躊躇わず、
少女の性器に唇を寄せた。
「ひっ……!」
 滴る愛液を舐め取るように、柔らかなそこに舌を這わせる。途端、感電でも
したかのように、綾は体を跳ね上がらせた。その反動で椅子が揺れ、派手な
音を響かせる。
「ん、ゃ、せんせっ……!」
「声を出すな、抑えていろ。できるか?」
「ふ、ぅっ……は、い……ッ」
 無体な要求だとは分かっていたが、綾は大人しく頷いて、制服の袖を強く噛んだ。
 耳に届く嬌声がくぐもった音に変わるのを確認し、さらに強く唇を押し付ける。
指で恥丘を押し広げ、奥の入り口を舌先でつついてやると、垂れ落ちる蜜は
たちまちにその量を増した。
「ん、んんっ、んっ……ん、ふ、っぅ! ん、んんー……〜〜ッ!」
 そうした愛撫を何度か繰り返すうち、不意にくぐもった悲鳴が聞こえ、綾が
全身を強張らせる。同時に秘処から夥しい量の愛液が溢れ出し、口の周りを
べったりと汚した。
(イったか)
 腿へ添えた手にさざ波のような震えを感じながら、彼女の様子を窺う。
 くたりと背もたれに身を預け、綾は大きく肩を喘がせていた。涙に濡れた瞳は
絶頂の名残に蕩けきって、どことも知れぬ虚空を眺めている。しかし信行は、
快楽に陶然とするその表情の奥に、少女の懊悩を見て取った。
「……っ」
 しばらくして、落ち着きを取り戻したらしい彼女は、哀しげに唇を引き結ぶ。
その理由は、推測するまでもない。
 彼女は今、自分自身を軽蔑している。
 だというのに。少女の体は少女自身の心を裏切って、さらなる快楽を求めようとする。
「ん、っ……!」
 変化は、唐突だった。悩ましげな吐息を零したかと思うと、綾は両手で
自分の体を抱き締める。苦しげに身を縮めるその背は、喘ぐように震えていた。
「……能美」
「大、丈夫、です……! このぐらい、なら……我慢、でき、ます……から……っ」
 か細い声は、聞かなかったことにする。無理をしていることが明らかだったからだ。
 濡れた口元を拭い、うずくまる体をそっと抱き上げる。窺うようにこちらを
見遣る瞳に頷きを返して、優しく背を撫でてやった。
「せんせ……」
「分かっている。大丈夫だ」
 抱えた体を机の上に座らせてやり、腰のベルトに手を掛ける。綾は、何も
言わない。ただ、何かを期待するように、零れる吐息が甘い熱を帯びた。
0522『徒花』第一話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/23(月) 22:57:06.77ID:ET2TJG0M
 片手でズボンの前を寛げながら、空いた腕で少女の腰を抱き寄せる。
ほっそりとした項に口付けを落とすと、上気した肌が密やかに震えた。
「能美。上を脱げ」
「は、い……」
 震える指がおずおずと伸び、ブラウスのボタンを外していく。その手の動きを
追って、少しずつ露わになる肌を唇で撫でた。
 やがて、はだいたブラウスの襟元から小ぶりな膨らみが覗き、唇はその谷間に
滑り降りる。
 一度、小さく体を跳ねさせて、綾は躊躇わず、乳房を覆う下着を上にずらした。
 ふるりと控えめに震えて、布地の下から乳房が零れ出る。
 少女らしい淑やかな丸みには、年相応の未熟さがありありと残っている。
触れることを、躊躇わせずにはおかない幼さ。だからこそ余計、先端で
尖り立つ乳首の色鮮やかさは、ひどく目に焼き付いた。
 込み上げる背徳感を噛み砕き、ぷくりと膨らんだそこを口に含む。途端、
声にならない悲鳴を上げて、綾は弾かれたように背を反らした。
「ぁ、んっ! んっ、んゃ、やぁぁ……!」
 崩れ落ちそうな体を支えてやりつつ、グミに似た感触を舌の上で転がす。
周囲の乳輪ごと吸い上げ、硬く張った先端を舌先で押し潰してやれば、
抱き寄せた体は腕の中で激しく身悶えた。
 水の滴る音が、かすかに鼓膜を打つ。今のでまた、イってしまったのかもしれない。
 なおも乳首への愛撫を続けながら、下着の中から半勃ちの肉棒を取り出す。
何度か扱き上げれば、それはすぐに硬度を増して自立した。
「能美。そこへ横に慣れ」
 屈めていた身を起こし、ポケットからゴムを取り出す。封を切ったそれを手早く
性器に被せると、信行は綾の両足を抱え上げた。心得たように、綾は大人しく
上体を倒す。ほっそりとした脹脛を肩に担ぎ、ぐっと体を折り曲げさせると、苦しいのか、組み敷いた体から息を詰める声が聞こえた。
「すまん、苦しいか?」
「平気、です……」
 零れ落ちた涙が、声にできない言葉を伝える。早く、と。
 頷く代わりに、濡れそぼった秘処に勃起した性器を押し当てる。ぬかるみを
掻き混ぜるように軽く擦ってやれば、それだけで、綾はびくびくと全身を痙攣させた。
「挿れるぞ。力を抜いていろ」
 こくりと頷いて、彼女はまた、唾液に塗れた袖口を噛む。
 こんな時、キスの一つもしてやれれば、彼女の心も少しは和らぐのかもしれない。
 だが、自分とこの少女の関係を思うと、軽はずみな行動は憚られた。
 自分は、彼女の恋人ではないのだから。許されることとそうでないことの境を、
見誤ってはならない。
 だから信行は、彼女の額にキスをする代わりに、その髪を優しく撫でてやり――
一息に、少女の膣へと肉棒を突き入れた。
「んんっ――!」
 瞬間、打たれたかのような激しさで、綾が背を仰け反らせる。
 苦痛の為ではない。その証拠に、信行を見つめる彼女の目は、途方もない
悦楽に蕩けていた。
「先、っ……生……!」
 袖口を噛んで声を殺しながら、綾は空いた片手を差し伸ばしてくる。
震える指が信行の肩に触れ、そのまま強く握り締めてきた。
 指の食い込む感覚に、鈍い痛みが伝う。だが、その程度の苦痛では、
込み上げてくる快楽を散らすことなどできはしない。
「く、っ……」
 奥歯を噛み締め、突き上げてくる快感を強引に抑え込む。
 互いに望んでの行為ではないと、分かっているのに。それでも、少女の狭い
膣に己を埋めていると、耐えがたい衝動が腹の底から湧き上がって止まらない。
0523『徒花』第一話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/23(月) 22:59:50.94ID:ET2TJG0M
 もっと深く、この感触を貪りたい。温かな柔肉を掻き回して、無防備な
その体を思う様よがり狂わせたい。
 際限なく膨らんでいく暗い欲望を、掌に爪を立てて殺す。それができたのは、
声が聞こえたからだった。
 しきりにしゃくり上げる、弱弱しい声が。
「ごめ、なさ……ごめん、な、さい……ごめんなさい、せんせぇ……っ」
 涙と涎で顔中をぐしゃぐしゃにして、綾は泣きながら詫び続けている。繰り返し、
繰り返し。その一語ごとに、己の浅ましさを呪いながら。
 しかし、その体はどこまでも彼女に残酷だった。
 挿入したきり動かない信行に焦れたように、肉棒を包む襞が蠢き始める。
絡み付いてくるようなその動きに、思わず声が漏れそうになり、慌てて唇を引き結んだ。
だが、そんな信行に追い打ちをかけるように、綾が、ゆっくりと腰を揺らめかせ始める。
「っ……能美」
「ん、ぁ、ふっ……! ごめ、なさっ……止まら、なっ……!」
 恐らく、意識しての行動ではないのだろう。彼女自身、自分の行動に戸惑うように、
いやいやと頭を振っている。
 だが、一度火が付いてしまった体を押し留めることはできなかったらしい。
腰の動きは徐々に激しさを増し、結合部からは愛液のしぶく音が鳴り出す。
「はんっ、ん、あっ、ゃ! だめっ……だめ、止まってぇ……っ」
 とうとう嗚咽さえ洩らし、彼女は誰にともなく哀願した。もう許して、と。
 しかし、涙ながらの願いが叶うことはない。それを聞く信行に、叶えて
やれるだけの力がないから。
 信行にできることは精々、彼女を苦しめる体の熱を、鎮めてやることぐらいだった。
 淫らに揺れる腰の動きに合わせて、膣腔の奥まった場所を突き上げる。
 衝撃に、細い腰が跳ね上がった。それをさらに押し上げるようにして、
小刻みに彼女の内部を擦り上げる。
 こうして抱き合うのは、初めてのことではない。どこをどうしてやればいいかなど、
嫌になる程に知っている。
 そのうちの一つ、クリトリスの裏あたりを亀頭で擦ってやれば、綾は
耐えきれないというように、信行の背に腕を回してきた。
「ん、ふ、ぁんっ! せん、せ……ッ」
「大丈夫だ。すぐ楽になるから、もう少しだけ、我慢しろ」
 縋り付いてくる体を受け止め、耳元で囁く。こくこくと頷くのを視界の端に
捉えながら、さらに深く腰を動かした。
 華奢な体が腕の中で身悶えるたび、彼女の膣もまた、自らを犯す肉棒を
狂喜して咥え込む。
 ゴム越しでもはっきりと分かる、熱さと柔らかさ。無数の襞が細やかに震えて
吸い付いてくる感覚は、どんなに己を律しても、到底堪えられるものではない。
自然、律動を繰り返す程に、信行も息を荒げていく。
「んっ、く、ぅ……んんっ! せんせ、せんせっ……!」
「ああ……イっていい」
「はい、はいっ……んっ、ん、ん! んんん――ッ!!」
 一際激しく背を仰け反らせて、抱き締めた体が痙攣する。一緒に収斂する
膣の動きに、信行もまた、理性を飛ばした。
0524『徒花』第一話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/23(月) 23:01:39.20ID:ET2TJG0M
 束の間の陶酔が過ぎ、意識が覚める。ふと気付くと、信行の手は知らぬうちに、
少女の細い体を強く抱き締めていた。
「……すまん」
 無意識の行動に多少の焦りを覚えながら、急いで体を離す。
 だが、謝罪の声は相手に届かなかったようだ。
 信行が身を起こしても、綾は反応らしい反応も示さず、ただ荒い呼吸を
繰り返している。くたりと机に投げ出された体は絶頂の激しさを示すように、
まだ小刻みにわなないていた。
「能美……能美、しっかりしろ」
「ぁ……せ、ん……せ……?」
 何度か呼びかけると、虚ろだった視線が少しずつ力を取り戻していく。
それを確かめて、萎えた性器を彼女の中から引き抜いた。
 刺激しないよう配慮したつもりだったが、先端が抜け落ちた途端、弛緩していた
はずの体が俄かに強張ったのに気付く。
「ひっ……」
 抑えようもなく、また漏れてしまう声。怯えるように首を竦める姿を見て、
あるいはと思う。足りなかったのではないかと。
「能――」
「大丈夫……も、ほんとに、大丈夫ですから……っ」
 口を開きかける信行を遮って、綾は弱弱しく微笑んだ。
 心配を掛けまいとしているのは分かる。だが、涙に塗れた顔で無理矢理に
笑う姿には、安堵よりもむしろ痛ましさが募ってならない。
 さりとて、これ以上の行為を避けようとする彼女に、無理を強いることも
できなかった。そうすれば彼女はまた、己の浅ましさに打ちのめされて泣くことになる。
「……そうか。分かった」
 だから。胸に込み上げるいくつもの想いを飲み下し、信行は、綾の言葉に頷いた。
「起き上がれるか?」
「はい……」
 よろよろと身を起こす体を机から抱き下ろし、手近な椅子に座らせてやる。
途端、彼女は半裸の体を隠すように四肢を縮こまらせた。はっとして、信行も
体ごと後ろを向く。思えば自分もまだ、性器を露出させたままだ。
「すまん。つい、失念していた」
「い、え……」
 短くやり取りを交わし、それぞれに身なりを整える。互いの間に流れる空気は、
先程まで体を重ねていたとは信じられない程にぎこちなく、硬い。
 事後は、いつもこうだった。理性を犯していた熱が過ぎ去って現実が戻ってくると、
信行も綾も、自分達のしていることへ思いを致さずにはいられない。
(……俺は、何をしている)
 ゴムに溜まった白濁を見ていると、信行は暗然とした思いに駆られる。
(俺は、こんなやり方でしか、彼女を楽にしてやれないのか)
 己の無力に唇を噛んだ、その時。
「ん……っ」
 不意に、甘ったるい声が耳に届いて、ベルトを締めていた手が止まる。
「ぁ、んっ……ん……ふ、っ……」
 背後で繰り返し零れ落ちるそれは、紛れもない嬌声。何も知らない者が聞けば、
自慰にでも耽っているのかと思うのに違いない。
 だが、信行は知っていた。背後を見ずとも分かる、彼女は今、自身の体に残る
情事の痕を拭っているだけなのだ。
 ただ、それだけだというのに――この少女はこうして、心ならずも喘ぎを零さずに
いられない。
「ひっ、く……ふ、っ……も、やだぁ……っ」
 次第に涙を帯びていくその声を聞きながら。しかし信行は何もできずに、ただ、
その場に立ち尽くすしかなかった。
0531『徒花』第二話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/28(土) 22:53:34.09ID:S0ulDB4q
第一話にGJありがとうございました
>>517->>524の続きを投下します

教師主人公と、オナニー(セックス)中毒の優等生ヒロインの話
依存度は中程度で全6話前後の予定
今回、ヒロインがモブに乱暴されかけるシーンがあります
未遂ですが苦手な方はご注意下さい

あと、一話で二人の年齢差を『二回り』と書きましたが、『一回り』の間違いです
失礼しました
0532『徒花』第二話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/28(土) 22:55:34.07ID:S0ulDB4q
 信行と綾の関係が変化したのは、一月程前のことだ。

 年の瀬も迫った師走の暮れ。その日、仕事納めを済ませて帰途についていた信行は、
最寄駅のホームで意外な人影を見付けたのである。


(……能美?)
 改札へ向かっていた足を止め、信行は今一度、前方に目を凝らす。
 やはり間違いない、彼女だ。
 白いハーフコートと、そこからわずかに覗く黒いミニスカート。すらりと伸びた脚線を、
スカートと同じ色のハイソックスが覆っている。
 匂やかな出で立ちは、普段の制服姿とはまるで印象が違っていて、一瞬見間違い
かとも思う。だが、改札を通る瞬間にちらりと垣間見えた横顔は、日頃学校で見慣れた
それに紛れもなかった。
 能美綾。信行が担任を務めるクラスの一員であり、生徒会長という立場もあって、
彼にとっては何かと交流の深い生徒だ。
 その彼女が、きょろきょろと辺りを窺いながら、人目を避けるようにしてどこかへ足早に
向かっていく。
 その背中を横目で追いつつ、信行は腕時計を確認した。時刻はもうじき、九時に
なろうかという頃。うら若い少女が一人歩きをするには、いささか遅い時間に思える。
それに、信行の記憶が正しければ、綾の自宅はこの付近ではなかったはずなのだ。
 ふと、悪い予感が胸を掠める。
 しかしそれは、信行の知る綾という少女には、まるで似つかわしくない代物だった。
(……いや。能美に限って、そんなはずはない)
 馬鹿馬鹿しい想像だと、自分で自分に呆れる。
 だが。
 先程一瞬だけ見えた、綾の表情。それが、ひどく思い詰めたものであったような気が
して――気付けば信行の足は、階段を上がっていく彼女を追って歩き始めていた。



 階段に辿り着く頃には、少女の後ろ姿はもう見えなくなっており、急に不安に駆られた
信行は、地上への階段を一息に駆け上がった。
 軽く息を切らせつつ、駅を出て周囲を見回す。だが、確かにこちらへ来たはずの人影は
どこにも――いや。
(いた)
 駅の右手、線路に沿って続く道に、探していた姿を見付ける。
 しかし、胸を撫で下ろしたのも束の間のこと。次の瞬間には、信行は先刻以上の
嫌な予感に、眉を顰める羽目となった。
 夜道を行く綾の隣には、会社帰りと思しい、サラリーマン風の男の姿があったのである。
 小太りの体形と薄くなった頭髪から察して、年齢は四十を過ぎていよう。その男は綾に
寄り添うようにして歩きながら、彼女にしきりと話しかけているようだった。それに頷き返す
など、綾のほうにも男に応じている様子が窺える。
 距離があるのと、辺りが暗い所為で、両者の表情までは分からない。だが一見した
限り、彼らは和やかに会話をしているように見受けられた。親戚のおじさんと歩いている
のだと言われれば、なるほどそうかと、頷くこともできるだろう。
 だが、そんな明るい推測ができる程、信行は楽観主義者ではなかった。
 二つの人影が角を曲がるのを見て、信行もすぐさま駆け出す。
 胸中を占める予感は既に半ば以上、確信に変わり始めていた。
0533『徒花』第二話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/28(土) 22:57:35.63ID:S0ulDB4q
(……! いない?)
 後を追って角を曲がった矢先、信行はその場に足を止めた。十分間に合う速度で
走ったつもりであったのに、駆け込んだ先の路地にはもう、誰の姿もなかったのだ。
(くそ、どこに――)
 いよいよ膨らんでいく焦りに奥歯を噛み、再び駈け出そうとして――ふと、脳裏に
閃くものがある。
 その閃きに従って、信行はすぐそばの角を曲がった。そのまましばらく細い道を進むと、
道の正面に公園の入り口が見えてくる。
 児童公園にしては敷地が広く、昔は近所の子供の遊び場として有名だったが、
いつの頃からかホームレスが住み付くようになって、次第に寂れていった場所だ。今は
もうそのホームレスも姿を消し、野良猫ですら寄り付かないと聞いている。
 人の手が入らなくなった所為か、外周を覆う植込みは枝葉が生い茂り、ここからでは
中の様子は窺えない。
 だが。
 繁茂した木々の向こうからは、男女の言い争う声がはっきりと聞こえてきていた。



「あ、あの……! ごめんなさい……! 私、やっぱり嫌です、できません……っ」
「そんなこと言わないで。大丈夫。心配しなくても、ちゃんと気持ち良くしてあげるからね」
「で、でも……!」
「ほら、恥ずかしがらないで。本当は君だって興奮してるんだろう? さあ、君の
いやらしいところをおじさんに見せてごらん」
「あ、やっ、やだ……! 止めてっ……止めて下さい! いやぁ……!」
「―― そこで何をしている!!」
 繁みの中へ踏み込むと、少女に圧し掛かっていた男が、弾かれるようにこちらを見上げた。
「な、なっ……」
 ぽかんと口を開ける間抜け面を見た瞬間、男を殴り飛ばしたい衝動に駆られる。
それをどうにか理性でねじ伏せ、代わりに胸倉を掴み上げた。
「そこを退け。この、クズが」
 短く吐き捨てて、未だに呆然としている男を、少女の上から突き退ける。
 無様に土を舐め、蛙のような呻きを漏らす男。それにはもう一瞥もくれず、信行は
倒れている少女に駆け寄り、その体を抱き起した。
「すまない。遅くなった。怪我はないか、能美」
「津田先生……?! え、そんな……どうして……?!」
 零れんばかりに眼を見開いて、綾は信行を凝視する。一見した限り、怪我を負った
様子はなかった。身に纏ったコートのボタンも、上までしっかりと止められている。だが、
短いスカートは無体にも捲り上げられて、下着が露わになっていた。
 綾は信行の出現に余程驚いているようで、そんな自身に気を配る余裕もないようだ。
硬直してしまっている彼女に代わり、信行は乱れたその身なりを整えてやる。
「……悪かったな」
「え……?」
「私がもたついていなければ、お前に怖い思いをさせずに済んだ……すまない」
 ハンカチを取り出し、泥に汚れた頬をそっと拭ってやった時。ずっと蚊帳の外だった男が
やおら立ち上がったかと思うと、信行を怒鳴り付けてきた。
「な、なんだあんたは!? い、一体なんの権限があって、こんな……!」
 醜悪な面差しを怒りに歪め、口の端から唾を飛ばして、男は信行に食って掛かる。
 その、了見違いも甚だしい申し条に。一度は鳴りを潜めていた激情が再び鎌首を
もたげ、信行は静かに立ち上がった。
0534『徒花』第二話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/28(土) 22:59:17.27ID:S0ulDB4q
「ふざけるな。何が権限だ。そんな言葉を口にする資格が、貴様にあるとでも思っているのか」
「うるさい! 何も知らない部外者がしゃしゃり出てきて、偉そうに説教を垂れるな!」
「言い訳は警察でしろ。婦女暴行未遂の現行犯で突き出してやる」
「暴行? ふん! 暴行だと? 馬鹿を言うな! 私がいつそんな真似をした!」
 そこで不意に、怒り狂っていた男が唇の端を吊り上げる。せせら笑うようなその表情、
そして何より、自分の行いを欠片も悔いていない言動に、瞬間、怒りが沸点を超えた。
「貴様――!!」
「ひっ……?!」
 思わず、感情のままに怒声を張り上げる。終始強気だった男はその途端、怯えるように
表情を歪めた。
 逃げ出そうとする男の胸倉を掴み上げ、殴り付けてやろうと拳を振り上げて、
「駄目、先生……!!」
 直後、か弱い腕にそれを押し留められた。
「……! 能美……?」
「駄目ですっ……お願いですから、殴らないで下さい、先生……! その人は……
その人は、悪くないんです……っ」
「何を――」
 信行の腕に取り縋り、綾は泣きながら懇願する。その不可解な言葉の意味を
問おうと、信行は傍らの少女を見遣った。
 同時に、男から注意が逸れて、胸倉を掴んだ手もわずかに緩む。
 男は、その隙を逃さなかった。
「くっ……この!」
 突如、男が猛然と猿臂を突き出し、信行に縋る綾を突き飛ばす。
「きゃ……?!」
「能美!」
 華奢な体躯はあっけなく姿勢を崩し、地面に倒れ込んだ。それに気を取られた信行も
男のタックルを受け、不覚にもたたらを踏んでしまう。
 当然、男を拘束していた手も力を失い。自由になった男は、恐ろしい速さで自身の
鞄を掴み取ると、一目散に駆け去っていく。
「このっ……待て!!」
 瞬きの間に小さくなる背中。それを追い掛けようと一歩を踏み出した瞬間、
「先生……!!」
 決して無視できない声が、信行をその場に留まらせた。
 ゆっくりと、背後を振り返る。地にへたり込んだ少女は立ち上がることさえも忘れて、
ただ必死に信行の顔を見つめていた。行かないでと、そう懇願するように。
 しばし、信行は、己が次に取るべき行動を見失う。今すぐにも男の後を追わなければ、
奴はこのまま逃げ果せてしまうに違いない。
 だが。
 そうかといって、こんな目をした少女を置き去りにして行くことはできず。踵を返した信行は、
未だに座り込んだままの彼女に手を差し伸べた。
「……怪我はないか?」
「はい……」
 素直に手を握り返し、綾はゆっくりと立ち上がる。
 可哀想に。元は白かったであろうコートはすっかり土に汚れ、無惨な有様を晒していた。
 否、コートだけではない。艶やかな黒い髪も、澄んだ色の肌も、少女の体の至る所に、
加えられた乱暴の痕が見て取れた。
 俯く少女を見守る信行の心中には、二つの思いが込み上げる。少女を痛ましく思う
気持ちと、そして、こんな真似をした卑劣漢に対する憤懣が。
 そのどちらを優先するべきか、わずかな逡巡が芽生える。だが、悩んだ時間は短かった。
「能美」
 意を決し、信行は、少女の華奢な肩に手を添える。そして静かに、その顔を覗き込んだ。
「ひとまず、病院に行こう。それから、警察へも」
 瞬間、掌に包んだ肩がびくりと跳ねたのが分かる。
 予想した通りの反応。彼女の胸中は想像に難くないが、良識ある大人として、ここで
口を噤む訳にはいかなかった。
0535『徒花』第二話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/28(土) 23:01:19.53ID:S0ulDB4q
「……お前の気持ちは分かるつもりだ。こんなことを、誰にも知られたくはないだろう。
だが、お前がここで口を噤めば、奴はまた同じことを繰り返す。またお前が狙われるかも
しれんし、あるいは、別の誰かが被害に遭うかもしれん。そんなことがあってはならない
……分かるな」
 逃げるように俯く視線を追いかけ、切々と説く。それが、教師である己の責務だと信じて。
 しばしの、沈黙を経て、
「……違、うん……です……」
「……能美?」
 震える唇から紡がれた言葉は、信行が予想していたものとは違っていた。
「違う、そうじゃないんです……あの、人は……何も、悪くないんです」
「能美……」
 そんなはずはないのに―― こんな時にまで自身を省みようとする少女の心が、信行に
は痛ましくてならない。
 だが、お前の所為ではないと諭してやろうとした言葉は、形になる前に消える。
「っ……わ……わた、し……ッ」
 綾が、涙に震える声で、信じがたいことを口にしたから。
「私……オナ、ニー……して、っ……たん、です……! 電車のっ、中で……っ」
 最初。彼女が一体何を言っているのか、信行は本気で理解できなかった。
「……オナ、ニー…………?」
 告げられた言葉を、阿呆のように復唱する。
 意味は知っている。どんな行為かも分かる。
 だが、それをこの少女が、しかも、電車の中で?
 呆然とする信行を余所に、綾は嗚咽に肩を震わせながら、なおも告解を続ける。
「せ、生徒会の、仕事で、帰りが遅くなってっ……電車が混んで、て……! 後ろ、
から、押されて……ドアの脇の、手すりが……あ、そこ、にっ……当た、って……!」
 そう告げられた刹那。思考は相変わらず空白であったのに、視線だけが勝手に動いて、
彼女の下腹部を見つめた。その、衣服の下の光景を想像しかけたことに遅れて気付き、
一瞬、自分で自分を殴り殺したくなる。
「最初はっ……! 我慢しようとしたんですっ……こんなの、いけないって……!
で、もっ……でき、なくて、っ……」
 自己嫌悪に顔を歪めた信行には気付かなかったのか。涙に濡れた顔を手で覆い、
途切れ途切れに語る彼女の声は、より悲壮な色を増していく。
「っ……オナ、ニー、したんです……スカートの、上から、あそこを、手すりに、押し付け、っ、て……」
「……能美」
 もういいと、言わなくてはならないと思った。これ以上、彼女に口を開かせてはならないと。
けれど一歩遅く、綾は泣き叫ぶようにして、途切れた言葉の先を口にする。
「電、車のっ、なかで……人、一杯、いたのにっ……止められなくて……そうしたらっ……
あの人に、見付かって……言うこと、聞かないと、学校に、バラすって、言われっ……!」
「能美」
 それ以上は、聞くに堪えず。信行は腕を伸ばし、しゃくり上げる少女を優しく抱き締めた。
そうするより他に、彼女の言葉を止める術が見付からなかったから。
「だからっ……私の、所為、なんですっ……! 私が、あんなことしたから……
私がっ……いやらしい、子、だから……っ」
「違う」
 震える華奢な体を包んでやりながら、囁く。でき得る限りの誠心を籠めて。
「お前の所為じゃない。そんなはずがないだろう」
「でもっ……私、ずっと前から、こうなんです……いつも、ちょっとしたことで、体、
おかしくなって……外や、学校にいる時でもっ……我慢、できない時が、っ……
あ、って……オナニーだって、ほとんど、毎日……!」
「違う」
 続ける言葉も思い付かないまま、感情だけで否定する。
 理屈も何もなかった。ただ、こんな自分を傷付けるだけの言葉はもう口にさせたくなくて、
その一心で、信行は懸命に言葉を重ねる。
0536『徒花』第二話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/28(土) 23:03:00.14ID:S0ulDB4q
「違う。お前の所為ではない。そんな風に、自分を責めるな」
「っ……ごめん、なさい……っ」
「何故謝る」
「だって、私、ずるいです……こんな、泣いたら……先生、そうやって、言うしか、ないのに……」
 哀しげに声を詰まらせる、その意味を思う。
 彼女は、信行の言葉を偽りだと思っているのだ。生徒である自分が哀れがましく泣くから、
見かねて、心にもない慰めを言っているのだと。
 それは恐らく、彼女自身が、自分を軽蔑しているから。
 こんな自分には、優しい言葉を掛けてもらう資格などない―― 自身を否定するその
気持ちが、彼女の心を頑なにしている。
 先程告げられたことが全て事実だというなら、それは、当然の帰結なのかもしれなかった。
 この少女は人一倍、真っ直ぐな心の持ち主だから。あるべき道筋から外れてしまった
自分を、長い間責め続けてきたのだろうことは、容易に想像がついた。
「―― そんなことはない」
 声を発してから、遅れて思う。
 自分はただの、担任教師でしかない。多少交流があったとはいえ、そんなものは学校
という狭い環境の、さらに限られた範囲でのことだ。自分は、彼女の何を知っている訳で
もない。いやむしろ、何も知らない。彼女がこんな苦悩を抱えていることにだって、今まで
まるで気付けなかったのだから。
 それでも。
 信行にはどうしても、彼女に伝えてやりたい言葉があった。
「たとえお前の体がそうなのだとしても―― それで、お前の心までが変わる訳ではないだろう」
 絶えることのなかった嗚咽が、その時初めて、途切れた。
「本当に卑怯な人間なら、それを恥じて泣くこともない……私は、お前のその涙に嘘が
ないと信じる。お前の、心を信じる」
 そっと、本当にそっと。恐れさえ抱きながら、少女を抱く腕に力を籠める。胸裏を圧する
不安とは裏腹に、彼女は、その腕を拒まなかった。ただ、息を呑む気配だけが伝わってくる。
「お前の心は綺麗だ。卑怯でも、淫らでもない――だから、もう泣くな」
「先、生……」
 腕に感じていた震えは、いつしか治まっていた。けれど、まだ嗚咽は止まらない。それを
どうにか慰めてやりたくて、信行は彼女の背をそっと撫でる。
 変化が起きたのは、その時だった。
0537『徒花』第二話  ◆G/gTzqztYs 2013/09/28(土) 23:05:13.19ID:S0ulDB4q
「んっ……!」
 掌が背中を掠めた途端、しゃくり上げるばかりだった綾の口から、泣き声ではない吐息が
零れ落ちる。はっとして体を離すと、彼女はうっすらと色付いた目元を伏せ、恥ずかしげに
俯いた。
 改めてその痩身を見つめてみれば、綾の異変は明らかだった。短いスカートを精一杯に
引っ張りながら、彼女はしきりに腿を擦り合わせる。いつしか嗚咽は鳴りを潜め、涙に
濡れた頬は、夜目にもはっきりと分かる程に上気していた。
「ん……ふ、ぁ……っ」
「能美……?」
 どうしたと、尋ねかける声に、彼女は答えない。いや、答えられないのか。
 しかし。実のところを言えば、そんなことはわざわざ尋ねてみるまでもなかった。先程の
彼女の告白を聞いていれば、なおさら。
「……辛いのか?」
 問い掛けてしまってから、己の迂闊を呪う。少女の細い肩が、怯えるように震えたからだ。
「いや、違う。責めてはいない」
 ただ、案じているだけなのだと。胸の内の想いが伝わるようにと願い、ゆっくりと、彼女の
頬に手を伸ばす。
「……能美」
 肌を濡らす雫を拭ってやると、綾はそれだけで身を跳ねさせ、色めいた吐息を漏らした。
途端、悔いるように顔を歪める様が痛々しい。
「ご、ごめんなさい……先生」
 逃げるように――否、事実、逃げているのだろう――信行から距離を取ろうとする綾。
だが数歩も動けぬうちに、震える足は力尽きて崩れてしまう。
「……! 能美!」
 咄嗟に、倒れかける彼女を、腕を伸ばして抱き留めた。
 受け止めた体は、見た目の華奢さそのままに、軽い。その軽さに、我知らず、胸の奥が
ざわめくのを感じる。それを振り払おうと、信行は腕の中の少女に声を掛けた。
「大丈夫か?」
「は、いっ……すみ、ませ……ん……っ」
 そう詫びながらも、綾は信行に身を預けたまま、立ち上がろうとしない。そうするだけの
余力がもうないのか、それとも、何か他に、理由があるのか。
(いや。余計な詮索は後だ)
 耳に届く息遣いが徐々に荒くなっていくのに気付き、思考を切り替える。今はとにかく、
彼女を落ち着かせてやらなくては。
 記憶の中から、綾の自宅の住所を思い起こす。ここからは電車で三十分程の距離だが、
こんな状態の彼女を電車に乗せられるはずもない。いやそもそも、彼女の心情を慮れば、
他人の目に晒すこと自体が憚られる。
 ならば、と、脳裏に浮かぶ、一つの方策――信行の住むマンションは、ここからは
目と鼻の先だ。
 即断は、しかねた。己の立場を考えれば、それは決して望ましいことではない。
 だが、身を焼く焦燥に必死で耐える息遣いが、その逡巡を断ち切る。
「能美」
 呼びかけに、綾はおずおずと顔を上げた。
 縋るようにこちらを見上げる、劣情に濡れた瞳。その思いがけない色香に戸惑いながらも、
信行は真っ直ぐにその目を見つめ返す。
 そして、告げた。
「私の家は、この近くだ。歩いても数分とかからない。私以外に誰もいないし、お前が
そこで何をしても、私は知らなかったことにする。勿論、部屋を貸す以上のことは何も
しない……どうするかは、お前が決めろ。私の家に来るか?」
 一瞬、息をすることもままならないような沈黙が満ち――やがて綾は、小さく首を
頷かせた。
0539名無しさん@ピンキー2013/09/29(日) 00:16:47.01ID:fT8R9O6H
すばらしい

ぜひ頑張って完結させてほしい
応援してます
0540名無しさん@ピンキー2013/10/03(木) 23:49:09.21ID:50bBr/Cp
投下きてた!!
とても良かったです
今後も頑張ってください
0541名無しさん@ピンキー2013/10/05(土) 06:03:58.36ID:gnEM6gGm
ノクターンノベルスの後輩と穴る
が依存系だった
おすすめしとく
0542『徒花』第三話  ◆G/gTzqztYs 2013/10/06(日) 22:03:37.52ID:J5UDCuO9
>>517->>524、>>532->>537の続きを投下します

教師主人公と、オナニー(セックス)中毒の優等生ヒロインの話
依存度は中程度で全6話前後の予定
0543『徒花』第三話  ◆G/gTzqztYs 2013/10/06(日) 22:05:58.74ID:J5UDCuO9
 玄関に入って扉に鍵をかけるまで、信行も綾も、終始無言だった。
「トイレはそこの扉。風呂は廊下の突き当たりだ。好きなほうを使え。一人で行けるか?」
「は、い……」
 かまちにへたり込んでいた綾が、その言葉に頷いて立ち上がろうとする。
 だが、ここまで歩いて来るだけで精一杯だった彼女には、もう余力は残っていなかったようだ。
ほんの少し腰を浮かせただけで頽れてしまう体を、すぐさま抱き止めて支える。
「ごめ、っ……なさ……」
「いや、いい……肩を貸そう。風呂でいいか? 鍵なら、脱衣所にも中にもついている」
「はい……」
 小刻みにわななきながら、綾は遠慮がちに頷く。服越しに伝わるその体温は、病では
ないかと疑う程に熱い。
 苦しげに漏れる呼吸音に焦りを覚えて、信行はわずかな逡巡の末、ぐったりとした体を
横抱きに抱え上げた。
「え……?! え、えっ……せ、せんせ――?!」
「支えていくよりこのほうが早い。少し我慢しろ」
 あたふたと狼狽える声を黙殺し、足早に廊下を進む。
 ちらと綾の様子を窺えば、彼女は上気していた顔をさらに真っ赤にして、所在無さげに
俯いていた。



「シャワーでもなんでも、気兼ねせずに使っていい。何かあれば呼べ。廊下にいる」
「はい……あの、すみません。ご迷惑、お掛けして……」
「迷惑だと思うなら、こんなことを言い出しはしない……今はそんなことを気にするな。
自分が楽になることだけ考えればいい」
 告げた言葉に、綾は物憂げに目を伏せる。何か言ってやるべきかと思ったが、結局
気の利いた台詞も思い付かず、無言で脱衣所のドアを閉めた。
 廊下の壁に背を預け、一人天井を仰ぐ。
(……俺は、何をしている)
 本当に、これで良かったのか。公園までの道中、自問し続けていた問いが懲りずに
鎌首をもたげ、信行の胸中を暗くする。
 けたたましい物音がドア越しに聞こえてきたのは、その矢先のことだった。
「きゃ……!」
「能美?!」
 物がひっくり返るような騒音に紛れて、彼女の悲鳴が小さく響く。慌てて声を掛けるが、
返事は一向に返ってこなかった。躊躇いながらもドアノブに手を掛けると、錠のおりて
いなかったノブはあっさりと回る。
「能美! どうした、何か――」
 脱衣所に飛び込んで――刹那、言葉を失った。

「ぁ……先、生…………」
 床に倒れ込んだまま、綾が、虚ろな目で信行を見上げる。
「ご……ごめ、なさ、い……籠、倒しちゃ、って……」
 詫びる彼女の傍らには、脱衣籠と、それを乗せていた台が倒れて転がっている。先程の
物音の正体は、どうやらこれらしい。
 だが、そんなものに注意が向いたのは一瞬だった。
 信行の視線は、自分でも意識せぬままに――眼前に晒された生白い脚に、吸い寄せられる。
「い、ま……片付け、ます、から……」
 体を起こそうとして、彼女は身を捩った。それに合わせ、ほっそりとした素足が床上を滑る。
その片方の足首には、脱ぎかけの下着が絡まっていた。
 熱に浮かされた様子の綾は、そんな自分の姿にも、それを見る信行の視線にも気が
付かないらしい。また、彼女が身を捩る。スカートがわずかに捲れ上がり、裾の下から、
淡い色をしたその部分が垣間見えた。
「っ……すまん」
 一瞬でも見入ってしまった己を恥じながら、部屋を出ようと踵を返す。
 だが――。
0544『徒花』第三話  ◆G/gTzqztYs 2013/10/06(日) 22:08:25.35ID:J5UDCuO9
「んっ……ふ……!」
 かすかに漏れ聞こえた声が、踏み出しかけた足を止めさせた。
「ひ、っ、ぁ……んんっ……!」
「能美……?!」
 それは快感に喘ぐというよりも、苦痛に耐えているかのような息遣い。明らかに尋常とは
思えない様子に悪い想像を喚起され、信行は慌てて綾に駆け寄る。今度は、彼女の
姿態に目を奪われることもなかった。そんな不埒な感情を起こす余地もない程に、蹲る
少女の状態は切羽詰ったものだったのだ。
「能美! どうした?!」
「っ……せん、せぇ……っ」
 縋り付くように、少女の細い手が宙を彷徨う。それをしっかりと握り返し、ふらつく彼女を
抱き寄せて支えた。服越しでも分かるその体の熱さに、背筋を冷たいものが過る。
「しっかりしろ、能美。大丈夫だ、今すぐ病院に――」
 最早、単なる性感による異常とは思えない。とにかく医者に見せなければと、信行は
綾を抱き上げようとした。
 しかし、その行動は、他ならぬ彼女に制される。
「待っ、て……下、さい……」
 わななく指が、襟元を強く掴んだ。引き留めるように。あるいは、縋り付くように。
「能美、だが――」
「ちがっ……うん、です……ほんと、に……病気じゃ、な……!」
 一度、強く目を閉じてから、綾は信行の胸に顔を埋める。荒く息を継ぐその唇が、
掠れた声を絞り出した。
「わた、し……本当は、さっき……いいって、思ったんです……されても、いいって……っ」
 一瞬、何を言われているのか分からずに戸惑った。だが、すぐに思い至る。
 彼女は恐らく、先程、男に乱暴されかけたことを言っているのだ――。
「嫌、だったのにっ……気持ち悪、くて、本当に、嫌だったのに……! でもっ……
い、っ……挿れて、もらうのを、想像、したら……あそ、こ、が、熱くなってっ……! 
苦しくて……楽になるなら、いいって……そう、思っ……」
 そこで声を途切れさせ、綾は信行に縋って泣き崩れる。
「ごめ、っ……なさい……わた、しっ……こんな、に、心配、して……もらってる、のに……っ」
「いいんだ、お前の所為じゃない……お前は、何も悪くない」
 他に何も言えず、信行は震え続ける体をそっと包み込む。
 そんな、なんの慰めにもならない行為に、綾は何を思ったのだろう。縋り付く手に力が
籠もり、か細い声が、信行を呼んだ。
「先生……私、怖いんです……いつか、我慢ができなくなってっ……しちゃ、いけない
ことを、しちゃいそう、でっ……」
 ――この前、電車でしてしまったように。
 途切れた言葉の先が想像できて、信行は無言で眉を顰める。
 先程までの彼女を思い返せば、その最悪の想像を、杞憂だと一笑に付すことは
できなかったから。
「そんなの、嫌ですっ……せっかく、先生が……私の、心……綺麗だって……言って、
くれたのに……!」
 涙ながらに語る声が、より強い感情に震える。
「先生……先生は、まだ……こんなことを考えてる私でも……嫌わないで……いて、
くれますか……?」
 呟いて、綾が顔を上げた。
 その、潤んだ瞳を目にした瞬間。彼女の胸中が理解できて、信行は言葉を失う。
0545『徒花』第三話  ◆G/gTzqztYs 2013/10/06(日) 22:10:23.56ID:J5UDCuO9
「先生……」
 見も知らない人間に体を預けるくらいなら、いっそ、今ここで―― 縋るように見つめて
くる眼差しが、そう、語っていた。
(――いや)
 それは、決して越えてはいけない一線だ。家に連れ込むこととは訳が違う。
 一度踏み外せばもう、取り返しがつかない。信行にとっても、そして何より、彼女自身に
とっても。
「……能美」
 軽はずみなことを考えてはいけないと、そう窘めて、彼女から離れるべきだった。己の
立場を思えば、それが当然の行動であったろう。
 だが。
 そんな身勝手な建前が、今も必死で焦燥に耐えるこの少女の、何を救ってくれるというのか。
 葛藤したのは、どれ程の時間だったか。
 しばしの間、瞼を閉じ。そっと、綾の体を抱き締める。まだわずかの躊躇を残しながら、
それでも、明確な意志をもって。
「能美」
 声音が変わったのを察したのか、腕の中で綾が体を震わせた。
 その彼女と、それから自分自身に告げるように。信行は、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「これから私がすることは、全て、私自身の勝手で行うことだ。お前には、なんの非もない。
不快だと感じたなら、私を殴るなり、助けを呼ぶなり、好きにしろ。お前が何をしても、
何を言っても、私はそれを咎めはしない」
 静かに語る声を、綾は俯いて聞いている。表情を窺うことはできなかったが、こちらの
言わんとしていることは伝わっているのだろう。その証拠に、彼女は信行の腕の中で
わずかに身を固くする。恐らくは、恐怖ではない別の感情から。
「寝室に行く……いいな?」
 ゆっくりと顔を上げる少女の、潤んだ眼差しは――紛れもなく、欲情した女のそれだった。



 熱を帯びた体をそっとベッドに横たえ、次いで自分も乗り上がる。ベッドの軋む音が嫌に
大きく響き、綾が身を固くするのが分かった。
 薄暗がりの中で、少女の瞳を探す。躊躇いがちに頬へ掌を添えると、密やかな吐息が
耳に届いた。
「……下を脱がせる。腰を浮かせろ」
「はい……」
 大人しく頷き、綾は指示された通りに動く。その従順な態度に、愚劣な欲が顔を
出しかけるのを押し殺して、スカートを足から引き抜いた。上着は、敢えてそのままにして
おく。見られたくはないだろうと思ったから。
 眼下に晒された両足は、暗がりにあってなお白く、しなやかな輪郭を浮かび上がらせている。
 美しいと、素直にそう思った。こんな状況でなければ、そのまま口に出していただろう。
 だが、今そんなことを告げても、彼女の心痛を募らせるだけに違いない。
 心ならずも、望まない相手に体を開くしかない少女の胸中を思えば、今は速やかに
行為を終わらせることを考えるべきだった。
「触るぞ」
 断りを入れて、膝裏に手を潜らせる。綾は何も答えなかったが、その首がかすかに頷いた
のを暗闇に見て取り、ゆっくりと、細い脚を開かせた。
 無慈悲にも露わになる、少女の秘められた場所。極力見ないように配慮しつつ、指だけ
をそこに伸ばす。
0546『徒花』第三話  ◆G/gTzqztYs 2013/10/06(日) 22:13:26.66ID:J5UDCuO9
 手探りで触れた秘処は既にたっぷりと蜜を湛え、息衝くように蠢いていた。これならばもう、
あえて濡らしてやる必要もないだろう。
「……指を入れる。息を吐いて、力を抜いていろ」
「っ……は、い……」
 頷く一瞬前、綾は息を呑むような気配を見せた。
 怯えたのではない。その証拠に、指を当てた場所がきゅんと疼いたのを感じる。そうせざるを
得ない彼女が、ただ哀れだった。
 解放してやりたい。その一心で罪悪感を説き伏せ、膣口に指を押し当てる。ほんの少し
力を加えただけで、十分に潤いを帯びたそこは容易く異物を飲み込んだ。
「い、っ……!」
 指先が埋まった途端、綾が体を強張らせる。指を入れた場所のきつさを考えれば、
彼女が処女であることは問うまでもない。いくら濡れているとはいえ、そんなもので苦痛が
消える訳がなかった。
「……すまない。少しだけ我慢しろ。できるだけ、優しくする」
「っ……大、丈夫……です……ッ」
 答える声には、この期に及んで、詫びるような気配があった。
 こんなことまでされているというのに、彼女はまだ、迷惑を掛けているのは自分のほうだと
思い込んでいる。
(違う。詫びなくてはならないのは、俺のほうだ)
 そう言ってやれたらどんなにいいか。しかし、信行がそんなことを口走れば、彼女は余計に
自分を責めるだろう。
 だから、口を噤んだまま。ただゆっくりと、膣に埋めた指を動かし始めた。
 指に絡む、生々しい感触。どうしようもなく女を感じさせるそれに、否応なく、体内を巡る
血が温度を上げていく。それを懸命に抑え込み、そっと、柔らかな膣壁を撫で擦った。
「んっ……ぃ、ぁ……」
 狭い場所を押し広げるたびに、押し殺した呻きが胸を刺す。大丈夫か、とは聞かない。
そんなはずがないと分かっているから。
 せめてもの慰めにと、親指を伸ばし、充血した淫核に触れる。揺り動かすように小刻みに
刺激してやれば、漏れ聞こえる声からたちまち苦痛の色が消えた。
「あっあっ、ぁ、やっ! だめっ……せんせ、そこっ、だめ……だめぇ……!」
 ぐっと背を仰け反らせ、シーツの上をもがく華奢な体。だが、繰り返し首を振る仕草とは
裏腹に、体はさらなる快楽を欲して、自ら腰を揺らめかせる。
 それに合わせて、きついばかりだった少女の内部にも変化が現れた。指を包む柔肉が
解れたかと思うや、自らうねり始めたのだ。
 誘い込むような、襞の動き。さらなる刺激をねだるそれに、しかし信行は従わず、殊更
丁寧に少女の体を開いていく。
「あ、あっ、あぁぁ……っ! ん、ふっ……せんせぇ……っ」
「まだだ。もう少し待て」
 ぐずるように泣く少女の眦を拭ってやりつつ、曲げた指で内側を軽く擦る。途端、秘部から
滴り落ちる蜜が、どっと勢いを増した。
 ぬるついた感触に助けられ、指は一層滑らかに抜き差しを繰り返す。頃合いを見計らって
二本目を宛がうと、蕩け始めた入口は難なくそれを咥え込んだ。
 二本に増やした指で中を探ってみても、綾は痛がる素振りを見せない。どころか、指を
押し包む柔肉はいよいよ熱く溶け、差し入れられた異物を嬉しそうにしゃぶっている。荒く
息を吐く少女の瞳もまた、甘やかな悦楽に陶然と潤んでいた。
「やっ、やあっ、あぁん……! ぁ、せんせっ……先生……っ! あんっ!」
 弱弱しく四肢をもがかせ、綾が信行を見つめる。無言の求めに応えてさらに指を動かすと、
細い体はびくびくと痙攣を繰り返した。掠れて響く喘ぎは、平素の彼女からは到底
想像できない程に、淫らで、艶めかしい。
 途方もない背徳感に身を焼かれながら、しかし信行は、性器を愛撫する手を止めなかった。
 ここで躊躇する気配を見せれば、この少女はまた自分自身を傷付けてしまう。淫らな体、
ふしだらな女だと己を責めて。
 ならば、自分は強引であるほうがいい。彼女が我を取り戻すことなく、快楽だけに没頭
できるように。
 そして、事が済んだ後に彼女を支配するであろう自責の念が、少しでも軽くなるように。
0547『徒花』第三話  ◆G/gTzqztYs 2013/10/06(日) 22:15:34.71ID:J5UDCuO9
「せんっ……せ……!」
「ああ」
 注がれる眼差しに求めを感じて、さらにもう一本、指を差し入れる。その指で絡み付いてくる
内壁を掻き混ぜてやれば、感極まった声を上げて、綾は細腰を跳ね上がらせた。
「ん、ふ、ぁんっ、やぁあ! あっ、気持ち、いい……! 先生っ……ごめんなさい、私、
わたしっ……! ごめんなさい、せんせぇ……っ!」
 過敏な反応に、驚く暇もなく。少女の華奢な体が折れんばかりに反り返り、激しい
痙攣を繰り返す。
「〜〜〜……ッ! ぁ、っ……ん…………」
 数秒程、四肢を固く強張らせ、やがて綾はくたりとベッドに崩れ落ちた。それでも、膣の
内部はまだ細やかに震えて、挿入した指を食い締めてくる。そっと指を引き抜くと、手は
迸った愛液を被って、袖口までぐっしょりと濡れていた。
「……能美。大丈夫か?」
「ふ、っ……ごめっ……ごめ、なさ……わた、し……っ」
 掠れた涙声が、薄闇に零れ落ちる。
 忘我から醒めるや否や、綾は顔を覆ってしゃくり上げ始めた。
「能美……」
「ちがっ……違う、んですっ……嫌、だったんじゃ、なく、て……! 止まら、っ……な……っ」
 そう言って、綾は嗚咽を堪えようと息を詰める。だが、泣き声は一向に治まらず、むしろ
激しくなっていくばかりだ。恐らくは、感情が昂ぶって上手く制御できないのだろう。
「いいんだ。好きなだけ泣いていい。お前が落ち着くまで、いつまででも待つ」
 触れてもいいものかどうか、しばし逡巡した後。恐る恐る手を伸ばし、涙の伝う頬をそっと
拭ってやる。
 他意など、何もなかった。だが、途端に綾が身を竦めたのが分かり、信行は慌てて手を
引っ込める。
 その手首を、少女のか細い指が掴んだ。
「せん、せ……」
 恥じらいに、身を強張らせながら。綾はゆっくりと、信行の手を引き寄せる。未だ衣服に
覆われたままの、胸の膨らみへと。
「能――」
 押し当てられる柔らかさに焦りを覚えた直後、ようやく気が付いた。
 密着した部分から伝わる、彼女の熱。それが一向に、鎮まる気配を見せないことに。
「ふ、っ……ごめん、なさい、先生……私……っ」
 それ以上は言葉にできなかったのか、彼女は羞恥に耐えるようにぎゅっと目を閉じる。
だが、言葉にされずとも、しきりに足をもじつかせるその仕草が、彼女の胸中を何より
雄弁に語っていた。
「ごめんなさっ……ごめんなさい……! わたしっ……こんな……いや、らし、くて……!」
「……そんなことはない」
 宥めようと頬を撫でてやるが、懺悔する声は止まらない。
 止めてやるには――彼女が忌み嫌うその体ごと、受け止めて、肯定してやるより他に
なかった。
「――能美」
 心を決め、赤く染まった耳朶に唇を寄せる。彼女が息を詰める音が、妙に大きく聞こえた。
「大丈夫だ。すぐ楽にしてやるから、何も心配するな」
 そろそろと、綾が瞼を上げる。その視線を感じながら、ベルトのバックルに手を掛けた。
 前を寛げ、自身を取り出そうとして――瞬間、嫌悪に顔が歪む。下着の奥の肉棒は
既に、半ば以上勃ち上がりかけていたのだ。
 我がことながら、男という生き物の浅ましさに、忸怩たる思いを禁じ得ない信行である。
だが、自責の念に駆られるのはまだ早い。自分はこれから、より卑劣な行いをしようとして
いるのだから。
 せめて劣情が暴走することのないよう己を律しながら、半勃ちの肉棒を取り出す。その様子を
見ていたのか、綾が小さく声を上げた。
「あ……」
 熱を帯びた、吐息交じりの声。その甘やかな音色に、肉棒がわずかに力を増したのが
分かる。あからさまな反応に呆れながら、竿の部分を手で扱いた。
 やがて、それが挿入に足る硬度になったのを確かめ、信行はベッドサイドの引き出しから
コンドームを取り出す。意外そうに、綾が軽く目を見開いた。
0548『徒花』第三話  ◆G/gTzqztYs 2013/10/06(日) 22:17:18.99ID:J5UDCuO9
「どうした?」
「あ、いえ……ちゃんと、あるんだなって……」
「驚くことでもない。男の嗜みだ」
 少しでも彼女の心が和らげばと、冗談めかして言う。その意図が伝わったのか、綾は
一瞬きょとんとした後、おかしげに顔を綻ばせた。
 だがその笑みも、こちらの用意が整うのと同時に消える。
 こく、と細い喉を上下させ、彼女は信行の下肢に視線を落とした。半ば以上理性を
飛ばしている瞳が、快楽への期待で妖しく潤む。
 それを見下ろす信行も、どこか、意識が麻痺しているのかもしれない。そうでなければ、
教え子の両足を抱え上げて、その股座に自身の性器を押し当てることなどできはしないだろう。
 濡れそぼった秘裂に、亀頭の先が埋まる。これ以上進めば戻れないという禁忌感、
だからこそ、そこから突き上げてくる快感は途方もない甘さで理性を犯す。
「能美」
「先生……」
 熱に浮かされた眼差しを合わせ、二人は束の間、互いの顔を見つめた。
「――挿れるぞ」
 はい、と、あえかな声が頷く。そろそろと肩に触れる手に誘われて、静かに、腰を押し進めた。
「いっ――! っ、……ぁ……ッ!」
 破瓜の激痛に、少女の全身が強張る。
 だがそれも、一瞬のことに過ぎなかった。
 侵入した瞬間こそ信行を拒むように緊張した体は、けれどすぐに、咥えさせられた肉棒を
味わい始める。
 そして、それが自身に快感をもたらすものだと気付くや、より深く貪ろうと奥へ誘い込んできた。
「く、っ……!」
 甘えるような柔襞の蠢きは、今の今まで処女だった女のそれとはとても信じられない。
思いがけない具合の良さに奥歯を噛みながら、信行は綾の様子を窺う。
「ん、っく……んゃ、ぁんっ……! せんせっ……津田、せんせぇ……っ」
 うわ言のように信行を呼ぶ少女は、既に、あられもなく悩乱していた。
 初めて男を受け入れたはずの膣は早くも犯されることに馴染み、さも嬉しげに肉棒を
舐めしゃぶっている。開きっ放しの口から涎と嬌声を零すその姿に、清純な少女の面影は
最早、欠片もなかった。
 それに胸を痛められたのも、ほんの束の間のこと。乱れに乱れる女体に引きずられ、
冷静な思考が瞬く間に削り取られていく。
 それでも、我を失うことだけはないよう必死に己を戒めながら、信行は腰を動かし始めた。
「ん、ふ、ぁんっ……んん……! あっ……気持ち、いい……気持ちいい、せんせぇ……!」
 少し中を擦り上げただけで、綾は狂ったように頭を振って喘ぐ。
 膣の反応は、より顕著だった。腰を前後させるたびに、熟れた柔肉が肉棒を揉みしだき、
絞り上げてくる。ともすれば腰が砕けそうな快楽をどうにか堪え、少女の狭い内部を
繰り返し突き上げた。
0549『徒花』第三話  ◆G/gTzqztYs 2013/10/06(日) 22:19:22.79ID:J5UDCuO9
「あぁんっ! あ、あっあ、や、いやぁ……! だめ、せんせっ……だめぇ……!」
 ぎゅっと信行の肩にしがみ付き、少女は強過ぎる刺激に泣き喘ぐ。しかし一方で、
片方の手はいつしか信行の元を離れ、自身の上衣をたくし上げようとしていた。
「っ、……能美、お前……」
「ふぁ、あんっ、ん、ゃ……! ごめ、なさっ……ぁんっ! ごめんなさい、でも……! 
でも、気持ち良く、てっ……せんせっ、だめ、見ないでぇ……!」
 ふるふると頭を振りながらも、彼女の手は止まらない。目を逸らせない信行の視線の
先で、透き通るような肌の色が徐々に露わになっていく。
 やがて顔を出す、つつましやかな胸の膨らみ。細い指がその頂きを摘まみ上げ、
手慣れた仕草で弄り始める。
 その指の動きが、大胆になっていくと共に――悦楽にはち切れんばかりだった彼女の
体は、いよいよ余裕を失くしていった。
「っ……?! 能、美っ……待て……っ」
 激しさを増す膣の蠢きについて行けず、思わず腰の動きを止めてしまう。だが、限界
近くまで上り詰めている女体に、最早男の助けは必要なかった。我を忘れてよがり狂う
少女は信行を置き去りにして、一人絶頂への階段を駆け上っていく。
「あっ、あぁ、ぁん! あ、だめ、イっちゃ……! せんせ、ごめんなさ、私っ……
あっ、あっぁ、んゃ、やぁっ! ごめんなさい、ごめんなさい――!」
 最後の一瞬、辛そうに顔を歪めて。少女が、忘我の極みへと飛び立つ。
 歓喜に打ち震えるその肉体に手を引かれ、気付けば信行も、彼女の体内で射精していた。



 サイドランプの明かりの下で、信行は黙然と、啜り泣く少女の肩を抱いている。
「ごめっ……なさ……ごめん、なさい……ごめんなさい、先生……っ」
「謝るな。言っただろう、お前にはなんの非もない。何もかも、私の勝手でしたことだ」
 わずかに視線を動かせば、乱れたシーツには黒ずんだ染みが点々と残っていた。この
少女がたった今、かけがえのないものを失ってしまったことの証。それを彼女から奪ったのは、
他でもない信行自身である。
 仕方がなかったなどと、言う気はない。どんな言葉で取り繕おうと、彼女が失くして
しまったものは、決して取り戻せないのだから。
 故に、事が済んで、綾が落ち着きを取り戻した時。彼女に軽蔑され詰られることも、
信行は覚悟していたのだ。
 しかし、我を取り戻した彼女が最初に口にしたのは、非難の言葉ではなかった。
「先生……ごめんなさい、私……先生に、こんな、こと……」
 この通り。
 行為が終わってからずっと、彼女は自分を責め、信行に詫び、懺悔の涙を流し続けている。
お前の所為ではないと、そう諭す言葉にも、ただ、苦しげに首を振るばかりだ。
「能美……」
 嗚咽に肩を震わせる少女を、信行は無言で見つめる。
 一体何を言ってやれば、この哀れな少女の心を和らげてやることができるのか。
 その答えが見付からず、眉を曇らせた時。謝罪するばかりだった綾の口から、初めて、
違う言葉が零れ落ちた。
「……昔から、なんです……私」
「……そうか」
 静かに、頷く。それ以外に、答えようもなかった。
「……誰かに、相談したことは」
 答えをうすうす察しながら、問う。案の定、綾は小さく頭を振った。
「病気かも、って……思ったこともありました。でも、きっと違う……私が、いやらしい
だけなんです……私が、ちゃんと我慢、できないから……」
「そんなことはない。言っただろう。私は、お前を卑しいとも、淫らだとも思わないと……
その気持ちは今でも変わらない。だから、それ以上自分を貶めるな」
 俯く彼女の頬に手を添え、顔を上げさせる。伏し目がちにこちらを仰ぎ見る瞳は、
すっかり泣き腫らして赤くなっていた。
0550『徒花』第三話  ◆G/gTzqztYs 2013/10/06(日) 22:20:24.90ID:J5UDCuO9
 その眦を優しく拭ってやっていると、不意に、綾が口を開く。
「先生……」
「どうした」
「先生は、どうして……そんなに、私に、優しくしてくれるんですか……?」
 尋ねる声は次第に掠れて行き、やがて、込み上げる嗚咽に途切れてしまう。
「だって、わた、しっ……あんな、こと、して……! はじ、めて、なのに……あんな……っ」
「それは……」
 口籠ってはいけないと分かっていたのに、即答することができなかった。思い出して
しまったからだ、先刻までの、彼女の痴態を。
 自分でも意図せずに鼓動が高鳴ってしまい、信行は沈黙せざるを得ない。しかし綾は
その反応を、嫌悪感によるものと思ったようだ。しゃくり上げる声が、一際大きく、悲壮に響く。
「ごめんなさいっ……ごめんなさい、先生……! 私、こんな……気持ち、悪かった、
です、っ、よね……! ごめっ、なさ……嫌な、思い、させ、て……っ」
「違う、能美。そうではない」
 嗚咽する彼女を抱き締め、強く否定する。その温もりと香りに心を動かされそうになる
自分を、懸命に抑え込みながら。
「先程までの言動がお前の本意でないことぐらい、分かっている……自分を責めるな」
「違う……違いますっ……そんなの、言い訳にしちゃいけない……! 
私が悪いんです……私が……っ」
「……たとえそうだとしても。それだけが、お前の全てではないだろう」
 はっと身を震わせて、綾が信行を見た。涙を湛えたその瞳を、信行は真っ直ぐに
見つめ返す。
「先程までのお前も、今こうして、自分を恥じて泣いているお前も、どちらもお前という
人間の一部だというなら……私は、その一面だけを見て、お前を疎んじるような真似は
決してしない。受け入れる、お前の全てを」
 こちらを見上げる双眸が、ゆっくりと瞠られていく。
 わずかな沈黙を経て。堰を切ったかのように、その眦から大粒の涙が溢れ出した。
「っ……せん、せ……」
「……今まで、よく頑張ったな。これからはもう、一人で抱え込まなくていい……私がいる。
大丈夫だ、能美」
「はいっ……は、い……っ」
 再び泣き崩れる少女を、そっと抱き締めてやる。
 これで良かったのかと――胸の奥に、消えることのない苦悩を抱えながら。
0555名無しさん@ピンキー2013/10/13(日) 08:18:08.26ID:QD+Wq1OG
>>541
同作者の妹はオナドールもヤンデレというよりは依存だな
主人公からコントロールされてるし
0557名無しさん@ピンキー2013/10/16(水) 07:39:39.67ID:Rg6ebo1u
外部ならノクターンの依存型ヤンデレの恐怖かな
この作者は小説家になろうでも書いてるけどそっちはヤンデレよりだな
SDGの犬ヒロインとかは依存ぽいが
0558名無しさん@ピンキー2013/10/16(水) 10:03:32.74ID:CPu0YkVw
ノクターンならその名もズバリ「依存っ子への鎮魂歌」という名シリーズがあるではないか。
3つ子ちゃんの話が好きだったなぁ
0559名無しさん@ピンキー2013/10/16(水) 10:08:40.06ID:Rg6ebo1u
ノクターンはあと
きみのことばに恋をする。
かなー
あれも依存らしい
同作者の援交のしおりは消えてしまった
0560名無しさん@ピンキー2013/10/16(水) 16:36:54.67ID:h6p8iE9I
ノクターンでは小さい姉ちゃんと俺が好きかなぁ
近親は依存との相性めちゃいいね
0562名無しさん@ピンキー2013/10/16(水) 22:33:36.66ID:P+MgVkW8
途中で送信してしまったスマン
Arcadiaの境界崩しが能力によるものと能力によらないもの半々だけど依存ハーレム
主人公に暴力振るわないし主人公中心だし
0563名無しさん@ピンキー2013/10/17(木) 20:15:15.65ID:gHvA2T/i
いいぞいいぞ
依存分めちゃ補給された
もっと教えてくれ
0565名無しさん@ピンキー2013/10/17(木) 21:02:10.55ID:gHvA2T/i
「なあなあ。あれは何なのだ?美里に教えてくれなのだ!」
子供っぽい口調で喋る成人女性。道行く人々は彼女を奇異の目で見る。
「あれかい?あれは紫陽花だよ」
「紫陽花?おー、あれが紫陽花かー。知ってるけど見たことないぞー。あれがかーなるほどなー」
ぶんぶんと手を振りながら花に夢中になるその様は、とても二十歳に見えない。
しばらく彼女が色々な角度からふんふんと花を眺めるのを好きにさせておく。
「そろそろ行こうか美里。」
「むー。わかったのだ!美里はいい子だからな!高明の言うことは聞くのだ!」
曇りの無い彼女の笑顔は、僕に罪悪感を抱かせる。
幼馴染みの美里は記憶喪失だ。十七歳までは、周りより遥かに大人びていた。
幼馴染みと言っても、僕は彼女とは小学校以来話していなかった。美里はどんどん成長して、大人びて、僕は彼女から軽蔑されるようになったから。
十七歳の時に彼女は事故にあった。轢き逃げされて頭を打った彼女の脳味噌はぐしゃぐしゃにかき混ぜられていた。
結果、記憶を断片的に失った彼女は著しく精神を退行させてしまった。
彼女の友人たちは最初は見舞いに来ていたが、小学生以下の彼女をつまらなく思ったのか、消えていった。
残ったのは僕だけ。記憶はまだらに失われていたが、僕のことは覚えていてくれた。
僕は自分しかいないことをいいことに、彼女の治療の一環としてこうして外を散歩する際の介助役を手に入れた。
「高明!今日のご飯は何なのだ!?」
「美里のお母さんはオムライスって言ってたよ」
「オムライス!やったー!オムライス!オムライス大好き!ケチャップたくさんかけるのだ!」
二十歳の美里がぴょんぴょん跳ねる。
美里の服装は真面目な女子大生が着るようなパーカーにデニムスカートだが、跳ねると豊かな胸が震えた。
ついつい僕はそれを凝視してしまう。
こちらの反応を見て、美里はいたずらっ子な笑みを浮かべた。

「高明はまた美里にしてもらいたいのかー?しょうがないやつだよなー。高明はー。高明は優しいからなー。美里も高明に優しくしてやるのだ」
その声には艶めいたものがあった。
0567名無しさん@ピンキー2013/10/18(金) 06:24:31.60ID:R1pY4gxs
>>565
なんかその後が心配な感じだな…
本当依存属性持ちのカップルには幸せになってほしいものです
0568名無しさん@ピンキー2013/10/18(金) 06:49:48.66ID:R1pY4gxs
二次創作だから原作知ってる人しか楽しめんかもしれんけど念のため報告しておく

みなみけのSSで依存っぽい展開のやつ見つけた
原作ファンの中でも人気のある小学生コンビが将来結婚する話なんだが
結婚後のヒロインがなんか依存っぽい

「チアキと旦那さま」でググれば出てくると思うからみなみけ知ってる人は読んでみ
0569『徒花』第四話前編  ◆G/gTzqztYs 2013/10/19(土) 03:55:30.93ID:xHF+Flwo
>>543->>550の続きを投下します

教師主人公と、オナニー(セックス)中毒の優等生ヒロインの話
依存度は中程度で全6話前後の予定
0570『徒花』第四話前編  ◆G/gTzqztYs 2013/10/19(土) 03:58:46.72ID:xHF+Flwo
 生徒会室での密事を終えて。
 綾は信行と共に、仄暗い廊下を歩いていた。
「……能美。何か、帰りを急ぐような用事はあるか?」
「え……? い、いいえ。塾まではまだ時間がありますし、特には」
「そうか。なら、駅まで送ろう。支度をしてくるから、校門で待っていてくれ」
「え?!」
 驚いて、思わず頓狂な声が出てしまう。人気のない廊下に、その声は思いの外よく響いて、
綾は羞恥に顔を赤らめた。
「迷惑か?」
「い、いいえ……! 迷惑だなんて、そんな……! 先生こそ、そんな、ご迷惑じゃ――」
「迷惑でないなら、やはり送ろう。もう外も暗いし、生徒もほとんど帰ってしまっている。
女生徒が一人で歩くのは危険だ」
「で、でも……」
 遅くなったのは――綾自身の所為なのに。
 だが、それを自分から口にする勇気が、綾にはなかった。
「それでいいな、能美」
「……はい」
 それだけ聞くと、もう会話は終わったとばかりに、信行はすたすたと歩いて行ってしまう。
取り残される形になった綾は、慌ててその後を追った。
 こんな時。彼女の友人がここにいたなら、きっとこう言うのだろう――思いやりが
足りないと。
 確かに、信行の物言いはひどく事務的で、温かい気遣いというものが感じられない。
それはきっと、その言葉が親切心からのものではなく、教師としての義務感によっている
からだろう。
 そういう信行を、綾はよく知っている。
 優しい人ではない。むしろ、自分にも他人にも、必要以上に厳しいところのある人だと。
 けれど、だからこそ綾は、信行のことを立派だと思う。
 だって、いくら教師だからといって、彼がそこまで綾の為に時間を割くことはないのだ。
ただでさえ綾は、信行に、決して人には言えないようなことを強いているのだから。
 それでも彼はまだこうして、綾の為に何かをしてくれようとしている。
 そこに思いやりが存在しないというのなら、なおさら。理念だけでそれだけのことができる
彼は、優しくはないのだとしても、本当に誠実な人だと思うのだ。

 そんな彼に、綾は、ずっと前から恋をしていた。
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