うちの母親・アツコはいわゆる『お水』だ。
だから今日という小学校の参観日、絶対に学校に来て欲しくない。

最初はプリントを隠した。でもどこからか聞いたらしくてすぐにバレた。
「絶対来んなよ!」
「はいはい。としあきぃ、ねぇねぇどんな服で行けばいーいー?」
派手なスーツやらワンピースをとっかえ引っ変え、どうせ子供の言う事と思って聞く耳も持ちやしない。

とうとう参観日になってしまった。
階段まで見送りに来た母さんの服はピンクの肩から先の袖がないワンピース。
靴はヒールのヒョウ柄で、人でも殺せそうなくらい先が尖っている。
化粧と香水の臭いで息子ながら目がくらくらする。

「あっ!」
母さんに気を取られてぼーっとしていた僕は、ついつい階段の上で躓いてしまった。
浮遊感と母さんの驚いた顔。母さんが手を伸ばして僕を助けようと…。
世界がぐるぐると回転して、意識が遠のいた。