「この時期にちょうどいい花火大会をしてあげるわ」
ハチ怪人はゴミを捨てるように由衣の身体を放り投げた。
ヘルメットが無くなっても、まだスーツの機能は保持されているし、武器も健在だ。
その思いで由衣は必死に立ち上がる。しかし、こちらが仕掛ける前に、ハチ怪人の忠実なしもべである蜂が由衣の近辺を取り囲んでいた。
その数は10匹近くいた。ほぼ全ての蜂が、由衣を熱線で焼くべく、針を向けていた。

「第一陣!」
胸に、背中に、右腕に、左膝に、一斉に熱線が照射され、装甲が激しい爆発を起こす。

「あぎぃあああ…」
「第二陣!」
由衣が悲鳴を上げる間もなく、今度は腹に、腰に、左腕に、右肩に熱線が放たれ、激しい爆発と共に、スーツの破片を辺りに撒き散らす。

「第三陣!」
第二陣の間、一旦離れていた蜂が再び熱線を放つ。仕上げとして、再び胸で、背中で、腹で激しい爆発が起きる。

「あああああーっ!」
由衣のいた場所で爆発が起き、着ているスーツの爆発とあいまってさらに大きな爆発となった。
その爆風で由衣の身体が紙きれのように吹き飛び、廃工場のあった崖の上から、遥か下にある川の方まで落ちていく。
胸に照射された熱線でスーツの制御装置が破壊されたらしく、由衣の身体から真紅の装甲が全て剥がれ落ち、白く光り輝いて光の分子になって腰のパックルに納められる。
由衣はインナースーツ姿で崖下の川へと落ちて行った。
大きな水飛沫を上げ、由衣の身体が川の中に沈んでいく。川の流れは急で、水の流れる音が崖の上からでも聞こえてきた。
蜂を背中に収納したハチ怪人は、由衣が吹き飛ばされ、川に落ちたであろう場所を上から見やったが、由衣らしい人影は無い。

「綺麗な花火だったわね」
いくらレッドトルネードでもここまでダメージを受け、急流に叩き落とされては生きてはいまい。
ハチ怪人は勝利を確信したが、すぐに考えを改める。

「アイツの死体を見つけるまで作戦は終わりじゃない。探しなさい」
ハチ怪人は、川の下流に流されたかも知れない由衣を見つけ出すべく、蜂に指示した。