「んっ……!」
美味しい。
アダルティーな見た目とは裏腹に、幼い頃に食べたお菓子を思い出すミルク風味。
舌に広がる甘ったるく濃厚な味わいに、甘いもの好きな明利にはたまらないものであった。
だんだんとその味に没頭していき、明利の目には回りのものが入らなくなっていった。
「おねーちゃん、おねーちゃんてば!」
「んぅ?」
その甘味の虜にされて明利は少しボーッとしていたようで、海の声にハッと我にかえる。
どのくらいそうしていたのか、すでに海の口から棒は飛び出していなかった。
どこか寝起きのように頭が霞がかって、心がフワフワと浮わつくのを感じる。
なんとなく心地のよい感じである。
「ぼーっとしちゃっれた、ごめんね。ねぇ、ころアメおいひいねー。なんていふの?」
「あかりおねーちゃんだって、くわえたまましゃべってるじゃん! ほら、美味しいからしょうがないんだよ。ロリカポップっていう、子ども専用のアメなんだって」
海の指摘に明利の顔が真っ赤に染まる。
落ち着いていて大人っぽい、と友人に称される明利には珍しい反応であった。しかし先ほど注意したことを行っている自覚はあるにも関わらず、明利は舐めるのを止めようとすることはなかった。
明利はいつの間にか体勢を崩しており、スカートを気にせずに三角座りをしたまま夢中になって飴を頬張っていた。
それを海はどこか自慢げに、幼げな笑みをむける。それに呼応して明利も、似通った年齢不相応な笑顔を浮かべていく。
「そうだあかりおねーちゃんはなにしに来たの?」
その問いにワンテンポ遅れた、未だに飴を口に入れたままにフワフワとした口調で、
「えーろね、陸ちゃんとお勉強会しにきたの。そうら私ちょっろ準備しちゃうれ」
ゆったりとした動きで、鞄からノートや教科書を取り出して勉強会の用意を始める。
勉強会といいつつもその実態は明利が陸に勉強を教えるものであった。
軽くその予習をしようと英語の問題に目を向ける。
“I had been good at study, not an examination but the true meaning.”
「私は……あれっ、 なんて読むんだっけ?」
普段なら造作もない英文。
しかしその意味が理解できない。それどころか、その英単語の読み方すらわからない。
ペラペラとめくっていって他の簡単な英文を読んでみるが、ついぞどの文も理解することはできなかった。
「どうして……?」
昨日までならスラスラと読めたのに……不安が募っていく。
そして、その解消を飴に向けるのは必然的であった。
赤ん坊が授乳されるようにのように細長いそれを唇に感じてミルクの味を堪能していく。
それだけで、困惑の色が一瞬で晴れていく。