お久しぶりです、岩荒投下した者です
>>68>>71の続きで、また岩荒書いてみました
エロ成分少なめな上、話も短いですが、読んでいただければ幸いです
次は別カップリング書きます…




「また、今度会いましょう」

彼女のその言葉は嘘ではなかった。
あれから一週間は経っただろう今日、再び僕らは会うことになった。
あの日と同様、雨が降る日。


「傘、ちゃんと持ってきてくれたのね」
「…今日は、午後から雨が降るらしかったので」
他愛もない会話をしながら、僕らは雨の中を歩いていた。彼女が貸してくれた青い傘で、相合傘をしながら。
―――最近、あの日のことを思い出すたびに何だか恥ずかしい気分になり、ここしばらくは彼女の顔を見ることもできなかった。
今、こうして肩が触れ合うぐらいの距離にいるだけでも軽い羞恥心を感じているけれど、ポーカーフェイスを装っている。
「私が言ったこと、覚えていたのね。嬉しいわ」
「…そうですか。それは、どうも」

僕の態度に対して、彼女は特に言及してこなかった。
ありがたいことだけれど、同時に少し恐怖を覚える。心を見透かされているような、恐れを。
「荒井君、雨は好き?」
「え?……ああ、そうですね。嫌いではありませんよ」
「そう…。私、雨は好きよ。梅雨時の蒸し暑さは嫌いだけど、雨が降ると一気に涼しくなるでしょう?
それに、ほら……この雨音が騒音をかき消してくれる気がするの。普段騒がしい人も、雨が降ると少しは静かになるわ。だから、雨が好きなの」
「そうなんですか」

饒舌に語る彼女が、少し幼く見えた。
あの集会の時の、冷然とした大人の笑みとは違う。18歳の少女としての、可愛らしい笑顔だ。
………。
……こんな風に観察してしまう僕が恥ずかしい。
岩下さんはただ単に、僕に自分の嗜好を話しているだけだ。それなのに、可愛らしい笑顔だの、僕は何を思っているんだろう。
今は彼女の話を聞く時なのに、彼女の顔に注目してしまうのはなぜなんだろう。
「荒井君」
「…あ、はい」
「ここで少し、休んでいってもいいかしら?」
彼女が指差したのは、児童公園にぽつんと建っている東屋だった。
「ここなら、雨に濡れないわ」
「傘がありますから、そんな心配もありませんがね」
などと言いつつ、僕と彼女はなだれ込むように東屋のベンチに座った。
「…しばらく、こうしていていいかしら」
「構いませんよ」
ドラマのような事態になってしまった。
同じ学校の先輩(しかも異性の)と二人きりで、人気のない場所で雨宿りをすることなんて、そうそうあるものではない。
うっかりこの間のことを思い出してしまい、心拍数がさらに上がった気がした。
彼女に聞こえるんじゃないか。
そんないらぬ心配をしてしまうほど、緊張する。
「ねえ、荒井君」
「はい?」
何の迷いもなく、くるり、と彼女の方に顔を向けた瞬間、視界と唇が塞がれた。